JP2016040260A - コイルドコイルおよび/またはテザー含有タンパク質複合体およびその使用 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、新規の改変タンパク質、多特異性タンパク質複合体、例えば多特異性抗体、それらの構築及び製造方法に関する。本発明はまた、多特異性タンパク質複合体を得る際に有用な技術の新規な適用法に関する。
第一ポリペプチドが第一コイルドコイルドメイン(CC)と第一Fc CH成分(FcCH)とを含み、そして、
第二ポリペプチドが、(1)第二コイルドコイルドメイン(CC)と第二FcCHを含み、
このとき、第一CCと第二CCが互いに複合体化し、そして、第一FcCHと第二FcCHが互いに複合体化している、タンパク質複合体を提供する。
一実施態様では、第一CCは本明細書中の式Iの配列を含み、第二CCは本明細書中の式IIの配列を含む。
第二の態様では、本発明は、(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)を含む第一ポリペプチドと、(b)Fc CH成分と、式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイル(CC)とを含む第二ポリペプチド、とを含んでなるタンパク質複合体を特徴とし、このとき式IおよびIIのnは2以上であり、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む。
更なる態様では、各々のポリペプチドのVHドメインは互いに異なる。他の実施態様では、各々のポリペプチドのVLドメインは互いに異なる。
一実施態様では、本発明のタンパク質複合体はヒンジ領域を含み、このときヒンジ領域はそのヒンジ領域にK222A突然変異を、そのヒンジ領域にC220A突然変異を、そのヒンジ領域にK222AおよびC220A突然変異を含む。
一実施態様では、タンパク質複合体は、抗体、イムノアドヘシン、ペプチボディ又はアフィボディからなる群から選択される。ゆえに、更なる実施態様によると、第一および/または第二ポリペプチドはさらに、抗体の標的結合配列(例えばVH又はVLドメイン)、ペプチボディ(例えばペプチド)、イムノアドヘシン(例えば細胞外ドメイン)又は標的を結合する配列を含む骨格タンパク質を含む。
一実施態様によると、タンパク質複合体は一アーム抗体である。
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)(配列番号:29)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)を含む第二ポリペプチドであって、
(X'1 X'2 X'3 X'4 X'5 X'6 X'7)n (式II)(配列番号:30)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含むコイルドコイルを含んでなるタンパク質複合体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、タンパク質複合体を提供する。
一実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれVHおよびCH1ドメインを含み、それぞれさらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれさらに、CH2およびCH3ドメインを含む。さらに他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'1 X'2 X'3 X'4 X'5 X'6 X'7)n (式II)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含んでなる抗体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、抗体を提供する。
ある実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれVHおよびCH1ドメインを含み、それぞれさらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれさらに、CH2およびCH3ドメインを含む。さらに他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。
更なる実施態様では、第一VLドメインおよび第二VLドメインの配列は同じである。更なる実施態様では、第一および第二ポリペプチドのうちの少なくとも1のVHのN末端は、テザーによりCLのC末端に連結される。
本発明の第二の態様の一実施態様では、第一ポリペプチドはVHおよびCH1ドメインを含み、さらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一ポリペプチドはさらにCH2およびCH3ドメインを含む。本発明の第二の態様の更なる実施態様では、第一ポリペプチドは、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。本発明の第二の態様の更に他の実施態様では、抗体はさらに、VLドメインを含む第三ポリペプチドを含む。ある例では、第三ポリペプチドはさらにCLドメインを含み、VLおよびCLドメインはN末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CLに配置される。本発明の第二の態様の更なる他の実施態様では、第一ポリペプチドのVHのN末端はテザーによりCLのC末端に連結される。
他の実施態様では、X1、X'1、X4およびX'4の何れかの疎水性アミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンからなる群から選択される。他の実施態様では、X5、X'5、X7およびX'7の何れかの荷電アミノ酸残基は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される。更なる実施態様では、第一CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいて、X1はアスパラギンであり、それぞれのX'1は第二CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいてアスパラギンである。
更に他の実施態様では、第一CCは7アミノ酸繰り返しを含み、このときX1はロイシン又はアスパラギンであり、X2はアラニン又はグルタミンであり、X3はアラニン又はグルタミンであり、X4はロイシンであり、X5はグルタミン酸であり、X6はリジン又はトリプトファンであり、X7はグルタミン酸であり、そして、第二CCは7アミノ酸繰り返しを含み、このときX'1はロイシン又はアスパラギンであり、X'2はアラニン又はグルタミンであり、X'3はアラニン又はグルタミンであり、X'4はロイシンであり、X'5はリジンであり、X'6はリジン又はトリプトファンであり、X'7はリジンである。
更なる実施態様では、第一または第二のCCのうちの少なくとも1は、タンパク質の定常ドメインにC末端で連結されている。例えば、定常ドメインはCH3ドメインであり、第一CCは第一ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結され、第二CCは第二ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結されている。連結は、例えば切断可能なリンカー配列によるものである。他の実施態様では、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位は、第一または第二のCCのうちの少なくとも1にN末端で位置する。
他の態様では、本発明は、VL、CL、テザー、VH、CH1、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CL−テザー−VH−CH1−CH2−CH3(式III)に配して含む第一ポリペプチドを含む抗体を特徴とする。一実施態様では、抗体はさらに式IIIの第二ポリペプチドを含む。
特定の実施態様では、本発明の抗体は多特異性である。例えば、抗体は少なくとも2の抗原を結合することができるか、または同じ抗原上の少なくとも2のエピトープを結合することができる。他の実施態様では、抗体は二重特異性である。
更なる実施態様では、本発明の抗体は、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含む。ある例では、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異はヒンジドメインにある。例えば、抗体はK222A置換(EU番号付けシステム)を有する。
他の実施態様では、テザー又はリンカーは、以下のエンドペプチダーゼ:フューリン、トロンビン、Genenase、Lys−C、Arg−C、Asp−N、Glu−C、第Xa因子、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ(TEV)、エンテロキナーゼ、ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ(HRV C3)又はキニノゲナーゼの一又は複数によって切断可能である。特定の実施態様では、テザー又はリンカーは、アスパラギン−グリシンペプチド結合、例えばヒドロキシルアミンによって切断可能なアスパラギン−グリシンペプチド結合を含む。
一実施態様では、本発明の抗体はさらに、KnH技術を使用してCL/CH1におよび又はVH/VL界面に突然変異を含む。一実施態様では、本発明の多特異性抗体は、本発明のコイルドコイルとCL/CH1界面のノブ(knob)およびホール(hole)を使用して構築した。
更に他の実施態様では、本発明の抗体は、真核細胞、例えばCHO細胞などの哺乳動物の細胞によって発現される。代替的実施態様では、抗体は、原核細胞、例えば大腸菌細胞によって発現される。
更なる態様では、本発明は、抗体などのタンパク質複合体の製造方法を特徴とする。したがって、本発明はいくつかの新規な態様を提供する。一実施態様では、この方法は、本発明のタンパク質をコードするベクターを含む細胞を培養培地内で培養する工程を含む。一実施態様では、方法はさらに、細胞又は培養培地からタンパク質を回収することを含む。他の実施態様では、方法はさらに、(a)プロテインAを含むカラム上に抗体を捕捉し、(b)カラムから抗体を溶出し、そして(b)カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液に溶出された抗体を希釈する工程を含む。
更に他の態様では、本発明は、溶液中にコイルドコイルを含有する抗体を維持する方法を特徴とする。本方法は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤の存在下で抗体を維持することを含む。本方法で使われうるカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤の例には、アルギニン、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれる。
一実施態様によると、本発明のヘテロ多量体複合体は、IL-1αおよびIL-1β、IL-12およびIL-18;IL-13およびIL-9;IL-13およびIL-4;IL-13およびIL-5;IL-5およびIL-4;IL-13およびIL-1β;IL-13およびIL−25;IL-13およびTARC;IL-13およびMDC;IL-13およびMEF;IL-13およびTGF-β;IL-13およびLHRアゴニスト;IL-12およびTWEAK、IL-13およびCL25;IL-13およびSPRR2a;IL-13およびSPRR2b;IL−13およびADAM8、IL-13およびPED2、IL17AおよびIL17F、CD3およびCD19、CD138およびCD20;CD138およびCD40;CD19およびCD20;CD20およびCD3;CD38およびCD138;CD38およびCD20;CD38およびCD40;CD40およびCD20;CD-8およびIL-6;CD20およびBR3、TNFαおよびTGF-β、TNFαおよびIL−1β;TNFαおよびIL−2、TNFαおよびIL-3、TNFαおよびIL-4、TNFαおよびIL-5、TNFαおよびIL6、TNFαおよびIL8、TNFαおよびIL-9、TNFαおよびIL-10、TNFαおよびIL-11、TNFαおよびIL-12、TNFαおよびIL-13、TNFαおよびIL-14、TNFαおよびIL-15、TNFαおよびIL-16、TNFαおよびIL-17、TNFαおよびIL-18、TNFαおよびIL-19、TNFαおよびIL-20、TNFαおよびIL-23、TNFαおよびIFNα、TNFαおよびCD4、TNFαおよびVEGF、TNFαおよびMIF、TNFαおよびICAM-1、TNFαおよびPGE4、TNFαおよびPEG2、TNFαおよびRANKリガンド、TNFαおよびTe38;TNFαおよびBAFF;TNFαおよびCD22;TNFαおよびCTLA-4;TNFαおよびGP130;TNFαおよびIL-12p40;VEGFおよびHER2、VEGF−AおよびHER2、VEGF−AおよびPDGF、HER1およびHER2、VEGF−AおよびVEGF−C、VEGF−CおよびVEGF−D、HER2およびDR5、VEGFおよびIL-8、VEGFおよびMET、VEGFRおよびMETレセプター、VEGFRおよびEGFR、HER2およびCD64、HER2およびCD3、HER2およびCD16、HER2およびHER3;EGFRおよびHER2、EGFRおよびHER3、EGFRおよびHER4、IL−13およびCD40L、IL4およびCD40L、TNFR1およびIL−1R、TNFR1およびIL−6RおよびTNFR1およびIL−18R、EpCAMおよびCD3、MAPGおよびCD28、EGFRおよびCD64、CSPGsおよびRGM A;CTLA-4およびBTNO2;IGF1およびIGF2;IGF1/2およびErb2B;MAGおよびRGM A;NgRおよびRGM A;NogoAおよびRGM A;OMGpおよびRGM A;PDL−IおよびCTLA-4;およびRGM AおよびRGM Bからなる群から選択される少なくとも2つの標的分子に結合する。
他の実施態様では、本発明は、配列番号:4の配列を含む第一重鎖と、配列番号:5の配列を含む第二重鎖と、配列番号:6の配列を含む軽鎖とを含む単離された抗体であって、HER2を特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更に他の実施態様では、本発明は、配列番号:7の配列を含む第一重鎖と、配列番号:5の配列を含む第二重鎖と、配列番号:8の配列を含む軽鎖とを含む単離された抗体であって、EGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:9の配列を含む第一軽鎖配列及び第一重鎖配列と、配列番号:10の配列を含む第二軽鎖配列及び第二重鎖配列とを含む単離された抗体であって、HER2およびEGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:11の配列を含む第一軽鎖配列及び第一重鎖配列と、配列番号:10の配列を含む第二軽鎖配列及び第二重鎖配列とを含む単離された抗体であって、HER2およびEGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
特定の実施態様では、本明細書に記載する治療の方法は、コイルドコイルおよび/またはテザーを欠く抗体断片の使用を包含する。この実施態様では、コイルドコイルおよび/またはテザー配列は、製造後の抗体、及び治療的投与に使用される操作された後の抗体から切断される。更なる実施態様では、治療の方法は、被検体に有効量の第二薬剤を投与することを包含する。第二薬剤は、他の抗体ないし抗体断片、化学療法剤、細胞障害性剤、抗血管形成剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞障害性放射線療法、副腎皮質ステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤又は増殖阻害性剤を含有してよい。第二薬剤は、第一薬剤(例えば抗体ないし抗体断片)の投与の前またはその投与の後に投与されうる。他の実施態様では、第二薬剤は第一薬剤と同時に投与される。
