JP4777670B2 - アンモニア合成触媒及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ルテニウム系のアンモニア合成触媒及びその製造方法に関し、特に、セリアとマグネシアを含む担体にルテニウムが担持されたアンモニア合成触媒及びその製造方法に関する。
アンモニアの合成は、約1世紀にわたりハーバー法により工業レベルで大規模に行われている。ハーバー法は窒素と水素を原料としてアンモニアを合成するものであり、アルミナ、酸化カリウム等を助触媒とした鉄を主成分とする鉄系の3元触媒が主として用いられる。
しかしながら、ハーバー法を用いたアンモニア合成においては、窒素と水素の平衡関係の必要性から反応器でのワンパス転化率が低く、反応効率を大きくするためには反応ガスを再循環させるとともに、合成したアンモニアを常に取り除く必要がある。また、温度400〜500℃、圧力200〜250気圧という高温、高圧条件下で操業されるため、多大な経費を必要とする。
これに対して、低温、低圧条件下であっても、高いアンモニア合成活性を有する触媒として、ルテニウム系のアンモニア合成触媒が知られている。一般に、アンモニア合成における律速段階は、窒素分子の解離ステップであるため、触媒活性の高さは、アンモニアの原料となる窒素分子の三重結合を切り離し、ルテニウム等の活性化物質上で吸着窒素原子に変換する能力の高さに起因する。また、触媒の活性は、担体となる材料の種類によっても大きく変化する。このため、現在に至るまでに、アルミナ、マグネシア、希土類酸化物、活性炭等の種々の担体材料について検討がなされている。
例えば、マグネシア等の塩基性酸化物を担体とし、これに活性化物質としてルテニウムを担持させたルテニウム系触媒が知られている(非特許文献1参照)。このルテニウム系触媒では、電子が塩基性酸化物から活性化物質に流れ込む(電子供与)ことにより、活性化物質上に吸着した窒素分子の解離が容易になると考えられている。また、電気陰性度の大きな促進剤を添加した場合にあっては、促進剤からも活性化物質に電子が流れ込むため、窒素分子の解離が更に起こり易くなるとされている。
また、アルミナを担体とし、これに活性化物質としてルテニウムを担持させたルテニウム系触媒が知られている(非特許文献2参照)。非特許文献2で用いられるアルミナは、触媒の担体として最も一般的に使用されているものである。アルミナは弱酸性化合物であり、電子供与能力は塩基性化合物よりも低いため、担体として比較した場合には、上記のマグネシアを担体とした触媒よりも触媒活性が低くなる。通常、アルミナ等の酸性化合物を担体として用いる場合には、電子供与能力を向上させて高活性な触媒とする目的で、電気陰性度の大きな促進剤を多量に添加しなくてはならない(非特許文献3参照)。
また、活性炭を担体とし、これに活性化物質としてルテニウムを担持させたルテニウム系触媒も知られている(非特許文献4、特許文献1、及び、特許文献2参照)。活性炭に代表されるカーボン材料は、π電子軌道を有することから、様々な化学反応を引き起こす性質を有する。このため、活性炭を担体として用いることにより、電子供与能力を向上させて高活性な触媒とするものである。
さらには、希土類酸化物を担体とし、これに活性化物質としてルテニウムを担持させたルテニウム系触媒が知られている(非特許文献5、特許文献3、及び、特許文献4)。これらの文献に記載された触媒は、希土類酸化物であるセリアが、促進剤としてではなく担体として使用されたものである。その活性値は、常圧、315℃で約1150μmol/h・g−cat(Ru:3wt.%)とされている(非特許文献5参照)。また、Ru/CeO(Ru:1wt.%)のアンモニア合成速度は、80kPa、315℃においても、306μmol/h・g−catであり(特許文献3参照)、Ru/CeO(Ru:2.5wt.%)のアンモニア合成速度は、常圧、315℃で、250μmol/h・g−catとされている(特許文献4参照)。
特開平09−168739号公報 特開平09−239272号公報 特開平06−079177号公報 特開平08−141399号公報 「Preparation and Characterization of chlorine-free ruthenium catalysts and the promoter effect in ammonia synthesis.」 K. Aika, T. Takano and S. Murata, Journal of Catalysis., 136, 126-140, (1992) 「Preparation and Characterization of Chlorine-free Ruthenium Catalysts and the Promoter Effect in Ammonia Synthesis.」 S. Murata and K. Aika, Journal of Catalysis, 136, 110-117, (1992). 「Preparation and Characterization of Chlorine-Free Ruthenium Catalysts and the Promoter Effect in Ammonia Synthesis.」 