この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶相はネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマチック相を意味する。液晶下限温度は、液晶相を示す下限の温度のことであり、液晶相から結晶へ転移する温度のことである。重合性は、光、熱、触媒などの手段により単量体が重合し、重合体を与える能力を意味する。液晶化合物において重合性基を有する液晶化合物を重合性液晶化合物と呼び、重合性液晶化合物は、液晶化合物に含まれる。重合性化合物は、液晶性を示さない重合性基を有する化合物を意味する。化合物が重合性基を1つ有する場合を、単官能性あるいは単官能化合物と呼ぶことがある。また、化合物が重合性基を複数有する場合は、多官能性、あるいは重合性基の数に対応した呼称で呼ぶことがある。式(1)で表わされる化合物を、化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様の簡略化法に従って称することがある。用語「液晶性」の意味は、液晶相を有することだけに限定されない。それ自体は液晶相を持たなくても、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性も、液晶性の意味に含まれる。
液晶組成物とは液晶相を有する組成物の総称であり、その液晶組成物の中でも重量比で、重合性基を有する液晶化合物が、液晶組成物の全重量に対して80重量%以上含まれる液晶組成物を、重合性液晶組成物と呼ぶ。
化合物の構造を説明する際に用いる用語「少なくとも一つの」は、位置だけでなく個数についても少なくとも一つであることを意味する。例えば、「少なくとも一つのAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも一つのAがBで置き換えられる場合、少なくとも一つのAがCで置き換えられる場合および少なくとも一つのAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。但し、少なくとも一つの−CH2−が−O−で置き換えられてもよいとする定義には、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。また、少なくとも一つの−CH2−が−O−で置き換えられる場合、炭素数が記載の範囲を越えることはない。例えば、式(1)におけるYは炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて少なくとも一つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよいが、−O−での置き換えを含むアルキレンの炭素数は、この場合20を超えるものではない。このルールは、他の定義についても同様である。
≪化合物≫
本発明の化合物は、重合性基として両末端にフェニレン基に直結したビニルケトンを有する下記式(1)で表される化合物である。
式(1)において、
A
1は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよい。
Z1は独立して、単結合または炭素数1〜20を有するアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの−CH2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、該アルキレンにおいて少なくとも一つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。上記Z1は光学異方性の大きさや液晶相の温度範囲の広さなどの点で、好ましくは、独立して、単結合、−OCH2−、−CH2O−、−COO−、−OCO−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH2CH2COO−、−OCOCH2CH2−または−C≡C−である。
Yは炭素数6〜20のアルキレンであり、該アルキレンにおいて任意の−CH2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。上記Yは有機溶剤への溶解性の高さ、他の化合物との相溶性の高さや透明点の低さなどの点で、好ましくは、−(CH2)r−、−O(CH2)sO−または−OCO(CH2)sCOO−であり、ここでrは6〜12の整数であり、sは4〜12の整数である。
aは0〜3の整数であり、好ましくは0または1であり、有機溶剤への溶解性の高や透明点の低さなどの点で、より好ましくは0である。
R1は独立して水素または炭素数1〜5のアルキルであり、好ましくは水素またはメチルであり、より好ましくは水素である。
W1は独立してフッ素、塩素、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキルまたは炭素数1〜5のアルコキシであり、好ましくは独立してフッ素、塩素、トリフルオロメチル、メチルまたはメトキシであり、より好ましくはフッ素、メチルまたはメトキシである。
nは独立して0〜4の整数であり、好ましくは0〜2の整数である。
また、上記式(1)における−(W1)nの意味について説明する。これは、1,4−フェニレン上の2,3,5,6位のいずれかの水素がW1に置換されても良いことを示し、またその置換数をnであらわしている。つまり、n=1の場合は1,4−フェニレン上のいずれか1つの水素がW1で置換されていることを示し、n=2の場合は1,4−フェニレン上のいずれか2つの水素がW1で置換されていることを示す。
化合物(1)の環および結合基を適宜選択することによって、複屈折性や、溶剤等への溶解性等の物性を任意に調整することが可能である。環A1ならびに結合基Z1の種類が、化合物(1)の物性に与える効果を以下に説明する。
環A1が、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイルまたはナフタレン−2,6−ジイルである場合、光学異方性が大きく、配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が大きい化合物となる傾向がある。環A1が、1,4−シクロヘキシレンである場合、透明点が高く、光学異方性が小さい化合物となる傾向がある。
結合基Z1が、独立して−CH2O−、−OCH2−、または−CF=CF−である場合、粘度が小さい化合物となる傾向がある。結合基Z1が、それぞれ独立して単結合、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−または−C≡C−の場合液晶相の温度範囲が広くかつ光学異方性が大きい化合物となる傾向がある。結合基Z1が、独立して−COO−または−OCO−の場合、液晶相の温度範囲が広い化合物となる傾向がある。
aが0の場合、透明点が低く、溶解性が高い化合物となる傾向にある。aが1以上の場合、数が増えるに従い光学異方性が大きく、配向秩序パラメーターが大きい化合物となる傾向がある。
以上のように、環および結合基の種類や数を適宜選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。
化合物(1)は、有機合成化学の手法を組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、ホーベン−ワイル(Houben-Wyle, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、および、新実験化学講座(丸善)等の成書に記載されている。なお、合成された化合物の構造は、例えば、プロトンNMRスペクトルにより確認することができる。
上記化合物(1)の中でも、比較的低い温度で良好な液晶相を示し、透明点が低く、有機溶剤への溶解性の高さ、他の化合物との相溶性の高さの点で、下記式(1−1)で表される化合物が好ましい。
式(1−1)において、Y、R
1、W
1、およびnの定義および好ましい態様については、式(1)と同じである。
以下、化合物(1)の好ましい例を示す。
≪液晶組成物≫
