JPWO2012011558A1 - 逆止弁及びその製造方法、並びに、逆止弁を備える容器 - Google Patents
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Abstract
容器に衝撃が加わるなどしても容器内に空気が混入することを十分に抑制できるとともに内容物の優れた吐出性を安定的に維持できる逆止弁を提供するため、本発明に係る逆止弁10は、ゴム材料からなり一体成形によって製造されたものであり、両端に開口1a,1bを有する筒状の本体部1と、本体部1の一方の開口1aを塞ぐように配置された蓋部3と、本体部1と蓋部3とを連結するヒンジ部5とを備え、蓋部3は本体部1の開口1aの周縁部と当接する突出部3aを側面3bに有する。
Description
本発明は、逆止弁及びその製造方法、並びに、逆止弁を備える容器に関する。
食品や飲料のなかには時間の経過とともに徐々に品質が劣化するものがあり、その原因として空気との接触による酸化が挙げられる。内容物の酸化を抑制するための容器として、いわゆる真空型容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の容器は、容器内に空気が入るのを防止する逆止弁が注出口に取り付けられている。この逆止弁は、ドーム状の頭部に切り込みが設けられた構造からなり、当該切込みは、内容物の注出方向に圧力がかかると開き、逆に、充填方向に圧力がかかると閉じるようになっている。
ところで、注出口に逆止弁を内蔵した容器を製造する場合、内容物の種類や粘性等に応じて容器の注出口のサイズは設計され、これに伴って注出口に内蔵させるべき逆止弁のサイズが決定される。例えば、食卓で使われる醤油の容器として真空型容器を採用し、その注出口に逆止弁を設ける場合、逆止弁の外径は10〜15mm程度に制限される。このようなサイズの小さい逆止弁を低コストで大量に生産するには、金型を使用した一体成形が適している。
本発明者らは、一体成形によって種々の態様の逆止弁及びこれを備えた容器を試作し、容器内への空気の混入の有無や内容物の吐出性について評価を行った。その結果、図8に示す逆止弁50は、容器に衝撃が加わったりすると蓋部53が筒状の本体部51の内部に入り込んでしまい、蓋部53が弁として十分に機能しないことを見出した(比較例1参照)。なお、図8に示すヒンジ部55は、本体部51と蓋部53を連結している部分である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、容器に衝撃が加わるなどしても容器内に空気が混入することを十分に抑制できるとともに内容物の優れた吐出性を安定的に維持できる逆止弁及びこれを備えた容器を提供することを目的とする。また、本発明は、上記効果を奏する逆止弁を十分に効率的に且つ低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
本発明に係る逆止弁は、ゴム材料からなり一体成形によって製造されたものであり、両端に開口を有する筒状の本体部と、本体部の一方の開口を塞ぐように配置された蓋部と、本体部と蓋部とを連結しており蓋部に対して本体部側から外側に向けて力が加わったときに一方の開口を開放するためのヒンジ部とを備え、蓋部は本体部の一方の開口の周縁部と当接する突出部を側面に有する。
上記逆止弁は、蓋部の側面に突出部が設けられており、本体部の一方の開口を塞いでいる状態にあっては、この突出部が本体部の一方の開口の周縁部と当接する。このような突出部を設けたことで、逆止弁に衝撃が加わっても、蓋部が本体部の開口内に入り込みにくくなり、蓋部が弁の機能を安定的に発揮できる。
ところで、上記蓋部の側面に設けられた突出部は、成形プロセスにおいて、いわゆるアンダーカットとなる部分である。一体成形によって成形体を製造する場合、アンダーカットの部分があると、離型時にその部分が引っかかって成形体を金型から適切に取り出すことができず、場合によっては成形体が破損する。他方、アンダーカットの部分が生じないように金型の部品の点数を多くすると、コストがかかるという別の問題が生じる。
本発明の逆止弁は、特別な金型を使用しなくてもアンダーカットに起因する問題を十分に回避することができる。すなわち、本発明の逆止弁は、所定の硬度及び伸びを有するゴム材料からなるものであるため、蓋部の突出部がアンダーカットの部分であっても金型から適切に取り出すことができる。従って、逆止弁の製造コストを十分に低く抑えることができる。なお、本発明において、シリコーンゴムの硬度はJIS K6249に準拠して測定した値を意味し、伸度はJIS K7127に準拠して測定した値を意味する。
本発明の逆止弁において、製造プロセスの簡略化の観点から、本体部の一方の開口は、ヒンジ部をなす直線状部分と、円弧状部分とによって構成されていることが好ましい。なお、ここでいう「円弧」とは円の一部又は楕円の一部を意味する。