S. Murata and K. Aika, Journal of Catalysis, 136, 118-125, (1992). 「Studies on kinetics of ammonia synthesis over ruthenium catalyst supported on active carbon.」 Z. Kowalczyk, S. Jodzis and J. Sentek, Applied Catalysis A., 138, 83-91, (1996). 「アンモニア合成用 Ru/CeO2 触媒の作用機構」丹羽勇介、秋鹿研一,78th CATSJ Meeting Abstract No.4A04, Vol.38, No.6, (1996)
しかしながら、非特許文献1で開示されている触媒、即ち、マグネシア等の塩基性の強い酸化物を担体として用いたルテニウム系触媒は、マグネシアの高い電子供与性に起因して高い反応活性を示す反面、二酸化炭素等の酸性気体の吸着が著しい。また、担体の表面に酸性気体が吸着した場合には、マグネシア等の電子供与性が低下し、アンモニアの合成活性が低下する。このため、このような触媒を用いてアンモニア合成を行う場合には、原料として使用する気体の純度を高くする必要がある。
また、非特許文献3で開示されている触媒、即ち、アルミナを担体としたルテニウム系触媒に電気陰性度の大きな材料を促進剤として添加して電子供与性を向上させた触媒では、促進剤を多くのせた場合には、担体に担持された活性化物質であるルテニウムの表面が促進剤によって覆われてしまう。逆に、促進剤が少ないと活性は低い。アンモニア合成反応は、活性化物質であるルテニウム上で反応が進むと考えられており、促進剤によりルテニウムの表面が覆われて露出部分が少なくなると、活性点(反応点)が減少するため、結果として活性が阻害されてしまう。
また、非特許文献4、特許文献1、及び、特許文献2で開示されている触媒、即ち、活性炭を担体としたルテニウム系触媒は、活性炭を担体として使用するのみでは十分な電子供与能力を発現しない。このため、促進剤の添加が必須となるが、活性炭は電子授与能力を有しており、活性物質への電子供与のためには促進剤が多く必要である。また、活性炭粉末の比表面積が非常に高いため、活性炭に促進剤を均一に添加することが困難である。
さらには、非特許文献5、特許文献3、及び、特許文献4で開示されている触媒、即ち、セリアを担体として使用したルテニウム系触媒は、ある程度の触媒活性は得られるものの、いまだ満足できるものではなく、更なる活性の向上が求められている。
ところで、上記の特許文献の例における触媒の製造方法としては、最も簡便であり一般的である含浸法が用いられている。含浸法による触媒の製造は、担持した活性化物質のほとんどが表面に露出しているという利点がある反面、担体として使用する酸化物を予め作製、もしくは購入して準備をしておく必要がある。また、担体として使用する粉体の特性により、担持状態が大きく影響を受ける。特に、比表面積の小さい粉体を担体として用いた場合には、多くの活性物質を担持することができないため、触媒量あたりの活性に限界が生じてしまう。
その他の製造方法として、ゾルゲル法を用いて、担体ゲル等の前駆体段階において活性化物質を担持させる方法が知られている。しかしながら、一般的には、添加した活性化物質が担体に埋没し、担体の表面に露出した活性化物質の量が減少する結果、触媒活性が低下してしまう。このような埋没を防ぐためには、活性化物質であるルテニウム近傍の化合物化を低温で促進させ、微細な化合物として、ガスの通気経路を確保する必要があり、その製造は容易ではない。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、低温、低圧下であっても、原料の気体の純度に影響を受けることなく、高い活性を有するアンモニア合成触媒を提供することを目的とする。また、簡便且つ安価に、このアンモニア合成触媒を製造できるアンモニア合成触媒の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、セリアとマグネシアを含む担体にルテニウムを担持させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 水素および窒素含有ガスからアンモニアを合成するアンモニア合成触媒であって、セリア及びマグネシアを含む担体にルテニウムが担持されたアンモニア合成触媒。
(1)のアンモニア合成触媒によれば、セリア及びマグネシアを含む担体を用いることにより、マグネシアに起因する二酸化炭素等の酸性気体の吸着を抑制しつつ、セリア単独では得られない高い活性が得られる。これは、セリアとマグネシアを併用することにより、マグネシアの粒成長が抑制されて微細化され、ルテニウムが均一に分散することに加え、担体表面の電子状態が不安定となって、担持されたルテニウム金属の活性点への電子供与が行われ易くなり、その結果、吸着された窒素分子の三重結合の解離が促進されるからである。アンモニア合成における律速段階は、窒素分子の解離ステップであることから、窒素原子に変換する能力が高い(1)のアンモニア合成触媒によれば、従来品よりも高いアンモニア合成活性を発揮できる。
