JP4947751B2 - カルシウム強化米飯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯に関する。本発明のカルシウム強化米飯は、風味及び食感が良好であるという特徴を有する。
【0002】
【従来の技術】
平成9年度の国民栄養調査によれば、日本人の一人当りのカルシウム所要量は600 mgであるのに対して、摂取量は約580 mgと不足している。カルシウムの慢性的な不足は、骨粗鬆症あるいは高血圧等の循環器系疾患を招くことから、他の食品に比べカルシウムを多く含有する牛乳、チーズ等の乳製品やカルシウムを強化した飲料、菓子、パン等の飲食品が注目されている。
米は日本人の主食であり、カルシウムを強化した米飯を提供することができれば、必要量のカルシウムを摂取することも容易となる。そこで米を炊飯する際に添加するだけで、カルシウムを強化した米飯を調理することのできるグルコン酸カルシウムや卵殻カルシウムを含有するカルシウム剤が市販されているが、これらのカルシウム剤を規定量添加して米を炊飯しても、米飯250 gでカルシウム80mgしか摂取できない。
一方、チーズホエーを脱塩、脱乳糖したものにスラリー状のミルクカルシウムを添加し、濃縮、乾燥して得られる乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材が知られている。この乳由来のカルシウムは、他のカルシウム剤と比べて体内での吸収効率が良いと言われており、またこの乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材中にはカルシウムの他に、タンパク質、ミネラル等も含有されており、栄養的にも好ましいものである。そこで、米を炊飯する際に、この乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材を添加して、風味の良好なカルシウム強化米飯を提供することができるが、炊飯時に乳素材に含有する乳タンパク質がカルシウムと反応して凝集し、米飯にざらつきが感じられるようになるという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、風味及び食感の良好なカルシウム強化米飯を提供するべく鋭意研究を進めたところ、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材を添加して米を炊飯する際に、尿素を添加することにより、乳素材に含有する乳タンパク質の凝集による米飯のざらつきが抑制され、ざらつきを感じないカルシウム強化米飯が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。したがって、本発明は、風味及び食感の良好な乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、米飯100 重量%に対して、乳由来のカルシウムを0.005 〜0.6 重量%及び尿素を0.013 〜0.33重量%含有するように、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材及び尿素を米に添加して炊飯することで、風味が良好でざらつきを感じない、乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯を提供することができる。
本発明において用いることのできる乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材としては、乳由来のカルシウムを少なくとも0.5 〜6 重量%含有するものを用いることが好ましく、チーズホエーを脱塩、脱乳糖したものにスラリー状のミルクカルシウムを添加し、濃縮、乾燥して得られる乳素材が知られており、例えば、全固形96.4%、タンパク質27.1%、脂肪2%、カルシウム3.3 %、ナトリウム0.66%、カリウム1.5 %、尿素0.3 %の組成からなるDOMO社のDOMOVICTUS 300MCA を用いることが好ましい。また、牛乳から脂肪を除去した脱脂乳を濃縮、乾燥した脱脂粉乳や、チーズ又はカゼイン製造時に生成するホエーを噴霧乾燥したホエー粉を用いてもよい。
【0005】
本発明では、米飯100 重量%に対して、乳由来のカルシウムが0.005 〜0.6 重量%含有するように、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材を米に添加することが好ましい。乳由来のカルシウムの含有量が0.005 重量%未満では、カルシウム強化米飯として十分なカルシウムを含有させることができず、また乳由来のカルシウムの含有量が0.6 重量%を超えると、風味が悪くなるため好ましくない。
また、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材が含有している乳タンパク質の凝集によるざらつきを抑制するために添加する尿素としては、例えば、化成品の尿素、ナノフィルトレーション(NF)膜や逆浸透(RO)膜を用いて乳や乳素材等の尿素を含む天然物から調製される尿素含有組成物(特願平11-82721号、特願平11-82768号)等を挙げることができる。
