JP3686737B2 - ポリオレフィン系樹脂組成物およびそれを用いた積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた物性、加工性を有する他、積層体に用いた場合に基材との接着性が良好なポリオレフィン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィンはヒートシール性、防湿性に優れ、加工が容易であることから、単層のフィルム、シートあるいは成形容器材料として用いられるだけでなく、各種樹脂フィルム、シート、さらにはアルミ箔などの金属箔や紙との積層体としても広く用いられている。中でも、チーグラー系触媒による重合で得られる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、高圧法低密度ポリエチレン(HPLDPE)と比較し、強度およびじん性が大きく、フィルム、シート、中空成形体、射出成形体等さまざまな用途に用いられている。
しかし、これらの材料についても成形品の薄肉、軽量化のためさらなる高強度化が要求されている。
そこで近年、メタロセン系触媒により分子量分布および組成分布が非常に狭い高強度のエチレン・α−オレフィン系共重合体が開発され、これは機械的特性や光学特性などで優れた性能を示すので、包装材料、容器材料として注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体にも幾つかの欠点がある。
例えば、メタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体を押出しラミネート等の方法でポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、金属箔等の基材と積層し、包装材料として用いる場合には、基材とメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体との接着強度が弱いという問題がある。
また、HPLDPEを押出しラミネート法により各種基材に積層する場合には、一般に、300℃以上の高温で積層することにより必要な接着強度を得るが、チーグラー型のLLDPEやメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体は高温で熱分解を起こし、安定した成形が困難である他、成形時に発煙したり、成形品に匂いが残る等の問題がある。
この為、チーグラー型のLLDPEやメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体では、300℃以下の温度で積層する必要がある。
【0004】
また、接着強度の低下を防ぐ為に、積層前の溶融膜にオゾンを吹きつけることにより溶融膜表面を強制的に酸化するオゾン処理法(参照:特開昭57−157724号公報)や、オゾン処理とアンカーコート剤と呼ばれる接着剤を併用する方法が提案されている。
しかし、オゾン処理法では、オゾンの臭気、腐食性、人体に対する安全性等の問題があり、アンカーコート剤を併用する方法では、塗布−乾燥工程を経るため、プロセスが複雑になる上、多量の有機溶剤を使用する為に、火災のおそれ、作業環境の悪化、製品への溶剤臭の残留などの問題があり、さらに、これらの方法は、製造コストの増加という面からも好ましくない。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑み、チーグラー型触媒によるLLDPEより優れた機械的強度、光学特性を有し、しかも、メタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体と同等の低温ヒートシール性、透明性を有しながら、そのメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体よりも優れた成形加工性を有し、かつ煩雑な工程を経ずとも、各種基材との接着性に優れるポリオレフィン系樹脂組成物およびそれを用いた積層体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的に沿って鋭意研究した結果、低分子量成分および非晶質成分の含有量が少ないエチレン(共)重合体を製造し、これに分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を添加することにより、上記目的を達成するに至った。
【0007】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、成分(I):下記(イ)〜(ニ)の要件を満足するエチレン(共)重合体と、
成分(II):分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物とからなり、
樹脂成分に対する成分(II)の割合が0.01〜5重量%であることを特徴とするものである。
(イ)密度が、0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが、0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが、2.00以下
【0008】
この際さらに、成分(III):エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体を含有し、樹脂成分に対する成分(III)の割合が50重量%未満であることが望ましい。
また、成分(I)のエチレン(共)重合体は、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られたものであることが望ましい。
さらに、前記成分(I)のエチレン(共)重合体が、下記(イ)〜(ヘ)の要件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(I-1)であることが望ましい。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.08〜2.0
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に複数個存在すること
(ヘ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン可溶分量X(wt%)と密度d及びメルトフローレート(MFR)が次の関係を満足すること
