JP4325603B2 - 自動変速機のパーキングロック機構 - Google Patents

Description

本発明は、自動変速機のパーキングロック機構に関し、特に、パーキングポールの面外方向の傾きを抑制するパーキングポール保持部を有する自動変速機のパーキングロック機構に関する。

自動変速機のパーキングロック機構が従来から知られている。
たとえば、特開２００３−１０６４５３号公報（特許文献１）においては、パーキングポールシャフトを用いてパーキングポールを回動自在に支持した自動変速機のパーキングロック機構が開示されている。

上記のようなパーキングロック機構は、たとえばトランスミッションケースなどのケーシング内に設けられる。
特開２００３−１０６４５３号公報

上記のようなパーキングロック機構では、自動変速機の出力軸に接続されたパーキングギヤにパーキングポールが係合することにより、パーキングロック状態が実現される。ここで、パーキングポールをパーキングギヤに向けて移動させるために、パーキングポールをガイドする摺動部が設けられる。

上記摺動部が小さい場合、パーキングポールの保持精度が低下し、パーキングロック機構の作動不良を招くおそれがある。

上記摺動部をパーキングロック機構のケーシングのみによって構成する場合、パーキングロック機構の作動不良を防止する観点から、パーキングポールを挟む部分をある程度大きくする必要があり、ケーシングの加工範囲が増大する。この結果、加工時間が増大し、工具寿命が短縮される。このように、摺動部をケーシングのみによって構成することで、パーキングポールの保持精度とパーキングロック機構の生産性との両立が困難になる。

本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、パーキングポールの保持精度を確保しながら生産性を向上させた自動変速機のパーキングロック機構を提供することにある。

本発明に係る自動変速機のパーキングロック機構は、ケーシングと、ケーシング内に設けられるパーキングギヤと、パーキングギヤと係合することによってパーキングロック状態を実現するパーキングポールと、パーキングポールの面外方向の傾きを抑制するパーキングポール保持部とを備え、パーキングポール保持部が、少なくとも２つの部材を含む。

上記構成によれば、２つ以上の部材でパーキングポール保持部を構成することにより、パーキングポール保持部を形成するためのケーシングの加工範囲、加工時間を低減することができる。したがって、パーキングポールの保持精度を確保しながら生産性を向上させることができる。

ここで、「パーキングポールの面外方向」とは、パーキングポールの延在方向およびパーキングポールの回動方向に直交する方向を意味する。

上記自動変速機のパーキングロック機構において、パーキングポール保持部は、ケーシングに形成された溝部の側面により形成された部分を含む。そして、パーキングロック機構は、パーキングポールをケーシングに対して回動可能に支持する回動支持部と、回動支持部と離間した位置に設けられ、溝部の長手方向の一部において該溝部の側面の高さを突出させる台座とをさらに備える。そして、台座は、ケーシングとは別の部材により構成されている。
好ましくは、上記自動変速機のパーキングロック機構は、ケーシングに設けられた穴に嵌合されるスリーブをさらに備え、スリーブは、パーキングポールの面外方向に突出する突起部を有し、パーキングポールは、台座および突起部に挟持される。

上記構成によれば、パーキングポールの保持精度を確保しながら、パーキングポールと溝部の側面との摺動抵抗を低減することができる。

本発明によれば、パーキングポールの保持精度を確保しながらパーキングロック機構の生産性を向上させることができる。

以下に、本発明に基づくパーキングロック機構の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。

図１は、本発明の１つの実施の形態に係る自動変速機のパーキングロック機構の構成を示した図である。図１を参照して、パーキングロック機構１は、ケーシング１０（たとえばトランスミッションケースなど）内に設けられたパーキングギヤ２０と、パーキングポール３０と、パーキングロッド４０と、伝達機構５０とを含んで構成される。

パーキングギヤ２０は、車両の動力伝達装置の出力軸に接続され、車両走行時には矢印ＤＲ２０方向に回転する。パーキングギヤ２０とパーキングポール３０とが係合することで、車両の駆動軸と接続された出力軸が固定される。これにより、パーキングロック状態が実現される。

