JP2004067791A - 難溶性ポリリン酸メラミン - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリリン酸アンモニウムを、水や有機溶媒で洗浄することにより、ポリリン酸メラミン中の溶解性成分を除去し、非常に難溶性のポリリン酸メラミンを得ることができる。洗浄の際には、40℃以上に加温しておくことが好ましく、洗浄時、または、洗浄後にスチームをかけると更に効果的である。また、有機溶媒を用いるときは、pHを3以下に調整しておくことが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃剤として有用なポリリン酸メラミンに関し、より詳しくは従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリリン酸メラミンは、基本的にはポリリン酸(縮合リン酸)とメラミンが結合した、塗料、合成樹脂、パーティクルボード等に添加する難燃剤として有用な化合物であって、従来より、種々の製造方法が提案されている。
(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)
(A)一つは、オルトリン酸メラミンを出発物質としてこれを加熱・焼成・縮合せしめてポリリン酸メラミンとする方法である。
【0003】
例えば、特公昭40−28594には、リン含有量が27〜54%のオルトリン酸メラミンを温度180〜250℃において加熱・焼成し、少なくともその一部をピロリン酸メラミンに変化させることが開示され、特に220〜250℃において焼成することにより、その40%以上をピロリン酸メラミンとすることが記載されている。また、米国特許3,920,796には、オルトリン酸メラミンを170〜325℃で加熱することにより、ピロリン酸メラミンを主体とする縮合物を製造できることが当該縮合の反応速度のアレニウス式とともに開示されており、さらに、特開2000−26597には、オルトリン酸メラミンを260〜320℃で加熱することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(B)他の方法は、ポリリン酸とメラミンを反応させるもので、例えば、特開昭61−126091には、P2O5濃度72質量%以上のポリリン酸とメラミンを水性媒体の実質的不存在下に、ニーダー中で90〜170℃程度で固相反応させることにより、ポリリン酸メラミンを製造することが開示されており、米国特許4,950,757には、水溶液中でピロリン酸とメラミンを0〜60℃で反応させてピロリン酸メラミンを製造することが開示され、さらに、特表2002−506063には、ポリリン酸等のアルカリ金属塩を酸性イオン交換樹脂に接触させて得たポリリン酸を、メラミンのスラリーに添加して反応させるポリリン酸メラミンの製造方法が開示されている。
(C)また別の方法として、オルトリン酸とメラミンを出発物質として直接反応・縮合させてポリリン酸メラミンを得る方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開平10−306081には、オルトリン酸1モルに対し過剰(2.0〜4.0モル)のメラミンを0〜300℃の温度で混合反応させ、当該反応生成物を340〜450℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミン・メラム・メレムの複塩を製造できることが記載され、特開平10−81691には、オルトリン酸1モルに対し、1.0〜1.5モルのメラミン、0.1〜1.5モルの尿素を0〜140℃で反応させたパウダー状生成物を、240〜340℃で焼成することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(D)さらに別法として、特開平11−130413には、第一リン酸アンモニウム1モルとメラミン1.50モルの原料組成物を300〜350℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミンを製造できることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これら従来の方法で得られたポリリン酸メラミンは、樹脂に練り込んで難燃剤として使用すると、温水と接触させた場合、リン酸等の低重合物が遊離し、導電性が増大するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題、即ち、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がないポリリン酸メラミンを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0008】
(1) 洗浄することにより溶解性成分を除去することを特徴とする難溶性ポリリン酸メラミン。
【0009】
(2) 水、及び/または、有機溶媒により洗浄することを特徴とする(1)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0010】
(3) ポリリン酸メラミンを水、及び/または、有機溶媒に分散させた後、ろ過することを特徴とする(2)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0011】
(4) ポリリン酸メラミンに水、及び/または、有機溶媒を直接かけてろ過することを特徴とする(2)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0012】
(5) 洗浄に有機溶媒を使用するときは、液性をpH3以下にすることを特徴とする(2)〜(4)記載のポリリン酸メラミン。
【0013】
(6) 洗浄に使用する水、及び/または、有機溶媒の温度が、40℃以上であることを特徴とする(2)〜(5)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0014】
