JP4617641B2 - 光学活性基を有する液晶性化合物および重合体 - Google Patents
光学活性基を有する液晶性化合物および重合体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性な1−アルキルエチレンまたは1−オキソ−2−アルキルエチレンを結合基として有する重合性の液晶性化合物、その重合体および重合体の用途に関する。この重合体は光学異方性を有する成形体、液晶表示素子などに利用できる。
【0002】
【従来の技術】
近年、偏光板、位相差板などの光学異方性を有する成形体に重合性の液晶性化合物が利用されている。この化合物が液晶状態において光学異方性を有し、重合によりこの化合物の配列が固定化されるためである。光学異方性を有する成形体に必要な光学的特性は目的によって異なるので、目的にあった特性を有する化合物が必要である。この化合物は重合して重合体とし、それを成形して利用することが一般的である。このような目的に使用される化合物は、前記の異方性に加えて重合体に関する特性も重要である。この特性は、化合物の重合速度、重合体の透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などである。
【0003】
また、光学補償フィルムを製造するとき、螺旋構造を誘起させるために重合性の光学活性体を添加し、重合によって螺旋構造を固定化させる。このような目的で使用される化合物として重要な特性は、螺旋誘起力(helical twist power)、液晶との相溶性、誘起される螺旋構造の温度依存性などである。
【0004】
近年、重合性コレステリック液晶を用いた円偏光分離機能素子が、輝度向上フィルムとして活用されている(例えば、非特許文献1参照。)。コレステリック液晶は通常、ネマチック液晶に光学活性化合物を添加することによって調製できる。可視光領域での円偏光分離機能を得るためには、非常にピッチの短い螺旋構造(300〜800nm)を必要とする。螺旋誘起力の小さな光学活性化合物を使用すると、その添加量を増やさなければならない。螺旋誘起力の小さな光学活性化合物は他の物性、特にCN点(結晶からネマチック相への相転移温度)に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0005】
アクリレートは重合反応性が大きく、得られる重合体が高い透明性を有するので、このような目的に用いられる(例えば、特許文献1参照。)。重合性化合物が有する好適な液晶性、その他の化合物との相溶性、光学異方性などの特性の更なる改善が求められている。得られる重合体が有する好適な透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の更なる改善が求められている。具体的には、相溶性に優れた化合物、およびそれらを用いて得られる透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などに優れた重合体の開発が緊急の課題である。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−12580号公報
【非特許文献1】
Y. Hisatake et al., Asia Display/IDW '01 LCT8-2
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、螺旋誘起力が大きく、他の化合物との優れた相溶性を有し、さらに、光学異方性などの必要な特性を有する光学活性基を有する重合性の液晶性化合物、およびこの化合物を含有する液晶組成物を提供することである。第二の目的は、透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れた重合体、およびこの重合体から製造した光学異方性を有する成形体を提供することである。第三の目的は、この重合体を含有する液晶表示素子を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の態様は次の項のとおりである。
【0009】
[1] 下記の式(1)または式(2)で表される光学活性化合物。
Ra−Y−(A−Z)m−A−Y−Rb (1)
Rc−Y−(A−Z)m−A−Y−Rc (2)
式中、Raは水素、ハロゲン、−CN、−OCF3、−OCF2H、−N=C=O、−N=C=S、または炭素数1〜20のアルキルであり、これらのアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらのアルキルにおいて任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよい。
【0010】
「アルキルにおいて任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−などで置き換えられてもよい」の句の意味を一例で示す。C4H9−において任意の−CH2−を−O−または−CH=CH−で置き換えた基の一部は、C3H7O−、CH3−O−(CH2)2−、CH3−O−CH2−O−、H2C=CH−(CH2)3−、CH3−CH=CH−(CH2)2−、およびCH3−CH=CH−CH2−O−である。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、隣接する2つの−CH2−が−O−O−、−O−S−、−S−O−、または−S−S−のように置き換えられない方が好ましい。
【0011】
好ましいRaは、水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、および炭素数2〜21のアルケニルである。特に好ましいRaは、−CN、炭素数1〜20のアルキルおよび炭素数1〜19のアルコキシである。これらの基において、アルキルおよびアルケニルは分岐よりも直鎖の方が好ましい。
【0012】
Rbは、基(3−1)、基(3−2)、基(3−3)、基(3−4)、基(3−5)、または基(3−6)である。
【0013】
Rcは、基(3−1)、基(3−2)、基(3−4)、基(3−5)、基(3−6)、または基(3−7)である。
【0014】
Rdは水素、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルであり、これらのアルキルにおいて任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。好ましいRdは、水素、ハロゲンおよびメチルである。特に好ましいRdは、水素、フッ素およびメチルである。
【0015】
Aは1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、またはビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイルであり、これらの環において任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、これらの環において任意の水素はハロゲン、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい。後者の「これらの環」は、任意の−CH2−が−O−で置き換えられた環、および任意の−CH=が−N=で置き換えられ環をも含む。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH2−O−O−CH2−よりも、酸素と酸素とが隣接しない−CH2−O−CH2−O−の方が好ましい。
【0016】
好ましいAは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。特に好ましいAは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、およびナフタレン−2,6−ジイルである。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、3−フルオロ−1,4−フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンと3,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
【0017】
大きな光学異方性を有する化合物は、Aがハロゲンで置換されてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトロヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または9−メチルフルオレン−2,7−ジイルであることが好ましい。小さな光学異方性を有する化合物は、Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであることが好ましい。これらの化合物において、RaまたはRcから数えて2番目の環が1,4−フェニレンであるとき、相溶性の点で好ましい。RaまたはRcから数えて2番目の環が、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであるとき、大きな誘電率異方性の点で好ましい。
【0018】
Yは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、これらのアルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−S−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいYは、単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、および−(CH2)rO−であり、rが1〜20の整数である。特に好ましいYは、単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、および−(CH2)rO−であり、rが1〜10の整数である。化合物の安定性を考慮して、−Y−Ra、−Y−Rbおよび−Y−Rcは、基中に−O−O−、−O−S−、−S−O−、または−S−S−を有しない方が好ましい。
