以下、適宜図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施の形態に記載されている装置等の形状、大きさ、寸法比、その相対配置などは、とくに特定的な記載がない限り、本発明の範囲を図示されているもののみに限定するものではない。単なる説明例として、模式的に図示しているに過ぎない。
また、以下の説明では、現像液の具体例として、半導体や液晶パネル基板の製造工程で主に使われる2.38%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(以下、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをTMAHという。)を、適宜用いて説明する。ただし、本発明が適用される現像液はこれに限定されるものではない。本発明の現像液の成分濃度測定装置や現像液管理装置等が適用できる他の現像液の例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどの無機化合物の水溶液や、トリメチルモノエタノールアンモニウムハイドロオキサイド(コリン)などの有機化合物の水溶液を挙げることができる。
また、多変量解析法(例えば重回帰分析法)は、成分濃度の算出に際し、成分濃度がどのような単位の濃度であるかによらないが、以下の説明では、アルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度などの成分濃度は、重量百分率濃度(wt%)による濃度である。「溶解フォトレジスト濃度」とは、溶解したフォトレジストをフォトレジストの量として換算した場合の濃度をいい、「吸収二酸化炭素濃度」とは、吸収された二酸化炭素を二酸化炭素の量として換算した場合の濃度をいうものとする。
現像処理プロセスでは、現像液が露光処理後のフォトレジスト膜の不要部分を溶かすことにより、現像が行われる。現像液に溶解したフォトレジストは、現像液のアルカリ成分との間にフォトレジスト塩を生じる。このため、現像液を適切に管理していなければ、現像処理が進行するにつれて、現像液は現像活性を有するアルカリ成分が消費されて劣化し、現像性能が悪化していく。同時に、現像液中には溶解したフォトレジストがアルカリ成分とのフォトレジスト塩として蓄積されていく。
現像液に溶解したフォトレジストは、現像液中で界面活性作用を示す。このため、現像液に溶解したフォトレジストは、現像処理に供されるフォトレジスト膜の現像液に対するぬれ性を高め、現像液とフォトレジスト膜とのなじみを良くする。したがって、適度にフォトレジストを含む現像液では、現像液がフォトレジスト膜の微細な凹部内にもよく行き渡るようになり、微細な凹凸を有するフォトレジスト膜の現像処理を良好に実施できる。
また、近年の現像処理では、基板が大型化したことに伴い、大量の現像液が繰り返し使用されるようになったため、現像液が空気に曝される機会が増えている。ところが、アルカリ性現像液は、空気に曝されると空気中の二酸化炭素を吸収する。吸収された二酸化炭素は、現像液のアルカリ成分との間に炭酸塩を生じる。このため、現像液を適切に管理していなければ、現像液は現像活性を有するアルカリ成分が吸収された二酸化炭素により消費され減少する。同時に、現像液中には吸収された二酸化炭素がアルカリ成分との炭酸塩として蓄積されていく。
現像液中の炭酸塩は、現像液中でアルカリ性を示すため、現像作用を有する。例えば2.38%TMAH水溶液の場合、現像液中に二酸化炭素がおよそ0.4wt%程度以下であれば、現像が可能である。
このように、現像液に溶解されたフォトレジストや吸収された二酸化炭素は、現像処理に不要なものという従来の認識とは異なり、実際には現像液の現像性能に寄与している。そのため、溶解フォトレジストや吸収二酸化炭素を完全に排除するような現像液管理をするのではなく、現像液中にわずかに溶存することを許容しつつ、これらを最適な濃度に維持管理する現像液管理が必要である。
また、現像液中に生じたフォトレジスト塩や炭酸塩は、その一部が解離して、フォトレジストイオンや炭酸イオン、炭酸水素イオンなど、多様な遊離イオンを生じる。そして、これらの遊離イオンは、現像液の導電率に様々な寄与率で影響を及ぼしている。
従来のアルカリ性現像液の成分濃度分析は、現像液のアルカリ成分濃度が現像液の導電率値と良好な直線関係を有すること、及び、現像液の溶解フォトレジスト濃度が現像液の吸光度値と良好な直線関係を有すること、を利用するものであった(以下、これを「従来法」という。)。従来の現像工程で求められていた現像液管理精度は、二酸化炭素の吸収量もまだ多くなかったこともあり、この分析手法で充分実現できていた。
現像液の導電率値は、現像液中に含まれるイオンなどの荷電粒子数とその電荷量に依存する物性値である。現像液中には、上記のとおり、アルカリ成分のみならず、現像液に溶解したフォトレジストや現像液に吸収された二酸化炭素に由来する各種遊離イオンが存在する。したがって、成分濃度の分析精度を高めるためには、これらの遊離イオンが現像液の導電率値に及ぼす影響をも加味した演算手法を用いることが必要であった。
現像液の吸光度値は、その測定波長の光を選択的に吸収する特定の成分の濃度と直線関係を有する物性値である(ランベルト-ベールの法則)。しかし、多成分系においては、測定波長によりその程度が異なるものの、通常、対象成分の吸光スペクトルに他の成分の吸光スペクトルが重なってくる。したがって、成分濃度の分析精度を高めるためには、現像液に溶解したフォトレジストのみならず、他の成分が現像液の吸光度値に及ぼす影響をも加味した演算手法を用いることが必要であった。
これらの点につき、発明者は、鋭意研究を続けた結果、演算手法に多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いれば、従来法を用いた場合より、精度よく現像液の各成分の濃度を算出できること、及び、従来困難であった吸収二酸化炭素濃度が測定できること、を見出した。また、発明者は、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により算出した現像液の成分濃度を用いれば、現像液の溶解フォトレジスト濃度や吸収二酸化炭素濃度を良好な状態に維持管理できることを見出した。
発明者は、2.38%TMAH水溶液の管理を行う場合を想定して、アルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させたTMAH水溶液を模擬現像液サンプルとして調製した。発明者は、これらの模擬現像液サンプルについて測定した各種特性値から、重回帰分析法によりその成分濃度を求める実験を行った。以下に、重回帰分析法による一般的な演算手法を説明し、そのあと、発明者の行った実験に基づいて、重回帰分析法を用いた現像液の成分濃度の演算手法について説明する。
重回帰分析は校正と予測の二段階からなる。n成分系の重回帰分析において、校正標準溶液をm個用意したとする。i番目の溶液中に存在するj番目の成分の濃度をCijと表す。ここで、i=1〜m、j=1〜nである。m個の標準溶液について、それぞれ、p個の特性値(例えば、ある波長における吸光度とか導電率などの物性値)Aik(k=1〜p)を測定する。濃度データと特性データは、それぞれ、まとめて行列の形(C,A)に表すことができる。
これらの行列を関係づける行列を校正行列といい、ここでは記号S(Skj ;k=1〜p、j=1〜n)で表す。
既知のCとA(Aの内容は、同質の測定値のみならず異質の測定値が混在しても構わない。例えば、導電率と吸光度と密度。)からSを行列演算により算出するのが校正段階である。この時、p>=n、且つ、m>=npでなければならない。Sの各要素は全て未知数であるから、m>npであることが望ましく、その場合は次のように最小二乗演算を行う。
ここで、上付きのTは転置行列を、上付きの−1は逆行列を意味する。
濃度未知の試料液についてp個の特性値を測定し、それらをAu(Auk;k=1〜p
)とすれば、それにSを乗じて求めるべき濃度Cu(Cuj;j=1〜n)を得ることができる。
これが予測段階である。
発明者は、使用済みのアルカリ性現像液(2.38%TMAH水溶液)を、アルカリ成分、溶解フォトレジスト、吸収二酸化炭素の3成分からなる多成分系(n=3)とみなして、当該現像液の特性値として3つの物性値(p=3)、すなわち、現像液の導電率値、特定波長における吸光度値、及び、密度値から、上記重回帰分析法により各成分濃度を算出する実験を行った。発明者は、2.38%TMAH水溶液を現像液の基本組成として、アルカリ成分濃度(TMAH濃度)、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度を様々に変化させた11個の校正標準溶液を調製した(m=11で、p>=nかつm>npを満たす)。
実験は、11個の校正標準溶液について、導電率値、波長λ=560nmにおける吸光度値、及び、密度値を現像液の特性値として測定し、各成分濃度を線形重回帰分析(Multiple Linear Regression − Inverse Least Squares;MLR−ILS)により演算した。
測定は、校正標準溶液を25.0℃に温度調整して、行った。温度調整は、25℃付近に温度管理された恒温水槽に校正標準溶液の入ったボトルを長時間浸しておき、ここからサンプリングして、さらに測定直前に温度コントローラにて再度25.0℃にする、という方式である。導電率計は自社製の導電率計を採用した。白金黒処理を施した自社製の導電率フローセルを用いて測定した。導電率計には、別途校正作業により確認された導電率フローセルのセル定数が入力されている。吸光光度計も自社製のものを採用した。波長λ=560nmの光源部と測光部とガラスフローセルとを備える吸光光度計である。密度測定には、U字管フローセルを励振して測定される固有振動数から密度を求める固有振動法を採用した密度計を用いた。測定された導電率値、吸光度値、密度値の単位は、それぞれ、mS/cm、Abs.(Absorbance)、g/cm3である。
