JP4027996B2 - 農業用多層フィルム - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、農業用多層フィルムに関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
農業上の促成栽培を目的としたハウス栽培、トンネル栽培およびマルチ栽培などでは、一般に被覆材として各種熱可塑性樹脂からなる農業用フィルムが多量に使用されている。このような農業用フィルムとしては、たとえばポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあり、中でも、ポリ塩化ビニルフィルムは、保温性、透明性、強靱性(機械的強度特性)等に優れているため最も多く使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニルフィルムは、防塵性および展張作業性が若干劣る上、焼却廃棄時に有毒ガスを発生する等の問題がある。
ここに、「保温性」とは、昼間に太陽熱を吸収して温度の上昇した大地から、夜間に放出される輻射線を吸収、反射してハウス、トンネル等の内部の温度(気温および地温)を保持する性能をいう。
【0004】
また、「防塵性」とは、ある一定期間使用後の塵埃付着等によるフィルムの透明性の低下を抑制する性能をいう。
さらに、「展張作業性」とは、フィルムのベタツキによる取扱い易さの良否を表わす。
【0005】
一方、ポリエチレンフィルムは、ポリ塩化ビニルフィルムに比べ、価格、展張作業性、防塵性および廃棄処理の点で優れているものの、保温性、強靱性等が劣るという問題がある。
【0006】
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とする単層フィルムを農業用フィルムに適用した場合、このフィルムは、上記ポリエチレンフィルムに比べ、保温性が改善されているものの、直鎖状エチレン・α- オレフィン共重合体フィルムおよびポリ塩化ビニルフィルムよりも強靱性に劣るという問題がある。
【0007】
さらに、ポリオレフィン系樹脂フィルムの保温性を添加剤により改良した農業用フィルムとしては、低密度ポリエチレンまたはエチレン・酢酸ビニル共重合体に酸化硅素を添加してなる被覆用フィルムがある。
【0008】
しかしながら、このような農業用フィルムは、ポリエチレン系樹脂フィルムの保温性が改良されているものの、ポリ塩化ビニルフィルムと比べ、強靱性、透明性が不充分である。
【0009】
このようなポリエチレン系樹脂フィルムの強靱性を改善するため、近年直鎖状低密度ポリエチレンの強靱性を利用する農業用フィルムが考案されるようになってきている。たとえば特開昭58−160146号公報では、直鎖状低密度ポリエチレンを主体とする基材層と、界面活性剤を含む従来の製造法によるポリエチレン系樹脂等とからなる層とを積層した防曇性の良好な農業用多層フィルムが提案されている。この農業用多層フィルムは、強靱性が改善されているものの、保温性のより高い樹脂あるいは添加剤の利用が検討されていないため、ポリ塩化ビニルフィルムに比べ、保温性がかなり劣る。
【0010】
また、特開平1−182037号公報では、農業用多層(積層)フィルムが提案されており、この農業用多層フィルムは、外層が線状エチレン・α- オレフィン共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂と無機化合物とで形成されており、かつ、内層がエチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分とするポリエチレン系樹脂と無機化合物と防曇剤とで形成されている。特開平1−182037号公報に記載されている農業用多層フィルムは、良好な保温性、防塵性、展張作業性、透明性、耐候性を兼ね備え、しかも極めて優れた強靱性を有するとされている。
【0011】
しかしながら、従来の上記のような農業用多層フィルムには、屋外で長期使用した際の塵埃が付着していない状態での透明性の経時的低下度、防塵性、強靱性等において改良の余地がある。
【0012】
したがって、保温性に優れるだけでなく、上述した従来の農業用多層フィルムと比べ、さらに屋外で長期使用した際の塵埃が付着していない状態での透明性の経時的低下度が少なく、しかも防塵性と強靱性に優れた農業用多層フィルムの出現が望まれている。
【0013】
【発明の目的】
本発明は、保温性に優れるだけでなく、上述した従来の農業用多層フィルムと比べ、さらに屋外で長期使用した際の塵埃が付着していない状態での透明性の経時的低下度が少なく、しかも防塵性と強靱性に優れた農業用多層フィルムを提供することを目的としている。
【0014】
【発明の概要】
本発明に係る農業用多層フィルムは、
[I]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(D)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部である
組成物からなる外層、
[II]酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)100重量部と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)1〜20重量部と、
防曇剤を含有し、
防曇剤の含有量が成分(C)100重量部に対して、0.05〜5重量部である
組成物からなる中間層、および
[III]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィン
とを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40である
組成物からなる内層
が積層されてなり、かつ、
該外層および内層を形成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分の範囲にあり、
(ii)密度が0.880〜0.940g/cm3であり、
(iii)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜3.5の範囲にあり、
(iv)23℃におけるn−デカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが、
W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
(v)GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1、低分子量側の分岐数の平
均値をB2とするとき、
B1≧B2
であることを特徴としている。
【0015】
上記のような本発明に係る農業用多層フィルムは、
(i)エルメンドルフ引裂強度がMD方向で90kg/cm以上であり、かつ、TD方向で90kg/cm以上であり、
(ii)厚み100μmでのダートインパクト強度が900g以上であり、
(iii) 引張破断点強度がMD方向で350kg/cm2 以上であり、かつ、TD方向で350kg/cm2 以上であることが好ましい。
【0016】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る農業用多層フィルムについて具体的に説明する。
本発明に係る農業用多層フィルムは、外層と中間層と内層とからなる3層積層フィルムである。
【0017】
外 層
本発明に係る農業用多層フィルムを構成する外層は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)、無機化合物(B)および必要に応じて高圧法低密度ポリエチレン(D)、耐候安定剤、防曇剤を含有する組成物から形成されている。
【0018】
[エチレン・α- オレフィン共重合体(A)]
本発明で用いられる外層形成用のエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとからなる共重合体である。
【0019】
エチレンとの共重合に用いられる炭素原子数4〜12のα- オレフィンとしては、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられる。これらの中では、炭素原子数4〜10のα- オレフィン、特に炭素原子数4〜6のα- オレフィンが好ましい。
【0020】
本発明においては、上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、エチレンから導かれる構成単位が50重量%以上100重量%未満、好ましくは55〜99重量%、さらに好ましくは65〜98重量%、特に好ましくは70〜96重量%の量で存在し、炭素原子数4〜12のα- オレフィンから導かれる構成単位が50重量%以下、好ましくは1〜45重量%、さらに好ましくは2〜35重量%、特に好ましくは4〜30重量%の量で存在することが望ましい。
【0021】
