JPWO2007026871A1 - 魚醤油の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、旨味成分を多く含み且つ魚臭が低減された魚醤油を短期間で製造する方法を提供することを目的とする。本発明は、蒸煮された、内臓以外の魚介肉と、糖蜜と、麹と、食塩とを含む混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法、この方法により製造される魚醤油、並びにこの魚醤油を含有する魚醤油含有調味料を提供する。
Description
本発明は魚醤油、その製造方法及び魚醤油含有調味料に関する。
近年、廃棄物がもたらす環境等への負荷が深刻化しており、焼却処分によるダイオキシンの発生や、廃棄物最終処分場のひっ迫等が大きな問題となっている。この問題を解決するために、日本では、廃棄物の「発生の抑制」とともに、有用な廃棄物(循環資源)の「減量・再使用」「再生利用」を図ることを目的とした「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が2001年より施行されている。
食品リサイクル法の施行により、廃棄物を年間100トン以上発生させている食品の製造、加工、卸売り又は小売りを業として行なう全ての事業者は、2006年までに、再生利用等の実施率を20%以上にしなければならない。このような状況の中で、すり身や塩乾品を製造している水産加工業者も加工の際に生じる魚介類の残さいの有効な処理を望んでいる。従来、魚介類の残さいは発酵による魚醤油や肥料の製造に利用されている。
魚醤油は、魚肉タンパク質を魚肉由来又は発酵菌の酵素により分解し、生成したアミノ酸を豊富に含んだ天然系調味料であり、ハタハタを原料に用いた秋田県の「しょっつる」、イカの肝臓を原料にした能登地方の「いしり」、あるいは香川県の「イカナゴ醤油」が日本の三大魚醤油として良く知られている。さらに近年、エスニックブームによって、天然発酵調味料としての魚醤油の需要は増加傾向にあり、タイの「ナンプラー」やベトナムの「ニョクマム」なども量販店でも良く見られる。
魚醤油の基本的な製造は、魚肉に醤油麹と食塩を添加したものを30℃で3ヶ月間、発酵・醸造し、その後に搾汁し、火入れによって澱を除いて行われる。しかしながら、このような方法による魚醤油の製造は3〜6ヶ月の発酵醸造期間が必要であるため、食品加工場の残さい処理には向かない。そこで、醤油麹を使った魚醤油の短期製造法(「発酵技術を利用した新食品の開発」、農業総合研究所、水産海洋研究所)が提案されている(非特許文献1)。この短期製造法は、(1)内臓を除去し、蒸煮した魚肉を用いることにより、脂質量を減少させ、発酵、醸造期間を短縮するとともに、発酵、醸造中に起きる脂質の酸化による酸敗臭の発生を抑制する点、及び(2)蒸煮により腐敗細菌が死滅されるため、通常より塩濃度を5%程度低減できる点、を特徴とする。
糖蜜は従来、発酵培地に添加して発酵菌の育成を促進するために使用されている(特許文献1及び2)。
糖蜜を醤油に添加する技術は特許文献3に記載されているが、醤油の発酵醸造後に糖蜜を添加するという点で、以下に詳述する本発明と顕著に相違する。また、だし汁に糖蜜を添加する技術は特許文献4に記載されているが、本発明と直接の関連性はない。
特開2004−298139号公報
特開2004−248542号公報
特開2000−333638号公報
特開2000−279125号公報
農業総合研究所、水産海洋研究所、"醤油麹を使った魚醤油の短期製造法"、[online]、[平成17年8月18日検索]、インターネット<URL: http://www.ari.pref.niigata.jp/nourinsui/seika04/katuyou/32/040232ml.html>
魚醤油には原料魚由来の魚臭と塩辛さという欠点がある。また伝統的な魚醤油の製造には長期間の時間を要するという問題がある。
また前述の短期製造法では製造期間が短縮されるものの、通常の長期製造法と比較して旨味成分の生成量が少ないという欠点がある。
本発明は、旨味成分を多く含み且つ魚臭が低減された魚醤油を短期間で製造する方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の発明を包含する。
(1)蒸煮された、内臓以外の魚介肉と、糖蜜と、麹と、食塩とを含む混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法。