(2) 前記セリア及びマグネシアの総モル数に対する前記マグネシアのモル数の比は、0.25以上0.75以下である(1)記載のアンモニア合成触媒。
(2)のアンモニア合成触媒によれば、セリアとマグネシアの総モル数に対するマグネシアのモル数の比を0.25以上0.75以下とすることにより、高い触媒活性を実現し、十分なアンモニア合成速度を得ることができる。
(3) 前記担体のX線回折スペクトルにおけるピークは、主としてセリア由来である(1)または(2)記載のアンモニア合成触媒。
(3)のアンモニア合成触媒は、セリア及びマグネシアを含む担体のX線回折スペクトルにおけるピークが、主としてセリア由来となるものである。これは、担体に含まれるマグネシア粒子がセリアによって被覆され、マグネシアに基づくX線回折パターンがほとんど観察できなかったことによる。しかしながら、元来、マグネシアの方が微細で表面が大きい粉末となり易く、結果としてマグネシアをコアとし、セリアをシェルとするコア−シェル型の粉末となり、セリウムの表面積はマグネシアの添加により向上する。
(4) 前記担体の最表面には、3価のセリウムと4価のセリウムとが共存している(1)から(3)いずれか記載のアンモニア合成触媒。
(4)のアンモニア合成触媒によれば、担体の最表面には、3価のセリウムと4価のセリウムが共存していることから、可逆的且つ部分的な酸化還元反応が起こる。このため、担持されたルテニウム金属の活性点への電子供与が行われ易くなり、アンモニア合成の触媒活性を向上させることができる。
(5) 水素および窒素含有ガスからアンモニアを合成するアンモニア合成触媒の製造方法であって、セリウム化合物含有溶液とマグネシウム化合物含有溶液を用いて酸化物前駆体を生成させる酸化物前駆体生成工程と、ルテニウム含有化合物を含む溶液を用いて前記酸化物前駆体に前記ルテニウムを担時させるルテニウム担持工程と、前記酸化物前駆体の酸化物化と、担持された前記ルテニウムの金属化を実質的に同時に行う熱処理工程と、を含むアンモニア合成触媒の製造方法。
(5)のアンモニア合成触媒の製造方法は、酸化物前駆体生成工程と、ルテニウム担持工程と、熱処理工程とを含むものである。ルテニウム担持工程では、従来のように既に酸化物化した物質への担持と異なり、酸化物の前駆体すなわち金属水酸化物に対して担持を行うため、セリウム化合物とマグネシウム化合物との間に、ほぼ均一且つ微細に分散した状態で担持させることができる。このため、セリウム化合物とマグネシウム化合物の結晶成長を抑制することができ、微細な結晶構造を形成することが可能となる。したがって、担体にルテニウム(活性化物質)が埋没することを抑制し、触媒の表面に露出したルテニウム(活性化物質)を確保できるため、高活性を有する触媒が得られる。
(6) 前記セリウム化合物をセリウムの水溶性金属塩とし、前記マグネシウム化合物をマグネシウムの水溶性金属塩とし、前記酸化物前駆体生成工程を共沈法により行う(5)記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
(6)のアンモニア合成触媒の製造方法によれば、セリウム化合物をセリウムの水溶性金属塩とし、マグネシウム化合物をマグネシウムの水溶性金属塩とし、酸化物前駆体の生成を共沈法により行うことにより、セリウム及びマグネシウムを均一に分散させることが可能となる。このため、微細な結晶構造を有する触媒を製造することができ、ルテニウム(活性化物質)が担体に埋没することを抑制し、触媒表面に露出したルテニウムを確保できるため、高活性を有する触媒の製造が可能となる。
(7) 前記ルテニウム含有化合物をルテニウムカルボニル錯体とし、前記ルテニウム担持工程をテトラヒドロフラン溶液中で行う(5)または(6)記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
(7)のアンモニア合成触媒の製造方法は、ルテニウム含有化合物をルテニウムカルボニル錯体とし、担持工程をテトラヒドロフラン溶液中で行うものである。ルテニウム含有化合物をルテニウムカルボニル錯体とし、ルテニウム担持工程をテトラヒドロフラン(THF)溶液中で行うことにより、水酸基を含む酸化物前駆体とルテニウムカルボニル錯体とがルテニウム(II)カルボニル錯体を形成し、これが架橋することでセリア及びマグネシアの結晶成長を抑制して微細な結晶を得ることができる。このため、ルテニウム(活性化物質)が担体に埋没することを抑制でき、触媒表面に露出したルテニウムを確保できるため、高活性を有する触媒の製造が可能となる。
(8) 前記熱処理工程を減圧下で行う(5)から(7)いずれか記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
