JP4310083B2 - エンジンのブローバイガス処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸気通路のスロットル弁よりも上流位置に設けられた過給機と、吸気通路の過給機よりも上流位置をクランクケースの内部に接続する第1ブローバイガス通路と、吸気通路のスロットル弁よりも下流位置をクランクケースの内部に接続する第2ブローバイガス通路と、第2ブローバイガス通路に設けられて吸気負圧により開弁し、クランクケース側から吸気通路の前記下流位置側へのブローバイガスの移動を許容する流量制御弁とを備えたエンジンのブローバイガス処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
かかるエンジンのブローバイガス処理装置は、実開平5−87213号公報により公知である。
【0003】
上記従来のエンジンのブローバイガス処理装置は、第2ブローバイガス通路の流量制御弁よりもクランクケース側の位置と、吸気通路の過給機よりも上流側の位置とを、チェック弁を設けた補助ブローバイガス通路で接続している。過給機が作動しない低負荷時にはスロットル弁の下流側に発生する吸気負圧により、過給機よりも上流側の吸気通路の新気を第1ブローバイガス通路を介して動弁室内に吸引するとともに、クランクケース内のブローバイガスを流量制御弁が開弁した第2ブローバイガス通路を介してスロットル弁の下流側に吸引して換気を行い、また過給機が作動する高負荷時には、過給機の上流側に発生する負圧により、クランクケース内のブローバイガスをチェック弁が開弁した補助ブローバイガス通路を介して吸気通路に吸引するとともに、動弁室内のブローバイガスを第1ブローバイガス通路を介して吸気通路に吸引して換気を行うようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来のエンジンのブローバイガス処理装置は、第1、第2ブローバイガス通路に加えてチェック弁を設けた補助ブローバイガス通路を必要とするため、そのチェック弁および補助ブローバイガス通路の分だけ部品点数が増加するだけでなく、補助ブローバイガス通路を取り回すためのスペースが必要となる問題がある。補助ブローバイガス通路を廃止した場合には、過給機の作動時に第2ブローバイガス通路の流量制御弁が閉弁するため、クランクケース内の換気が行えなくなってしまう。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、部品点数の増加を回避しながら、過給機の非作動時および作動時の両方にブローバイガスの換気を確実に行えるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明によれば、吸気通路のスロットル弁よりも上流位置に設けられた過給機と、吸気通路の過給機よりも上流位置をクランクケースの内部に接続する第1ブローバイガス通路と、吸気通路のスロットル弁よりも下流位置をクランクケースの内部に接続する第2ブローバイガス通路と、第2ブローバイガス通路を開閉する流量制御弁とを備えたエンジンのブローバイガス処理装置において、過給機の過給圧に応じて流量制御弁の開度を制御すると共に最大過給圧が検出されたときには流量制御弁を閉弁制御する制御手段を備えたことを特徴とするエンジンのブローバイガス処理装置が提案される。
【0007】
請求項1の発明の上記構成によれば、過給機の非作動時には、制御手段が第2ブローバイガス通路に設けた流量制御弁を開弁し、吸気通路の過給機よりも上流位置の新気が第1ブローバイガス通路、クランクケースの内部および流量制御弁が開弁した第2ブローバイガス通路を介して吸気通路のスロットル弁よりも下流位置に吸引され、クランクケース内のブローバイガスが換気される。また過給機が作動して過給圧が発生すると、制御手段が第2ブローバイガス通路に設けた流量制御弁を所定開度に開弁し、その過給圧によって吸気通路のスロットル弁よりも下流位置の新気が第2ブローバイガス通路に設けた前記所定開度に開弁した流量制御弁を介してクランクケース内に流れ、そこから第1ブローバイガス通路を経て吸気通路スロットル弁よりも上流位置に流れることで、クランクケース内のブローバイガスが換気される。しかも第1、第2ブローバイガス通路以外に補助ブローバイガス通路が不要であるため、部品点数やスペースの節減に寄与することができる。更に、流量制御弁の開度を制御手段により制御することで、過給圧に応じた流量制御が可能になる。しかも過給機の最大過給圧が検出されると流量制御弁が閉弁するので、最大過給圧の低下を阻止してエンジン出力を最大限に増加させることができる。