エチレン・α- オレフィン共重合体の組成は、通常10mmφの試料管中で約200mgの共重合体を1mlのヘキサクロロブタジエンに均一に溶解させた試料の13C−NMRスペクトルを、測定温度120℃、測定周波数25.05MHz、スペクトル幅1500Hz、パルス繰返し時間4.2sec.、パルス幅6μsec.の測定条件下で測定して決定される。
【0022】
外層形成用のエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、密度が0.880〜0.940g/cm3 、好ましくは0.926〜0.940g/cm3 、さらに好ましくは0.926〜0.936g/cm3 の範囲にある。
【0023】
なお、密度は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られるストランドを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定する。
【0024】
また、このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)は、0.01〜10g/10分、好ましくは0.1〜5g/10分、さらに好ましくは0.5〜2g/10分の範囲にある。
【0025】
このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)のGPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜3.5、好ましくは2.0〜3.0の範囲にある。
【0026】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ミリポア社製GPC−150Cを用い、以下のようにして測定した。
分離カラムは、TSK GNH HTであり、カラムサイズは直径72mm、長さ600mmであり、カラム温度は140℃とし、移動相にはO-ジクロロベンゼン(和光純薬工業)および酸化防止剤としてBHT(武田薬品)0.025重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器として示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンは、分子量がMw<1000およびMw>4×106 については東ソー社製を用い、1000<Mw<4×106 についてはプレッシャーケミカル社製を用いた。
【0027】
また、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、23℃におけるn-デカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが下記に示される関係を満たしている。
W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1
なお、エチレン・α- オレフィン共重合体のn-デカン可溶成分量(可溶成分量の少ないもの程組成分布が狭い)の測定は、エチレン・α- オレフィン共重合体約3gをn-デカン450mlに加え、145℃で溶解した後23℃まで冷却し、濾過によりn-デカン不溶部を除き、濾液よりn-デカン可溶部を回収することにより行なわれる。
【0028】
さらに、エチレン・α- オレフィン共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度〔Tm(℃)〕と密度〔d(g/cm3 )〕とが、
Tm<400×d−250
好ましくは Tm<450×d−297
さらに好ましくは Tm<500×d−344
特に好ましくは Tm<550×d−391
で示される関係を満たしていることが望ましい。
【0029】
なお、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度(Tm)は、試料約5mgをアルミパンに詰め10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持したのち20℃/分で室温まで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求められる。測定は、パーキンエルマー社製DSC-7 型装置を用いる。
【0030】
このように、n-デカン可溶成分量分率(W)と密度(d)との関係、そして示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線における最大ピーク位置の温度(Tm)と密度(d)との関係が上記のような関係を有するようなエチレン・α- オレフィン共重合体は組成分布が狭いと言える。
【0031】
また、本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1 、低分子量側の分岐数の平均値をB2 とするとき、
B1 ≧ B2
である。
【0032】
ここに、GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値(B1 )とは、GPCによって分子量分別された高分子溶出量の累積重量分率が15〜85%(すなわち低分子領域15%、高分子領域15%を除く高分子溶出成分)の範囲で測定された分岐数の測定値群を、GPC溶出曲線のピーク位置の分子量で2分割したもののうち、高分子量側の値の平均値である。一方、低分子量側の分岐数の平均値(B2 )とは、2分割したもののうち、低分子量側の平均値である。
【0033】
上記B1 およびB2 の測定条件は、次の通りである。
測定装置:PERKIN ELMER 1760X
カラム:TOSOH TSKgel GMH-HT(7.5mmI.D.×600mm)×1
溶離剤(eluent):MP−Jを0.05%含有のo-ジクロロベンゼン(ODCB)[和光純薬工業社製、extra pure grade]
カラム温度:140℃
サンプル濃度:0.1%(weight/volume)
射出容量(inj.volume):100マイクロリットル
detector:MCT
resolution:8cm-1
このB1 とB2 が上記のような関係にあるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、組成分布が狭く、しかもローポリマーが少ないので、ベトツキが少ない。したがって、上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を多層フィルムの外層に用いると、防塵性に優れた多層構造の農業用フィルムを得ることができる。
【0034】
また、このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる外層は、光線透過率の経時的低下が非常に小さいため、このような外層を有する農業用多層フィルムは、長期に亘って展張することが可能である。
【0035】
さらに、上記のエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を用いると、多層フィルムの外層を薄膜化することができ、多層フィルムの軽量化を図ることができる。
【0036】
上記のようなエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、特開平6−9724号公報、特開平6−136195号公報、特開平6−136196号公報、特開平6−207057号公報等に記載されているメタロセン触媒成分を含む、いわゆるメタロセン系オレフィン重合用触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを、得られる共重合体の密度が0.940g/cm3 以下となるように共重合させることによって製造することができる。
【0037】
このようなメタロセン系触媒は、通常、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物からなるメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)から形成される。
【0038】
本発明で好ましく用いられるメタロセン触媒成分(a)としては、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個有する周期律表第IVB族の遷移金属化合物がある。このような遷移金属化合物としては、たとえば下記の一般式[I]で示される遷移金属化合物が挙げられる。
【0039】
ML1 x ・・・ [I]
式中、xは、遷移金属原子Mの原子価である。
Mは、周期律表第IVB族から選ばれる遷移金属原子であり、具体的には、ジルコニウム、チタン、ハフニウムである。中でも、ジルコニウムが好ましい。
【0040】
L1 は、遷移金属原子Mに配位する配位子であり、これらのうち、少なくとも1個の配位子L1 は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。
