JP4417012B2 - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報の光学的記録/再生が可能な光情報記録媒体に関し、より詳しくは、電子情報の光学的な記録/再生ができると共に、レーベル面に、レーザ光を用いて可視情報を良好に記録することができる光情報記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
多くの情報を記録、保存、書き換えするための電子情報記録媒体は、近年、コンピューター周辺機器としての重要性が益々高まっている。中でも、レーザ光を用いて記録、再生を行う光情報記録媒体は、高密度の情報記録、保存、再生が可能なことから、大容量記録媒体として注目されている。このような光情報記録媒体の例としては、CD−RW、DVD−RWなどに代表される相変化型光学記録媒体、CD−R、DVD−Rに代表される有機色素系光学記録媒体などが挙げられる。
【0003】
このような光情報記録媒体に記録された電子情報の内容は、光学的に再生することにより確認できるが、一方、この電子情報の内容を可視情報として媒体表面に表示することは、情報管理上重要なことである。このような表示方法としては、従来から、例えば、媒体のレーベル面(電子情報を記録する面とは反対側の面)に、インクジェットプリンター、感熱プリンターにより、電子情報の内容を印刷記録する方法、電子情報の内容を記録したラベル等を貼り付ける方法等が採用されている。なかでも、最近では、レーザ光により媒体のレーベル面側に可視情報を記録する方法(特許文献1)、さらに、可視情報を記録する記録層の上に、文字等を印刷したシートを貼り付ける方法等が報告され(特許文献2)、これらは、媒体に機械的な影響を及ぼすことなく可視情報の記録を行える方法として期待されている。
【0004】
図2は、例えば、特許文献1又は特許文献2において報告されているような、従来のレーザ光によりレーベル面側に可視情報を記録する従来の光情報記録媒体の構造を説明するための図である。ここに示された光情報記録媒体200は、記録再生用の案内溝又はピットが形成されたポリカーボネート系樹脂製の基板201と、この基板201上に、基板201側から照射されるレーザ光207により電子情報が記録される電子情報記録層202と、Ag、Au等の金属で形成された反射層203と、紫外線(UV)硬化性樹脂からなる保護層204と、レーベル面側から照射されるレーザ光208により可視情報が記録される可視情報記録層205と、最外層を形成するオーバーコート層206と、が順次積層された構造を有している。
【0005】
図2に示すように、例えば、可視情報記録層205を構成する発色性有機色素は、レーベル面側から照射されたレーザ光208を吸収して発色することにより、可視情報記録層205に可視情報が記録される。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−173096号公報
【特許文献2】
特開2001−283464号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、レーザ光により媒体のレーベル面側に可視情報を記録する方法は、熱による反応、融解、析出等の変化を利用することから、過度のレーザ照射は、媒体に記録された電子情報に熱的影響を及ぼすことになるため、照射方法には十分な注意を払う必要がある。このため、このような媒体への熱的影響を低減するためには、低出力のレーザ光を用いる必要がある。この場合、可視情報記録層205にレーザ光208を集光することにより、レーザ光208のエネルギーを効率よく集中でき、低出力のレーザ光208を用いた記録が可能になる。そのためには、例えば、電子情報記録用ライターのレーザ光208を用いる場合、レーベル面側から照射されたレーザ光208が、電子情報記録層202の上に設けられた反射層203に反射された反射光209を利用してフォーカスサーボをかけることが行われる。
【0008】
一方、可視情報記録層205の上には、最外層を形成するオーバーコート層206が形成されており、レーベル面側から照射されるレーザ光208が効率よく可視情報記録層205に照射され、また、安定したフォーカシングを行うためには、オーバーコート層206の厚さが比較的厚い方が好ましく、具体的には10〜80μm程度であることが好ましい。このオーバーコート層206は、例えば紫外線硬化樹脂等を用いてスピンコート法、又は、スクリーン印刷法等により形成される。
【0009】