本発明に係る逆止弁において、蓋部が本体部の貫通孔内に入り込むことをより一層確実に防止する観点からすれば、蓋部の円弧状部分の外径R1は開口の円弧状部分の径R2よりも大きく、R1とR2の差は0.06mm〜0.50mmであることが好ましい。また、この逆止弁において、蓋部の側面と本体部の内面とのなす角度は15〜25°であることがより好ましい。また、ゴム材料は硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%であれば、製造プロセスにおいてアンダーカットによる不具合を生じさることなく、機械的強度が十分な逆止弁を得やすいという点でさらに好ましい。
本発明に係る容器は、フィルムからなる容器本体と、容器本体に装着された上記逆止弁とを備える。この容器は、上記逆止弁を備えたものであるため、容器に衝撃が加わるなどしても容器内に空気が混入することを十分に抑制できる。これにより、内容物が酸化によって劣化することを十分に抑制できる。また、上記逆止弁の作用により内容物の優れた吐出性を安定的に維持できるため、ユーザーが特別な作業を行うことなく十分長期にわたって使用できる。
本発明に係る容器は、逆止弁が装填されたスパウトをさらに備えることが好ましい。この場合、スパウトの先端の液排出口が、途中でいったん窄まりさらにその先で広がる形状であることも好ましい。
さらに、本発明に係る容器は、逆止弁の本体部の少なくとも一部が、当該逆止弁の内部が負圧となった場合に大気圧との差分に応じて変形して当該逆止弁の容積を減ずる程度に薄く形成されていることが好ましい。当該容器を排出状態から正立状態にすると、容器下部に戻ろうとする液体が、容器上部に負圧を生じさせる。このように負圧が作用すると、大気圧との差分に応じた分、逆止弁の本体部の一部が凹むように変形する。そうすると、逆止弁の変形に伴い、スパウト内における逆止弁から液排出口先端までの空間が負圧となるから、液排出口先端に残っている液体が、当該逆止弁の変形体積分だけサックバックする(容器側に戻る)。サックバック後であれば、キャップを装着しても液排出口の周辺に液体が付着せずに済むため、液だれが生じなくなる。
上記の容器において、逆止弁の本体部が小径部と大径部とからなる段付き形状であり、小径部に一方の開口が形成されていることが好ましい。
さらに、上記の容器において、小径部が大径部よりも薄く形成されていることも好ましい。
本発明は上記逆止弁の製造方法を提供する。すなわち、本発明に係る逆止弁の製造方法は、両端に開口を有する筒状の本体部と、本体部の一方の開口を塞ぐように配置された蓋部と、本体部と蓋部とを連結しており蓋部に対して本体部側から外側に向けて力が加わったときに一方の開口を開放するためのヒンジ部とを備え、蓋部が本体部の一方の開口の周縁部と当接する突出部を側面に有する逆止弁の製造方法であり、突出部を形成するための凹部を有するキャビティ内において、硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%のゴム材料からなる成形体を得る成形工程と、キャビティから成形体を取り出す離型工程と、ヒンジ部となる部分を残して本体部と蓋部とを切り離す切断工程とを備える。
上記製造方法によれば、ゴム材料の硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%であることで、キャビティの凹部に蓋部の突出部となる部分が引っかかることを十分に防止でき、金型からスムーズに成形体を取り出すことができる。このため、特別な金型を使用する必要がなく、製造コストを十分に低く抑えることができる。
本発明に係る逆止弁を使用することにより、容器に衝撃が加わるなどしても容器内に空気が混入することを十分に抑制できるとともに、内容物の優れた吐出性を安定的に維持できる。また、本発明に係る逆止弁の製造方法によれば、上記効果を奏する逆止弁を十分に効率的に且つ低コストで製造できる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
<逆止弁>
図1〜4を参照しながら、家庭用の醤油を入れるための容器に内蔵させる逆止弁を例に挙げて説明する。本実施形態に係る逆止弁10は、ゴム材料等のエラストマからなり例えば一体成形によって製造されたものである。図1,2に示す通り、逆止弁10は、両端に開口1a,1bを有する筒状の本体部1と、本体部1の先端側の開口1aを塞ぐように配置された蓋部3と、本体部1と蓋部3とを連結するヒンジ部5とを備える。図3に示す通り、ヒンジ部5は、蓋部3の蝶番の機能を有するものであり、蓋部3に対して本体部1側から外側に向けて力Fが加わったときに本体部1の開口1aを開放できる可撓性を有している。