上記のような遷移金属原子Mに配位するシクロペンタジエニル骨格を有する配位子L1 としては、具体的には、シクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基、あるいはインデニル基、4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基などが挙げられる。これらの基は、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基などで置換されていてもよい。
【0041】
上記一般式[I]で表わされる化合物がシクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合には、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基同士は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基、イソプロピリデンジフェニルメチレン等の置換アルキレン基、シリレン基またはジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基などを介して結合されていてもよい。
【0042】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子L1 は、炭素原子数1〜12の炭化水素基;メトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリーロキシ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のトリアルキルシリル基;SO3R (Rはハロゲンなどの置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8の炭化水素基)、ハロゲン原子または水素原子である。
【0043】
炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0044】
SO3R で表わされる配位子としては、具体的には、P-トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基などが挙げられる。
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)としては、アルミノオキサンが好ましく用いられる。具体的には、式
−Al(R)O− [ただし、Rはアルキル基である]
で表わされる繰り返し単位が通常3〜50程度のメチルアルミノオキサン、エチルアルミノオキサン、メチルエチルアルミノオキサン等が用いられる。
【0045】
このようなアルミノオキサンは、従来公知の製法で調製することができる。
オレフィン重合用触媒の調製で用いられる微粒子状担体(c)は、無機あるいは有機の化合物であって、粒径が通常10〜300μm程度であり、好ましくは20〜200μmの顆粒状ないし微粒子状の固体である。
【0046】
無機担体としては多孔質酸化物が好ましく、具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2 、B2O3、CaO、ZnO、BaO、SnO2等またはこれらの混合物を例示することができる。なお、上記無機酸化物には、少量のNa2CO3等の炭酸塩、Al2(SO4)3 等の硫酸塩、KNO3 等の硝酸塩、Li2O等の酸化物を含有していても差し支えない。
【0047】
このような担体は、その種類および製法により性状は異なるが、本発明で好ましく用いられる担体は、比表面積が50〜1000m2/g 、好ましくは100〜700m2/g であり、細孔容積が0.3〜2.5cm3/g であることが望ましい。
【0048】
この担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
また、微粒子状担体として用いられる有機化合物としては、エチレン、4-メチル-1- ペンテン等の炭素原子数2〜14のα- オレフィンを主成分として生成される(共)重合体、あるいはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体を例示することができる。
【0049】
オレフィン重合用触媒の調製において必要に応じて用いられる有機アルミニウム化合物触媒成分(d)としては、具体的には、トリメチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、イソプレニルアルミニウム等のアルケニルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライドなどを例示することができる。
【0050】
イオン化イオン性化合物触媒成分(e)としては、たとえばトリフェニルボロン、MgCl2、Al2O3、SiO2−Al2O3等のルイス酸;トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のイオン性化合物;ドデカボラン、ビスn-ブチルアンモニウム(1-カルベドデカ)ボレート等のカルボラン化合物が挙げられる。
【0051】
本発明で用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、上記のようなメタロセン触媒成分(a)、有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)、微粒子状担体(c)、および必要に応じて有機アルミニウム化合物触媒成分(d)、イオン化イオン性化合物触媒成分(e)を含むオレフィン重合用触媒の存在下に、気相、またはスラリー状あるいは溶液状の液相で種々の条件で、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させることにより得ることができる。
【0052】
スラリー重合法または溶液重合法においては、不活性炭化水素を溶媒としてもよいし、オレフィン自体を溶媒とすることもできる。
重合を実施する際には、上記のようなメタロセン系オレフィン重合用触媒は、重合反応系内の遷移金属原子の濃度で、通常10-8〜10-3グラム原子/リットル、好ましくは10-7〜10-4グラム原子/リットルの量で用いられることが望ましい。
【0053】
また、重合に際して、担体に担持されている有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および有機アルミニウム化合物触媒成分(c)に加えて、さらに担持されていない有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および/または有機アルミニウム化合物触媒成分(c)を用いてもよい。この場合、担持されていない有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)および/または有機アルミニウム化合物触媒成分(c)に由来するアルミニウム原子(Al)と、メタロセン触媒成分(a)に由来する遷移金属原子(M)との原子比[Al/M]は、5〜300、好ましくは10〜200、さらに好ましくは15〜150の範囲である。
【0054】
スラリー重合法における重合温度は、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であり、溶液重合法における重合温度は、通常−50〜500℃、好ましくは0〜400℃の範囲である。また、気相重合法における重合温度は、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲である。
【0055】
重合圧力は、通常常圧ないし100kg/cm2 、好ましくは2〜50kg/cm2 の加圧条件下であり、重合は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方式においても行なうことができる。
【0056】
本発明においては、上記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)の調製に際し、必要に応じて(1) 多段重合、(2) 液相と気相の多段重合、または(3) 液相での予備重合を行なった後に気相での重合を行なう等の手段を採用することができる。本発明においては、上記(1)の多段重合が好ましい。
【0057】
多段重合法としては、たとえば、次のような多段重合法が挙げられる。
[1]上記一般式[I]で表わされる遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるメタロセン触媒成分と、
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分と
を含むメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させ、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を製造する工程と、
[2]上記共重合反応が行なわれる重合器とは異なる重合器において、