(a)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(b)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
【0009】
または、請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂組成物においては、その成分(I)のエチレン(共)重合体が、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子と周期律表第IV族の遷移化合物を含む少なくとも1種の触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより得られた下記(イ)〜(ホ)の要件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(I-2)であることが望ましい。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に1個存在する
【0010】
これらの場合、成分(II)のエポキシ化合物がエポキシ化植物油であることが望ましい。
また、前記成分(III)のエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体は、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を分子内に有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
本発明の積層体は、上述したいずれかのポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有するものである。
この際、ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層に隣接する層が、ポリエステル、ポリアミド、アルミニウムのいずれかからなるものが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
〔ポリオレフィン系樹脂組成物〕
〈(I)エチレン(共)重合体〉
本発明においては、下記(イ)〜(ニ)の要件を満足するエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、成分(I)と称する)が用いられる。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが2.00以下
本発明のエチレン(共)重合体(成分(I))は、エチレン、またはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンより選ばれた1種以上との(共)重合体である。このα−オレフィンは炭素数が3〜20であることが好ましく、3〜12のものがより好ましい。例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
また、これらのα−オレフィンの含有量は、共重合体中、合計で30モル%以下、好ましくは3〜20モル%の範囲で選択されることが望ましい。
【0012】
本発明におけるエチレン(共)重合体は、上記(イ)の要件、即ち、密度が0.86〜0.97g/cm3である。好ましくは、0.88〜0.945g/cm3、より好ましくは、0.90〜0.93g/cm3、さらに好ましくは0.91〜0.93g/cm3の範囲にある。密度が0.86g/cm3未満のものは柔らかすぎて剛性が劣る他、耐熱性が不良となり、抗ブロッキング性が劣るものとなる。また0.97g/cm3を越えると硬すぎて、引き裂き強度、耐衝撃性が充分でない。
また、エチレン(共)重合体の(ロ)メルトフローレート(以下、MFRと称す)は0.01〜100g/10分、好ましくは、0.1〜100g/10分、より好ましくは、0.2〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜40g/10分の範囲である。MFRが0.01g/10分未満では加工性(ドローダウン性等)が不良となり、100g/10分を越えると耐衝撃性などの機械的強度が低下する。
【0013】
成分(I)の(ハ)分子量分布Mw/Mnは、1.5〜5.0の範囲である。より好ましくは、2.0〜3.0、さらに好ましくは、2.2〜2.8である。Mw/Mnが1.5未満では成形加工性が劣り、5.0を越えるものは耐衝撃性等の機械的強度が劣る。
尚、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求め、それらの比(Mw/Mn)を算出することにより求められる。
【0014】
本発明の成分(I)の(ニ)組成分布パラメーター(Cb)は2.00以下である必要がある。組成分布パラメーター(Cb)が2.00よりも大きいと、ブロッキングしやすく、ヒートシール性も不良となり、また低分子量あるいは高分岐度成分の樹脂表面へのにじみ出しが多く衛生上の問題が生じるからである。
組成分布パラメーター(Cb)は下記の通り測定される。
酸化防止剤を加えたオルソジクロルベンゼン(ODCB)に試料を濃度が0.2重量%となるように135℃で加熱溶解した後、けい藻土(セライト545)を充填したカラムに移送した後、0.1℃/minの冷却速度で25℃まで冷却し、共重合体試料をセライト表面に沈着させる。次に、この試料が沈着されているカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を5℃刻みに120℃迄段階的に昇温する。すると各温度に対応した溶出成分を含んだ溶液が採取される。この溶液を冷却後、メタノールを加え、試料を沈澱後、ろ過、乾燥し、各温度における溶出試料を得る。この分別された各試料の、重量分率および分岐度(炭素数1000個当たりの分岐数)を測定する。分岐度は13C−NMRで測定し求める。
【0015】
このような方法で30℃から90℃で採取した各フラクションについては次のような、分岐度の補正を行う。すなわち、溶出温度に対して測定した分岐度をプロットし、相関関係を最小二乗法で直線に近似し、検量線を作成する。この近似の相関係数は十分大きい。この検量線により求めた値を各フラクションの分岐度とする。なお、溶出温度95℃以上で採取したフラクションについては溶出温度と分岐度に必ずしも直線関係が成立しないのでこの補正は行わない。
【0016】