演算は、11個の校正標準溶液のうち一つを未知試料に見立てて、残り10標準で校正行列を求め、仮定した未知試料の濃度を算出して既知の値(他の正確な分析手法により測定した濃度値や重量調製値)と比べる手法(一個抜き交差確認法;Leave−One−Out法)によるものである。
MLR−ILS計算を行った結果を表1に示す。
MLR−ILS計算に当たっては、TMAH水溶液が強アルカリ性で二酸化炭素を吸収して劣化しやすいことに鑑み、演算に用いる濃度行列には、アルカリ成分濃度や吸収二酸化炭素濃度を正確に分析できる滴定分析法により校正標準溶液を別途測定した値を用いた。ただし、溶解フォトレジスト濃度に関しては、重量調製値を用いた。
滴定は、塩酸を滴定試薬とする中和滴定である。滴定装置として、三菱化学アナリテック社製の自動滴定装置GT−200を使用した。
以下、表2に、濃度行列を示す。
このときの校正標準溶液の物性値の測定結果を表3に示す。吸光度の欄は、波長λ=560nmにおける吸光度値(光路長d=10mm)である。
校正行列を表4に示す。
表5に、表2の濃度測定値と表1のMLR−ILS計算値との比較を示す。
表5の通り、重回帰分析法により求められたTMAH濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度は、いずれも滴定分析により測定したTMAH濃度や吸収二酸化炭素濃度、及び、調整重量から求めた溶解フォトレジスト濃度と、いずれもかなり近似した値となっている。
このように、アルカリ性現像液の導電率、特定波長における吸光度、及び、密度を測定して、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いることにより、現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を測定できることが理解される。
多変量解析法(例えば、重回帰分析法)は、複数の成分の濃度を演算して求めるのに有効である。現像液の複数の特性値a、b、c、…を測定して、それらの測定値から多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により成分濃度A、B、C、…を求めることができる。この際、求めるべき成分濃度につき、少なくともこの成分濃度と相関のある特性値が、少なくともひとつは測定されて演算に用いられることが必要である。
ここで、成分濃度と「相関のある」現像液の特性値とは、その特性値がその成分濃度と関係があり、その成分濃度の変化に応じて特性値が変わるような関係にあることをいう。例えば、現像液の成分濃度のうち少なくとも成分濃度Aと相関のある現像液の特性値aとは、特性値aが成分濃度を変数とする関数により求められるときに、変数の一つに少なくとも成分濃度Aを含むことをいう。特性値aが成分濃度Aのみの関数であってもよいが、通常は、成分濃度Aのほかに、成分濃度BやCなどを変数とする多変数関数となっているときに、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いる意義が大きい。
また、成分濃度は、全体に対するその成分の相対量を示す尺度である。繰り返し使用される現像液のような経時的に成分が増減する混合液の成分濃度は、その成分単独で決まらず、通常、他の成分の濃度の関数となる。そのため、現像液の特性値と成分濃度の関係は、平面的なグラフで表示することが困難なことが多い。このような場合には、検量線を用いる演算法などでは、現像液の特性値から成分濃度を算出することができない。
しかし、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)によれば、算出しようとする成分濃度と相関のある複数の特性値の測定値が一組揃えば、これを演算に用いて、成分濃度が一組算出される。従来の知見では一見すると測定困難な成分濃度であっても、特性値を測定することで成分濃度を測定できる、という顕著な効果を、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)による成分濃度測定では得ることができる。
以上のとおり、本発明の演算手法によれば、現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を、現像液の特性値(例えば、導電率、特定波長における吸光度、及び、密度)の測定値に基づいて算出することができる。本発明の演算手法によれば、従来法に比べ、高精度に各成分濃度を算出することができる。
また、本発明では多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いているので、現像液の成分濃度を算出する演算に、現像液の特定の成分濃度と直線関係にない現像液の特性値をも採用することができる。
また、本発明によれば、特許文献2の発明では必要な、高精度測定を可能とするための非常に多数のサンプルの準備と予備測定が、必要ない。(前述の実験例のとおり、成分数n=3の現像液であれば、測定する特性値の数p=3として、m>=npを満たすサンプル数p(例えばp=11個のサンプル)を準備して測定すれば、十分である。成分数n=2ならばサンプル数はさらに少なくてよい。)
さらに、本発明は多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を用いているので、従来は測定が困難であった現像液の吸収二酸化炭素濃度を、精度よく算出することができる。
次に、具体的な実施例について、図面を参照しながら説明する。以下の実施例では、特性値a、b、c、…や成分濃度A、B、C、…など、適宜アルファベットを用いて説明する。より具体的な理解のためには、特性値a、b、c、…は、それぞれ、導電率、特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度、密度、…などと、成分濃度A、B、C、…は、それぞれ、アルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度、…などとして、読み直せば良い。
ただし、特性値a、b、cを導電率、特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度、密度などとしたのは、あくまで本発明により現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、吸収二酸化炭素濃度などを算出する場合の最適な特性値の組み合わせの例示に過ぎず、これに限定するものではない。特性値a、b、c、…は、成分濃度A、B、C、…に応じて、種々の組合せを選択することができる。採用し得る特性値として、例えば、現像液の導電率、吸光度、超音波伝播速度、屈折率、密度、滴定終点、pHなどを挙げることができる。現像液には様々な添加材が含まれていることもあるので、成分濃度には上記三成分の他に添加剤濃度などを含めてもよい。
現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を測定し現像液を管理する場合には、特性値として、導電率、特定波長における吸光度、密度の組合せが好適である。吸光度を測定する特定波長は、好ましくは可視領域、より好ましくは360〜600nmの波長領域、の特定波長、さらに好ましくは波長λ=480nm又は560nmを採用するのがよい。現像液の吸収二酸化炭素濃度が比較的少なく、その経時変化が緩やかであるときには、現像液の導電率はアルカリ成分濃度と比較的良好な直線関係にあり、現像液の特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度は溶解フォトレジスト濃度と比較的良好な直線関係にあるため、である。他に、導電率、特定波長における吸光度、超音波伝播速度の組合せや、導電率、特定波長における吸光度、屈折率の組合せなども、好ましく採用できる。
以下に説明する第一から第三までの実施形態は、本発明の現像液の成分濃度測定方法に関するものである。
〔第一実施形態〕
図1は、現像液の二つの特性値から現像液の二つの成分の成分濃度を測定する場合の信号の流れを示す本実施形態の成分濃度測定方法のフロー図である。
本実施形態の成分濃度演算方法では、まず、現像液の特性値a、bを測定するステップにおいて、それぞれの測定値amとbmが取得される。取得された測定値amとbmは、演算ステップに送られる。次に、演算ステップは、測定値amとbmを受け取り、これらを用いて、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により、成分濃度A、Bを算出する。こうして、成分濃度A、Bが測定される。また、このフローを繰り返せば、現像液の成分濃度A、Bを連続して測定することができる。
〔第二実施形態〕
図2は、現像液の三つあるいはそれ以上の特性値から現像液の三つあるいはそれ以上の成分の成分濃度を測定する場合の信号の流れを示す本実施形態の成分濃度測定方法のフロー図である。
本実施形態の成分濃度演算方法では、まず、現像液の特性値a、b、c、…を測定するステップにおいて、それぞれの測定値am、bm、cm、…が取得される。取得された測定値am、bm、cm、…は、演算ステップに送られる。次に、演算ステップは、測定値am、bm、cm、…を受け取り、これらを用いて、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により、成分濃度A、B、C、…を算出する。こうして、成分濃度A、B、C、…が測定される。また、このフローを繰り返せば、現像液の成分濃度A、B、C、…を連続して測定することができる。
〔第三実施形態〕
図3は、複数の現像液の特性値から複数の成分濃度を測定する場合における演算ステップが多変量解析法とは異なる演算手法によるステップも内包している場合の、信号の流れを示す本実施形態の成分濃度測定方法のフロー図である。
この実施形態は、現像液のある成分の濃度Pとのみ関係がある現像液の特性値pを測定対象として採用した場合などに、好適に採用される。より具体的には、現像液のアルカリ成分濃度と吸収二酸化炭素濃度とを、現像液の導電率値と密度値から多変量解析法により算出し、現像液の溶解フォトレジスト濃度を特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度との直線関係を検量線として用いて算出し、測定する場合などが挙げられる。