【0019】
Zは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)n−、−O(CH2)n−、−(CH2)nO−、−O(CH2)nO−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−(CF2)2−、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−CH=CH−(CH2)2−、−(CH2)2−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−CH=CH−、−CH=CH−C≡C−、−OCF2−、または−CF2O−であり、C*は不斉炭素であり、Reは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキルであり、nは1〜20の整数であり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−である。
【0020】
好ましいZは、−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)n−、−O(CH2)n−、−(CH2)nO−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−OCF2−、および−CF2O−である。特に好ましいZは、−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−C≡C−、−COO−、および−OCO−である。
【0021】
mは1〜6の整数である。好ましいmは、1〜3の整数である。mが1のときは、六員環などの環を2つ有する二環の化合物である。mが2と3のときは、それぞれ三環と四環の化合物である。mが1であるとき、2つのAは同一であってもよいし、または異なってもよい。mが2であるとき、3つのA(または2つのZ)は同一であってもよいし、または異なってもよい。mが3〜6であるときについても同様である。Rc、Rd、Re、およびYの基についても同様である。
【0022】
[2] 式(1)または式(2)において、Raが水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、または炭素数2〜21のアルケニルであり;Rdが水素、ハロゲンまたはメチルであり;Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Yが単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rは1〜20の整数であり;Zが−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)n−、−O(CH2)n−、−(CH2)nO−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−OCF2−、または−CF2O−であり、C*は不斉炭素であり、Reは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキルであり、nは1〜20の整数であり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−であり;mが1〜3の整数である[1]項に記載の化合物。
【0023】
[3] 式(1)または式(2)において、Raが−CN、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;Rdが水素、フッ素またはメチルであり;Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはナフタレン−2,6−ジイルであり;Yが単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rは1〜20の整数であり;Zが−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−C≡C−、−COO−、または−OCO−であり、C*は不斉炭素であり、Reは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキルであり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−であり;mが1〜3の整数である[1]項に記載の化合物。
【0024】
[4] Yが単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rが1〜10の整数である[3]項に記載の化合物。
[5] [1]項に記載の式(1)または式(2)において、Zの少なくとも1つが−C*HRe−CH2−または−CH2−C*HRe−である[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の化合物。
【0025】
[6] [1]項に記載の式(1)または式(2)において、mが1である[5]項に記載の化合物。
[7] [1]項に記載の式(1)または式(2)において、mが2である[5]項に記載の化合物。
[8] [1]項に記載の式(1)または式(2)において、mが3である[5]項に記載の化合物。
【0026】
[9] 光学活性化合物が[1]項に記載の式(1)で表される化合物である[1]〜[8]項のいずれか1項に記載の化合物。
[10] 光学活性化合物が[1]項に記載の式(2)で表される化合物である[1]〜[8]項のいずれか1項に記載の化合物。
【0027】
[11] [1]項に記載の式(1)または式(2)で表される光学活性化合物が、下記の式(a)〜(f)または式(g)〜(l)で表されるいずれか1つの化合物。
Ra−Y−A−Z−A−Y−Rb (a)
Ra−Y−(A−Z)2−A−Y−Rb (b)
Ra−Y−(A−Z)3−A−Y−Rb (c)
Ra−Y−(A−Z)4−A−Y−Rb (d)
Ra−Y−(A−Z)5−A−Y−Rb (e)
Ra−Y−(A−Z)6−A−Y−Rb (f)
Rc−Y−A−Z−A−Y−Rc (g)
Rc−Y−(A−Z)2−A−Y−Rc (h)
Rc−Y−(A−Z)3−A−Y−Rc (i)
Rc−Y−(A−Z)4−A−Y−Rc (j)
Rc−Y−(A−Z)5−A−Y−Rc (k)
Rc−Y−(A−Z)6−A−Y−Rc (l)
式中、Raは水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜19のアルコキシ、または炭素数2〜21のアルケニルであり;Rbは基(3−1)、基(3−2)、基(3−3)、基(3−4)、基(3−5)、または基(3−6)であり;Rcは基(3−1)、基(3−2)、基(3−4)、基(3−5)、基(3−6)、または基(3−7)であり;Rdは水素、ハロゲンまたはメチルであり;Aは1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、9−メチルフルオレン−2,7−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;Yは単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rは1〜20の整数であり;
ZはC*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−OCH2−、−O(CH2)3−、−CH2O−、−(CH2)3O−、−CH=CH−、−C≡C−、−COO−、−OCO−、−OCF2−、または−CF2O−であり、C*は不斉炭素であり、Reは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキルであり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−である。
【0028】
[12] 式(a)〜(l)において、Raが−CN、炭素数1〜20のアルキルまたは炭素数1〜19のアルコキシであり;Rdが水素、フッ素またはメチルであり;Aが1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはナフタレン−2,6−ジイルであり;Yが単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rは1〜20の整数であり;Zが−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、−CO−C*HRe−、単結合、−(CH2)2−、−(CH2)4−、−C≡C−、−COO−、または−OCO−であり、C*は不斉炭素であり、Reは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜4のアルキルであり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−である[11]項に記載の化合物。
【0029】
[13] Yが単結合、−(CH2)r−、−O(CH2)r−、または−(CH2)rO−であり、rが1〜10の整数である[12]項に記載の化合物。
[14] [1]項に記載の式(a)〜(l)において、Zの少なくとも1つが−C*HRe−CH2−または−CH2−C*HRe−である[11]〜[13]項のいずれか1項に記載の化合物。
【0030】
[15] 光学活性化合物が[11]項に記載の式(a)〜(f)で表されるいずれか1つの化合物である[11]〜[14]項のいずれか1項に記載の化合物。
[16] 光学活性化合物が[11]項に記載の式(g)〜(l)で表されるいずれか1つの化合物である[11]〜[14]項のいずれか1項に記載の化合物。
【0031】
[17] [1]項に記載の少なくとも1つの重合性化合物を含有する液晶組成物。
