JP4039281B2 - シクロプロパン化合物およびその重合体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合性の官能基を有する液晶性のシクロプロパン化合物、この化合物を含有する組成物、その重合体およびこれらの用途に関する。組成物および重合体は、液晶表示素子の構成要素である液晶組成物、位相差フィルム、反射膜、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、および視野角補償膜などに利用することができる。
【0002】
本発明における用語について説明する。「液晶性」は単に化合物が液晶相を有するという意味に限定されない。この用語は、それ自体は液晶相を持っていないけれども、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できるような化合物にも用いられる。化学式中の特定の基を示すのに用いる「任意の」は、その基の位置だけではなく個数についても任意であることを示す。例えば、アルキルにおいて任意の−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいと表現するときには、複数の−CH−のそれぞれが異なる基で置き換えられてもよい。このような場合の例は、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどである。「アルキル」および「アルキレン」は、特に断らない限り直鎖の基と分岐された基の両方を含有する。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、「アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ」を意味する。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタクリレート」を意味する。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸またはメタクリル酸」を意味する。そして、「重合性」は「付加重合性」を意味する用語として定義される。
【0003】
【従来の技術】
重合性の液晶化合物を配向させた状態で光重合させると、均一な配向状態が固定化されて光学異方性を有する重合体が得られることが、特許文献1に開示されている。重合性の液晶化合物としては、反応性の高さや得られる重合体の透明性などの点から、アクリレート誘導体が一般に用いられている(特許文献2、特許文献3など)。好ましい液晶性アクリレート誘導体の例は、下記の(a)〜(c)のような化合物である。
【0004】
Figure 0004039281
【特許文献1】
特開平8−3111号公報
【特許文献2】
特開平7−17910号公報
【特許文献3】
特開平9−316032号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、公知のアクリレート誘導体の重合体を用いた光学異方性体は、耐熱性や機械的強度において十分な特性を持っていなかった。本発明の課題は、この従来技術の問題点を解決することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記の課題を解決するべく研究の結果、シクロプロパン−1,2−ジイル骨格を有する重合性の液晶性化合物が、適正な液晶相の温度範囲や他の液晶性化合物との好適な相溶性などの優れた性質を有することを見いだした。そして、その重合体が耐熱性や機械的強度において優れていることを見いだした。本発明は下記の構成からなる。
【0007】
[1]式(1)で表されるシクロプロパン化合物。
Figure 0004039281
式(1)において、R1およびRは独立して、重合性の基、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−NCO、−NCS、または炭素数1〜20のアルキルであり、R1およびRの少なくとも1つは重合性の基であり、この炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよい;Bは下記の2価基のいずれか1つであり、これらの基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;
Figure 0004039281
複数のAは独立して、単結合、B、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、そしてすべての環において、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;複数のZは独立して、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;mおよびnは独立して0〜10の整数であり、これらの合計は0〜10である;但し、m=n=0、R =水素、R =アルキルオキシカルボニルエテニルである場合、およびm=n=0、R =R =アルキルオキシカルボニルエテニルである場合を除く
【0008】
[2]重合性の基が式(2)で表される基、式(3)で表される基、または式(4)で表される基である、[1]項に記載のシクロプロパン化合物。
Figure 0004039281
これらの式において、R、RおよびRは独立して、水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH2−は−O−、−COO−、−OCO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;kは0〜20の整数であり、hおよびjは独立して0または1である;−(CH2−における任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0009】
[3]式(1)で表される化合物が光学活性である、[1]または[2]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0010】
[4]RおよびRの一方のみが式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基である、[2]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0011】
[5]RおよびRが独立して、式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基である、[2]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0012】
[6]RおよびRの一方のみが式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基であり、R、RおよびRが独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、または炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである、[2]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0013】
[7]RおよびRが独立して、式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基であり、R、RおよびRが独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、または炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである、[2]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0014】
[8]式(G−1)〜式(G−11)のいずれか1つで表される、[1]項に記載のシクロプロパン化合物。
Figure 0004039281
これらの式におけるR、B、R、AおよびZは、式(1)におけるこれらの記号と同様に定義される。
【0015】
[9]式(G−1)〜式(G−6)のいずれか1つで表される、[8]項に記載のシクロプロパン化合物。
【0016】
[10][1]〜[9]のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つを含有する組成物。
【0017】