図1〜4を参照しながら、家庭用の醤油を入れるための容器に内蔵させる逆止弁を例に挙げて説明する。本実施形態に係る逆止弁10は、ゴム材料等のエラストマからなり例えば一体成形によって製造されたものである。図1,2に示す通り、逆止弁10は、両端に開口1a,1bを有する筒状の本体部1と、本体部1の先端側の開口1aを塞ぐように配置された蓋部3と、本体部1と蓋部3とを連結するヒンジ部5とを備える。図3に示す通り、ヒンジ部5は、蓋部3の蝶番の機能を有するものであり、蓋部3に対して本体部1側から外側に向けて力Fが加わったときに本体部1の開口1aを開放できる可撓性を有している。
本体部1は、長手方向に貫通する貫通孔1cを有しており、開口1a,1bが貫通孔1cの両端をなしている。醤油の吐出性や使いやすさの観点から、貫通孔1cの内径は5.0〜7.0mm程度であることが好ましい。本体部1は、図1に示すように、下部が肉厚となっており、上部が肉薄となっている。本体部1の下部(肉厚部分)の外径は12.8mm程度であり、上部(肉薄部分)の外径は7.7〜10.0mm程度であることが好ましい。
本体部1の下部は、図1に示す通り、外面の一部が平面1dとなっており、平面1d上に突起1eが設けられている。この突起1eは、逆止弁10を外装体32へ固定する際の位置決め用マークとして機能する(図6参照)。
本体部1の先端側の開口1aは、図1に示す通り、直線状部分Lと円弧状部分Rとによって構成されている。開口1aの直線状部分Lは、本体部1の貫通孔1c内において開口1aの近傍に設けられた***部1fによって形成されており、この直線状部分Lと蓋部3の直線状部分が連続していることでヒンジ部5が構成されている。ヒンジ部5を構成する部分以外を円弧状とすることで、製造プロセスを簡略化できるという利点がある。すなわち、一体成形後、本体部1の内部を加圧するという簡便な手法によってヒンジ部5を残して本体部1から蓋部3を切り離すことができる。
蓋部3は、ヒンジ部5を介して本体部1に連結されており、本体部1の開口1aを塞ぐように配置されている。蓋部3は、本体部1の開口1aの周縁部と当接する突出部3aを側面3bに有する。蓋部3の側面3bに突出部3aを設けたことで、逆止弁10に衝撃が加わっても、蓋部3が本体部1の貫通孔1c内に入り込みにくくなり、蓋部3が弁の機能を安定的に発揮できる。なお、蓋部3においてヒンジ部5の側を基端側とし、その反対側を先端側とすると、突出部3aは先端側に設けることが好ましい。
突出部3aの高さ(蓋部3の側面3bから突出部3aの先端までの長さ)は、好ましくは0.4〜0.6mmであり、より好ましくは0.45〜0.55mmである。突出部3aの高さが0.35mm未満であると貫通孔1cへの蓋部3の入り込み防止効果が不十分となりやすく、他方、1.0mmを超えると製造プロセスにおいてアンダーカットによる不具合が生じやすい。
蓋部3が本体部1の貫通孔1c内に入り込むことをより一層確実に防止する観点から、蓋部3の円弧状部分の外径R1は開口1aの円弧状部分Rの径R2よりも大きいことが好ましい。R1とR2の差は、好ましくは0.06mm〜0.50mmであり、より好ましくは0.08mm〜0.25mmである。0.06mmよりも大きいことにより、落下などで容器へ衝撃が加わった際にも、蓋部が本体部の貫通孔内に入り込みにくいので、注出が妨げられることがない。0.50mmよりも小さいことにより、蓋部と本体部が擬似密着しにくいので、注出が妨げられることがない。なお、蓋部の外径が一定でない場合、例えば、図2の(b)に示すように蓋部3の側面がテーパ状になっている場合には、最大の外径をR1とする。
ヒンジ部5を形成するとともに製造プロセスにおいて本体部1と蓋部3との切り離しを効率的に実施できるように、蓋部3の側面3bは上方から本体部1側に向けて外径が小さくなるテーパ状となっていることが好ましい。蓋部3の側面3bと本体部1の内面とのなす角度(図4に示す角度α)は、15〜25°であることが好ましい。15°より大きいと、蓋部が本体部の貫通孔内に入り込みにくいので、注出が妨げられることがない。25°より小さいことにより逆止弁機能がより発現しやすく、空気混入を招きにくい。
また、逆止弁10の本体部1と蓋部3との接触部の一方または双方に、凹凸が付与されていることも好ましい。凹凸を付与すると表面張力を低下させることができ、これにより、内容液の表面張力で本体部1と蓋部3とが貼り付いてしまうのを抑止して弁を開きやすくすることができる。凹凸を付与する方法としては、ゴム材料へのフィラーの添加、より具体的には、充填剤が練り込まれているゴム材料を逆止弁10の本体部1と蓋部3との一方または双方に使用することが挙げられる。充填剤としては、焼成シリカ微粉末、酸化チタン粉末、アルミナ粉末、粉砕石英、粉砕クリストバライト、ケイ藻土粉末、アルミノケイ酸塩粉末、酸化マグネシウム粉末、水酸化アルミニウム粉末、酸化鉄粉末、酸化亜鉛粉末、重質炭酸カルシウム粉末が挙げられる。ゴム材料への充填剤の含有率は、1〜50重量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜40重量%である。充填剤の平均粒径は0.1〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜40μmである。
