JP2004075808A - 難溶性ポリリン酸メラミン - Google Patents
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Abstract
【課題】吸湿した場合の導電性が増大するという問題がない、従来にない高難溶性ポリリン酸メラミンを提供する。
【解決手段】水に分散させたポリリン酸メラミンに、カルシウム化合物、及び/又はアルカリを添加し、液のpHを8以上とした後、リン酸類、及び/または、酸を添加して液のpHを1以上下げることによりの従来にない難溶性ポリリン酸メラミンを得ることができる。
リン酸類、及び/または、酸を添加する前にリン酸カルシウムを添加することにより難溶性ポリリン酸メラミンの生成速度を向上できる。
更に、固液分離した後、水、及び/または、有機溶媒により洗浄することにより、より効果的に難溶性ポリリン酸をメラミンを得ることができる。
【選択図】 なし
【解決手段】水に分散させたポリリン酸メラミンに、カルシウム化合物、及び/又はアルカリを添加し、液のpHを8以上とした後、リン酸類、及び/または、酸を添加して液のpHを1以上下げることによりの従来にない難溶性ポリリン酸メラミンを得ることができる。
リン酸類、及び/または、酸を添加する前にリン酸カルシウムを添加することにより難溶性ポリリン酸メラミンの生成速度を向上できる。
更に、固液分離した後、水、及び/または、有機溶媒により洗浄することにより、より効果的に難溶性ポリリン酸をメラミンを得ることができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃剤として有用なポリリン酸メラミンに関し、より詳しくは従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリリン酸メラミンは、基本的にはポリリン酸(縮合リン酸)とメラミンが結合した、塗料、合成樹脂、パーティクルボード等に添加する難燃剤として有用な化合物であって、従来より、種々の製造方法が提案されている。
(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)
(A)一つは、オルトリン酸メラミンを出発物質としてこれを加熱・焼成・縮合せしめてポリリン酸メラミンとする方法である。
【0003】
例えば、特公昭40−28594には、リン含有量が27〜54%のオルトリン酸メラミンを温度180〜250℃において加熱・焼成し、少なくともその一部をピロリン酸メラミンに変化させることが開示され、特に220〜250℃において焼成することにより、その40%以上をピロリン酸メラミンとすることが記載されている。また、米国特許3,920,796には、オルトリン酸メラミンを170〜325℃で加熱することにより、ピロリン酸メラミンを主体とする縮合物を製造できることが当該縮合の反応速度のアレニウス式とともに開示されており、さらに、特開2000−26597には、オルトリン酸メラミンを260〜320℃で加熱することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(B)他の方法は、ポリリン酸とメラミンを反応させるもので、例えば、特開昭61−126091には、P2O5濃度72質量%以上のポリリン酸とメラミンを水性媒体の実質的不存在下に、ニーダー中で90〜170℃程度で固相反応させることにより、ポリリン酸メラミンを製造することが開示されており、米国特許4,950,757には、水溶液中でピロリン酸とメラミンを0〜60℃で反応させてピロリン酸メラミンを製造することが開示され、さらに、特表2002−506063には、ポリリン酸等のアルカリ金属塩を酸性イオン交換樹脂に接触させて得たポリリン酸を、メラミンのスラリーに添加して反応させるポリリン酸メラミンの製造方法が開示されている。
(C)また別の方法として、オルトリン酸とメラミンを出発物質として直接反応・縮合させてポリリン酸メラミンを得る方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開平10−306081には、オルトリン酸1モルに対し過剰(2.0〜4.0モル)のメラミンを0〜300℃の温度で混合反応させ、当該反応生成物を340〜450℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミン・メラム・メレムの複塩を製造できることが記載され、特開平10−81691には、オルトリン酸1モルに対し、1.0〜1.5モルのメラミン、0.1〜1.5モルの尿素を0〜140℃で反応させたパウダー状生成物を、240〜340℃で焼成することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(D)さらに別法として、特開平11−130413には、第一リン酸アンモニウム1モルとメラミン1.50モルの原料組成物を300〜350℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミンを製造できることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これら従来の方法で得られたポリリン酸メラミンは、樹脂に練り込んで難燃剤として使用すると、温水と接触させた場合、リン酸等の低重合物が遊離し、導電性が増大するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題、即ち、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がないポリリン酸メラミンを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0008】
(1) 水に分散させたポリリン酸メラミンにカルシウム化合物とリン酸類を添加して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