パーキングロッド４０は、伝達機構５０を介して変速状態の系統を選ぶセレクタレバー１００に接続されている。セレクタレバー１００を矢印ＤＲ１００方向に移動させることで、パーキングポジション、リバースポジション、ニュートラルポジションおよび前進走行ポジションが選択される。セレクタレバー１００によりパーキングポジションが選択されると、パーキングロッド４０は矢印ＤＲ４０方向に移動する。これにより、パーキングロッド４０に設けられたカム４１が、パーキングポール３０を矢印ＤＲ３０方向に移動させる。すなわち、パーキングポール３０は、パーキングギヤ２０に向けて押圧される。これにより、パーキングポール３０とパーキングギヤ２０とが係合する。

図２は、図１に示されるパーキングロック機構をさらに詳細に示した図である。図２に示すように、パーキングポール３０の一端側には、回動支持部３１が設けられる。そして、パーキングポール３０は、回動支持部３１によりケーシング１０に対して矢印ＤＲ３０方向に回動可能に支持されている。パーキングポール３０の他端側は、パーキングロッド４０に設けられたカム４１と接触している。カム４１は、スリーブ６０と接触している。スリーブ６０には、図２における紙面の手前側から奥側に向けて突出する突起部６１が設けられている。突起部６１は、パーキングポール３０に接触する。また、スリーブ６０は、押さえ板７０およびボルト８０によりケーシング１０に固定される。

ケーシング１０には、溝部１２および台座１３が設けられる。台座１３は、図２における紙面の奥側から手前側に向けてパーキングポール３０を支持する。一方、スリーブ６０に設けられた突起部６１は、図２における紙面の手前側から奥側に向けてパーキングポール３０を支持する。これにより、パーキングポール３０の矢印ＤＲ４０方向の傾きが抑制される。

図３は、図２におけるIII−III断面図である。図３を参照して、ケーシング１０には、パーキングロッド４０の軸方向（矢印ＤＲ４０方向）に沿うガイド部１１が形成されている。ガイド部１１は、パーキングロック操作時に、カム４１の矢印ＤＲ４０方向の移動をガイドする。これにより、パーキングロッド４０をスムーズに移動させることができる。スリーブ６０は、ケーシング１０に設けられた穴に嵌合される。ここで、スリーブ６０は、ケーシング１０におけるガイド部１１に隣接する位置に設けられる。そして、スリーブ６０は、ガイド部１１に隣接する位置に、傾斜面６２を有する。傾斜面６２は、パーキングロッド４０の軸方向に対して斜めに傾斜する方向に延在する。パーキングロック操作時においては、ガイド部１１上を通過したカム４１が傾斜面６２と摺動することで、カム４１がパーキングポール３０に向かって移動し、パーキングポール３０を押圧する。この結果、パーキングポール３０が矢印ＤＲ３０方向に回動する。そして、パーキングポール３０とパーキングギヤ２０とが係合する。なお、図３に示すように、スリーブ６０の矢印ＤＲ４０方向の動きは、押さえ板７０およびボルト８０により制限されている。

以下では、パーキングポール３０を支持する機構について、より詳細に説明する。
図４，図５は、パーキングロック機構の動作状態を説明する図である。なお、図４は、パーキングポジション以外のポジション（ここでは、リバースポジション）での状態を示し、図５は、パーキングポジションでの状態を示す。

図４に示す状態では、パーキングポール３０の一部は、溝部１２内に収納されている。そして、パーキングポール３０における溝部１２から突出した部分が、台座１３および突起部６１に挟持されている。一方、図５に示す状態では、パーキングポール３０は、溝部１２の外側に位置し、台座１３とスリーブ６０の突起部６１とに挟持される。これにより、パーキングポール３０が溝部１２の外側に位置する場合にも、台座１３および突起部６１により、パーキングポール３０の矢印ＤＲ４０方向の傾きを抑制することができる。なお、パーキングポジションにおいても、パーキングポール３０の一部が溝部１２内に位置するようにしてもよい。

