JP3354101B2 - 熱安定性の高い乳及び乳含有飲食品 - Google Patents

熱安定性の高い乳及び乳含有飲食品

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JP3354101B2 JP19997498A JP19997498A JP3354101B2 JP 3354101 B2 JP3354101 B2 JP 3354101B2 JP 19997498 A JP19997498 A JP 19997498A JP 19997498 A JP19997498 A JP 19997498A JP 3354101 B2 JP3354101 B2 JP 3354101B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱安定性を付与し
た乳に関する。また、本発明は、熱安定性を付与した乳
含有飲食品に関する。本発明の有機酸モノグリセリドを
配合して熱安定性を付与した乳及び乳含有飲食品は、レ
トルト殺菌のような高温殺菌によっても乳中の乳蛋白質
の凝集・沈澱が生じないという特徴を有する。なお、本
発明における乳含有飲食品とは、飲用乳や乳飲料、発酵
乳、練乳,プリン等、乳を含有する飲食品を指す。
【0002】
【従来の技術】乳や乳含有飲食品を殺菌する目的で加熱
する場合、特にレトルト殺菌(例えば、 120℃、20分)
を行う場合、原料中の乳蛋白質の凝集・沈澱の生成が問
題となる。加熱によって乳蛋白質の凝集・沈澱が生成す
ると、乳や乳含有飲食品の食感、風味、物性、組織等に
悪い影響を与えるため、熱安定性を向上させて、乳蛋白
質の凝集・沈澱の生成を抑制する必要がある。乳蛋白質
の沈澱の原因としては、熱変性を起こした乳清蛋白質、
特にβ−ラクトグロブリンがカゼインと疎水結合して複
合体を形成し、この複合体がさらに凝集するためである
と考えられている。そこで、従来は沈澱の生成を抑制す
るために、pHの調整、有機酸塩の添加、界面活性剤の添
加等の処理を行っていた。また、実際の乳含有飲食品の
製造においては、乳化剤や安定剤を添加することによ
り、乳蛋白質の沈澱の生成を抑制していた。
【0003】従来、乳の熱安定性を向上させる方法とし
ては、pHをアルカリ側に調整する方法(J. Dairy Sci.,
vol.44, pp.1405-1413, 1961) 、コロイド状リン酸カル
シウムを除去する方法(J. Dairy Res., vol.25, pp.467
-474, 1958; J. Dairy Res.,vol.27, pp.9-17, 1960;
J. Dairy Sci., vol.45, pp.1305-1311, 1962)、クエン
酸塩又はリン酸塩を添加する方法(J. Soc. Dairy Techn
ol., vol.36, pp.112-117, 1983)、κ−カゼインを添加
する方法(J. Dairy Res., vol.45, pp.37-45,1978) 、
αs1−カゼイン及びβ−カゼインを添加する方法(Neth.
Milk Dairy J., vol.31, pp.342-351, 1977; J. Dairy
Res., vol.46, pp.351-355, 1979)、尿素を添加する方
法(J. Dairy Res., vol.44, pp.249-257, 1977) 、ドデ
シル硫酸ナトリウムを添加する方法(J. Dairy Res., vo
l.45, pp.159-172, 1978) 、ホルムアルデヒドを添加す
る方法(J. Dairy Sci., vol.37, pp.825-829, 1954) 、
濃縮乳に対してκ−カラギーナンを添加する方法(Irish
J. Food Sci. Technol.,vol.6, pp.183-188, 1982)等
が知られている。
【0004】しかし、上記の方法に関しては、(1) pHを
調整すると、風味が著しく悪くなってしまうという問題
がある。特に、pHをアルカリ側に調整した場合は、高温
殺菌(例えば、 140℃、3秒間)を行うと、リジノアラ
ニンが生成し易くなり、栄養の面で問題となる。(2) コ
ロイド状リン酸カルシウムを除去する場合は、工程が煩
雑になるという問題がある。また、コロイド状リン酸カ