本実施態様の現像液の成分濃度測定方法では、測定ステップにおいて、複数の成分濃度を変数とする現像液の特性値a、b、…と、成分濃度Pのみを変数とする現像液の特性値p、…と、が測定され、その測定値am、bm、…、及び、pm、…が演算ステップに送られる。
演算ステップは、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により成分濃度を算出するステップと、多変量解析法とは異なる演算方法(例えば、検量線法など)により成分濃度を算出するステップと、を含む。これらステップによる演算の先後は問わない。同時でもよい。
多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により成分濃度を算出するステップは、測定ステップで測定された現像液の特性値a、b、…の測定値から、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により成分濃度A、B、…を算出する。
多変量解析法とは異なる演算方法(例えば、検量線法)により成分濃度を算出するステップは、予め得ておいた特性値pと成分濃度Pとの直線関係を検量線として用いるなどして、測定ステップで測定された現像液の特性値p、…の測定値から成分濃度P、…を算出する。
以上、第一から第三までの実施形態で説明したとおり、本発明の現像液の成分濃度測定方法は、現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定ステップと、測定された複数の特性値に基づいて多変量解析法により現像液の成分濃度を算出する演算ステップと、を含んでいる。
測定ステップは、さらに、特性値aを測定する測定ステップ、特性値bを測定する測定ステップ、特性値cを測定する測定ステップ、…などを含む。しかし、これらのステップの順序は問わない。同時に測定されてもよい。また、温度調整ステップや、試薬添加ステップ、廃液ステップ、など、測定手法に応じて適宜必要なステップを含んでいてよい。
演算ステップは、多変量解析法により成分濃度を算出する演算ステップを含んでいればよい。多変量解析法とは異なる演算方法(例えば検量線法)により成分濃度を算出するステップなどを含んでいてもよい。
以下、第四から第十二までの実施形態は、本発明の現像液の成分濃度測定装置に関するものである。
〔第四実施形態〕
図4は、現像液の二つの成分を測定する成分濃度測定装置の模式図である。説明の便宜のために、現像液の成分濃度測定装置Aは、現像工程設備Bに接続された態様で現像工程設備Bとともに図示している。
まず、現像工程設備Bについて簡単に説明する。
現像工程設備Bは、主に、現像液貯留槽61、オーバーフロー槽62、現像室フード64、ローラーコンベア65、現像液シャワーノズル67などからなる。現像液貯留槽61には現像液が貯留されている。現像液は、補充液が補充されて組成管理されるが、図74では省略した。現像液貯留槽61は、液面計63とオーバーフロー槽62を備え、補充液を補給することによる液量の増加を管理している。現像液貯留槽61と現像液シャワーノズル67とは、現像液管路80により接続され、現像液貯留槽61内に貯留された現像液が現像液管路80に設けられた循環ポンプ72によりフィルター73を介して現像液シャワーノズル67に送液される。ローラーコンベア65は、現像液貯留槽61の上方に備えられ、フォトレジスト膜の製膜された基板66を搬送する。現像液は現像液シャワーノズル67から滴下され、ローラーコンベア65により搬送される基板66は滴下される現像液の中を通過することで現像液に浸される。その後、現像液は、現像液貯留槽61に回収され、再び貯留される。このように、現像液は、現像工程で循環して繰り返し使用される。なお、小型のガラス基板における現像室内は、窒素ガスを充満させるなどにより、空気中の二酸化炭素を吸収しないような処理が施される場合もある。なお、劣化した現像液は廃液ポンプ71を作動することにより廃液(ドレン)される。
次に、本実施形態の現像液の成分濃度測定装置Aについて説明する。本実施形態の成分濃度測定装置は、現像液をサンプリングして特性値を測定する方式の成分濃度測定装置である。
現像液の成分濃度測定装置Aは、測定部1と演算部2とを備えており、サンプリング配管15及び戻り配管16により現像液貯留槽61と接続されている。測定部1と演算部2とは測定データ用信号線51、52により接続されている。
測定部1は、サンプリングポンプ14と、第一の測定手段11及び第二の測定手段12と、を備えている(第一の測定手段11及び第二の測定手段12を測定手段と称する場合がある)。測定手段11、12は、サンプリングポンプ14の後段に直列に接続される。測定部1は、さらに、測定精度を高めるために、サンプリングした現像液を所定の温度に安定させる温度調節手段(図示せず)を備えていることが望ましい。この際、温度調節手段は、測定手段の直前に設けられていることが好ましい。サンプリング配管15は、測定部1のサンプリングポンプ14に接続されており、戻り配管16は、測定手段末端の配管と接続されている。
演算部2は、多変量解析法による演算ブロック21を含んでいる。多変量解析法による演算ブロック21は、測定データ用信号線51により測定部1に備えられた第一の測定手段11と、測定データ用信号線52により測定部1に備えられた第二の測定手段12と、接続されている。
次に、成分濃度測定装置Aの測定動作、及び、演算動作について説明する。
サンプリングポンプ14によって現像液貯留槽61から採液された現像液は、サンプリング配管15を通って成分濃度測定装置Aの測定部1内に導かれる。その後、温度調節手段を備えている場合は、サンプリングされた現像液は温度調節手段に送液され、所定の測定温度(例えば25℃)に維持されて、測定手段11、12に送液される。第一の測定手段では現像液の特性値aが測定され、第二の測定手段では現像液の特性値bが測定される。測定後の現像液は、戻り配管16を通って、現像液貯留槽61に戻される。
第一の測定手段11により測定された現像液の特性値aの測定値am、及び、第二の測定手段12により測定された現像液の特性値bの測定値bmは、それぞれ、測定データ用信号線51、52を介して、多変量解析法による演算ブロック21に送られる。測定値am、bmを受信した演算ブロック21は、これらの測定値を多変量解析法により演算して現像液の成分濃度A及びBを算出する。こうして、成分濃度測定装置Aにより現像液の成分濃度A、Bが測定される。
〔第五実施形態〕
図5は、現像液の三つの成分を測定する成分濃度測定装置の模式図である。現像液の成分濃度測定装置Aは、測定部1と演算部2とを備えており、サンプリング配管15及び戻り配管16により現像工程設備B(現像液貯留槽61)と接続されている。測定部1は、第一の測定手段11、第二の測定手段12、及び、第三の測定手段13を備えており、これらにより、現像液の三つの特性値が測定される。測定された三つの特性値の測定値は、測定データ用信号線51、52、53を介して、演算部2に送られて、多変量解析法により、現像液の三つの成分の成分濃度が算出される。測定動作、演算動作、図4と重複する部材の説明は、第四実施形態と同様であるので、省略する。
〔第六実施形態〕
図6は、演算部2に多変量解析法とは異なる演算手法による演算ブロックを有する成分濃度測定装置の模式図である。例えば検量線法などにより、測定された現像液の物性値から現像液の成分濃度を測定できる現像液の特性値と成分濃度の組がある場合に、適用される。
本実施形態の成分濃度測定装置Aは、現像液の複数の特性値を測定する測定部1と、その測定値から現像液の成分濃度を算出する演算部2とを備えている。演算部2は、多変量解析法による演算ブロック21と、多変量解析法以外の演算手法(例えば検量線法)による演算ブロック22と、を含んでいる。
多変量解析法で演算に用いられる現像液の特性値の測定値は、測定部1で測定されたのち、演算部2の多変量解析法による演算ブロック21に送られる。多変量解析法以外の演算手法(例えば検量線法)に用いられる現像液の特性値の測定値は、演算ブロック22に送られる。演算ブロック21、22で演算が行われることにより、現像液の成分濃度が算出される。
なお、多変量解析法以外の演算手法(例えば検量線法)による演算ブロック22は、複数あってもよい。多変量解析法による演算とそれ以外の手法(例えば検量線法)による演算とについて、その演算の順序は問わない。その他、第四、第五実施形態と重複する部材等の説明は、省略する。
〔第七実施形態〕
図7は、測定部1と演算部2とが別体で構成された成分濃度測定装置の模式図である。
本実施形態の成分濃度測定装置Aにおいては、測定部1は現像工程設備Bの現像液管路80からバイパスされた管路に備えられ、演算部2と測定データ用信号線51〜53で接続されている。現像液管路80やその他の管路に直接接続されていてもよい。サンプリングポンプ14の代わりに、流量調節弁(図示せず)などを組み合わせて用いてもよい。
〔第八実施形態〕
図8は、現像液の特性値を測定する測定手段11〜13が、それぞれ測定装置本体11a、12a、13aと、測定プローブ11b、12b、13bと、により構成されている場合の成分濃度測定装置の模式図である。
本実施形態では、測定手段11〜13の測定プローブ11b〜13bが、現像液貯留槽61に貯留された現像液に浸漬されることによって、現像液の特性値が測定される。測定された現像液の特性値は、測定データ用信号線51〜53を介して演算部2へと送られる。演算部2で成分濃度が多変量解析法により算出されることにより、現像液の成分濃度が測定される。
図8では、測定部1と演算部2とが別体で構成されている場合を示したが、一体で構成された成分濃度測定装置であってもよい。この場合は、現像液中に浸漬された測定プローブと成分濃度測定装置の測定部1内に配置された測定装置本体とがケーブル等で接続される。
〔第九実施形態〕