[11][1]〜[3]のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、[1]項に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
【0018】
[12][4]および[5]項のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、[1]項に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
【0019】
[13][6]および[7]項のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、[1]項に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
【0020】
[14][8]項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、[1]項に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
【0021】
[15][9]項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、[1]項に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
【0022】
[16][1]〜[3]のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
【0023】
[17][4]および[5]項のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
【0024】
[18][6]および[7]項のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
【0025】
[19][8]項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
【0026】
[20][9]項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
【0027】
[21][1]〜[9]のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物から得られる重合体。
【0028】
[22][21]項に記載の重合体を水素添加することによって得られる重合体。
【0029】
[23][10]〜[15]のいずれか1項に記載の組成物から得られる重合体。
【0030】
[24][23]項に記載の重合体を水素添加することによって得られる重合体。
【0031】
[25]重合体が光学活性である、[21]〜[24]のいずれか1項に記載の重合体。
[26][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する光学異方性体。
【0032】
[27][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する位相差フィルム。
【0033】
[28][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する液晶配向膜。
【0034】
[29][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する反射防止フィルム。
【0035】
[30][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する視野角補償フィルム。
【0036】
[31][21]〜[25]のいずれか1項に記載の重合体を含有する偏光素子。
【0037】
[32][26]項に記載の光学異方性体、[27]項に記載の位相差フィルム、[28]項に記載の液晶配向膜、[29]項に記載の反射防止フィルム、[30]項に記載の視野角補償フィルムおよび[31]項に記載の偏光素子の少なくとも1つを含有する液晶表示素子。
【0038】
[33][10]項または[16]〜[20]のいずれか1項に記載の組成物を含有する液晶表示素子。
【0039】
[34]少なくとも1つの光学活性化合物を更に含有する、[33]項に記載の液晶表示素子。
【0040】
【発明の実施の形態】
本発明のシクロプロパン化合物は式(1)で表される。以下の説明では、式(1)で表されるシクロプロパン化合物を、化合物(1)で表記することがある。
Figure 0004039281
式(1)中のBは、シクロプロパン−1,2−ジイル、1,1’−ビシクロプロパン−3,3’−ジイル、ターシクロプロパン−3,3”−ジイル、および任意の水素がハロゲンで置き換えられたこれらの基である。Bの好ましい例を次に示す。
Figure 0004039281
【0041】
式(1)中の複数のAは、独立して単結合、B、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルである。これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよい。任意の−CH−が−O−で置き換えられた例は、ジオキサンなどである。任意の−CH=が−N=で置き換えられた例は、ピリジン、ピリダジン、ピリミジンなどである。
そしてすべての環において、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。ハロゲンとしてはフッ素および塩素を挙げることができ、フッ素が好ましい。
【0042】
Aの好ましい例は、前記のB、1,4−シクロへキシレン、2,2−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、3,3−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルなどである。Aの更に好ましい例は、1,4−シクロへキシレン、2,2−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、3,3−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、および3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0043】
式(1)中のRおよびRの少なくとも1つは、重合性の基である。重合性の基の例は、単独での重合または他の化合物との共重合により、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリジエン、ポリアセチレン、ポリビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリマレイミドなどの重合体を得ることが可能な基である。
【0044】
そして、重合性の基の好ましい例は、式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される基である。
Figure 0004039281
これらの式において、R、RおよびRは独立して水素または炭素数1〜20のアルキルである。このアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。R〜Rの好ましい例は、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、および炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである。更に好ましい例は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブトキシカルボニル、およびイソブチルオキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、イソプロピルオキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、およびイソブチルオキシカルボニルメチルなどである。kは0〜20の整数であり、hおよびjは独立して0または1である。そして、−(CH−における任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
【0045】