しかし、このように、紫外線硬化樹脂等を光情報記録媒体200のレーベル面の全体に塗布してオーバーコート層206を形成した場合は、紫外線硬化樹脂の硬化収縮等により生じる引張り又は圧縮応力により、ディスクに反りが生じることが一般的に知られている。例えば、一般に使用されている低収縮率の紫外線硬化樹脂の場合でも、5〜10%の収縮率を示し、このような紫外線硬化樹脂を用いて、50μm厚さ程度のオーバーコート層206を形成すると、ディスクを大きく反らせてしまうおそれがある。この場合、ディスクを予め逆に反らせておくことで、発生する反りを相殺する方法も考えられるが、ディスクの製造過程で精密な制御を要し、生産性が低下する等の問題がある。
【0010】
本発明は、このような低出力レーザ光により光情報記録媒体のレーベル面側に形成された可視情報記録層に可視情報を記録する際に浮き彫りになった技術的課題を解決すべくなされたものであり、従って、本発明の目的は、ディスクの反りが低減され、且つ、電子情報の記録/再生用のレーザ装置を用いて、低出力のレーザ光照射により、媒体に記録された電子情報に影響を及ぼすことなく、レーベル面側に可視情報を記録することができる光情報記録媒体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明が適用される光情報記録媒体は、可視情報記録層がレーベル面側の外周部に形成された構成を採用している。即ち、本発明が適用される光情報記録媒体は、基板上に形成され、基板側とは反対側であるレーベル面側から照射された光により可視情報が記録される可視情報記録層を備え、可視情報記録層は、基板の半径の1/2の半径を持つ円周の外側の領域に形成されていることを特徴とするものである。この可視情報記録層は、レーベル面側に円環状に形成されていることが好ましい。また、可視情報記録層は、可視情報記録層に照射された光により発色性が変化する材料又は透明性が変化する材料により構成されていることを特徴とするものである。さらに、可視情報記録層は、レーベル面の3/4以下の面積を有することが好ましい。
【0012】
次に、本発明が適用される光情報記録媒体は、基板側から照射される光によりデジタル情報が記録される電子情報記録層と、電子情報記録層の基板側とは反対側に形成される反射層と、反射層の基板側とは反対側であるレーベル面側に形成され、レーベル面側から照射される光により可視情報が記録される可視情報記録層と、可視情報記録層のレーベル面側に形成されるオーバーコート層と、を備え、可視情報記録層は、基板の半径の1/2の半径を持つ円周の外側の領域に形成されていることを特徴とするものである。
尚、本発明が適用される光情報記録媒体において、「可視情報」とは、文字、記号、イラストや写真等の画像、幾何学的な模様など、目視で読み取る情報であり、「電子情報」とは、デジタル信号で記録されている情報など、その内容を何らかの再生装置で読み取る情報を意味する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本実施の形態が適用される光情報記録媒体について詳述する。
図1は、本実施の形態が適用される光情報記録媒体の構造を説明するための図である。ここに示された光情報記録媒体100は、半径rの基板101と、この基板101上に順番に形成された、電子情報記録層102と、電子情報記録層102のレーザ光107が入射する側と反対側に接して設けられた反射層103と、保護層104と、ディスク中心から半径(1/2)rの円より外周に形成された可視情報記録層105と、この可視情報記録層105の上に形成されたオーバーコート層106と、が順次積層された構造を有している。
【0014】
図1に示すように、光情報記録媒体100に備えられた電子情報記録層102は、電子情報の記録/再生用のレーザ装置の対物レンズ(図示せず)から基板101を介して入射したレーザ光107により、電子情報の記録再生が行われる。一方、可視情報記録層105は、例えば、この光情報記録媒体100を裏返して電子情報の記録/再生用のレーザ装置にセットしたとき、レーベル面側からオーバーコート層106を介して照射されるレーザ光108により可視情報が記録される。また、レーザ光108の一部は、可視情報記録層105の下側に設けられた反射層103により反射され、その反射光109は、レーザ光108を集光するためのフォーカシングに利用される。
【0015】
基板101は、基本的には電子情報記録層102に対する記録光及び再生光の波長に対して透明な材料により形成される。基板101を形成するための材料としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、非晶質ポリオレフィン樹脂等の高分子材料の他、ガラス等の無機材料が使用される。特に、ポリカーボネート樹脂は、光の透過性が高く且つ光学的異方性が小さく、さらに、機械的強度が高い等の点で優れているので好ましい。また、耐薬品性、耐吸湿性、光学特性等の点からは、非晶質ポリオレフィンが好ましい。
【0016】
