JP6207268B2 - ポリスチレン系フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びが5%以上であるポリスチレン系フィルムに関する。
本発明のポリスチレン系フィルムはまた耐熱伸び安定性にも優れているので、高温に長時間曝されても、機械的物性の低下が防止される。このため、本発明のポリスチレン系フィルムを離型フィルムとしてプレス成形機の上下金型間に挟んで保持したまま、成形温度を維持して、プレス成形機を成形作業の再開に備えて待機させても、当該離型フィルムを作業再開後も継続して使用することができる。
本発明のポリスチレン系フィルムはさらに、高温に長時間曝されても、黄変が防止される。
耐熱変形性とは、フィルムを加熱しても、フィルムの溶融変形が十分に防止されるフィルム特性を意味するものとする。
耐熱伸び安定性とは、フィルムを長時間(例えば48〜100時間)、高温(例えば170〜180℃)に曝しても、フィルムの引張伸びの低下が防止され、かつフィルムの良好な引張強さが維持されるフィルム特性を意味するものとする。
本発明のPS系フィルムに含有されるシンジオタクチックポリスチレン系樹脂(以下、単に「SPS系樹脂」という)は、いわゆるシンジオタクチック構造を有するスチレン系ポリマーである。シンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基または置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を意味するものである。
ポリ(アリールスチレン)としては、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)等が挙げられる。
ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等が挙げられる。
ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
SPS系樹脂は例えば、出光興産(株)社製「ザレック」(142ZE、300ZC、130ZC、90ZC)等として入手できる。
酸化防止剤はPS系フィルムの分野で黄変防止を目的として使用される酸化防止剤が使用可能であり、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を含有させないと、耐熱伸び安定性が低下する。
フェノール系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGA−80(住友化学社製)、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−80、アデカスタブAO−330(ともにADEKA社製)、イルガノックス245(BASF社製)、サイアノックス1790(CYTEC社製)等が挙げられる。
リン系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーGP(住友化学社製)、アデカスタブPEP−36(ADEKA社製)、Irgafos38、Irgafos168(ともにBASF社製)等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤の市販品として、例えば、スミライザーMB(住友化学社製)、アデカスタブAO−412S(ADEKA社製)等が挙げられる。
本発明のPS系フィルムは上記した酸化防止剤以外に、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
本発明のPS系フィルムは以下の方法により製造できる。
例えば、前記SPSおよび酸化防止剤ならびに所望により含有される他のポリマーおよび添加剤を所定の割合で混合し、溶融・混練して前駆体フィルム(未延伸フィルム)を製造した後、得られた前駆体フィルムに対して二軸延伸処理を行う。
延伸速度とは、{(延伸後寸法/延伸前寸法)−1}×100(%)/延伸時間で算出される値である。
本発明のPS系フィルムの厚みは特に制限されるものではなく、例えば、10〜150μmであり、好ましくは12〜125μmである。
本発明のPS系フィルムはその製造過程において、特に前記した熱固定処理を含む二軸延伸工程の前後で、フィルムのガラス転移温度が50℃以上上昇し、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上上昇している。
なお、本発明のPS系フィルムのガラス転移温度は、250℃程度までであるが、特にそれに限定されない。また、ガラス転移温度の上昇温度幅は120℃程度までであるが、特にそれに限定されるものではない。
本明細書中、PS系フィルムのガラス転移温度はJIS C6481:1996「5.17.1 TMA法」に基づいて測定された値を用いている。
離型フィルムは、熱プレス成形時に金型と被成形材料との間に介在させることにより、金型と被成形材料との融着を防止させるためのフィルムである。
プレス時の金型温度、圧力および処理時間はプラスチック成形の分野で公知の条件が使用可能である。例えば、プレス時の金型温度は通常、80〜200℃である。プレス圧は通常、1〜150kg/cm2である。プレス時間は通常、0.5〜60分間である。
表1または表2に記載の成分の混合物を押出機により樹脂温度280℃でTダイより溶融押し出した後、冷却し、未延伸フィルム(前駆体フィルム)を得た。未延伸フィルムを、表1または表2に記載の条件で延伸工程に供した。延伸工程は延伸処理および熱固定処理からなり、熱固定処理は所定の温度および弛緩倍率にて弛緩式熱固定処理を行った。
同時二軸延伸は、MD方向およびTD方向について同時に延伸した。
逐次二軸延伸は、MD方向で延伸した後、TD方向で延伸した。