ルシウムを除去し過ぎると逆に熱安定性がなくなってし
まう。(3) クエン酸塩やリン酸塩を添加すると風味が著
しく悪くなり、食品用として不向きであるという問題が
ある。(4) κ−カゼインを添加する場合、又はαs1−カ
ゼイン及びβ−カゼインを添加する場合では、カゼイン
の精製が煩雑になるという問題があり、また、風味が悪
くなるという問題もある。(5) 尿素、界面活性剤、ホル
ムアルデヒド等は、食品用として利用することができな
い物質であるという問題がある。
【0005】また、乳の処理工程を変更することによっ
て熱安定性を向上させる方法として、乳を予熱処理する
方法(J. Dairy Sci., vol.45, pp.1305-1311, 1962) 等
が知られている。そして乳飲料中の乳蛋白質の凝集・沈
澱を防止する実用的な手段として、牛乳及びコーヒー飲
料を含む調合液を予め高温短時間で殺菌し、生じた沈澱
物を遠心分離して除去してから再度殺菌する方法 (特開
平3- 67548号公報) 、トランスグルタミナーゼを作用さ
せてコーヒー飲料中の乳蛋白質の凝集分離を防止する方
法 (特開平5-260893号公報) 、コーヒー抽出液に還元性
単糖及びショ糖を含有する糖分を添加した後、牛乳を添
加し、レトルト殺菌する方法 (特開平9-205990号公報)
、金属プロテアーゼやセリンプロテアーゼを牛乳やコ
ーヒー抽出液に作用させる方法 (特開平9-271323号公
報) 、蛋白質含量の少ない生クリームを使用し、乳化剤
としてショ糖脂肪酸エステルと微結晶セルロースを用い
る方法(特開平6-245703号公報) 等が提案されている。
しかし、2度の加熱を行ったり、酵素処理を行った場
合、乳本来の風味が失われてしまうという問題がある。
なお、生クリームを用いる場合では、牛乳に比べ乳蛋白
質含量が低く、乳化により見かけ上の乳蛋白質の安定性
が付与されているが、乳蛋白質濃度が増加した場合や高
温で保持した場合には乳蛋白質の凝集分離を防ぐことは
困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、有機酸モノ
グリセリドを添加して熱安定性を付与した乳を提供する
ことを課題とする。また、本発明は、有機酸モノグリセ
リドを添加して熱安定性を付与した乳含有飲食品を提供
することを課題とする。本発明における有機酸モノグリ
セリドとしては、有機酸モノグリセリドを構成する有機
酸がコハク酸、クエン酸、酢酸又はジアセチル酒石酸の
いずれかである有機酸モノグリセリドを用いることが好
ましい。また、本発明における有機酸モノグリセリドを
構成する脂肪酸の種類は特に限定されず、例えばステア
リン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パルミチン酸等の飽
和又は不飽和の脂肪酸を持つモノグリセリドを用いるこ
とができるが、好ましくはステアリン酸である。このよ
うな有機酸モノグリセリドの例として、例えばコハク酸
モノステアリン酸モノグリセリド、クエン酸モノステア
リン酸モノグリセリド、酢酸モノステアリン酸モノグリ
セリド又はジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグリ
セリド等が挙げられる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、乳及び乳
含有飲食品に熱安定性を付与する方法について、鋭意研
究を進めていたところ、有機酸モノグリセリドを添加す
ることによって熱安定性を付与できることを見出し、本
発明を完成するに至った。本発明では、有機酸モノグリ
セリドを添加することで乳中の乳蛋白質の凝集・沈澱を
抑制できる。即ち、有機酸モノグリセリドを添加するこ
とで熱安定性を付与することができる。従って、本発明
では、乳に有機酸モノグリセリドを添加することによっ
て、液状乳、粉乳、粉乳を水で溶解した還元乳等、各種
の乳に熱安定性を付与することができる。また、このよ
うにして熱安定性を付与された乳を原料として乳含有飲
食品を製造することによって、乳含有飲食品に熱安定性
を付与することもできる。さらに、本発明では、添加さ
れた有機酸モノグリセリドが乳中の乳蛋白質と共存する
ことによって乳蛋白質の凝集・沈澱が抑制できるので、
別の実施形態として、乳含有飲食品の製造工程中に有機