上記構成によれば、溝部１２の側面のみでパーキングポール３０の傾きを抑制する場合と比較して、溝部１２を浅く形成することができる。この結果、ケーシング１０の加工範囲、加工時間を低減することができ、パーキングポール３０の保持精度を確保しながらパーキングロック機構１の生産性を向上させることができる。また、溝部１２を浅くすることで、ケーシング１０を小型化することができるので、パーキングロック機構１の重量低減を図ることもできる。また、台座１３および突起部６１は、パーキングポール３０の長手方向において局所的に存在するものであるので、パーキングポール３０と支持部材との摺動面積が低減され、パーキングポール３０の回動時の摺動抵抗が低減される。

なお、本実施の形態においては、たとえば鉄系の焼結金属によりスリーブ６０を形成している。なお、カム４１は、たとえば、鉄系の材料を切削加工することにより製作され、パーキングポール３０は、たとえば、鉄系の材料を高精度プレス加工することにより製作される。

上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る自動変速機のパーキングロック機構１は、ケーシング１０と、ケーシング１０内に設けられるパーキングギヤ２０と、パーキングギヤ２０と係合することによってパーキングロック状態を実現するパーキングポール３０と、パーキングポール３０の面外方向（矢印ＤＲ４０方向）の傾きを抑制する「パーキングポール保持部」としての溝部１２、台座１３および突起部６１とを備える。溝部１２は、ケーシング１０に形成される。溝部１２の側面は、「パーキングポール保持部」の「第１部分」を構成する。また、台座１３および突起部６１は、ケーシング１０以外の別部材（たとえば、スリーブ６０）により構成され、「パーキングポール保持部」の「第２部分」を構成する。

上記構成によれば、ケーシング１０と別部材とで「パーキングポール保持部」を構成することにより、「パーキングポール保持部」を形成するためのケーシング１０の加工範囲、加工時間を低減することができる。したがって、パーキングポール３０の保持精度を確保しながら生産性を向上させることができる。

なお、台座１３は、典型的には、ケーシング１０とは別の部材により構成される。

パーキングロック機構１は、パーキングポール３０をケーシング１０に対して回動可能に支持する回動支持部３１をさらに備える。台座１３は、回動支持部３１と離間した位置に設けられ、溝部１２の長手方向の一部においてその側面の高さを突出させる。

上記構成によれば、パーキングポール３０の保持精度を確保しながら、パーキングポール３０と溝部１２の側面との摺動抵抗を低減することができる。

以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。

本発明の１つの実施の形態に係る自動変速機のパーキングロック機構の構成を示した図である。 図１に示されるパーキングロック機構をさらに詳細に示した図である。 図２におけるIII−III断面図である。 パーキングロック機構の動作状態を説明する図（その１）である。 パーキングロック機構の動作状態を説明する図（その２）である。

符号の説明

１ パーキングロック機構、１０ ケーシング、１１ ガイド部、１２ 溝部、１３ 台座、２０ パーキングギヤ、３０ パーキングポール、３１ 回動支持部、４０ パーキングロッド、４１ カム、５０ 伝達機構、６０ スリーブ、６１ 突起部、６２ 傾斜面、７０ 押さえ板、８０ ボルト、１００ セレクタレバー。

Claims (2)

1. ケーシングと、
   前記ケーシング内に設けられるパーキングギヤと、
   前記パーキングギヤと係合することによってパーキングロック状態を実現するパーキングポールと、
   前記パーキングポールの面外方向の傾きを抑制するパーキングポール保持部とを備え、
   前記パーキングポール保持部が、少なくとも２つの部材を含み、かつ、前記パーキングポール保持部は、前記ケーシングに形成された溝部の側面により形成された部分を含み、
   前記パーキングポールを前記ケーシングに対して回動可能に支持する回動支持部と、
   前記回動支持部と離間した位置に設けられ、前記溝部の長手方向の一部において該溝部の側面の高さを突出させる台座とをさらに備え、
   前記台座は、前記ケーシングとは別の部材により構成される、自動変速機のパーキングロック機構。
2. 前記ケーシングに設けられた穴に嵌合されるスリーブをさらに備え、
   前記スリーブは、前記パーキングポールの面外方向に突出する突起部を有し、
   前記パーキングポールは、前記台座および前記突起部に挟持される、請求項１に記載の自動変速機のパーキングロック機構。

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