(2)前記混合物において糖蜜が前記魚介肉100gに対して少なくとも5ml含まれる(1)に記載の方法。
(3)(1)又は(2)に記載の方法により製造された魚醤油。
(4)次の(a)又は(b)の特徴の少なくとも一方を備えた魚醤油。
(a)アルコールの含有量が150mg/100ml以上である。
(b)酸度Iの値が酸度IIの値の70%以上の値である。
(5)(3)又は(4)に記載の魚醤油を含有することを特徴とする魚醤油含有調味料。
本発明により、旨味成分を多く含み且つ魚臭が低減された魚醤油を短期間で製造する方法が提供される。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005-254720号の明細書に記載される内容を包含する。
本発明には蒸煮された内臓以外の魚介肉が用いられる。蒸煮していない魚介肉又は内臓を使用すると、発酵過程で脂質が酸化して腐敗臭が生じるという問題があるからである。蒸煮された内臓以外の魚介肉を用いることにより内臓に起因する不快な魚臭を抑制することができる。発酵前に魚介肉を蒸煮して、脂質量を減少させることにより、発酵・醸造中に起きる脂質の酸化による酸敗臭の発生を抑制することができる。また、蒸煮により腐敗細菌が死滅するため、常法と比較して塩分濃度を5%程度低下させることができ、塩辛さの低減された魚醤油の製造が可能となる。
本発明において「魚介肉」には肉の付いた魚介類の頭骨、骨等も含まれる。
本発明に用いられる魚介肉は生鮮魚介類のほか、切り身又は缶詰等の製造過程で生じる魚介類の加工残さいに由来するものであってよい。魚介類の種類は特に限定されないが、例えばトビウオ、ブリ、マグロ、カツオ、甲殻類(例えばエビ、カニ)、軟体類(例えばイカ、タコ)等が挙げられる。
本発明に用いられる、蒸煮された、内臓以外の魚介肉と、糖蜜と、麹と、食塩とを含む混合物は、通常は更に水を含む。水の添加量は特に限定されないが、前記魚介肉1gあたり0.5〜1.5ml(すなわち前記魚介肉に対して50〜150%(v/w))の範囲であることが好ましい。
本発明に用いられる糖蜜は、通常の糖蜜であってよい。糖蜜とは、さとうきびやビート等から砂糖を製造する工程で砂糖を結晶化させるときに残るシロップ状の糖液であり、砂糖製造工程で得られる副産物である。糖蜜の添加により発酵が促進されるため、魚醤油の短期間製造が可能になる共に、まろやかさと旨味の向上が認められる。また糖蜜により魚臭がマスキングされる。糖蜜の添加量は、特に限定されないが、前記魚介肉を100重量部として少なくとも5重量部であることが好ましい。上限は特に限定されないが、例えば前記魚介肉を100重量部として30重量部以下である。より好ましくは、糖蜜の添加量は、前記魚介肉100g当たり少なくとも5mlであり、特に好ましくは、1〜30mlである。
本発明に用いられる麹は典型的には醤油麹又は味噌麹であり、醤油麹が特に好ましい。醤油麹は、例えば、蒸煮及び煎炒した大豆又は小麦に、アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ等の麹菌を接種し、製麹することにより得られる。麹の添加量は、特に限定されないが、残さい等の内臓以外の魚介肉に対して10〜50%(w/w)であることが好ましく、20〜30%(w/w)であることがより好ましく、約25%(w/w)であることが特に好ましい。
食塩の添加量は、特に限定されないが、水に対して5〜15%(w/w)であることが好ましく、10〜15%(w/w)がより好ましい。また水の容積を基準にした場合、食塩の添加量は5〜15%(w/v)であることが好ましく、10〜15%(w/v)がより好ましい。
上記の魚介肉と、糖蜜と、麹と、食塩とを含む混合物の発酵は例えば、20〜40℃(好ましくは35℃)にて、7〜21日間(好ましくは14日間)かけて行なうことができる。
本発明の方法で得られた魚醤油は魚臭が低減され、且つまろやかさ及び旨味が増加された好適な風味を有する。