基板101には、例えば、電子情報記録層102に接する面に、記録再生用の案内溝又はピットが設けられ、射出成形等の成形方法によって成形される。このような案内溝又はピットは、基板101の成形時に付与することが好ましいが、例えば、基板101上に紫外線(UV)硬化樹脂を用いて付与することもできる。また、基板101の厚さの下限は通常1.1mm、好ましくは1.15mmであり、厚さの上限は通常1.3mm、好ましくは1.25mmである。
【0017】
電子情報記録層102は、レーザ光107の照射により電子情報(デジタル信号で記録されている情報等、その内容を何らかの再生装置で読み取る情報)が記録可能な材料により形成され、通常、有機物質よりなる記録層又は無機物質よりなる記録層として形成される。尚、電子情報記録層102は、基板101上に直接形成されていても良く、また、必要に応じて、基板101と電子情報記録層102との間に、任意の層を介して形成されても良い。
【0018】
電子情報記録層102が有機物質よりなる記録層の場合は、主として有機色素が使用される。かかる有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。これらの中でも含金属アゾ系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素が好ましい。特に、含金属アゾ系色素は、耐久性及び耐光性に優れているため好ましい。
【0019】
有機物質よりなる電子情報記録層102の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等の乾式の薄膜形成法や、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等一般に行われている湿式薄膜形成法が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスピンコート法が特に好ましい。
【0020】
電子情報記録層102が無機物質よりなる記録層として形成される場合は、例えば、光磁気効果により記録が行われるTb・Te・CoやDy・Fe・Co等の希土類遷移金属合金が使用される。また、相変化するGe・Te、Ge・Sb・Teのようなカルコゲン系合金も使用し得る。これらの層は、単層であっても良く、2層以上の複層で構成されていても良い。
【0021】
無機物質よりなる電子情報記録層102の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。また、電子情報記録層102の厚さは、記録層の種類により異なるが、下限は通常5nm、好ましくは10nmであり、上限は通常500nm、好ましくは300nmである。尚、本実施の形態が適用される光情報記録媒体100の電子情報記録層102は、記録/消去が可能な相変化型記録層であっても良い。
【0022】
反射層103は、電子情報記録層102の、基板101とは反対側に接して設けられ、通常、基板101側から照射されるレーザ光107を基板101側に反射する機能を有する。反射層103は、基板101に記録再生用の案内溝又はピットが設けられている場合は、これと対応した凹凸形状が生じている。反射層103を形成するための材料としては、再生光の波長で反射率の十分高いものが挙げられ、例えば、Au、Al、Ag、Cu、Ti、Cr、Ni、Pt、Ta、Pd等の金属を単独あるいは合金にして用いることが可能である。これらの中でも、Au、Al、Agは、反射率が高く反射層の材料として適している。また、Agを主成分とするものは、コストが安く、反射率が高い等の点から特に好ましい。
【0023】
反射層103の形成方法としては、蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。なかでも、量産性、コスト面からスパッタリング法が特に好ましい。また、反射層103の厚さの下限は通常30nm、好ましくは50nmであり、上限は通常150nm、好ましくは120nmである。
【0024】
保護層104は、通常、レーザ光透過性の材料により形成され、例えば、紫外線(UV)硬化性樹脂が挙げられる。紫外線(UV)硬化性樹脂の具体例としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。これらの材料の殆どは、レーザ光透過物質であるため、好適に使用することができる。これらの紫外線(UV)硬化性樹脂は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、保護層104は、一層の単層膜でも良く、2層以上の多層膜であっても良い。
【0025】