(8)のアンモニア合成触媒の製造方法は、酸化物前駆体の酸化物化と、担持されたルテニウムの金属化を実質的に同時に行うための熱処理工程を、減圧下にて行うものである。減圧下にて熱処理を行うことにより、ルテニウム含有化合物を含む溶液が気化して微細な酸化物表面にルテニウムが介在する構造とすることができる。したがって、ルテニウム(活性化物質)が担体に埋没することを抑制でき、触媒の表面に露出するルテニウムがより多く存在するため、高活性の触媒を製造することが可能となる。
(9) 前記酸化物前駆体を構成する複数の粒子は、水酸基を有するものであり、前記複数の粒子の水酸基と、前記ルテニウムカルボニル錯体とにより、ルテニウム(II)カルボニル錯体を形成させ、このルテニウム(II)カルボニル錯体により、前記複数の粒子を架橋させる(7)または(8)記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
(9)のアンモニア合成触媒の製造方法は、酸化物前駆体を構成する複数の粒子が水酸基を有するものであり、この水酸基と、ルテニウムカルボニル錯体との反応により形成されるルテニウム(II)カルボニル錯体を介して、酸化物前駆体を構成する複数の粒子に架橋構造を形成するものである。ルテニウム(II)カルボニル錯体を介して橋かけ構造を形成することにより、セリアとマグネシアの結晶成長を抑制し、その結果、高比表面積のアンモニア合成触媒を得ることが可能となる。
本発明のアンモニア合成触媒によれば、低温、低圧下であっても、原料の気体の純度に影響を受けることなく、高い活性を有するアンモニア合成触媒を提供できる。また、簡便且つ安価に、このアンモニア合成触媒を製造できるアンモニア合成触媒の製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<アンモニア合成触媒の合成>
本実施形態に係るアンモニア合成触媒の合成フローチャートを図1に示す。本実施形態では、先ず、セリアの原料となる酢酸セリウム水溶液と、マグネシアの原料となる酢酸マグネシウム水溶液とを混合し、これにアンモニア水を添加することにより、それぞれの溶液ゾルである水酸化セリウムと水酸化ルテニウムを共沈生成させる。その後、水洗し、酸化物前駆体となる水酸化セリウムと水酸化マグネシウムの混合溶液ゾルの回収を行う(酸化物前駆体生成工程)。次いで、得られた酸化物前駆体に、ルテニウム含有化合物であるルテニウムカルボニル錯体のテトラヒドロフラン(THF)溶液を添加し、攪拌後、溶媒留去を行い、ルテニウムが酸化物前駆体にルテニウム(II)カルボニル錯体を形成する形で担持された担持酸化物前駆体の回収を行う(ルテニウム担持工程)。最後に、得られた担持酸化物前駆体を真空中で熱処理することにより、酸化物前駆体の酸化物化とルテニウムの金属化を実質的に同時に行い、アンモニア合成触媒を得る(熱処理工程)。
以下、それぞれの工程に分けて説明する。
[酸化物前駆体生成工程]
本実施形態に係る酸化物前駆体生成工程は、先ず、酢酸セリウム水溶液と酢酸マグネシウム水溶液とをそれぞれ、セリア及びマグネシアの出発物質として準備し、これらを混合する。次いで、アンモニア水を添加することにより、水酸化セリウムと水酸化マグネシウムを共沈させる。その後、共沈物を水洗し、回収を行うことにより、酸化物前駆体となる水酸化セリウムと水酸化マグネシウムの混合溶液ゾルを得る。
本発明に係る酸化物前駆体生成工程は、最終的に得られるアンモニア合成触媒の担体となる、セリア及びマグネシアの前駆体である酸化物前駆体を生成する工程である。本発明においては、セリアの原料としてセリウム化合物含有溶液を用い、マグネシアの原料としてマグネシウム化合物含有溶液を用いて、酸化物前駆体を生成させる。セリウム化合物含有溶液とマグネシウム化合物含有溶液からの水酸化物である酸化物前駆体は、それぞれの溶液から溶液ゾルを生成させた後、混合して酸化物前駆体としてもよいし、セリウム化合物含有溶液とマグネシウム化合物含有溶液とを混合した後に、両者の水酸化物を主成分とする混合溶液ゾルを生成させてもよい。
また、出発物質となるセリウム化合物含有溶液とマグネシウム化合物含有溶液を形成する溶媒は、特に限定されるものではなく、同一であっても異なっていてもよい。例えば、共沈法を用いて溶液ゾルとする場合には、同一であることが好ましい。また、本発明においては、得られるゾルが水溶性である場合には、後のルテニウム担持工程において、ルテニウムカルボニル錯体と水酸基によりルテニウム(II)カルボニル錯体が形成され、ルテニウムを高分散させた状態での担持が可能となる。このため、溶媒として水を使用し、出発物質をそれぞれの水溶性金属塩とし、共沈法により、セリウムの溶液ゾルである水酸化セリウムと、マグネシウムの溶液ゾルである水酸化マグネシウムの混合物を得ることが好ましい。出発物質として水溶性金属塩を用いる場合には、例えば、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いることが可能である。本発明においては、酢酸塩を用いることが好ましい。
[ルテニウム担持工程]