本発明の方法で得られた魚醤油には典型的にはアルコールが150mg/100ml以上、より好ましくは200mg/100ml以上、最も好ましくは240mg/100ml以上の含有量で含まれる。アルコール含有量の上限は特に限定されないが通常は2500mg/100ml以下である。アルコール含有量がこのように比較的高い値であるために魚臭さがマスキングされているものと推定される。なお、本発明におけるアルコール含有量(mg/100ml)は、試料10mlを水蒸気蒸留し、得た蒸留液を100mlに定容し、定容後の前記蒸留液のうち10ml中のアルコール量を酸化法により測定し、測定されたアルコール量を魚醤油試料100ml当たりの量(mg)として換算した値である。酸化法は次の手順で行なう。三角フラスコに入れた定容後の前記蒸留液10mlに、N/5重クロム酸カリウム10ml及び濃硫酸10mlを加え、アルミホイルで栓をし、1時間放置する。1時間放置後、蒸留水70mlを加え、8%ヨウ化カリウムを6.5ml加え、直ちにN/10チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定を行なう。滴定開始後、淡褐橙色となったところで、1%澱粉を約0.5ml加え、ヨウ素澱粉反応の紫色が消失するまで滴定し、淡青色となったところを終点とする。参考文献:東和夫;醸造分析「発酵と醸造I」,光琳,東京,2002,313−382。
本発明の方法で得られた魚醤油はまた、典型的には酸度Iの値が酸度IIの値の70%以上、好ましくは75%以上の値であることを特徴とする。酸度IIの値に対する酸度Iの値の割合の上限は特に限定されないが通常は99%以下である。同割合が高いことは魚醤油中の有機酸及び酸性アミノ酸濃度が高いことを反映しており、有機酸及び酸性アミノ酸濃度が高いことが魚臭さの抑制に有利であると推定される。ここで「酸度I」とは、魚醤油10mlに水を40ml加えたものをpH7.0とするのに要する1/10N NaOHの滴定量(ml)である。「酸度II」とは、pH7.0となった前記魚醤油をpH8.3とするのに更に要する1/10N NaOHの滴定量(ml)である(参考文献:東和夫;醸造分析「発酵と醸造I」,光琳,東京,2002,313−382)。
本発明の魚醤油含有調味料は、本発明の魚醤油とダシ汁、香辛料、甘味糖類、食酢、酸味料、酒類、その他の調味料等の原材料とを組み合わせて通常の調味料製造法に準じた方法で調製したものである。
ダシ汁は通常の魚節類、例えば鰹節、宗田節、鮪節、鯖節、鯵節、鰯節等の粉砕物又はこれらの削り節類、また例えば鰯、鯖、鯵等を干して乾燥した煮干し類等を、熱水やアルコール等で抽出して得る通常のダシ汁であり、1種又は2種以上が用いられる。また、必要によりコンブ等の海藻類、しいたけ等のきのこ類のダシ汁が用いられる。また必要に応じて、魚介類エキス、酵母エキス、ビーフエキス、野菜エキス類等の各種エキス類も用いられる。
香辛料は、例えばガーリック、オニオン、オレガノ、タイム、セージ、ジンジャー、レッドペパー、ペパー、オールスパイス、クローブ、ナツメグ、カルダモン等が挙げられ1種又は2種以上が用いられる。また必要により、生姜、ニンニク、ピーマン、シソ、パセリ、ニラ、ミツバ等の香辛野菜類も用いられる。
甘味糖類は、通常の調味料に用いられるものでよく例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、液糖、ブドウ糖、水飴、デキストリン、澱粉である。甘味糖類としてはまた、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール類等も挙げられる。また、みりんや酒精含有甘味調味料等も好適に用いられる。また必要によりグリチルリチン、ステビオサイド、アスパルテーム等の甘味料も用いられる。これらの甘味糖類、甘味料は1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、必要に応じてタンパク質加水分解物、食塩、グリシン、グルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸系調味料、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の核酸系調味料、及びコハク酸ナトリウム等の旨味調味料が1種又は2種以上用いられる。
また、必要により食酢、果汁類やクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸等の酸味料が1種又は2種以上用いられる。
また、必要に応じて清酒、ワイン等の酒類、発酵調味料、ナタネ油、ゴマ油等の食用油類、各種ガム類、乳化剤、香料、着色料等の原材料が1種又は2種以上が用いられる。
本発明の魚醤油含有調味料は、上記方法で製造された本発明の魚醤油と上記の他の原材料とを混和し、殺菌処理(例えば、80で10分間等の条件による加熱殺菌)を施すことにより得られる。
本発明の魚醤油含有調味料はダシ汁の香気や香辛料の香等が引き立った好ましい風味を有する。
次に実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが本発明はこれらの実施例には限定されない。
