JP6307078B2 - 離型フィルム - Google Patents
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Description
耐カール性とは、フィルムをマット加工しても、カール現象の発生が十分に防止されるフィルム特性を意味するものとする。
本発明の離型フィルムはさらに、耐カール性に十分に優れている。
本発明の離型フィルムは、表面の微細凹凸形状の成形体への転写を十分に精度よく達成することができる。
本発明のPS系離型フィルムに含有されるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(以下、単に「SPS系樹脂」という)は、いわゆるシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味するものである。
ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。)
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
例えば出光興産(株)社製「ザレック」(142ZE、300ZC、130ZC、90ZC)等として入手できる。
本発明のPS系離型フィルムは、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。本発明のPS系離型フィルムは特に、滑剤及び酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。
フェノール系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGA−80(住友化学社製)、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(ともにADEKA社製)、イルガノックス245(BASF社製)、サイアノックス1790(CYTEC社製)等が挙げられる。
リン系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGP(住友化学社製)、アデカスタブPEP−36(ADEKA社製)、Irgafos38、Irgafos168(ともにBASF社製)等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーMB(住友化学社製)、アデカスタブAO−412S(ADEKA社製)等が挙げられる。
本発明のPS系離型フィルムは以下の方法により製造できる。
例えば、前記SPSおよび所望により含有される他のポリマーおよび添加剤を所定の割合で混合し、溶融・混練して前駆体フィルム(未延伸フィルム)を製造した後、得られた前駆体フィルムを同時二軸延伸処理およびマット加工に順次、供する。
前駆体フィルムの製造方法は公知の方法を採用できる。例えば、所望の成分からなる混合物を押出機により溶融・混練し、混練物をTダイより押し出した後、冷却すればよい。
二軸延伸処理工程では通常、同時二軸延伸処理を行った後、熱固定処理を行う。このような二軸延伸処理工程によって、フィルムのガラス転移温度を上昇させたり、熱膨張率を減少させたり、熱収縮率の絶対値を減少させたりすることができる。
延伸速度とは、{(延伸後寸法/延伸前寸法)−1}×100(%)/延伸時間で算出される値である。
マット加工とは、フィルムに対して、張力を付与しながら、所望の表面形状を備えた一組の型の間で、熱および圧力を付与することにより、フィルム表面に型の表面形状を転写させ、艶消しのための微細な凹凸を形成する処理である。マット加工されるフィルムは上記した方法で二軸延伸処理工程を経たフィルムである。本発明において、離型フィルムを特定条件でマット加工することにより、カール現象を十分に防止することができ、また当該離型フィルムを用いて行うプレス成形時において、離型フィルムの離型性を更に向上させつつ、成形体に離型フィルム表面に有する微細凹凸形状を精度よく転写させることができる。
一組の型のうち少なくとも一方、好ましくは両方の型として艶消し性を有する型を使用する。艶消し性を有する型とは、マット加工されたフィルム面が後述する表面粗さ(Ra)を有するように、フィルムとの接触面に表面粗さを付与された型のことである。そのような型は、フィルムとの接触面の表面粗さが、マット加工されたフィルム面が有する後述の表面粗さ(Ra)と同一か、または当該表面粗さより大きな値である。
例えば、一組の型がフィルムに与える表面粗さの差および/または温度差を小さくすることにより、カール率を低減することができる。具体的には、一組の型がフィルムに与える表面粗さの差、すなわちマット加工されたフィルムの両面における表面粗さの差を後述の範囲内にすることにより、カール率をより一層有効に低減することができる。一組の型がフィルム両面に与える温度の差、例えば上型と下型との設定温度差を、特に30℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下とすることにより、カール率をより一層有効に低減することができる。
また例えば、プレス圧および/またはフィルム張力を小さくすることにより、カール率を低減することができる。具体的には、金型プレス法の場合、プレス圧力を特に1〜100kgf/cm2、好ましくは1〜50kgf/cm2とすることにより、カール率をより一層有効に低減することができる。フィルムの張力を特に10〜100N、好ましくは10〜50Nとすることにより、カール率をより一層有効に低減することができる。
本発明のPS系離型フィルムのカール率は80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは30%以下である。カール率が大きすぎると、プレス成形時において端部に折れ曲がりが生じ、成形体に、当該端部折れに起因するスジ状の模様が発生し、その周辺において離型フィルムの表面形状が十分に転写されない。