本実施形態に係るルテニウム担持工程においては、上記の酸化物前駆体生成工程で得られた水酸化セリウム及び水酸化マグネシウムの混合溶液ゾルに、ルテニウムカルボニル錯体のテトラヒドロフラン(THF)溶液を添加し、攪拌を行う。攪拌により、ルテニウムカルボニル錯体は、水酸化セリウムと水酸化マグネシウムとの間に上述したルテニウム(II)カルボニル錯体を形成し、均一且つ微細に分散される。その後、溶媒を留去し、ルテニウム担持酸化物前駆体を回収する。
本実施形態に係るルテニウム担持工程の状態を図2に示す。図2(A)は、本実施形態において、酸化物前駆体ルテニウムカルボニル錯体を担持させた後、真空中で熱処理工程を行ったときの状態図である。これに対して、図2(B)は、従来法のようにルテニウムカルボニル錯体を用いずに熱処理工程を施したときの状態図である。
図2(A)に示されるように、本実施形態において、前工程で得られた水酸化セリウムゾルと水酸化マグネシウムゾルの混合物である酸化物前駆体に対して、ルテニウムカルボニル錯体の担持を行うと、ルテニウムカルボニル錯体が、水酸化セリウムと水酸化マグネシウムとの間に均等且つ微細に分散された状態となる(ルテニウムカルボニル錯体が、水酸化セリウムと水酸化マグネシウムの水酸基と反応してルテニウム(II)カルボニル錯体となり、これが両者を架橋する形の介在物となる)。その後、次工程の熱処理工程を行うと、セリアとマグネシアとが生成すると同時に、ルテニウムの金属化が行われ、目的とするアンモニア合成触媒が得られる。また、本実施形態においては、担体の原料となる水酸化セリウムと水酸化マグネシウムは、多量の水酸基を有することから、水酸基の求核反応により、ルテニウムのカルボニル錯体と効率良く反応し、ルテニウム(II)カルボニル錯体を生成する。このため、高分散状態での担持が可能となり、微細な結晶を確保することができる。
ここで、ルテニウムカルボニル錯体を添加して調製した場合と、添加せずに調製した場合とで、粉末のBET比表面積値を比較した結果を表1に示す。
BET比表面積は、単位重量あたりの表面積を表す指標であるため、セリアのようにルテニウム金属の担持により容易に還元され、焼結がかえって進むような成分が多く含まれる場合には逆の傾向にある。このことを加味しても、表1の比較から、結晶粒成長に対してルテニウムカルボニル錯体を添加した効果は見かけ上見られない。むしろ、図9から酸化セリウムのmol%が大きくなるに従ってBET比表面積値が大きくなっていることから、水酸化マグネシウムの添加により、より水酸化物として沈殿し易い微細な水酸化マグネシウムが水酸化セリウムのコアとなった沈殿物となり、脱水重合時の結晶成長を阻害していると考えられる。これは、セリアがマグネシアと互いに反応しない化合物であることによる。
本発明に係るルテニウム担持工程は、ルテニウム含有化合物を含む溶液を用いて、前工程で得られた酸化物前駆体にルテニウムを担持させる工程である。ルテニウム担持工程は、触媒担体が酸化物前駆体すなわち水酸化物の状態のときに、ルテニウム化合物を担持させることに特徴がある。本発明におけるルテニウム担持工程の存在意義は、酸化物前駆体であるセリウム化合物とマグネシウム化合物との間に、介在物としてルテニウム化合物が均一且つ微細に分散した状態を作り出すことにある。ルテニウム担持工程の次工程となる熱処理工程においては、酸化物前駆体の酸化物化が行われるが、この際にルテニウム化合物が介在していると、担体となるセリウム化合物とマグネシウム化合物とが反応して複合化合物を形成しないことから、脱カルボニル後も化合物表面にルテニウムが存在する。このため、ルテニウム(活性化物質)が担体中に埋没してしまうことを防止でき、高活性の触媒を得ることができる。
本発明に係るルテニウム担持工程において用いられるルテニウム含有化合物を含む溶液は、特に限定されるものではないが、例えば、前工程の酸化物前駆体が水酸基を含む場合には、水酸基の求核反応を利用して、酸化物前駆体と反応できる基を有するものが望ましい。本発明においては、ルテニウム含有化合物としては、ルテニウムカルボニル錯体を用いることが好ましい。ルテニウム含有化合物としてカルボニル錯体を用いる場合には、カルボニル基と、酸化物前駆体に存在する水酸基とが効率良く反応し、ルテニウム(II)カルボニル錯体を生成するため、ルテニウム金属が均一且つ微細に分散した構造となると考えられる。
また、本発明におけるルテニウム担持工程は、テトラヒドロフラン(THF)溶液中で行うことが好ましい。ルテニウム担持工程で用いる溶媒に求められる要件としては、揮発し易く、単純な構造で且つルテニウムカルボニル錯体の溶解度が高いことである。低温で揮発する単純構造の主な溶媒の室温状態におけるルテニウムカルボニル錯体溶解度は、THFが最も高く、次いで、アセトン、アセトニトリル、シクロヘキサン、イソプロパノール、エタノール、メタノールの順である。基本的には溶解する溶媒であれば担持はできるが、溶解度が低い場合には希薄溶液となるため、工程上、費用がかかることになる。また、本発明においては、ルテニウム含有化合物を予めTHFに溶解させて、これを前工程によって得られた酸化物前駆体に添加することも可能である。
[熱処理工程]