図9は、測定部1内の測定手段を並列に配置して備える場合の成分濃度測定装置の模式図である。
測定部1を構成する各測定手段は、直列に接続される場合に限らず、並列に接続されていてもよい。図9のように、測定手段11〜13が、それぞれ独立に、サンプリング管路15a〜15c、サンプリングポンプ14a〜14c、戻り配管16a〜16cなどを備えていてもよいし、途中で分岐した管路により並列に接続されるのでもよい。測定手段11〜13により測定された現像液の特性値は、演算部2に送られる。演算部2では、多変量解析法により、現像液の成分濃度を算出する。
〔第十実施形態〕
図10は、例えば自動滴定装置のように、薬剤添加を要する測定装置を備えた場合の成分濃度測定装置の模式図である。図10では、第三の測定手段13が、薬剤添加の必要な測定装置である。
この場合、第三の測定手段13は、サンプリング配管15、サンプリングポンプ14と接続されているほか、送液配管18により添加試薬93と接続される。添加試薬は、送液ポンプにより採液されて測定に供される。測定後の現像液は、廃液配管19により廃液(ドレン)される。その他、測定動作や演算動作などは、他の実施例と同様であり、省略する。
以上、第四から第十までの実施形態に示した通り、本発明の成分濃度測定装置は、現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定部1と、測定部1により測定された現像液の複数の特性値に基づいて多変量解析法により現像液の成分濃度を測定する演算部2と、を備える。
本実施形態の成分濃度測定装置Aの測定部1は、種々の実施形態をとり得る。測定手段に用いる測定装置にはその測定装置の採用する測定方式に応じて適した設置や接続の仕方があるので、本発明の成分濃度測定装置の測定部1は、その測定手段に応じて最適な構成とすればよい。
測定部1内には、現像液の複数の特性値を測定するために必要となる測定手段が備えられていればよい。温度調節手段(図示せず)を備えていることが望ましい。サンプリングポンプ14や、送液ポンプ17、廃液配管19などは、必要に応じて、適宜備えられていることが望ましいが、いずれも測定部1の内部部品として必須というわけではない。
また、測定部1と演算部2とは、一体であっても別体であってもよい。測定部1と演算部2とは、測定部1で測定された現像液の特性値の測定データを演算部2が受け取ることができるように、相互に連絡していればよい。測定部1と演算部2とは、信号線により接続されている場合に限らず、無線でデータを送受信できるように構成されている場合でもよい。複数の測定手段が一つの場所にまとめられて測定部1を構成している必要もなく、特定の測定手段が一つだけ別体で備え付けられているのでもよい。
各測定手段は、サンプリングして測定する方式のみならず、配管に直接取り付ける方式でも、プローブを液中に浸漬する方式でもよい。各測定手段が直列に接続されていても、並列に接続されていてもよい。これら各種の組合せにより測定部1が構成されていてよい。
なお、本実施形態の測定部1における現像液の複数の特性値の測定は、その順序を問わない。図4から図10までの図面における測定部1内の各測定手段の配列、及び、「第一の測定手段」、「第二の測定手段」、…等の記載における「第一の」、「第二の」、…などの文言は、本発明における測定の順番を限定するものではない。「第一の」、「第二の」、…などの文言は、複数ある測定手段のそれぞれを区別するための便宜に過ぎない。
また、本実施形態の成分濃度測定装置の演算部2は、多変量解析法による演算ブロック21を含んでいれば、多変量解析法以外の手法(例えば検量線法)による演算ブロックを別途有していてもよい。この際、演算の順序は問わない。
本実施形態の成分濃度測定装置では、測定部1を構成する各測定手段が、その測定方式に適した配置に設置され接続されて、現像液の複数の特性値を測定し、演算部2が測定部1で測定された現像液の特性値の測定値を受け取ることにより、多変量解析法(を含む演算手法)により現像液の成分濃度が算出される。
以下、第十一実施形態及び第十二実施形態において、本実施形態の成分濃度測定装置の応用例について説明する。本実施形態の成分濃度測定装置は、一つの部品として、各種の装置やシステムに応用し得る。
〔第十一実施形態〕
図11は、本実施形態の成分濃度測定装置を用いた現像液管理装置の模式図である。
本実施形態においては、成分濃度測定装置Aは、制御弁41〜43を制御する制御部3(制御装置)と演算データ用信号線54により接続されている。制御部3(制御装置)は、制御信号用信号線55〜57により、各制御弁41〜43と接続されている。制御弁41〜43は、それぞれ、補充液貯留槽91、92から補充液を送液するための補充液用管路81、82、及び、純水を送液するための純水用管路83、に設けられている。
補充液貯留槽91、92は、窒素ガスで加圧されており、制御部3(制御装置)が制御弁41〜43を開閉することにより、補充液が合流管路84を通って現像液に補給される。補給される補充液は、循環ポンプ74により循環管路85を経由して現像液貯留槽61に戻され、攪拌される。補充液の補給動作の方法やメカニズムは、後述の現像液管理方法や現像液管理装置の実施例において説明する。
このように、本実施形態の成分濃度測定装置は、現像液に補給される補充液を送液する流路に設けられた制御弁、及び、これらを制御する制御装置、と組み合わせることにより、現像液管理装置の一部品として利用することができる。
なお、補充液とは、例えば、現像液の原液、新液、再生液などのことをいう。純水を含める場合もある。原液とは、アルカリ成分濃度の濃厚な未使用の現像液(例えば20〜25%TMAH水溶液)である。新液とは、アルカリ成分濃度が現像工程で使用される濃度と同じ濃度で未使用の現像液(例えば2.38%TMAH水溶液)である。再生液とは、使用済みの現像液から不要物を除去して再利用可能にした現像液である。これらは、補充液としての用途や効果が異なる。例えば、原液は、アルカリ成分濃度を高めるための補充液で、溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度を下げる。新液は、アルカリ成分濃度を維持あるいは緩やかに増減し、溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度を下げるための補充液である。純水は、各成分濃度を下げるための補充液である。以下の実施例の説明においても、同様である。
また、図11において、補充液は補充液貯留槽91、92から補充液用管路81、82を介して供給され、純水は純水用管路83を介して供給される場合を図示したが、これに限定されない。補充液は、補充液貯留槽91、92などから調合槽(図示せず)に送られ、そこで所定の濃度に調製されてから、現像液貯留槽61に送液される場合もある。この場合には、制御弁は調合槽から現像液貯留槽61に送液される管路の途中に備えられる。現像液貯留槽61に純水を直接供給しないこともあり、このときには純水用管路83や制御弁43は存在しない。以下の実施例の説明及び以下の図面においても、同様である。
補充液は、補充液貯留部Cの補充液貯留槽91、92に貯留されている。補充液貯留槽91、92は、加圧ガス用バルブ46、47を備えた窒素ガス用管路86が接続されており、この管路を介して供給される窒素ガスにより加圧されている。また、補充液貯留槽91、92にはそれぞれに補充液用管路81、82が接続され、通常開いた状態のバルブ44、45を介して補充液が送液される。補充液用管路81、82及び純水用管路83には制御弁41〜43が備えられており、制御弁41〜43は制御部3により開閉制御される。制御弁が動作することにより、補充液貯留槽91、92に貯留されていた補充液が圧送され、また、純水が送液される。その後、補充液は合流管路84を経て、循環攪拌機構Dと合流し、現像液貯留槽61に補給され攪拌される。
補給により補充液貯留槽91、92内に貯留された補充液が減少すると、その内圧が下がって供給量が不安定となるため、補充液の減少に応じて加圧ガス用バルブ46、47を適宜開いて窒素ガスを供給し、補充液貯留槽91、92の内圧が保たれるように維持される。補充液貯留槽91、92が空になったときは、バルブ44、45を閉じて、補充液を満たした新しい補充液貯留槽と交換するか、または、別途調達した補充液を空になった補充液貯留槽91、92に再び充填する。
〔第十二実施形態〕
本実施形態の成分濃度測定装置は、表示装置DPと組み合わせて、現像液の成分濃度モニターや成分濃度監視装置として利用できる。さらに、警告灯WLや警報装置WTと組み合わせて、現像液の濃度異常警報装置などに応用することができる。図12は、本発明の成分濃度測定装置の応用事例を示すための模式図である。このように本発明の成分濃度測定装置は、部品として、各種の装置やシステムに応用し得る。
以下、第十三から第十七までの実施形態は、本発明の現像液管理方法に関するものである。
本発明の現像液管理方法は、アルカリ性現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定ステップと、測定された複数の特性値から多変量解析法により現像液の成分濃度を算出する演算ステップと、測定された現像液の特性値又は算出された現像液の成分濃度のいずれかに基づいて現像液に補充液を補給する補給ステップと、を含んでいる。測定ステップ及び演算ステップは、前述した現像液の成分濃度測定方法における測定ステップ、演算ステップと同様であるので、以下の第十三から第十七までの実施形態では、その重複する説明を省略する。
また、以下の説明において、「所定の管理値」とは、現像液が最適な液性能を発揮するときの特性値又は成分濃度値として、経験的に、あるいは、実験などにより、予め知られている特性値又は成分濃度値である。すなわち、例えば現像後の基板に形成された線幅や残膜厚といった、現像液の現像性能の指標となる数値が、もっとも好ましい状態となるような特性値又は成分濃度値として、予め知られている値のことをいう。「所定の管理領域」も、このような管理値の範囲のことである。現像液管理装置の説明においても、同様である。