理論に拘束されるものではないが、出願人は、本明細書中に記述されるコイルドコイル二量体化ドメインが、驚くべきことにイムノグロブリンのFc領域の存在下であっても、高い正確性と効率を持って2以上の分子の結合を共に作動する最初のトリガーとなると考える。またこのFc領域は細胞培養条件下で自然に互いに作用しあう。
重鎖のホモ二量体化を低減することによって、本明細書中に記述されるコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインの使用は、Fc CH成分を含むタンパク質複合体(例えば多特異性または一アーム形抗体など)の均質な集団を生産する能力における突破口となる。例えば、多特異性複合体が標的(例えば腫瘍細胞)と標的に対する薬剤(例えばT細胞)の共局在性を導きうるか、または併用治療の必要性および被検体に対する2以上の治療法を提供する際のリスクを取り除きうるので、多特異性複合体は治療上の適用に有利である。さらに、多特異性抗体を含む抗体の構築を容易にするために、本発明によるテザーは、抗体の軽鎖と重鎖を連結し、それによってその同族重鎖への各軽鎖の適切な連結を促すために用いられ得る。
本明細書中の「抗体」なる用語は、最も広義の意味で用いられ、所望の生物学的活性(例えばエピトープ結合活性)を表す限り、2の重鎖と2の軽鎖、およびこれらの任意の断片、突然変異体、変異体または誘導体を含む任意のイムノグロブリン(Ig)分子を指す。抗体の例には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体および抗体断片が含まれる。
カバット番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基を指す場合に用いられる(軽鎖のおよそ残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えばKabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、イムノグロブリン重鎖定常領域を指す場合に用いられる(例えば上掲のKabat et al.において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の重鎖定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、CH配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選別は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。一般に、配列のサブグループはカバットによるサブグループである。一実施態様では、VLについて、サブグループはカバットによるサブグループκIである。一実施態様では、VHについて、サブグループはカバットによるサブグループIIIである。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies)(Db);タンデムダイアボディ(taDb);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3および(scFV)4−Fcが含まれるがこれらに限定されない)を含む。
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えると、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマおよびラクダ)および軟骨魚(例えばテンジクザメ)に由来するものならびにヒトおよびマウス抗体からの組換え法から得られるものが含まれる(Nature(1989)341:544-546;Dev Comp Immunol(2006)30:43-56;Trend Biochem Sci(2001)26:230-235;Trends Biotechnol(2003):21:484-490;国際公開第2005/035572号;同第03/035694号;Febs Lett(1994)339:285-290;国際公開第00/29004号;同第02/051870号)。
「線形抗体」という表現は、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載された抗体を意味する。簡単に言えば、これら抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域の対を形成する一対の直列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は二重特異性であっても単一特異性であってもよい。
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);Malmborg et al., J. Immunol. Methods 183: 7-13, 1995を参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片が得られるように、VHとVLドメインとの間に、短いリンカー(約5−10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
本発明の抗体は、重および/または軽鎖の一部分は特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書における対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)およびヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む霊長類化抗体が含まれる。
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
本明細書で用いられる「ヘテロ多量体」または「ヘテロ多量体の」という用語は、非ペプチド性共有結合(例えばジスルフィド結合)および/または非共有結合性相互作用(例えば水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力および疎水性相互作用)によって互いに相互作用する2つ以上のポリペプチドを記述するものであり、この場合、それらの分子の少なくとも2つは互いに異なる配列を有する。
本明細書において用いる場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を兼備する分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、アミノ酸配列が抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、抗体の定常領域と比較して「異種」である)、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えばIgGのCH2および/またはCH3配列)との融合体を含む。例示的なアドヘシン配列には、対象のタンパク質に結合するレセプターまたはリガンドの一部分を含む隣接アミノ酸配列が含まれる。アデノシン配列は、対象のタンパク質を結合するがレセプターおよびリガンド配列ではない配列(例えばペプチボディ中のアドヘシン配列)でもあり得る。そのようなポリペプチド配列を、ファージディスプレイ技術および高スループット選別法をはじめとする様々な方法によって、選択または同定することができる。前記イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3もしくはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgMから得ることができる。
対象の抗原を「結合する」本発明の抗体は、抗体が抗原を発現するタンパク質、細胞ないし組織を標的とした治療薬及び/又は診断剤として有用となるように十分な親和性を有して抗原を結合するものである。このような実施態様では、「非標的」タンパク質に対する抗体の結合範囲は、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)又はELISAにより決定した場合、その特定の標的タンパク質に対する抗体の結合の約10%未満である。標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的な」といった用語は、非特異的な相互作用とは測定可能な差異を有する結合を意味する(例えば、非特異的な相互作用はウシ血清アルブミンまたはカゼインへの結合であってよい)。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的、例えば標識していない過剰な量の標的に類似したコントロール分子との競合により決定することができる。この場合、プローブに対する標識した標的の結合が、標識していない過剰な量の標的により競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。ここで用いる特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」といった用語は、例えば、少なくともおよそ200nM、あるいは少なくともおよそ150nM、あるいは少なくともおよそ100nM、あるいは少なくともおよそ60nM、あるいは少なくともおよそ50nM、あるいは少なくともおよそ40nM、あるいは少なくともおよそ30nM、あるいは少なくともおよそ20nM、あるいは少なくともおよそ10nM、あるいは少なくともおよそ8nM、あるいは少なくともおよそ6nM、あるいは少なくともおよそ4nM、あるいは少なくともおよそ2nM、あるいは少なくともおよそ1nM又はそれ以上の対標的Kdを有する分子によって提示されうる。一実施態様では、「特異的な結合」なる用語は、分子が他のいかなるポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合しないで特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
「ペプチボディ」は、ランダムに生成されたペプチドとFcドメインの融合体を指す。2003年12月9日にFeigeらに発行された(出典明記によりその全体が組み込まれる)米国特許第6,660,843号を参照のこと。それらは、N末端、C末端、アミノ酸側鎖にまたはこれらの部位の1つより多くに連結された1つ以上のペプチドを含む。ペプチボディ技術は、1つ以上のリガンドまたはレセプターを標的にするペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、膜輸送ペプチド等を組み込む治療薬の設計を可能にする。ペプチボディ技術は、ジスルフィドによって拘束された線状ペプチド、「直列ペプチド多量体」(すなわち、Fcドメインの単鎖上の1つより多くのペプチド)を含めて、多数のそのような分子の設計において有用であることが証明された。例えば、米国特許第6,660,843号;2003年10月16日に公開された米国特許出願公開第2003/0195156号(2002年11月21日に公開された国際公開第02/092620号に対応する);2003年9月18日に公開された米国特許出願公開第2003/0176352号(2003年4月17日に公開された国際公開第03/031589号に対応する);1999年10月22日に出願された米国特許出願第09/422,838号(2000年5月4日に公開された国際公開第00/24770号に対応する);2003年12月11日に公開された米国特許出願公開第2003/0229023号;2003年7月17日に公開された国際公開第03/057134号;2003年12月25日に公開された米国特許出願公開第2003/0236193号(2004年4月8日に出願されたPCT/US04/010989号に対応する);2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666,480号(2004年4月1日に公開された国際公開第04/026329号に対応する)を参照のこと。これらの各々は出典明記によりその全体が本明細書に組み込まれる。
「アフィボディ」は、標的分子のための結合表面を生じさせるためにタンパク質を足場として使用する、ペプチド結合によりFc領域に連結されたタンパク質の使用を指す。前記タンパク質は、多くの場合、天然に生じるタンパク質、例えばブドウ球菌プロテインAもしくはIgG結合Bドメイン、またはそれらに由来するZタンパク質(Nilsson et al(1987),Prot Eng 1,107-133、および米国特許第5,143,844号を参照)またはそれらの断片もしくは誘導体である。例えば、標的分子を結合できる変異体のライブラリを生じさせるようにランダム突然変異誘発によってZタンパク質のセグメントを突然変異させたものである、標的分子への結合親和性が改変されたZタンパク質変異体から、アフィボディを作ることができる。アフィボディの例には、米国特許第6,534,628号、Nord K et al,Prot Eng 8:601-608(1995)およびNord K et al,Nat Biotech 15:772-777(1997).Biotechnol Appl Biochem.2008 Jun;50(Pt 2):97-112が含まれる。
「単離された」ヘテロ多量体または複合体は、その自然細胞培養環境の成分から分離されおよび/または回収されたヘテロ多量体または複合体を意味する。その自然環境の混入成分は、ヘテロ多量体の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ヘテロ多量体は、(1)ローリー法により判定してタンパク質95重量%超、および最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。
本発明のヘテロ多量体は、実質的に均一になるまで一般には精製される。「実質的に均一な」、「実質的に均一な形態」および「実質的均一」という句は、その産物に、望ましくないポリペプチドの組み合わせ(例えばホモ多量体)起源の副産物が実質的にないことを示すために用いられる。
純度に関して表現される、実質的に均一は、副産物の量が、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%を超えない、または1重量%未満であることを意味する。一実施態様では、副産物は5%未満である。
「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、糖質、脂質およびこれらの組合せを指す。一実施態様では、生物学的分子は天然に存在する。
本明細書で用いられる「リンカー」とは、2以上のアミノ酸長のアミノ酸配列を意味する。リンカーは、天然極性または非極性アミノ酸から成り得る。リンカーは、例えば、2から100アミノ酸長、例えば2アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長であり得る。リンカーは、例えば自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。アミノ酸配列内の切断部位ならびにそのような部で切断する酵素および化学物質は、当該技術分野において周知であり、本明細書にも記載する。
本明細書で用いられる「テザー」とは、2つの別のアミノ酸配列を連結するアミノ酸リンカーを意味する。本明細書に記載するテザーは、免疫グロブリン重鎖可変ドメインのN末端と免疫グロブリン軽鎖定常領域のC末端を連結することができる。特定の実施態様において、テザーは、約15アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、20アミノ酸長と26アミノ酸長の間(例えば、20、21、22、23、24、25または26アミノ酸長)である。テザーは、例えば、当該技術分野において標準的な方法および試薬を用いる自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。