上述した一般式[I]で表わされるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IVB族の遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物からなるメタロセン触媒成分と、
有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分と
を含むメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合させ、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を製造する工程とを含むオレフィンの多段重合法が挙げられる。
【0058】
上記共重合工程[I]および/または[II]において用いられるメタロセン系触媒が、メタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分(b)に加え、有機アルミニウム化合物触媒成分(d)を含む触媒であってもよく、また、微粒子状担体(c)にメタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウム触媒成分(b)が担持された固体触媒であってもよい。また、これらのメタロセン系触媒は、微粒子状担体(c)にメタロセン触媒成分(a)および有機アルミニウム触媒成分(b)が担持された固体触媒成分にオレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒であってもよい。さらに、これらのメタロセン系触媒は、上記固体触媒(固体触媒成分)と有機アルミニウム化合物触媒成分(d)とからなる触媒、あるいは上記予備重合触媒(予備重合触媒成分)と有機アルミニウム化合物触媒成分(d)とからなる触媒であってもよい。
【0059】
この多段重合法では、直列に結合した複数の重合器を用いて、先ず上記のエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を製造し、次いで、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)の製造に用いた重合器とは異なる重合器にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を導入し、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)の存在下にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を製造することができる。あるいは先ずエチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を製造し、次いで、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)の製造に用いた重合器とは異なる重合器にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)を導入し、エチレン・α- オレフィン共重合体(A−2)の存在下にエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)を製造することができる。
【0060】
また、複数の重合器を並列に結合し、各重合器において、それぞれエチレン・α- オレフィン共重合体(A−1)、(A−2)を製造し、次いで、両共重合体をブレンドすることもできる。
【0061】
[無機化合物(B)]
多層フィルムの外層形成に際して用いられる無機化合物(B)は、保温剤として有効なMg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機酸化物、無機水酸化物、ハイドロタルサイト類などである。
【0062】
具体的には、SiO2 、Al2O3、MgO、CaO等の無機酸化物;
Al(OH)3 、Mg(OH)2 、Ca(OH)2 等の無機水酸化物;
式 M2+ 1-xAlx(OH)2(An-)x/n・mH2O
[式中、M2+は、Mg、CaまたはZnの二価金属イオンであり、
An-はCl- 、Br- 、I- 、NO3 2- 、ClO4-、SO4 2- 、CO2 2- 、SiO3 2- 、HPO4 2- 、HBO3 2- 、PO4 2- 等のアニオンであり、
xは、0<x<0.5 の条件を満足する数値であり、
mは、0≦m≦2 の条件を満足する数値である]
で表わされる無機複合化合物、その焼成物等のハイドロタルサイト類などが挙げられる。これらの中でも、ハイドロタルサイト類が好ましく、特に上記式で表わされる無機複合化合物の焼成物が好ましい。
【0063】
上記のような無機化合物は、単独で、あるいは2種以上組合わせて用いることができる。
無機化合物(B)の平均粒径は、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが望ましい。
【0064】
無機化合物(B)の平均粒径が上記範囲以内であれば、透明性が良好な多層フィルムを得ることができる。
本発明においては、無機化合物(B)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および後述する高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは1〜18重量部、さらに好ましくは2〜15重量部の割合で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0065】
多層フィルムの外層を形成するに際して無機化合物(B)を上記のような割合で用いると、保温性に優れた多層フィルムを得ることができる。
[高圧法低密度ポリエチレン(D)]
多層フィルムの外層形成に際して必要に応じて用いられる高圧法低密度ポリエチレン(D)は、エチレン単独重合体またはエチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0066】
このエチレン・酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル含有量は、通常2〜10モル%、好ましくは2〜8モル%である。
このような高圧法低密度ポリエチレン(D)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)トが0.1〜100g/10分、好ましくは0.2〜10g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分の範囲にある。
【0067】
また、高圧法低密度ポリエチレン(D)は、密度が0.915〜0.935g/cm3 、好ましくは0.920〜0.930g/cm3 、さらに好ましくは0.922〜0.928g/cm3 の範囲にある。この密度の測定方法は、上述したエチレン・α- オレフィン共重合体(A)の密度の測定方法と同じである。
【0068】
さらに、高圧法低密度ポリエチレン(D)は、好ましくはスウェル比が60%以下、さらに好ましくは50%以下、特に好ましくは45%以下である。
なお、このスウェル比は、以下のようにして求める。
【0069】
メルトフローレート測定時に得られるストランドの先端から5mmの位置の直径をサンプルの径(mm)としてマイクロメーターで測定する。そして、下式によりスウェル比を算出する。
【0070】
スウェル比(%)=[(L1/L0)−1]×100
L1 :サンプルの径(mm)
L0 :オリフィスの径(=2.0955mm)
本発明においては、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(D)との重量比[(A)/(D)]は、99/1〜60/40、好ましくは95/5〜70/30、さらに好ましくは90/10〜80/20の範囲内にある。
【0071】
このような高圧法低密度ポリエチレン(D)を上記のような割合で用いると、外層(フィルム)の成形性がより向上する。
上記のような高圧法低密度ポリエチレンは、たとえば1,000〜2,000気圧、200〜300℃でラジカル重合して合成する、いわゆる高圧法で製造することができる。
【0072】
[耐候安定剤]
多層フィルムの外層形成に際して必要に応じて用いられる耐候安定剤は、紫外線吸収剤と光安定剤とに大別されるが、光安定剤の方が薄い農業用フィルムには有効であり、耐候安定性の改良効果が大きい。
【0073】
光安定剤としては、従来公知の光安定剤を用いることができ、中でもヒンダードアミン系光安定剤(HALS;Hindered Amine Light Stabilizers)が好ましく用いられる。
【0074】
ヒンダードアミン系安定剤としては、具体的には、以下のような化合物が用いられる。
(1)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)セバケート、
(2)コハク酸ジメチル-1- (2-ヒドロキシエチル)-4- ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、