〔第十三実施形態〕
図13は、現像液の二つの成分を成分濃度により管理する現像液管理方法のフロー図である。本実施形態の現像液管理方法は、二酸化炭素の吸収が少ないように管理されているアルカリ性現像液において、現像液のアルカリ成分濃度が所定の管理値となるように、及び、溶解フォトレジスト濃度が所定の管理値以下となるように、現像液を管理する場合などに、好ましく適用される。
本実施形態では、成分濃度Aを所定の管理値A0に、成分濃度Bを所定の管理値B0以下に管理するものとする。成分濃度Aは例えばアルカリ成分濃度、成分濃度Bは例えば溶解フォトレジスト濃度である。
測定ステップで現像液の特性値a、bが測定され、その測定値am、bmが演算ステップに送られる。演算ステップでは、測定値am、bmから多変量解析法により現像液の成分濃度A、Bが測定される。演算ステップにより算出された成分濃度A、Bは、補給ステップに送られる。
補給ステップは、成分濃度Aを調整するステップ、及び、成分濃度Bを調整するステップを含む。
まず、成分濃度Aを調整するステップでは、成分濃度Aがその管理値A0より大きいか、あるいは、小さいかを判断する。大きい時は、成分濃度Aを薄めるように働く補充液(例えば現像液新液や純水など)を現像液に補給する。小さい時は、成分濃度Aを濃くするように働く補充液(例えば、現像液原液や新液など)を現像液に補給する。成分濃度Aがその管理値A0と同じである時は、何もしない。
成分濃度Bを調整するステップでは、成分濃度Bがその管理値B0より大きいか否かを判断する。大きい時は、成分濃度Bを薄めるように働く補充液(例えば、現像液新液がアルカリ成分濃度を変えないので好ましい)を現像液に補給する。小さい時は、何もしない。
〔第十四実施形態〕
図14は、現像液の二つの成分の一方を成分濃度により、他方を特性値により管理する場合の現像液管理方法のフロー図である。本実施形態の現像液管理方法は、二酸化炭素の吸収が少ないように管理されているアルカリ性現像液において、現像液のアルカリ成分濃度が所定の管理値となるように、及び、現像液の特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度が所定の管理値以下となるように、現像液を管理する場合などに、好ましく適用される。
本実施形態では、成分濃度Aを所定の管理値A0に、現像液の特性値bの測定値bmを所定の管理値b0以下に管理するものとする。成分濃度Aは例えばアルカリ成分濃度、特性値bは例えば特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度である。
測定ステップで現像液の特性値a、bが測定され、その測定値am、bmが演算ステップに送られる。演算ステップでは、測定値am、bmから多変量解析法により現像液の成分濃度A、Bが測定される。演算ステップにより算出された成分濃度Aと、測定ステップにより測定された特性値bの測定値bmは、補給ステップに送られる。
補給ステップは、成分濃度Aを調整するステップと特性値bを調整するステップとを含む。成分濃度Aを調整するステップは、第十三実施例の場合と同様であるので、その説明を省略する。
特性値bを調整するステップでは、その測定値bmがその管理値b0と比較して大きいか否かを判断する。大きい時は、成分濃度Bを薄めるように働く補充液(例えば、現像液新液がアルカリ成分濃度を変えないので好ましい)を現像液に補給する。小さい時は、何もしない。
特性値bと成分濃度Bとが単調増加の相関関係を有するときには、特性値bがその管理値b0以下に管理されることにより、成分濃度Bがその管理値B0以下になるように管理されることになる。特性値bと成分濃度Bとが単調減少の相関関係を有するときには、判断の大小関係を反転させて動作させれば、同様に、成分濃度Bがその管理値B0以下になるように管理できる。
〔第十五実施形態〕
図15は、現像液の三つの成分を成分濃度により管理する現像液管理方法のフロー図である。本実施形態の現像液管理方法は、例えば、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値に、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値以下に、及び、吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値以下に管理する場合などに、好ましく適用される。
補給ステップは、成分濃度Aを所定の管理値A0に、成分濃度Bを所定の管理値B0以下に、成分濃度Cを所定の管理値C0以下に管理するものとする。成分濃度Aは例えばアルカリ成分濃度、成分濃度Bは例えば溶解フォトレジスト濃度、成分濃度Cは例えば吸収二酸化炭素濃度である。
測定ステップで現像液の特性値a、b、c、…が測定され、その測定値am、bm、cm、…が演算ステップに送られる。演算ステップでは、測定値am、bm、cm、…から多変量解析法により現像液の成分濃度A、B、C、…が測定される。演算ステップにより算出された成分濃度A、B、C、…は、補給ステップに送られる。
補給ステップは、成分濃度Aを調整するステップ、成分濃度Bを調整するステップ、及び、成分濃度Cを調整するステップを含む。
まず、成分濃度Aを調整するステップでは、成分濃度Aがその管理値A0より大きいか、あるいは、小さいかを判断する。大きい時は、成分濃度Aを薄めるように働く補充液(例えば現像液新液や純水など)を現像液に補給する。小さい時は、成分濃度Aを濃くするように働く補充液(例えば現像液原液や新液など)を現像液に補給する。成分濃度Aがその管理値A0と同じである時は、何もしない。
成分濃度Bを調整するステップでは、成分濃度Bがその管理値B0より大きいか否かを判断する。大きい時は、成分濃度Bを薄めるように働く補充液(例えば現像液新液がアルカリ成分濃度を変えないので好ましい)を現像液に補給する。小さい時は、何もしない。
成分濃度Cを調整するステップでは、成分濃度Cがその管理値C0より大きいか否かを判断する。大きい時は、成分濃度Cを薄めるように働く補充液(例えば、現像液新液がアルカリ成分濃度を変えないので好ましい)を現像液に補給する。小さい時は、何もしない。
〔第十六実施形態〕
図16は、現像液の三つの成分のうち一つを特性値により、他の二つを成分濃度により管理する現像液管理方法のフロー図である。本実施形態の現像液管理方法は、現像液のアルカリ成分濃度が所定の管理値となるように、現像液の特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度が所定の管理値以下となるように、及び、現像液の吸収二酸化炭素濃度が所定の管理値以下となるように、現像液を管理する場合などに、好ましく適用される。
本実施形態では、成分濃度Aを所定の管理値A0に、現像液の特性値bの測定値bmを所定の管理値b0以下に、成分濃度Cを所定の管理値C0以下に管理するものとする。成分濃度Aは例えばアルカリ成分濃度、特性値bは例えば特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度、成分濃度Cは例えば吸収二酸化炭素濃度である。
測定ステップで現像液の特性値a、b、cが測定され、その測定値am、bm、cmが演算ステップに送られる。演算ステップでは、測定値am、bm、cmから多変量解析法により現像液の成分濃度A、B、Cが測定される。演算ステップにより算出された成分濃度A、C、及び、測定ステップで測定された特性値bの測定値bmは、補給ステップに送られる。
補給ステップは、成分濃度Aを調整するステップ、特性値bを調整するステップ、及び、成分濃度Cを調整するステップを含む。成分濃度Aを調整するステップ、及び、成分濃度Cを調整するステップは、第十五実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
特性値bを調整するステップでは、その測定値bmがその管理値b0と比較して大きいか否かを判断する。大きい時は、成分濃度Bを薄めるように働く補充液(例えば、現像液新液がアルカリ成分濃度を変えないので好ましい)を現像液に補給する。小さい時は、何もしない。
特性値bと成分濃度Bとが単調増加の相関関係を有するときには、特性値bがその管理値b0以下に管理されることにより、成分濃度Bがその管理値B0以下になるように管理されることになる。特性値bと成分濃度Bとが単調減少の相関関係を有するときには、判断の大小関係を反転させて(すなわちbm<b0)動作させれば、同様に、成分濃度Bがその管理値B0以下になるように管理できる。
〔第十七実施形態〕
図17は、現像液の三つの成分のうち二つを特性値により、他の一つを成分濃度により管理する現像液管理方法のフロー図である。本実施形態の現像液管理方法は、現像液の導電率が所定の管理値となるように、現像液の特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度が所定の管理値以下となるように、及び、現像液の吸収二酸化炭素濃度が所定の管理値以下となるように、現像液を管理する場合などに、好ましく適用される。
本実施形態では、現像液の特性値aの測定値amを所定の管理値a0に、現像液の特性値bの測定値bmを所定の管理値b0以下に、成分濃度Cを所定の管理値C0以下に管理するものとする。特性値aは例えば導電率、特性値bは例えば特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度、成分濃度Cは例えば吸収二酸化炭素濃度である。
測定ステップで現像液の特性値a、b、cが測定され、その測定値am、bm、cmが演算ステップに送られる。演算ステップでは、測定値am、bm、cmから多変量解析法により現像液の成分濃度A、B、Cが測定される。測定ステップで測定された特性値aの測定値am、bの測定値bm、及び、演算ステップにより算出された成分濃度Cは、補給ステップに送られる。
補給ステップは、特性値aを調整するステップ、特性値bを調整するステップ、及び、成分濃度Cを調整するステップを含む。特性値bを調整するステップ、及び、成分濃度Cを調整するステップは、第十六実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