[18] 少なくとも2つの重合性化合物を含有し、少なくとも1つの重合性化合物が[1]項に記載の化合物である液晶組成物。
[19] 少なくとも2つの重合性化合物が[1]項に記載の化合物である、[18]項に記載の液晶組成物。
[20] 少なくとも1つの重合性化合物が[1]項に記載の化合物であり、他の少なくとも1つの重合性化合物が[1]項に記載の化合物とは異なる、[18]項に記載の液晶組成物。
[21] [1]項に記載の少なくとも1つの重合性化合物と、少なくとも1つの液晶性を有する非重合性化合物とを含有する液晶組成物。
【0032】
[22] [1]項に記載の式(1)または式(2)において、Rbが基(6−1)、基(6−2)、基(6−3)、基(6−4)、基(6−5)、または基(6−6)であり、Rcが基(6−1)、基(6−2)、基(6−4)、基(6−5)、基(6−6)、または基(6−7)である式(1)または式(2)で表される、少なくとも1つの構成単位を有し、[1]〜[16]項のいずれか1項に記載の化合物から得られる重合体。
[23] [2]〜[16]項のいずれか1項に記載の化合物から得られる[22]項に記載の重合体。
【0033】
[24] [1]〜[16]項のいずれか1項に記載の化合物の1つを単独重合させて得られる[22]項に記載の重合体。
[25] [17]〜[20]項のいずれか1項に記載の液晶組成物から得られる[22]項に記載の重合体。
[26] [21]項に記載の液晶組成物から得られる[22]項に記載の重合体を含有する重合体組成物。
【0034】
[27] [22]〜[25]項のいずれか1項に記載の重合体または[26]項に記載の重合体組成物からなるフィルム。
[28] [22]〜[25]項のいずれか1項に記載の重合体または[26]項に記載の重合体組成物からなる光学異方性を有する成形体。
[29] [22]〜[25]項のいずれか1項に記載の重合体または[26]項に記載の重合体組成物を含有する液晶表示素子。
[30] [28]項記載の光学異方性を有する成形体を含有する液晶表示素子。
【0035】
【発明の実施の形態】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶性化合物」の用語は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称として用いる。重合性の用語はこの技術分野において光、熱、触媒などの方法により重合し、重合体を与える能力を意味する。液晶性化合物と液晶組成物の用語は、それぞれ化合物と組成物とで表記することがある。式(1)、式(2)で表される化合物を、それぞれ化合物(1)、化合物(2)と表記することがある。化合物(1)、化合物(2)から得られる重合体を、それぞれ重合体(1)、重合体(2)と表記することがある。アクリレートとメタアクリレートとを(メタ)アクリレートと表記することがある。
【0036】
化合物(1)、化合物(2)、重合体(1)、および重合体(2)は次の特徴を有する。
1.化合物(1)および化合物(2)は二環〜七環を有し、1−アルキルエチレン結合または1−オキソ−2−アルキルエチレン結合を有する光学活性な化合物である。
2.化合物(1)および化合物(2)は、液晶組成物に添加させることにより大きな螺旋誘起力を発現させる。
3.化合物(1)および化合物(2)は、他の化合物との相溶性がよい。
4.化合物(1)を構成する末端基、環または結合基を適切に選ぶことによって、大きい誘電率異方性、小さい誘電率異方性、大きい光学異方性、小さい光学異方性、小さい粘度などの物性値を調整することができる。
5.化合物(1)および化合物(2)の構造を適切に選択することで、得られる重合体(1)および重合体(2)は透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れる。これらの特性はJISなどに定義された測定方法に従って求めることができる。
【0037】
化合物(1)および化合物(2)の物性は次のとおりである。
二環または三環を有する化合物(1)および化合物(2)は小さな粘度を有する。二環を有する化合物(1)および化合物(2)は低い下限温度を有する。三環または四環を有する化合物(1)および化合物(2)は高い透明点(液晶相−等方性液体の相転移温度)を有する。五〜七環を有する化合物(1)および化合物(2)はさらに高い透明点を有する。化合物(1)および化合物(2)は三環以上を有する化合物であっても、溶媒に溶解したとき、濡れ性が良好なので、組成物の調製、基板上への塗布およびより薄い膜の調製において有利である。三環以上を有する化合物(1)および化合物(2)は非常に広い温度範囲に液晶相を有する。これらの化合物は、透明点がより高いので、二環を有する化合物(1)または化合物(2)と混合することで、高い透明点と液晶相の低い下限温度とを有する液晶組成物を調製できる。
【0038】
少なくとも2つのシクロヘキサン環を有する化合物(1)および化合物(2)は、高い透明点、小さな光学異方性および小さな粘度を有する。少なくとも1つのベンゼン環を有する化合物(1)および化合物(2)は、比較的大きな光学異方性および大きな液晶配向秩序度(orientational order parameter)を有する。少なくとも2つのベンゼン環を有する化合物(1)および化合物(2)は、特に大きな光学異方性および液晶相の広い温度範囲を有する。
【0039】
1,4−フェニレンに結合したRaがフッ素、−CN、−CF3、−OCF3、または−OCF2Hであり、Raの一方のオルト位、または両方のオルト位がフッ素である化合物(1)は、誘電率異方性が特に大きい。Raがアルキルまたはアルコキシであり、Aの少なくとも1つが2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである化合物(1)は、誘電率異方性が負である。
【0040】
Rdが水素、ハロゲンまたは炭素数1〜5のアルキルである化合物(1)および化合物(2)は、重合性が大きいので好適である。Rdが水素またはフッ素である化合物(1)および化合物(2)は、重合性が最も大きい。Rdが炭素数1〜5のアルキルである化合物(1)および化合物(2)は、炭素数が増えるに従い重合性が低下する。従って、Rdがアルキルのときはメチルが好ましい。
【0041】
化合物(1)および化合物(2)において、Zの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−である。これら不斉炭素を有する基以外のZがすべて単結合である化合物(1)および化合物(2)は、特に高い透明点を有する。Zが二重結合を有する化合物(1)および化合物(2)は、液晶相の広い温度範囲を有する。Zが三重結合を有する化合物(1)および化合物(2)は、特に大きな光学異方性を有する。
【0042】
不斉炭素を有する−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、および−CO−C*HRe−は、いずれも好適な特性を化合物(1)および化合物(2)に付与する。より大きな螺旋誘起力を必要とするときには、−C*HRe−CO−および−CO−C*HRe−が好ましい。より高い液晶性を必要とするときには、−C*HRe−CH2−および−CH2−C*HRe−が好ましい。螺旋誘起力や液晶性といった特徴は、不斉炭素を有する基以外にも大きく依存する。従って、特性の最適化を計るためには化合物(1)および化合物(2)において、−C*HRe−CH2−、−C*HRe−CO−、−CH2−C*HRe−、または−CO−C*HRe−とそれ以外の基との関連を十分考慮する必要がある。
【0043】
これらのことから末端基、環または結合基を適切に選択することにより、目的の特性を有する化合物(1)および化合物(2)を得ることができる。化合物(1)および化合物(2)は2H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
【0044】
化合物(1)および化合物(2)の好ましい例は、化合物(1−1)〜(2−32)である。これらの化合物において、Ra、Rb、Rc、Y、およびZの意味は、本発明の態様に記載した式(1)および式(2)のそれらと同一である。Fがベンゼン環に結合した1,4−フェニレンは、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンを表す。(F)がベンゼン環に結合した1,4−フェニレンは、任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを表す。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
次に、化合物(1)および化合物(2)の製造方法について説明する。
化合物(1)および化合物(2)は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより製造できる。
【0054】
光学活性な1,2−アルキレンおよび1−オキシ−1,2−アルキレンは下記の方法で生成できる。光学活性な2−ヒドロキシカルボン酸エステル(7)にp−トルエンスルホニルクロリドを塩基存在下、作用させることによりトシレート(8)を得る。無水塩化アルミニウムなどのルイス酸存在下、トシレート(8)に化合物(9)を作用させることにより光学活性な化合物(10)を得る。これを公知の加水分解反応によって化合物(11)を得る。化合物(11)に塩化チオニルなどを作用させ化合物(12)とし、無水塩化アルミニウムなどのルイス酸存在下、化合物(13)を作用させることにより光学活性な1−オキシ−1,2−アルキレン(1−2)を生成する。光学活性な1−オキシ−1,2−アルキレン(1−2)を無水塩化アルミなどのルイス酸存在下、水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤を作用させることにより光学活性な1,2−アルキレン(1−1)を生成する。
【0055】