保護層104を紫外線(UV)硬化性樹脂により形成する方法としては、通常、紫外線(UV)硬化性樹脂をそのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を反射層103上に塗布し、紫外線(UV)光を照射して硬化させることにより形成することができる。この場合、塗布方法としては、スピンコート法やキャスト法等を採用することができる。また、保護層104は、上述した各種塗布法や、スクリーン印刷法等の各種湿式成膜法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の各種乾式成膜等により形成することもでき、用いる材料に応じて適宜選択された方法で形成される。中でも湿式成膜法、特にスピンコート法が好ましく、一般的にはスピンコート法が用いられている。また、保護層104の厚さの下限は通常1μm、好ましくは3μmであり、上限は通常15μm、好ましくは10μmである。
【0026】
可視情報記録層105は、通常、光が照射されることにより、層を構成する記録材料が変色し、その結果、可視情報(文字、記号、イラストや写真等の画像、幾何学的な模様等、目視で読み取る情報)が記録されるものである。可視情報記録層105を構成する記録材料としては、特に限定されないが、可視光の吸収が変化する物質として、大別して、以下のような(a)発色性が変化するタイプと、(b)透明性が変化するタイプとが挙げられる。
【0027】
(a)発色性が変化するタイプの記録材料としては、例えば、電子情報の光記録に一般的に用いられる、有機色素が挙げられる。かかる有機色素としては、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポリフィリン色素等)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、アゾ系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素等が挙げられる。
【0028】
また、分子構造中にラクトン環部分を有するロイコ色素が挙げられる。ロイコ染料の具体例としては、例えば、3−ジエチルアミノ−7−クロロアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−2、4−キシリジノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トルイジノ)−フルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシジノフルオラン、などのフルオラン化合物;クリスタルバイオレットラクトン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリドなどのフタリド化合物、等がある。これらの中でもがフタリド化合物が好ましい。
【0029】
これらのロイコ染料には、必要に応じて電子受容性化合物や、記録用レーザ光を吸収して発熱する色素等が併用される。この場合、電子受容性化合物としては、炭素数6以上の脂肪族基を有する有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物又はフェノール化合物等が挙げられる。好ましくは、フェノール化合物である。
【0030】
電子受容性化合物の具体例としては、有機リン酸化合物としては、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸等が挙げられる。脂肪族カルボン酸化合物としては、α−ヒドロキシデカン酸、α−ヒドロキシテトラデカン酸、α−ヒドロキシヘキサデカン酸、α−ヒドロキシオクタデカン酸、α−ヒドロキシペンタデカン酸、α−ヒドロキシエイコサン酸、α−ヒドロキシドコサン酸、α−ヒドロキシテトラコサン酸、α−ヒドロキシヘキサコサン酸、α−ヒドロキシオクタコサン酸等が挙げられる。
【0031】
また、フェノール化合物としては、没食子酸化合物、安息香酸化合物、ビスフェノール系化合物等が挙げられる。これらの化合物の具体例としては、例えば、没食子酸化合物としては、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸ラウリル等が挙げられる。安息香酸化合物としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、2,4−ジドロキシ安息香酸等が挙げられる。ビスフェノール系化合物としては、ビスフェノールS、ビスフェノールA等が挙げられる。さらに、4’−ヒドロキシ−4−オクタデシルベンズアニリド、N−オクタデシル−4−ヒドロキシベンズアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)−N’−オクタデシル尿素、4−ヒドロキシフェニルプロピオノ−ベヘニルヒドラジド等が挙げられる。
これらの電子受容性化合物は、単独で用いても複数種を併用してもよい。
【0032】
レーザ光吸収色素としては、電子情報の光記録に使用する有機色素として前掲した各種色素や、ビスアンスロン系、インドアニリン系等の赤外線吸収性色素等が挙げられる。
【0033】