酸モノグリセリドを添加することで、直接、乳含有飲食
品に熱安定性を付与することもできる。以下の試験例で
は、有機酸モノグリセリドの添加による乳の熱安定性の
向上について検討を行った。
【0008】
【試験例1】コハク酸モノステアリン酸モノグリセリド
〔サンソフト 681NU:商品名(太陽化学製)〕を脱脂
乳に最終濃度 0.1重量%となるように添加し、加熱によ
る沈澱の生成を観察した。すなわち、決められた添加率
でコハク酸モノステアリン酸モノグリセリドを脱脂乳に
添加し、混合した後、70℃で15分間加熱してウルトラデ
ィスパーサーで分散処理(8,000rpm、2分間)を行っ
た。次に、この脱脂乳1mlを2ml容ガラスアンプルに分
注して封入し、 130℃のオイルバスに浸漬して、3分お
きに揺動させ、凝固フラグメントの生成する時間(熱凝
固時間)を測定し、コハク酸モノステアリン酸モノグリ
セリドの沈澱生成抑制効果について評価した。 対照と
してコハク酸モノステアリン酸モノグリセリド無添加の
脱脂乳についても、同様にして熱凝固時間を測定した。
結果を表1に示す。なお、コハク酸モノステアリン酸モ
ノグリセリド無添加脱脂乳の熱凝固時間を100とし、熱
凝固時間を相対的な値で表した。
【0009】
【表1】 ─────────────────────────────── 乳化剤 熱凝固時間 ─────────────────────────────── コハク酸モノステアリン酸モノグリセリド無添加 100 コハク酸モノステアリン酸モノグリセリド添加 126 ───────────────────────────────
【0010】コハク酸モノステアリン酸モノグリセリド
〔サンソフト 681NU: 商品名(太陽化学製)〕を添加
することにより脱脂乳の熱凝固時間が長くなっており、
コハク酸モノステアリン酸モノグリセリドが乳中の乳蛋
白質の沈澱生成抑制効果を有することが判った。
【0011】
【試験例2】クエン酸モノステアリン酸モノグリセリド
〔サンソフト 621B:商品名(太陽化学製)〕又は酢酸
モノステアリン酸モノグリセリド〔ポエム G508 :商品
名(太陽化学製)〕を、最終濃度 0.1重量%となるよう
に、脱脂粉乳(雪印乳業製)を超純水で溶解して得た固
形率 8.8%の還元脱脂乳に添加し、加熱による沈澱の生
成を観察した。すなわち、クエン酸モノステアリン酸モ
ノグリセリド又は酢酸モノステアリン酸モノグリセリド
を還元脱脂乳に添加し、混合した後、70℃で15分間加熱
してウルトラディスパーサーで分散処理(8,000rpm、2
分間)を行った。次に、この還元脱脂乳1mlを2ml容ガ
ラスアンプルに分注して封入し、 130℃のオイルバスに
浸漬して、3分おきに揺動させ、凝固フラグメントの生
成する時間(熱凝固時間)を測定し、クエン酸モノステ
アリン酸モノグリセリド及び酢酸モノステアリン酸モノ
グリセリドの沈澱生成抑制効果について評価した。対照
として有機酸モノグリセリド無添加の還元脱脂乳につい
ても、同様にして熱凝固時間を測定した。結果を表2に
示す。なお、有機酸モノグリセリド無添加の還元脱脂乳
の熱凝固時間を 100とし、熱凝固時間を相対的な値で表
した。
【0012】
【表2】 ─────────────────────────────── 乳化剤 熱凝固時間 ─────────────────────────────── 有機酸モノグリセリド無添加 100 クエン酸モノステアリン酸モノグリセリド添加 117 酢酸モノステアリン酸モノグリセリド添加 116 ─────────────────────────────
【0013】クエン酸モノステアリン酸モノグリセリド
〔サンソフト 621B:商品名(太陽化学製)〕及び酢酸
モノステアリン酸モノグリセリド〔ポエム G508 :商品
名(太陽化学製)〕を添加することにより還元脱脂乳の
熱凝固時間が長くなっており、クエン酸モノステアリン
酸モノグリセリド及び酢酸モノステアリン酸モノグリセ
リドは乳中の乳蛋白質の沈澱生成抑制効果を有すること
が判った。
【0014】
【試験例3】還元脱脂乳中のジアセチル酒石酸モノステ
アリン酸モノグリセリド〔サンソフト 641D;商品名
(太陽化学製)〕の添加濃度を0.01〜0.5 重量%にした
ときの加熱による沈澱生成状態を観察した。ジアセチル