【0009】
(2) 水に分散させたポリリン酸メラミンに、カルシウム化合物、及び/又はアルカリを添加し、液のpHを8以上とした後、リン酸類、及び/または、酸を添加して液のpHを1以上下げることにより得られた請求項1記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0010】
(2) リン酸類、及び/または、酸を添加する前にリン酸カルシウムを添加して得られた(1)〜(2)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0011】
(3) (1)〜(3)記載の処理し、固液分離した後、水、及び/または、有機溶媒により洗浄して得られた請求項1〜3記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0012】
(4) (1)〜(4)記載の処理後、100℃〜400℃で乾燥して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用するポリリン酸メラミンは、市販されているものでも良いし、一般的な製法で合成したものでも良い。一般的な製法としては、例えば、(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)で紹介した方法を用いることができる。
【0015】
また、ポリリン酸メラミンの中には、重合度100程度の高分子量のものを主成分とするものもあるし、逆に、重合度2程度のものを主成分とするいわゆるピロリン酸メラミンもある。本発明は、いずれのポリリン酸メラミンにも適用できる。
市販の又は、合成したポリリン酸メラミン中には、通常、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物、又は、未反応物(以下、単に混入副生物と称することがある。)が混入または残存している。本発明は、これら混入副生物をカルシウム化合物とリン化合物を添加し、難溶性の塩として固定化することにより従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンを提供するものである。
【0016】
本発明において添加されるカルシウム化合物としては、基本的に少なくともその一部が水に溶解し、液中で混入副生物と結合してその難溶性のカルシウム化合物を生成しうるものであり、好ましくは当該液体のpHをアルカリ性にすることができるものであれば特に限定するものではなく、例えば、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、過酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、さらにはリン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、天然に産するものでもよいし、各種製造業で主産物、または、副産物として製造されるものでもよい。なお、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、モノカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるカルシウムを含むアパタイト類をも含む。さらに天然に産するカルシウムを含むリン酸化合物であるリン鉱石も使用できる。
【0017】
カルシウム化合物が液中でアルカリ性を示さない場合は、更に、アルカリを添加することにより使用することが可能である。
【0018】
以上のうち、特に好ましいカルシウム化合物は、消石灰及び炭酸カルシウムである。
【0019】
本発明のカルシウム化合物の添加量は、その種類や処理する液により変化するが、液のpHが8以上になることが好ましい。
【0020】
本発明において、使用するリン酸類等としては、リン酸自体でもよいし、リン酸とアルカリ性化合物の中和反応により生成したリン酸塩でもよく、基本的に、液中で混入副生物及びカルシウム化合物と結合して難溶性化合物を形成することができ、また好ましくは、当該リン酸類等を添加することにより、処理すべき液体のpHを低下させることができるものであれば特に限定するものではない。
【0021】
例えば、正リン酸(オルトリン酸)、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、ウルトラリン酸、テトラメタリン酸、イソテトラポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、および更なる縮合リン酸等のリン酸類;リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸カリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸カリウム、イソテトラポリリン酸ナトリウム、イソテトラポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、その他の金属とリン酸から生成する塩等のリン酸化合物が挙げられる。
【0022】
更に、上記リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0023】
上記のリン酸類等のなかで、好ましくは、縮合リン酸を含むリン酸であり、さらに好ましくは正リン酸である。また、上記リン酸類やリン酸化合物は、一種又は二種以上を併用することも可能である。なお、リン酸カルシウム等のリン酸塩を使用する場合、実質的にフッ素化合物含有液体のpHを低下させることが困難な場合は、硫酸や塩酸等の酸と共に使用すればよい。
【0024】
本発明のリン酸類の添加量は、その種類や処理する液よっても異なりうるが、添加前の1以上低いpHになるよう添加することが好ましい。