魚介肉材料として、トビウオの加工における残さいから内臓を除去し、蒸煮処理を行ったものを用いた(以下、単に「残さい」と称することがある)。
実施例で用いた麹は次の手順で調製されたものである。(1)乾燥大豆を2倍量の水に1日間浸漬した。(2)浸漬後、水をきり、105℃〜115℃で75分蒸煮した。(3)蒸煮後、40℃以下になるまで放冷した。(4)放冷後、大豆量に対して等倍量の煎った強力小麦粉を混ぜ、大豆量に対して0.033%の麹菌(株式会社ビオック製、スーパー紫)を加えて混ぜた。(5)混合後、12時間32℃で放置し、その後、6時間28℃で放置し、更に54時間26℃で放置した。
実施例で用いた糖蜜は、新光糖業株式会社中種子工場で産出されたものである。
残さい、水、塩、麹、糖蜜を表1に示す割合で配合して原料混合物を得た。試験区1は糖蜜無添加の対照試験区、試験区2は糖蜜5%(v/w,対残さい)添加試験区、試験区3は糖蜜20%(v/w,対残さい)添加試験区である。
上記の原料混合物を次の手順で発酵させた。粗粉砕した残さい500gを105℃〜110℃で15分間蒸煮し、40℃以下になるまで放冷した(得られた残さいを以下「蒸煮残さい」と称する。)。蒸煮残さいに対して15%(w/w)の塩分になるように蒸煮残さいと等量の40℃の塩水(75g塩/500ml水)を加えた。糖蜜を添加する試験区については所定量の糖蜜を加えた。更に、蒸煮残さいに対して25%(w/w)に相当する量の麹125gを加え、混合し、35℃で14日間発酵させた。14日目に85℃で15分間火入れをし、ろ過して魚醤油を得た。
得られた各魚醤油試料について官能評価及びアミノ酸分析を行った。
官能評価の条件:18人のパネラー(20代男性7名、20代女性6名、40代男性2名、50代男性3名)が、各試験区の魚醤油を賞味して、「魚臭」、「まろやかさ」、「旨味」、「醤油香気」の各項目の強弱の程度について5段階(1〜5点、各項目の程度が強いほど高得点とする)で評価し、全パネラーによる評価点の平均値を算出し比較した。
アミノ酸分析の条件:試料を除タンパク処理後、1N NaOHでpHを2.2に調整し、アミノ酸分析システム(株式会社島津製作所)を用いてアミノ酸分析を行なった。カラムとしてNa型分析用カラム(Shim−pack Amino−Na,株式会社島津製作所)を用い、移動相としてアミノ酸分析用移動相キットNa型(株式会社島津製作所)を用いた。
表2に示される通り、糖蜜を発酵原料に添加することにより、得られる魚醤油の魚臭が抑制されるとともに、まろやかさ、旨味、香気が高められた。また表3に示される通り、糖蜜を発酵原料に添加することにより、得られる魚醤油においてアミノ酸組成に変化が見られた。特に、セリンの含有量が顕著に変化した。
種々の原料配合の魚醤油を調製し、全糖量及び還元糖量、アルコール量、並びに滴定酸度(酸度I,酸度II)を測定した。
「原料魚残さい」として本発明1〜3及び対照1ではトビウオの残さいを用い、本発明4ではブリの残さいを用い、本発明5ではマグロの残さいを用い、本発明6ではカツオの残さいを用いた。ここで「原料魚残さい」とは、各原料魚の加工における残さいから内臓を除去し、蒸煮処理を行ったものを指す。
本実施例では麹及び糖蜜は実施例1で用いたものと同じものを用いた。
本発明1〜6及び対照1の魚醤油試料は、表4に示す組成の原料混合物を実施例1と同様の手順で発酵させて得られたものである。
対照2(トビウオ魚醤油+20%糖蜜添加)の魚醤油試料は、対照1の試料に20%(v/v)の量の糖蜜を添加して調製されたものである。
対照3(20%糖蜜)の魚醤油試料は、蒸留水に20%(v/v)の量の糖蜜を添加して調製されたものである。
各魚醤油試料の還元糖量は、試料を除タンパク処理した後、ソモギー・ネルソン法(参考文献:飯塚勝、古市公彬;糖質の分析法、「糖質の科学」、朝倉書店、東京,2000,31−48)を用いて測定した。全糖量は試料を塩酸により加水分解し、中和、除タンパク処理後、ソモギー・ネルソン法を用いて測定した。
各魚醤油試料のアルコール量は次の手順で測定した。アルコール含有量(mg/100ml)は、試料10mlを水蒸気蒸留し、得た蒸留液を100mlに定容し、定容後の前記蒸留液のうち10ml中のアルコール量を酸化法により測定し、測定されたアルコール量を魚醤油試料100ml当たりの量(mg)として換算した値である。酸化法は次の手順で行なった。三角フラスコに入れた定容後の前記蒸留液10mlに、N/5重クロム酸カリウム10ml及び濃硫酸10mlを加え、アルミホイルで栓をし、1時間放置した。1時間放置後、蒸留水70mlを加え、8%ヨウ化カリウムを6.5ml加え、直ちにN/10チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定を行なった。滴定開始後、淡褐橙色となったところで、1%澱粉を約0.5ml加え、ヨウ素澱粉反応の紫色が消失するまで滴定し、淡青色となったところを終点とした(参考文献:東和夫;醸造分析「発酵と醸造I」,光琳,東京,2002,313−382)。