本発明の液晶組成物は、式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。本発明の液晶組成物は、比較的低い温度でネマチック相やスメクチック相の液晶相を有する。本発明の液晶組成物を、ラビング処理等の配向処理がなされているプラスチック基板上やプラスチックの薄膜で表面が被覆された支持基板上に塗工して製膜する場合、ホモジニアス配向やハイブリッド配向となる。また、本発明の液晶組成物に、後述する非重合性あるいは重合性の光学活性化合物を添加した場合にはツイスト配向となる。本発明の液晶組成物に後述するカルド構造を有する化合物、または単官能の液晶化合物を加えるとホメオトロピック配向が得られやすくなる。
化合物(1)以外の構成成分としてはその他の液晶化合物(ただし、重合性液晶化合物は除く。)、その他の重合性液晶化合物、界面活性剤、その他の重合性化合物(ただし、重合性液晶化合物は除く。)、重合開始剤、光増感剤、連鎖移動剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤、光学活性化合物、シランカップリング剤、溶剤、およびその他の添加剤などを本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
その他の液晶性化合物としては、液晶性化合物のデータベースであるリクリスト(LiqCryst, LCI Publisher GmbH, Hamburg, Germany)に記載されている化合物から選択することができる。中でも下記式(LC)で表される化合物が好ましい。
式(LC)中、A
2は独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイルおよびナフタレン−2,6−ジイルから選ばれるいずれかの二価基であり、該二価基において、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく;Z
2は独立して単結合または炭素数1〜20を有するアルキレンであり、該アルキレンにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、少なくとも一つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;bは1〜5の整数であり;R
2は独立して水素、フッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシであり、該アルキルにおいて少なくとも一つの−CH
2−は−CH=CH−で置き換えられてもよい。
以下、上記式(LC)で表される化合物の具体例を示す。
本発明の液晶組成物は、式(1)で表される化合物と、式(LC)で表される化合物から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。
また、式(1)で表される化合物と式(LC)で表される化合物の合計量100重量%に対し、式(1)で表される化合物を1−90重量%、式(LC)で表される化合物を10−99重量%含有することが好ましい。
その他の重合性液晶化合物としては、下記式(M−1)、(M−2)および(M−3)で表される化合物が好ましい。
式(M1)、(M2)および(M3)中、R
3は水素またはメチルであり;A
3はそれぞれ独立して1,4−フェニレン、1,4−シクロへキシレン、ピリジン−2,5−ジイルナフタレン−2,6−ジイルまたはフルオレン−2,7−ジイル、であり、この1,4−フェニレンにおいて、少なくとも一つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、炭素数1〜5のアルキル、炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜5のアルキルエステルまたは炭素数1〜5のアルカノイルで置き換えられてもよく、このフルオレン−2,7−ジイルにおいて、少なくとも一つの9位の水素はフッ素または炭素数1〜5のアルキルで置き換えられてもよく;Z
3はそれぞれ独立して単結合、−C
2H
4−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−COOC
2H
4−、−C
2H
4OCO−、−C
2H
4COO−または−OCOC
2H
4−であり;R
4はシアノ、炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおける少なくとも一つのCH
2−は−O−で置き換えられてもよく;Qは単結合、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−であり;pは0から12の整数であり;cは1〜3の整数であり;dは0〜2の整数である。
化合物(M1)は単官能重合性液晶化合物であり、液晶組成物の液晶温度範囲、光学特性および配向性を制御しやすい。化合物(M2)は2官能重合性液晶化合物であり、この重合体は三次元構造になるため、1つの重合性基を有する化合物(M1)と比較して硬い重合体となる。化合物(M3)は3官能重合性液晶化合物であり、この重合体はさらに強固なネットワークを形成することができ、1つおよび2つの重合性基を有する化合物と比較してさらに硬い重合体となる。今後、化合物(M1)、(M2)および(M3)やこれらから派生する化合物の総称として化合物(M)と称することがある。
以下、化合物(M1)の好ましい例を示す。
式(M1−1)〜(M1−20)において、R
3は独立して水素またはメチルであり、pは独立して1〜12の整数である。
以下、化合物(M2)の好ましい例を示す。
式(M2−1)〜(M2−30)において、R
3は独立して水素またはメチルであり、pは独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のpがあるとき、任意の2つのpは同一でもよく、異なっていてもよい。
以下、化合物(M3)の好ましい例を示す。
式(M3−1)〜(M3−10)において、R
3は独立して水素またはメチルであり、pは独立して1〜12の整数である。式中に2つ以上のpがあるとき、任意の2つのpは同一でもよく、異なっていてもよい。
本発明の重合性液晶組成物は、式(1)で表される化合物と、式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが好ましい。
また、式(1)で表される化合物と式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物の合計量100重量%に対し、式(1)で表される化合物を1−80重量%含有することが好ましい。液晶組成物中の上記各成分の含有量が上記範囲にあると、複屈折の制御が容易で、良好な塗布性を有する液晶組成物を得ることができ、かつ、本発明の重合体の効果を顕著に発現させることができる。また、前記式(LC)で表される化合物をさらに含有してもよい。
本発明の液晶組成物は、さらに界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましく、非イオン性界面活性剤が液晶組成物に含まれた場合には、その液晶組成物から形成される塗布膜の平滑性を向上させる効果がある。
非イオン性界面活性剤を添加する場合の好ましい割合は、式(1)で表される化合物と式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.5である。より好ましい重量比の範囲は0.0001〜0.005である。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、シリコーン系非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、炭化水素系非イオン性界面活性剤などがある。
シリコーン系非イオン性界面活性剤としては、例えば、未変性シリコーンあるいは変性シリコーンを主成分とした共栄社化学(株)製のポリフローATF―2、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、グラノールB−1484、ポリフローKL−250、ポリフローKL−260、ポリフローKL−270、ポリフローKL−280、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−342、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−3500、BYK−3510、およびBYK−3570などが挙げられる。