【0025】
但し、ポリリン酸メラミンの種類によっては、リン酸の低縮合物やオルソリン酸を含有しているものがあり、その含有量によっては、リン酸類の添加が不要である場合もありうる。このような場合は、リン酸以外の鉱酸等によってpHを1以上低下させるだけで足りる。
【0026】
更に、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0027】
本発明のリン酸カルシウムの添加量は、、その種類や処理する液よっても異なりうるが、ポリリン酸メラミンに対して0.01%以上添加することが好ましい。
【0028】
本発明においてより好ましい操作は、まず、水に分散させたポリリン酸メラミンにカルシウム化合物を添加して当該液体のpHを8以上とし、これにリン酸類を添加、そのpHを再び低下させることである。更に、リン酸類を添加してpHを下げる前に、リン酸カルシウムを添加しておくことがかかることが、より好ましい。
【0029】
当該液中で混入副生物、カルシウム化合物、リン酸類、及び/または、リン酸カルシウムが反応し、溶解度が極めて低い難溶性化合物の沈殿を形成することができると考えられる。リン酸カルシウムの添加は、難溶性化合物の生成速度を促進すると推測している。
【0030】
ここで添加するカルシウム化合物とリン酸類の形態としては、固体、液体のいずれでもよく、固体を液体に分散させたスラリー状で添加することも可能である。
【0031】
添加するカルシウム化合物が液中でアルカリ性を示さない場合、アルカリを添加することができる。添加するアルカリとしては、水中で水酸基を遊離し、水中の水酸化物イオン濃度を増加させる化合物、または、水中の水素イオンを消費する化合物であればとくに限定するものではなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、更に、アンモニア、アミン、四級アンモニウム塩やアルカリ塩等、水中でアルカリ性を示す化合物が例示される。
【0032】
アルカリを添加する場合、気体、固体、液体、スラリーのいずれの形態で添加してもよい。なお、アルカリがアンモニアガスのような気体状のものである場合、フッ素化合物含有液体中に挿入されたノズルや多孔板を通じて直接、当該気体を導入することもできる。
【0033】
また、添加するリン酸類が液中で酸性を示さない場合は、酸を添加することができる。添加する酸としては、鉱酸、有機酸等、種々の酸が利用できるが、難溶性化合物を作りやすい鉱酸を使用することが好ましい。
【0034】
以上の処理をした難溶性ポリリン酸メラミンは、種々の方法で液と分離することができる。
【0035】
例えば、直接加熱して液分を蒸発させることもできるが、ろ過後、乾燥することが経済的であり好ましい。
【0036】
ろ過方法としては、底部を多孔板とした容器に充填して、自然にろ過する方法でも良いし、多孔板の出口側からアスピレーターや真空ポンプで吸引しながらろ過しても良い。更に、フィルタープレスや、遠心分離など、工業的に利用できる装置を利用してろ過することも可能である。
【0037】
また、ろ過の際にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を混合してろ過することも可能である。
【0038】
ろ過後、乾燥することが必要となるが、有機溶媒を混合してろ過すると乾燥工程を短縮することができる。
更に、固液分離した本発明の難溶性ポリリン酸メラミンを、水、及び/または、有機溶媒を用いて洗浄すれば、より難溶性の高いポリリン酸メラミンを得ることができる。
洗浄に用いる水としては、市水、蒸留水、イオン交換水等、いずれを用いても良いが、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンを樹脂に練り込んで使用したとき、導電性が上がる原因となるイオン等の不純物を含んでいないことが望ましい。従って、洗浄に用いる水としては、イオン交換水や、不純物を沈殿除去したものを用いるのが望ましい。
【0039】
また、本発明に用いる有機溶媒としては、混入副生物を溶解するものならいずれの有機溶媒を用いても良い。具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、、更には、エーテルやアミン類も使用することができる。有機溶媒と水は、同時に混合して用いることもできる。この場合、液性をpH3以下に調整しておくことが望ましい。混入副生物には、オルソリン酸が含まれており、系内を酸性にしてくことにより、オルソリン酸を溶媒中に効率良く吸収させることができるからである。使用後の有機溶媒は、蒸留分離することにより、再利用することが可能である。
【0040】
更に、水、及び/または、有機溶媒は、40℃以上に加温して使用することが望ましい。一般に、温度は高いほど好ましいが、常圧下で洗浄する場合は、水、及び使用する有機溶媒の沸点以下で使用ことになる。温度が低い場合、水、及び/または、有機溶媒の量を増やすことによって、混入副生物を除去することはできるが、大量に必要となるため、経済的でない。
【0041】
洗浄方法としては、撹拌機を備えた容器に、ポリリン酸メラミン、水、及び/または、有機溶媒を入れ、スラリー化させた後、ろ過する方法、また、底部を多孔板とした容器に本焼成物を充填し、当該容器の上部から洗浄液を供給し、本焼成物中を接触させながら流下させる操作でもよい。これらの方法を併用することも当然、可能である。
【0042】
更に、洗浄後ろ過する際に、スチームをかけることにより、より効率的に洗浄することができる。スチームは、ろ過と同時にかけても良いし、ろ過後にかけてもよい。また、スチームをかける際に、下部から吸引することにより、より効率的に洗浄することができる。
【0043】