式(1)中のRまたはRが重合性でない場合の例は、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−NCO、−NCS、または炭素数1〜20のアルキルである。このアルキルにおける任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、または−NH−で置き換えられてもよい。複数の−CH−が、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、および−NH−、から選ばれる2つ以上の基で置き換えられてもよいが、隣接する2個の−CH−が、−O−O−、−O−S−または−S−S−のように置き換えられることはない。このアルキル中の任意の水素は、ハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよい。好ましいハロゲンはフッ素である。重合性の基でないRまたはRの好ましい例は、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、炭素数1〜10の直鎖アルキル、炭素数1〜10の直鎖アルコキシ、および炭素数2〜10の直鎖アルコキシアルキルである。
【0046】
更に好ましい例は、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、メトキシメチル、およびメトキシエチルである。特に好ましい例は、これらの中のアルキルおよびアルコキシである。
【0047】
式(1)におけるZは、環同士を結合させる結合基である。複数のZは独立して、単結合、または炭素数1〜20のアルキレンであり、これらのアルキレン中の任意の−CH2−は、−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらのアルキレン中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。化合物(1)は、結合基が−COO−、−OCO−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、または−C≡C−である場合には、広い液晶相の温度範囲を有する。結合基が−CFO−、または−OCF−である場合には、比較的低い粘性を有する。
【0048】
式(2)〜式(4)の好適例を次に示す。これらの式中のRは、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、または炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである。R6は炭素数1〜10のアルキルであって、これらのアルキル中の任意の−CH−は、−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよい。R7は炭素数1〜9のアルキルである。そして、aは1〜20の整数であり、bは1〜10の整数であるが、aとbの合計は2〜19である。
【0049】
Figure 0004039281
【0050】
Figure 0004039281
【0051】
Figure 0004039281
【0052】
式(1)中のmおよびnは、独立して0〜10の整数であり、mとnの合計は〜10である。化合物(1)の好ましい例は、次の式によっても表される。
Figure 0004039281
これらの式におけるR、B、R、AおよびZは、式(1)におけるこれらの記号と同様に定義される。これらの式の内、式(G1)〜式(G6)がより好ましい。
【0053】
下記の構造に注目するとき、化合物(1)の好ましい例は、次の式(1−1)〜式(1−74)のそれぞれで示される。
Figure 0004039281
【0054】
Figure 0004039281
【0055】
Figure 0004039281
【0056】
Figure 0004039281
【0057】
Figure 0004039281
【0058】
Figure 0004039281
【0059】
Figure 0004039281
【0060】
Figure 0004039281
【0061】
これらの式において、R、BおよびRの意味は、式(1)におけるそれらと同じである。下記の記号は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンを示し、pおよびqは独立して0〜2の整数である。−(CH−、−(CH−、−(CH−、および−(CH−においては、任意の−CH−は−O−に置き換えられてもよいが、隣接した2つの−CH−が同時に−O−に置き換えられることはない。r、s、tおよびuは独立して0〜10の整数である。
Figure 0004039281
上記の例示化合物は、光学活性であってもよいし、光学活性でなくてもよい。不斉炭素の立体配置は(R)体、(S)体のどちらでもよい。ただし、ラセミ体およびメソ体の場合は不斉炭素を有していても光学活性を示さない。光学活性を示す部位は、式(1)中のR、BおよびRのいずれでも良いが、好ましくはBである。
【0062】
化合物(1)は、有機合成化学の手法を組み合わせることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、ホーベン−ワイル(Houben-Wyle, Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。シクロプロパン−1,2−ジイル基の合成、導入等の方法は、例えば、Tetrahedron Lett., 2000, 41, 8723、およびJ. Fluorine Chem., 2001, 112, 63に報告されている。これらの化合物を原料とする製造方法を具体的に説明する。いずれの方法も、化合物の光学活性の有無に関係なく利用できる。
【0063】
結合基としてCHを有するシクロプロパン化合物は、反応経路1によって合成することができる。なお、以下のすべての合成経路において用いられている式中の記号は、特に説明しない限り、式(1)〜式(4)において用いられている記号と同じ意味を示す。
<反応経路1>
Figure 0004039281
【0064】
化合物(101)を四臭化炭素等でハロゲン化させることによって、化合物(102)が得られる。水酸基がTHP(テトラヒドロピラニル)で保護された化合物(103)と化合物(102)とのクロス・カップリング反応により化合物(104)が得られる。水酸基の保護基はTHP等、有機合成化学において一般的に用いられているものでよいが、クロス・カップリング反応の条件に最適な保護基を選択する必要がある。酸性条件下で化合物(104)から保護基を外すことによって、化合物(105)が得られる。化合物(105)を種々のアクリル酸化合物と脱水縮合させることにより、化合物(1−a)が得られる。脱水縮合反応においては、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)等の縮合剤を用いることができる。アクリル酸化合物等の酸クロリドが入手可能な場合は、塩基性条件下で化合物(105)と酸クロリドを反応させることによって、エステル化してもよい。また、種々のアクリル酸の代わりに、フマル酸、イタコン酸、ソルビン酸、ムコン酸等のカルボン酸化合物と脱水縮合をさせることにより、それらのエステル化合物を得ることができる。このことは、以後に示されるすべての反応経路においても同様である。
【0065】
結合基として−OCO−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路2によって合成することができる。
<反応経路2>
Figure 0004039281
【0066】
前記の化合物(101)に重クロム酸ピリジニウム等の酸化剤を作用させることによりカルボン酸化合物(111)を得ることができる。得られた化合物(111)を反応経路1に記載の方法を用いて、化合物(112)と脱水縮合させると化合物(113)が得られる。化合物(113)の保護基を除去することにより化合物(114)が得られる。化合物(114)は、先のようにアクリル酸化合物と反応させることにより、化合物(1−b)へ誘導される。
【0067】
結合基として−COCH−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路3によって合成することができる。
<反応経路3>
Figure 0004039281
【0068】
化合物(121)と前記の(101)とをエステル化反応させて化合物(122)とする。化合物(122)の保護基を外して化合物(123)とした後、これとアクリル酸化合物とを脱水縮合させることによって化合物(1−c)が得られる。