【0008】
また請求項2の発明によれば、請求項1の発明の前記特徴に加えて、前記制御手段は、前記最大過給圧が検出されたときに前記流量制御弁が閉弁してから所定時間が経過したときに該流量制御弁を所定開度に開弁制御することを特徴とするエンジンのブローバイガス処理装置が提案され、その構成によれば、車両の加速時に過給による加速性能を確保しながら、クランクケース内の換気を行うことが可能となる。
【0009】
尚、実施例のコンプレッサ13は本発明の過給機に対応し、実施例の電子制御ユニットUは本発明の制御手段に対応する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示した参考例及び本発明の実施例に基づいて説明する。
【0011】
図1〜図4は第1参考例を示すもので、図1は自動車用エンジンのブローバイガス処理装置の全体構成図、図2は図1の要部部拡大図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図1に対応する作用説明図である。
【0012】
図1に模式的に示すように、自動車用のエンジンEの吸気通路11には、その吸気の流れの上流側から下流側に向けて、エアクリーナ12、ターボチャージャのコンプレッサ13、スロットル弁14および吸気マニホールド15が配置される。吸気マニホールド15は単管部15a…と集合部15bとを備えており、集合部15bとエンジンEの流量制御弁チャンバ17とを接続する第2ブローバイガス通路18にチェック弁よりなる流量制御弁19が配置される。またターボチャージャのコンプレッサ入口13aとエンジンEのブリーザチャンバ20とが第1ブローバイガス通路21により接続される。NOxを含むブローバイガスが溜まるエンジンEのクランクケース22の内部は流量制御弁チャンバ17およびブリーザチャンバ20に連通する。
【0013】
図2および図3に示すように、流量制御弁19の弁室31の内部には、弁ばね32で付勢された弁体33が着座可能な弁座34が設けられており、弁座34は弁室31の内壁から弁体33に向けて突出する円環状の突出部から構成される。図1〜図3に示されるように、弁体33の弁座34との対向面は、該弁座34の軸線上に中心を有する球面状に形成されている。また弁座34の頂面には放射状に複数個(参考例では8個)の切欠34a…が周方向に等間隔置きに形成される。チェック弁よりなる流量制御弁19は、吸気マニホールド15の集合部15bが流量制御弁チャンバ17よりも低圧になったときに開弁し、吸気マニホールド15の集合部15bが流量制御弁チャンバ17よりも高圧になったときに閉弁する。
【0014】
しかして、図1に示すように、スロットル弁14が閉弁してターボチャージャが非作動となるエンジンEの低負時には、エンジンEが発生する吸気負圧により、新気がエアクリーナ12、コンプレッサ13、スロットル弁14および吸気マニホールド15を経てエンジンEに吸入される。このとき、吸気マニホールド15の集合部15bに作用する吸気負圧で流量制御弁19が開弁するため、エアクリーナ12を通過した新気の一部がコンプレッサ入口13aから第1ブローバイガス通路21、ブリーザチャンバ20、クランクケース22、流量制御弁チャンバ17、第2ブローバイガス通路18および吸気マニホールド15を経てエンジンEに吸入される。その際に、クランクケース22内のブローバイガスが前記新気と共にエンジンEに吸入されることで、クランクケース22の換気が行われてブローバイガスに含まれるNOxによるエンジンEの潤滑油の劣化が最小限に抑えられる。
【0015】
図4に示すように、スロットル弁14が開弁してターボチャージャが作動するエンジンEの高負荷時には、コンプレッサ13の下流側の吸気通路11に設けられた吸気マニホールド15に過給圧が発生するため、吸気マニホールド15の内圧がクランクケース22の内圧よりも高くなって第2ブローバイガス通路18に設けた流量制御弁19が閉弁する。しかしながら、ターボチャージャによる過給時に、流量制御弁19の両側、即ち、流量制御弁の19上流側(吸気通路11側)および下流側(クランクケース22側)を連通させて吸気通路11側からクランクケース22側への所定量の新気の移動を許容する切欠34a…を流量制御弁19の弁座34に設けたことにより、流量制御弁19の弁体33が弁座34に着座しても、吸気マニホールド15内の高圧の新気が前記弁座34の切欠34a…を通過し、更に流量制御弁チャンバ17、クランクケース22、ブリーザチャンバ20および第1ブローバイガス通路21を経てコンプレッサ入口13aに還流する。その際に、クランクケース22内のブローバイガスが前記新気と共に吸気通路11に戻されてエンジンEに吸入されることで、クランクケース22の換気が行われてブローバイガスに含まれるNOxによるエンジンEの潤滑油の劣化が最小限に抑えられる。また流量制御弁19の切欠34a…を通過する新気の量はクランクケース22を換気するのに必要最小限の量に設定されているので、ターボチャージャによる過給圧の低下は殆ど発生しない。