(3)テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(4)2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニルベンゾエート、
(5)ビス- (1,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジニル)-2- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシベンジル)-2-n- ブチルマロネート、
(6)ビス(N-メチル-2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジニル)セバケート、
(7)1,1'-(1,2- エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、
(8)(ミックスト2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2,3 ,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(9)(ミックスト1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/トリデシル)-1,2 ,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(10)ミックスト{2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(11)ミックスト{1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル/β,β,β',β'-テトラメチル-3-9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5) ウンデカン]ジエチル}-1,2,3,4- ブタンテトラカルボキシレート、
(12)N,N'- ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2-4- ビス[N-ブチル -N- (1,2,2,6,6-ペンタメチル-4- ピペリジル)アミノ]-6- クロロ-1,3,5 - トリアジン縮合物、
(13)N,N'- ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2-ジブロモエタンとの縮合物、
(14)[N-(2,2,6,6- テトラメチル-4- ピペリジル)-2-メチル-2- (2,2,6,6-テトラメチル-4- ピペリジル)イミノ]プロピオンアミドなど。
【0075】
これらのヒンダードアミン系光安定剤は、単独で、または2種以上組合わせて用いることができる。
このような光安定剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の割合で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0076】
紫外線吸収剤としては、具体的には、
フェニルサリシレート、p-tert- ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;
2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'- ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-5- スルホベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;
2-(2'- ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-5'-tert- ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3',5'-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3'-tert- ブチル-5'-メチルフェニル)-5- クロロベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3',5'- ジ-tert-ブチルフェニル)-5- クロロベンゾトリアゾール、2-(2'- ヒドロキシ-3',5'- ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系吸収剤;
2-エチルヘキシル-2- シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、エチル-2- シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0077】
紫外線吸収剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の割合で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0078】
[その他の成分]
上記の外層形成用エチレン・α- オレフィン共重合体(A)に、従来公知の防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0079】
防曇剤としては、多価アルコールと炭素原子数12〜24の高級脂肪酸(ヒドロキシ脂肪酸を含む)とからなる部分エステル化物を主成分とする防曇剤が好ましく用いられる。
【0080】
中間層
本発明に係る農業用多層フィルムを構成する中間層は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(C)、無機化合物(B)および必要に応じてエチレン・α- オレフィン共重合体(A)、耐候安定剤、防曇剤を含有する組成物から形成されている。
【0081】
[エチレン・酢酸ビニル共重合体(C)]
本発明で用いられるエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)は、酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%、好ましくは3.0〜25重量%、さらに好ましくは5.0〜20重量%の範囲にある。
【0082】
このエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)により中間層を形成すると、保温性に優れた多層フィルムを得ることができる。
[無機化合物(B)]
多層フィルムの中間層形成に際して用いられる無機化合物(B)は、上述した外層形成に際して用いられる無機化合物(B)と同じである。
【0083】
本発明においては、無機化合物(B)は、エチレン・酢酸ビニル共重合体(C)および後述するエチレン・α- オレフィン共重合体(A)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは1〜18重量部、さらに好ましくは2〜15重量部の割合で用いられる。ただし、成分(A)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0084】
多層フィルムの中間層を形成するに際して無機化合物(B)を上記のような割合で用いると、より保温性に優れた多層フィルムを得ることができる。
[エチレン・α- オレフィン共重合体(A)]
多層フィルムの中間層形成に際して必要に応じて用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、上述した外層形成に際して用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)のうち、密度が0.925g/cm3 以下、好ましくは0.880〜0.920g/cm3 のエチレン・α- オレフィン共重合体(A)である。
【0085】
本発明においては、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)とエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)との重量比[(A)/(C)]は、99/1〜1/99、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは80/20〜20/80の範囲にある。
【0086】
多層フィルムの中間層形成に際してエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)に対してエチレン・α- オレフィン共重合体(A)を上記のような重量比で用いると、中間層を薄膜化することができる。
【0087】
[耐候安定剤]
多層フィルムの中間層形成に際して必要に応じて用いられ耐候安定剤は、上述した外層形成に際して用いられる紫外線吸収剤と光安定剤である。
【0088】
光安定剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の割合で用いられる。ただし、成分(A)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0089】