【0069】
結合基として−OCF−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路4によって合成することができる。
<反応経路4>
Figure 0004039281
【0070】
前記のカルボン酸(111)を、文献(Angew. Chem. Int. Engl., 2001, 40(8), 1480)の方法に従い、1,3−プロパンジチオールおよびトリフルオロメタンスルホン酸と反応させることにより、室温で安定な中間体(131)が得られる。これを塩基性条件下で前記の化合物(112)と反応させる。得られたジチアン化合物をDAST((ジエチルアミノ)サルファー トリフルオリド)またはHF/トリエチルアミン錯体等の求核性のフッ素化剤と反応させることにより、化合物(132)が得られる。この化合物の保護基を外して化合物(133)としたのち、この化合物とアクリル酸化合物とを脱水縮合させることにより、化合物(1−d)が得られる。
【0071】
結合基として−OCH−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路5によって合成することができる。
<反応経路5>
Figure 0004039281
【0072】
前記の化合物(112)を塩基性条件下で化合物(102)と反応させて、化合物(141)とする。化合物(141)は、保護基を外した後アクリル酸化合物と脱水縮合させることにより、化合物(1−e)へ誘導される。
【0073】
結合基として−CH=CH−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路6によって合成することができる。
<反応経路6>
Figure 0004039281
【0074】
前記の化合物(101)にピリジニウム クロロクロメート等の酸化剤を作用させることにより、アルデヒド化合物(151)を得ることができる。塩基性条件下で、化合物(151)と化合物(152)とをWittig反応させると、化合物(153)が得られる。酸性条件下で、化合物(153)の保護基を外すとアルコール(154)が得られる。化合物(154)とアクリル酸化合物との脱水縮合によって、化合物(1−f)が得られる。
【0075】
結合基として−C≡C−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路7によって合成することができる。
<反応経路7>
Figure 0004039281
【0076】
前記の化合物(151)にトリフェニルホスフィンと四臭化炭素とを反応させると、化合物(161)が得られる。化合物(161)をn−BuLi等の塩基で処理することにより、化合物(162)が得られる。化合物(162)と前記の化合物(103)とを、例えばCastro反応またはSonogashira反応等を利用してクロスカップリングさせることにより、化合物(163)が得られる。酸性条件下で化合物(163)の保護基を外し、得られた化合物(164)とアクリル酸化合物とを脱水縮合させることによって、化合物(1−g)が得られる。
【0077】
、Rがアクリロイルオキシであるシクロプロパン化合物は、反応経路8によって合成することができる。
<反応経路8>
Figure 0004039281
【0078】
反応経路1〜7に記載の反応や他の公知の反応を適宜応用することにより、化合物(171)が得られる。酸性条件下でこの化合物の保護基を外し、得られた化合物(172)とアクリル酸化合物とを脱水縮合させることによって、化合物(1−h)が得られる。
【0079】
がフマロイルオキシ、Rがアクリロイルオキシであり、結合基としてCOCH、およびCHOCOを有するシクロプロパン化合物は、反応経路9によって合成することができる。
<反応経路9>
Figure 0004039281
【0080】
化合物(181)を、水酸化ナトリウム等による塩基性条件下で加水分解反応させて、化合物(182)とする。反応経路1〜8に記載の反応や他の公知の反応を適宜応用することにより、アクリレート化合物(183)が得られる。この化合物を、化合物(182)と脱水縮合させてエステル化合物(184)へ誘導する。反応経路1〜8に記載の反応や他の公知の反応を適宜応用することにより、フマレート化合物(186)が得られる。化合物(184)の保護基を外して化合物(185)とした後、これと化合物(186)とを脱水縮合させることによって、化合物(1−i)が得られる。
【0081】
がマレイミド(maleimide)
であり、結合基としてCHを有するシクロプロパン化合物は、反応経路10によって合成することができる。
<反応経路10>
Figure 0004039281
反応経路1〜9に記載の反応や他の公知の反応を適宜応用することにより、化合物(191)が得られる。DEAD(アゾジカルボン酸ジエチル)およびトリフェニルホスフィンの存在下で、化合物(191)と光延反応させて、前記の化合物(105)を化合物(192)に誘導する。化合物(192)を逆ディールスアルダー(Diels-Alder)反応させることにより、化合物(1−j)が得られる。
【0082】
がビニルエーテルであり、結合基として−CH−を有するシクロプロパン化合物は、反応経路11によって合成することができる。
<反応経路11>
Figure 0004039281
前記の化合物(105)に化合物(201)をパラジウム触媒とともに作用させることにより、化合物(1−k)が得られる。
【0083】
がビニルケトンであり、結合基としてCHを有するシクロプロパン化合物は、反応経路12によって合成することができる。
<反応経路12>
Figure 0004039281
【0084】
反応経路1〜11に記載の反応や他の公知の反応を適宜応用することにより、化合物(211)が得られる。これにマグネシウムを反応させて、グリニャール試薬(212)を調製できる。そして、(212)に(213)などの酸クロリドを触媒とともに適宜作用させることにより、化合物(214)を得ることができる。化合物(214)にt−BuOKなどの塩基を作用させることにより化合物(1−l)を得ることができる。なお、上記の経路図中のFe(acac)2において、acacはアセチルアセトネートを意味する。
以上の製造方法はすべて一般的な方法であり、化合物(1)はこれらの製造方法によって制限されない。
【0085】
本発明の組成物は、化合物(1)を少なくとも1つ含有する組成物である。重合性の基を有する化合物(1)の好ましい例は、RおよびRの片方のみが式(2)、式(3)および式(4)のいずれかで表される基であるシクロプロパン化合物、およびRおよびRが独立して式(2)、式(3)および式(4)のいずれかで表される基であるシクロプロパン化合物である。本発明の組成物にこのような化合物(1)を2つ以上用いる場合には、片方の末端に重合性官能基を有する化合物のみを用いることができる。そして、両端に重合性官能基を有する化合物のみを用いることもできる。更に、片方の末端に重合性官能基を有する化合物と、両端に重合性官能基を有する化合物とを組み合わせて用いることもできる。
【0086】
好ましい組成物の第1は、化合物(1)の少なくとも1つと重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物である。以下の説明では、「重合性でない液晶性化合物」を「非重合性液晶化合物」で表記する。化合物(1)は、適正な液晶相の温度範囲や他の液晶性化合物との好適な相溶性など、液晶としての高い特性を示す。従って、化合物(1)と非重合性液晶化合物とを含有する液晶組成物は、液晶表示素子を製造するときに封入される液晶組成物として用いることができる。光学活性である化合物(1)は、高いねじれ誘起力を有するので組成物のらせんピッチの調整に有用である。この液晶組成物は、本発明の重合体を得るための原料として用いることもできる。その際には、本発明の重合体と液晶性化合物との複合体とすることもできる。非重合性液晶化合物の例は、液晶化合物データベースLiqCryst(LCI Publisher Gmbh (Hambrug, Germany))などに記載されている液晶性化合物である。この液晶組成物は、更に二色性色素などの添加物を含有してもよい。
【0087】