得られた難溶性ポリリン酸メラミンの乾燥は、付着した液分が揮発する温度以上であれば、いずれの温度でも可能であるが、一般的には100℃以上で乾燥する。温度は高いほど、乾燥時間を短縮することができるが、被乾燥物の温度が400℃以下で乾燥することが好ましい。被乾燥物の温度が400℃を越えると、溶融する可能性があるからである。
【0044】
得られた乾燥物は、各種の粉砕機を使用して粉砕可能である。難燃剤として樹脂に練りこむ場合、粒径の小さいことが好ましく、高圧の空気を利用し、粒子同士の衝突により粉砕するジェットミル等で粉砕することが望ましい。
以上のごとくして得られた本発明のポリリン酸メラミンは、水に対する溶解性の比較的高い化合物を含んでおらず、温水と接触させた場合の導電性の増加等という問題が生じない。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
実施例に用いたポリリン酸メラミンは、表1に示したものを用いた。
【0047】
【表1】
【0048】
〔製造例1〕
5Lの万能ミキサー(ステンレス製)にメラミン(三井化学(株)製)610g(4.83モル)と、工業用粒状尿素(三井化学(株)製)130g(2.16モル)とを採取し、10分間混合を行った。このメラミンと尿素との混合物に、攪拌下、85重量%のオルトリン酸水溶液(下関三井化学(株)製)440g(オルトリン酸分3.82モル)を30分間で添加混合した。添加終了後、30分間攪拌を保持した。オルトリン酸添加により発熱が起こり、水分が蒸発し、ウエットパウダー状生成物1167gを得た。この生成物をステンレス製バットに入れ、電気炉にて310℃で焼成を行った。昇温時間は約4時間で310℃となり、焼成温度310℃を5時間保持した。尚、脱水により若干の固結が起こるため、固結防止のため、昇温時被焼成物温度が150℃になったところで取り出し、固結状態のものを崩した上で焼成を実行した。この焼成物を小型ジェットミルで粉砕した。
【0049】
なお、得られたサンプルの分析は、下記の方法で行った。
(a)粒径
MICRO TRAC L&NX−100(日機装(株)製)により、D50を測定した。測定時の分散媒としては、イソプロピルアルコールを用いた。
(b)電気伝導度
サンプル0.4gを、85℃に加温した199.6gのイオン交換水に添加し、温度を維持したまま1時間攪拌する。その後、25℃まで冷却し、0.45μmのフッ素系樹脂フィルターでろ過する。得られたろ液の電気伝導度をパーソナルSCメーターModelSC82(横河電気(株)製)で測定する。測定時の液温は約25℃に保持する。
〔実施例1〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
300gのMPP2を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、3gの第三リン酸カルシウム(下関三井化学製)を添加後、リン酸を添加し、pHを7に調整後、30分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを85℃のイオン交換水1500gに分散させ、30分間攪拌した。攪拌後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例4〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキををイオン交換水380g、イソプロピルアルコール1120g、更に、96%硫酸を添加してpHを1とした液に分散させた。30分間攪拌した後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
〔比較例1〕
未処理のMPP1の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0051】
〔比較例2〕
未処理のMPP2の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0052】
〔比較例3〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを12になるよう調整し、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
〔比較例4〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを7になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを6に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明のによれば、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がない難溶性ポリリン酸メラミンを容易に提供することができる。
【0056】
本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレンなどのポリオレフィンを始めとし、ポリカーボネート、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン等種々の樹脂の成形体、塗料、繊維製品等の難燃剤として有用である。
【0057】
また、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物や未反応物が固定化されているため、樹脂に混練時に溶出してくることがない。そのため、難燃剤と使用したとき必要とされる性能、即ち、分解温度も高く、着色も伴わないことが期待される。
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃剤として有用なポリリン酸メラミンに関し、より詳しくは従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンに関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリリン酸メラミンは、基本的にはポリリン酸(縮合リン酸)とメラミンが結合した、塗料、合成樹脂、パーティクルボード等に添加する難燃剤として有用な化合物であって、従来より、種々の製造方法が提案されている。