(7) ろ過の際、スチームをかけることを特徴とする(3)〜(6)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で使用するポリリン酸メラミンは、市販されているものでも良いし、一般的な製法で合成したものでも良い。一般的な製法としては、例えば、(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)で紹介した方法を用いることができる。
【0017】
また、ポリリン酸メラミンの中には、重合度100程度の高分子量のものを主成分とするものもあるし、逆に、重合度2程度のものを主成分とするいわゆるピロリン酸メラミンもある。本発明は、いずれのポリリン酸メラミンにも適用できる。
市販の又は、合成したポリリン酸メラミン中には、通常、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物、又は、未反応物(以下、単に混入副生物と称することがある。)が混入または残存している。本発明は、これら混入副生物を洗浄で除去することにより、従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンを提供するものである。
かかる混入副生物を洗浄する方法としては、種々考えられるが、水、及び/または、有機溶媒を用いる方法が簡便である。
洗浄に用いる水としては、市水、蒸留水、イオン交換水等、いずれを用いても良いが、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンを樹脂に練り込んで使用したとき、導電性が上がる原因となるイオン等の不純物を含んでいないことが望ましい。従って、洗浄に用いる水としては、イオン交換水や、不純物を沈殿除去したものを用いるのが望ましい。
【0018】
また、本発明に用いる有機溶媒としては、混入副生物を溶解するものならいずれの有機溶媒を用いても良い。具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、、更には、エーテルやアミン類も使用することができる。有機溶媒と水は、同時に混合して用いることもできる。この場合、液性をpH3以下に調整しておくことが望ましい。混入副生物には、オルソリン酸が含まれており、系内を酸性にしてくことにより、オルソリン酸を溶媒中に効率良く吸収させることができるからである。使用後の有機溶媒は、蒸留分離することにより、再利用することが可能である。
【0019】
更に、水、及び/または、有機溶媒は、40℃以上に加温して使用することが望ましい。一般に、温度は高いほど好ましいが、常圧下で洗浄する場合は、水、及び使用する有機溶媒の沸点以下で使用ことになる。温度が低い場合、水、及び/または、有機溶媒の量を増やすことによって、混入副生物を除去することはできるが、大量に必要となるため、経済的でない。
【0020】
洗浄方法としては、撹拌機を備えた容器に、ポリリン酸メラミン、水、及び/または、有機溶媒を入れ、スラリー化させた後、ろ過する方法、また、底部を多孔板とした容器に本焼成物を充填し、当該容器の上部から洗浄液を供給し、本焼成物中を接触させながら流下させる操作でもよい。これらの方法を併用することも当然、可能である。
【0021】
更に、洗浄後ろ過する際に、スチームをかけることにより、より効率的に洗浄することができる。スチームは、ろ過と同時にかけても良いし、ろ過後にかけてもよい。また、スチームをかける際に、下部から吸引することにより、より効率的に洗浄することができる。
以上のごとくして得られた洗浄生成物は、水に対する溶解性の比較的高い低分子副生物を含んでおらず、温水と接触させた場合の導電性の増加等という問題が生じない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
実施例に用いたポリリン酸メラミンは、表1に示したものを用いた。
【0024】
【表1】
【0025】
〔製造例1〕
5Lの万能ミキサー(ステンレス製)にメラミン(三井化学(株)製)610g(4.83モル)と、工業用粒状尿素(三井化学(株)製)130g(2.16モル)とを採取し、10分間混合を行った。このメラミンと尿素との混合物に、攪拌下、85重量%のオルトリン酸水溶液(下関三井化学(株)製)440g(オルトリン酸分3.82モル)を30分間で添加混合した。添加終了後、30分間攪拌を保持した。オルトリン酸添加により発熱が起こり、水分が蒸発し、ウエットパウダー状生成物1167gを得た。この生成物をステンレス製バットに入れ、電気炉にて310℃で焼成を行った。昇温時間は約4時間で310℃となり、焼成温度310℃を5時間保持した。尚、脱水により若干の固結が起こるため、固結防止のため、昇温時被焼成物温度が150℃になったところで取り出し、固結状態のものを崩した上で焼成を実行した。この焼成物を小型ジェットミルで粉砕した。
【0026】
なお、得られたサンプルの分析は、下記の方法で行った。
(a)粒径
MICRO TRAC L&NX−100(日機装(株)製)により、D50を測定した。測定時の分散媒としては、イソプロピルアルコールを用いた。
(b)電気伝導度
サンプル0.4gを、85℃に加温した199.6gのイオン交換水に添加し、温度を維持したまま1時間攪拌する。その後、25℃まで冷却し、0.45μmのフッ素系樹脂フィルターでろ過する。得られたろ液の電気伝導度をパーソナルSCメーターModelSC82(横河電気(株)製)で測定する。測定時の液温は約25℃に保持する。
〔実施例1〕
300gのMPP1を85℃のイオン交換水1500gに分散させ、30分間攪拌した。攪拌後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
300gのMPP2を1μmのガラスフィルターを置いたろ過器に充填し、出口側を吸引しながら85℃のイオン交換水1500gで洗浄した。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。〔実施例3〕