次ぎにそれぞれのフラクションの重量分率wiを、溶出温度5℃当たりの分岐度biの変化量(bi−bi-1)で割って相対濃度ciを求め、分岐度に対して相対濃度をプロットし、組成分布曲線を得る。この組成分布曲線を一定の幅で分割し、次式より組成分布パラメーターCbを算出する。
Cb=(Σcj・bj 2/Σcj・bj)/(Σcj・bj/Σcj)
ここで、cjとbjはそれぞれj番目の区分の相対濃度と分岐度である。組成分布パラメーターCbは試料の組成が均一である場合に1.0となり、組成分布が広がるに従って値が大きくなる。
【0017】
なお、エチレン(共)重合体の組成分布を表現する方法は多くの提案がなされている。例えば特開昭60−88016号公報では、試料を溶剤分別して得た各分別試料の分岐数に対して、累積重量分率が特定の分布(対数正規分布)をすると仮定して数値処理を行い、重量平均分岐度(Cw)と数平均分岐度(Cn)の比を求めている。この近似計算は、試料の分岐数と累積重量分率が対数正規分布からずれると精度が下がり、市販のLLDPEについて測定を行うと相関係数R2はかなり低く、値の精度は充分でない。また、このCw/Cnの測定法および数値処理法は、本発明のCbのそれと異なるが、あえて数値の比較を行えば、Cw/Cnの値は、Cbよりかなり大きくなる。
【0018】
上述した成分(I)は、チーグラー系触媒、フィリップス系触媒等の周知の触媒で製造しても良いが、以下に示す2つの態様により調製したものが特に好適である。
その1つは、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下でエチレンまたはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを単独重合または共重合させることにより得られるものが特に好適である。
【0019】
そのようなものの中でも、下記(イ)〜(ヘ)の要件を満足するエチレン(共)重合体(以下、成分(I-1)とする)が特に好適である。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.08〜2.0
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に複数個存在すること
(ヘ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン可溶分量X(wt%)と密度d及びメルトフローレート(MFR)が次の関係を満足すること
(a)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(b)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
【0020】
もう1つは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子と周期律表第IV族の遷移化合物を含む少なくとも1種の触媒の存在下で得られた下記(イ)〜(ホ)の要件を満足するエチレン(共)重合体(以下、成分(I-2)とする)である。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に1個存在する
【0021】
ここで、成分(I-1)は、図1に示されるように、連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において実質的にピークが複数個の特殊なエチレンの単独重合体または共重合体であり、成分(I-2)は、同連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において図2に示すように、実質的にピークを1個有し、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子と周期律表第IV族の遷移金属化合物を含む少なくとも1種の触媒の存在下で得られる典型的なメタロセン系触媒によるエチレンの単独重合体または共重合体であり、成分(I-1)と(I-2)とは明白に区別されるものである。
【0022】
《成分(I-1)》
成分(I-1)においては、分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜5.0の範囲であり、1.5〜4.5のものがより好ましく、さらに好ましくは1.8〜4.0、より好ましくは2.0〜3.0の範囲にあることが望ましい。
また、成分(I-1)においては、組成分布パラメーターCbは、1.08〜2.00であることがより好ましく、さらに好ましくは1. 12〜1.70、より好ましくは1.15〜1.50の範囲にあることが望ましい。1.08未満ではホットタック特性が劣り、2.00より大きいと透明性が低下し、また成形品に高分子ゲルを生じる等のおそれがある。
【0023】
本発明における特殊なエチレン(共)重合体(I-1)は、上記したように、(ホ)連続昇温溶出分別法(TREF)により求めた溶出温度−溶出量曲線において、ピークが複数個存在する。この複数のピーク温度は85℃から100℃の間に存在することが特に好ましい。このピークが存在することにより、融点が高くなり、また結晶化度が上昇し、成形体の耐熱性および剛性が向上する。
【0024】
このTREFの測定方法は下記の通りである。まず、試料を酸化防止剤(例えば、ブチルヒドロキシトルエン)を加えたODCBに試料濃度が0.05重量%となるように加え、135℃で加熱溶解する。この試料溶液5mlを、ガラスビーズを充填したカラムに注入し、0.1℃/分の冷却速度で25℃まで冷却し、試料をガラスビーズ表面に沈着する。次に、このカラムにODCBを一定流量で流しながら、カラム温度を50℃/hrの一定速度で昇温しながら、試料を順次溶出させる。この際、溶剤中に溶出する試料の濃度は、メチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1に対する吸収を赤外検出機で測定することにより連続的に検出される。この値から、溶液中のエチレン(共)重合体の濃度を定量分析し、溶出温度と溶出速度の関係を求める。
TREF分析によれば、極少量の試料で、温度変化に対する溶出速度の変化を連続的に分析出来るため、分別法では検出できない比較的細かいピークの検出が可能である。
【0025】
また、上述したように、この成分(I-1)においては、(ヘ)25℃におけるODCB可溶分の量X(重量%)と密度dおよびMFRの関係は、dおよびMFRの値が、
d−0.008logMFR≧0.93を満たす場合は、
Xは2重量%未満、好ましくは1重量%未満、