次に(b)透明性が変化するタイプの記録材料としては、例えば、樹脂母材内に0.1〜2.0μm程度で分散し、熱処理によって融解又は結晶化する有機低分子化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば、炭素数12以上の、高級脂肪酸等の周知の有機低分子化合物を使用できる。このような有機低分子化合物は、脂肪酸、脂肪族二塩基酸、ケトン、エーテル、アルコール、脂肪酸エステル及びその誘導体等からなる化合物であってもよく、それらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0034】
熱処理によって融解又は結晶化する有機低分子化合物のうち、炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルは、低融点(mp)のものであり、比較的低温での熱処理によって融解、結晶化するので好ましい。更に、炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルに加えて炭素数10以上の高融点(mp)の脂肪族二塩基酸を併用し、脂肪酸アルキルエステルと脂肪族二塩基酸の配合割合を調整すれば、透明化する温度領域を調整することができ、所定温度での透明性及び白濁の程度を変化させることができる。
【0035】
炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルの例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ベヘニル、ベヘン酸メチル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸ブチル、ベヘン酸オクチル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、リグノセリン酸メチル、リグノセリン酸エチル等が挙げられる。
【0036】
また、炭素数10以上の脂肪族二塩基酸の例としては、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。炭素数12以上の脂肪酸アルキルエステルと炭素数10以上の脂肪族二塩基酸を併用する場合、その配合比としては1:1〜10:1程度が好ましく、2:1〜6:1がより好ましい。高融点側の脂肪族二塩基酸は、低融点側の脂肪酸アルキルエステルの種晶として結晶化挙動を操作する役割を担うと考えられるため、その配合量が少なすぎるとその効果がなくなるおそれがあり、逆に多すぎるとコントラストの低下が生じる可能性がある。
【0037】
可視情報記録層105の形成方法としては、電子情報記録層102の形成方法の項で挙げたような、公知の湿式薄膜形成方法を挙げることができる。なかでも、好ましくはスピンコート法又はスクリーン印刷法、より好ましくはスピンコート法である。また、可視情報記録層105の厚さの下限は、通常0.1μm、好ましくは0.5μmであり、厚さの上限は、通常5μm、好ましくは3μmである。
【0038】
オーバーコート層106は、可視情報記録層105を物理的な傷付け等から保護し、また、レーザ光108を可視情報記録層105に効率良く絞り込むために、可視情報記録層105のレーベル面側に設けられ、最外層を形成する。オーバーコート層106を構成する材料としては、可視情報記録層105を外力等から保護し、且つ、レーザ光透過性の材料であれば良く、特に限定されない。
【0039】
オーバーコート層106の構成する材料としては、有機物質として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂等を挙げることができる。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等は適当な溶剤に溶解して塗布液を塗布し、乾燥することによってオーバーコート層106を形成することができる。紫外線(UV)硬化性樹脂は、そのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後にこの塗布液を塗布し、紫外線(UV)光を照射して硬化させることによってオーバーコート層106を形成することができる。紫外線(UV)硬化性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等のアクリレート系樹脂を用いることができる。また、無機物質としては、SiO2、SiN4、MgF2、SnO2等が挙げられる。これらの材料は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。また、オーバーコート層106は、レーザ光108に透過性であれば、単層膜であっても2層以上の多層膜であっても良い。
【0040】