本発明の組成物の第2は、化合物(1)の少なくとも1つと化合物(1)でない重合性化合物とを含有する組成物である。以下の説明では、「化合物(1)でない重合性化合物」を「その他の重合性化合物」と称し、「化合物(1)の少なくとも1つとその他の重合性化合物とを含有する組成物」を、「重合性組成物」と称する。重合性組成物は液晶相を有することが好ましいが、目的によっては液晶相を示さなくてもよい。この重合性組成物に関する説明は、次の重合体に関する説明に含まれる。
【0088】
本発明の重合体の第1は、化合物(1)の1つを重合させて得られる単独重合体である。本発明の重合体の第2は、化合物(1)の少なくとも2つを重合させて得られる共重合体である。本発明の重合体の第3は、重合性組成物を重合させて得られる共重合体である。これらのどの重合体も、化合物(1)が有する重合性官能基に由来する構成単位を有する。即ち、例えば、式(2)〜式(4)の少なくとも1つに由来する構成単位を有する。そして、化合物(1)の重合性官能基が共役二重結合である場合には、主鎖中に二重結合を有する重合体が得られる。この主鎖中の二重結合は、水素添加反応によって飽和結合に変換させることができる。本発明の重合体には、この水素添加された重合体も好ましく含まれる。下記は、本発明の重合体に含まれる好ましい構成単位である。
【0089】
Figure 0004039281
これらの構成単位中のR、R6およびR7の意味は、式(2)〜式(4)の好適例におけるそれらと同じである。
【0090】
その他の重合性化合物は、皮膜形成性および機械的強度を低下させず、化合物(1)と共重合し得るものであれば特に限定されず、また液晶性を示さなくてもよい。その他の重合性化合物の例は、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体などである。
【0091】
液晶性を示さないビニル誘導体の好ましい例は、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、α、β−ビニルナフタレン、メチルビニルケトン、イソブチルビニルケトンなどである。液晶性を示さないスチレン誘導体の好ましい例は、スチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロメチルスチレン、m−クロロメチルスチレン、p−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどである。
【0092】
液晶性を示さない(メタ)アクリル酸誘導体の好ましい例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールA グリジジルジアクリレート(商品名:大阪有機化学株式会社製 ビスコート700)、ポリエチレングリコールジアクリレートジメチルイタコネートなどである。
【0093】
液晶性を示さないソルビン酸誘導体の好ましい例は、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸リチウム、ソルビン酸1−ナフチルメチルアンモニウム、ソルビン酸ベンジルアンモニウム、ソルビン酸ドデシルアンモニウム、ソルビン酸オクタデシルアンモニウム、ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸プロピル、ソルビン酸イソプロピル、ソルビン酸ブチル、ソルビン酸t−ブチル、ソルビン酸ヘキシル、ソルビン酸オクチル、ソルビン酸オクタデシル、ソルビン酸シクロペンチル、ソルビン酸シクロヘキシル、ソルビン酸ビニル、ソルビン酸アリル、ソルビン酸プロパギルなどである。
【0094】
液晶性を示さないフマル酸誘導体の好ましい例は、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどである。好ましいイタコン酸誘導体は、ジエチルイタコネート、ジブチルイタコネート、ジイソプロピルイタコネートなどである。この他、ブタジエンやイソプレンなどを用いることもできる。なお、液晶性を示さないその他の重合性化合物は、上記の例によって制限されない。
【0095】
液晶性を有するが化合物(1)ではないその他の重合性化合物の例は、アクリル酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体、ソルビン酸誘導体、これらの酸のエステル、またはマレイミドなどであって液晶性を有する化合物である。これらのうち液晶性のアクリル酸誘導体は、透明で機械的強度の大きいポリマーを与えるので好ましい。この化合物は、重合性組成物の液晶相温度範囲を調製するために用いることもできる。また、上記の液晶性を有するその他の重合性化合物のうち、液晶性アクリル酸誘導体を除く化合物においては、その重合に要する時間がアクリル酸誘導体より長い場合がある。しかしながら、これらの重合性化合物は、副生物の生成を抑制し、ポリマーの機械強度および熱安定性を向上させるので有用である。アクリル酸誘導体およびフマル酸誘導体の例を次に示す。
Figure 0004039281
【0096】
本発明の重合体は、化合物(1)の1つ、化合物(1)の少なくとも2つ、または重合性組成物に、必要に応じて触媒や溶剤を加えて重合させることによって得られる。共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
【0097】
化合物(1)から本発明の重合体を得るには、種々の重合反応形式を用いることができる。利用できる重合反応形式は、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法などである。本発明の重合体を製造するには、その用途に適した重合法を選択することが好ましい。例えば、位相差フィルム、偏光素子などの光学異方性膜を製造するには、液晶相を保持した状態で敏速に重合させることが必要なため、紫外線または電子線等を照射する重合法が好ましい。その際には、化合物(1)と任意成分としてのその他の重合性化合物を、光ラジカル重合開始剤の存在下で重合させる。
【0098】
光ラジカル重合の好ましい開始剤は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商品名:ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュアー184)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名:イルガキュアー651)、イルガキュアー500、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、ダロキュアー4265、イルガキュアー784、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物などである。
【0099】
熱重合や光重合による重合体は、各種の保護膜や液晶配向膜、視野角補償膜などへの応用が可能である。光重合においては、偏光、特に偏光UV光を用いることにより、重合性分子を偏光の方向に揃えた状態で重合させることができる。従って、光重合による重合体は、各種の保護膜や液晶配向膜などの他、ラビングを必要としない配向膜などへの応用も可能である。本発明の重合体は光学異方性を有するため、単独で位相差フィルムとして使用するか、または他の位相差フィルムと組み合わせることにより、偏光素子、円偏光素子、楕円偏光素子、反射防止膜、色補償板、選択反射フィルムおよび視野角補償板等への応用が可能である。
【0100】
位相差フィルムは、光学活性を有する化合物(1)を適当量含有する組成物、または光学活性でない化合物(1)に他の光学活性化合物を適当量添加して得られる組成物を、配向処理した基板上に塗布し、重合することによって得られる。光学活性化合物の添加により、先の組成物の組織はらせん構造を示す。化合物(1)の重合によってこのらせん構造が固定され、位相差フィルムが形成される。位相差フィルムの特性は、得られたらせんピッチに依存する。このらせんピッチは、光学活性化合物の種類および添加量により調整できる。この添加量は、通常0.01〜50重量%、好ましくは1〜30重量%である。添加する光学活性化合物は1個でもよいが、らせんピッチの温度依存性を相殺する目的で複数の光学活性化合物を用いてもよい。また、この化合物(1)と光学活性化合物の他に、化合物(1)以外の重合性化合物が含まれてもよい。他の光学活性化合物のうち、非重合性の光学活性化合物の好ましい例は(OP−1)〜(OP−12)であり、重合性の光学活性化合物の好ましい例は(OP−13)〜(OP−19)である。
【0101】
Figure 0004039281
【0102】