フッ素系非イオン性界面活性剤としては、例えば、BYK−340、フタージェント251、フタージェント221MH、フタージェント250、FTX−215M、FTX−218M、FTX−233M、FTX−245M、FTX−290M、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−240G、FTX−206D、フタージェント212D、FTX−218、FTX−220D、FTX−230D、FTX−240D、FTX−720C、FTX−740C、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S、KB−L82、KB−L85、KB−L97、KB−L109、KB−L110、KB−F2L、KB−F2M、KB−F2S、KB−F3M、およびKB−FaMなどが挙げられる。
炭化水素系非イオン性界面活性剤としては、例えば、アクリル系ポリマーを主成分としたポリフローNo.3、ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95、ポリフローNo.99C、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392、およびBYK−Silclean3700などが挙げられる。
なお、上記のポリフローおよびグラノールはどちらも共栄社化学(株)から販売されている商品の名称である。BYKはビックケミー・ジャパン(株)から販売されている商品の名称である。フタージェント、FTXおよびKBは(株)ネオスから販売されている商品の名称である。
上記の界面活性剤は、単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。
次に、その他の重合性化合物、添加物、有機溶剤を例示する。これらの化合物は市販品でもよい。
その他の重合性化合物としては、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オキシラン誘導体、オキセタン誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体などの化合物であって液晶性を有しないものが挙げられる。この液晶性を有しないその他の重合性化合物には、重合性基を1つ有する化合物、重合性基を2つ有する化合物および重合性基を3つ以上有する多官能化合物などがある。
重合性基を1つ有する化合物としては、例えば、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、脂肪酸ビニル(例:酢酸ビニル)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル(アミノアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のエーテル酸素含有アルキルエステル(エーテル酸素含有アルキルの炭素数3〜18、例:メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、およびブチルカルビルエステル)、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル又はジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
重合性基を2つ有する化合物としては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(ビスコート V#700)、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの化合物のメタクリレート化合物などが挙げられる。
重合性基を3つ以上有する化合物としては、例えば、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスコート V#802(官能基数=8)、ビスコート V#1000(官能基数=平均14)などが挙げられる。「ビスコート」は大阪有機化学株式会社の商品名である。官能基が16以上のものはPerstorp Specialty Chemicalsが販売しているBoltorn H20(16官能)、Boltorn H30(32官能)、Boltorn H40(64官能)を原料にそれらをアクリル化することで得られる。
その他の重合性化合物としては、さらに、カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体が挙げられる。これらの化合物は、配向方向の制御や重合体の硬化度をさらに高めるのに適している。カルド構造を有する重合性フルオレン誘導体の例を式(α−1)〜(α−6)に示す。
また、その他の重合性化合物としては、さらに、ビスフェノール構造を有する重合性化合物が挙げられる。これらの化合物は、液晶組成物の被膜形成能や配向均一性の補助に適している。重合性ビスフェノール誘導体の例を式(N−1)〜(N−6)に示す。
上記のその他の重合性化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これらの化合物は市販品であってもよい。
重合速度を最適化するために、重合開始剤を液晶組成物に添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、光ラジカル開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュアー184)、イルガキュアー127、イルガキュアー500(イルガキュアー184とベンゾフェノンの混合物)、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー754、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー1870、ダロキュアー4265、ダロキュアーMBF、ダロキュアーTPO、イルガキュアー784、イルガキュアー754、イルガキュアーOXE01、およびイルガキュアーOXE02などが挙げられる。上記のダロキュアーおよびイルガキュアーはどちらもBASFジャパン(株)から販売されている商品の名称である。
上記光ラジカル重合開始剤としては、さらに、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の好ましい添加量は、式(1)で表される化合物と式(M1)、(M2)および(M3)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.20である。この重量比のより好ましい範囲は0.001〜0.15である。さらに好ましい範囲は0.01〜0.15である。上記光ラジカル開始剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら重合開始剤は市販品であってもよい。
また、これら光ラジカル重合開始剤に、増感剤を添加して使用してもよい。増感剤としては、例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル−4ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEDB)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEHA)などが挙げられる。これら増感剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら増感剤は市販品であってもよい。