紫外線吸収剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の量で用いられる。ただし、成分(A)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0090】
[その他の成分]
中間層形成用のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)に、従来公知の防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、熱安定剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0091】
防曇剤としては、上述した多価アルコールと炭素原子数12〜24の高級脂肪酸(ヒドロキシ脂肪酸を含む)とからなる部分エステル化物を主成分とする防曇剤が好ましく用いられる。
【0092】
防曇剤は、上記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部、さらに好ましくは0.5〜3重量部の割合で用いられる。ただし、成分(A)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0093】
内 層
本発明に係る農業用多層フィルムを構成する内層は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)から形成されている。このエチレン・α- オレフィン共重合体(A)に、必要に応じて高圧法低密度ポリエチレン(D)、無機化合物(B)、耐候安定剤、防曇剤を配合することができる。
【0094】
[エチレン・α- オレフィン共重合体(A)]
多層フィルムの内層形成に際して用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)は、上述した外層形成用のエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と同じである。
【0095】
[高圧法低密度ポリエチレン(D)]
多層フィルムの内層形成に際して必要に応じて用いられる高圧法低密度ポリエチレン(D)は、上述した外層形成に際して必要に応じて用いられる高圧法低密度ポリエチレン(D)と同じである。
【0096】
本発明においては、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)と高圧法低密度ポリエチレン(D)との重量比[(A)/(D)]は、99/1〜70/30、好ましくは95/5〜70/30、さらに好ましくは90/10〜80/20の範囲内にある。
【0097】
高圧法低密度ポリエチレン(D)を上記のような割合で用いると、内層(フィルム)の成形性がより向上する。
[無機化合物(B)]
多層フィルムの内層形成に際して必要に応じて用いられる無機化合物(B)は、上述した外層形成に用いられる無機化合物(B)と同じである。
【0098】
本発明においては、無機化合物(B)は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、1〜3重量部の割合で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0099】
多層フィルムの内層形成に際して無機化合物(B)を上記のような割合で用いると、保温性に優れた多層フィルムを得ることができる。
[耐候安定剤]
多層フィルムの内層形成に際して必要に応じて用いられる耐候安定剤は、上述した紫外線吸収剤と光安定剤である。
【0100】
光安定剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の量で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0101】
紫外線吸収剤は、エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、0.005〜5重量部、好ましくは0.005〜2重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部の量で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0102】
[その他の成分]
多層フィルムの内層形成に用いられるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)に、従来公知の防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0103】
防曇剤としては、上述した多価アルコールと炭素原子数12〜24の高級脂肪酸(ヒドロキシ脂肪酸を含む)とからなる部分エステル化物を主成分とする防曇剤が好ましく用いられる。
【0104】
防曇剤は、上記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)および高圧法低密度ポリエチレン(D)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部の割合で用いられる。ただし、成分(D)は任意成分であるので0重量部となる場合がある。
【0105】
多層フィルム
上記のような外層、中間層および内層からなる、本発明に係る農業用多層フィルムは、外層の厚みが通常3〜100μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜70μmの範囲にあり、中間層の厚みが10〜150μm、好ましくは20〜120μm、さらに好ましくは30〜100μmの範囲にあり、内層の厚みが3〜100μm、好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜70μmの範囲にあり、かつ、これらの層全体の厚みが30〜200μm、好ましくは50〜180μm、さらに好ましくは70〜150μmの範囲にある。
【0106】
本発明に係る農業用多層フィルムは、次のような物性、特性を有している。
(i)エルメンドルフ引裂強度は、MD方向で90kg/cm以上、好ましくは100kg/cm以上であり、かつ、TD方向で90kg/cm以上、好ましくは100kg/cm以上である。
(ii)厚み100μmでのダートインパクト強度は、900g以上、好ましくは1,000g以上である。
(iii) 引張破断点強度は、MD方向で350kg/cm2 以上、好ましくは370kg/cm2 以上であり、かつ、TD方向で350kg/cm2 以上、好ましくは370kg/cm2 以上である。
(iv)厚み100μmでの初期の光線透過率は90%以上、好ましくは92%以上であり、かつ、屋外暴露120日後の光線透過率は85%以上、好ましくは87%以上である。
【0107】
また、本発明に係る50μm厚の農業用多層フィルムは、グロスが通常60%以上であり、ヘイズが通常15%以下である。
なお、フィルムのグロスは、ASTM D 523に準じて入射角度60℃で測定した。また、フィルムのヘイズは、ASTM D 1003−61に従って測定した。
【0108】
多層フィルムの調製
上記のような本発明に係る農業用多層フィルムは、多層フィルムの各層で使用するポリエチレン系樹脂および上述した添加剤等の成分をそれぞれ混合し、バンバリーミキサーまたはロールミル等で溶融混合し、次いで、共押出インフレーション法または共押出Tダイ法により、外層、中間層および内層を積層することによって調製することができる。
【0109】
【発明の効果】
本発明に係る農業用多層フィルムは、
[I]エチレンと炭素原子数4〜12のα- オレフィンとを共重合して得られ、(i)メルトフローレート、(ii)密度および(iii) 分子量分布(Mw/Mn)が特定の範囲にあり、かつ、(iv)23℃におけるn-デカン可溶部と密度との関係および(v)GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値(B1 )と低分子量側の分岐数の平均値(B2 )との関係が特定の関係にあるエチレン・α- オレフィン共重合体(A)と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)と
を特定の割合で含有する組成物からなる外層、
[II]酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)と、上記無機化合物(B)とを特定の割合で含有する組成物からなる中間層、および
[III] 上記エチレン・α- オレフィン共重合体(A)からなる内層が積層されてなるので、保温性に優れるだけでなく、上述した従来の農業用(多層)フィルムと比べ、さらに屋外で長期使用した際の塵埃が付着していない状態での透明性の経時的低下度が少なく、しかも防塵性と強靱性に優れている。また、本発明に係る農業用多層フィルムは、軽量であるので、展張作業性に優れている。