300gのMPP1を、イオン交換水380g、イソプロピルアルコール1120g、更に、96%硫酸を添加してpHを1とした液に分散させた。30分間攪拌した後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0027】
〔実施例4〕
実施例2の洗浄後、ろ過器の出口側をアスピレーターで引きながら、上部から10秒間スチームをかけた。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
〔実施例5〕
300gのMPP2をろ過器に充填し、出口側をアスピレーターで吸引しながら25℃のイオン交換水6000gで洗浄した。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0029】
〔比較例1〕
未処理ののMPP1の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0030】
〔比較例2〕
未処理ののMPP2の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
本発明のによれば、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がない難溶性ポリリン酸メラミンを容易に提供することができる。
【0033】
本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレンなどのポリオレフィンを始めとし、ポリカーボネート、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン等種々の樹脂の成形体、塗料、繊維製品等の難燃剤として有用である。
【0034】
また、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物や未反応物のみでなく、その他の不純物の含有量も減少している。そのため、難燃剤と使用したとき必要とされる性能、即ち、分解温度も高く、着色も伴わないことが期待される。
Claims (7)
- 洗浄することにより溶解性成分を除去することを特徴とする難溶性ポリリン酸メラミン。
- 水、及び/または、有機溶媒により洗浄することを特徴とする請求項1記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- ポリリン酸メラミンを水、及び/または、有機溶媒に分散させた後、ろ過することを特徴とする請求項2記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- ポリリン酸メラミンに水、及び/または、有機溶媒を直接かけてろ過することを特徴とする請求項2記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- 洗浄に有機溶媒を使用するときは、液性をpH3以下にすることを特徴とする請求項2〜4記載のポリリン酸メラミン。
- 洗浄に使用する水、及び/または、有機溶媒の温度が、40℃以上であることを特徴とする請求項2〜5記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- ろ過の際、スチームをかけることを特徴とする請求項3〜6記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
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JP2002227146A JP2004067791A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 難溶性ポリリン酸メラミン |
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JP2002227146A JP2004067791A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 難溶性ポリリン酸メラミン |
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JP2002227146A Pending JP2004067791A (ja) | 2002-08-05 | 2002-08-05 | 難溶性ポリリン酸メラミン |
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JP (1) | JP2004067791A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020105465A (ja) * | 2018-12-28 | 2020-07-09 | 株式会社Adeka | 難燃剤組成物、それを用いた難燃性樹脂組成物、成形品、および成形品を製造する製造方法 |
JP2020109150A (ja) * | 2019-07-26 | 2020-07-16 | 株式会社Adeka | 難燃剤組成物、それを用いた難燃性樹脂組成物、成形品、および成形品を製造する製造方法 |
WO2023156294A1 (en) * | 2022-02-18 | 2023-08-24 | Basf Se | Synthesis of melamine polyphosphate with low residual melamine |
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2002
- 2002-08-05 JP JP2002227146A patent/JP2004067791A/ja active Pending
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