特性値aを調整するステップでは、その測定値amがその管理値a0と比較して大きいか小さいかを判断する。大きい時は、成分濃度Aを薄めるように働く補充液(例えば現像液原液又は新液)を現像液に補給する。小さい時は、成分濃度Aを濃くするように働く補充液(例えば現像液新液又は純水)を現像液に補給する。同じであるときには、何もしない。
特性値aと成分濃度Aとが単調増加の相関関係を有するときには、特性値aがその管理値a0に維持されることにより、成分濃度Aがその管理値A0になるように管理されることになる。特性値aと成分濃度Aとが単調減少の相関関係を有するときには、判断の大小関係を反転させて動作させれば、同様に、成分濃度Aがその管理値A0になるように管理できる。
以上、第十三から第十七までの実施形態に示した通り、本発明の現像液管理方法は、現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定ステップと、測定された複数の特性値に基づいて多変量解析法により現像液の成分濃度を算出する演算ステップと、測定される現像液の複数の特性値及び算出される現像液の成分濃度のうちから選択される管理対象項目の測定値又は算出値に基づいて現像液に補充液を補充する補給ステップと、を含んでいる。
測定ステップは、さらに、特性値aを測定する測定ステップ、特性値bを測定する測定ステップ、特性値cを測定する測定ステップ、…などを含む。しかし、これらのステップの順序は問わない。同時に測定されてもよい。また、温度調整ステップや、試薬添加ステップ、廃液ステップ、など、測定手法に応じて適宜必要なステップを含んでいてよい。
演算ステップは、多変量解析法により成分濃度を算出する演算ステップを含んでいればよい。多変量解析法とは異なる演算方法(例えば検量線法)により成分濃度を算出するステップなどを含んでいてもよい。
補給ステップは、管理対象項目(現像液の特性値又は成分濃度のいずれか)を制御量として、これを所定の管理値となるように、又は、所定の管理値以下あるいは管理領域内となるように、現像液に補充液を補給する、成分濃度Aを調整するステップ、成分濃度Bを調整するステップ、成分濃度Cを調整するステップ、…を含んでいる。その順番は図面に示した順番に限定されない。
また、制御の方式は、制御量を目標値に合わせる制御に用いられる各種の制御方法を採用し得る。特に、比例制御(P制御)、積分制御(I制御)、微分制御(D制御)、及び、これらを組み合わせた制御(PI制御など)が好ましい。より好ましくは、PID制御が適している。
上記第十三から第十七までの実施形態において、測定ステップ、演算ステップ、補給ステップを繰り返すことにより、現像液の成分濃度Aはその管理値A0に維持され、現像液の成分濃度Bはその管理値B0以下に、成分濃度Cはその管理値C0以下に管理される。したがって、本発明の現像液管理方法により、最適な現像性能を維持することができ、所望の線幅や残膜厚を実現することができる。
以下、第十八から第二十五までの実施形態は、本発明の現像液管理装置に関するものである。
本実施形態の現像液管理装置は、アルカリ性現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定部1と、測定部1で測定された複数の特性値から多変量解析法により現像液の成分濃度を算出する演算部2と、測定部1で測定された現像液の特性値又は演算部2で算出された現像液の成分濃度に基づいて現像液に補給される補充液を送液する流路に設けられた制御弁41〜43に制御信号を発する制御部3と、を備えている。本発明の現像液管理装置の測定部1及び演算部2は、前述した現像液の成分濃度測定装置における測定部1、演算部2と同様であるので、以下の第十八から第二十五までの実施形態では、その重複する説明を省略する。
〔第十八実施形態〕
図18は、本発明の現像液管理装置の説明をするための現像工程の模式図である。本発明の現像液管理装置Eが、現像工程設備B、補充液貯留部C、循環攪拌機構Dなどとともに図示されている。
本実施形態の現像液管理装置Eは、現像液の複数の特性値を測定する複数の測定手段11〜13を備えた測定部1と、多変量解析法による演算ブロック21を含む演算部2と、現像液の特性値又は成分濃度のいずれか一方を制御量としてこれを所定の管理値あるいは管理領域内となるように制御する制御部3と、を備えている。また、本実施形態の現像液管理装置は、制御部3と接続されて制御される制御弁41〜43を備えている。
現像液管理装置Eは、サンプリング配管15により現像液貯留槽61と接続される。サンプリングポンプ14によりサンプリングされた現像液は、サンプリング配管15を通って測定部1内に導かれる。測定部1内では、各測定手段11〜13が現像液の特性値を測定する。測定後の現像液は、戻り配管16を通って、現像液貯留槽61に戻される。
演算部2は、測定部1で測定された現像液の複数の特性値の測定値を一組受信する。演算部2は、受信した一組の測定値から多変量解析法により、現像液の成分濃度を算出する。
測定動作、演算動作の詳細は、前述の現像液の成分濃度測定装置と同様であるので省略し、以下、制御動作について説明する。
現像液管理装置Eは、現像液に補給される補充液を送液する管路81〜83と接続される(純水も含めて補充液とする)。各管路81〜83は、現像液管理装置E内で制御部3によりその動作を制御される制御弁41〜43と接続される。
制御部3は、測定部1からは現像液の特性値の測定値を、演算部2からは算出された成分濃度を、受信する。制御部3は、受信した現像液の特性値又は成分濃度を制御量として、この制御量に基づいて、制御弁41〜43に対して制御信号を発する。制御は、例えば、その制御量が所定の管理値となるように、又は、所定の管理領域内となるように、行われる。
制御部3は、制御ブロックを備える。例えば、現像液管理装置Eが現像液の三つの成分濃度A、B、Cを管理するものであれば、制御部3は、成分濃度Aを制御するための制御ブロック31、成分濃度Bを制御するための制御ブロック32、成分濃度Cを制御するための制御ブロック33を備える。管理する成分濃度が二つであれば、制御ブロックは二つでよく、また、管理する成分濃度が三つより多ければそれに応じて同様の制御ブロックをさらに備える。このようにして、制御部3は制御弁41〜43に必要な制御信号を発することができる。
制御弁41〜43が、例えば、“開”信号を受信している間開く制御弁であって、弁開時に所定の流量を送液できるように予め流量調節された開閉制御弁である場合には、制御部3が、補給すべき補充液を送液する流路に設けられた制御弁に、“開”信号を所定の時間にわたって送ることにより、現像液管理に必要な補充液が必要な量だけ現像液に補給される。
制御弁の制御動作は、この例に限らない。制御弁が開閉切り替え信号により弁の開状態と閉状態とを切り替えるものである場合には、制御部3がパルス的な開閉切り替え信号を制御弁に所定の時間間隔で送ることにより、必要な補充液が必要な量だけ現像液に補給される。
さらに、制御弁41〜43は、弁の開度を制御できるものであってもよいし、単なる流量調整弁(ニードルバルブ)と開閉制御弁との組み合わせであってもよい。制御弁41〜43は、電磁弁でもよいし、空気圧操作弁(エアオペレートバルブ)であってもよい。
制御弁41〜43が制御部3の発した制御信号に基づいて動作することにより、現像液管理に必要な量の補充液が現像液に補給される。制御部3は、受信した制御量(現像液の特性値又は成分濃度)から求められる補充液の種類とその必要となる補給量に基づいて、必要な補給量が送液されるように、制御すべき制御弁に制御信号を発する。
このようにして、本実施形態の現像液管理装置により、測定された現像液の特性値又は算出された現像液の成分濃度に基づいて、これらが所定の管理値となるように、又は、所定の管理領域内となるように、現像液を維持管理することができる。
より具体的には、次のような現像液管理が可能となる。ただし、以下に挙げる現像液管理は、例示であり、これに限定されるものではない。
第一に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度が、それぞれについての所定の管理値となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液のアルカリ成分濃度を、好ましくは2.375〜2.390(wt%)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは2.380(wt%)に、溶解フォトレジスト濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下の所定の管理値、より好ましくは0.15(wt%)に、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下の所定の管理値、より好ましくは0.25(wt%)に、管理することができる。
第二に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度が所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度及び吸収二酸化炭素濃度がそれぞれについての所定の管理値以下となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液のアルカリ成分濃度を、好ましくは2.375〜2.390(wt%)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは2.380(wt%)に、溶解フォトレジスト濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下となるように、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下となるように、管理することができる。