Figure 0004039281
【0103】
Figure 0004039281
【0104】
Figure 0004039281
【0105】
Figure 0004039281
【0106】
この位相差フィルムの特性である可視光の選択反射は、らせん構造が入射光に作用し、円偏光や楕円偏光を反射させるものである。選択反射特性はλ=n・P(λは選択反射中心波長、nは平均屈折率、Pはらせんピッチ)で表されるため、n、Pによりλ、およびその帯域(Δλ)を適宜調整することができる。色純度を良くするにはΔλを小さくすればよいし、広帯域の反射を所望する際にはΔλを大きくすればよい。さらにこの選択反射はセル厚の影響も大きく受ける。色純度を保つためには、セル厚が小さくなりすぎないようにしなければならない。配向の均一性を保つためには、セル厚が大きくなりすぎないようにしなければならない。従って、適度なセル厚の調整が必要であり、0.5から25μmが好ましく、1から10μmがより好ましい。
【0107】
配向膜、反射防止膜、視野角補償膜などを製造するには熱重合が好ましい。熱重合に際しては、化合物(1)と任意成分としてのその他の重合性化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下で重合させる。熱によるラジカル重合の好ましい開始剤は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−t−ブチルパーオキシド(DTBPO)、t−ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2'−アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などである。重合は、一般的に0〜150℃の反応温度で、1〜100時間で行う。
【0108】
アニオン重合、配位重合およびリビング重合の好ましい開始剤は、n−CLi、t−CLi−RAlなどのアルカリ金属アルキル、アルミニウム化合物、遷移金属化合物などである。
【0109】
重合に際しては、化合物(1)または重合性組成物に対して、触媒の他に溶剤を添加してもよい。好ましい溶剤は、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、およびこれらの混合溶剤である。配向膜、反射防止膜、視野角補償膜などの製造を光重合によって行う場合には、組成物の溶液を基板上にスピンコート法で塗布し、溶剤を除去したのち光を照射して重合させてもよい。なお、重合時の溶剤の使用割合を限定することにはあまり意味がない。重合体の用途によって必要とされる重合体濃度が異なるし、この濃度は重合後の希釈によって調節することもできるからである。重合時の溶剤の使用割合は、重合効率、溶剤コスト、エネルギーコスト等の経済的観点を考慮して、個々のケースごとに決定されればよい。
【0110】
単離した重合体は溶剤に溶かして成形することができる。好ましい溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、テトラヒドロフラン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ビス(メトキシエチル)エーテル、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどである。しかしながら、溶剤はこれらに制限されることはなく、アセトン、ベンゼン、トルエン、ヘプタン、塩化メチレンなど一般的な有機溶剤との混合物であってもよい。なお、加工時の溶剤の使用割合を限定することには重合時と同様あまり意味がない。用途によっては、本発明の重合体の少なくとも2つを混合して用いることができるし、積層させて用いることもできる。積層させて用いる場合には、重合体を単離させず、光重合によって直接薄膜を形成させてもよい。
【0112】
本発明の重合体は、前記のような構成単位を有する重合体であるため、光学的異方性を有するので、単独で位相差フィルムに使用できる。この重合体を他の位相差フィルムと組み合わせることにより、偏光板、円偏光板、楕円偏光板、反射防止膜、色補償板、視野角補償板などに利用できる。
【0113】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。実施例1〜3および実施例5〜7においては、化合物(1)を、実施例4に記載した化合物の番号を用いて表記した。化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで確認した。核磁気共鳴スペクトルにおいてdはダブレット、ddはダブルダブレット、tはトリプレット、sepはセプテット、mはマルチプレットを示す。相転移温度の単位は℃であり、Cは結晶を、Iは等方性液体相を示す。以下に、物性値の測定法を示す。
<らせんピッチ>
下記の液晶組成物(M−1)99重量%に、試料化合物1重量%を溶解した組成物を使用し、Canoのくさび法(応用物理、1974, 43, 125)に準じ、25℃において測定した。
Figure 0004039281
<重量平均分子量と数平均分子量>
島津製作所製の島津LC−9A型ゲル浸透クロマトグラフ、昭和電工製のカラムShodex GF−7M HQ(展開溶剤はDMF)を用いた。
<鉛筆硬度>
JIS規格「JIS−K−5400 8.4 鉛筆引掻試験」の方法に従って、測定した。
【0114】
実施例1
<No.(1R,2S,1'S,2'R)−117の化合物の製造>
Figure 0004039281
Tetrahedron Lett., 2000, 41, 8723 に記載の方法に準じて、化合物(ex 1−1)が得られた。WO 01/53248 に記載の方法により、化合物(ex 1−2)が得られた。
Figure 0004039281
化合物(ex 1−1)(100mmol)、化合物(ex 1−2)(220mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(220mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(220mmol)をテトラヒドロフラン(200ml)に加え、窒素雰囲気下、室温で15時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、食塩水(200ml)を加え希塩酸で中和し、トルエン(500ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶剤:酢酸エチル:トルエン=1:4)によって精製し、エタノールから再結晶して、標題の化合物(40mmol)を得た。
相転移温度: C 57.5 I.
H−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm);0.38−0.53(m,4H)、0.90−1.09(m,4H)、1.40−1.86(m,16H)、3.98−4.20(m,12H)、5.82(dd,2H)、6.12(dd,2H)、6.40(dd,2H)、6.89(d,4H)、7.98(d,4H).
らせんピッチ:12.1μm
【0115】
実施例2
<No.(1R,2S,1'S,2'R)−177の化合物の製造>
Figure 0004039281
Figure 0004039281
水浴上で、前記の化合物(ex 1−1)(100mmol)、上記の化合物(ex 2−1)(240mmol)、および4−ジメチルアミノピリジン(240mmol)をジクロロメタン(200ml)に加え、窒素雰囲気下で撹拌した。そこへ、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(240mmol)のジクロロメタン(100ml)溶液を滴下した。滴下後、室温で15時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、食塩水(200ml)を加え、トルエン(500ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶剤:酢酸エチル:トルエン=1:4)によって精製し、エタノールから再結晶して標題の化合物(75mmol)を得た。
相転移温度: C 49.4 I.
H−NMR(500MHz,CDCl):δ(ppm);0.35−0.48(m,4H)、0.87−0.99(m,4H)、1.30(d、12H)、4.12(d,4H)、5.11(sep,2H)、6.83−6.85(m,4H).
