JP2004155764A - ピロリン酸メラミンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メラミン/リン酸アンモニウムのモル比が0.9〜1.1である固体原料組成物を、170〜230℃、好ましくは190〜210℃で焼成することにより、容易に高純度のピロリン酸メラミンを得ることができる。また、洗浄することにより、更に、高純度のピロリン酸メラミンを得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃剤として有用なピロリン酸メラミンの製造方法に関し、より詳しくは、従来法よりもはるかに簡便で低コストのピロリン酸メラミンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ピロリン酸メラミンは、基本的にはポリリン酸(縮合リン酸)であるピロリン酸とメラミンが結合した化合物であり、塗料や合成樹脂等に添加する難燃剤として有用な物質であって、従来より、種々の製造方法が提案されている。
(従来のピロリン酸メラミンの製造方法)
(A)一つは、オルトリン酸メラミンを出発物質としてこれを加熱・焼成・縮合せしめてピロリン酸メラミンとする方法である。
【0003】
例えば、特公昭40−28594には、リン含有量が27〜54%のオルトリン酸メラミンを温度180〜250℃において加熱・焼成し、少なくともその一部をピロリン酸メラミンに変化させることが開示され、特に220〜250℃において焼成することにより、その40%以上をピロリン酸メラミンとすることが記載されている。また、米国特許3,920,796には、オルトリン酸メラミンを170〜325℃で加熱することにより、ピロリン酸メラミンを主体とする縮合物を製造できることが当該縮合の反応速度のアレニウス式とともに開示されており、さらに、特開2000−26597には、オルトリン酸メラミンを260〜320℃で加熱することによりピロリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(B)他の方法は、ポリリン酸とメラミンを反応させるもので、例えば、米国特許4,950,757には、水溶液中でピロリン酸とメラミンを0〜60℃で反応させてピロリン酸メラミンを製造することが開示されている。
【0004】
ところで、ピロリン酸メラミンは、分類上はポリリン酸メラミンに包含されるが、
従来技術をポリリン酸メラミンの製造方法にまで拡大すると、以下の如き多くの技術が開示されている。
(C)ポリリン酸とメラミンを反応させるものとしては、例えば、特開昭61−126091には、P2O5濃度72質量%以上のポリリン酸とメラミンを水性媒体の実質的不存在下に、ニーダー中で90〜170℃程度で固相反応させることにより、ポリリン酸メラミンを製造することが開示されており、さらに、特表2002−506063には、ポリリン酸等のアルカリ金属塩を酸性イオン交換樹脂に接触させて得たポリリン酸を、メラミンのスラリーに添加して反応させるポリリン酸メラミンの製造方法が開示されている。
(D)また別の方法として、オルトリン酸とメラミンを出発物質として直接反応・縮合させてポリリン酸メラミンを得る方法が提案されている。
【0005】
例えば、特開平10−306081には、オルトリン酸1モルに対し過剰(2.0〜4.0モル)のメラミンを0〜300℃の温度で混合反応させ、当該反応生成物を340〜450℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミン・メラム・メレムの複塩を製造できることが記載され、特開平10−81691には、オルトリン酸1モルに対し、1.0〜1.5モルのメラミン、0.1〜1.5モルの尿素を0〜140℃で反応させたパウダー状生成物を、240〜340℃で焼成することによりポリリン酸メラミンを製造することが開示されている。
(E)さらに別法として、特開平11−130413には、第一リン酸アンモニウム1モルとメラミン1.50モルの原料組成物を300〜350℃で焼成することにより、ポリリン酸メラミンを製造できることが開示されている。
【0006】
これらの従来の方法は、反応又は焼成中のメラミンの損失が大きいため、リン酸に対して過剰のメラミンを使用しなければならない、出発物質として高価でかつ調製が容易ではないポリリン酸を使用する必要がある、液中で反応させるため、反応後、ろ過、乾燥が必須の工程となる等の問題があった。更に、得られたピロリン酸メラミンの難燃性が不十分であったり、当該ピロリン酸メラミンを温水と接触させた場合、リン酸またはその低重合物が遊離し、導電性が増大する等、全ての点で満足すべき方法はなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、焼成工程においてメラミンの損失がなく、簡便で経済的なピロリン酸メラミンの製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の特徴は、メラミンとリン酸アンモニウムとの混合物を、低温でしかも短時間の焼成によってピロリン酸メラミンを製造する、その簡便さにある。