酒石酸モノステアリン酸モノグリセリド〔サンソフト 6
41D:商品名(太陽化学製)〕を脱脂粉乳(雪印乳業
製)に混合し、超純水で溶解し還元脱脂乳を調製した。
なお、還元脱脂乳中の固形率は 8.8%とした。この還元
脱脂乳を70℃で15分間加温してウルトラディスパーサー
で分散処理(13,500rpm、2分間)を行った。次に、この
還元脱脂乳1mlを2ml容ガラスアンプルに分注して封入
し、 130℃のオイルバスに浸漬して、3分おきに揺動さ
せ、凝固フラグメントの生成する時間(熱凝固時間)を
測定し、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグリセ
リドの沈澱生成抑制効果について調べた。結果を表3に
示す。なお、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグ
リセリド無添加の還元脱脂乳の熱凝固時間を 100とし、
熱凝固時間を相対的な値で表した。
【0015】
【表3】
【0016】ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグ
リセリド〔サンソフト 641D:商品名(太陽化学製)〕
の添加率が0.01〜 0.3重量%の範囲で、無添加に比べて
還元脱脂乳の熱凝固時間が長くなっており、ジアセチル
酒石酸モノステアリン酸モノグリセリドが乳中の乳蛋白
質の沈澱生成抑制効果を有することが判った。
【0017】
【試験例4】還元脱脂乳中のクエン酸モノステアリン酸
モノグリセリド〔サンソフト 621B:商品名(太陽化学
製)〕の添加濃度を0.01〜0.5 重量%にしたときの加熱
による沈澱生成状態を観察した。クエン酸モノステアリ
ン酸モノグリセリドを脱脂粉乳(雪印乳業製)に混合
し、超純水で溶解し還元脱脂乳を調製した。なお、還元
脱脂乳中の固形率は 8.8%とした。この還元脱脂乳を70
℃で15分間加温してウルトラディスパーサーで分散処理
(13,500rpm、2分間)を行った。次に、この還元脱脂乳
1mlを2ml容ガラスアンプルに分注して封入し、 130℃
のオイルバスに浸漬して、3分おきに揺動させ、凝固フ
ラグメントの生成する時間(熱凝固時間)を測定し、ク
エン酸モノステアリン酸モノグリセリドの沈澱生成抑制
効果について調べた。同時に比較例として、クエン酸モ
ノステアリン酸モノグリセリドの代わりにショ糖脂肪酸
エステル〔サンソフト SE11:商品名(太陽化学
製)〕を添加したものを比較例1、モノグリセリド〔サ
ンソフト No.8000:商品名(太陽化学製)〕を添加
したものを比較例2、プロピレングリコール脂肪酸エス
テル〔サンソフト 25CD:商品名(太陽化学製)〕を
添加したものを比較例3とし、同様にして沈澱生成抑制
効果を調べた。これらの乳化剤を添加した還元脱脂乳に
おいて、最も熱安定性が高かったときの添加濃度と沈澱
生成抑制効果を図1に示す。なお、図1におけるΔ熱凝
固時間とは、乳化剤添加の還元脱脂乳の熱凝固時間と乳
化剤無添加の還元脱脂乳の熱凝固時間との差であり、乳
化剤無添加の還元脱脂乳に比較して、どれだけ熱凝固時
間が長くなったかを示したものである。いずれの乳化剤
においても添加濃度 0.1重量%のときに、最も沈澱生成
抑制効果が高かった。また、それぞれの乳化剤を比較す
ると、クエン酸モノステアリン酸モノグリセリドが他の
乳化剤に比べ最も△熱凝固時間が長くなっており、クエ
ン酸モノステアリン酸モノグリセリドは、ショ糖脂肪酸
エステル、モノグリセリド及びプロピレングリコール脂
肪酸エステルに比べて高い沈澱生成抑制効果を有するこ
とが判った。以上のように有機酸モノグリセリドは、乳
中の乳蛋白質の加熱による凝集・沈澱生成に対する優れ
た抑制効果を有していることが判る。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明では、有機酸モノグリセリ
ドを乳に添加することにより、加熱による乳中の乳蛋白
質の凝集・沈澱の生成を抑制することができる。すなわ
ち、本発明では、有機酸モノグリセリドを乳に添加する
ことにより、乳に熱安定性を付与することができる。な
お、本発明における乳の種類は特に限定されず、生乳、
脱脂乳、脱脂粉乳、脱脂粉乳を水で溶解した還元脱脂乳
等、各種の乳の熱安定性を向上させることができる。ま