(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)
(A)一つは、オルトリン酸メラミンを出発物質としてこれを加熱・焼成・縮合せしめてポリリン酸メラミンとする方法である。
【0003】
例えば、特公昭40−28594には、リン含有量が27〜54%のオルトリン酸メラミンを温度180〜250℃において加熱・焼成し、少なくともその一部をピロリン酸メラミンに変化させることが開示され、特に220〜250℃において焼成することにより、その40%以上をピロリン酸メラミンとすることが記載されている。また、米国特許3,920,796には、オルトリン酸メラミンを170〜325℃で加熱することにより、ピロリン酸メラミンを主体とする縮合物を製造できることが当該縮合の反応速度のアレニウス式とともに開示されており、さらに、特開2000−26597には、オルトリン酸メラミンを260〜320℃で加熱することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(B)他の方法は、ポリリン酸とメラミンを反応させるもので、例えば、特開昭61−126091には、P2O5濃度72質量%以上のポリリン酸とメラミンを水性媒体の実質的不存在下に、ニーダー中で90〜170℃程度で固相反応させることにより、ポリリン酸メラミンを製造することが開示されており、米国特許4,950,757には、水溶液中でピロリン酸とメラミンを0〜60℃で反応させてピロリン酸メラミンを製造することが開示され、さらに、特表2002−506063には、ポリリン酸等のアルカリ金属塩を酸性イオン交換樹脂に接触させて得たポリリン酸を、メラミンのスラリーに添加して反応させるポリリン酸メラミンの製造方法が開示されている。
(C)また別の方法として、オルトリン酸とメラミンを出発物質として直接反応・縮合させてポリリン酸メラミンを得る方法が提案されている。
【0004】
例えば、特開平10−306081には、オルトリン酸1モルに対し過剰(2.0〜4.0モル)のメラミンを0〜300℃の温度で混合反応させ、当該反応生成物を340〜450℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミン・メラム・メレムの複塩を製造できることが記載され、特開平10−81691には、オルトリン酸1モルに対し、1.0〜1.5モルのメラミン、0.1〜1.5モルの尿素を0〜140℃で反応させたパウダー状生成物を、240〜340℃で焼成することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(D)さらに別法として、特開平11−130413には、第一リン酸アンモニウム1モルとメラミン1.50モルの原料組成物を300〜350℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミンを製造できることが開示されている。
【0005】
しかしながら、これら従来の方法で得られたポリリン酸メラミンは、樹脂に練り込んで難燃剤として使用すると、温水と接触させた場合、リン酸等の低重合物が遊離し、導電性が増大するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題、即ち、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がないポリリン酸メラミンを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
【0008】
(1) 水に分散させたポリリン酸メラミンにカルシウム化合物とリン酸類を添加して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
【0009】
(2) 水に分散させたポリリン酸メラミンに、カルシウム化合物、及び/又はアルカリを添加し、液のpHを8以上とした後、リン酸類、及び/または、酸を添加して液のpHを1以上下げることにより得られた請求項1記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0010】
(2) リン酸類、及び/または、酸を添加する前にリン酸カルシウムを添加して得られた(1)〜(2)記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0011】
(3) (1)〜(3)記載の処理し、固液分離した後、水、及び/または、有機溶媒により洗浄して得られた請求項1〜3記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
【0012】
(4) (1)〜(4)記載の処理後、100℃〜400℃で乾燥して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明で使用するポリリン酸メラミンは、市販されているものでも良いし、一般的な製法で合成したものでも良い。一般的な製法としては、例えば、(従来のポリリン酸メラミンの製造方法)で紹介した方法を用いることができる。
【0015】
また、ポリリン酸メラミンの中には、重合度100程度の高分子量のものを主成分とするものもあるし、逆に、重合度2程度のものを主成分とするいわゆるピロリン酸メラミンもある。本発明は、いずれのポリリン酸メラミンにも適用できる。