「リンカー」または「テザー」の酵素的切断は、例えばLys−C、Asp−N、Arg−C、V8、Glu−C、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、トロンビン、ゲネナーゼ、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、キニノゲナーゼ、ならびにスブチリシン様プロプロテイン転換酵素(例えば、フリン(PC1)、PC2もしくはPC3)またはN−アルギニン二塩基性転換酵素などの、エンドペプチダーゼの使用を必要とし得る。化学的切断は、例えば、ヒドロキシルアミン、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、または臭化シアンの使用を必要とし得る。
本明細書で用いられる「Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位」は、Lys−CエンドペプチダーゼによってC末端側で切断され得るアミノ酸配列内のリシン残基である。Lys−Cエンドペプチダーゼは、リシン残基のC末端側で切断する。
本明細書で用いられる「7アミノ酸繰り返し」とは、アミノ酸配列内で少なくとも1回は繰り返される7連続アミノ酸の配列を意味する。7アミノ酸繰り返しは、第一の繰り返しのC末端が第二の繰り返しのN末端に直ぐ隣接して、アミノ酸配列内で連続的に配列され得る。一実施態様において、7アミノ酸繰り返しは、本明細書中で定義する式Iまたは式IIの配列を有する。
本明細書で用いられる「コイルドコイルドメイン」、「コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン」、「コイル」または「コイルヘテロ二量体化ドメイン」とは、第二アルファらせん構造(第二「コイルドコイルドメイン」)と相互作用して「コイルドコイル」または「ヘテロ二量体コイルドコイル」を形成することができるアルファらせん構造を形成するアミノ酸配列を意味する。アルファらせん構造は、右巻きのアルファらせんであり得る。一実施態様において、アルファらせん構造は、7アミノ酸繰り返しで構成される。1つの特定の例では、コイルコイルドメインは、第一および第二アルファらせん構造の「X1」および「X1’」位置の残基が互いとの疎水性相互作用を形成し、第一および第二アルファらせん構造の「X4」および「X4’」位置の残基が互いとの疎水性相互作用を形成し、第一アルファらせん構造の「X5」位置の残基が第二アルファらせん構造の「X7’」位置の残基とイオン性相互作用を形成し、ならびに第一アルファらせん構造の「X7」位置の残基が第二アルファらせん構造の「X5’」位置の残基とイオン性相互作用を形成する、図1に示すような構造を有する。コイルドコイルドメインは、本明細書中で定義する式Iまたは式IIの7アミノ酸繰り返し2つ以上で構成されることもある。
「疎水性残基」とは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンまたはメチオニンを意味する。特定の実施態様において、疎水性残基はプロリンではない。
「荷電残基」とは、酸性または塩基性アミノ酸を意味する。リシン、アルギニンおよびヒスチジンは塩基性アミノ酸であり、アスパラギン酸およびグルタミン酸は酸性アミノ酸である。
「カオトロピック剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊する水溶性物質を意味する。例示的なカオトロピック剤には、限定するものではないが、尿素、グアニジン−HCl、過塩素酸リチウム、ヒスチジンおよびアルギニンが含まれる。
「中性(mild)界面活性剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊するが、生物学的活性を喪失させるようにタンパク質構造を永久破壊しない(すなわち、タンパク質を変性しない)、水溶性物質を意味する。例示的な中性界面活性剤には、限定するものではないが、Tween(例えばTween−20)、Triton(例えばTriton X−100)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシエタノール)、Nonidet P−40(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230の伸展と定義される(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985))。重鎖間S−S結合を形成する最初および最後のシステイン残基を同じ位置に置くことにより、他のIgGアイソタイプのヒンジ領域をIgG1配列と整列させることができる。
Fc領域の「下方ヒンジ領域」は、ヒンジ領域の直ぐC末端側の残基、すなわちFc領域の残基233から239の伸展と通常は定義される。本発明より以前は、FcガンマR結合は、一般に、IgG Fc領域の下方ヒンジ領域におけるアミノ酸残基によるものとされていた。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、IgGの残基231あたりから340あたりに伸展する。CH2ドメインは、別のドメインと厳密に対合しない点でユニークである。それどころか、2つのN連結分岐炭水化物鎖がインタクト天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に介在している。炭水化物がドメイン−ドメイン対合の代わりになり、CH2ドメインの安定化を助長し得ると推測されている。Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985)。
「CH3」ドメインは、Fc領域中のCH2ドメインのC末端側の残基(すなわち、IgGのアミノ酸残基341あたりからアミノ酸残基447あたり)の伸展を含む。
用語「Fc領域」は、本明細書では免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられ、天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端の伸展と定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の生産もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換えにより改変することによって、取り除かれることがある。従って、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が取り除かれた抗体集団、K447残基がまったく取り除かれていない抗体集団、およびK447残基を有する抗体とK447残基のない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;CDC;Fcレセプター結合;ADCC;貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター;BCR)のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせるためにFc領域を一般に必要とするので、例えば本明細書における定義に開示するような、様々なアッセイを用いて該エフェクター機能を評価することができる。
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然配列ヒトIG2 Fc領域;天然配列ヒトIG3 Fc領域;および天然配列ヒトIG4 Fc領域;ならびにこれらの天然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1のアミノ酸修飾、好ましくは1以上のアミノ酸置換によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域とまたは親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域にまたは親ポリペプチドのFc領域に約1から約10のアミノ酸置換、および好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。本明細書での変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域とのおよび/または親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくはそれらとの少なくとも約90%の相同性、さらに好ましくはそれらとの少なくとも約95%の相同性を有する。
本明細書で用いる「Fc複合体」は、互いに相互作用するFc領域の2つのCH2ドメインおよび/または互いに相互作用するFc領域の2つのCH3ドメインを指し、この場合、該CH2ドメインおよび/または該CH3ドメインは、ペプチド結合ではない結合および/または力(例えばファンデルワールス、疎水性、親水性力)によって相互作用する。
本明細書で用いる「Fc成分」は、Fc領域のヒンジ領域、CH2ドメインまたはCH3ドメインを指す。
本明細書で用いる「Fc CH成分」または「FcCH」は、Fc領域のCH2ドメイン、CH3ドメイン、またはCH2およびCH3ドメインを含むポリペプチドを指す。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
「低減する又は阻害する」とは、概して好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%、85%、90%、95%又はそれ以上の減少を引き起こす能力を指す。低減する又は阻害するとは、治療する疾患の症状、転移の存在又は大きさ、原発腫瘍のサイズ、又は血管形成性疾患の血管の大きさ又は数を指しうる。
本明細書において「アレルギー性又は炎症性の疾患」は、個体の免疫系の過剰活性化から生じる疾患又は疾病である。例示的なアレルギー性又は炎症性の疾患には、喘息、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、全身狼瘡、エリテマトーデス、湿疹、臓器移植、年齢性黄斑変性、クローン病、潰瘍性大腸炎、好酸性食道炎および炎症に関連する自己免疫性疾患が含まれるが、これに限定されない。
筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」なる用語は、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換されうる薬学的に活性な物質の前駆体又は誘導体の形態を指す。例として、Wilman, "Prodrugs in Cancer Chemotherapy" Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)およびStella et al., "Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery," Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照のこと。プロドラッグには、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
「副腎皮質ステロイド」は、天然に生じる副腎皮質ステロイドの効果を模倣するかあるいは増大するステロイドの一般的な化学構造を有するいくつかの合成又は天然に生じる物質の何れか一つを指す。合成副腎皮質ステロイドの例として、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンを含む)、デキサメサゾン、トリアムシノロン及びベタメサゾンが含まれる。
ここで用いる「細胞障害性放射線療法」は、細胞の機能を阻害又は予防し、および/または細胞の破壊を引き起こす放射線療法を指す。放射線療法には、例えば、外的光線照射又は抗体などの放射性標識した薬剤による療法が含まれうる。この用語は、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、Ra223、P32およびLuの放射性同位体)の使用を含むことを目的とする。
「標的分子」は、(好ましくはスキャッチャード分析によるところの1uM Kdより高い親和性で)本発明のタンパク質複合体に結合することができる分子を指す。標的分子の例には、血清可溶性タンパク質およびそれらのレセプター、例えばサイトカインおよびサイトカインレセプター、アドヘシン、増殖因子およびそれらのレセプター、ホルモン類、ウイルス粒子(例えばRSV Fタンパク質、CMV、StaphA、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス)、微生物(例えば細菌細胞タンパク質、真菌細胞)、アドヘシン、CDタンパク質およびそれらのレセプターが含まれるが、これらに限定されない。
「被検体」は、脊椎動物、例として哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物には、家畜(例えばウシ)、スポーツ用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されない。
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」なる語彙、又は「含む」ないし「含んでいる」の変形型は、定めた完全体又は完全体の群を包含するもので、任意の他の完全体又は完全体の群を除外するものではない。
本明細書に記載するタンパク質複合体は、ヘテロ二量体化ドメイン(例えばコイルドコイルドメイン)および/またはテザーを使用することにより構築することができる。
ヘテロ二量体化ドメインの使用は、単一抗体内に異なる重鎖を有する比較的純粋な抗体集団の構築を可能にする。特に、上に記載したように、抗体は、それぞれが同一の軽鎖と対合している2つの同一の重鎖を概して含む。本発明のコイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン技術の使用は、単一抗体形成の際に異なる抗体重鎖が優先的に互いに二量体化することを可能にする。このようにして得られる抗体は、それぞれが同一の軽鎖と(対合している必要はないが)概して対合している2つの異なる重鎖を含む。そのような抗体におけるそれぞれの重−軽鎖対は、異なる重鎖の存在のため、異なる結合特異性を有するので、該抗体を多重特異性抗体と見なすことができる。テザーを、単独でまたはコイルドコイル技術と併用で、本発明の抗体の改変に活用することもできる。テザーは、定常軽鎖のC末端を可変重鎖のN末端に接続することができ、それ故、適切な軽鎖と重鎖の会合を可能にし、単一の抗体コードプラスミドを使用する組換え抗体生産も可能にする。コイルドコイルおよび/またはテザーを含む抗体を下でさらに説明する。
A.コイルドコイルドメイン
本明細書に記載するタンパク質複合体を生成するために使用されるヘテロ二量体化ドメインは、電荷が逆の残基を含有する第二アルファらせんとの会合によりコイルドコイルを形成することができるアルファらせん(例えば、右巻きのアルファらせん)であり得る。ヘテロ二量体分子の均一なまたはほぼ均一な集団を生成するには、ヘテロ二量体化ドメインが、ホモ二量体に優先してヘテロ二量体を形成する強い優先性を有さなければならない。この点で、本明細書に記載するヘテロ二量体ドメインは、Fos/Junロイシンジッパードメインを超える有意な利点を提供する。Junは、容易にホモ二量体を形成するからである。例示的なアルファらせん二量体化ドメインを図1、2Aおよび2Bに図解する。特定の実施態様において、第一コイルドコイルドメインは、式Iの7アミノ酸繰り返し:
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
(式中、
X1は、疎水性アミノ酸残基またはアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は、各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は、疎水性アミノ酸残基であり、ならびに
X5およびX7は、各々荷電アミノ酸残基である)
を含有し、および第二コイルドコイルドメインは、式IIの7アミノ酸繰り返し:
(X’1X’2X’3X’4X’5X’6X’7)n (式II)
(式中、
X’1は、疎水性アミノ酸残基またはアスパラギンであり、
X’2、X’3およびX’6は、各々任意のアミノ酸残基であり、
X’4は、疎水性アミノ酸残基であり、ならびに
X’5およびX’7は、各々荷電アミノ酸残基である)
を含有する。式Iおよび式II両方において、nは2以上(例えば、3または4以上)、かつ100以下である。一実施態様において、nは、2と20の間である。