Rcを有する光学活性な1,2−アルキレン(2−1)および光学活性な1−オキシ−1,2−アルキレン(2−2)は、RaおよびRbを有する光学活性な1,2−アルキレン(1−1)および光学活性な1−オキシ−1,2−アルキレン(1−2)と同様な方法によって製造できる。
【0056】
【0057】
【0058】
結合基Zを生成する方法の一例に関して、最初にスキームを示し、次に項(I)〜項(XI)でスキームを説明する。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は少なくとも1つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)〜(1L)は化合物(1)および化合物(2)に相当する。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
(I)単結合の生成
ホウ酸誘導体(14)と公知の方法で合成される化合物(15)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(16)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(15)を反応させることによっても合成される。ホウ酸誘導体(14)は化合物(16)をグリニヤール試薬またはリチウム試薬に誘導し、トリアルキルホウ酸エステルを作用することで製造できる。
【0065】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(16)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(17)を得る。カルボン酸(17)と、公知の方法で合成されるフェノールもしくはアルコール(18)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成できる。
【0066】
(III)−CF2O−と−OCF2−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(19)を得る。化合物(19)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF2O−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(19)を(ジエチルアミノ)サルファ トリフルオリドでフッ素化しても合成される。William H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF2−を有する化合物も合成できる。
【0067】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(15)をn−ブチルリチウムで処理したのち、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミドと反応させてアルデヒド(20)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(21)をカリウムt−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(20)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0068】
(V)−(CH2)2−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0069】
(VI)−(CH2)4−の生成
ホスホニウム塩(21)の代わりにホスホニウム塩(22)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH2)2−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0070】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(16)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(23)を得る。ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(23)を化合物(15)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0071】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(16)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(24)を得る。化合物(24)をn−ブチルリチウムで処理したあと、化合物(15)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0072】
(IX)−CH2O−または−OCH2−の生成
化合物(20)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(25)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(26)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(26)を化合物(18)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0073】
(X)−(CH2)3O−または−O(CH2)3−の生成
化合物(20)の代わりに化合物(27)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0074】
(XI)−(CF2)2−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(30)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF2)2−を有する化合物(1L)を得る。
【0075】
次に液晶組成物について説明する。
この組成物は、化合物(1)または化合物(2)を少なくとも1つ含有する。
【0076】
化合物(1)および化合物(2)は、光学活性である。化合物(1)または化合物(2)を含有する組成物は螺旋構造を有するので、これを重合することで螺旋構造を有する重合体からなる位相差板を製造できる。螺旋のピッチが光の波長の1/2程度〜同程度であれば、その波長を有する光をブラッグの法則に従い、重合体は選択的に反射することができる。これは、例えば、円偏光分離機能素子として使用できる。螺旋の向きは光学活性化合物の立体配置に依存する。化合物(1)または化合物(2)の立体配置を適宜選択することで目的とする方向に螺旋を誘起できる。
【0077】
この組成物の第1は、化合物(1)または化合物(2)を1つ含有する組成物である。以下の説明では、これを「組成物A」と表記する。化合物(1)または化合物(2)の1つであっても組成物Aとして取り扱う。
【0078】
この組成物の第2は、化合物(1)または化合物(2)を少なくとも2つ含有する組成物である。以下の説明では、これを「組成物B」と表記する。組成物Bは化合物(1)の少なくとも1つと、化合物(2)の少なくとも1つとを含有してもよい。
【0079】
この組成物の第3は、化合物(1)または化合物(2)の少なくとも1つと、化合物(1)および化合物(2)とは異なる重合性化合物の少なくとも1つとを含有する組成物である。以下の説明では、これを「組成物C」と表記する。化合物(1)および化合物(2)とは異なる重合性化合物を、「その他の重合性化合物」と表記する。その他の重合性化合物の例は、特開平8−3111号公報などに記載されている。
【0080】
その他の重合性化合物は重合性があればいずれでもよい。この重合性化合物は、皮膜形成性、機械的強度などを低下させなければ液晶性であっても、液晶性でなくてもよい。好ましい重合性化合物の例は、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、およびビニルエーテル化合物である。
【0081】
その他の重合性化合物として、化合物(1)および化合物(2)とは異なる重合性の光学活性化合物を用いてもよい。重合性の光学活性化合物の好適な例は、化合物(OP−14)〜(OP−21)である。
【0082】
【0083】
組成物Cに用いることのできる好ましい非液晶性の重合性化合物は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン、およびヘキサフルオロプロペンである。
【0084】
重合体の被膜形成能をより高めるために、非液晶性の重合性化合物として多官能アクリレートを組成物Cに用いることもできる。好ましい多官能アクリレートは、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(大阪有機化学株式会社製、商品名:ビスコート700)、およびポリエチレングリコールジアクリレートである。
【0085】
液晶相の温度範囲を制御する目的で、液晶性の重合性化合物を組成物Cに添加してもよい。液晶性を有する好ましい重合性化合物を示す。
【0086】
上式において、Wは水素、フッ素、塩素、または−CH3であり、yは1〜20の整数である。
【0087】
この組成物の第4は、化合物(1)または化合物(2)の少なくとも1つと、液晶性を有する非重合性化合物の少なくとも1つとを含有する組成物である。以下の説明では、これを「組成物D」と表記する。液晶性を有する非重合性化合物の例は、富士通九州エンジニアリング社が販売する液晶化合物データベース(登録商標:LiqCryst)などに記載されている。
【0088】
液晶性を有する光学活性な非重合性化合物の好ましい例は、化合物(OP−1)〜(OP−13)である。
【0089】
【0090】