らせんピッチ:10.3μm
【0116】
実施例3
<No.(1R,2S,1'S,2'R,1"S,2"R)−87の化合物の製造>
Figure 0004039281
(第1段)
Figure 0004039281
Tetrahedron Lett., 2000, 41, 8723 に記載の方法に準じて、化合物(ex 3−1)が得られた。化合物(ex 3−1)(300mmol)、テトラヒドロ−2H−ピラン(600mmol)およびピリジニウム p−トルエンスルホネート(2g)を塩化メチレン(300ml)に加え、窒素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。水(200ml)を加え、トルエン(800ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、粗製の(ex3−2)を得た。
Figure 0004039281
【0117】
(第2段)
Figure 0004039281
化合物(ex 3−3)(360mmol)をTHF(300ml)に加え、窒素雰囲気下−20℃に冷却した。そこにt−BuOK(360mmol)を加えて同温度で1時間撹拌した。次に同温度を保ちながら、第1段で得られた(ex 3−2)のTHF(300ml)溶液を滴下した。滴下後、同温度で2時間撹拌した後、徐々に室温まで昇温した。水(1000ml)を加え、トルエン(1000ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶剤:酢酸エチル:トルエン=1:4)によって精製し、化合物(ex3−4)(250mol)を得た。
Figure 0004039281
【0118】
(第3段)
化合物(ex 3−4)(250mmol)およびピリジニウム p−トルエンスルホネート(2g)をエタノール(300ml)に加え、窒素雰囲気下、60℃で6時間撹拌した。水(200ml)を加え、酢酸エチル(800ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、粗製の(ex3−5)を得た。
Figure 0004039281
【0119】
(第4段)
水浴上、粗製の化合物(ex 3−5)、アクリル酸(300ml)および4−ジメチルアミノピリジン(300mmol)をジクロロメタン(300ml)に加え、窒素雰囲気下で撹拌した。そこへ、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(300mmol)のジクロロメタン(200ml)溶液を滴下した。滴下後、室温で10時間撹拌した。析出した沈殿物を濾別し、食塩水(300ml)を加え、トルエン(800ml)で抽出した。有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶剤を留去し、残査をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、展開溶剤:酢酸エチル:トルエン=1:4)によって精製し、エタノールから再結晶して標題の化合物(120mmol)を得た。
【0120】
実施例4
実施例1〜3の方法に準じて、化合物No.1から化合物No.216を製造する。これらの化合物を表にまとめた。この表において、R、環構造の基およびRのそれぞれの欄に記載された基の結合順は、式(1)に従う。Bの例として記載されている骨格は、異なる立体配置が存在する場合には、それらのいずれであってもよいことを示す。それらの混合物であってもよい。ただし、ラセミ体およびメソ体の場合は不斉炭素を有していても光学活性を示さない。
【0121】
Figure 0004039281
【0122】
Figure 0004039281
【0123】
Figure 0004039281
【0124】
Figure 0004039281
【0125】
Figure 0004039281
【0126】
Figure 0004039281
【0127】
Figure 0004039281
【0128】
Figure 0004039281
【0129】
Figure 0004039281
【0130】
Figure 0004039281
【0131】
Figure 0004039281
【0132】
Figure 0004039281
【0133】
Figure 0004039281
【0134】
Figure 0004039281
【0135】
Figure 0004039281
【0136】
Figure 0004039281
【0137】
Figure 0004039281
【0138】
Figure 0004039281
【0139】
Figure 0004039281
【0140】
Figure 0004039281
【0141】
Figure 0004039281
【0142】
Figure 0004039281
【0143】
実施例5
実施例1で製造した化合物No.(1R,2S,1'S,2'R)−117(100mg)と光重合開始剤(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ製のイルガキュアー184;4mg)とを混合して重合性の組成物を調製した。波長365nmの4W紫外線ランプを用いて、その組成物に30℃で30分間照射した。得られた重合体のGPCによる重量平均分子量(Mw)は25,000、多分散度(Mw/Mn)は1.40であった。融点(Tm)は200℃以上であり、耐熱性に優れていた。フィルムの鉛筆硬度は3Hであった。
【0144】
実施例6
実施例1で製造した化合物No.(1R,2S,1'S,2'R)−117(5重量%)および前記の液晶組成物(M−1)(95重量%)からなる組成物(100mg)と光重合開始剤(チバスペシャリティー・ケミカルズ製のイルガキュアー184;4mg)とを混合して、重合性の組成物を調製した。2枚のガラス基板を張り合わせ、間隔が5μmであるセルを作製した。得られた組成物をセルに40℃で注入した。セルに注入する際、この組成物は従来の組成物より速やかに注入できた。これはこの組成物の粘性が低いことを示す。セルを偏光顕微鏡で観察したところ、コレステリック相のテキスチャーが認められた。波長365nmの4W紫外線ランプを用いて、40℃で3分間照射した。セルを室温に戻し、形成された光学的異方性フィルムをガラス基板から剥がした。GPCによる重量平均分子量(Mw)は22,000、多分散度(Mw/Mn)は1.37であった。融点(Tm)は200℃以上であり、耐熱性に優れていた。フィルムの鉛筆硬度は3Hであった。
【0145】
実施例7
実施例2で製造した化合物No.(1R,2S,1'S,2'R)−177(0.2g)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN;0.01g)、およびベンゼン(1mL)をガラスのアンプルに入れた。これを−60℃に冷却して、真空ポンプで十分脱気した後に封管した。このアンプルを70℃の水浴で24時間加熱した。得られた反応混合物を、メタノール(150mL)から3回再沈殿して重合体を得た。GPCで測定した重量平均分子量(M)は14,000であった。
【0146】
実施例8
Figure 0004039281
実施例1で製造した化合物No.(1R,2S,1'S,2'R)−117(20mg)、化合物(ex 7−1)(50mg)、化合物(ex 7−2)(50mg)、および光重合開始剤(チバスペシャリティー・ケミカルズ製のイルガキュアー184;4mg)を混合して重合性の組成物を調製した。この組成物を偏光顕微鏡で観察して、室温にてコレステリック相を示すことを確認した。配向処理したガラス基板と配向処理をしていないガラス板を張り合わせ、間隔が7μmであるセルを作製した。このセルに前記の組成物を室温で注入した。この組成物は速やかにセルに注入することができた。この事実は、この組成物の粘性が低いことを示す。セルを30℃にて5分間熱処理を行い偏光顕微鏡で観察したところ、均一なコレステリック配向が認められた。また、セルは可視光域で選択反射を示すことが確認された。波長365nmの4W紫外線ランプを用いて、30℃で30分間紫外線を照射し、注入した組成物を重合させた。セルを偏光顕微鏡で観察したところ均一なコレステリック配向が維持されていた。そして、セルの透過スペクトルを測定して、中心波長555nm、波長領域525から585nmの領域において選択反射を示すことを確認した。以上のことから、円偏光選択反射機能性素子として使用できることが確認された。生成した光学的異方性体をガラス基板から剥がした。GPCによる重量平均分子量(Mw)は13,000、多分散度(Mw/Mn)は1.60であった。融点(Tm)は130℃以上であり、耐熱性に優れていた。フィルムの鉛筆硬度は3Hであった。
【0147】
【発明の効果】
本発明のシクロプロパン化合物は、適正な液晶相温度範囲を示し、他の化合物との優れた相溶性を有する。この化合物を含有する重合性の組成物を重合させることによって、重合速度、重合体の透明性、機械的強度、塗布性などの特性に優れた重合体が得られる。この重合体は光学異方性体として利用できる。