オーバーコート層106は、前述した各種有機物質を用いて湿式成膜法により形成されることが好ましい。成膜の方法としては、前述の保護層104と同様に、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法等を採用することができる。なかでも、特に表面の平滑性が高いという点からスピンコート法が好ましい。特に、オーバーコート層106を形成する場合、予め、レーザ光透過性の材料で作成した透明基板を貼り合わせようとすると、基板の正確な位置合わせを行う必要があり、また、接着層に気泡が入らないよう貼り合わせ工程を減圧状態にする等、製造工程上の工夫が種々必要となる。従って、生産性の面からは、オーバーコート層106は、スピンコート、スクリーン印刷等の湿式成膜法により設ける方が有利である。
【0041】
オーバーコート層106の厚さの下限は10μm、好ましくは20μm、厚さの上限は100μm、好ましくは80μmである。オーバーコート層106の厚さが下限値より低い場合、可視情報記録層105の十分な保護機能が保てないおそれがある。また、厚さが上限値より高い場合、オーバーコート層106を塗布により形成する際に、重ね塗布等が必要になり形成工程が複雑になる。さらに、塗布材の硬化収縮によってディスクの反りが大きくなる等の問題が生じるおそれがある。尚、オーバーコート層106の表面における反射率は、例えば、20%以下とすることが好ましい。この場合、オーバーコート層106の屈折率は、0.4以上2.6以下程度が好ましい。また、オーバーコート層106の表面における反射率を10%以下とするには、オーバーコート層106の屈折率は、0.5以上1.9以下であることが好ましい。
【0042】
図1に示されるように、本実施の形態が適用される光情報記録媒体100は、半径rの円盤状であり、可視情報記録層105及びこの可視情報記録層105の上に形成されたオーバーコート層106が、ディスク中心から半径(1/2)r以上の外周に形成されている。この可視情報記録層105は、レーベル面の3/4以下の面積を有することが好ましい。可視情報記録層105及びこの可視情報記録層105の上に形成されたオーバーコート層106が、ディスク中心から半径(1/2)r以上の外周に形成されていることにより、例えば、紫外線硬化樹脂を用いて、50μm厚さ程度のオーバーコート層106を形成した場合においても、ディスクを大きく反らせることがなくなり、電子情報の記録、再生特性が安定したディスクを生産することが出来る。即ち、引張り応力、または圧縮応力が生じてディスクの反りを発生させる原因となる層の形成を、レーベル面の全面に行わず、外周部に形成することで、ディスクの反りの発生を少なくすることが出来る。また、可視情報記録層105及びオーバーコート層106が円周状に形成されているので、ディスクの局部的な反り(変形、回転時の面ぶれ)を防ぐことが出来る。
【0043】
さらに、可視情報記録層105及びオーバーコート層106が円周状に形成されていることにより、光情報記録媒体100の可視情報記録層105が形成されていない内周部には、スクリーン印刷等で情報を印刷することができ、ユーザが可視情報を記録できる領域と媒体メーカ等が予め可視情報を記録できる領域とを併せ持つことができる。また、面積が大きい外周部に可視情報記録層105が形成されているので、可視情報記録層105に記録される情報量を増やすことが可能となる。さらに、CAV方法(内外とも一定回転数で記録)を行う場合は、外周の方が内周に比較して線速度が大きいため、フォーカスが安定しやすい等の利点がある。
【0044】
尚、本実施の形態が適用される光情報記録媒体には、上述以外の任意の層を有していても良い。例えば、電子情報記録層102として無機物質からなる記録層を使用する場合には、電子情報記録層102を挟持する誘電体層を設けたり、保護層104と可視情報記録層105との間に第2の反射層を設けたり、あるいはこの第2の反射層と可視情報記録層105との間に更にレーザー光透過性の層を設ける等、各層の間に、または媒体の最外層に接して、任意の層を設けても良い。
【0045】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本実施の形態が適用される光情報記録媒体を、より具体的に説明する。尚、本実施の形態は、実施例に限定されるものではない。
(1)ディスクの反りの測定
小野測器(株)製LM−1200を用いて、光情報記録媒体のディスク中心から半径23mmの位置を基準にして(0にして)、そこより外周の各位置(5mmステップで58mmまで)の反り量を測定し、各位置の測定値の平均値を求め、ディスク中の平均値の最大値(Deflection Average)をディスクの反り量として求めた(単位:μm)。
【0046】
(実施例1、比較例1及び2)