重合体の重合反応率や機械特性を制御する等のために、連鎖移動剤を液晶組成物に添加してもよい。連鎖移動剤を用いることにより、得られる重合体の反応率や鎖長を制御することができる。連鎖移動剤の量を増大させると、重合反応率が低下し、ポリマー鎖の長さは減少する。好ましい連鎖移動剤は、チオール化合物である。単官能性チオールの例はドデカンチオール、2−エチルへキシル−(3−メルカプトプロピオネートである。多官能性チオールの例は、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1)、および1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1)である。「カレンズ」は昭和電工株式会社の商品名である。これら連鎖移動剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら連鎖移動剤は市販品であってもよい。
液晶組成物には、保存時の重合開始を防止するために重合防止剤を添加することができる。公知の重合防止剤を使用できるが、その好ましい例は、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキシトルエン(BHT)、ハイドロキノン、メチレンブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド(DPPH)、フェノチアジン、N,N−ジメチル−4−ニトロソアニリンなどのニトロソ化合物、o−ヒドロキシベンゾフェノン、および2H−1,3−ベンゾチアジン−2,4−(3H)ジオンなどのベンゾチアジン誘導体である。
液晶組成物の保存性を向上させるために、重合阻害剤を添加することもできる。液晶組成物や液晶組成物溶液内でラジカルが発生した場合は、重合性化合物の重合反応が促進される。これを防ぐ目的で重合阻害剤を添加することが好ましい。重合阻害剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤を利用できる。
液晶組成物の耐候性を更に向上させるために、紫外線吸収剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤)および酸化防止剤等を添加してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、チヌビンPS、チヌビンP、チヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン384−2、チヌビン571、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479、チヌビン5236、アデカスタブLA−32、アデカスタブLA−34、アデカスタブLA−36、アデカスタブLA−31、アデカスタブ1413、およびアデカスタブLA−51などが挙げられる。「チヌビン」はBASFジャパン(株)の商品名であり、「アデカスタブ」はADEKAの商品名である。これら紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら紫外線吸収剤は市販品であってもよい。
光安定剤としては、例えば、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン622、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン780、チヌビン905、チヌビン5100、チヌビン5050、5060、チヌビン5151、キマソーブ119FL、キマソーブ944FL、キマソーブ944LD、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、サイテック社製のサイアソーブUV−3346、およびグッドリッチ社のグッドライトUV−3034などが挙げられる。「キマソーブ」はBASFジャパン(株)の商品名である。これら光安定剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら光安定剤は市販品であってもよい。
酸化防止剤としては、例えば、ADEKAのアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、住友化学(株)から販売されているスミライザーBHT、スミライザーBBM−S、およびスミライザーGA−80、並びにBASFジャパン(株)から販売されているIrganox1076、Irganox1010、Irganox3114、およびIrganox245などが挙げられる。これら酸化防止剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これら酸化防止剤は市販品であってもよい。
基板との密着性を制御する等のために、シランカップリング剤を液晶組成物に添加してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリアルコキシシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−(1,3-ジメチルブチリデン)−3−(トリアルコキシシリル)−1−プロパンアミン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。また、上記アルコキシシランにおいて、アルコキシ基(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えられたジアルコキシメチルシランも、シランカップリング剤として用い得る。これらシランカップリング剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。また、これらシランカップリング剤は市販品であってもよい。
本発明の液晶組成物は、塗布を容易にするために、溶剤を用いて液晶組成物を希釈するか、または溶剤に液晶組成物の各成分を溶解して、液晶組成物と溶剤とからなる液晶組成物の溶液を調製し、この溶液を塗布してもよい。溶剤としては、例えば、エステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤などが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸アルキル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチルおよび酢酸イソペンチル)、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル(例:プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびプロピオン酸ブチル)、酪酸アルキル(例:酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチルおよび酪酸プロピル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、グリコール酸アルキル(例:グリコール酸メチルおよびグリコール酸エチル)、乳酸アルキル(例:乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸エチルヘキシル)、モノアセチン、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどが好ましい。
アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N−メチルカプロラクタムおよびジメチルイミダゾリジノンなどが好ましい。
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5−トリメチルヘキサノール、n−アミルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロヘキサノールおよびメチルシクロヘキサノールなどが好ましい。
エーテル系溶剤としては、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2−プロピル)エーテル、1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)などが好ましい。