【0016】
以上のように、第1、第2ブローバイガス通路21,18を通してエンジンEのクランクケース22内に新気を流通させることで、クランクケース22内のブローバイガスを効果的に換気してエンジンEの潤滑油の劣化を抑制することができる。また第1、第2ブローバイガス通路21,18以外に補助ブローバイガス通路が不要であるため、部品点数やスペースの節減に寄与することができる。
【0017】
しかも、流量制御弁19の弁座34を弁体33側に突出する円環状の突出部で構成したので、その弁座34の剛性が向上するだけでなく、環状の弁座34に切欠34a…を形成して流量制御弁19の連通孔としたので、その連通孔を容易に形成することができる。また弁座34の切欠34a…を弁座34および弁体33の軸線に対して軸対称に配置したので、流量制御弁19に偏った荷重が作用するのを防止してブローバイガスの換気量を安定させることができる。
【0018】
次に、図5および図6に基づいて第2参考例を説明する。
【0019】
本参考例の流量制御弁19は弁座34に切欠34a…を備えておらず、その代わりに弁体33の側面に複数個(参考例では4個)の切欠33a…が90°間隔で形成される。第2参考例の弁体33の切欠33a…は、第1参考例の弁座34の切欠34a…と同様に流量制御弁19の閉弁時に所定量の新気を通過させてクランクケース22を換気する機能を有しており、これらの切欠33a…を弁座34および弁体33の軸線に対して軸対称に配置したことで、流量制御弁19に偏った荷重が作用するのを防止してブローバイガスの換気量を安定させることができる。
【0020】
次に、図7および図8に基づいて第3参考例を説明する。
【0021】
第3参考例の流量制御弁19は弁体33にも弁座34にも切欠33a…,34a…が形成されておらず、その代わりに弁室31の壁面に流量制御弁チャンバ17まで貫通する複数の通孔31a…が形成されており、これらの通孔31a…が流量制御弁19をバイパスする。第3参考例の通孔31a…は、第1参考例の切欠34a…と同様に流量制御弁19の閉弁時に所定量の新気を通過させてクランクケース22を換気する機能を有している。
【0022】
次に、図9〜図11に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0023】
前記参考例の流量制御弁19はチェック弁で構成されているが、本実施例の流量制御弁19はソレノイド弁で構成される。流量制御弁19は弁ばね32の弾発力で弁体33が弁座34に着座する方向に付勢されており、吸気マニホールド15の集合部15bに設けられた圧力センサ36からの信号が入力される電子制御ユニットUは、ソレノイド37を励磁することで流量制御弁19の開度を任意に制御することができる。
【0024】
圧力センサ36で検知した吸気マニホールド15の集合部15bの圧力が負圧である場合、つまりターボチャージャの非作動時には流量制御弁19は開弁状態に保持され、吸気マニホールド15の集合部15bに発生する吸気負圧で第1ブローバイガス通路21側から第2ブローバイガス通路18側に新気を流すことで、クランクケース22内のブローバイガスを換気することができる。
【0025】
一方、ターボチャージャが作動して圧力センサ36で検知した吸気マニホールド15の集合部15bの圧力が正圧の過給圧になると、その過給圧に応じて流量制御弁19の開度が制御される。即ち、図10のフローチャートのステップS1で圧力センサ36で過給圧を検知し、ステップS2で過給圧が最大過給圧でなければ、ステップS3で電子制御ユニットUが過給圧の増加に応じて流量制御弁19の開度を増加させる信号を出力し、ステップS5で流量制御弁19の開度を制御して第2ブローバイガス通路18から換気のためにクランクケース22に供給する新気の流量を増加させる(図11参照)。これにより、過給圧に応じた流量制御が可能になる。一方、前記ステップS2で圧力センサ36が検知した圧力が最大過給圧であれば、ステップS4で流量制御弁19を全閉状態とする信号を出力し、ステップS5で流量制御弁19を全閉にしてクランクケース22内の換気を停止する。このように、最大過給圧が検知されたときに流量制御弁19を全閉状態として過給圧の低下を防止するので、ターボチャージャによるエンジン出力の増加効果を最大限に発揮させることができる。