逆止弁10はゴム材料からなり一体成形によって製造されたものである。ゴム材料の具体例としては、シリコーンゴム、NBRなどが挙げられる。逆止弁が食品用容器に使用される場合にあっては、ゴム材料としてシリコーンゴムを採用することが好ましい。
逆止弁10を構成するゴム材料の硬度は30〜80度であり、好ましくは40〜70度であり、より好ましくは50〜60度である。ゴム材料の伸度は200〜900%であり、好ましくは300〜800%であり、より好ましくは400〜700%である。ゴム材料の硬度が30度未満又は伸度が900%超であると逆止弁10の機械的強度が不十分となり、他方、ゴム材料の硬度が80度超又は伸度が200%未満であると製造プロセスにおいてアンダーカットによる不具合が生じる。
<逆止弁の製造方法>
逆止弁10の製造方法は、(a)成形工程、(b)切断工程、及び、(c)切断工程を備える。
逆止弁10の製造方法は、(a)成形工程、(b)切断工程、及び、(c)切断工程を備える。
(a)成形工程
この工程は、突出部3aを形成するための凹部を有するキャビティ内において、硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%のゴム材料からなる成形体を得るためのものである。キャビティ内において原料に熱や圧力を加えて硬化させる場合、成形体の硬度及び伸度が上記の範囲となるように処理条件を設定する。
この工程は、突出部3aを形成するための凹部を有するキャビティ内において、硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%のゴム材料からなる成形体を得るためのものである。キャビティ内において原料に熱や圧力を加えて硬化させる場合、成形体の硬度及び伸度が上記の範囲となるように処理条件を設定する。
(b)離型工程
この工程は、キャビティから成形体を取り出すためのものである。例えば、成形体の長手方向に沿って、雌型と雄型とを互いに逆向きに引っ張ることにより、キャビティから成形体を取り出す。本実施形態において、逆止弁10の突出部3aとなる部分がアンダーカットとなるが、成形体をなすゴム材料が上記範囲の硬度及び伸度を有することで、アンダーカットの部分に起因する不具合を十分に抑制できる。
この工程は、キャビティから成形体を取り出すためのものである。例えば、成形体の長手方向に沿って、雌型と雄型とを互いに逆向きに引っ張ることにより、キャビティから成形体を取り出す。本実施形態において、逆止弁10の突出部3aとなる部分がアンダーカットとなるが、成形体をなすゴム材料が上記範囲の硬度及び伸度を有することで、アンダーカットの部分に起因する不具合を十分に抑制できる。
(c)切断工程
この工程は、ヒンジ部5となる部分を残して本体部1と蓋部3とを切り離すためのものである。本体部1の開口1aが、直線状部分Lと、円弧状部分Rとによって構成されているため、成形体を内側に空気を供給して内部を加圧すると、円弧状部分Rに応力が集中して円弧状部分Rのみを切断することができる。
この工程は、ヒンジ部5となる部分を残して本体部1と蓋部3とを切り離すためのものである。本体部1の開口1aが、直線状部分Lと、円弧状部分Rとによって構成されているため、成形体を内側に空気を供給して内部を加圧すると、円弧状部分Rに応力が集中して円弧状部分Rのみを切断することができる。
<逆止弁を備えたフレキシブル真空容器>
次に、図5,6を参照しながら、逆止弁10を外装体32に内蔵した、自立可能であり搬送容易なフレキシブル真空容器30について説明する。容器30は、可撓性を有する透明フィルムからなる容器本体31と、容器本体31の肩部に斜めに設けられた外装体32と、この外装体32の内蔵された逆止弁10とを備える。逆止弁10は、外装体32の先端側に蓋部3が位置するとともに、容器30の底部を下にした状態(図5に示す状態)にして立たせたときにヒンジ部5が水平方向に伸び、ヒンジ部5よりも下方に突出部3aが位置する向きとなるように内蔵されている。
次に、図5,6を参照しながら、逆止弁10を外装体32に内蔵した、自立可能であり搬送容易なフレキシブル真空容器30について説明する。容器30は、可撓性を有する透明フィルムからなる容器本体31と、容器本体31の肩部に斜めに設けられた外装体32と、この外装体32の内蔵された逆止弁10とを備える。逆止弁10は、外装体32の先端側に蓋部3が位置するとともに、容器30の底部を下にした状態(図5に示す状態)にして立たせたときにヒンジ部5が水平方向に伸び、ヒンジ部5よりも下方に突出部3aが位置する向きとなるように内蔵されている。