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、およびジエチレングリコールメチルエチルエーテルなどが好ましい。
芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、およびテトラリンである。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例はクロロベンゼンなどが好ましい。脂肪族炭化水素系溶剤としては、ヘキサンおよびヘプタンなどが好ましい。ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンなどが好ましい。脂環式炭化水素系溶剤としては、シクロヘキサンおよびデカリンなどが好ましい。
ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトンなどが好ましい。
アセテート系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1−メトキシ−2−プロピルアセテートなどが好ましい。
液晶化合物の溶解性の観点からは、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系、ケトン系溶剤の使用が好ましく、溶剤の沸点を考慮すると、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の併用も好ましい。溶剤の選択に関して特に制限はないが、支持基材としてプラスチック基板を用いる場合は、基板の変形を防ぐために乾燥温度を低くすること、および溶剤が基板を侵食しないようにする必要がある。このような場合に好ましく用いられる溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アセテート系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤である。
液晶組成物の溶液における固形分の割合は、この溶液の全重量を基準として5〜70重量%である。この割合の好ましい範囲は10〜50重量%であり、より好ましい範囲は10〜40重量%である。これら溶剤は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用してもよい。これら溶剤は市販品であってもよい。
以下の説明では、液晶組成物を重合して得られる重合体(光学異方性フィルム)を液晶フィルムと称することがある。液晶フィルムは、次のようにして得ることができる。まず、液晶組成物を流動性のある状態で支持基板上に塗布し、塗膜を形成させる。液晶組成物の溶液を調製した場合は、支持基板上に塗布し、これを乾燥させて塗膜を形成させる。その塗膜に光照射して液晶組成物を重合させ、塗膜中の組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を固定化する。使用できる支持基板の材質としては、ガラスおよびプラスチックなどが挙げられる。プラスチックとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂などが挙げられる。支持基板は、通常シート状またはフィルム状である。
シクロオレフィン系樹脂としてノルボルネン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、不飽和結合を有さないか、又は不飽和結合が水素添加されたものが好適に用いられる。例えば、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマー(エチレン、α−オレフィン等)との付加共重合体、ノルボルネン系モノマーとシクロオレフィン系モノマー(シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等)との付加共重合体、及び、これらの変性物等が挙げられ、具体的には、ZEONEX、ZEONOR(共に商品名、日本ゼオン(株)製)、ARTON(商品名、JSR(株)製)、TOPAS(商品名、ティコナ社製)、APEL(商品名、三井化学(株)製)、エスシーナ(商品名、積水化学工業(株)製)、OPTOREZ(商品名、日立化成(株)製)が挙げられる。
支持基板として用い得るこれらのプラスチックからなるフィルム(プラスチックフィルム)は、一軸延伸フィルムであってよく、二軸延伸フィルムであってもよい。これらのフィルムは、例えば、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理、あるいは疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。親水化処理の方法は特に制限はないが、コロナ処理あるいはプラズマ処理が好ましく、特に好ましい方法はプラズマ処理である。プラズマ処理は、特開2002−226616号公報、特開2002−121648号公報などに記載されている方法を用いてもよい。また、液晶フィルムとプラスチックフィルムとの密着性を改良するためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は液晶フィルムとプラスチックフィルムの密着性を高めるものであれば、無機系材料、有機系材料のいずれであっても何ら問題はない。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルムに代えて、表面にスリット状の溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基板や、表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板などを用いることもできる。
これらのガラス基板、プラスチックフィルム等の支持基板には、液晶組成物の塗膜形成に先立って、ホモジニアス配向およびハイブリッド配向の液晶フィルムを形成する場合には、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行う。ホメオトロピック配向の液晶フィルムを形成する場合はラビング等の表面処理を行わない場合が多いが、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できるが、通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、支持基板または重合体被膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま支持基板側を移動させる方法などが採用される。ラビング処理は支持基板に直接施されていてもよく、または支持基板上に予め一般に配向膜と呼ばれるポリイミドなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。ラビング処理の方法は前述のとおりである。支持基板の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。
また、ホモジニアス配向およびハイブリッド配向の液晶フィルムを形成する場合には、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行う以外に、支持基板上に予め一般に光配向膜と呼ばれるポリイミドやポリアクリレートなどの重合体被膜を設け、その重合体被膜に偏光UV処理を施してもよい。
液晶組成物またはその溶液を塗布する際、均一な膜厚を得るための塗布方法の例は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法およびダイコート法である。特に、塗布時に液晶組成物にせん断応力がかかるワイヤーバーコート法等を、ラビング等による基板の表面処理を行わないで液晶組成物の配向を制御する場合に用いてもよい。
本発明の液晶組成物の溶液を塗布するときに、塗布後に支持基板上に膜厚の均一な重合性液晶層、即ち液晶組成物の層を形成させるために、熱処理を行ってもよい。熱処理は、ホットプレートや、乾燥炉、温風や熱風の吹き付けなどを利用することができる。