市販の又は、合成したポリリン酸メラミン中には、通常、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物、又は、未反応物(以下、単に混入副生物と称することがある。)が混入または残存している。本発明は、これら混入副生物をカルシウム化合物とリン化合物を添加し、難溶性の塩として固定化することにより従来のものに比較してはるかに難溶性のポリリン酸メラミンを提供するものである。
【0016】
本発明において添加されるカルシウム化合物としては、基本的に少なくともその一部が水に溶解し、液中で混入副生物と結合してその難溶性のカルシウム化合物を生成しうるものであり、好ましくは当該液体のpHをアルカリ性にすることができるものであれば特に限定するものではなく、例えば、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、過酸化カルシウム、次亜リン酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、さらにはリン酸カルシウム等が挙げられる。これらは、天然に産するものでもよいし、各種製造業で主産物、または、副産物として製造されるものでもよい。なお、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート、ダイカルシウムフォスフェート、モノカルシウムフォスフェート、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるカルシウムを含むアパタイト類をも含む。さらに天然に産するカルシウムを含むリン酸化合物であるリン鉱石も使用できる。
【0017】
カルシウム化合物が液中でアルカリ性を示さない場合は、更に、アルカリを添加することにより使用することが可能である。
【0018】
以上のうち、特に好ましいカルシウム化合物は、消石灰及び炭酸カルシウムである。
【0019】
本発明のカルシウム化合物の添加量は、その種類や処理する液により変化するが、液のpHが8以上になることが好ましい。
【0020】
本発明において、使用するリン酸類等としては、リン酸自体でもよいし、リン酸とアルカリ性化合物の中和反応により生成したリン酸塩でもよく、基本的に、液中で混入副生物及びカルシウム化合物と結合して難溶性化合物を形成することができ、また好ましくは、当該リン酸類等を添加することにより、処理すべき液体のpHを低下させることができるものであれば特に限定するものではない。
【0021】
例えば、正リン酸(オルトリン酸)、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、ウルトラリン酸、テトラメタリン酸、イソテトラポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、および更なる縮合リン酸等のリン酸類;リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性メタリン酸ナトリウム、酸性メタリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウム、トリメタリン酸ナトリウム、トリメタリン酸カリウム、ウルトラリン酸ナトリウム、ウルトラリン酸カリウム、テトラメタリン酸ナトリウム、テトラメタリン酸カリウム、イソテトラポリリン酸ナトリウム、イソテトラポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸カルシウム、その他の金属とリン酸から生成する塩等のリン酸化合物が挙げられる。
【0022】
更に、上記リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0023】
上記のリン酸類等のなかで、好ましくは、縮合リン酸を含むリン酸であり、さらに好ましくは正リン酸である。また、上記リン酸類やリン酸化合物は、一種又は二種以上を併用することも可能である。なお、リン酸カルシウム等のリン酸塩を使用する場合、実質的にフッ素化合物含有液体のpHを低下させることが困難な場合は、硫酸や塩酸等の酸と共に使用すればよい。
【0024】
本発明のリン酸類の添加量は、その種類や処理する液よっても異なりうるが、添加前の1以上低いpHになるよう添加することが好ましい。
【0025】
但し、ポリリン酸メラミンの種類によっては、リン酸の低縮合物やオルソリン酸を含有しているものがあり、その含有量によっては、リン酸類の添加が不要である場合もありうる。このような場合は、リン酸以外の鉱酸等によってpHを1以上低下させるだけで足りる。
【0026】
更に、リン酸カルシウムとしては、トリカルシウムフォスフェート(第三リン酸カルシウム)、ダイカルシウムフォスフェート(第二リン酸カルシウム)、モノカルシウムフォスフェート(第一リン酸カルシウム)、オクタカルシウムフォスフェート、テトラカルシウムフォスフェート等の一般的なリン酸カルシウムが挙げられるが、それだけにとどまらず、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト構造のものであってもよく、また天然に産するリン酸化合物であるリン鉱石であってもよい。
【0027】
本発明のリン酸カルシウムの添加量は、、その種類や処理する液よっても異なりうるが、ポリリン酸メラミンに対して0.01%以上添加することが好ましい。
【0028】
本発明においてより好ましい操作は、まず、水に分散させたポリリン酸メラミンにカルシウム化合物を添加して当該液体のpHを8以上とし、これにリン酸類を添加、そのpHを再び低下させることである。更に、リン酸類を添加してpHを下げる前に、リン酸カルシウムを添加しておくことがかかることが、より好ましい。
【0029】
当該液中で混入副生物、カルシウム化合物、リン酸類、及び/または、リン酸カルシウムが反応し、溶解度が極めて低い難溶性化合物の沈殿を形成することができると考えられる。リン酸カルシウムの添加は、難溶性化合物の生成速度を促進すると推測している。
【0030】