本実施形態に係る熱処理工程は、ルテニウム担持工程を経て得られた担持酸化物前駆体を真空中で熱処理するものである。これにより、酸化物前駆体の酸化物化と、ルテニウムの金属化とが実質的に同時に行われ、目的とする本発明のアンモニア合成触媒が得られる。
本実施形態に係る熱処理工程の状態を図3に示す。図3(A)は、本実施形態に係る酸化物前駆体生成工程及びルテニウム担持工程を経ることにより得られた、ルテニウム担持酸化物前駆体を真空中で熱処理したときの状態図である。これに対し、図3(B)は、ルテニウム担持酸化物前駆体を空気中で熱処理したときの状態図である。
図3(A)に示されるように、熱処理工程を真空条件下で実施した場合には、焼成中にルテニウムカルボニル錯体が分解しやすいことから、脱カルボニルの結果、ルテニウムを微細且つ均一に分散させることができる。このため、最終的に得られるアンモニア合成触媒は、ルテニウム(活性化物質)が担体に埋没することを防止できる。
また、本実施形態に係る熱処理工程における焼成では、以下に示す反応式1によるセリアの還元反応が進行していると考えられる。
反応式1の左辺のCeOは、ルテニウムが存在する近傍では低温から還元反応を開始することができる。また、溶媒として使用したTHFは水酸化物に吸着されており、大気中で加熱する場合、これによりセリアは同様に還元されると考えられる。
これにより、図3(B)に示されるように、熱処理工程を空気中で実施した場合には、セリアの粒成長が起こるため、高い濃度のマグネシアを含む場合でもX線回折スペクトルにおいてマグネシアのピークは依然として出現せず、得られる触媒の吸着表面積値(BET値)も小さくなる。これは、酸素が十分に存在する条件(空気中)で焼成した場合でも、COやTHFのためにセリアが還元され、焼結が進むことを示している。
熱処理工程を空気中で実施した場合と真空中で実施した場合のBET比表面積値を表2に示す。
本発明に係る熱処理工程は、前工程であるルテニウム担持工程において得られたルテニウムが担持された酸化物前駆体を、減圧下で熱処理する工程である。本工程では、セリウム化合物及びマグネシウム化合物からなる酸化物前駆体の酸化物化と、担持されたルテニウムの金属化を実質的に同時に行い、最終的にアンモニア合成触媒を得る。熱処理工程を減圧下で行うのは、熱処理工程における触媒焼成において、縮合等により発生する物質や溶媒として使用したTHFが気化し易いため、担体となるセリアの還元に伴う結晶成長を抑制できるためである。本発明に係る熱処理工程は、減圧下で行われるものであれば特に限定されないが、上記の効果をより発揮させるためには、真空下で行うことが好ましい。
<アンモニア合成触媒の評価>
本発明により得られたアンモニア合成触媒は、水素と窒素を原料として、アンモニアを合成する際に用いられる触媒である。したがって、アンモニア合成触媒の評価は、例えば、膜反応器を用いてアンモニア合成速度を求めることにより可能である。
アンモニア合成触媒の評価に用いる膜反応器の構成を図4に示す。この膜反応器は、パラジウム−銀合金膜等の膜に、アンモニア合成触媒を塗布して反応膜を作成したものであり、触媒粉末の接触点をもとにアンモニア合成速度を求めることができる。膜反応器を用いた評価では、接触点の増加はアンモニア合成速度の増大を意味する。本発明のアンモニア合成触媒は微細粉末であるため、反応膜と触媒粉末の接触点が増加するため、剥がれにくい膜を作成することができる。
以下、図4に示す膜反応器を用いたアンモニア合成について説明する。膜反応器1では、先ず、パラジウム膜等にアンモニア触媒を塗布することにより、反応膜となる触媒層5を作成する。図4に示されるように、膜反応器1では、上部流路2には水素を、下部流路3には窒素を、それぞれ連続的に供給する。そうすると、上部流路(水素流路)2側では、水素分子(H)が水素透過膜4に吸着されて解離することで吸着水素(H(a))となり、水素透過膜4内に原子状水素(H)の形で取り込まれる。原子状水素(H)は、濃度勾配を駆動力として、水素透過膜4中を触媒層5側に移動する。一方、下部流路(窒素流路)3側では、分子上の窒素分子(N)が、触媒層の触媒に吸着され(N(a))、さらに吸着窒素原子(N(a))に分解される。このように、水素は水素透過膜4で、窒素は触媒層5の触媒で、それぞれ独立に活性状態となる。このため、従来のアンモニア合成方法における製造条件と比較して、温和な条件でアンモニアの合成が可能となる。水素透過膜4中を移動してきた原子状水素(H)は、触媒層5の触媒に到達すると吸着水素原子(H(a))となる。一方、水素透過膜4中を移動してきた原子状水素(H)は、触媒層5の触媒に到達すると吸着水素原子(H(a))となる。その後、吸着水素原子(H(a))3個と、吸着窒素原子(N(a))1個とが逐次結合し、アンモニア(NH)が生成する。生成したアンモニアは、触媒から脱離した後、連続的に供給される窒素により、窒素流路3の下流側に移動する。この膜反応器においては、原子状の吸着水素原子(H(a))を供給する水素透過膜4と、触媒の接触点を稼ぐ(数を多くする)ことが重要であり、このため、触媒が微細な粉末であるほど、アンモニア合成能力が高く、合成速度が増大する。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