塗膜を熱処理する際の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、光源から照射する光の量などは、液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比、光重合開始剤の添加の有無やその添加量などによって、好ましい範囲が異なる。従って、以下に説明する塗膜の熱処理の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、および光源から照射する光の量についての条件は、あくまでもおよその範囲を示すものである。
塗膜の熱処理は、重合性液晶の均一配向性が得られる条件で行うことが好ましい。液晶組成物の液晶相転移点以上で行ってもよい。熱処理方法の一例は、前記液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度まで塗膜を加温して、塗膜中の液晶組成物にネマチック配向を形成させる方法である。液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度範囲内で、塗膜の温度を変化させることによってネマチック配向を形成させてもよい。この方法は、上記温度範囲の高温域まで塗膜を加温することによって塗膜中にネマチック配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にする方法である。上記のどちらの熱処理方法を採用する場合でも、熱処理温度は室温〜120℃である。この温度の好ましい範囲は室温〜80℃であり、より好ましい範囲は室温〜60℃である。熱処理時間は5秒〜2時間である。この時間の好ましい範囲は10秒〜40分であり、より好ましい範囲は20秒〜20分である。液晶組成物からなる層の温度を所定の温度まで上昇させるためには、熱処理時間を5秒以上にすることが好ましい。生産性を低下させないためには、熱処理時間を2時間以内にすることが好ましい。このようにして本発明の重合性液晶層が得られる。
重合性液晶層中に形成された液晶化合物のネマチック配向状態は、この液晶化合物を光照射により重合させることによって固定化される。光照射に用いられる光の波長は特に限定されない。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。波長の範囲は150〜500nmである。好ましい範囲は250〜450nmであり、より好ましい範囲は300〜400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)である。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。光源から照射する光量は、塗膜面到達時で2〜5000mJ/cm2である。光量の好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、より好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。光照射時の温度条件は、上記の熱処理温度と同様に設定されることが好ましい。また、重合環境の雰囲気は窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気、空気雰囲気のいずれでもよいが、窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気が硬化性を向上させる観点から好ましい。
本発明の重合性液晶層、およびこれを光や熱などにより重合させた液晶フィルムを様々な光学素子に用いる場合、または液晶表示装置に用いる光学補償素子として適用する場合には、厚み方向におけるチルト角の分布の制御が極めて重要となる。
チルト角を制御する方法の一つは、液晶組成物に用いる液晶化合物の種類や組成比などを調製する方法である。この液晶組成物に他の成分を添加することによっても、チルト角を制御することができる。液晶フィルムのチルト角は、液晶組成物中の溶剤の種類や溶質濃度、他の成分の1つとして加える界面活性剤の種類や添加量などによっても制御することができる。支持基板または重合体被膜の種類やラビング条件、液晶組成物の塗膜の乾燥条件や熱処理条件などによっても、液晶フィルムのチルト角を制御することができる。さらに、配向後の光重合工程での照射雰囲気や照射時の温度なども液晶フィルムのチルト角に影響を与える。即ち、液晶フィルムの製造プロセスにおけるほとんど全ての条件が多少なりともチルト角に影響を与えると考えてよい。従って、液晶組成物の最適化と共に、液晶フィルムの製造プロセスの諸条件を適宜選択することにより、任意のチルト角にすることができる。
ホモジニアス配向は、チルト角が基板界面から自由界面にかけて一様に0度に近く、特に0〜5度に分布している。この配向状態は、本発明の液晶組成物を、ラビング等の表面処理を行った支持基板表面に塗布し、塗膜を形成させることによって得られる。
本発明の液晶組成物には光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好適例は、式(Op−1)〜(Op−25)で表される化合物である。これらの式において、Akは炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数1〜15のアルコキシを、Me、EtおよびPhはそれぞれ、メチル、エチルおよびフェニルを表す。P2は重合性の基であり、(メタ)アクリロイルオキシ、ビニルオキシ、オキシラニル、またはオキセタニルを含む基であることが好ましい。本発明の液晶組成物は以下に説明する重合体の原料として用いる他、液晶表示素子の構成要素である液晶として用いてもよい。
具体例として、特開2011−148762号公報のp.70の段落0159〜p.81の段落0170記載のものがある。
光学活性を有する化合物を適当量含有した液晶組成物、または、光学活性を有する重合性化合物を適当量含有した液晶組成物を、配向処理した基板上に塗布して重合することによって、らせん構造(ツイスト構造)を示す位相差フィルムが得られる。液晶組成物の重合によって、このらせん構造が固定される。得られる液晶フィルムの特性は、得られたらせん構造のらせんピッチに依存する。このらせんピッチ長は、光学活性化合物の種類および添加量により調製できる。添加する光学活性化合物は1つでもよいが、らせんピッチの温度依存性を相殺する目的で複数の光学活性化合物を用いてもよい。なお、液晶組成物には、光学活性化合物の他に、その他の重合性化合物が含まれてもよい。
上記のような液晶フィルムの特性である可視光の選択反射は、らせん構造が入射光に作用し、円偏光や楕円偏光を反射させるものである。選択反射特性はλ=n・Pitch(λは選択反射の中心波長、nは平均屈折率、Pitchはらせんピッチ)で表されるため、nまたはPitchを変えることにより中心波長(λ)および波長幅(Δλ)を適宜調製することができる。色純度を良くするには波長幅(Δλ)を小さくすればよいし、広帯域の反射を所望する際には波長幅(Δλ)を大きくすればよい。さらにこの選択反射は重合体の厚みの影響も大きく受ける。色純度を保つためには、厚みが小さくなりすぎないようにしなければならない。均一な配向性を保つためには、厚みが大きくなりすぎないようにしなければならない。したがって、適度な厚みの調製が必要であり、0.5〜25μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
らせんピッチを可視光よりさらに短くすることで、W. H. de Jeu, Physical Properties of Liquid Crystalline Materials, Gordon and Breach, New York(1980)に記載のネガティブ型Cプレート(Negative C plate)を調製できる。らせんピッチを短くするためには、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)の大きな光学活性化合物を用い、さらにその添加量を増やすことで達成できる。具体的にはλを350nm以下、好ましくは200nm以下とすることで、ネガティブ型Cプレートを調製できる。このネガティブ型Cプレートは液晶表示素子のうちVAN型、VAC型、OCB型等の表示素子に適した光学補償膜となる。