第一コイルドコイルドメインのX5およびX7残基ならびに第二コイルドコイルドメインのX’5およびX’7残基は、同じ電荷を(有する必要はないが)有することができる。従って、一例では、第一コイルドコイルドメインのX5およびX7残基は塩基性残基であり、第二コイルドコイルドメインのX’5およびX’7残基は酸性残基である。別の例では、第一コイルドコイルドメインのX5は塩基性残基であり、第一コイルドコイルドメインのX7は酸性残基である。この例では、第二コイルドコイルドメインは、X’5位置に塩基性残基を有し、X’7位置に酸性残基を有する。図1に示すように、第一コイルドコイルドメインのX5残基と第二コイルドコイルドメインのX’7残基の間ならびに第一コイルドコイルドメインのX7残基と第二コイルドコイルドメインのX’5残基の間にイオン性相互作用が生ずる。関連した例では、第一コイルドコイルドメインのX5は酸性残基であり、第一コイルドコイルドメインのX7は塩基性残基であり、第二コイルドコイルドメインのX’5は酸性残基であり、および第二コイルドコイルドメインのX’7は塩基性残基である。加えて、第一および第二コイルドコイルドメイン両方のX1/X’1位置にアスパラギンとともに少なくとも1つの7アミノ酸繰り返しを含めることを用いて、第一および第二コイルドコイルドメインの平行配向を確実にすることができる。
7アミノ酸繰り返しの中の疎水性残基は、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンから選択される。プロリンは、疎水性だが、一実施態様では式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインに含まれない。アミノ酸配列中のプロリンの存在が、アルファらせん構造を形成するその能力を制限し得るからである。加えて、他の実施態様では、式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインは、グリシン残基を含有しない。グリシン残基は、その配座柔軟性のため、拘束アルファらせん構造を容易にとらないからである。式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインに含めることができる荷電残基には、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、ここでリシン、アルギニンおよびヒスチジンは塩基性残基であり、アスパラギン酸およびグルタミン酸は酸性残基である。
本明細書に記載する抗体の構築は、式Iのコイルドコイルドメインおよび式IIのコイルドコイルドメイン(第一および第二コイルドコイルドメイン)を使用することがあり、この場合、前記第一コイルドコイルドメインを前記抗体の第一定常ドメイン(例えば第一重鎖のCH3)に連結し、第二コイルドコイルドメインを該抗体の第二定常ドメイン(例えば第二重鎖のCH3)に連結する。この結合は、ペプチド結合による直接的な結合である場合があり、またはリンカー配列による場合がある。リンカーは、あるアミノ酸配列(例えば定常領域)のC末端および他のアミノ酸配列(例えばコイルドコイルドメイン)のN末端に結合されたペプチドであり得る。前記リンカーは、本明細書の他の箇所でさらに説明するようなその抗体定常領域からのコイルドコイルドメインの切断を可能にするほどに長いが、2つの抗体定常領域(例えば2つの重鎖定常領域)のヘテロ二量体性会合をもたらすほどに短いものであり得る。従って、リンカーは、2から100アミノ酸長のアミノ酸配列であり得る。特定の実施態様において、前記リンカーは、2アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長である。前記リンカーは、例えば中性極性または非極性アミノ酸から成り得る。
B.多重特異性抗体
そのような抗体の可変ドメインを幾つかの方法から得ることができることは理解されるはずである。例えば、本発明の抗体の可変ドメインは、当該技術分野において公知の既存の抗体と同じであり得る。
コイルドコイルドメインを用いて多重特異性抗体(少なくとも2つの抗原にまたは同じ抗原上の少なくとも2つのエピトープに結合する抗体)を生成することができる。一例では、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。典型的に、自然に生ずるIgG抗体では、抗体のそれぞれの重−軽鎖対の可変領域は同一である。本発明によるコイルドコイルドメインの使用は、抗体内の2つの重鎖が異なることを可能にし、その結果、異なる結合特異性を有する抗原結合ドメインを有する抗体が得られる。特に、各重鎖上の(例えばCH3のC末端側の)コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、異なる重鎖間の結合を促進する。場合により、コイルドコイルドメインは、組み立て後に抗体からコイルドコイルを取り除くことができるように、切断することができるリンカーによって重鎖定常領域に連結される。
2つの異なる重鎖(HC1およびHC2)および2つの同一のまたは共通の軽鎖を含む、例示的な二重特異性抗体の略図を図3に示す。図3における例示的な二重特異性抗体は、ヘテロ二量体コイルドコイルも含有する。この抗体は、各コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインのN末端側にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位も含むことができ、抗体が組み立てられるとこの部位によって抗体からコイルドコイルを取り除くことが可能になる。この例示的な二重特異性抗体における両方の重鎖も、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異を含むため、Lys−Cエンドペプチダーゼ処理は、結果として、コイルドコイルを取り除くだけで重鎖定常領域内での切断を生じさせない。
例示的な抗体は、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含むが、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位の位置は使用される抗体配列に依存して様々であり得る。当業者は、抗体の配列を容易にスキャンして、コイルドコイルまたはテザー配列を取り除くことよる抗体自体の切断を回避するために取り除く必要がある何らかの切断部位(例えば、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位)が重または軽鎖配列内にあるかどうかを判定することができる。
さらに、重鎖がCH1ドメインを欠く(VHがヒンジ−CH2ドメインに直接接続されている)および対応する軽鎖がCLドメインを欠く多重特異性抗体を、本明細書に記載する方法を用いて構築することができる。そのような抗体を使用して、異なる抗原を一緒にすることまたはBおよびT細胞を会合させることができる。
C.一アーム抗体
ヘテロ二量体化コイルドコイルドメインを使用して、一アーム抗体を生成することもできる。一アーム抗体の一例を図解する略図を図4Aに示す。図4Aに示す例示的な抗体は、軽鎖(LC);1つの完全長重鎖(HC1);およびVHとCH1ドメインとヒンジ領域の一部とを欠く第二重鎖(HC2)を含む。HC1およびHC2両方がC末端にコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを含む。この例におけるHC1配列は、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異を含有するため、Lys−C切断は、結果として、コイルドコイルを取り除くだけで重鎖内での切断を生じさせない。
D.コンジュゲートタンパク質複合体
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して、定常領域が細胞障害剤へのコンジュゲーションにより修飾されているタンパク質複合体、例えば抗体(例えば単一特異性、二重特異性、一アームまたはテザー抗体)を生成することもできる。例えば、コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、重鎖定常領域の1つ(HC1またはHC2)は細胞障害剤へのコンジュゲーションを可能にする修飾を含むがその他の重鎖定常領域は含まない抗体の構築を可能にする。一例では、HC1を細胞障害剤にコンジュゲートさせるが、HC2はさせない。コンジュゲート抗体の一例を図解する略図を図4Bに示す。この例示的な抗体は、2つの完全長重鎖および2つの同一の軽鎖(共通の軽鎖)、ならびにコイルドコイルを含む。星によって示すように、重鎖の一方が細胞障害剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされている。同様に、代替抗体構築物では、軽鎖定常領域の1つを細胞障害剤にコンジュゲートすることができるが、その他の軽鎖定常領域はさせない(例えば、LC1を細胞障害剤にコンジュゲートさせるが、LC2はさせない)。
1つの特定の例では、細胞障害剤を抗体にコンジュゲートさせるために使用されるリンカー試薬のまたは細胞障害剤自体の求核性置換基と反応することができる求電子性部分を導入するように抗体の定常領域を修飾することができる。グリコシル化抗体の糖を例えば過ヨウ素酸塩酸化試薬で酸化させてアルデヒドまたはケトン基を形成することができ、これらの基がリンカー試薬または細胞障害剤のアミン基と反応し得る。結果として生じるイミンシッフ塩基は安定した結合を形成することができ、または例えば水素化ホウ素試薬によってその基を還元して、安定したアミン結合を形成することができる。細胞障害剤の求核性基には、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルマートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;ならびに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基を含む、抗体領域およびリンカー試薬の求電子性基と反応して共有結合を形成できるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジド基が含まれるが、これらに限定されない。
E.テザータンパク質複合体
本発明は、テザーを使用して構築されたタンパク質複合体も提供し、例えば、ある抗体は、定常軽鎖のC末端を可変重鎖のN末端に連結させるテザーを有し得る。テザーは、軽鎖と重鎖の適切な会合(すなわち、軽鎖とそれが繋がれる重鎖との会合)を促す。そのようなテザー抗体を、上で説明したようなヘテロ二量体化ドメインを用いてまたは用いずに構築することができる。コイルドコイルを含有する例示的なテザー抗体の略図を図5に示す。図5に示す例示的抗体は、2つの異なる重鎖(HC1およびHC2)、ならびに2つの異なる軽鎖(LC1およびLC2)を含有する。テザー抗体を共通の軽鎖および/または共通の重鎖を含有するように構築することもできる。この例示的な抗体では、HC1およびHC2が、上で説明したように、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異をヒンジ領域に含み、それらのC末端にコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインも含む。
テザー抗体へのヘテロ二量体化ドメインの付加は、重鎖/軽鎖複合体を一緒にすることを促し、それによってそのような複合体のホモ二量体化を減少させるまたは無くす。特定の実施態様において、テザーは、適切な軽鎖/重鎖会合を可能にするために、組み立てられた抗体(図6)における可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離にわたるほどに長いが、鎖間会合(すなわち、軽鎖とそれが繋がれない重鎖との会合)を防止するほどに短いものであり得る。図6に示す例において、可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離はおおよそ92Åである。ペプチド結合は、約4.3Åにわたる。この例では、テザーは、可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離にわたるために約22アミノ酸長でなければならない。定常軽鎖のC末端と可変重鎖のN末端の間の距離は、抗体間で異なり得、従って、テザーの長さも抗体間で変わるはずである。20、23および26アミノ酸長のテザーを試験した。一般に、15−50アミノ酸のテザーが有効である。テザーは、柔軟性を維持することができ二次構造を形成してはならない。このために、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含有するテザーが使用され得る。テザーは、GおよびS残基のみから成ってもよいが、抗体の軽鎖と重鎖の組み立てを可能ならしめる柔軟性をそのテザーが維持する限り、他の残基を含んでもよい。特定の実施態様において、テザーはGGSリピートを含有する(図5)。15−30アミノ酸長のテザーの場合、テザーは、一実施態様では、少なくとも5つのGGSリピートを含有する。本明細書に記載され、配列番号:14の配列を有する例示的なテザーは、8つのGGSリピートを含有し、ならびにNおよびC末端両方に追加のグリシン残基を含有する。他の例示的なテザー配列を図7Bに示す。該配列は、それらのNおよびC末端にフリンまたはLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位のいずれかを含有する。
F.テザーおよびリンカー配列の切断
タンパク質複合体を組み立てたら、テザーをもはや必要としないことがあり、必要に応じて抗体から切断することができる。テザーに見出されるが抗体配列には見出されない切断部位を用いて、テザーを取り除くことができる。同様に、抗体を組み立ててしまったらコイルドコイルももはや必要でなく、同じく必要に応じて抗体から切断することができる。
図7Aは、テザーにおけるおよびコイルドコイルを抗体に連結させるリンカー配列における例示的な切断部位の位置を図解するものである。一般に、テザーにおける切断部位は、テザー配列のCおよびN末端にもしくは該部位付近に位置し、または抗体配列内の該抗体とテザーが連結される部位もしくは該部位付近に位置する。リンカーについての切断部位は、一般に、該リンカー配列(またはコイルドコイル)のN末端に位置するか、抗体配列内の該抗体と該リンカー(またはコイルドコイル)が連結される部位または該部位付近に位置する。リンカーが、Lys−Cエンドペプチダーゼを使用して(例えば、定常重鎖のC末端のリシン残基で)切断される場合、その抗体の配列を、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くように修飾する必要があり得る。そのような修飾の一例は、ヒンジ領域内のリシンのアラニンへの突然変異(例えば、K222A、カバット番号付けシステム;本明細書に記載する例示的な抗体におけるK222A、EU番号付けシステム)である。他の切断部位の修飾が必要とされることがあり、様々な切断剤を本発明での使用のために選択して同様の手法でそのような修飾を行うことができる。
特定部位でのアミノ酸配列の切断は当該技術分野において標準的であり、酵素的切断、化学的切断または自己プロセシングを含み得る。例えば、エンドペプチダーゼを使用してテザーまたはリンカーをタンパク質から切断することができる。例示的なエンドペプチダーゼには、限定ではないが、Lys−C、Asp−N、Arg−C、V8、Glu−C、トロンビン、ゲネナーゼ(スブチリシンBPN’プロテアーゼの変異体)、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、キニノゲナーゼ、キモトリプシン、トリプシン、ペプシンおよびパパインが含まれ、これらのすべてが(例えば、Boehringer Mannheim、Thermo Scientific、またはNew England Biolabsから)市販されている。Lys−Cは、リシン残基のカルボキシル側で切断し、V8およびGlu−Cは、グルタメート残基のカルボキシル側で切断し、Arg−Cは、アルギニン残基のカルボキシル側で切断し、Asp−Nは、アスパルテート残基のアミノ側で切断し、キモトリプシンは、トリプシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびロイシン残基のカルボキシル側で切断し、ならびにトリプシンは、アルギニンおよびリシン残基のカルボキシル側で切断する。TEVは、「Gln」残基と「Gly」残基の間のアミノ酸配列GluAsnLeuTyrPheGlnGly(配列番号:19)を切断した。そのような酵素の使用は、当該技術分野において標準的であり、プロトコルは製造業者から入手可能である。