【0110】
本発明に係る農業用多層フィルムは、上記のような効果を有するので、ハウス、トンネル等の農園芸施設に展張し、有用作物の栽培に長期に亘って利用することができる。
【0111】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例における農業用多層フィルムの物性評価は、下記のようにして行なった。
(1)エルメンドルフ引裂強度
エルメンドル引裂強度は、JIS Z 1702に準拠して、多層フィルムのMD方向およびTD方向について引裂強度試験を行なって求めた。
(2)ダートインパクト強度
ダートインパクト強度は、JIS Z 1707に準拠して(ダート先端径38mm)、衝撃試験を行なって求めた。
(3)引張破断点
引張破断点強度は、JIS K 6781に準拠し、下記の条件で、多層フィルムのMD方向およびTD方向について、クロスヘッド移動速度一定型引張試験機(インストロン社製)を用いて引張試験を行なって求めた値である。
【0112】
[試験条件]
試 料 :JIS K 6781
雰囲気温度:23℃
引張速度 :500mm/分
(4)初期の霞度
初期の霞度(HAZE(1); %)は、ASTM D 1003に記載されている積分球式測定装置ヘイズメーターを用いて測定した。
(5)屋外暴露12カ月後の霞度
フィルムを12カ月間屋外暴露した後、このフィルムの霞度(HAZE(2); %)を上記(4)と同様にして測定した。
【0113】
また、上記の初期の霞度(HAZE(1); %)と屋外暴露12カ月後の霞度(HAZE(2); %)とを用いて、次式より、フィルムの透明性の経時的低下度(HAZE(d); %)を求めた。
【0114】
HAZE(d) =(HAZE(2)/HAZE(1))×100
このHAZE(d) をもって防塵性の評価を行なった。
【0115】
【参考例1】
エチレン・ 1- ヘキセン共重合体の調製
[オレフィン重合用触媒の調製]
250℃で10時間乾燥したシリカ5.0kgを80リットルのトルエンで懸濁状にした後、0℃まで冷却した。その後、メチルアルミノオキサンのトルエン溶液(Al;1.33モル/リットル)28.7リットルを1時間で滴下した。この際、系内の温度を0℃に保った。引続き0℃で60分間反応させ、次いで、1.5時間かけて95℃まで昇温し、その温度で20時間反応させた。その後60℃まで降温し上澄液をデカンテーション法により除去した。
【0116】
このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエン80リットルで再懸濁化した。この系内へビス(1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr;34.0ミリモル/リットル)7.4リットルおよびビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(Zr;28.1ミリモル/リットル)1.0リットルを80℃で30分間かけて滴下し、更に80℃で2時間反応させた。その後、上澄液を除去し、ヘキサンで2回洗浄することにより、1g当り3.6mgのジルコニウムを含有する固体触媒を得た。
[予備重合触媒の調製]
1.7モルのトリイソブチルアルミニウムを含有する85リットルのヘキサンに、上記で得られた固体触媒0.85kgおよび1-ヘキセン255gを加え、35℃で12時間エチレンの予備重合を行なうことにより、固体触媒1g当り10gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒を得た。このエチレン重合体の極限粘度[η]は1.74dl/gであった。
[重合]
直列に結合した2器の連続式流動床気相重合装置を用い、上記予備重合触媒の存在下に、エチレンと1-ヘキセンとの共重合を行なってエチレン・1-ヘキセン共重合体を得た。
【0117】
上記のようにして得られたエチレン・1-ヘキセン共重合体は、1-ヘキセン含量が7.5重量%であり、密度が0.928g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)が1.63g/10分であり、GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn)が3.5であった。
【0118】
また、この共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク一の温度[Tm]が120℃であり、室温におけるn−デカン可溶成分量分率[W]が0.25重量%であった。
【0119】
この共重合体(以下、A−1と略す場合がある)についてGPC−IR分析で測定した上述のB1 は12.2/1000C(炭素原子1000個当たり12.2)であり、B2 は9.9/1000Cであった。
【0120】
【参考例2】
直列に結合した2器の連続式流動床気相重合装置を用い、上記参考例1に記載の予備重合触媒の存在下に、エチレンと1-ヘキセンとの共重合を行なってエチレン・1-ヘキセン共重合体を得た。
【0121】
上記のようにして得られたエチレン・1-ヘキセン共重合体は、1-ヘキセン含量が11重量%であり、密度が0.915g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)が2.19g/10分であり、GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn)が3.5であった。
【0122】
また、この共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク一の温度[Tm]が108℃であり、室温におけるn−デカン可溶成分量分率[W]が0.42重量%であった。
【0123】
この共重合体(以下、A−2と略す場合がある)についてGPC−IR分析で測定した上述のB1 は18.6/1000Cであり、B2 は14.7/1000Cであった。
【0124】
【参考例3】
従来のTi系重合触媒の存在下に、エチレンと4-メチル-1- ペンテンとの共重合を行なってエチレン・4-メチル-1- ペンテン共重合体を得た。
【0125】
上記のようにして得られたエチレン・4-メチル-1- ペンテン共重合体は、4-メチル-1- ペンテン含量が13.6重量%であり、密度が0.920g/cm3 であり、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238−65T,190℃、荷重2.16kg)が2.01g/10分であり、GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn)が4.4であった。
【0126】
また、この共重合体は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク一の温度[Tm]が122℃であり、室温におけるn−デカン可溶成分量分率[W]が8.5重量%であった。
【0127】
この共重合体(以下、E−1と略す場合がある)についてGPC−IR分析で測定した上述のB1 は12.7/1000Cであり、B2 は14.5/1000Cであった。
【0128】
【実施例1および比較例1】
第1表に示す樹脂を用いて、第2表に示す条件で、厚み100μmの三層フィルムをインフレーション成形した。
【0129】
上記のようにして得られたフィルムの物性を第3表に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
Claims (14)
- [I]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(D)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部である
組成物からなる外層、
[II]酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)100重量部と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)1〜20重量部と、
防曇剤とを含有し、
防曇剤の含有量が成分(C)100重量部に対して、0.05〜5重量部である
組成物からなる中間層、および
[III]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィン
とを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40である
組成物からなる内層
が積層されてなり、かつ、
該外層および内層を形成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分の範囲にあり、
(ii)密度が0.880〜0.940g/cm3であり、
(iii)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜3.5の範囲にあり、