液晶フィルムは、らせんピッチを可視光より長くすることで特開2004−333671号公報に記載されているような反射波長領域を近赤外(波長800〜2500nm)に設定した反射フィルムに用いることができる。らせんピッチを長くするためには、例えば、ねじり力の小さな光学活性化合物を用いること、または光学活性化合物の添加量を減らすことにより達成できる。
上記光学活性化合物は、らせん構造を誘起し、ベースとなる液晶組成物と適切に混合できれば、いずれの光学活性化合物を用いてもよい。また、重合性化合物でも非重合性化合物のいずれでもよく、目的に応じて最適な化合物を添加することができる。耐熱性および耐溶媒性を考慮した場合、重合性化合物の方が好適である。
さらに上記光学活性化合物の中でも、ねじり力(HTP:ヘリカル・ツイスティング・パワー)が大きいものは、らせんピッチを短くする上で好適である。ねじり力の大きな化合物の代表例が、GB2298202号公報、DE10221751号公報で開示されている。
液晶フィルムの厚さ(膜厚)は、目的とする素子に応じたレタデーションや液晶フィルムの複屈折率(光学異方性の値)によって適当な厚さが異なる。従って、厚さの範囲は目的毎に異なるが、目安として0.05〜100μmである。より好ましい範囲は0.1〜50μmであり、さらに好ましい範囲は0.5〜20μmである。液晶フィルムの好ましいヘイズ値は1.5%以下であり、好ましい透過率は80%以上である。より好ましいヘイズ値は1.0%以下であり、より好ましい透過率は95%以上である。透過率については、可視光領域でこれらの条件を満たすことが好ましい。
液晶フィルムの複屈折率(光学異方性の値)が高いほど厚みを薄くできる。厚みが薄いほどヘイズ値や透過率はなどの光学特性は良くなる傾向がある。
液晶フィルムは、液晶表示素子(特に、アクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)に適用する光学補償素子として有効である。この液晶フィルムを光学補償膜として使用するのに適している液晶表示素子の型の例は、IPS型(イン・プレーン・スイッチング)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、TN型(ツィステッド・ネマティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VAN/VAC型(垂直配向したネマチック/コレステリック)、OMI型(光学モード干渉)、SBE型(超複屈折効果)などである。さらにゲスト−ホスト型、強誘電性型、反強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、この液晶フィルムを使用することもできる。なお、液晶フィルムに求められるチルト角の厚み方向の分布や厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示素子の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
液晶フィルムは、偏光板などと一体化した光学素子としても使用することができ、この場合は液晶セルの外側に配置させられる。一方、光学補償素子としての液晶フィルムは、セルに充填された液晶への不純物の溶出がないかまたは少ないので、液晶セルの内部に配置させることも可能である。例えば、特開2008−01943号公報に開示されている方法を応用すれば、カラーフィルター上に本発明の重合性液晶層を形成することでカラーフィルターの機能を更に向上させることが可能となる。また、二色性色素等の添加物を含有してもよい。二色性色素と複合化したホモジニアス配向の液晶フィルムは、吸収型偏光板としても使用することができる。また、蛍光色素と複合化したホモジニアス配向の液晶フィルムは、偏光発光型フィルムとしても使用することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。
<化合物の構造確認>
500MHzのプロトンNMR(ブルカー:DRX−500)の測定により合成した化合物の構造を確認した。記載した数値はppmを表し、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、mはマルチプレットを表す。
<相転移温度>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、3℃/分の速度で昇温した。相が別の相に転移する温度を測定した。Cは結晶、Gはガラス状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体を意味する。NI点は、ネマチック相の上限温度またはネマチック相から等方性液体への転移温度である。「C 50 N 63 I」は、50℃で結晶からネマチック相に転移し、63℃でネマチック相から等方性液体へ転移したことを示す。括弧内はモノトロピックの液晶相を示す。
<重合条件>
窒素雰囲気下において、室温で250Wの超高圧水銀灯(ウシオ電機社製、マルチライト−250)を用いて30mW/cm2(365nm)の強度の光を30秒間照射した。
<配向の評価>
(1)ラビング処理済み配向膜付きガラス基板の作成
厚さ1.1mmのガラス基板に、低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5370 JNC(株)製)をスピンコートし、スピンコートした塗膜から溶媒を80℃のホットプレート上で除去後、該塗膜を230℃で30分間、オーブンで焼成したものをレーヨン布を利用してラビング処理した。
(2)目視による観察方法
クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に位相差フィルムを形成した基板を挟持して観察し、基板を水平面内で回転させ、明暗の状態を確認した。位相差フィルムを形成した基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。
(3)偏光解析装置による測定
シンテック(株)製のOPTIPRO偏光解析装置を用い、位相差フィルムを形成した基板に波長が550nmの光を照射した。この光の入射角度をフィルム面に対して90°から減少させながらレタデーションを測定した。レタデーション(retardation;位相遅れ、リタデーションとも呼ばれる)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性値であり、記号dは重合体フィルムの厚さである。
<膜厚測定>
液晶フィルム付きガラス基板の液晶フィルムの層を削りだして、その段差を微細形状測定装置(KLA TENCOR(株)製 アルファステップIQ)を用いて測定した。
<光学異方性(Δn)の評価>
ホモジニアス配向を有する液晶フィルムについて求めたレタデーションと膜厚値から、レタデーション/膜厚として算出した。
<鉛筆硬度>
JIS規格「JIS−K−5400 8.4 鉛筆引掻試験」の方法に準じて測定した。
[実施例1]
下記に示す化合物(1−1−1)を以下のようにして合成した。
化合物(ex−1)は、特開2004−189715号公報に記載の方法に従い合成した。
化合物(ex−1)5.0gおよびトリエチルアミン5.2gを、ジクロロメタン20mLに加え、窒素雰囲気下、10℃以下で撹拌した。そこへ、アジピン酸クロリド3.1gを滴下した。滴下後、室温で2時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を飽和重曹水、次いで水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィーで精製し、エタノールで再結晶することにより、上記化合物(1−1−1)4.1gを得た。
得られた化合物(1−1−1)の相転移温度およびNMR分析値は以下のとおりである。
相転移温度:C 74(N 59) I
1H−NMR(CDCl3;δppm):8.00(d,4H),7.22(d,4H),7.16(d,2H),7.13(d,2H),6.45(d,2H),5.95(d,2H),2.72−2.66(m,4H),1.95−1.87(m,4H).