[酸化物前駆体生成工程]
セリア及びマグネシアの総モル数に対するセリアのモル数の比が50mol%の場合について説明する。先ず、セリウムの酢酸塩水溶液1.5×10−2mol/150ml及びマグネシウムの酢酸塩水溶液1.5×10−2mol/150mlを混合し、攪拌した。次に、28%アンモニア水300mlに、得られたセリウムの酢酸塩水溶液とマグネシウムの酢酸塩水溶液の混合物をゆっくりと滴下し、共沈法により、水酸化セリウムと水酸化マグネシウムの混合溶液ゾルを作成した。得られた混合溶液ゾルを回収、水洗し、酸化物前駆体を得た。
[ルテニウム担持工程]
ルテニウムカルボニル錯体のテトラヒドロフラン溶液を準備し、酸化物前駆体生成工程で得られた水酸化セリウムと水酸化マグネシウムの混合溶液ゲル重量に対し、ルテニウムが5重量%となるように、ルテニウムカルボニル錯体のテトラヒドロフラン溶液と酸化物前駆体を混合した。これを一晩攪拌することにより、ルテニウムカルボニル錯体を酸化物前駆体に含浸担持させた。その後、減圧留去により溶媒を除去することにより、ルテニウムカルボニル錯体が担持した酸化物前駆体を得た。
[熱処理工程]
得られたルテニウムカルボニル錯体が担持した酸化物前駆体を、90℃で12時間乾燥させた後、乳鉢にて粉砕して真空下、450℃で2時間焼成し、アンモニア合成触媒を得た。
<実施例2>
酸化物前駆体生成工程において、セリア及びマグネシアの総モル数に対するセリアのモル数の比を25mol%とした以外は、実施例1と同様の操作により、アンモニア合成触媒を製造した。
<実施例3>
酸化物前駆体生成工程において、セリア及びマグネシアの総モル数に対するセリアのモル数の比を75mol%とした以外は、実施例1と同様の操作により、アンモニア合成触媒を製造した。
<比較例1>
酸化物前駆体生成工程において、セリウムの酢酸塩水溶液を用いずに、マグネシウムの酢酸塩水溶液のみを用いた以外は、実施例1と同様の操作により、アンモニア合成触媒(マグネシシアのみが担体)を製造した。
<比較例2>
酸化物前駆体生成工程において、マグネシウムの酢酸塩水溶液を用いずに、セリウムの酢酸塩水溶液のみを用いた以外は、実施例1と同様の操作により、アンモニア合成触媒(セリアのみが担体)を製造した。
<評価>
[透過型電子顕微鏡(TEM)観察]
透過型電子顕微鏡(TEM)による拡大観察により、分散状態の確認を行った。その一例として、実施例1で得られたアンモニア合成触媒(セリア:50mol%)のTEM写真を図5に示す。セリアとマグネシアを含む担体の粒子は非常に細かく、また、ルテニウム金属が担体上に、均一且つ微細に分散していることが確認された。
[比表面積、H吸着量、金属分散度、活性化エネルギー]
実施例1〜3、比較例1〜2により得られた触媒の各種物性を表3に示す。比表面積はBET法により求めた。また、アンモニア合成触媒におけるルテニウム金属の分散度は、水素のパルス吸着によりH吸着量を測定した後に、水素がルテニウム表面で原子に解離していると仮定して計算した。活性化エネルギーは、常圧流通式ガラス反応器に合成ガス(3H+N)を通じ、生成ガスを0.2M硫酸で捕集し、そのpH値の変化から算出した。
実施例1〜3のアンモニア合成触媒のルテニウム金属の分散度は、セリア、マグネシアを単独で担体とした比較例1及び2と比較して、大きいことが分かる。ルテニウム金属の分散度が向上すると、H吸着量の増大や活性化エネルギーの減少を招き、アンモニア合成触媒の優れた活性に寄与すると考えられた。
[アンモニア合成速度]
実施例で得られたアンモニア合成触媒を、パラジウム−銀合金膜に塗布することにより作製した反応膜を用いて、膜反応器による実験を行った結果を図10に示す。本発明のアンモニア合成触媒は、触媒が微細な粉末であるため、接触点が増加することから、アンモニア合成速度の高速化が達成されていることが確認された。特に、実施例1で得られたセリア50mol%の触媒は、最も大きいアンモニア合成速度を有していた。
また、実施例及び比較例で得られたアンモニア合成触媒について、300℃、325℃、350℃の各条件下におけるアンモニア合成速度を比較した結果を図6に示す。横軸はセリアとマグネシアの総モルに対するマグネシアのモル含有率であり、縦軸はアンモニア合成速度である。図6に示されるように、マグネシアのモル含有率が50mol%の触媒において、最も高い活性が得られた。マグネシアのモル含有率が50mol%のときの活性は、マグネシア単独での担体による触媒(100mol%)の4倍程度、セリア単独での担体による触媒(0mol%)の1.4倍程度であった。この結果から、本発明のアンモニア合成触媒においては、セリア及びマグネシアの総モル数に対するマグネシアのモル数の比が、0.25以上0.75以下(25mol%以上75mol%以下)の範囲であれば、アンモニア合成活性の高い触媒が得られることが確認された。
[X線回折測定(XRD)]