た、本発明では、このようにして得た熱安定性を付与さ
れた乳を原料に用いて乳含有飲食品を製造することによ
り、結果的に熱安定性の付与された乳含有飲食品を得る
ことができる。さらに、本発明では、有機酸モノグリセ
リドを乳含有飲食品の製造工程中で添加することによ
り、加熱による乳含有飲食品中の乳蛋白質の凝集・沈澱
生成を抑制することができる。すなわち、本発明では、
有機酸モノグリセリドを乳含有飲食品の製造工程中で添
加することにより、乳含有飲食品に熱安定性を付与する
ことができる。
【0019】本発明において、有機酸モノグリセリドを
添加して乳に熱安定性を付与するためには、有機酸モノ
グリセリドを乳に対して0.01〜 0.3重量%の範囲で添加
することが好ましい。有機酸モノグリセリドの添加量
が、0.01重量%未満では熱安定性を付与する効果が得ら
れず、また、有機酸モノグリセリドの添加量が0.3 重量
%を越えると、乳の熱安定性が悪くなり、また、乳本来
の風味が失なわれてしまう。有機酸モノグリセリドを乳
含有飲食品に添加して熱安定性を付与する場合も、同様
の理由から、有機酸モノグリセリドを乳含有飲食品中の
乳に対して0.01〜0.3 重量%の範囲で添加するのが好ま
しい。有機酸モノグリセリドを乳に添加する方法として
は、液状乳に有機酸モノグリセリドを添加する方法や、
粉乳に有機酸モノグリセリドを添加し、水等で溶解する
方法、粉乳を水等で溶解して還元乳とし、有機酸モノグ
リセリドを添加する方法等がある。有機酸モノグリセリ
ドを乳に添加した後は、撹拌して混合するだけでも良い
が、70℃で15分間加熱してから均質処理を行うことで、
さらに熱安定性を向上させることができる。なお、均質
の処理条件としては100 〜200 kg/cm2が好ましい。有機
酸モノグリセリドを乳含有飲食品に添加する方法として
は、このようにして熱安定性を付与された乳を原料に用
いて乳含有飲食品を製造する方法や、乳含有飲食品の製
造工程中で有機酸モノグリセリドを添加する方法等があ
る。
【0020】以下、実施例を示し、本発明をさらに詳細
に説明する。
【実施例1】ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグ
リセリド〔サンソフト 641D:商品名(太陽化学製)〕
0.1部と生乳99.9部を混合し、60℃まで加温した後、均
質処理(100kg/cm2)を行い、缶容器に充填してレトルト
殺菌を行った。なお、レトルト殺菌の条件は、 120℃、
20分間、F(殺菌値)=10であった。殺菌後、20℃以下
に冷却し、熱安定性を向上させた缶牛乳を製造した。こ
の缶牛乳について、4℃又は55℃で2週間保存し、保存
後の乳蛋白質の沈澱生成状態を観察した。また、対照品
1として、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノグリ
セリドを 0.5重量%添加した缶牛乳を同様に製造し、対
照品2として、ジアセチル酒石酸モノステアリン酸モノ
グリセリド無添加の缶牛乳を同様に製造し、沈澱生成状
態を比較した。結果を表4に示す。
【0021】
【表4】 ──────────────────────────── 4℃保存 55℃保存 ──────────────────────────── 本発明品(0.1 重量%添加) − − 対照品1(0.5 重量%添加) − + 対照品2(無添加) ± ++ ──────────────────────────── − :沈澱の生成なし ± :沈澱の生成はないが,ざらつきが認められる + :やや沈澱の生成あり ++:沈澱の生成あり
【0022】対照品では、4℃保存では殆ど沈澱の生成
は認められなかったが、55℃保存では沈澱の生成が認め
られた。これに対して、本発明品では、保存温度に関わ
らず沈澱の生成は認められなかった。
【0023】
【比較例1】実施例1と同様の製造法で、乳化剤のみを
ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド又はプロピレン
グリコール脂肪酸エステルに代え、各乳化剤を 0.1重量
%含有する缶牛乳を製造した。これらの缶牛乳を55℃で
2週間保存した後、沈澱の生成状態を目視により観察
し、同時に官能試験による風味の評価を行った。各缶牛