容器本体31をなすフィルムは、単層のものであってもよいが、複数の層から構成されることが好ましい。フィルムが複数の層から構成される場合、例えば、袋状に加工した際に外層をなす基材層と、内層をなすシーラント層と、基材層とシーラント層とを貼り合わせる接着剤層から構成される。
外装体32は、キャップ取り付け部32aと、その下部に設けられた逆止弁固定部32bと、さらにその下部に設けられた接合部32cとによって構成される。なお、図5にはキャップは図示しない。接合部32cの外周面と容器本体31の周縁部とが貼り合わされて、キャップ取り付け部32a、逆止弁固定部32bが容器本体31の外に突出するように取り付けられる。外装体32としては、射出成形法等によって作製されたものを使用できる。外装体32の材質としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。容器本体31と接合部32cとの溶着は、ヒートシール、高周波シール、熱風シール、マイクロ波加熱、超音波シール等によって実施できる。
醤油を収容した容器30を傾けると、逆止弁10の蓋部3に対して内側から外側に向けた力が加わり、蓋部3が外側へ開いて醤油が吐出する。容器30を元の向きに戻すと、容器30内が負圧となり蓋部3に対して外側から内側に向けた力が加わる。これにより、逆止弁10の開口1aが塞がれて容器30内に空気が入ることを防止する。
容器30は、逆止弁10を備えたものであるため、容器30に衝撃が加わるなどしても容器30内に空気が混入することを十分に抑制できる。これにより、醤油が酸化によって劣化することを十分に抑制できる。また、逆止弁10の作用により内容物の優れた吐出性を安定的に維持できるため、ユーザーが特別な作業を行うことなく十分長期にわたって使用できる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、蓋部3の側面3bに部分的な突出部3aを設ける場合を例示したが、図7に示すように、蓋部13の側面13bの全体がテーパ状となっており、その上部が突出部13aをなすものであってもよい。この場合、突出部13aがアンダーカットの部分となるが、上述の実施形態と同様、上記範囲の硬度及び伸度を有するゴム材料を使用することで、アンダーカットの部分に起因する不具合を十分に防止できる。
また、逆止弁の本体部の形状は円筒に限られるものではなく、断面形状が楕円形、矩形又は多角形の筒状であってもよい。更に、貫通孔1cの流路断面や蓋部の形状は略円形に限られるものではなく、楕円形、矩形又は多角形であってもよい。
また、上記実施形態においては、醤油用容器に使用される逆止弁について説明したが、本発明の逆止弁及び容器の用途は醤油用に限定されるものではなく、本発明の逆止弁を備える容器に清涼飲料水、アルコール飲料、サラダ油又は液状洗剤等の液体を充填してもよい。
<サックバック機構>
以下、本発明の他の実施形態として、サックバック機構を備えた容器30を説明する(図9〜図12参照)。
以下、本発明の他の実施形態として、サックバック機構を備えた容器30を説明する(図9〜図12参照)。
本実施形態に係る容器30において、外装体(以下、スパウトともいう)32の先端に形成された液排出口32dは、醤油などの液体の液切れに優れる形状、例えば途中でいったん窄まりさらにその先で広がる形状となっている(図9参照)。ただし、容器30を傾けて必要量の醤油を吐出させ、容器30を正立状態に戻した際、このような液排出口32dには醤油が醤油の一部が残り、その後の液だれや汚れの原因となることがある。このような点を考慮し、本実施形態では当該容器30にサックバック機構を設けている。
すなわち、この容器30においては、逆止弁10の本体部1の少なくとも一部が、当該逆止弁10の内部が負圧となった場合に大気圧との差分に応じて変形して当該逆止弁10の容積を減ずる程度に薄く形成されている(図10等参照)。この場合、薄く形成される部分は特に限定されるものではないが、本実施形態では、本体部1が小径部11と大径部12とからなる段付き形状であり、小径部11は、可撓性を有するように、大径部12よりも薄い周壁によって形成された逆止弁10を用いている(図11等参照)。