各魚醤油試料の酸度I、IIは次の手順で測定した。試料10mlに蒸留水40mlを加え、攪拌しながら1/10N NaOHで中和滴定した。pH7.0とするのに要する1/10N NaOHの滴定量(ml)を酸度Iとし、pH7.0からpH8.3とするのに更に要する1/10N NaOHの滴定量(ml)を酸度IIとした。滴定酸度は酸度I及びIIの和である。
糖量測定について。トビウオ魚醤油の発酵前に糖蜜を20%添加して発酵過程を行なった本発明2の試料では還元糖量が9.6mg/ml、全糖量が9.9mg/mlであったのに対して、トビウオ魚醤油の発酵後に糖蜜を20%添加した対照2の試料では還元糖量が40.3mg/ml、全糖量が13.3mg/mlであった。前者の方が還元糖量、全糖量ともに著しく少なかったことから、発酵過程において麹菌の栄養源として糖蜜中の糖が利用されたものと推定される。
アルコール量について。本発明1〜6の試料は対照1〜3の試料よりもアルコール量が顕著に多いことが明らかとなった。糖蜜を添加することにより発酵過程でアルコールが多く生成して魚臭さがマスキングされているものと推定される。
酸度について。本発明1〜6の試料は対照1〜3の試料よりも酸度IIの値に対する酸度Iの値の割合が高いことが明らかとなった。酸度Iは有機酸及び酸性アミノ酸の含有量を反映し、酸度IIは中性アミノ酸及び塩基性アミノ酸の含有量を反映することから、本発明1〜6の試料は対照試料と比較して有機酸及び酸性アミノ酸を多く含んでいることがわかる。本発明の魚醤油では、有機酸及び酸性アミノ酸が多量に存在により魚臭さが低減されているものと推定される。
実施例3では、原料混合物に糖蜜を添加して得られた魚醤油と、原料混合物にブドウ糖を添加して得られた魚醤油とを比較した。実験は次の手順で行った。
粗粉砕した残さい500gを105℃〜110℃で15分間蒸煮し、40℃以下になるまで放冷した。蒸煮残さいに対して15%(w/w)の塩分になるように蒸煮残さいと等量の40℃の塩水(75g塩/500ml水)を加えた。さらに、蒸煮残さいに対して20%(v/w)に相当する糖蜜または20%(w/w)に相当するブドウ糖を加え、35℃で14日間発酵させた。14日目に85℃で15分間の火入れを行い、ろ過して魚醤油を得た。試験区1は実施例1の試験区1と同じ、糖蜜およびブドウ糖無添加対照区、試験区2は、発酵の際に、ブドウ糖を添加した試験区、試験区3は発酵の際に、糖蜜を添加した試験区である。
得られた各魚醤油試料について官能評価を行った。
官能評価の条件:13人のパネラー(20代男性7名、20代女性4名、40代男性2名)により評価を行った。各試験区の魚醤油を賞味して、「魚臭」、「まろやかさ」、「旨み」、「こく」、「醤油香気」の各項目の程度について5段階(1〜5点、各項目の程度が強いほど高得点とする)で評価し、全パネラーによる評価点の平均値を算出し比較した。結果を表6に示す。
表6に示される通り、ブドウ糖を添加した場合、添加しない場合に比べて魚醤油の魚臭が抑制され、まろやかさ、旨み、醤油香気が僅かに高められた。糖蜜を添加した場合には、ブドウ糖を添加したものと比較して、さらに魚臭の低減と、まろやかさ、旨み、醤油香気の上昇が認められた。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
Claims (5)
- 蒸煮された、内臓以外の魚介肉と、糖蜜と、麹と、食塩とを含む混合物を原料として発酵を行なうことを特徴とする魚醤油の製造方法。
- 前記混合物において糖蜜が前記魚介肉100gに対して少なくとも5ml含まれる請求項1に記載の方法。
- 請求項1又は2に記載の方法により製造された魚醤油。
- 次の(a)又は(b)の特徴の少なくとも一方を備えた魚醤油。
(a)アルコールの含有量が150mg/100ml以上である。
(b)酸度Iの値が酸度IIの値の70%以上の値である。 - 請求項3又は4に記載の魚醤油を含有することを特徴とする魚醤油含有調味料。
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