ここで添加するカルシウム化合物とリン酸類の形態としては、固体、液体のいずれでもよく、固体を液体に分散させたスラリー状で添加することも可能である。
【0031】
添加するカルシウム化合物が液中でアルカリ性を示さない場合、アルカリを添加することができる。添加するアルカリとしては、水中で水酸基を遊離し、水中の水酸化物イオン濃度を増加させる化合物、または、水中の水素イオンを消費する化合物であればとくに限定するものではなく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、更に、アンモニア、アミン、四級アンモニウム塩やアルカリ塩等、水中でアルカリ性を示す化合物が例示される。
【0032】
アルカリを添加する場合、気体、固体、液体、スラリーのいずれの形態で添加してもよい。なお、アルカリがアンモニアガスのような気体状のものである場合、フッ素化合物含有液体中に挿入されたノズルや多孔板を通じて直接、当該気体を導入することもできる。
【0033】
また、添加するリン酸類が液中で酸性を示さない場合は、酸を添加することができる。添加する酸としては、鉱酸、有機酸等、種々の酸が利用できるが、難溶性化合物を作りやすい鉱酸を使用することが好ましい。
【0034】
以上の処理をした難溶性ポリリン酸メラミンは、種々の方法で液と分離することができる。
【0035】
例えば、直接加熱して液分を蒸発させることもできるが、ろ過後、乾燥することが経済的であり好ましい。
【0036】
ろ過方法としては、底部を多孔板とした容器に充填して、自然にろ過する方法でも良いし、多孔板の出口側からアスピレーターや真空ポンプで吸引しながらろ過しても良い。更に、フィルタープレスや、遠心分離など、工業的に利用できる装置を利用してろ過することも可能である。
【0037】
また、ろ過の際にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒を混合してろ過することも可能である。
【0038】
ろ過後、乾燥することが必要となるが、有機溶媒を混合してろ過すると乾燥工程を短縮することができる。
更に、固液分離した本発明の難溶性ポリリン酸メラミンを、水、及び/または、有機溶媒を用いて洗浄すれば、より難溶性の高いポリリン酸メラミンを得ることができる。
洗浄に用いる水としては、市水、蒸留水、イオン交換水等、いずれを用いても良いが、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンを樹脂に練り込んで使用したとき、導電性が上がる原因となるイオン等の不純物を含んでいないことが望ましい。従って、洗浄に用いる水としては、イオン交換水や、不純物を沈殿除去したものを用いるのが望ましい。
【0039】
また、本発明に用いる有機溶媒としては、混入副生物を溶解するものならいずれの有機溶媒を用いても良い。具体的には、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、、更には、エーテルやアミン類も使用することができる。有機溶媒と水は、同時に混合して用いることもできる。この場合、液性をpH3以下に調整しておくことが望ましい。混入副生物には、オルソリン酸が含まれており、系内を酸性にしてくことにより、オルソリン酸を溶媒中に効率良く吸収させることができるからである。使用後の有機溶媒は、蒸留分離することにより、再利用することが可能である。
【0040】
更に、水、及び/または、有機溶媒は、40℃以上に加温して使用することが望ましい。一般に、温度は高いほど好ましいが、常圧下で洗浄する場合は、水、及び使用する有機溶媒の沸点以下で使用ことになる。温度が低い場合、水、及び/または、有機溶媒の量を増やすことによって、混入副生物を除去することはできるが、大量に必要となるため、経済的でない。
【0041】
洗浄方法としては、撹拌機を備えた容器に、ポリリン酸メラミン、水、及び/または、有機溶媒を入れ、スラリー化させた後、ろ過する方法、また、底部を多孔板とした容器に本焼成物を充填し、当該容器の上部から洗浄液を供給し、本焼成物中を接触させながら流下させる操作でもよい。これらの方法を併用することも当然、可能である。
【0042】
更に、洗浄後ろ過する際に、スチームをかけることにより、より効率的に洗浄することができる。スチームは、ろ過と同時にかけても良いし、ろ過後にかけてもよい。また、スチームをかける際に、下部から吸引することにより、より効率的に洗浄することができる。
【0043】
得られた難溶性ポリリン酸メラミンの乾燥は、付着した液分が揮発する温度以上であれば、いずれの温度でも可能であるが、一般的には100℃以上で乾燥する。温度は高いほど、乾燥時間を短縮することができるが、被乾燥物の温度が400℃以下で乾燥することが好ましい。被乾燥物の温度が400℃を越えると、溶融する可能性があるからである。
【0044】
得られた乾燥物は、各種の粉砕機を使用して粉砕可能である。難燃剤として樹脂に練りこむ場合、粒径の小さいことが好ましく、高圧の空気を利用し、粒子同士の衝突により粉砕するジェットミル等で粉砕することが望ましい。
以上のごとくして得られた本発明のポリリン酸メラミンは、水に対する溶解性の比較的高い化合物を含んでおらず、温水と接触させた場合の導電性の増加等という問題が生じない。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
実施例に用いたポリリン酸メラミンは、表1に示したものを用いた。
【0047】
【表1】
【0048】
〔製造例1〕