組成物A〜Dの各成分の含有量は、組成物がその液晶性を損なわない程度が好ましい。これらの組成物の成分を構成する原子がその同位体を天然存在比より多く含んでいても、同様の特性を有するので好ましい。これらの組成物には、重合反応を行うに際し、必要に応じて溶媒や開始剤、触媒などを加えることができる。組成物は、各成分から公知の方法によって調製される。例えば、成分である化合物を混合し、必要に応じて加熱によって互いに溶解させる。
【0091】
好ましい溶媒の例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合溶媒である。
【0092】
光によるラジカル重合の好ましい開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:ダロキュアー1173;以下、ダロキュアーは商品名を示す。)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュアー184;以下、イルガキュアーは商品名を示す。)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、および2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチルとの混合物である。
【0093】
熱によるラジカル重合の好ましい開始剤は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2´−アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどである。
【0094】
アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法、またはリビング重合法の好ましい触媒は、n−C4H9Li、t−C4H9Li−R3Alなどのアルカリ金属アルキル、アルミニウム化合物、遷移金属化合物などである。
【0095】
次に、重合体について説明する。
化合物(1)および化合物(2)は重合性基を有する。化合物(1)、化合物(2)を重合することで、それぞれ重合体(1)、重合体(2)を製造できる。重合体(1)および重合体(2)は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合などの反応によって得られる。組成物Aを重合させると、単独重合体が得られる。この単独重合体は1つの構成単位からなる。組成物Bまたは組成物Cを重合させると、共重合体が得られる。この共重合体は少なくとも2つの構成単位を有する。共重合体における構成単位の配列は、ランダム、ブロック、交互などのいずれであってもよい。組成物Dを重合させると、重合体および液晶性を有する非重合性化合物を含有する重合体組成物が得られる。この重合体は少なくとも1つの構成単位を有する。
【0096】
基(3−1)を有する化合物(1)、基(3−5)を有する化合物(1)および基(3−6)を有する化合物(1)は、高いカチオン重合性を有する。重合反応を阻害する物質(例えば、酸素)の存在下でも重合できる。基(3−5)を有する重合体(1)および基(3−6)を有する重合体(1)は、各種の基板材料との密着性に優れる。硬化収縮率が小さいので、各種の光学機能薄膜に好適に用いることができる。
【0097】
基(3−2)を有する化合物(1)および基(3−4)を有する化合物(1)は、高いラジカル重合性を有する。これらの化合物(1)は、紫外線によるラジカル重合性が特に高い。基(3−2)または基(3−4)を有する重合体(1)を光重合によって製造したときは、機械的強度が大きく、表面硬度が高い。
【0098】
基(3−3)を有する化合物(1)は、高いラジカル重合性を有する。アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤の存在下、重合が可能である。基(3−3)を有する重合体(1)は、屈折率が低く、反射防止膜などに活用できる。また、表面エネルギーが小さく、表面張力の最適化などの表面改質に活用できる。
【0099】
化合物(1)は重合性基を1つ有する。化合物(2)は重合性基を2つ有する。本質的に化合物(2)は、対応する重合性基を有する化合物(1)と同様な基本的特徴を有する。加えて、化合物(2)は化合物(1)に比べ、より高い重合性を有する。化合物(2)は重合速度が大きく短時間で重合が完了する。化合物(2)は重合度の大きな重合体を与える。得られた重合体(2)は、耐熱性が高く、透水度、吸水度およびガス透過度が低く、機械的強度(特に、ヤング率、引張強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度など)、硬度、化学的安定性(耐薬品性)などに優れる。
【0100】
2つの基(3−7)を有する化合物(2)は、基(3−7)を1つ有する化合物(特開2002−12580号公報で開示された化合物)に比べて次の特徴を有する。この化合物(2)は、より高い重合性、より大きな重合速度を有する。従って、大きな重合度の重合体が得られる。基(3−7)を有する重合体(2)は、高い透明性を有し、耐熱性が大きく、機械的強度および耐溶剤性に優れる。
【0101】
組成物Bまたは組成物Cを重合させると、共重合体が得られる。組成物Bまたは組成物Cの組成を適宜選択することによって、目的とする特性を有する重合体(1)または重合体(2)を製造することができる。例えば、基(3−4)を有する化合物(2)および基(3−7)を有する化合物(2)を含有する組成物Bを重合させると、機械的強度、表面硬度、耐熱性、および透明性に優れた重合体(2)が得られる。これは、基(3−4)を有する化合物(2)、基(3−7)を有する化合物(2)をそれぞれ単独重合して得られる各重合体(2)の特性を併せ持つ共重合体が得られることを示す。
【0102】
化合物(1)または化合物(2)を使用して熱可塑性樹脂を製造できる。熱可塑性樹脂の好ましい重量平均分子量は500〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000、さらに好ましくは2,000〜10,000である。熱可塑性樹脂を製造するとき、重合度を大きくしない、または重量平均分子量を前述の範囲に調整する必要がある。重合性基を1つ有する化合物(1)が有利である。
【0103】
本願の化合物を使用して熱硬化性樹脂を製造できる。熱硬化性を有する重合体(1)および(2)は、三次元の架橋構造を有し、不溶不融となり、分子量の測定が不可能である。熱硬化性樹脂を製造するとき、重合速度の大きな重合性基を2つ有する化合物(2)が有利である。
【0104】
重合体(1)および重合体(2)を製造するには、用途によって重合法を選択することが好ましい。例えば、位相差フィルムや偏光素子などの光学異方性膜を製造するには、液晶状態を保持したまま重合させたいので、紫外線、電子線などのエネルギーを照射する方法が好ましい。重合体(1)および重合体(2)が液晶性を有するときには、重合体(1)および重合体(2)を薄膜に成形しても同様な用途に活用できる。
【0105】
熱重合法や光重合法によって得られた重合体(1)および重合体(2)は、各種の保護膜、液晶配向膜、視野角補償膜などに利用できる。偏光させた紫外線は重合性化合物の分子配向を偏光の方向に応じて重合させるので、ラビングを必要としない配向膜などへの応用も可能である。配向膜はスピンコート法、ラングミュアー・ブロージェット法、印刷法などを用いて形成できる。得られる配向膜の膜厚は、液晶の配向制御の点で1〜100nmが好ましい。
【0106】
化合物(1)および化合物(2)は光による重合性が極めて高いので、開始剤を添加しなくても光重合により重合体(1)および重合体(2)を製造できる。
反応時間を短縮するために開始剤を使用してもよい。
【0107】
組成物は熱重合により重合体(1)および重合体(2)を与える。熱重合は一般的に0〜150℃の反応温度で、1〜100時間で行う。通常、開始剤を含有する組成物を用いる。
【0108】
重合反応には溶媒を含有する組成物を用いてもよい。配向膜、反射防止膜、視野角補償膜などを光重合によって製造するときには、溶媒を含有する組成物を基板上にスピンコート法で塗布し、溶媒を除去したのち光を照射して重合させてもよい。
【0109】
重合体(1)および重合体(2)は、溶媒に溶解してフィルムなどの各種成形品に成形することができる。好ましい溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ビス(メトキシエチル)エーテル、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、PEGMEA、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびヘキサフルオロ−2−プロパノールである。しかし、溶媒はこれらに制限されることはなく、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、塩化メチレンなど一般的な有機溶媒との混合物であってもよい。
【0110】
光学異方性を有する成形体は、例えば以下の方法によって得られる。重合体(1)または重合体(2)を有機溶媒に溶解した溶液を、予め配向処理した透明基板に塗布する。これを重合体(1)または重合体(2)のガラス転移点以上の温度に加熱する。次いで放冷することにより、均一に配向した重合体の薄膜を形成させて光学異方性を有する成形体を製造する。透明基板は、ガラス板または高分子フィルムである。高分子フィルムの例は、トリアセチルセルロース、JSR(株)製の「アートン」(商品名)、日本ゼオン(株)製の「ゼオネックス」(商品名)および「ゼオノア」(商品名)、三井化学(株)製の「アペル」(商品名)などである。均一な膜厚を得る好ましい塗布方法は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコード法、デップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法などである。
【0111】