【0009】
すなわち、本発明に従えば、以下の発明が提供される。
(1)メラミン及びリン酸アンモニウムからなる固体原料組成物を170〜230℃で焼成することを特徴とするピロリン酸メラミンの製造方法。
(2)メラミン/リン酸アンモニウムのモル比が0.9〜1.1である(1)に記載の製造方法。
(3)前記焼成物の水による洗浄工程を含む(1)に記載の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明によるピロリン酸メラミンの製造方法を示すフローシートである。
すなわち、原料化合物であるメラミン1、リン酸アンモニウム3は、粉砕・混合工程5において充分に粉砕・混合され、メラミンとリン酸アンモニウムからなる固体原料組成物7を形成する。次いで、当該原料組成物は焼成工程9において焼成され、ピロリン酸メラミンを主体とする焼成物11が形成される。
(原料組成物)
(a)メラミン(C3H6N6)としては、純度の高い、着色のない白色の結晶粒子であることが好ましく、粒状品、粉状品いずれであってもよい。なお、製造過程に由来する種々の不純物、例えばメラム、メレム、アンメリン、アンメリド、シアヌール酸メラミン、着色有機不純物、微細な触媒粒子等が含有されている場合は、再結晶、アルカリ水溶液による洗浄、濾過等の公知の手段で精製することが好ましい。また、純度の高い市販品が入手可能でありこれを好適に使用することができる。
(b)リン酸アンモニウムとしては、リン酸2水素アンモニウム(NH4H2PO4)、リン酸水素2アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸3アンモニウム((NH4)3PO4)のいずれであってもよく、またこれらの混合物であってもよい。
【0012】
リン酸アンモニウムとしては、純度の充分高い白色の粒状品または粉状品が好ましい。また、原料として使用される湿式リン酸由来の不純物が多い場合は、再結晶により純度を高めることが好ましいが、市販で入手しうる高純度のものをそのまま使用することも可能である。
【0013】
原料のメラミン及びリン酸アンモニウムの粒子形状は、粒状品、粉状品いずれであってもよいが、次の粉砕・混合工程5において、粉砕・微細化と混合をより効果的に実施するためには、メラミン及びリン酸アンモニウム両者ともに粒状品かまたは粉状品かに揃えることが好ましい。
【0014】
また、本工程に投入する原料が十分に微細化されている場合には、混合するのみでも十分である。
【0015】
本発明においては、まず、図1のフローに示したように、出発原料であるメラミン1、リン酸アンモニウム3をそれぞれ微細な粒子とするとともに、これらが充分均一に混合した固体原料組成物7とする。
【0016】
次の焼成工程9は、典型的な固相反応であって、各成分の粒子が互いに接触している部分(界面)で進行するものであるから、当該固相反応を充分な速度で均質に行わしめるためには、原料組成物は、メラミンとリン酸アンモニウムのそれぞれが充分微細粒子化されて、その表面積が増大せしめられ、かつ、組成に偏りが無い程度に、統計的に成分濃度分布が均一となり、従って、各成分粒子相互間の接触面積が出来るだけ高いことが要請される。
【0017】
この場合、原料のそれぞれを予め粉砕・微細化してから混合してもよいが、粉砕と混合を併せて行っても何ら差し支えない。
【0018】
原料を予め粉砕・微細化してから混合する場合の粉砕・混合工程5における装置としては、例えば、ニーダーミキサー、インターナルミキサー、ミューラーミキサー、フラッシュミキサー、リボンミキサー、V型ミキサー等の混合装置が好ましい。
【0019】
また、粉砕と混合を併せて行う場合は、 例えば、ボールミル、ロッドミル、ハンマーミル、アトリションミル、ハンマーミル、ミクロンミル、コロイドミル等の粉砕しながら混合することが可能な装置が好適である。なお、少量の原料組成物を調製する場合は、乳鉢や石臼等で行ってもよい。
【0020】
粉砕・混合後の固体原料組成物におけるメラミン、リン酸アンモニウムの粒子径は、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜20μm程度である。
【0021】
本発明において、メラミン/リン酸アンモニウムの混合割合(モル比)は0.9〜1.1の範囲であり、好ましくは0.95〜1.05、さらに好ましくは1.0である。
【0022】