[実施例2]
下記に示す化合物(1−1−2)を以下のようにして合成した。
化合物(ex−1)2.5gおよびトリエチルアミン2.5gを、ジクロロメタン10mLに加え、窒素雰囲気下、10℃以下で撹拌した。そこへ、スベリン酸クロリド1.7gを滴下した。滴下後、室温で2時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、有機層を飽和重曹水、次いで水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィーで精製し、エタノールで再結晶することにより、上記化合物(1−1−2)2.6mmolを得た。
得られた化合物(1−1−2)の相転移温度およびNMR分析値は以下のとおりである。
相転移温度:C 85(N 61) I
1H−NMR(CDCl3;δppm):8.00(d,4H),7.21(d,4H),7.16(d,2H),7.13(d,2H),6.46(d,2H),5.94(d,2H),2.62(t,4H),1.86−1.76(m,4H),1.56−1.48(m,4H).
実施例3,4で使用した化合物を以下に示す。
化合物(M1−2−1)はMakromol. Chem. 183, 2311-2321,(1982) に記載の方法で合成した。化合物(M2−7−1)は特許第4063873に記載の方法で合成した。
[実施例3]
化合物(1−1−1):化合物(M2−7−1)=50:50の重量比で、これらの化合物を混合した。この混合物をMIX(A)とする。このMIX(A)の重量100に対して、重量比0.2の非イオン性のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製、商品名フタージェント FTX−218)、および重量比6の重合開始剤イルガキュアー907(チバ・ジャパン製)を添加した。さらにシクロペンタノン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=7/3(重量比)を加えて、固形分の割合が30重量%である液晶組成物(S−1)を得た。得られた液晶組成物(S−1)は、相分離等せず均一に混合していた。この液晶組成物(S−1)は、重合性基を有する液晶化合物を100重量%含有しており、重合性液晶組成物である。
次に、液晶組成物(S−1)を、ラビング処理済配向膜付きガラス基板上へスピンコートにより塗布した。この時、塗布性は良好であった。
この基板を80℃で3分間加熱、室温で2分間冷却し、溶剤が除去した重合性液晶層を空気中で紫外線により重合させて、液晶の配向状態を固定させた光学異方性ポリマーを得た。この光学異方性ポリマーを偏光顕微鏡観察したところ、配向欠陥はなく、均一なホモジニアス配向を有していた。この光学異方性ポリマーのレタデーションを測定したところ、フィルム面に対して90度のレタデーション測定値は138nmであり、膜厚は1260nmであったことからΔnは0.11と算出された。また、得られた薄膜の鉛筆硬度はHであった。
[実施例4]
化合物(1−1−2):化合物(M1−2−1):化合物(M2−7−1)=25:25:50の重量比で、これらの化合物を混合した。この混合物をMIX(B)とする。このMIX(B)の重量1に対して、重量比0.002の非イオン性のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製、商品名フタージェント FTX−218)、および重量比0.06の重合開始剤イルガキュアー907(BASFジャパン製)を添加した。さらにシクロヘキサノンを加えて、固形分の割合が25重量%である液晶組成物(S−2)得た。得られた液晶組成物(S−2)は、相分離等せず均一に混合していた。この液晶組成物(S−2)は、重合性基を有する液晶化合物を100重量%含有しており、重合性液晶組成物である。
次に、液晶組成物(S−2)を用いて、実施例3と同様の方法で光学異方性ポリマーを得た。この時、塗布性は良好であった。
この異方性ポリマーを偏光顕微鏡観察したところ、配向欠陥はなく均一なホモジニアス配向を有していた。この異方性ポリマーのレタデーションを測定したところ、フィルム面に対して90度のレタデーション測定値は110nmであり、膜厚は980nmであったことからΔnは0.11と算出された。また、得られた薄膜の鉛筆硬度はBであった。
比較例1で使用した化合物を以下に示す。
化合物(C−1)は特開2004−189715号公報に記載の方法で合成した。
[比較例1]
化合物(C−1):化合物(M2−7−1)=50:50の重量比で、これらの化合物を混合した。この混合物をMIX(C)とする。このMIX(C)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして光学異方性ポリマーの作成を試みたが、結晶化が進行し、均一な配向を有する光学異方性ポリマーを作成することは困難であった。
比較例2で使用した化合物を以下に示す。
化合物(C−1)は、実施例1に記載の化合物(1−1−1)の合成において化合物(ex−1)の代わりに4−ヒドロキシフェニルアクリレートを用いたこと以外は同様の方法で合成した。
得られた化合物(C−1)の相転移温度およびNMR分析値は以下のとおりである。
相転移温度:C 146 I
1H−NMR(CDCl3;δppm):7.18−7.08(m,8H),6.61(d,2H),6.36−6.28(m,2H),6.03(d,2H),2.68−2.62(m,4H),1.92−1.86(m,4H).
[比較例2]
化合物(C−1):化合物(M2−7−1)=50:50の重量比で、これらの化合物を混合した。この混合物をMIX(C)とする。このMIX(C)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして異方性ポリマーの作成を試みたが、MIX(C)は液晶相を示さず光学異方性ポリマーを作成することはできなかった。
[比較例3]
化合物(M2−7−1)の重量1に対して、重量比0.002の非イオン性のフッ素系界面活性剤((株)ネオス製、商品名フタージェント FTX−218)、および重量比0.06の重合開始剤イルガキュアー907(チバ・ジャパン製)を添加した。さらにシクロペンタノン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)=7/3(重量比)を加えて、固形分の割合が30重量%である液晶組成物(CS−1)を得た。
次に、液晶組成物(CS−1)を用いて、実施例3と同様の方法で光学異方性ポリマーを得た。
この異方性ポリマーを偏光顕微鏡観察したところ、均一なホモジニアス配向を有していた。得られた薄膜の鉛筆硬度を測定したところ5Bであった。