光学異方性を有する成形体の厚さは目的とする位相差値により異なる。この位相差値は光学異方性を有する成形体の複屈折率により異なる。好ましい位相差値は0.05〜50μmの範囲であり、より好ましい位相差値は0.1〜20μmの範囲である。そして、さらに好ましい位相差値は0.1〜10μmの範囲である。光学異方性を有する成形体のヘーズ値は、1.5%以下であり、より好ましくは1.0%以下である。ヘーズ値と相関する透過率は80%以上であり、より好ましくは85%以上である。可視光領域で透過率がこれらの割合を満たすことが好ましい。ヘーズ値の範囲1.5%以下は、偏光性能に問題を生じさせないために好ましい条件である。透過率の範囲80%以上は、この光学異方性を有する成形体を液晶表示素子に用いるとき、明るさを維持するために好ましい条件である。
【0112】
重合体(1)および重合体(2)は、光学異方性を有するので、単独で位相差フィルムに使用できる。この重合体を他の位相差フィルムと組み合わせることにより、偏光膜(polarizing film)、円偏光膜(circular polarizing film)、楕円偏光膜(elliptical polarizing film)、反射防止膜(anti-reflectiong film)、色補償板(color compensator)、視野角補償板(viewing angle compensator)などに利用できる。
【0113】
液晶性を有する非重合性化合物が強誘電性液晶または反強誘電性液晶である組成物Dを重合させると、強誘電性液晶または反強誘電性液晶を含有する重合体組成物が得られる。強誘電性液晶または反強誘電性液晶は、1つの液晶性化合物であっても、また液晶組成物であってもよい。この重合体組成物は、高分子ネットワークによって安定化された強誘電性液晶表示素子または反強誘電性液晶表示素子を与える。表示素子自体の具体的な構築方法は文献などで公知である(J. of Photopoly. Sci. Technol., 2000, 13(2), 295-300)。
【0114】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されない。化合物の構造は核磁気共鳴スペクトルなどで確認した。相転移温度の単位は℃であり、Cは結晶を、Sはスメクチック相を、Nはネマチック相を、Chはコレステリック相を、Iは等方性液体相を、かっこ内はモノトロピックの液晶相を表す。例えば、「C 100.0 Ch」の表示は、結晶からコレステリック相への相転移温度が100.0℃であることを表す。相転移温度はDSCおよび偏光顕微鏡を用いて観察した。
【0115】
旋光度の測定は、ナトリウムのD線を光源に用いた旋光計を用い、セル長10cmのセルを用いて測定した。測定濃度(c)は、溶液100mL中の溶質のg数である。容量の単位であるリットルは記号Lで表記する。
【0116】
重量平均分子量と数平均分子量の測定には、(株)島津製作所製の島津LC−9A型ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)および昭和電工(株)製のカラムShodex GF−7M HQ(展開溶媒はDMFまたはTHF)を用いた。
【0117】
鉛筆硬度はJIS規格「JIS−K−5400 8.4 鉛筆引掻試験」の方法に従って求めた。
【0118】
実施例1
(R)−4−(2−フェニルプロピル)フェニル 4−(1−オキソ−2−プロペニル)ベンゾエート(化合物(2−a−3−10))の製造
下記の経路により化合物(2−a−3−10)を製造した。
【0119】
第1段 (S)−メチル 2−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)プロパネート(b)の製造
トルエン80mLに溶解させた(S)−メチル 2−ヒドロキシプロパネート(a)(21.26g)とトリエチルアミン24.3gの混合物を氷浴で冷却した。同温にて4−メチルフェニルスルホニルクロライド38.2gを加え室温で一晩撹拌した。析出した塩を濾過にて取り除き、有機層を1N塩酸、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し52.7gの目的物(b)を得た。
【0120】
第2段 (S)−メチル 2−フェニルプロパネート(c)の製造
氷浴にて冷却しながらベンゼン90mLに無水塩化アルミニウム67.8gを加え、同温にて撹拌しながらベンゼン45mLに溶解させた化合物(b)(52.7g)をゆっくりと滴下し、反応混合物を室温まで昇温した後、終夜撹拌した。氷を加えた2N塩酸140mLに反応混合物を注ぎ有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧下留去し、24.9gの目的物(c)を得た。
[α]D=89.4゜(c=1.19,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.27(m,5H),3.69(q,1H),3.59(s,3H),1.47(d,3H).
【0121】
第3段 (S)−2−フェニルプロパン酸(d)の製造
化合物(c)(24.9g)を酢酸60mLに溶解させ、そこに濃塩酸30mLを加え6時間加熱還流させた。蒸留水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、有機層を合わせ、水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、23.2gの目的物(d)を得た。
[α]D=62.2゜(c=1.11,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.28(m,5H),3.69(q,1H),1.47(d,3H).
【0122】
第4段 (S)−2−フェニル−1−(4−メトキシフェニル)−1−オキソプロパン(e)の製造
化合物(d)(23.2g)を塩化チオニル197mLに溶解させ、2時間加熱還流した。塩化チオニルを減圧下留去した。これを二硫化炭素460mLに溶解させたアニソール25.0gに加え、氷浴にて冷却しながら窒素雰囲気下、無水塩化アルミニウム24.7gを加え、室温にて2時間撹拌した。この反応混合物を氷水に注ぎ、水槽をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、25.2gの目的物(e)を得た。
[α]D=62.9゜(c=1.03,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.93(d,2H),7.28−7.22(m,4H),7.15−7.12(m,1H),6.78(d,2H),4.62(q,1H),3.68(s,3H),1.50(d,3H).
【0123】
第5段 (R)−2−フェニル−1−(4−メトキシフェニル)プロパン(f)の製造
氷浴で冷却しながらジエチルエーテル100mLに懸濁させた水素化アルミニウムリチウム4.38gへ、ジエチルエーテル70mLに溶解させた塩化アルミニウム15.4gを加え、室温にて15分撹拌した。再度氷浴で冷却し、ジエチルエーテル150mLに溶解させた化合物(e)(25.2g)をゆっくりと滴下し、その後30分間加熱還流させた。塩酸を加え反応を停止し、水層をジエチルエーテルで抽出した。有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、22.4gの目的物(f)を得た。
[α]D=61.7゜(c=1.16,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.27−7.24(m,2H),7.17−7.15(m,3H),6.97(d,2H),6.76(d,2H),3.73(s,3H),2.93(m,1H),2.87(dd,1H),2.70(dd,1H),1.22(d,3H).
【0124】
第6段 (R)−2−フェニル−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(g)の製造
ジクロロメタン130mLに溶解させた化合物(f)(22.4g)を−78℃に冷却し、そこへジクロロメタン183mLに溶解させた三臭化ホウ素14mLを滴下し、室温で3時間撹拌した。氷水に反応混合物を注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、17.4gの目的物(g)を得た。
[α]D=−65.2゜(c=1.03,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.27−7.24(m,2H),7.18−7.14(m,3H),6.90(d,2H),6.67(d,2H),2.95−2.90(m,1H),2.84(dd,1H),2.68(dd,1H),1.21(d,3H).
【0125】
第7段 (R)−4−(2−フェニルプロピル)フェニル 4−(1−オキソ−2−プロペニル)ベンゾエート(2−a−3−10)の製造
化合物(g)(2.0g)、化合物(h)(1.99g)をTHF55mLに溶解させ、そこに4−ジメチルアミノピリジン1.38gを加え、1時間室温にて撹拌した。0℃に冷却し、そこに1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(3.25g)を加えゆっくりと室温まで昇温させながら一晩撹拌した。水を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせ、2N−HCl水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする化合物(2−a−3−10)2.88gを無色の液体として得た。
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):8.12(d,2H),7.27−7.24(m,2H),7.20(d,2H),7.18−7.14(m,3H),7.11−7.05(dd,4H),6.95(d,2H),6.47(dd,1H),5.96(dd,1H),2.95−2.90(m,1H),2.84(dd,1H),2.68(dd,1H),1.21(d,3H).