本発明の方法においては、従来の方法の如く、原料の一方を化学量論的当量から大幅に過剰に使用する必要はなく、メラミン/リン酸アンモニウムのモル比は、ほぼ1.0において最適にピロリン酸メラミンを得ることができるのである。(焼成工程)
本発明においては、次に、かくして調製した当該メラミン/リン酸アンモニウムからなる固体原料組成物(以下、「本固体原料組成物」または単に「本原料組成物」と称することがある。)7を、170〜230℃、好ましくは190〜210℃の温度条件において焼成を行う。
【0023】
本発明の特徴とするところは、このように、当該組成物を通常の焼成温度より、かなり低い温度において焼成することにある。即ち、この温度で当該メラミンとリン酸アンモニウムからなる固体原料組成物を焼成することにより、メラミンを実質的に昇華・損失させることなく、ほぼ定量的にリン酸アンモニウムと反応せしめて、メラミンの残留していないピロリン酸メラミンを製造することができるのである。
【0024】
焼成温度が上記温度より低すぎると、未反応原料が残存し、また、これより温度が高すぎるとメラミンの昇華・損失が過大となり、メラミンを大過剰に使用しなければ縮合反応が充分に進行しないという不都合が生じる。
【0025】
焼成時間は、焼成物の処理量や焼成炉の形式等によって多少変わるが、固体原料組成物が1gベースの時は通常20分〜5時間、好ましくは30分〜3時間、さらに好ましくは50分〜1.2時間程度、10kgベースの時は通常3時間〜30時間、好ましくは8時間〜25時間、さらに好ましくは13時間〜20時間程度である。
【0026】
焼成中は、加熱炉に酸化性気体や還元性気体を流通させる必要は特にないが、縮合反応の進行に伴なって、アンモニア等の気体が原料物質から離脱・放出されるので、縮合を円滑に進めるために、また、安全のためにも乾燥空気や窒素等の不活性気体を当該加熱炉に連続的に送入し、離脱気体を系外に同伴除去することが好ましい。
【0027】
焼成工程は、本原料組成物を上記温度に加熱しうる炉により行われる。加熱炉としては、所定の温度、時間に均一に当該原料組成物を加熱し、縮合反応が充分に進行しうるものであれば特に限定するものではなく、例えばボックス炉、バッチ式もしくは連続式の回転炉(ロータリーキルン)、電気炉、ガス加熱炉、赤外線加熱炉、移動層炉、流動層炉等が好適に用いられる。
【0028】
(水による洗浄工程)
焼成により得られた焼成物11には、通常、リン酸メラミンの低重合度体等の低分子量の副生成物(以下、単に混入副生物と称することがある。)が混入または残存している。この焼成物11は、それ自体が従来のものに比較して難燃剤等として、より有用に使用できるものであるが、当該混入副生物を除去・精製することにより、さらに純度の高いピロリン酸メラミンを得ることができ、より一層水に対する難溶解性が向上した難燃剤とすることが可能である。
【0029】
かかる低分子量の副生成物を除去する最も容易で好ましい方法は、焼成物を水により洗浄して、この副生物を溶解除去することである。一般的には、これは、化学工学上の単位操作の一つである固体抽出として論じられるべき操作であるが、ここでは、当該洗浄工程としては、当該焼成物に適当量の洗浄水を添加し、よく撹拌して、スラリー(懸濁液)とし、濾過するいわゆるリパルプ操作を行うことにより実施される。
【0030】
洗浄操作において、添加する水の量は、任意であるが、通常焼成物1部に対し、洗浄水5〜20部を使用する。なお、リパルプを行う場合、洗浄をより効果的に行うためには、撹拌機を備えた容器を使用し、濾過操作と組み合わせることが好ましい。また、底部を多孔板とした容器に焼成物を充填し、当該容器の上部から洗浄液を供給し、充填した焼成物中を接触させながら流下させる操作でもよい。更に、洗浄水としては常温の水を使用するのが一般的だが、場合によっては、温水、有機溶媒を用いた方が、より効果的に低分子量副生物を除去することが可能である。
以上の如くして得られた洗浄生成物15は、水溶解性の高い低分子量副生物の含有量が極めて小さくなっており、実質的に高純度のピロリン酸メラミンであるから、温水と接触させた場合の導電性の増加等という問題が生じない。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、例中の「%」は、特に断らない限り「質量%」を表す。
【0032】
なお、生成物の分析は、以下の方法によって行った。
(a)X線回折(XRD)
RINT 2000(理学電機社製)を用い、CuKα1のX線を用いて測定した。
(b)熱重量示差熱分析(TG−DTA)
熱分析システムSSC5200(セイコー電子工業社製)を用いて測定した。
(c)固体NMR(MAS−NMR)
JEOL JNM−EM270(270MHz)(日本電子社製)により4mmCP/MAS用プローブにより核種31PのMAS−NMR( Magic Angle Spinning − NMR)を測定した。
(d)粒子径