下記成分の混合物を押出機により樹脂温度280℃でTダイより溶融押し出した後、冷却し、未延伸フィルム(前駆体フィルム)を得た。未延伸フィルムを、後述の条件で延伸工程に供した。延伸工程は延伸処理および熱固定処理からなり、熱固定処理は所定の温度および弛緩倍率にて弛緩式熱固定処理を行った。なお、延伸処理は同時二軸延伸である。
シンジオタクチックポリスチレン樹脂は「ザレック142ZE」(出光興産(株)社製、ガラス転移温度95℃、融点247℃)を使用した。
酸化防止剤はフェノール系酸化防止剤を使用し、滑剤はアマイド系滑剤を使用した。
その配合割合は、シンジオタクチックポリスチレン樹脂100重量部に対して、アデカスタブAO−60を0.2重量部、滑剤を0.2重量部とした。
延伸倍率は3.3×3.4倍(MD×TD)
延伸温度:115℃
延伸速度:500%/分
熱固定温度:215℃
弛緩倍率:0.92×0.92(MD×TD)
各実施例/比較例で得られたマット加工済みの離型フィルムを、以下に示す項目について評価した。その結果を表1に示す。なお、具体的な評価方法は以下のとおりである。
200mm×200mmにカットしたフィルムを、180℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して平らな面に置き、真上から見た際のカールした部分の面積(mm2)を測定した。この面積に基づき、下記式よりカール率(%)を算出した。
カール率(%)=(カールした部分の面積)/(加熱後のフィルムの総面積)×100
なお、加熱後のフィルムの総面積は、フィルムがカールした場合、カールしたフィルムを引き伸ばして測定する。
フィルムの表面粗さはJIS B−0601:1994に準拠して測定した算術平均高さ(Ra)である。上面はマット加工時に上型と接触するフィルム面であり、下面は下型と接触するフィル面である。
まず、長さ150mmの2本の直線をそれぞれ、MD方向およびTD方向に対して平行に、かつ互いに中点で交わるように、試験片(フィルム;200mm×200mm)上に描いた。この試験片を、標準状態(温度23℃×湿度50%)に2時間放置し、その後試験前の直線の長さを測定した。続いて180℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して、標準状態に2時間放置冷却した。その後各方向の直線の長さを測定し、試験前の長さからの変化量を求め、当該試験前の長さに対する変化量の割合として熱収縮率を求めた。熱収縮率について正の値は収縮したことを意味する。なお、熱収縮率の絶対値が3%以下であれば非常に好ましいレベル(◎)、6%以下であれば好ましいレベル(○)、8%以下であれば実用上問題ないレベル(△)、8%超であれば実用上問題あるレベル(×)である。
エポキシ樹脂フレークを熱プレス成型するに際し、実施例1〜5、比較例1及び比較例2のそれぞれにおいて得られた転写フィルム(転写性を有する離型フィルム)を用いた。詳しくは図1に示すように、エポキシ樹脂フレーク1を上下金型2,3により熱プレス成型するに際し、フレーク1と金型2,3との間に前記転写フィルム4を介在させた。転写フィルム4は金型より外側で把持し固定した。なお、前記転写フィルム4は、シリコンゴム層により粗さを付与した面が、上下金型2,3側になるように配置した。プレス時において、金型2,3の接近はスペーサー5により制限された。プレス条件は次のとおりであった。金型2,3の温度;180℃、プレス圧;100kg/cm2、スペーサー厚み0.5mm、プレス時間;10分間、凹部の深さ(凸部の高さ);1mm。
プレス成形後、成形体を取り出し、放置冷却した後、フィルム4を成形体から剥離した。成形体の表面に転写された転写面を目視により観察し、転写性について評価した。
◎;エポキシ成型体の転写面には、スジ状の模様やムラがなく、転写フィルムの表面がそのまま良好に転写されていた;
○;エポキシ成型体の転写面には、ほぼスジ状の模様やムラがなく、転写フィルムの表面がほぼ転写されていた;
△;エポキシ成型体の転写面には、少しスジ状の模様やムラがあり、転写フィルムの表面の転写がやや不十分であった(実用上問題なし);
×;エポキシ成型体の転写面に折れ曲った転写フィルムが段差となって転写し、実用上問題がある転写性であった。
Claims (5)
- シンジオタクチックポリスチレン系樹脂およびフェノール系酸化防止剤を含有する前駆体フィルムを、同時二軸延伸処理および少なくとも片面のマット加工に供してなる二軸配向ポリスチレン系フィルムからなる離型フィルムであって、
当該離型フィルムのカール率が80%以下であり、
前記マット加工の面の表面粗さが0.5μm以上8.0μm以下であり、
前記離型フィルムの厚みが10〜150μmである、
ことを特徴とする離型フィルム。 - 前記カール率が60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の離型フィルム。
- 前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレンである請求項1又は2に記載の離型フィルム。
- 前記フェノール系酸化防止剤の含有割合が、前記シンジオタクチックポリスチレン系樹脂に対して0.01〜3.0重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム。
- 前記離型フィルムの熱収縮率が8%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム。
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