【0126】
実施例2
(R)−4−(2−フェニルプロピル)フェニル 4−(4−ビニルオキシブチルオキシ)ベンゾエート(化合物(2−a−1−2))の製造。
下記の経路で化合物(2−a−1−2)を製造した。
【0127】
第1段 化合物(2−a−1−2)の製造
前述の化合物(g)(2.0g)、化合物(i)(2.67g)をTHF55mLに溶解させ、そこに4−ジメチルアミノピリジン1.38gを加え、1時間室温にて撹拌した。0℃に冷却し、そこにEDC(3.25g)を加えゆっくりと室温まで昇温させながら一晩撹拌した。水を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせ、2N−HCl水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする化合物(2−a−1−2)3.35gを無色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):8.17(d,2H),7.29−7.27(m,2H),7.20−7.17(m,3H),7.11−7.05(dd,4H),6.95(d,2H),6.49(dd,1H),4.20(dd,1H),4.09(dt,2H),4.01(dd,1H),3.77(t,2H),2.95−2.90(m,1H),2.84(dd,1H),2.68(dd,1H),1.98−1.85(m,4H),1.21(d,3H).
【0128】
実施例3
(R)−4−(2−フェニルプロピル)フェニル 4−マレイミジルベンゾエート(化合物(2−a−2−5))の製造。
下記の経路で化合物(2−a−2−5)を製造した。
【0129】
第1段 化合物(2−a−2−5)の製造
前述の化合物(g)(2.0g)、化合物(j)(2.45g)をTHF55mLに溶解させ、そこに4−ジメチルアミノピリジン1.38gを加え、1時間室温にて撹拌した。0℃に冷却し、そこにEDC(3.25g)を加えゆっくりと室温まで昇温させながら一晩撹拌した。水を加え、塩化メチレンで抽出し、有機層を合わせ、2N−HCl水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする化合物(2−a−2−5)3.20gを無色結晶として得た。
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):8.13(d,2H),7.47(d,2H),7.29−7.27(m,2H),7.20−7.17(m,3H),7.11−7.05(dd,4H),6.88(s,2H),2.95−2.90(m,1H),2.84(dd,1H),2.68(dd,1H),1.21(d,3H).
化合物(2−a−2−5)をZLI−1132(商品名;メルク社製)に1重量%の濃度で添加すると、25℃において11.4μmのピッチを発現した。なお、ピッチの測定は、Canoのくさび法によって行った。
【0130】
実施例4
(R)−1−(4−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルカルボキシ)フェニル)−2−(5−(4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)フェニルカルボキシ)ナフチル)プロパン(化合物(3−b−7−11))の製造
下記の経路により化合物(3−b−7−11)を製造した。
【0131】
第1段 (S)−1−(4−メトキシフェニル)−1−オキソ−2−(5−メトキシナフチル)プロパン(c)の製造
化合物(k)15.0gを塩化チオニル9.30gに溶解させ3時間加熱還流させた。塩化チオニルを減圧留去後THF60mL、少量のアセチルアセトネート鉄(III)とTHF110mL中で調製した化合物(m)14.7gのグリニャール試薬を0℃ 窒素雰囲気下、室温にて加えて一晩攪拌した。反応終了後ジエチルエーテルにて抽出を行った。有機層は1N塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製。15.2gの目的物(n)を得た。
[α]D=28.1゜(c=1.37,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.96(d,2H),7.66(d,1H),7.65(d,1H),7.63(brs,1H),7.37(dd,1H),7.10(dd,1H),7.05(d,1H),6.80(d,2H),4.74(q,1H),3.85(s,3H),3.74(s,3H),1.57(d,3H).
【0132】
第2段 (R)−1−(4−メトキシフェニル)−2−(5−メトキシナフチル)プロパン(p)の製造
氷浴にて冷却しながらジエチルエーテル30mLに無水塩化アルミニウム6.94gを加え、撹拌しながらジエチルエーテル60mLに溶解させた化合物(c)15.2gをゆっくり滴下、加熱還流(30分)した。氷を加えた6N塩酸500mLに反応混合物を加え、ジエチルエーテルにて抽出した。有機層は飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒減圧留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。12.0gの目的物(p)を得た。
[α]D=−52.3゜(c=0.88,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.67(d,1H),7.53(d,1H),7.51(brs,1H),7.31(dd,1H),7.11(dd,1H),7.10(d,1H),6.99(d,2H),6.75(d,2H),3.91(s,3H),3.76(s,3H),3.08(dq,1H),2.96(dd,1H),2.78(dd,1H),1.31(d,3H).
【0133】
第3段 (R)−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(5−ヒドロキシナフチル)プロパン(p)の製造
−78℃に冷却した三臭化ホウ素29.4gジクロロメタン溶液110mLに溶解させた化合物(p)12.0gのジクロロメタン150mL溶液を滴下し室温にて3時間攪拌した。氷水に反応混合物を注ぎ、酢酸エチルで抽出、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒減圧下留去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製を行った。5.3gの目的物 (q) を得た。
[α]D=−68.4゜(c=1.04,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):7.34(d,1H),7.57(d,1H),7.48(s,1H),7.27(dd,1H),7.15(d,1H),7.11(dd,1H),6.93(d,2H),6.72(d,2H),3.05(dq,1H),2.93(dd,1H),2.74(dd,1H),1.28(d,3H).
【0134】
第4段 化合物(3−b−7−11)の製造
化合物(q)7.86g、化合物(r)3.12gをTHF30mLに溶解させ、そこに4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)3.28g を加え、1時間室温にて撹拌した。0℃に冷却し、そこに1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を7.73g加えゆっくりと室温まで昇温させながら終夜撹拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出。2N塩酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、目的とする化合物(3−b−7−11)6.48g を得た。
C 109.6 Ch.
[α]D=−51.9゜(c=1.04,CHCl3).
1H−NMR(CDCl3;δ ppm):8.18(d,2H),8.12(d,2H),7.81(d,1H),7.76(d,1H),7.63(d,1H),7.62(brs,1H),7.38(dd,1H),7.31(dd,1H),7.12(d,2H),7.06(d,2H),6.99(d,2H),6.96(d,2H),6.40(m,2H),6.14(dd,1H),6.11(dd,1H),5.82(m,2H),4.19(t,2H),4.18(t,2H),4.06(t,2H),4.04(t,2H),3.18(dq,1H),3.05(dd,1H),2.89(dd,1H),1.90−1.79(m,4H),1.77−1.68(m,4H),1.60−1.42(m,8H),1.36(d,3H).