このような容器30におけるサックバック機構の作用は以下のとおりである。まず、傾斜した排出状態から正立(直立)状態に容器30を戻すと醤油の排出が止まる。また、正立状態に戻すと、エラストマの弾性により逆止弁10の蓋部3が自然に閉じ、スパウト32内における逆止弁10の蓋部3から液排出口32dまでの空間(図9中、符号Aで示す)と、逆止弁10の蓋部3よりも容器30の内部側の空間(図9中、符号Bで示す)とが遮られた状態となる。このとき、液排出口32dの先端に醤油が残った状態のまま(図12参照)、スパウト32のキャップ取り付け部32aにキャップ(図示省略)を装着すると、残った醤油が液排出口32dの周辺に付着し、液だれの原因となることがある。
この点、本実施形態においては、容器30を排出状態から正立状態にすると、容器30の下部に戻ろうとする醤油が、容器30の上部に負圧(図11中、符号Pで示す)を生じさせる。このように負圧が作用すると、大気圧との差分に応じた分、逆止弁10の本体部1の一部(本実施形態の場合、小径部11の周壁)が凹むように変形する(図11参照)。そうすると、逆止弁10の一部変形に伴い、スパウト32内における空間A(逆止弁10の蓋部3から液排出口32dまでの空間)が負圧となるから、液排出口32dの先端に残っている醤油が、当該逆止弁10の変形体積分だけサックバックする(図12参照)。サックバック後であれば、キャップを装着しても液排出口32dの周辺に醤油が付着せずに済むため、液だれが生じなくなる。なお、排出状態にあった容器30を正立状態に戻してからユーザーがキャップを装着するまでの所要時間は早ければ1〜2秒であると想定されるが、この時間は、本実施形態に係る容器30において液排出口32dに残った醤油をサックバックさせるに十分な時間である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜3の成形体の作製)
図1に示す構成を有し、表1の実施例1〜3にそれぞれ示す寸法の逆止弁を作製するため、以下のようにして成形体を作製した。すなわち、キャビティ内にシリコーンゴム原料を入れた後、2つの金型で構成されるキャビティ内において175℃で6分間原料を硬化させることによって成形体を得た。成形体を取り出した後、突出部を顕微鏡により観察したところ、破損は認められなかった。実施例1〜3に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が55度であり、伸度が380%であった。
図1に示す構成を有し、表1の実施例1〜3にそれぞれ示す寸法の逆止弁を作製するため、以下のようにして成形体を作製した。すなわち、キャビティ内にシリコーンゴム原料を入れた後、2つの金型で構成されるキャビティ内において175℃で6分間原料を硬化させることによって成形体を得た。成形体を取り出した後、突出部を顕微鏡により観察したところ、破損は認められなかった。実施例1〜3に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が55度であり、伸度が380%であった。
(実施例4、5の成形体の作製)
図1に示す構成を有し、表2の実施例4,5にそれぞれ示す寸法の逆止弁を作製するため、以下のようにして成形体を作製した。すなわち、キャビティ内にシリコーンゴム原料を入れた後、9つの金型で構成されるキャビティ内において170℃で135秒にわたって原料を硬化させることによって成形体を得た。成形体を取り出した後、突出部を顕微鏡により観察したところ、破損は認められなかった。実施例4,5に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が60度であり、伸度が350%であった。
図1に示す構成を有し、表2の実施例4,5にそれぞれ示す寸法の逆止弁を作製するため、以下のようにして成形体を作製した。すなわち、キャビティ内にシリコーンゴム原料を入れた後、9つの金型で構成されるキャビティ内において170℃で135秒にわたって原料を硬化させることによって成形体を得た。成形体を取り出した後、突出部を顕微鏡により観察したところ、破損は認められなかった。実施例4,5に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が60度であり、伸度が350%であった。
(比較例1の成形体の作製)
図8に示す構成を有し、表2の比較例1に示す寸法の逆止弁を作製するため、1つの金型で構成されるキャビティ内にシリコーンゴム原料を流し込み、実施例1〜3と同様にして原料を硬化させた。これにより、蓋部に突出部のない成形体を作製した。比較例1に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が55度であり、伸度が380%であった。
図8に示す構成を有し、表2の比較例1に示す寸法の逆止弁を作製するため、1つの金型で構成されるキャビティ内にシリコーンゴム原料を流し込み、実施例1〜3と同様にして原料を硬化させた。これにより、蓋部に突出部のない成形体を作製した。比較例1に係る成形体を構成するシリコーンゴムは、いずれも硬度が55度であり、伸度が380%であった。