あるいは、ヒドロキシルアミンなどの化学物質を使用してテザーまたはリンカーをタンパク質から切断することができる。ヒドロキシルアミンは、アスパラギン−グリシンペプチド結合を切断する。ヒドロキシルアミンを使用して、テザーおよびリンカーをタンパク質から切断する場合、タンパク質の断片化を回避するために該タンパク質中の幾つかのグリシンまたはアスパラギン残基を突然変異させる必要があり得る。
ペプチド結合を切断する非常に多くの他の化学物質が当該技術分野において公知である。例えば、N−クロロスクシンイミドは、トリプトファン残基のC末端側で切断する(Shechter et al.,Biochemistry 15:5071-5075(1976))。N−ブロモスクシンイミドおよび臭化シアンもトリプトファン残基のC末端側で切断する。加えて、2−ニトロチオシアノ安息香酸または有機ホスフィンを使用して、システイン残基のN末端側でタンパク質を切断することができる(例えば、欧州特許第0339217号を参照)。
リンカーまたはテザーを二塩基性部位(例えば、アルギニン−アルギニン、リシン−アルギニン、またはリシン−リシン部位)で切断することもできる。二塩基性部位で切断する酵素は当該技術分野において公知であり、例えば、N−アルギニン二塩基性転換酵素(Chow et al.,JBC 275:19545-19551(2000))ならびにスブチリシン様プロプロテイン転換酵素、例えばフリン(PC1)、PC2およびPC3(Steiner(1991)in Peptide Biosynthesis and Processing(Fricker ed.)pp.1-16,CRC Press,Boca Raton,FL;Muller et al.,JBC 275:39213-39222,(2000))を含む。
タンパク質が自己プロセシングすることも公知である。例えば、ヘッジホッグタンパク質は、該タンパク質内のタンパク質分解活性によってGly.AspTrpAsnAlaArgTrp.CysPhe切断部位(配列番号:20)でプロセッシングされる。自己タンパク質分解切断部位をリンカーまたはテザー配列に含めることもできる。
G.他のタンパク質の特徴
本発明によるタンパク質は、ヒトもしくはマウス源またはそれらの組み合わせを含む任意の供給源からの配列を含み得る。これらのタンパク質の一定の部分(例えば高頻度可変領域)の配列は、人工配列、例えばランダム配列を含むライブラリ(例えばファージディスプレイライブラリ)のスクリーニングにより同定された配列である場合もある。
異なる供給源からの配列を含む抗体の場合、それらの抗体は、重および/または軽鎖の一部分は特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、該鎖の残部は別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。そのようなキメラ抗体は、例えば、マウス可変領域(またはそれらの一部分)およびヒト定常領域を含むことがある。
場合により、キメラ抗体は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含有する「ヒト化」抗体であることもある。典型的に、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基によって置換されている、ヒト抗体(レシピエント抗体)である。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されていることがある。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体におよびドナー抗体に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をより洗練させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも場合により含む。さらなる詳細は、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。
より詳細には、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、齧歯類CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的にはWinterおよび共同研究者の方法(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))に従って行うことができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインより実質的に少ないヒト可変領域が非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、典型的に、ヒト化抗体は、多少のCDR残基およびことによると多少のFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用される、軽および重両方の、ヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「最良適合」法によると、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が公知ヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。このとき、齧歯類のものに最も近いヒト配列がそのヒト化抗体についてのヒトフレームワーク(FR)と解釈される(Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987))。もう1つの方法は、軽または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。この同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immnol.151:2623(1993))。
抗原に対する高い親和性および他の好適な生物学的特性を保持して抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、1つの例示的な方法によると、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによってヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルを一般に利用でき、それらは当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元高次構造を図解および表示するコンピュータプログラムを利用できる。これらの表示の精査は、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基についての可能性のある役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性増加が達成されるようにレシピエントおよびインポート配列からFR残基を選択して組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的におよび最も実質的に関与する。
III.ベクター、宿主細胞及び組換え方法
本発明の抗体の組み換え生成のために、コードする核酸を単離して、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは従来の手順で簡単に単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。用いる宿主細胞にある程度依存してベクターを選択する。一般的に、好適な宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳動物であるが、菌類(例えば酵母)、昆虫、植物、および他の多細胞微生物の有核細胞)由来の細胞である。IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を含め、任意のアイソタイプの定常領域がこの目的のために使われてもよく、このような定常領域はヒト又は動物種の何れかから得られうることは理解されるであろう。
i. ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードしているポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、ポリペプチドをコードしている配列は原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該分野において入手でき知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズとベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。各ベクターは、機能(異種性ポリヌクレオチドの増幅又は発現ないしその両方)及び属する特定の宿主細胞への適合性に応じて、様々な成分を含む。一般的に、限定するものではないが、ベクター成分には複製起源、選択マーカー遺伝子、プロモータ、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種性核酸挿入及び転写終末配列が含まれる。
上述した発現ベクターで宿主細胞を形質転換又は形質移入し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された通常の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに別の方法はエレクトロポレーションである。
ある実施態様では、タンパク質溶解性酵素を欠損した、一以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換した大腸菌株を本発明の発現系の宿主細胞として用いる。
当分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の方法は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画化、エタノール沈降法、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどの陽***換樹脂によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び、例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過法。
一般的に、ベクターは、限定するものではないが、以下の一以上を含む:シグナル配列、複製起点、一以上のマーカ遺伝子、エンハンサー因子、プロモータ及び転写終末因子。
真核生物の宿主細胞に用いるベクターは、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいは対象とするポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。このような前駆体領域のDNAは、多価抗体をコードするDNAに読み取り枠を一致させて結合される。
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)必要があれば栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例として、ATCC CRL-9096)。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。例として米国特許第4965199号を参照のこと。
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体ポリペプチド核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
より高等の真核生物による抗体ポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強されうる。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(例えばグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン遺伝子)。また、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられてよい。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化を亢進するのための因子の記載については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、亢進されるのであれば、一般にプロモーターから5'位に位置している。
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス***腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCINTM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
ある実施態様では、対象の抗体は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への溶出によってカラムの固相から回収される。例示的なカオトロピック剤および中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
組み換えバキュロウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ細胞(例えばSf9細胞;ATCC CRL1711)またはキイロショウジョウバエS2細胞のような昆虫細胞に抗体ないし抗体断片とBaculoGoldTMウイルスDNA(Pharmingen)をコードするプラスミドを、例えばリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販されている)を使用して同時形質移入することによって作製されうる。具体的な例では、抗体配列は、バキュロウイルス発現ベクター内に含有されるエピトープ標識の上流で融合する。このようなエピトープ標識はポリ-Hisタグを含む。pVL1393(Novagen)又はpAcGP67B(Pharmingen)といった市販のプラスミド由来のプラスミドを含め、様々なプラスミドが使用されてよい。簡単に言うと、抗体ないしその断片をコードする配列は、5'および3'領域に相補的なプライマーによるPCRによって増幅されうる。5'プライマーは、隣接(選択した)制限酵素部位を組み込んでよい。次いで、生成物を選択した制限酵素にて消化し、発現ベクターにサブクローニングしてよい。
発現ベクターにて形質移入した後、宿主細胞(例えばSf9細胞)を28℃で4−5日間インキュベートし、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いる。ウイルス感染およびタンパク質発現は、例えばO'Reilley et al. (Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual. Oxford: Oxford University Press (1994))に記述されるように実行されてよい。
あるいは、抗体の精製は、例えばプロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィなどの公知のクロマトグラフィ技術を使用して実行されうる。対象の抗体は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への溶出によってカラムの固相から回収してもよい。例示的なカオトロピック剤および中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。