本発明では、米飯100 重量%に対して、尿素が0.013 〜0.33重量%含有するように、尿素を米に添加することが好ましい。尿素の含有量が0.013 重量%未満では、炊飯時にタンパク質の凝集が生じ、食感にざらつきが感じられることがあるため好ましくなく、また、尿素の含有量が0.33重量%を超えても得られる効果は変わらない。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯とは、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材及び尿素を米に添加して炊飯した米飯、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材及び尿素を炊飯水として添加して炊飯した米飯、又はこの米飯を調味したり、炒めたりして加工した米飯加工品、あるいは、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材及び尿素とともに、調味料や副原料等を米に添加して炊飯した米飯加工品をも含み、米飯100 重量%に対して、乳由来のカルシウムを0.005 〜0.6 重量%及び尿素を0.013 〜0.33重量%含有するものである。
なお、本発明に用いるカルシウムを高濃度に含有する乳素材は、カルシウムの他に、タンパク質、脂肪、ナトリウム、カリウム等を含有するので、本発明のカルシウム強化米飯は、これらの成分を含有している。
【0007】
以下、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材、尿素及び油脂を含む調味液を米に添加して炊飯したカルシウム強化米飯に、具材を加えて混合することにより製造される米飯加工品を例示して、本発明を詳しく説明する。
米飯加工品は、調味液に乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材、尿素及び油脂を加え、この調味液を用いて米を炊飯し、炊飯した米飯に具材等の副原料を加えて混合することにより製造することができる。
調味液とは、例えば、中華スープ、コンソメスープ、ブイヨン等をベースとして調製されるものであり、食塩、醤油、ケチャップ、ソース等の調味料、カレー粉、唐辛子、コショウ等の香辛料を添加したもの等を挙げることができる。この調味液は、米飯100 重量%に対して、0.2 〜3.0 重量%含有するように添加することが好ましく、調味料は、米飯100 重量%に対して、0.1 〜2.0 重量%含有するように添加することが好ましく、香辛料は、米飯100 重量%に対して、0.05〜0.5 重量%含有するように添加することが好ましい。
【0008】
具材は、例えば、海老、豚肉、鶏肉、玉ねぎ、人参、椎茸等を適当な大きさに細切りしたものを用いればよく、米飯100 重量%に対して、5 〜30重量%含有するように添加することが好ましい。
油脂としては、例えば、ラード、ヘッド等の動物性油脂、サラダ油、ゴマ油、オリーブ油等の植物性油脂を挙げることができ、米飯100 重量%に対して、0.5 〜10重量%含有するように添加することが好ましい。
さらに、本発明のカルシウム強化米飯は、米飯が固まりのまま凍結しないように撹拌しながら凍結するバラ化凍結を−30℃で行って、凍結させて冷凍カルシウム強化米飯とすることもできる。
【0009】
【実施例】
参考例1
26.0mg/100 mlの割合で尿素を含んでいる脱脂乳50lについて、NF膜(Desal-5 ;Desalination 社製)処理を行い、3倍に濃縮した。なお、膜処理は、操作温度15℃、圧力1.2 MPaの条件で行った。このNF膜処理により透過液を分離、回収した後、乳糖を結晶化させて分離し、この乳糖母液を凍結乾燥して、乳由来の尿素含有組成物粉末835 gを得た。
この乳由来の尿素含有組成物粉末の成分組成を表1に示す。なお、この粉末中の尿素含有量は5.4 重量%であった。
【0010】
【表1】
【0011】
実施例1
(1)調味液の調製
熱湯410 gに、ブイヨン8g、食塩4gを溶解し、室温まで冷却した後、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材(DOMOVICTUS 300MCA )40g、尿素1.35gを添加し、TKホモミキサーを用いて7000rpmで 10 分間撹拌した。この溶液に、サラダ油12g、カレー粉8g及びトマトケチャップ5gを添加して混合し、調味液を調製した。
(2)冷凍米飯加工品の調製
米320 gを洗米し、60分間水に浸漬させた後、水気をよくきってから(1)で調製した調味液を添加し、家庭用IHジャー炊飯器(SR-IHYB18 型、松下電器産業社製)を用いて炊飯し、米飯を得た。この米飯に、サラダ油12gで炒めた海老60g、鶏肉50g、玉ねぎ30g、人参25g及びグリンピース15gを加え、均一に混ざるよう混合して米飯加工品を得た。
得られた米飯加工品を−35℃で急速バラ化凍結させ、冷凍米飯加工品(本発明品1)を製造した。本発明品1のカルシウム含有量及び尿素含有量を表2に示す。
【0012】
実施例2
(1)調味液の調製