[実施例1〜5及び比較例1の逆止弁の作製]
得られた成形体の内側を加圧して、ヒンジ部となる直線状部分以外の部分を円弧状に切断し、実施例1〜5及び比較例1の逆止弁を作製した。実施例1〜5及び比較例1のいずれの逆止弁においても、蓋部の側面と本体部の内面とのなす角度αは20°とした。
得られた成形体の内側を加圧して、ヒンジ部となる直線状部分以外の部分を円弧状に切断し、実施例1〜5及び比較例1の逆止弁を作製した。実施例1〜5及び比較例1のいずれの逆止弁においても、蓋部の側面と本体部の内面とのなす角度αは20°とした。
[フレキシブル真空容器の作製]
実施例1〜5及び比較例1の逆止弁を外装体内に装着し、外装体と容器本体とを溶着させることによって図7に示す構成の容器を作製した。なお、容器本体をなす可撓性フィルムとして、PET/ON/L-LDPEからなる積層フィルムを使用した。
実施例1〜5及び比較例1の逆止弁を外装体内に装着し、外装体と容器本体とを溶着させることによって図7に示す構成の容器を作製した。なお、容器本体をなす可撓性フィルムとして、PET/ON/L-LDPEからなる積層フィルムを使用した。
[評価試験]
実施例1〜5及び比較例1に係る容器に醤油500mlをそれぞれ充填して検体を作製し、下記の落下試験を行った。表1、2に示す落下高さから検体を自然落下させた後、容器内への空気の混入(Air混入)の有無、及び、醤油の吐出性を評価した。なお、空気の混入の有無は目視により判断し、また醤油の吐出性が良好であるか不良であるかは容器を45°程度傾けたときにスムーズに醤油が出るか否かによって判断した。表1,2に結果を示す。
実施例1〜5及び比較例1に係る容器に醤油500mlをそれぞれ充填して検体を作製し、下記の落下試験を行った。表1、2に示す落下高さから検体を自然落下させた後、容器内への空気の混入(Air混入)の有無、及び、醤油の吐出性を評価した。なお、空気の混入の有無は目視により判断し、また醤油の吐出性が良好であるか不良であるかは容器を45°程度傾けたときにスムーズに醤油が出るか否かによって判断した。表1,2に結果を示す。
次に、上記実施例1に係る容器を複数準備し、これらに醤油500mlをそれぞれ充填して検体を作製した。検体に対して以下の試験を行うことにより、逆止弁の性能をより詳細に評価した。
(静置試験)
常温にて、醤油を収容した容器を保管し、12、24、36、48及び120時間経過後の、容器内への空気の混入の有無、及び、醤油の吐出性を確認した。5つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。表3に結果を示す。
常温にて、醤油を収容した容器を保管し、12、24、36、48及び120時間経過後の、容器内への空気の混入の有無、及び、醤油の吐出性を確認した。5つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。表3に結果を示す。
12、24、36、48時間経過後、全ての検体において、空気の混入はなかった。また、吐出性は良好であった。120時間(5日)経過後、空気の混入は見られなかったが、蓋部と本体部の開口の周縁とが接している部分(シール部)において醤油が若干固化し、容器を傾けても醤油は自然吐出しなかった。
(落下試験I)
下記(i)、(ii)の条件下において、醤油を収容した容器を落下させた。容器を落下させる高さを変化させ、落下させた後の容器内への空気の混入の有無、及び、醤油の吐出性を確認した。Airの混入の有無、及び、醤油の吐出性の評価基準は、上述の通りである。5つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。
(i) 外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着せずに、容器本体の底部を下にした状態で1回、容器を自然落下させた。表4に結果を示す。
(ii) 外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着し、容器本体の底部を下にした状態で1回、その後、容器本体の側面を下にした状態で1回、容器を自然落下させた。表5に結果を示す。
下記(i)、(ii)の条件下において、醤油を収容した容器を落下させた。容器を落下させる高さを変化させ、落下させた後の容器内への空気の混入の有無、及び、醤油の吐出性を確認した。Airの混入の有無、及び、醤油の吐出性の評価基準は、上述の通りである。5つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。
(i) 外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着せずに、容器本体の底部を下にした状態で1回、容器を自然落下させた。表4に結果を示す。