射出成形により、幅0.45μm、深さ155nmのグルーブを有し、厚さ1.2mm、半径60mmの円形ポリカーボネート樹脂製基板を成形した。この基板上に、含金属アゾ系色素のフッ素アルコール溶液をスピンコートにより塗布し、90℃で15分間乾燥して、厚さ70nmの電子情報記録層を形成した。次に、この電子情報記録層上に、Agをスパッタリングして、厚さ70nmの反射層を形成した。さらにこの反射層の上に、アクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性樹脂(大日本インキ社製「SD−374」)をスピンコートで塗布した後、紫外線(UV)光を照射して硬化させ、厚さ7μmの保護層を形成し、CD-Rを作製した。続いて、この保護層上に、フタリド系ロイコ色素を0.2重量部、フェノール性化合物からなる電子受容性化合物を0.6重量部、ビスアンスロン系赤外線吸収性色素を0.05重量部、およびポリメタクリル酸メチル(10重量%トルエン溶液)4重量部に、トルエン2.0重量部を配合してなる発色性有機色素組成物を、スピンコートにより塗布して、50℃で30分間乾燥して、可視情報記録層を形成した。そして、この可視情報記録層の上に、アクリレート系モノマーを主体にした紫外線(UV)硬化性樹脂をスピンコートで塗布して、紫外線(UV)光を照射して硬化し、厚さ50μmのオーバーコート層を形成し、可視情報記録層が形成されている範囲が異なる3種類の光情報記録媒体(光情報記録媒体1〜3)を作製した。
【0047】
このようにして作製した3種類の光情報記録媒体1〜3について、ディスク中心から半径23mmの位置を基準にして、ディスクの反りをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示した結果から、ディスク中心から半径35〜55mmの範囲に可視情報記録層及びオーバーコート層を形成した光情報記録媒体1(実施例1)は、ディスクの反りが50μmであり、情報の記録再生が良好に行える光情報記録媒体であることが分かる。これに対して、ディスク中心から半径25〜45mmの範囲に可視情報記録層及びオーバーコート層を形成した光情報記録媒体2(比較例1)及びディスク中心から半径25〜55mmの範囲に可視情報記録層及びオーバーコート層を形成した光情報記録媒体3(比較例2)は、ディスクの反りが100μm及び150μmを示し、情報の記録再生に問題が生じてくる光情報記録媒体であることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
かくして本発明によれば、ディスクの反りが低減され、且つ、低出力のレーザ照射により、レーベル面に可視情報を記録することができる光情報記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態が適用される光情報記録媒体の構造を説明するための図である。
【図2】 従来の光情報記録媒体の構造を説明するための図である。
【符号の説明】
100,200…光情報記録媒体、101,201…基板、102,202…電子情報記録層、103,203…反射層、104,204…保護層、105,205…可視情報記録層、106,206…オーバーコート層、107,207…レーザ光、108,208…レーザ光、109,209…反射光
Claims (4)
- 基板上に、当該基板側から照射される光によりデジタル情報が記録される電子情報記録層と、
前記電子情報記録層の前記基板側とは反対側に形成される反射層と、
前記反射層の前記基板側とは反対側であるレーベル面側に形成され、当該レーベル面側から照射される光により可視情報が記録される可視情報記録層と、
前記可視情報記録層の前記レーベル面側に形成される厚さ20μm以上の紫外線硬化性樹脂を用いて形成されたオーバーコート層と、を備え、
前記可視情報記録層は、前記基板の半径の1/2の半径を持つ円周の外側の領域に形成されている光情報記録媒体であって、
前記可視情報記録層と前記オーバーコート層とを積層する前のディスクが平坦であり、かつ、該光情報記録媒体の反り量が、情報の記録再生が良好に行える範囲に留まることを特徴とする光情報記録媒体。 - 前記可視情報記録層は、前記レーベル面側に円環状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光情報記録媒体。
- 前記可視情報記録層は、当該可視情報記録層に照射された光により発色性が変化する材料又は透明性が変化する材料により構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の光情報記録媒体。
- 前記可視情報記録層は、前記レーベル面の3/4以下の面積を有することを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の光情報記録媒体。
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