熱湯385 gに、ブイヨン8 g、食塩4 gを溶解し、室温まで冷却した後、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材(DOMOVICTUS 300MCA )40g、参考例1で得られた尿素含有組成物25gを添加し、TKホモミキサーを用いて7000rpmで 10 分間撹拌した。この溶液に、サラダ油12g、カレー粉8 g及びトマトケチャップ5 gを添加して混合し、調味液を調製した。
(2)冷凍米飯加工品の調製
前記(1)の調味液を添加する以外は実施例1の(2)と同様にして、冷凍米飯加工品(本発明品2)を製造した。本発明品2のカルシウム含有量及び尿素含有量を表2に示す。
【0013】
比較例1
(1)調味液の調製
熱湯410 gに、ブイヨン8g、食塩4gを溶解し、室温まで冷却した後、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材(DOMOVICTUS 300MCA )40gを添加し、TKホモミキサーを用いて7000rpmで10分撹拌した。この溶液に、サラダ油12g、カレー粉8g及びトマトケチャップ5gを添加して混合し、調味液を調製した。
(2)冷凍米飯加工品の調製
前記(1)の調味液を添加する以外は実施例1の(2)と同様にして、冷凍米飯加工品(比較品1)を製造した。比較品1のカルシウム含有量及び尿素含有量を表2に示す。
【0014】
比較例2
(1)調味液の調製
熱湯410 gに、ブイヨン8g、食塩4gを溶解し、室温まで冷却した後、リン酸三カルシウム1.32gを添加して混合した。この溶液に、サラダ油12g、カレー粉8g及びトマトケチャップ5gを添加して混合し、調味液を調製した。
(2)冷凍米飯加工品の調製
前記(1)の調味液を添加する以外は実施例1の(2)と同様にして、冷凍米飯加工品(比較品2)を製造した。比較品2のカルシウム含有量及び尿素含有量を表2に示す。
【0015】
【表2】
なお、カルシウム含有量は、具材のカルシウム含有量を考慮していない。
【0016】
試験例1
本発明品1〜2及び比較品1〜2について官能評価を行った。
官能評価は、各試料を250 gずつ平皿に盛り、500Wの電子レンジ(NE-AB80 、松下電器産業社製)で5分間加熱調理し、これを熟練パネラー10名に食してもらい、風味及び食感(特に、ざらつき)について、以下に示す基準で評価を行い、その平均点で示した。
風味について、5点;非常に良好、4点;良好、3点;どちらともいえない、2点;悪い、1点;非常に悪い
食感について、5点;非常に良好、4点;良好、3点;どちらともいえない、1点;ざらつく、1点;非常にざらつく
その結果を表3に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
比較品1は、風味は良好であったものの、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材中のタンパク質が凝集してしまい、ざらつきのある食感となった。また、比較品2は、ざらつきは感じられず食感は良好であったが、風味が物足りないとの評価だった。
一方で、本発明品1〜2は、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材に由来するコクのある風味が感じられ、ざらつきは感じられず、食感も好ましいとの評価を得た。
【0019】
実施例3
(1)炊飯水の調製
水435 gに、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材(DOMOVICTUS 300MCA )40g及び尿素1.35gを添加し、TKホモミキサーを用いて7000rpmで 10 分間撹拌し、炊飯水を調製した。
(2)米飯の調製
米320 gを洗米し、60分間水に浸漬させた後、水気をよくきってから(1)で調製した炊飯水を添加し、家庭用IHジャー炊飯器(SR-IHYB18 型、松下電器産業社製)を用いて炊飯し、米飯を得た。
得られた米飯を食したところ、風味が良好であり、ざらつきは感じられず食感も良好であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明によれば、風味及び食感が良好な乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯を提供することができる。
乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材を添加して米を炊飯すると、炊飯時にこの乳素材中に含有している乳タンパク質がカルシウムと反応して凝集し、米飯にざらつきが感じられるが、本発明では、炊飯時に、乳由来のカルシウムを高濃度に含有する乳素材とともに、尿素を添加することで、タンパク質の凝集によるざらつきが抑制されるため、ざらつきを感じない食感の良好な乳由来のカルシウムを強化したカルシウム強化米飯を提供することができる。
Claims (2)
- カルシウム強化米飯において、前記カルシウム強化米飯中に、乳由来のカルシウムを0.005〜0.6重量%、尿素を0.013〜0.33重量%、及びホエータンパク質を含有することを特徴とするカルシウム強化米飯。
- 請求項1記載のカルシウム強化米飯を凍結処理したことを特徴とする凍結カルシウム強化米飯。
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