実施例及び比較例で得られたアンモニア合成触媒について、X線回折測定(XRD)を行った結果、得られたX線回折スペクトルを図7に示す。図7に示されるように、これらのX線回折スペクトルにおけるピークは、全てマグネシアもしくはセリアに帰属され、これら以外のピークは確認されなかった。8配位のMg2+、Ce4+のイオン半径はそれぞれ0.89Å、0.97Åであり、イオン半径のサイズから考えると、固溶している可能性もあったが、図7によれば、セリアの顕著なピークシフトは見られなかった。また、担体を構成する材料としてセリアを導入した場合(25mol%以上)、マグネシア相のピーク強度が大幅に減少し、X線回折スペクトルにおけるピークは、主としてセリア由来となることも確認された。これは、マグネシア粒子がセリアによって被覆されたコア−シェル型の構造を有するためと考えられた。
[X線光電子分光測定(XPS)]
実施例1で得られたアンモニア合成触媒(セリア:50mol%)の試料最表面層の化学状態を把握すべく、X線光電子分光測定(XPS)を行った結果を図8に示す。図7に示したX線回折スペクトルでは、Ceのピークは観測されなかったが、図8に示されるように、試料の極表層ではCe3+の存在が確認された。このことから、以下の反応式2に示すような、Ce3+とCe4+の可逆的且つ部分的な酸化還元反応が起こっているものと示唆された。
Ce3+とCe4+の可逆的且つ部分的な酸化還元反応により、ルテニウム金属の触媒活性点への電子供与が可能となるため、触媒の活性が向上し、アンモニアの生成をより促進することが可能となる。また、図6に示されるように、セリア単独で担体を形成したアンモニア合成触媒(セリア:100mol%)の場合と比較して、マグネシアが存在したほうがアンモニア合成速度が大きくなるのは、触媒粉体表面の電子状態が不安定になるためと考えられた。
[BET比表面積]
実施例及び比較例で得られたアンモニア合成触媒のBET比表面積を図9に示す。セリア単独担体によるルテニウム触媒(セリア:100mol%)のBET比表面積は121.8m/gであった一方で、マグネシア単独担体によるルテニウム触媒(セリア:0mol%)は200.3m/gであった。これに対して、セリア及びマグネシアを含む担体を用いたルテニウム触媒(セリア:25mol%〜75mol%)のBET比表面積は、144〜157m/gと、中間の値を示した。これは、セリア−マグネシア複合担体は前述したようにマグネシアをコアとしてセリアをシェルとするコア−シェル型構造を有するが、比表面積の大きいマグネシアを含有することで、セリウム単独の場合と比べて表面積が増加するものと考えられた。
アンモニア合成触媒の合成フローチャート示す図である。 本実施形態のルテニウム担持工程の状態図である。 本実施形態の熱処理工程の状態図である。 膜反応器の構成を示す図である。 実施例1で得られたアンモニア合成触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 アンモニア合成触媒のアンモニア合成活性を示す図である。 アンモニア合成触媒のX線回折測定結果を示す図である。 実施例1で得られたアンモニア合成触媒の最表面のX線光電子分光測定(XPS)結果を示す図である。 アンモニア合成触媒のBET比表面積を示す図である。 膜反応器による実験結果を示す図である。
符号の説明
1 膜反応器
2 上部流路(水素流路)
3 下部流路(窒素流路)
4 水素透過膜
5 触媒層
6 隔膜
7 メッシュ

Claims (5)

  1. 水素および窒素含有ガスからアンモニアを合成するアンモニア合成触媒の製造方法であって、
    セリウム化合物含有溶液とマグネシウム化合物含有溶液を用いて酸化物前駆体を生成させる酸化物前駆体生成工程と、
    ルテニウム含有化合物を含む溶液を用いて前記酸化物前駆体に前記ルテニウムを担持させるルテニウム担持工程と、
    前記酸化物前駆体の酸化物化と、担持された前記ルテニウムの金属化を実質的に同時に行う熱処理工程と、を含むアンモニア合成触媒の製造方法。
  2. 前記セリウム化合物をセリウムの水溶性金属塩とし、
    前記マグネシウム化合物をマグネシウムの水溶性金属塩とし、
    前記酸化物前駆体生成工程を共沈法により行う請求項記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
  3. 前記ルテニウム含有化合物をルテニウムカルボニル錯体とし、
    前記ルテニウム担持工程をテトラヒドロフラン溶液中で行う請求項または記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
  4. 前記熱処理工程を減圧下で行う請求項からいずれか記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
  5. 前記酸化物前駆体を構成する複数の粒子は、水酸基を有するものであり、
    前記複数の粒子の水酸基と、前記ルテニウムカルボニル錯体とにより、ルテニウム(II)カルボニル錯体を形成させ、このルテニウム(II)カルボニル錯体により、前記複数の粒子を架橋させる請求項または記載のアンモニア合成触媒の製造方法。
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