【0026】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0027】
例えば、前記実施例において、圧力センサ36が最大過給圧を検知して流量制御弁19を全閉状態とした後、所定時間が経過したときに流量制御弁19を所定開度に開弁してクランクケース22内の換気を行うことができる。このようにすれば、車両の加速時に過給による加速性能を確保しながら、クランクケース22内の換気を行うことが可能となる。
【0028】
またターボチャージャに代えて、スーパーチャージャ等のあらゆる過給機を用いることも可能である。
【0029】
また本発明はクランクシャフトを鉛直方向に配置した船外機のような船舶推進用エンジンに対しても適用することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、過給機の非作動時には、制御手段が第2ブローバイガス通路に設けた流量制御弁を開弁し、吸気通路の過給機よりも上流位置の新気が第1ブローバイガス通路、クランクケースの内部および流量制御弁が開弁した第2ブローバイガス通路を介して吸気通路のスロットル弁よりも下流位置に吸引され、クランクケース内のブローバイガスが換気される。また過給機が作動して過給圧が発生すると、制御手段が第2ブローバイガス通路に設けた流量制御弁を所定開度に開弁し、その過給圧によって吸気通路のスロットル弁よりも下流位置の新気が第2ブローバイガス通路に設けた前記所定開度に開弁した流量制御弁を介してクランクケース内に流れ、そこから第1ブローバイガス通路を経て吸気通路スロットル弁よりも上流位置に流れることで、クランクケース内のブローバイガスが換気される。しかも第1、第2ブローバイガス通路以外に補助ブローバイガス通路が不要であるため、部品点数やスペースの節減に寄与することができる。更に、流量制御弁の開度を制御手段により制御することで、過給圧に応じた流量制御が可能になる。その上、過給機の最大過給圧が検出されると流量制御弁が閉弁するので、最大過給圧の低下を阻止してエンジン出力を最大限に増加させることができる。
【0031】
また特に請求項2の発明によれば、最大過給圧が検出されたときに流量制御弁が閉弁してから所定時間が経過したときに該流量制御弁を所定開度に開弁制御するので、車両の加速時に過給による加速性能を確保しながら、クランクケース内の換気を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1参考例に係る自動車用エンジンのブローバイガス処理装置の全体構成図
【図2】 図1の要部拡大図
【図3】 図2の3−3線断面図
【図4】 図1に対応する作用説明図
【図5】 第2参考例に係る前記図2に対応する図
【図6】 図5の6−6線断面図
【図7】 第3参考例に係る前記図2に対応する図
【図8】 図7の8−8線断面図
【図9】 本発明の実施例に係る自動車用エンジンのブローバイガス処理装置の全体構成図
【図10】 流量制御弁の開度制御を説明するフローチャート
【図11】 過給圧と新気の流量との関係を示すグラフ
【符号の説明】
11 吸気通路
13 コンプレッサ(過給機)
14 スロットル弁
18 第2ブローバイガス通路
19 流量制御弁
21 第1ブローバイガス通路
22 クランクケース
U 電子制御ユニット(制御手段)
Claims (2)
- 吸気通路(11)のスロットル弁(14)よりも上流位置に設けられた過給機(13)と、
吸気通路(11)の過給機(13)よりも上流位置をクランクケース(22)の内部に接続する第1ブローバイガス通路(21)と、
吸気通路(11)のスロットル弁(14)よりも下流位置をクランクケース(22)の内部に接続する第2ブローバイガス通路(18)と、
第2ブローバイガス通路(18)を開閉する流量制御弁(19)と
を備えたエンジンのブローバイガス処理装置において、
過給機(13)の過給圧に応じて流量制御弁(19)の開度を制御すると共に最大過給圧が検出されたときには流量制御弁(19)を閉弁制御する制御手段(U)を備えたことを特徴とするエンジンのブローバイガス処理装置。 - 前記制御手段(U)は、前記最大過給圧が検出されたときに前記流量制御弁(19)が閉弁してから所定時間が経過したときに該流量制御弁(19)を所定開度に開弁制御することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンのブローバイガス処理装置。
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