乳を比較した結果を表5に示す。なお、表5の本発明品
とは、実施例1の缶牛乳であり、比較品1はショ糖脂肪
酸エステルを用いた缶牛乳、比較品2はモノグリセリド
を用いた缶牛乳、比較品3はプロピレングリコール脂肪
酸エステルを用いた缶牛乳である。官能試験では、20名
の専門パネラーに試飲してもらい、大いに好ましいを3
点、どちらでもないを0点、大いに好ましくないを−3
点として採点し、その平均値を示した。本発明品では、
55℃で2週間保存しても沈澱の生成は認められず、官能
評価においても他の比較例より高い評価を得た。
【0024】
【表5】 ────────────────────────── 殺菌直後 55℃、2週間保存後 ──────────────────── 状態 官能 状態 官能 ────────────────────────── 本発明品 − 2.2 − 1.8 比較品1 ± 1.2 + -1.8 比較品2 ± 0.7 + -2.7 比較品3 ± -1.1 + -3.0 ────────────────────────── −:沈澱なし ±:沈澱は見られないが,ザラツキ感がある +:沈澱あり
【0025】
【実施例2】グラニュー糖15重量%、脱脂粉乳(雪印乳
業製)9重量%、κ−カラギーナン(三栄源エフエフア
イ製) 0.6重量%、コハク酸モノステアリン酸モノグリ
セリド〔サンソフト 681NU:商品名(太陽化学製)〕
0.1重量%を水に混合し、60℃まで加温して溶解した。
これに植物性脂肪10重量%を添加し、 100kg/cm2で均質
処理を行った後、所定の容器に充填し、 120℃、25分間
のレトルト殺菌を行い、冷却してレトルトプリンを製造
した。このレトルトプリンについて、組織の凝集を観察
した。また、対照品としてコハク酸モノステアリン酸モ
ノグリセリド無添加のレトルトプリンを同様に製造し、
組織の凝集の状態を比較した。結果を表6に示す。
【0026】
【表6】────────── 本発明品 − 対照品 + ────────── −:凝集物なし +:凝集物あり
【0027】対照品では、凝集物の生成が認められたの
に対して、本発明品では、凝集物の生成は認められず、
組織・風味共に良好であった。
【0028】
【発明の効果】本発明では、有機酸モノグリセリドを添
加することにより、レトルト殺菌等の高温加熱によって
も、また、高温で長時間加熱保持しても乳蛋白質の凝集
・沈澱が生じないという特徴を乳、乳製品又は乳飲料な
どの乳含有飲食品に付与することができる。また、有機
酸モノグリセリドの添加量は 0.3重量%以下で十分であ
るため、乳含有飲食品本来の風味に影響を及ぼすことが
ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験例4における各乳化剤の沈澱生成抑制効
果を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−16959(JP,A) 特開 平10−165151(JP,A) 特開 平8−116873(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/00 - 9/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.01〜0.3重量%の有機酸モノグ
    リセリドのみを添加することによって、加熱にともなう
    凝固を抑制したことを特徴とする熱安定性を付与した
    乳。
  2. 【請求項2】 有機酸モノグリセリドの有機酸が、コハ
    ク酸、クエン酸、酢酸又はジアセチル酒石酸のいずれか
    であることを特徴とする請求項1記載の乳。
  3. 【請求項3】 有機酸モノグリセリドの脂肪酸が、ステ
    アリン酸であることを特徴とする請求項1又は2記載の
    乳。
  4. 【請求項4】 0.01〜0.3重量%の有機酸モノグ
    リセリドを添加して熱安定性を付与した請求項1乃至3
    のいずれかに記載の乳。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の熱安
    定性を付与した乳含有飲食品。
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