Claims (34)

  1. 式(1)で表されるシクロプロパン化合物。
    Figure 0004039281
    式(1)において、R1およびRは独立して、重合性の基、水素、ハロゲン、−CN、−CF、−CFH、−CFH、−OCF、−OCFH、−NCO、−NCS、または炭素数1〜20のアルキルであり、R1およびRの少なくとも1つは重合性の基であり、この炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の−CH2−は−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CH=CH−、−CF=CF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンまたは−CNで置き換えられてもよい;Bは下記の2価基のいずれか1つであり、これらの基中の任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;
    Figure 0004039281
    複数のAは独立して、単結合、B、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、これらの環において任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、そしてすべての環において、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;複数のZは独立して、単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、任意の−CH2−は−O−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CFO−、−OCF−または−C≡C−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;mおよびnは独立して0〜10の整数であり、これらの合計は0〜10である;但し、m=n=0、R =水素、R =アルキルオキシカルボニルエテニルである場合、およびm=n=0、R =R =アルキルオキシカルボニルエテニルである場合を除く
  2. 重合性の基が式(2)で表される基、式(3)で表される基、または式(4)で表される基である、請求項1に記載のシクロプロパン化合物。
    Figure 0004039281
    これらの式において、R、RおよびRは独立して、水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH2−は−O−、−COO−、−OCO−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい;kは0〜20の整数であり、hおよびjは独立して0または1である;−(CH2−における任意の−CH2−は−O−で置き換えられてもよい。
  3. 式(1)で表される化合物が光学活性である、請求項1または2に記載のシクロプロパン化合物。
  4. およびRの一方のみが式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基である、請求項2に記載のシクロプロパン化合物。
  5. およびRが独立して、式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基である、請求項2に記載のシクロプロパン化合物。
  6. およびRの一方のみが式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基であり、R、RおよびRが独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、または炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである、請求項2に記載のシクロプロパン化合物。
  7. およびRが独立して、式(2)で表される基、式(3)で表される基または式(4)で表される基であり、R、RおよびRが独立して水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル、または炭素数3〜10のアルコキシカルボニルアルキルである、請求項2に記載のシクロプロパン化合物。
  8. 式(G−1)〜式(G−11)のいずれか1つで表される、請求項1に記載のシクロプロパン化合物。
    Figure 0004039281
    これらの式におけるR、B、R、AおよびZは、式(1)におけるこれらの記号と同様に定義される。
  9. 式(G−1)〜式(G−6)のいずれか1つで表される、請求項8に記載のシクロプロパン化合物。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つを含有する組成物。
  11. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、請求項1に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
  12. 請求項4および5のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、請求項1に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
  13. 請求項6および7のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、請求項1に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
  14. 請求項8に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、請求項1に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
  15. 請求項9に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、請求項1に記載のシクロプロパン化合物ではない重合性化合物とを含有する組成物。
  16. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
  17. 請求項4および5のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
  18. 請求項6および7のそれぞれに記載のシクロプロパン化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
  19. 請求項8に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
  20. 請求項9に記載のシクロプロパン化合物の少なくとも1つと、重合性でない液晶性化合物とを含有する組成物。
  21. 請求項1〜9のいずれか1項に記載のシクロプロパン化合物から得られる重合体。
  22. 請求項21に記載の重合体を水素添加することによって得られる重合体。
  23. 請求項10〜15のいずれか1項に記載の組成物から得られる重合体。
  24. 請求項23に記載の重合体を水素添加することによって得られる重合体。
  25. 重合体が光学活性である、請求項21〜24のいずれか1項に記載の重合体。
  26. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する光学異方性体。
  27. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する位相差フィルム。
  28. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する液晶配向膜。
  29. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する反射防止フィルム。
  30. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する視野角補償フィルム。
  31. 請求項21〜25のいずれか1項に記載の重合体を含有する偏光素子。
  32. 請求項26に記載の光学異方性体、請求項27に記載の位相差フィルム、請求項28に記載の液晶配向膜、請求項29に記載の反射防止フィルム、請求項30に記載の視野角補償フィルムおよび請求項31に記載の偏光素子の少なくとも1つを含有する液晶表示素子。
  33. 請求項10または請求項16〜20のいずれか1項に記載の組成物を含有する液晶表示素子。
  34. 少なくとも1つの光学活性化合物を更に含有する、請求項33に記載の液晶表示素子。
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