(ii) 外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着し、容器本体の底部を下にした状態で1回、その後、容器本体の側面を下にした状態で1回、容器を自然落下させた。表5に結果を示す。
キャップの装着の有無に関係なく、落下高さ140cmまでは、全ての検体において空気の混入はなかった。また、吐出性は良好であった。一方、落下高さ160cmでは、逆止弁の蓋部が入り込み、空気の混入が発生した。そして、逆止弁の蓋部が入り込んだために容器を傾けても醤油は自然吐出しなかった。なお、内容物の漏れは、落下高さ160cmまでの各試験において観察されなかった。
(落下試験II)
外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着しない状態の容器について、落下高さを120cmに固定し、落下回数を5回又は10回として、容器本体の底部を下にした状態で容器を自然落下させた。表6に結果を示す。2つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。
外装体のキャップ取り付け部にキャップを装着しない状態の容器について、落下高さを120cmに固定し、落下回数を5回又は10回として、容器本体の底部を下にした状態で容器を自然落下させた。表6に結果を示す。2つの検体について、それぞれの条件下で試験を行った。
連続5回の落下は、全ての検体において空気の混入はなかった。また、吐出性は良好であった。一方、連続10回の落下では、逆止弁の蓋部が入り込み、空気の混入が発生した。そして、逆止弁の蓋部が入り込んだために容器を傾けても醤油は自然吐出しなかった。
1…本体部、1a,1b…開口、3,13…蓋部、3a,13a…突出部、3b,13b…側面、5…ヒンジ部、10…逆止弁、11…小径部、12…大径部、30…フレキシブル真空容器(容器)、31…容器本体、32…外装体(スパウト)、32d…液排出口、F…力、L…直線状部分、P…負圧、R…円弧状部分。
Claims (12)
- ゴム材料からなり一体成形によって製造された逆止弁であって、
両端に開口を有する筒状の本体部と、
前記本体部の一方の開口を塞ぐように配置された蓋部と、
前記本体部と前記蓋部とを連結しており前記蓋部に対して前記本体部側から外側に向けて力が加わったときに前記一方の開口を開放するためのヒンジ部と、
を備え、
前記蓋部は前記本体部の前記一方の開口の周縁部と当接する突出部を側面に有する逆止弁。 - 前記一方の開口は、前記ヒンジ部をなす直線状部分と、円弧状部分とによって構成されている、請求項1記載の逆止弁。
- 前記蓋部の円弧状部分の外径R1は開口の円弧状部分の径R2よりも大きく、R1とR2の差は0.06mm〜0.50mmである、請求項2記載の逆止弁。
- 前記蓋部の側面と本体部の内面とのなす角度は15〜25°である、請求項3記載の逆止弁。
- 前記ゴム材料は硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%である、請求項4記載の逆止弁。
- フィルムからなる容器本体と、
前記容器本体に装着された請求項1から5のいずれか一項に記載の逆止弁と、
を備える容器。 - 前記逆止弁が装填されたスパウトをさらに備える、請求項6に記載の容器。
- 前記スパウトの先端の液排出口が、途中でいったん窄まりさらにその先で広がる形状である、請求項7に記載の容器。
- 前記逆止弁の本体部の少なくとも一部が、当該逆止弁の内部が負圧となった場合に大気圧との差分に応じて変形して当該逆止弁の容積を減ずる程度に薄く形成されている、請求項8に記載の容器。
- 前記逆止弁の本体部が小径部と大径部とからなる段付き形状であり、前記小径部に前記一方の開口が形成されている、請求項9に記載の容器。
- 前記小径部が前記大径部よりも薄く形成されている、請求項10に記載の容器。
- 両端に開口を有する筒状の本体部と、前記本体部の一方の開口を塞ぐように配置された蓋部と、前記本体部と前記蓋部とを連結しており前記蓋部に対して前記本体部側から外側に向けて力が加わったときに前記一方の開口を開放するためのヒンジ部とを備え、前記蓋部が前記本体部の前記一方の開口の周縁部と当接する突出部を側面に有する逆止弁の製造方法であり、
前記突出部を形成するための凹部を有するキャビティ内において、硬度が30〜80度であり且つ伸度が200〜900%のゴム材料からなる成形体を得る成形工程と、
前記キャビティから前記成形体を取り出す離型工程と、前記ヒンジ部となる部分を残して前記本体部と前記蓋部とを切り離す切断工程と、
を備える逆止弁の製造方法。
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