(iv)23℃におけるn−デカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが、
W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
(v)GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1、低分子量側の分岐数の平均値をB2とするとき、
B1≧B2
であることを特徴とする農業用多層フィルム。 - 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の、
( vi )示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度〔Tm(℃)〕と密度〔d(g/cm 3 )〕とが、
Tm<400×d−250
で示される関係を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の農業用多層フィルム。 - 前記中間層[II]を形成する組成物が、密度が0.925g/cm3以下の前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)と、Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)と、防曇剤とを含有してなり、成分(A)と(C)との重量比[(A)/(C)]が99/1〜1/99であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(C)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部であり、防曇剤の含有量が成分(A)および(C)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の農業用多層フィルム。
- 前記内層[III]が、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(D)およびMg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有する組成物からなり、成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(D)の合計量100重量部に対して、1〜3重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層および内層の少なくとも1層を形成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の密度が、0.926〜0.940g/cm3であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層、中間層および内層の少なくとも1層が耐候安定剤を含有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層[I]の厚みが3〜100μmであり、中間層[II]の厚みが10〜150μmであり、内層[III]の厚みが3〜100μmであり、かつ、これらの層全体の厚みが30〜200μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- [I]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα− オレフィンとを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(D)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部である
組成物からなる外層、
[II]酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)100重量部と、
Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)1〜20重量部と、
防曇剤とを含有し、
防曇剤の含有量が成分(C)100重量部に対して、0.05〜5重量部である
組成物からなる中間層、および
[III]メタロセン系触媒の存在下に、エチレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンとを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、
メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm 3 の高圧法低密度ポリエチレン(D)とを含有し、
成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40である
組成物からなる内層
が積層されたフィルムであり、
該外層および内層を形成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分の範囲にあり、
(ii)密度が0.880〜0.940g/cm3であり、
(iii)GPCにおいて測定した分子量分布(Mw/Mn:Mw=重量平均分子量、Mn=数平均分子量)が1.5〜3.5の範囲にあり、
(iv)23℃におけるn-デカン可溶部(W(重量%))と密度(d)とが、
W<80×exp(−100(d−0.88))+0.1で示される関係を満たし、
(v)GPC−IRによる高分子量側の分岐数の平均値をB1、低分子量側の分岐数の平均値をB2とするとき、
B1≧ B2
であり、かつ、該フィルムは、
(i)エルメンドルフ引裂強度がMD方向で90kg/cm以上であり、かつ、TD方向で90kg/cm以上であり、
(ii)厚み100μmでのダートインパクト強度が900g以上であり、
(iii)引張破断点強度がMD方向で350kg/cm2以上であり、かつ、TD方向で350kg/cm2以上である
ことを特徴とする農業用多層フィルム。 - 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の、
( vi )示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク位置の温度〔Tm(℃)〕と密度〔d(g/cm 3 )〕とが、
Tm<400×d−250
で示される関係を満たす
ことを特徴とする請求項8に記載の農業用多層フィルム。 - 前記中間層[II]を形成する組成物が、密度が0.925g/cm3以下の前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、酢酸ビニル含有量が2.0〜30重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(C)と、Mg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有してなり、成分(A)と(C)との重量比[(A)/(C)]が99/1〜1/99であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(C)の合計量100重量部に対して、1〜20重量部であり、防曇剤の含有量が成分(A)および(C)の合計量100重量部に対して、0.05〜5重量部であることを特徴とする請求項8または9に記載の農業用多層フィルム。
- 前記内層[III]が、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と、メルトフローレートが0.1〜100g/10分、密度が0.915〜0.935g/cm3の高圧法低密度ポリエチレン(D)およびMg、Ca、AlおよびSiの少なくとも1つの原子を含有する無機化合物(B)とを含有する組成物からなり、成分(A)と(D)との重量比[(A)/(D)]が99/1〜60/40であり、成分(B)の含有量が成分(A)および(D)の合計量100重量部に対して、1〜3重量部であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層および内層の少なくとも1層を形成するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の密度が、0.926〜0.940g/cm3であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層、中間層および内層の少なくとも1層が耐候安定剤を含有していることを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
- 前記外層[I]の厚みが3〜100μmであり、中間層[II]の厚みが10〜150μmであり、内層[III]の厚みが3〜100μmであり、かつ、これらの層全体の厚みが
30〜200μmであることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の農業用多層フィルム。
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