【0135】
実施例5
実施例1〜4の方法に準じて、化合物(1−a−1−1)〜(5−b−7−1)を製造する。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
実施例6
実施例1で製造した化合物(2−a−3−10)(20重量%)、4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シアノベンゼン(19.2重量%)、4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)シアノベンゼン(28.8重量%)、4−(トランス−4−ヘプチルシクロヘキシル)シアノベンゼン(20.0重量%)、および4’−(トランス−4−ヘプチルシクロヘキシル)シアノビフェニル(12.0重量%)の組成物(100mg)と光重合開始剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製のイルガキュアー184;4mg)とを混合して、重合性の組成物を調製した。配向処理したガラス基板と配向処理をしていないガラス板を張り合わせ、間隔が7μmであるセルを作製した。このセルに組成物を75℃で注入した。この組成物は速やかにセルに注入することができた。この事実は、この組成物の粘度が小さいことを示す。セルを51℃に冷却して偏光顕微鏡で観察したところ、均一なコレステリック相のテキスチャーが認められた。250W超高圧水銀灯を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を55℃で3分間照射した。セルは赤色を呈し、選択反射機能を持つことを確認した。
【0163】
実施例7
実施例2で製造した化合物(2−a−1−2)(10mg)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(0.1mg)およびベンゼン(100μL)をガラスのアンプルに入れた。これを−60℃に冷却して、真空ポンプで十分脱気したのちに封管した。このアンプルを70℃の水浴で24時間加熱した。得られた反応混合物を、メタノール(15mL)から3回再沈殿して重合体(7.1mg)を得た。GPCで測定した重量平均分子量(Mw)は87,000、多分散度(Mw/Mn)は4.02であった。重合体(1.030mg)を純水(1mL)に浸し10日間50℃で放置した。重合体を取り出しよく乾燥し重量を測定したところ1.034mgであった。本重合体の吸水率が小さいことがわかる。
【0164】
以下、組成物の実施例を示す。ここで用いられる化合物は、周知の合成法によって合成される。例えば、化合物(A)、(B)および(I)は、特開平11−148076号公報に記載されている。化合物(C)、(E)、(F)は、POLYMER,1993.Volume34,Number8に記載されている。重合開始剤である化合物(D)は、イルガキュアー907(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製)として市販されている。化合物(G)は、特願2002−115270号明細書に、化合物(H)は、特願2001−378508号明細書に記載されている。
【0165】
実施例8
下記の組成物1を重量比で5倍のテトラクロロエタンに溶解した溶液を、スピンコート法によって、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。70℃に加熱したホットプレート上にて、溶媒除去後、250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を30秒間照射し、組成物1を重合させた。その結果、607〜704nmの波長帯域で選択反射を示す赤色を呈する均一な光学薄膜を得た。
(組成物1)
【0166】
実施例9
下記の組成物2を重量比で5倍のテトラクロロエタンに溶解した溶液を、スピンコート法によって、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。70℃に加熱したホットプレート上にて、溶媒除去後、250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を30秒間照射し、組成物2を重合させた。その結果、598〜699nmの波長帯域で選択反射を示す赤色を呈する均一な光学薄膜を得た。
(組成物2)
【0167】
実施例10
下記の組成物3を重量比で5倍のテトラクロロエタンに溶解した溶液を、スピンコート法によって、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。70℃に加熱したホットプレート上にて、溶媒除去後、室温にて250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を30秒間照射し、組成物3を重合させた。その結果、482〜521nmの波長帯域で選択反射を示す緑色を呈する均一な光学薄膜を得た。
(組成物3)
【0168】
実施例11
下記の組成物4を重量比で5倍のテトラクロロエタンに溶解した溶液を、スピンコート法によって、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板に塗布した。70℃に加熱したホットプレート上にて、溶媒除去後、250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を30秒間照射し、組成物4を重合させた。その結果、460〜531nmの波長帯域で選択反射を示す緑色を呈する均一な光学薄膜を得た。
(組成物4)
【0169】
【発明の効果】
本発明の化合物は、大きな螺旋誘起力を有し、他の化合物との優れた相溶性を有し、さらに、光学異方性などの必要な特性を有する重合性の液晶性化合物およびこの化合物を含有する液晶組成物に使用できる。本発明の重合体は、透明性、屈折率、耐熱性、機械的強度、硬度、塗布性、表面エネルギー、溶解度、結晶化度、収縮性、密着性、透水度、吸水度、ガス透過度、融点、ガラス転移点、透明点、耐薬品性などの特性の多くに優れ、この重合体から光学異方性を有する成形体を製造できる。
Claims (19)
- 下記の式(1)または式(2)で表される光学活性化合物。
Ra−Y−(A−Z)m−A−Y−Rb (1)
Rc−Y−(A−Z)m−A−Y−Rc (2)
式中、Raは水素であり;Rbは基(3−1)、基(3−2)、基(3−3)、または基(3−4)であり;Rcは基(3−1)、基(3−2)、基(3−4)、または基(3−7)であり;Rdは水素であり;Aは1,4−フェニレンまたはナフタレン−2,6−ジイルであり;Yは単結合、−O(CH2) r −または−(CH2) r O−であり、rは1〜10の整数であり;Zは−C*HRe−CH2−、−CH2−C*HRe−、−O(CH2)n−、−(CH2)nO−、−O(CH2)nO−、−COO−、または−OCO−であり、C*は不斉炭素であり、Re はメチルであり、nは1〜6の整数であり、そしてZの少なくとも1つは−C*HRe−CH2−または−CH2−C*HRe−であり;mは1〜3の整数である。 - 式(1)または式(2)において、mが1である請求項1に記載の化合物。
- 式(1)または式(2)において、mが2である請求項1に記載の化合物。
- 式(1)または式(2)において、mが3である請求項1に記載の化合物。
- 光学活性化合物が請求項1に記載の式(1)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
- 光学活性化合物が請求項1に記載の式(2)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
- 請求項1に記載の少なくとも1つの重合性化合物を含有する液晶組成物。
- 請求項1に記載の少なくとも2つの重合性化合物を含有する液晶組成物。
- 少なくとも2つの重合性化合物を含有し、少なくとも1つの重合性化合物が請求項1に記載の化合物であり、他の少なくとも1つの重合性化合物が請求項1に記載の化合物とは異なる下記で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物である、液晶組成物。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−またはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート、およびポリエチレングリコールジアクリレート。 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物から得られる重合体。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の1つを単独重合させて得られる請求項12に記載の重合体。
- 請求項7〜10のいずれか1項に記載の液晶組成物から得られる請求項12に記載の重合体。
- 請求項11に記載の液晶組成物から得られる請求項12に記載の重合体を含有する重合体組成物。
- 請求項12〜14のいずれか1項に記載の重合体または請求項15に記載の重合体組成物からなるフィルム。
- 請求項12〜14のいずれか1項に記載の重合体または請求項15に記載の重合体組成物からなる光学異方性を有するフィルム。
- 請求項12〜14のいずれか1項に記載の重合体または請求項15に記載の重合体組成物を含有する液晶表示素子。
- 請求項17記載の光学異方性を有するフィルムを含有する液晶表示素子。
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