コイルドコイル含有抗体のために使われうるある特定の精製手法を以下に示す。
コイルドコイル含有抗体を4℃のプロテインA(例えばmAbSure)カラムに流す
↓
KPO4、次いでPBS+0.1%トリトンX114にてカラムを洗浄
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試料をトリスpH8.0(200mM)とアルギニン(100mM)に溶出させる
↓
試料のpHを8.0に調整し、37℃、1:500wt:wt LysCで1時間切断
↓
1ml mAbSure樹脂/10mg タンパク質を使用して試料を濃縮し、トリス/アルギニンバッファに溶出
↓
試料をPBS+0.3M NaCl+100mM アルギニン中のS200ゲル濾過カラムに流す
↓
分画を回収し、プールし、PBSに透析する
アルギニンに加え、最初のプロテインAカラム工程の後に上記の精製プロトコールに用いられうる他のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。最初のプロテインA含有カラム(例えばmAbSureカラム)からの溶出の後にカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への抗体の希釈は、溶出後の抗体の安定性を維持し、Lys−Cエンドペプチダーゼによりコイルドコイルを効率よく除去することができる。
また、本発明は、本明細書中に記載の抗体(例えば本明細書において記述される方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体)の何れかを含む、コンジュゲート抗体又はイムノコンジュゲート(例えば「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC)といったコンジュゲートされたタンパク質であって、このとき軽鎖または重鎖の定常領域のうちの一つが、色素又は細胞障害性剤、例えば化学療法剤、薬剤、増殖阻害性剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物の起源の酵素的に活性な毒素ないしその断片)又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)のような化学的分子にコンジュゲートしている、コンジュゲートされたタンパク質を提供する。特に、本明細書に記述されるように、コイルドコイルドメインの使用により2の異なる重鎖(HC1およびHC2)並びに2の異なる軽鎖(LC1およびLC2)を含有する抗体の構築が可能となる。本明細書に記述される方法を用いて構築されるイムノコンジュゲートは、重鎖のうちの一つ(HC1又はHC2)又は軽鎖のうちの一つ(LC1又はLC2)の定常領域にコンジュゲートした細胞障害性剤を含有してよい。また、イムノコンジュゲートがただ一つの重鎖または軽鎖に接着した細胞障害性剤を有しうるので、被検体に投与される細胞障害性剤の量は、重鎖と軽鎖の両方に接着した細胞障害性剤を有する抗体の投与と比較して低い。被検体に投与される細胞障害性剤の量を減らすことは、細胞障害性剤と関係する副作用を制限する。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している本発明の抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する***阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", 米国出願公開2005/0238649に開示される。この開示内容は出典明記によってその全体が特別に組み込まれる。
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N-アセチル-γ1 I、PSAG及びθI 1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
本発明の抗体またはここに記載の方法に従って作製された抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートをさらに考察する。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc99m又はI123、Re186、Re188及びIn111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
本発明のコンジュゲート抗体において、抗体を、場合によってリンカーを介して、一つ以上の薬剤部分(例えば薬剤部分)、例えば抗体につき約1〜約20の部分にコンジュゲートする。コンジュゲート抗体はいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態及び試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合による二価のリンカー試薬と抗体の求核基との反応の後に対象の部分と反応;及び(2) 共有結合による二価のリンカー試薬と部分の求核基との反応の後に抗体の求核基との反応、が含まれる。コンジュゲート抗体を調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
リンカー試薬は、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、米国出願公開2005/0238649を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを個体に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
本明細書に記載の抗体および抗体断片などのタンパク質複合体(例えば本明細書に記述される方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体)は、治療上の適用のために使われてよい。例えば、このような抗体および抗体断片は、前癌性、非転移性、転移性および癌性の腫瘍(例えば初期癌)を含む腫瘍の治療のため、アレルギー性または炎症性の疾患の治療のため、または自己免疫性疾患の治療のため、または、癌(例えば乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞カルチノーマ、膠腫又は卵巣癌)、アレルギー性または炎症性の疾患又は自己免疫性疾患を発症するリスクがある被検体の治療のために使われてよい。
癌なる用語は、前癌性の増殖、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含むがこれに限らず、一まとまりの増殖性疾患を包含する。良性腫瘍は、起源の部位に限局化されたままであり、遠位部位に浸潤、侵入又は転移する能力を有していない。悪性腫瘍は、周辺の他の組織に侵入して、障害を与える。また、それらは、起源の部位から切り離れる能力を獲得し、通常はリンパ節が配置されるリンパ系や血流を介して身体の他の部位に拡がりうる(転移する)。 原発性腫瘍は、それらが生じる組織の種類によって分類され、転移性腫瘍は、癌細胞が由来する組織の種類によって分類される。時間とともに、悪性腫瘍の細胞は、より異常になり、正常細胞のようではなくなる。癌細胞にみられるこの変化は、腫瘍グレードと呼ばれており、癌細胞は、十分に分化されている、中程度に分化されている、ほとんど分化されていない、又は、未分化であると表される。十分に分化した細胞はで全く正常な見かけであり、起源の正常細胞のようである。未分化な細胞は、細胞の起源を決定することがもはや不可能であるほど異常となっている細胞である。
上皮性癌は一般に、良性腫瘍から侵襲前段階(例えばインサイツでの癌腫)、基底膜を透過して、上皮下間質に侵入した悪性癌に発達する。
灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
治療的な使用に加えて、本発明の抗体は、本明細書中に記載の疾患および症状についての診断的方法といった診断方法を含む他の目的のために用いられうる。
本発明のタンパク質は、良好な医療行為に一致した形で処方され、投与量が決められ、投与される。この場合に考慮される因子には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の被検体の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に知られている他のファクターが含まれる。投与されるタンパク質の「治療上有効量」は、このような考慮によって調整され、特定の疾患(例えば癌、アレルギーないし炎症性疾患または自己免疫性疾患)を予防するか、改善するかまたは治療するために必要な最小限量である。タンパク質は、必ずしもそうする必要はないが、場合によっては、疾患の予防又は治療のために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に処方される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するタンパク質の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは、一般に、これまで使用されたものと同じ用量及び投与経路で、あるいはこれまで用いられた投薬量の約1から99%で使用される。一般に、癌の寛解又は治療は、癌と関係する一又は複数の症状又は医学的な問題を少なくすることを伴う。治療上有効な量の薬剤によって、以下の何れか又はいくつかが達成される。癌細胞数の(少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%以上の)減少;腫瘍サイズ又は腫瘍負担の低減又は阻害;周辺臓器への癌細胞の浸潤の阻害(すなわちある程度の減少及び/又は停止);腺腫の場合のホルモン分泌の低減;血管密度の低減;腫瘍転移の阻害;腫瘍増殖の低減又は阻害;及び/又は、癌関連の一又は複数の症状のある程度の軽減。ある実施態様では、タンパク質を用いて、被検体の癌又は自己免疫性疾患の発症又は再発を防ぐ。
更に他の実施態様では、本発明の治療法は、様々な抗癌療法にて治療される癌であると疑われるか診断された一群のヒト被検体において奏効率を有意に増加させる。奏効率は治療に反応した治療された患者の割合と定義される。一態様では、本発明のタンパク質と、手術、放射線療法又は一又は複数の化学療法剤を使用する本発明の併用治療法は、手術、放射線療法又は化学療法単独で治療された群と比較して治療被検体群において奏効率を有意に増大させ、該奏効率は0.005未満のχ二乗p値を有する。癌の治療における治療上の有効性の他の測定値は米国特許出願公開20050186208に記載される。
場合によって、しかし、好ましくは、製剤は、薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩化ナトリウムを、好ましくは生理的濃度で含有する。場合によって、本発明の製剤は、薬学的に許容可能な防腐剤を含有してもよい。いくつかの実施態様では、保存の濃度は、0.1から2.0%、一般的にv/vの範囲である。好適な防腐剤には製薬の分野で知られているものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンは、好適な防腐剤である。場合によって、本発明の製剤は、0.005〜0.02%の濃度で、薬学的に許容可能な界面活性剤を含んでもよい。
活性成分はまた、コロイド性薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロカプセル、ミクロエマルション、ナノ−粒子、およびナノカプセルなど)又はマクロエマルション中、例えば、それぞれ、コアセルベーション法又は界面重合法によって製造された、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)(poly-(methylmethacylate) マイクロカプセルに取込むことができる。このような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesにおいて開示される。
徐放性製剤も調製できる。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルムやマイクロカプセル等の成形品の形である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体、非−分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)から構成される注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グルコール酸のようなポリマーは分子を100日間にわたって放出することができるが、ある種のヒドロゲルはタンパクをより短時間の間放出する。被包された抗体が体内に長時間維持された場合、37℃で水分に暴露されて変性するか凝集し、結果として生物学的活性を失い免疫原性が変化するかもしれない。関与する機構に応じて安定化のための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を介する分子間S−S結合の形成であることが分かれば、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量のコントロール、適当な添加物の使用、および特異的なポリマーマトリックス組成物の使用によって達成することができる。
一例では、タンパク質(例えばコイルドコイル含有抗体、テザー抗体、またはここに記載の方法に従って作製された抗体)は、疾患又は腫瘍の位置が許す限り、例えば直接注射によって局所的に投与され、この注射は周期的に繰り返されうる。また、タンパク質複合体は、局所の再発又は転移を予防するかまたは低減するために、被検体に全身的に、又は腫瘍細胞、例えば腫瘍の外科的切除後の腫瘍又は腫瘍巣に直接、送達されてよい。
本発明の他の実施態様は、本明細書中に記載の一又は複数のタンパク質複合体と疾患(例えば自己免疫性疾患または癌)の治療または診断に有用な材料を具備する製造品である。製造品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、注射器などが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成されてよい。容器は、症状の治療に有効である組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性薬剤は本発明の抗体ないしその抗体断片である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が特定の疾患の治療に用いられることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は更に、抗体組成物を被検体に投与するための指示を含む。また、本明細書中に記載の併用用治療を含む製造品及びキットも考慮される。
パッケージ挿入物は、慣習的に治療用製品の市販パッケージに含まれる指示書を指し、効能、使用、用量、投与、禁忌及び/又はこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含むものである。他の実施態様では、パッケージ挿入物は、組成物が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞癌腫、膠腫又は卵巣癌の治療のために用いられることを示す。
さらに、製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
本発明の複合体によって標的化されうる分子の例には、限定するものではないが、可溶性血清タンパク質およびそのレセプターおよび他の膜結合タンパク質(例えばアドヘシン)が含まれる。