遠心沈降法粒径測定装置SA−CP3(島津製作所社製)により50%メジアン径を測定した。
〔実施例1〕
(1)関東化学(株)製メラミンと関東化学(株)製リン酸水素2アンモニウムとを混合モル比が1対1になるようにそれぞれ秤り取り、それらを乳鉢にて粒子径が出来るだけ均一になるように粉砕・混合し、固体原料組成物を得た。
(2)この固体原料組成物を舟形磁性皿に入れて、管状型電気炉にセットし、炉内温度が200℃に達した後、この温度を保持しながら60分間焼成した。焼成完了後、当該焼成物を電気炉から取り出し、デシケータ内で十分に冷却してピロリン酸メラミンの白色焼成物を得た。粉砕後の粒径は、2.5μmであった。
【0033】
この焼成物は、低強度の塊状物であったため、自動乳鉢で1時間解砕及び粉砕を行った。
なお、焼成中は、乾燥空気を連続的に電気炉内に流入させた。発生したアンモニア等の気体は50%硫酸水溶液に導入し接触させて除去した。
また、焼成が完結したことは、上記送入混合気体中にアンモニアが検知されないことによって確認した。検知にはアンモニア用ガス検知管を使用した。
〔実施例2〕
実施例1と同様な実験を行い、白色の焼成物を得た。この得られた焼成物1部に対し、水を10部添加して十分に攪拌、混合した後、通常の方法で濾過することにより焼成物の洗浄を行った。洗浄して得た湿潤ケーキを、80℃の温度に設定した熱風循環式乾燥機で1時間乾燥して白色の洗浄生成物を得た。
(3)評価結果
(i)図2に、実施例1で得た白色焼成物と、実施例2で得た白色洗浄生成物のX線回折(XRD)の測定結果を示した。両者ともに高純度のピロリン酸メラミンであることが確認された。
(ii)図3に、実施例1で得た白色焼成物と、実施例2で得た白色洗浄生成物のTG−DTAによる示差熱分析結果を示す。
図から明らかなように、実施例1で得られた白色焼成物が約260℃で質量減少を開始するのに対し、白色洗浄物は約270℃で質量減少を開始する。このことは、混入または残存していた溶解度の高い低分子副生物が、洗浄工程を実施することにより、溶解除去されたのではないかと推定される。
また、特に実施例2で得た白色洗浄生成物は、水に対する溶解性を有する低分子副生物を含んでおらず、温水と接触させた場合の導電性の増加という問題が生じないことを確認した。
(iii)図4に、実施例1で得た白色焼成物と、実施例2で得た白色洗浄生成物の31PのMAS−NMR測定結果を示した。実施例1の白色焼成物は、0ppm付近にオルソリン酸塩と考えられる微小のピークと−10ppm付近に縮合リン酸塩の末端基と考えられるピークを確認することができた。しかし、縮合リン酸塩の中間基と考えられる−20〜−25ppm付近のピークを確認することができなかった。NMR分析では、その面積比により試料中に含まれている成分の割合を見積もることができるが、オルソリン酸基:縮合リン酸の末端基は1:46.6であり、ピロリン酸メラミンは約98.0%の割合で合成されていることが分かった。この結果から、本発明で得られた化合物は、高純度のピロリン酸メラミンと推定される。また、実施例2で得られた白色洗浄生成物は、−10ppm付近に縮合リン酸の末端基塩と考えられるピークのみが確認できたことから、オルソリン酸塩等の低分子量副生物のない、更に高純度のピロリン酸メラミンを得ることができたと推定できる。
〔実施例3〕
原料のリン酸アンモニウムに関東化学(株)製リン酸2水素アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図5に示したが、高純度のピロリン酸メラミンであることが確認された。31PのMAS−NMR測定を行った結果より、白色焼成物は、0ppm付近にオルソリン酸塩と考えられる微小のピークと−10ppm付近に縮合リン酸塩の末端基と考えられるピークのみを確認することができた。オルソリン酸基:縮合リン酸の末端基の面積比は1:48.2であり、ピロリン酸メラミンの合成割合は98.0%であった。
〔実施例4〕
原料のリン酸アンモニウムに関東化学(株)製リン酸3アンモニウムを用いた以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図6に示したが、高純度のピロリン酸メラミンであることが確認された。31PのMAS−NMR測定を行った結果より、白色焼成物は、0ppm付近にオルソリン酸塩と考えられる微小のピークと−10ppm付近に縮合リン酸塩の末端基と考えられるピークのみを確認することができた。オルソリン酸基:縮合リン酸の末端基の面積比は1:40.8であり、ピロリン酸メラミンの合成割合は97.6%であった。
〔実施例5〕