第三に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度、特定波長における吸光度、及び、吸収二酸化炭素濃度が、それぞれについての所定の管理値となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液のアルカリ成分濃度を、好ましくは2.375〜2.390(wt%)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは2.380(wt%)に、波長λ=560nmにおける吸光度(セル光路長d=10mm)を、好ましくは1.30(Abs.)以下の所定の管理値、より好ましくは0.50(Abs.)に、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下の所定の管理値、より好ましくは0.25(wt%)に、管理することができる。
第四に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度が所定の管理となるように、特定波長における吸光度が所定の管理領域内となるように、吸収二酸化炭素濃度が所定の管理値以下となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液のアルカリ成分濃度を、好ましくは2.375〜2.390(wt%)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは2.380(wt%)に、波長λ=560nmにおける吸光度(セル光路長d=10mm)を、好ましくは1.30(Abs.)以下、より好ましくは0.65(Abs.)以下となるように、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下となるように、管理することができる。
第五に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液の導電率、特定波長における吸光度、及び、吸収二酸化炭素濃度が、それぞれにおける所定の管理値となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液の導電率を、好ましくは54.47〜54.75(mS/cm)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは54.58(mS/cm)に、波長λ=560nmにおける吸光度(セル光路長d=10mm)を、好ましくは1.3(Abs.)以下の所定の管理値、より好ましくは0.50(Abs.)に、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下の所定の管理値、より好ましくは0.25(wt%)に、管理することができる。
第六に、繰り返し使用されるアルカリ性現像液の導電率が所定の管理値となるように、特定波長における吸光度が所定の管理領域内となるように、吸収二酸化炭素濃度が所定の管理値以下となるように、現像液に補充液を補給する現像液管理である。例えば、本発明の現像液管理装置によれば、2.38%TMAH水溶液の導電率を、好ましくは54.47〜54.75(mS/cm)の範囲内の所定の管理値、より好ましくは54.58(mS/cm)に、波長λ=560nmにおける吸光度(セル光路長d=10mm)を、好ましくは1.30(Abs.)以下、より好ましくは0.65(Abs.)以下となるように、吸収二酸化炭素濃度を、好ましくは0.40(wt%)以下となるように、管理することができる。
よって、本実施形態の現像液管理装置によれば、従来のものに比べて、現像液の各成分濃度又は各特性値を所定の管理値又は管理領域内に精度よく管理できるので、現像液を最適な現像性能に維持することができ、所望の線幅や残膜厚を実現することができる。
〔第十九実施形態〕
図19は、現像液に補給される補充液を送液する流路に設けられた制御弁41〜43が、本実施形態の現像液管理装置の外部にある実施形態の現像液管理装置を説明するための模式図である。
本実施形態の現像液管理装置Eは、現像液の複数の特性値を測定する複数の測定手段を備えた測定部1と、多変量解析法による演算ブロック21を含む演算部2と、現像液の特性値又は成分濃度のいずれか一方を制御量としてこれを所定の管理値あるいは管理領域内となるように補充液の補給管路に設けられた制御弁41〜43に制御信号を発する制御部3と、を備えている。
本実施形態では、制御部3により制御される制御弁41〜43は、現像液管理装置Eの内部部品ではない。現像液管理装置Eとは別体として、補充液が送液される管路に設けられている。現像液管理装置Eは、補充液が送液されるこれらの管路とは接続されない。
その他の構成、動作などは、第十八実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十実施形態〕
図20は、演算機能と制御機能とを併せ持つ演算制御部23を備えた現像液管理装置Eの模式図である。
本発明の現像液管理装置Eは、演算部2と制御部3とが別体の装置として構成されている場合に限らない。演算機能と制御機能とを併せ持つ一体の演算制御部23として構成されていてもよい。演算制御部23としては、例えば、コンピュータなどの多機能装置が挙げられる。
コンピュータは、入出力機能、送受信機能、演算機能、制御機能、表示機能など、非常に多様な機能を備えている。したがって、本発明の現像液管理装置Eの演算機能、制御機能を、コンピュータにより実現できる。演算制御部23が測定部1及び制御弁41〜43と接続されていればよい。このとき、多変量解析法により測定された現像液の特性値から成分濃度を算出する演算処理プログラムと、制御量(現像液の特性値又は成分濃度)が所定の管理値となるように、又は、所定の管理領域内となるように、制御弁41〜43に対して制御信号を発する制御プログラムとが、コンピュータに実装されていれば、現像液を所定の状態に維持管理できる。
その他の構成、動作などは、第十八実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十一実施形態〕
図21は、現像液の二つの成分を管理する現像液管理装置の模式図である。本実施形態の現像液管理装置Eは、二酸化炭素の吸収が少ないように管理されたアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度と溶解フォトレジスト濃度を管理する場合などに、好ましく適用される。
第一の測定手段11が、現像液の成分のうち少なくともアルカリ成分濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、導電率を測定する導電率計)であり、第二の測定手段12が、現像液の成分のうち少なくとも溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、波長λ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計)であるとすれば、演算部2が多変量解析法による演算ブロック21を含むので、多変量解析法により測定された現像液の特性値から現像液のアルカリ成分濃度及び溶解フォトレジスト濃度を算出することができる。
そうすると、制御ブロック31が現像液の導電率又はアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック32が現像液の特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度又は溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理領域内となるように制御バルブに制御信号を発する制御ブロックであるときには、制御部3は測定された現像液の特性値と算出された現像液の成分濃度とを受信できるように測定部1及び演算部2と接続されているので、本実施態様の現像液管理装置Eにより、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理領域内となるように、現像液を維持管理できる。
その他の詳細は、他の実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十二実施形態〕
図22は、現像液の二つの成分を成分濃度により管理する現像液管理装置の模式図である。本実施形態の現像液管理装置は、二酸化炭素を吸収しないように管理されたアルカリ性現像液のアルカリ成分濃度と溶解フォトレジスト濃度を管理濃度値に管理する場合などに、好ましく適用される。
第一の測定手段11が、現像液の成分のうち少なくともアルカリ成分濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば導電率を測定する導電率計)であり、第二の測定手段12が、現像液の成分のうち少なくとも溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えばλ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計)であるとすれば、演算部2が多変量解析法による演算ブロック21を含むので、多変量解析法により測定された現像液の特性値から現像液のアルカリ成分濃度及び溶解フォトレジスト濃度を算出することができる。
そうすると、制御ブロック31がアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック32が溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであるとすれば、制御部3は算出された現像液の成分濃度を受信できるように演算部2と接続されているので、本実施態様の現像液管理装置Eにより、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、現像液を維持管理できる。
その他の詳細は、他の実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十三実施形態〕