他の実施態様では、本発明の結合タンパク質は、BMPl、BMP2、BMP3B (GDFlO)、BMP4、BMP6、BMP8、CSFl (M-CSF)、CSF2 (GM-CSF)、CSF3 (G-CSF)、EPO、FGFl (aFGF)、FGF2 (bFGF)、FGF3 (int-2)、FGF4 (HST)、FGF5、FGF6 (HST-2)、FGF7 (KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNAl、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNBl、IFNG、IFNWl、FELl、FELl (EPSELON)、FELl (ZETA)、ILlA、ILlB、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、ILIl、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、LTA (TNF-b)、LTB、TNF (TNF-a )、TNFSF4 (OX40リガンド)、TNFSF5 (CD40リガンド)、TNFSF6 (FasL)、TNFSF7 (CD27リガンド)、TNFSF8 (CD30リガンド)、TNFSF9 (4-1BB リガンド)、TNFSFl0 (TRAIL)、TNFSF1l (TRANCE)、TNFSF12 (APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14 (HVEM-L)、TNFSF15 (VEGI)、TNFSF18、HGF (VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、ILlR1、IL1R2、IL1RL1、LL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、ILl0RA、ILl0RB、IL1lRA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、ILlRAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、ILlRN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIFl、HGF、LEP (レプチン)、PTN、およびTHPOからなる群から選択される1、2またはそれ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質およびサイトカインレセプターを結合することができる。
本明細書に記載のコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、任意の抗体の定常鎖(例えばHCのC末端)に連結されてよい。コイルドコイル含有抗体を構築するために用いられうる多数の抗体配列は当分野で知られており、DNA配列を操作するために必要とされる技術も当分野でよく知られている。コイルドコイル含有抗体を構築する例示的な方法を以下に記載する。
コイルドコイルを含有する抗体の生成のためのHC主鎖を以下のように構築した。センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを設定し、5' AscIおよび3' XbaIオーバーハングを有するACID.p1(GGSAQLEKELQALEKENAQLEWELQALEKELAQGAT;配列番号:33)又はBASE.p1(GGSAQLKKKLQALKKKNAQLKWKLQALKKKLAQGAT;配列番号:34)のコイルドコイルドメイン配列をコードするように合成した。オリゴヌクレオチドをアニーリングし、リン酸化し、消化して脱リン酸化したpRKプラスミド(Genentech Inc.;Eaton et al., Biochemistry 25:8343-8347 (1986))にライゲートした。hIgG1のCH1からCH3ドメインは、5'マルチクローニング部位(MCS)(ClaI-BamHI-KpnI-ApaI)と3'AscI部位を含むようにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用して調製し、ClaIおよびAscIを用いて事前に調製したpRK-ACID.p1又はpRK-BASE.p1ベクターにクローニングした。最後に、位置H222(カバット番号付け枠)のリジン残基を、ストラタジーンのQuikchange II XL部位特異的突然変異キットを使用してアラニン残基に変異させ、Lys−C切断時のFab放出を妨げた。
テザー抗体のために、所望の抗体のVHドメイン(シグナル配列を欠く)をまず、5'プライマーがGGSテザーの3'側の半分を含み、5'BamHI部位で終わり、3'プライマーが3'ApaI部位で終わるPCRを用いて調製した。断片を消化し、同様に調製した主鎖ベクターにクローニングした。次いで、所望の抗体の同族LCを、5'プライマーが5'ClaI部位で終わり、3'プライマーがGGSテザーの5'側部分を含み、3'BamHIで終わるPCRを用いて調製した。LC断片は、ClaIおよびBamHIを用いてVHの前に該断片をクローニングすることによって、(主鎖ベクター内の)その同族のHCに連結した。LCをVHに連結する完全なテザー配列は、GGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSG(配列番号:14)とした。ベクターは、標準的な形質移入技術を使用して哺乳動物細胞(CHO又は293細胞)に形質移入した。
FcεR1およびFcγR2bの両方を特異的に結合し、共通のLCを有する二重特異性抗体は、本明細書中に記述される方法を使用して調製した。この抗体は、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗ヒトFcγR2b HC配列を含有する「BASE.p1」配列(配列番号:1)、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗ヒトFcεR1 HC配列を含有する「ACID.p1」配列(配列番号:2)、および共通のLC配列(配列番号:3)(図8)を有する。
HER2又はEGFRを特異的に結合する一アーム抗体も調製した。HER2を特異的に結合する抗体は、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗HER2抗体1 HC配列(配列番号:4)、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いているHC領域(配列番号:5)、そして抗HER2抗体1 LC配列(配列番号:6)を含有する。EGFRを特異的に結合する抗体は、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗EGFR HC配列(配列番号:7)、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いているHC領域(配列番号:5)、および抗EGFR(D1.5) LC配列(配列番号:8)を含有する(図9-1および9-2)。
コイルドコイル含有抗体を精製するために用いられうる例示的な計画を以下に示す。
コイルドコイル含有抗体を4℃のプロテインA(例えばmAbSure)カラムに流す
↓
KPO4、次いでPBS+0.1%トリトンX114にてカラムを洗浄
↓
試料をトリスpH8.0(200mM)とアルギニン(100mM)に溶出させる
↓
試料のpHを8.0に調整し、37℃、1:500wt:wt LysCで1時間切断
↓
1ml mAbSure樹脂/10mg タンパク質を使用して試料を濃縮し、トリス/アルギニンバッファに溶出
↓
試料をPBS+0.3M NaCl+100mM アルギニン中のS200ゲル濾過カラムに流す
↓
分画を回収し、プールし、PBSに透析する
アルギニンに加えて、最初のmAbSure樹脂カラム工程後の上記精製プロトコールにおいて使われうる他のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。最初のプロテインA含有カラム(例えばmAbSureカラム)から溶出後のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への抗体の希釈は、溶出後の抗体の安定性を維持し、Lys−Cエンドペプチダーゼによるコイルドコイルの効率的な除去を可能にする。
表1は、抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体についての精製結果の概要を示す。
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して構築されたが、もはやコイルドコイルを含有していない抗体は、以降の実施例では「改変抗体」と称する。
コイルドコイル(ある場合には、およびテザー)が抗体配列を完全にしたままで抗体配列から切断されうることを示すために、様々なコイルドコイル含有抗体に対して切断実験を行った。特に、図13AおよびBは、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b抗体から切断されたこと、そして抗体が完全なままであったことを示す。コイルドコイルを有する抗体の理論上の質量は、質量分析によって実験的に観察される質量の誤差の範囲内である。同様に、コイルドコイルのない改変抗体の理論上の質量は、質量分析によって実験的に観察される質量の誤差の範囲内であり、これは、Lys−Cがコイルドコイルを抗体から切断したことを示す。
また、質量分析結果は、Lys−Cエンドペプチダーゼが例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b抗体のLC又はHCを切断しなかったことを示した(図14AおよびB)。特に、分子質量は、質量分析を用いて、LC(上2つのパネル)およびα-FcεR1およびα-FcγR2b HC(下4つのパネル)について、Lys−Cエンドペプチダーゼ処置前(左パネル)およびLys−Cエンドペプチダーゼ処置後(右パネル)の両方について決定した。実験的に観察された分子質量は、様々なコンストラクトについての理論上の質量の誤差の範囲内であり、これは、Lys−CエンドペプチダーゼがコイルドコイルドメインをHCから切断したが、LCまたはHCそれ自体を切断しなかったことを示す。
同様に、質量分析結果は、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的な一アーム形α-EGFR抗体から切断されたことを示した(図17AおよびB)。特に、実験的に観察された分子質量は、コイルドコイルを有する一アーム形抗体およびコイルドコイルのない一アーム形抗体両方についての理論上の質量の誤差の範囲内であった。図18A−Cに示すように、理論上の分子質量は各々のコンストラクトについて実験的に観察された分子質量の誤差の範囲内であったことから、Lys−Cエンドペプチダーゼが例示的なα-EGFR抗体のLC、HC又はVHおよびCH1ドメイン(一アーム形Fc)を欠いているHCを切断せず、HCおよびVHおよびCH1ドメインを欠いているHCからコイルドコイルドメインを切断したことを示した。
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して作製された例示的な改変抗体がそれらの配列が由来する抗体の結合特性を有するか否かを決定するために、結合アッセイを行った。これらの結合アッセイは、ForteBio Octetシステム上の動態ウィザードプログラムを使用して実行した。試験するすべての試料は、繰り返し実験および様々な試料において抗ヒトIgGプローブの飽和を示す濃度である25μg/mlの濃度とした。プローブは、15分間の第一試料と共に流し、PBSで30秒間洗浄した。第二および第三の試料についてのすべての会合は、10分間行い、会合間に30秒のPBS洗浄を行った。
特に、共通LC抗Fc R1/抗Fc R2b二重特異性改変抗体は、25μg/mlの抗体と共にプローブを15分間インキュベートし、その後PBS洗浄工程を行うことによって、抗ヒトIgGプローブ(Octet)にロードした。結合を評価するために、ロードしたプローブは、25μg/mlのFc R1、その後25μg/mlのFc R2bと共にインキュベートした。2つの結合インキュベートの間にPBS洗浄工程を行った。図15に示されるデータは、二重特異性、改変抗体が同時にその抗原の両方を結合したことを示す。
また、Octet結合試験を、例示的な一アーム形抗体およびテザー改変抗体について行った。コントロールとして、Octet分析を用いて、野生型抗HER2抗体1および野生型α-EGFR抗体が互いの抗原と交差反応せず、それぞれの抗原を結合したことを示した(図21)。例示的なコイルドコイル含有抗体を試験するために、一アーム形抗HER2抗体1を、25μg/mlで抗ヒトIgG抗体プローブに15分間かけてロードし、その後プローブをPBSにて30秒間洗浄した。次いで、ロードしたプローブを25μg/mlでEGFR ECD(細胞外ドメイン)と共にインキュベートしたところ、結合シグナルは見られなかった。次いでプローブをPBS中で30秒間洗浄し、25μg/mlでHER2レセプターECDと共にインキュベートしたところ、強い結合シグナルが見られた(図22;上図)。
テザー二重特異性抗EGFR(D1.5)/抗HER2改変抗体は、25μg/mlで抗ヒトIgG抗体プローブと共に15分間インキュベートし、その後PBSにて30秒間洗浄した。このインキュベートはプローブに二重特異性抗体をロードした。次いで、プローブを、25μg/mlでEGFR ECDと共に3分間インキュベートした後、30秒間のPBS洗浄を行い、その後25μg/mlでHER2レセプターECDと共に3分間インキュベートした(図23A;上図)。図23Aの下図に示す結果について、二重特異性ロードプローブは、始めにHER2レセプターECDと、次いでEGFR ECDとインキュベートした。データは、二重特異性改変抗体が同時にEGFおよびHER2レセプターの両方を結合したことを示す。図23Bに示すように、二重特異性抗EGFR(D1.5)/抗HER2抗体は、およそ0.06nMのKdでHER2を結合し、およそ0.660nMのKdでEGFレセプターを結合した。
細胞増殖アッセイのために、細胞は、96ウェルプレート(EGFR-NR6:2000細胞/ウェル)(BT474:10000の細胞/ウェル)に播き、37℃で終夜インキュベートした。その翌日、培地を取り除き、細胞を1%血清含有培地中で処理した。EGFR-NR6細胞における、α-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体の細胞増殖に対する影響をD1.5抗体と比較するために、3nMのTGFαを培地に添加し、様々な濃度の抗体にて細胞を処理した。3日後に、アラマーブルーをウェルに添加し、530nmの励起および590nmの発光で96ウェル蛍光光度計を使用して蛍光を読み取った。結果は、相対的な蛍光単位(RFU)で表す(図25)。α-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体の細胞増殖に対する影響を抗HER2抗体1と比較するために、BT474細胞を、様々な濃度の抗体にて1%血清含有培地中で処理した(図26)。5日後に、アラマーブルーアッセイを上記の通りに実行した。これらの結果は、例示的なα-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体は、D1.5 IgG1コントロール抗体と同様に、用量依存的に、EGFR発現NR6細胞のTGFα誘導性リン酸化を阻害し、抗HER2抗体1と同様に、BT474細胞の増殖を阻害したことを示す。
薬物動態学的試験は、二重特異性改変抗体の薬物動態学(PK)を代表的なヒトIgG(hIgG)抗体と比較し、有効性実験のための用量を決定するために行った。D1.5 hIgG1コントロール抗体と同様に、HER1/HER2(D1.5/抗HER2抗体1)改変抗体もまた、マウスとの交差反応性を示した。抗HER2抗体2 hIgG1コントロール抗体は、マウスとの交差反応性を示さなかった。
D1.5 hIgG1ポジティブコントロール抗体のPKは、SCIDベージュマウスを使用して10日の期間にわたって決定した。特に、経時的な抗体の血清中濃度は、様々な用量(0.5mg/kg、5mg/kgおよび50mg/kg)の抗体の投与後に、Fc-Fcアッセイを使用して決定した。加えて、用量と関連する血清中濃度は、Fc-Fc ELISAアッセイを使用して10日間モニターした(図27)。用量にて正規化した曲線下面積(AUC)も決定して、表4にまとめる。D1.5 hIgG1抗体は、試験した用量範囲においてマウスでの非線形PKを示した。