関東化学(株)製のメラミンとリン酸水素2アンモニウムとリン酸2水素アンモニウムの混合モル比が1対0.5対0.5になるようにそれぞれ秤り取った以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図7に示したが、高純度のピロリン酸メラミンであることが確認された。31PのMAS−NMR測定を行った結果より、白色焼成物は、0ppm付近にオルソリン酸塩と考えられる微小のピークと−10ppm付近に縮合リン酸塩の末端基と考えられるピークのみを確認することができた。オルソリン酸基:縮合リン酸の末端基の面積比は1:44.9であり、ピロリン酸メラミンの合成割合は97.8%であった。
〔実施例6〕
関東化学(株)製のメラミンとリン酸水素2アンモニウムとリン酸2水素アンモニウムとリン酸3アンモニウムの混合モル比が1対0.3対0.3対0.3になるようにそれぞれ秤り取った以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図8に示したが、高純度のピロリン酸メラミンであることが確認された。31PのMAS−NMR測定を行った結果より、白色焼成物は、0ppm付近にオルソリン酸塩と考えられる微小のピークと−10ppm付近に縮合リン酸塩の末端基と考えられるピークのみを確認することができた。オルソリン酸基:縮合リン酸の末端基の面積比は1:45.4であり、ピロリン酸メラミンの合成割合は97.8%であった。
〔比較例1〕
固体原料組成物を舟形磁性皿に入れて、管状型電気炉にセットし、炉内温度が160℃に達した後、この温度を保持しながら60分間焼成した以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図9に示したが、回折角26度付近にとても強いピーク、17度、28度付近に強いピークを持つピロリン酸メラミンとは異なる回折パターンを持つ生成物であることが分かった。
〔比較例2〕
固体原料組成物を舟形磁性皿に入れて、管状型電気炉にセットし、炉内温度が250℃に達した後、この温度を保持しながら60分間焼成した以外は、実施例1と同様な実験を行い白色の焼成物を得た。得た白色焼成物のX線回折(XRD)の測定結果を図11に示したが、回折角26.5度付近に非常に強いピーク、15度と18度付近に強いピークを持つ、ピロリン酸メラミンとは異なる回折パターンを持つ生成物であることが分かった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、従来法に比べて極めて簡便な方法で、かつ経済的に高純度のピロリン酸メラミンが得られる。また、低分子量の不純物を殆ど含有しないため、吸湿によって導電性が増大するという欠点を有しないピロリン酸メラミンを提供することができ、樹脂等に混練された場合にも着色を伴わず、従来のものに比較してより優れた難燃剤等として使用することができる。
【0035】
本発明の方法により得られたピロリン酸メラミンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレンなどのポリオレフィンを始めとし、ポリカーボネート、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ポリアミド、ポリエステル、ポリサルホン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン等、種々の樹脂の成形体、塗料、繊維製品等の難燃剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるピロリン酸メラミンの製造方法を示すフローシート
【図2】白色焼成物と白色洗浄生成物のX線回折(XRD)チャート
【図3】白色焼成物と白色洗浄生成物の示差熱分析チャート
【図4】白色焼成物と白色洗浄生成物の31PのMAS−NMRチャート
【図5】実施例3で得られた白色焼成物のXRDチャート
【図6】実施例4で得られた白色焼成物のXRDチャート
【図7】実施例5で得られた白色焼成物のXRDチャート
【図8】実施例6で得られた白色焼成物のXRDチャート
【図9】比較例1で得られた白色焼成物のXRDチャート
【図10】比較例2で得られた白色焼成物のXRDチャート
Claims (4)
- メラミン及びリン酸アンモニウムからなる固体原料組成物を、170〜230℃で焼成することを特徴とするピロリン酸メラミンの製造方法。
- メラミン/リン酸アンモニウムのモル比が0.9〜1.1である請求項1に記載の製造方法。
- 前記焼成物の水による洗浄工程を含む請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記リン酸アンモニウムが、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、リン酸3アンモニウムの少なくとも1種からなる請求項1〜3に記載のピロリン酸メラミンの製造方法。
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