d−0.008logMFR<0.93の場合は、
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0
好ましくは、
X<7.4×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+1.0
さらに好ましくは、
X<5.6×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+0.5
の関係を満足していることが望ましい。
【0026】
尚、上記25℃におけるODCB可溶分の量Xは、下記の方法により測定される。試料0.5gを20mlのODCBにて135℃で2時間加熱し、試料を完全に溶解した後、25℃まで冷却する。この溶液を25℃で一晩放置後、テフロン製フィルターでろ過してろ液を採取する。試料溶液であるこのろ液を赤外分光器によりメチレンの非対称伸縮振動の波数2925cm-1付近の吸収ピーク強度を測定し、予め作成した検量線により試料濃度を算出する。この値より、25℃におけるODCB可溶分量が求まる。
【0027】
25℃におけるODCB可溶分は、エチレン(共)重合体に含まれる高分岐度成分および低分子量成分であり、耐熱性の低下や成形品表面のべたつきの原因となり、衛生性の問題や成形品内面のブロッキングの原因となる為、この含有量は少ないことが望ましい。ODCB可溶分の量は、共重合体全体のα−オレフィンの含有量および分子量、即ち、密度とMFRに影響される。
従ってこれらの指標である密度およびMFRとODCB可溶分の量が上記の関係を満たすことは、共重合体全体に含まれるα−オレフィンの偏在が少ないことを示す。
【0028】
このエチレン(共)重合体(I-1)は分子量分布および組成分布が狭いため、機械的強度が強く、ヒートシール性、抗ブロッキング性等に優れ、しかも耐熱性の良い重合体である。
この成分(I-1)は、特に、以下のa1〜a4の触媒で重合することが望ましい。
a1:一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-rで表される化合物。
(式中、Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、R1およびR3はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基またはトリアルキルシリル基、R2は2,4-ペンタンジオナト配位子またはその誘導体、ベンゾイルメタナト配位子、ベンゾイルアセトナト配位子またはその誘導体、X1はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子を示し、p、qおよびrはそれぞれ0≦p<4、0≦q<4、0≦r<4、0≦p+q+r≦4の範囲を満たす整数である。)
a2:一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-nで表される化合物。
(式中、Me2は周期律表第I〜III族元素、R4およびR5はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、X2はハロゲン原子または水素原子(ただし、X2が水素原子の場合はMe2は周期律表第III族元素の場合に限る)を示し、zはMe2の価数を示し、mおよびnはそれぞれ0≦m≦z、0≦n≦zの範囲を満たす整数であり、かつ、0≦m+n≦zである。)
a3:共役二重結合を持つ有機環状化合物。
a4:Al−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物及び/又はホウ素化合物。
【0029】
これらの各触媒成分について詳説する。
上記触媒成分a1について、その一般式Me1R1 pR2 q(OR3)rX1 4-p-q-rで表される化合物の式中、Me1はジルコニウム、チタン、ハフニウムを示し、複数を用いることもできるが、共重合体の耐候性の優れるジルコニウムが含まれることが特に好ましい。R1及びR3の炭素数1〜24の炭化水素基は、炭素数が1〜12であることがより好ましく、さらに好ましくは1〜8である。
具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。
【0030】
上記触媒成分a1の一般式で示される化合物の例としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラベンジルジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、トリプロポキシモノクロロジルコニウム、ジプロポキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシモノクロロジルコニウム、ジブトキシジクロロジルコニウム、テトラブトキシチタン、テトラブトキシハフニウムなどが挙げられ、特にテトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウムなどのZr(OR)4化合物が好ましく、これらを2種以上混合して用いても差し支えない。
また、R2の2,4ーペンタンジオナト配位子またはその誘導体等の具体例には、テトラ(2,4ーペンタンジオナト)ジルコニウム、トリ(2,4ーペンタンジオナト)クロライドジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジクロライドジルコニウム、(2,4ーペンタンジオナト)トリクロライド、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジベンジルジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジネオフイルジルコニウム、
テトラ(ジベンゾイルメタナト)ジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルメタナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(2,4ーペンタンジオナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジエトキサイドジルコニウム、ジ(ジベンゾイルアセトナト)ジ−n−プロポキサイドジルコニウム、ジ(ベンゾイルアセトナト)ジ−n−ブトキサイドジルコニウム等が挙げられる。
【0031】