一軸延伸は、MD方向のみについて延伸した。
酸化防止剤は、アデカスタブAO−60(フェノール系、ADEKA社製)、アデカスタブPEP−36(リン系、ADEKA社製)、アデカスタブAO−412S(硫黄系、ADEKA社製)を使用した。
熱膨張率
熱機械測定装置(Q400EM;TA INSTRUMENTS社)を用い、試験片(フィルム;2mm×25mm)を、該試験片の長手方向が鉛直方向になるように吊り下げ、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加した。その後、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で昇温し、50℃から100℃までの寸法変化を1℃あたりの変化量に換算し、熱膨張率R1を測定した。熱膨張率は引張方向がMD方向およびTD方向の場合について測定した。熱膨張率R1について正の値は膨張したことを意味する。
◎;R1≦60ppm/℃(最良);
○;60ppm/℃<R1≦70ppm/℃(良);
△;70ppm/℃<R1≦85ppm/℃(実用上問題なし);
×;85ppm/℃<R1(実用上問題あり)。
まず、長さ150mmの2本の直線をそれぞれ、MD方向およびTD方向に対して平行に、かつ互いに中点で交わるように、試験片(フィルム;200mm×200mm)上に描いた。この試験片を、標準状態(温度23℃×湿度50%)に2時間放置し、その後試験前の直線の長さを測定した。続いて180℃の雰囲気に設定された熱風循環式オーブン内で一角を支持した宙吊り状態にて30分間放置した後、取り出して、標準状態に2時間放置冷却した。その後各方向の直線の長さを測定し、試験前の長さからの変化量を求め、当該試験前の長さに対する変化量の割合として熱収縮率R2を求めた。熱収縮率R2について正の値は収縮したことを意味する。
◎;R2の絶対値≦4.0%(最良);
○;4.0%<R2の絶対値≦8.0%(良);
△;8.0%<R2の絶対値≦10.0%(実用上問題なし);
×;10.0%<R2の絶対値(実用上問題あり)。
JIS K7127に従って、180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びを測定した。測定時の引張方向はMD方向であった。引張伸びが5%未満では、離型用フィルムの評価時において破断が発生した。
◎:20%≦引張伸び(最良);
○:10%≦引張伸び<20%(良);
△:5%≦引張伸び<10%(実用上問題なし);および
×:引張伸び<5%。
JIS K7127に従って、180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張強さを測定した。測定時の引張方向はMD方向であった。
◎:70MPa≦引張強さ(最良);
○:60MPa≦引張強さ<70MPa(良);
△:40MPa≦引張強さ<60MPa(実用上問題なし);および
×:引張強さ<40MPa。
JIS C6481:1996「5.17.1 TMA法」に従ってガラス転移温度を測定した。詳しくは、熱機械測定装置(Q400EM;TA INSTRUMENTS社)により、試験片(フィルム;2mm×25mm)を、引張荷重5gf/2mm幅および昇温速度10℃/分の条件下で昇温し、Tgを測定した。Tgは引張方向がMD方向およびTD方向の場合について測定し、それらの平均値で示した。Tgの測定は、最終的に得られたフィルムおよび延伸直前のフィルムについて行い、上昇幅(℃)を求めた。
・最終的に得られたフィルムのTg
◎:170℃≦Tg(最良);
○:160≦Tg<170℃(良);
△:150≦Tg<160℃(実用上問題なし);および
×:Tg<150℃。
・上昇幅
◎:70℃≦上昇幅(最良);
○:60≦上昇幅<70℃(良);
△:50≦上昇幅<60℃(実用上問題なし);および
×:上昇幅<50℃。
Claims (7)
- シンジオタクチックポリスチレン系樹脂およびフェノール系酸化防止剤を含有する前駆体フィルムを、同時二軸延伸処理に供してなる二軸配向ポリスチレン系フィルムであって、
180℃の周囲温度で48時間保持した後の引張伸びが5%以上であり、
180℃での熱収縮率の絶対値は、MD方向およびTD方向のいずれの方向についても6.0%以下であり、
離型フィルムとして使用されるポリスチレン系フィルム。 - 同時二軸延伸処理が、弛緩式熱固定処理を伴う同時二軸延伸処理である、請求項1に記載のポリスチレン系フィルム。
- 酸化防止剤がフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤の組み合わせを含む請求項1または2に記載のポリスチレン系フィルム。
- フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤がそれぞれシンジオタクチックポリスチレン系樹脂に対して0.01〜1.5重量%で含有される請求項3に記載のポリスチレン系フィルム。
- シンジオタクチックポリスチレン系樹脂がシンジオタクチックポリスチレンである請求項1〜4のいずれかに記載のポリスチレン系フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリスチレン系フィルムの製造方法であって、
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂および酸化防止剤を含有する前駆体フィルムに対して、同時二軸延伸処理を行うポリスチレン系フィルムの製造方法。 - 同時二軸延伸処理が、弛緩式熱固定処理を伴う同時二軸延伸処理である、請求項6に記載のポリスチレン系フィルムの製造方法。
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