図23は、現像液の三つの成分のうち二つを特性値により、他の一つを成分濃度により管理する現像液管理装置の模式図である。本実施形態の現像液管理装置は、アルカリ性現像液のアルカリ成分濃度を導電率により、溶解フォトレジスト濃度を特定波長(例えばλ=560nm)における吸光度により管理し、吸収二酸化炭素濃度を濃度により管理する場合などに、好ましく適用される。
第一の測定手段11が、現像液の成分のうち少なくともアルカリ成分濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、導電率を測定する導電率計)であり、第二の測定手段12が、現像液の成分のうち少なくとも溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、λ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計)であり、第三の測定手段が、現像液の成分のうち少なくとも吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、密度を測定する密度計)であるとすれば、演算部2が多変量解析法による演算ブロック21を含むので、多変量解析法により測定された現像液の特性値から現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を算出することができる。
そうすると、制御ブロック31が現像液の導電率を所定の管理値となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック32が現像液の特性波長(例えばλ=560nm)における吸光度を所定の管理値あるいは管理領域内となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック33が吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであるときには、制御部3は、測定された現像液の特性値を受信できるように測定部1と接続され、算出された現像液の成分濃度を受信できるように演算部2と接続されているので、本実施態様の現像液管理装置Eにより、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、及び、吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、現像液を維持管理できる。
その他の詳細は、他の実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十四実施形態〕
図24は、現像液の三つの成分のうち一つを特性値により、他の二つを成分濃度により管理する現像液管理装置の模式図である。本実施形態の現像液管理装置は、アルカリ性現像液のアルカリ成分濃度と吸収二酸化炭素濃度を濃度により管理し、溶解フォトレジスト濃度を特定波長(例えば、λ=560nm)における吸光度により管理する場合などに、好ましく適用される。
第一の測定手段11が、現像液の成分のうち少なくともアルカリ成分濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、導電率を測定する導電率計)であり、第二の測定手段12が、現像液の成分のうち少なくとも溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば、λ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計)であり、第三の測定手段が、現像液の成分のうち少なくとも吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば密度を測定する密度計)であるとすれば、演算部2が多変量解析法による演算ブロック21を含むので、多変量解析法により測定された現像液の特性値から現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を算出することができる。
そうすると、制御ブロック31がアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように制御バルブに制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック32が現像液の特性波長(例えば、λ=560nm)における吸光度を所定の管理値あるいは管理領域内となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック33が吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであるときには、制御部3は、測定された現像液の特性値を受信できるように測定部1と接続され、算出された現像液の成分濃度を受信できるように演算部2と接続されているので、本実施態様の現像液管理装置Eにより、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、及び、吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、現像液を維持管理できる。
その他の詳細は、他の実施形態と同様であるので、省略する。
〔第二十五実施形態〕
図25は、現像液の三つの成分を成分濃度により管理する現像液管理装置の模式図である。本実施形態の現像液管理装置は、アルカリ性現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を濃度により管理する場合などに、好ましく適用される。
第一の測定手段11が、現像液の成分のうち少なくともアルカリ成分濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば導電率を測定する導電率計)であり、第二の測定手段12が、現像液の成分のうち少なくとも溶解フォトレジスト濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えばλ=560nmにおける吸光度を測定する吸光光度計)であり、第三の測定手段が、現像液の成分のうち少なくとも吸収二酸化炭素濃度と相関のある現像液の特性値を測定する測定手段(例えば密度を測定する密度計)であるとすれば、演算部2が多変量解析法による演算ブロック21を含むので、多変量解析法により測定された現像液の特性値から現像液のアルカリ成分濃度、溶解フォトレジスト濃度、及び、吸収二酸化炭素濃度を算出することができる。
そうすると、制御ブロック31がアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック32が容器フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであり、制御ブロック33が吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように制御弁に制御信号を発する制御ブロックであるときには、制御部3は算出された現像液の成分濃度を受信できるように演算部2と接続されているので、本実施態様の現像液管理装置Eにより、現像液のアルカリ成分濃度を所定の管理値となるように、溶解フォトレジスト濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、及び、吸収二酸化炭素濃度を所定の管理値あるいは管理値以下となるように、現像液を維持管理できる。
その他の詳細は、他の実施形態と同様であるので、省略する。
以上、第十八から第二十五までの実施形態に示した通り、本実施形態の現像液管理装置はアルカリ性現像液の成分濃度と相関のある現像液の複数の特性値を測定する測定部1と、測定部1で測定された複数の特性値から多変量解析法により現像液の成分濃度を算出する演算部2と、測定部1で測定された現像液の特性値又は演算部2で算出された現像液の成分濃度に基づいて現像液に補給される補充液を送液する流路に設けられた制御弁41〜43に制御信号を発する制御部3と、を備えている。
本実施形態の現像液管理装置における測定部1及び演算部2は、現像液の濃度測定装置における測定部1及び演算部2と同様に、種々の態様をとることができる。
本実施形態の現像液管理装置における制御部3は、演算部2と別体の装置として備えられている必要はなく、一体の装置(例えばコンピュータ)の制御機能と演算機能として実装されていてもよい。また、図11のように、制御部3が測定部1や演算部2とは別体で構成されていてもよい。制御部3は、制御量となっている測定部1により測定された特性値又は演算部2により算出された成分濃度を受け取ることができるように、測定部1や演算部2と相互に連絡していればよい。そうすれば、受信した特性値や成分濃度に基づいて、必要な制御信号を発することができる。
補充液を送液するための管路についても、本実施形態の現像液管理装置Eに接続されてもよいし、接続されなくてもよい。制御弁も、現像液管理装置Eの内部部品でなくてもよい。制御部3の制御信号により制御されるように制御部3と連絡していれば、現像液管理装置Eの外部に備えられていてもよい。
以上のとおり、本発明の現像液管理装置によれば、現像液の各成分濃度又は各特性値を所定の管理値又は管理範囲内に管理することができる。したがって、本発明の現像液管理装置により、最適な現像性能を維持することができ、所望の線幅や残膜厚を実現することができる。
本発明の現像液管理装置によれば、現像液の各成分濃度が所定の状態に精度よく制御されるので、現像液の現像性能がより一層精度よく一定となるように維持管理できる。したがって、フォトレジストを現像する際の現像速度が一定に安定化し、現像処理による線幅や残膜厚が一定化され、製品品質が向上するとともに、より一層の微細化、及び高集積化の実現に寄与するものと期待される。
本発明の現像液管理装置によれば、現像液が自動で常時最適な現像性能に維持されるため、製品歩留まりを向上させるとともに、現像液の交換作業が不要となり、ランニングコストや廃液コストの低減に寄与するものと期待される。