26AAフューリン切断可能テザーコイルドコイル抗体の構築のために(図30A)、所望の抗体のVHドメイン(シグナル配列を欠く)をまず、5'プライマーがGGS-フューリンテザーの3'側の半分を含み、5'BamHI部位で終わり、3'プライマーが3'ApaI部位で終わるPCRを用いて調製した。断片を消化し、同様に調製した主鎖ベクターにクローニングした。次いで、所望の抗体の同族LCを、5'プライマーが5'ClaI部位で終わり、3'プライマーがフューリン-GGSテザーの5'側部分を含み、3'BamHIで終わるPCRを用いて調製した。LC断片は、ClaIおよびBamHIによりVHの前に該断片をクローニングすることによって、(抗体コイルドコイル主鎖内の)その同族のHCに連結した。CLをVHに連結する完全テザー配列は、RCRRGSGGSGGSGGSGGSGGSGRSRKRR(配列番号:35)とした26AAフューリン切断可能テザー(-C)の構築のために(図30B)、2つの突然変異を上記のコンストラクトに導入した。LCのc末端のCys残基を、ストラタジーンのQuikchange II XL部位特異的突然変異キットを使用してAla残基に変異させた。カバット番号付けシステムによる、CLのCys末端残基は位置214にある。また、HCのC220をAに変異して、この新たに非ジスルフィド結合したCysによって、起こりうるミスフォールディングを除いた。
カルボキシペプチダーゼB消化(図30D)は、50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0中で1:20wt:wtのCpBと共に37℃で1時間行った。
図30A1−2は線図であり、26アミノ酸フューリン切断可能テザーについての還元型質量分析(MS)結果である。重鎖MSトレースまたはグラフは、完全な天然のn-およびc-末端並びに少ない量の「完全長抗体」を有する(すなわち、これらの試験では、いずれのフューリン部位(FL)でも切断されなかった)重鎖(1)を示す。軽鎖MSトレースは、LCおよび全長のテザーに相当するピーク(1)と、おそらくCHO培地中のカルボキシペプチダーゼB活性によるテザーの3'末端の侵食に相当する3つの他のピーク(2−4)を示す。紫の楕円によって示される下図の領域内のMSピークの欠失に裏付けられるように、n-末端フューリン部位に切断はない。結果として生じた抗体の図から、非天然残基(下線を付した「R」)並びにLCのc末端に依然として接着した23−26アミノ酸テザーが示される。
図30B1−2は線図であり、26アミノ酸フューリン切断可能テザー(「-C」)についての還元型質量分析(MS)結果である。このコンストラクトにおいて、C残基が取り除かれ、置換された。重鎖MSトレースは、完全に天然のn-およびc-末端を有し、残りの「完全長抗体」(FL)を有さない重鎖(1)を示す。軽鎖MSトレースは、おそらくCHO培地中のカルボキシペプチダーゼB活性による、LCと2つの付加R残基(ピーク2)と1つの付加R残基(ピーク3)とその天然c末端を有するもの(ピーク4)に相当するピークを示す。結果として生じた抗体の図から、非天然残基(黄色)並びにLCのc末端に依然として接着した0,1又は2のR残基が示される。
図30D2は図30C4と同じである。1:20wt:wtのCpBと共に37℃で1時間インキュベートした後に、残りの残基(ピーク7−11に相当する)は完全に取り除かれ、天然のc末端を有するLCが生じた(図30D3)。図から、各HCにK222A突然変異となる非天然残基と、その他の(親と比較して)完全に天然の二重特異性抗体が示される。
異なる標的を認識する各アームである2つの異なるVHおよびVLを含むテザーコイルドコイル二重特異性抗体は、上記の通りにヒトフューリンを過剰発現するCHO細胞において産生させた。K222A突然変異も含有する抗体をLys−Cエンドペプチダーゼにて処理し、カルボキシペプチダーゼBにてコイルドコイルを取り除いた。最終産物を達成するために、抗体のヒンジおよび定常領域をこれ以上変異させることは必ずしも必要ではない。図31は最終産物の非還元型質量分析トレースを示す。少量のホモ二量体が非還元型MSにおいて観察されたが、これは、2つのAb鎖の発現レベルが不均衡であるためによるものであり、相対的な発現レベルを調節することによって容易に補正される。図32は最終産物の還元型質量分析トレースを示す。LCおよびHCの観察されたトレースにより、Ab鎖がすべて天然のn-およびc-末端を有することが確認される。
これらの結果は、この基本骨格が、哺乳動物細胞において様々なタイプの一アーム形および二重特異性抗体の産生に用いることができることを示す。我々の手において、我々は、各HCのヒンジ領域内の単一のLys−Ala突然変異のみがそれらの親のwt抗体と異なっている成熟した二重特異性抗体を生成することができた。これらの抗体はそれらの特異性を保持し、二重特異性変異体は両抗原を同時に結合することが可能である。これらの抗体はそれらの抗原を高い親和性で結合する。
Claims (55)
- (a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドであって、
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'1X'2X'3X'4X'5X'6X'7)n (式II)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含む抗体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、
各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、抗体。 - 第一および第二のポリペプチドがそれぞれVHおよびCH1ドメインを含む、請求項1に記載の抗体。
- 第一および第二のポリペプチドがそれぞれさらにヒンジドメインを含む、請求項2に記載の抗体。
- 第一および第二のポリペプチドがそれぞれさらにCH2およびCH3ドメインを含む、請求項1から3のいずれか一に記載の抗体。
- 第一および第二のポリペプチドがそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、請求項1に記載の抗体。
- 抗体がさらに第三および第四のポリペプチドを含み、このとき該第三ポリペプチドが第一VLドメインを含み、該第四ポリペプチドが第二VLドメインを含む、請求項1から5のいずれか一に記載の抗体。
- 第一ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第三ポリペプチドのVLドメインに連結され、第二ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第四ポリペプチドのVLドメインに連結される、請求項6に記載の抗体。
- 第三ポリペプチドがさらに第一CLドメインを含み、このとき該第一のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第三ポリペプチド内に互いに関連して配置されており、第四ポリペプチドがさらに第二CLドメインを含み、このとき該第二のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第四ポリペプチド内に互いに関連して配置されている、請求項6に記載の抗体。
- 前記第一VLドメインおよび前記第二VLドメインの配列が同じである、請求項6から8のいずれか一に記載の抗体。
- 前記第一または前記第二のポリペプチドのうちの少なくとも1のVHのN末端が、テザーによりCLのC末端に連結している、請求項1から9のいずれか一に記載の抗体。
- (a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドであって、
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイル(CC)とCH2およびCH3ドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'1X'2X'3X'4X'5X'6X'7)n (式II)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含んでなる抗体であって、
このとき式IおよびIIのnは2以上であり、
各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、抗体。 - 第一ポリペプチドがVHおよびCH1ドメインを含む、請求項11に記載の抗体。
- 第一ポリペプチドがさらにヒンジドメインを含む、請求項12に記載の抗体。
- 第一ポリペプチドがさらにCH2およびCH3ドメインを含む、請求項12または13に記載の抗体。
- 第一ポリペプチドが、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、請求項11に記載の抗体。
- 抗体がさらに第三ポリペプチドを含み、このときこの第三ポリペプチドがVLドメインを含む、請求項11から15のいずれか一に記載の抗体。
- 前記第三ポリペプチドがさらにCLドメインを含み、VLおよびCLドメインがN末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CLに配置されている、請求項16に記載の抗体。
- 前記第一ポリペプチドのVHのN末端がテザーによりCLのC末端に連結している、請求項11から17のいずれか一に記載の抗体。
- X1、X'1、X4およびX'4の何れかの疎水性アミノ酸残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンからなる群から選択される、請求項1から18のいずれか一に記載の抗体。
- X5、X'5、X7およびX'7の何れかの荷電アミノ酸残基が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される、請求項1から19のいずれか一に記載の抗体。
- 前記第一CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいて、X1がアスパラギンであり、それぞれのX'1が前記第二CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいてアスパラギンである、請求項1から20のいずれか一に記載の抗体。
- (a)第一CCが7アミノ酸繰り返しを含み、このとき
X1がロイシン又はアスパラギンであり、
X2がアラニン又はグルタミンであり、
X3がアラニン又はグルタミンであり、
X4がロイシンであり、
X5がグルタミン酸であり、
X6がリジン又はトリプトファンであり、そして
X7がグルタミン酸であり、そして、
(b)第二CCが7アミノ酸繰り返しを含み、このとき
X'1がロイシン又はアスパラギンであり、
X'2がアラニン又はグルタミンであり、
X'3がアラニン又はグルタミンであり、
X'4がロイシンであり、
X'5がリジンであり、
X'6がリジン又はトリプトファンであり、そして
X'7がリジンである
、請求項1から21のいずれか一に記載に記載の抗体。 - nが3以上である、請求項1から22のいずれか一に記載の抗体。
- nが4以上である、請求項23に記載の抗体。
- 前記第一または前記第二のCCのうちの少なくとも1が、抗体の定常ドメインにC末端で連結している、請求項1から24のいずれか一に記載の抗体。
- 前記定常ドメインがCH3ドメインであり、第一CCが第一ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結し、第二CCが第二ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結している、請求項25に記載の抗体。
- 連結が、切断可能なリンカー配列によるものである、請求項25または26の抗体。
- Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位が、前記第一または前記第二のCCのうちの少なくとも1にN末端で位置する、請求項1から27のいずれか一に記載の抗体。
- VL、CL、テザー、VH、CH1、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CL−テザー−VH−CH1−CH2−CH3(式III)に配して含む第一ポリペプチドを含んでなる抗体。
- 抗体がさらに式IIIの第二ポリペプチドを含む、請求項29に記載の抗体。
- 抗体が多特異性である、請求項1から9および30のいずれか一に記載の抗体。
- 抗体が少なくとも2の抗原を結合することができる、請求項31に記載の抗体。
- 抗体が同じ抗原上の少なくとも2のエピトープを結合することができる、請求項31に記載の抗体。
- 前記抗体が二重特異性である、請求項1から9および30のいずれか一に記載の抗体。
- 前記テザーが、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含む、請求項7、10、18、29または30に記載の抗体。
- 前記テザーが、15から50のアミノ酸長である、請求項7、10、18、29、30または35に記載の抗体。
- 前記テザーが、20から26のアミノ酸長である、請求項36に記載の抗体。
- 前記テザーがGGSリピートを含む、請求項7、10、18、29、30および35から37のいずれか一に記載の抗体。
- 前記テザーが切断可能である、請求項7、10、18、29、30および35から38のいずれか一に記載の抗体。
- 前記抗体が、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含む、請求項28から39のいずれか一に記載の抗体。
- 前記のLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異がヒンジドメインにある、請求項40に記載の抗体。
- 前記抗体がK222A置換(EU番号付けシステム)を有する、請求項41に記載の抗体。
- 前記テザー又は前記リンカーは、以下のエンドペプチダーゼ:フューリン、トロンビン、Genenase、Lys−C、Arg−C、Asp−N、Glu−C、第Xa因子、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ(TEV)、エンテロキナーゼ、ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ(HRV C3)およびキニノゲナーゼの一又は複数によって切断可能である、請求項27または39に記載の抗体。
- 前記テザー又は前記リンカーは、アスパラギン−グリシンペプチド結合を含む、請求項27または39に記載の抗体。
- 前記アスパラギン−グリシンペプチド結合がヒドロキシルアミンによって切断可能である、請求項44に記載の抗体。
- 前記抗体が、細胞障害性剤にコンジュゲートした定常領域を含む、請求項1から45のいずれか一に記載の抗体。
- 前記抗体が哺乳動物の細胞によって発現される、請求項1から45のいずれか一に記載の抗体。
- 前記哺乳動物の細胞がCHO細胞である、請求項47に記載の抗体。
- 前記抗体が、原核細胞によって発現される、請求項1から45のいずれか一に記載の抗体。
- 前記原核細胞が大腸菌である、請求項49に記載の抗体。
- 請求項1から45のいずれか一に記載の抗体をコードするベクターを含む細胞を培養培地内で培養する工程を含む、抗体の製造方法。
- さらに、前記細胞又は前記培養培地から抗体を回収することを含む、請求項51に記載の方法。
- さらに、
(a)プロテインAを含むカラム上に前記抗体を捕捉し、
(b)該カラムから抗体を溶出し、そして
(c)カオトロピック剤又は中性界面活性剤を含有する溶液に溶出された抗体を希釈する
工程を含む、請求項52に記載の方法。 - カオトロピック剤又は中性界面活性剤の存在下でコイルドコイル含有抗体を維持することを含む、溶液中でコイルドコイル含有抗体を維持する方法。
- 前記のカオトロピック剤又は中性界面活性剤が、アルギニン、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ツイーン、トリトンまたはNP−40である、請求項53または54に記載の方法。
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