5Lの万能ミキサー(ステンレス製)にメラミン(三井化学(株)製)610g(4.83モル)と、工業用粒状尿素(三井化学(株)製)130g(2.16モル)とを採取し、10分間混合を行った。このメラミンと尿素との混合物に、攪拌下、85重量%のオルトリン酸水溶液(下関三井化学(株)製)440g(オルトリン酸分3.82モル)を30分間で添加混合した。添加終了後、30分間攪拌を保持した。オルトリン酸添加により発熱が起こり、水分が蒸発し、ウエットパウダー状生成物1167gを得た。この生成物をステンレス製バットに入れ、電気炉にて310℃で焼成を行った。昇温時間は約4時間で310℃となり、焼成温度310℃を5時間保持した。尚、脱水により若干の固結が起こるため、固結防止のため、昇温時被焼成物温度が150℃になったところで取り出し、固結状態のものを崩した上で焼成を実行した。この焼成物を小型ジェットミルで粉砕した。
【0049】
なお、得られたサンプルの分析は、下記の方法で行った。
(a)粒径
MICRO TRAC L&NX−100(日機装(株)製)により、D50を測定した。測定時の分散媒としては、イソプロピルアルコールを用いた。
(b)電気伝導度
サンプル0.4gを、85℃に加温した199.6gのイオン交換水に添加し、温度を維持したまま1時間攪拌する。その後、25℃まで冷却し、0.45μmのフッ素系樹脂フィルターでろ過する。得られたろ液の電気伝導度をパーソナルSCメーターModelSC82(横河電気(株)製)で測定する。測定時の液温は約25℃に保持する。
〔実施例1〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
300gのMPP2を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、3gの第三リン酸カルシウム(下関三井化学製)を添加後、リン酸を添加し、pHを7に調整後、30分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを85℃のイオン交換水1500gに分散させ、30分間攪拌した。攪拌後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
〔実施例4〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを9になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを7に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキををイオン交換水380g、イソプロピルアルコール1120g、更に、96%硫酸を添加してpHを1とした液に分散させた。30分間攪拌した後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを100℃の熱風乾燥機で乾燥した。以下、実施例1と同様の方法で、乾燥、粉砕し、電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0050】
〔比較例1〕
未処理のMPP1の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0051】
〔比較例2〕
未処理のMPP2の電気伝導度を前記の方法で測定した。結果を表2に示す。
【0052】
〔比較例3〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを12になるよう調整し、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
〔比較例4〕
300gのMPP1を25℃のイオン交換水1500gに分散させ、消石灰を添加して液のpHを7になるよう調整し、60分間攪拌した。更に、リン酸を添加し、pHを6に調整後、60分間攪拌した。その後、1μmのガラスフィルターでろ過し、得られたケーキを150℃の熱風乾燥機で乾燥した。得られた粉体を小型ジェットミルで粉砕し、前記の方法で電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明のによれば、吸湿した場合の導電性が増大するという問題がない難溶性ポリリン酸メラミンを容易に提供することができる。
【0056】
本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレンなどのポリオレフィンを始めとし、ポリカーボネート、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン等種々の樹脂の成形体、塗料、繊維製品等の難燃剤として有用である。
【0057】
また、本発明の難溶性ポリリン酸メラミンは、リン酸、リン酸メラミンオリゴマー等の低分子量の副生成物や未反応物が固定化されているため、樹脂に混練時に溶出してくることがない。そのため、難燃剤と使用したとき必要とされる性能、即ち、分解温度も高く、着色も伴わないことが期待される。
Claims (5)
- 水に分散させたポリリン酸メラミンにカルシウム化合物とリン酸類を添加して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
- 水に分散させたポリリン酸メラミンに、カルシウム化合物、及び/又はアルカリを添加し、液のpHを8以上とした後、リン酸類、及び/または、酸を添加して液のpHを1以上下げることにより得られた請求項1記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- リン酸類、及び/または、酸を添加する前にリン酸カルシウムを添加して得られた請求項1〜2記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- 請求項1〜3記載の処理し、固液分離した後、水、及び/または、有機溶媒により洗浄して得られた請求項1〜3記載の難溶性ポリリン酸メラミン。
- 請求項1〜4記載の処理後、100℃〜400℃で乾燥して得られた難溶性ポリリン酸メラミン。
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