触媒成分a2について、その一般式Me2R4 m(OR5)nX2 z-m-nで表される化合物の式中Me2は周期律表第I〜III族元素を示し、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ホウ素、アルミニウム等である。R4及びR5はそれぞれ炭素数1〜24の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜12、さらに 好ましくは1〜8であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、インデニル基、ナフチル基などのアリール基;ベンジル基、トリチル基、フェネチル基、スチリル基、ベンズヒドリル基、フェニルブチル基、ネオフイル基などのアラルキル基などが挙げられる。これらは分岐があってもよい。X2はフッ素、ヨウ素、塩素および臭素などのハロゲン原子または水素原子を示すものである。ただし、X2が水素原子の場合はMe2はホウ素、アルミニウムなどに例示される周期律表第III族元素の場合に限るものである。
【0032】
上記触媒成分a2の一般式で示される化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウムなどの有機リチウム化合物;ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライドなどの有機マグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;トリメチルボロン、トリエチルボロンなどの有機ボロン化合物;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物等の誘導体が挙げられる。
【0033】
触媒成分a3の共役二重結合を持つ有機環状化合物には、環状で共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素化合物;前記環状炭化水素化合物が部分的に1〜6個の炭化水素残基(典型的には、炭素数1〜12のアルキル基またはアラルキル基)で置換された環状炭化水素化合物;共役二重結合を2個以上、好ましくは2〜4個、さらに好ましくは2〜3個有する環を1個または2個以上もち、全炭素数が4〜24、好ましくは4〜12である環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物;前記環状炭化水素基が部分的に1〜6個の炭化水素残基またはアルカリ金属塩(ナトリウムまたはリチウム塩)で置換された有機ケイ素化合物が含まれる。特に好ましくは分子中のいずれかにシクロペンタジエン構造をもつものが望ましい。
【0034】
上記の好適な化合物としては、シクロペンタジエン、インデン、アズレンまたはこれらのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシまたはアリールオキシ誘導体などが挙げられる。また、これらの化合物がアルキレン基(その炭素数は通常2〜8、好ましくは2〜3)を介して結合(架橋)した化合物も好適に用いられる。
【0035】
環状炭化水素基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式で表示することができる。
ALSiR4-L
ここで、Aはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基で例示される前記環状水素基を示し、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェニル基などのアリール基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジル基などのアラルキル基で示され、炭素数1〜24、好ましくは1〜12の炭化水素残基または水素を示し、Lは1≦L≦4、好ましくは1≦L≦3である。
【0036】
上記成分a3の有機環状炭化水素化合物の具体例として、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、エチルシクロペンタジエン、1,3−ジメチルシ クロペンタジエン、インデン、4−メチル−1−インデン、4,7−ジメチルイ ンデン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、シクロオクタテトラエン、アズレン、フルオレン、メチルフルオレンのような炭素数5〜24のシクロポリエンまたは置換シクロポリエン、モノシクロペンタジエニルシラン、ビスシクロペンタジエニルシラン、トリスシクロペンタジエニルシラン、モノインデニルシラン、ビスインデニルシラン、トリスインデニルシランなどが挙げられる。
【0037】
触媒成分a4のAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物及び/又はホウ素化合物は、アルキルアルミニウム化合物と水とを反応させることにより、通常アルミノキサンと称される変性有機アルミニウムオキシ化合物が得られ、分子中に通常1〜100個、好ましくは1〜50個のAl−O−Al結合を含有する。該変性有機アルミニウムオキシ化合物は線状でも環状でもいずれでもよい。また、ホウ素化合物としてはテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸トリエチルアルミニウム(トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ジメチルアニリニウム(ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,Nージメチルアンリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,Nージメチルアンリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート等があげられる。
【0038】
有機アルミニウムと水との反応は通常不活性炭化水素中で行われる。該不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましい。
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は通常0.25/ 1〜1.2/1、好ましくは0.5/1〜1/1であることが望ましい。
【0039】
上記触媒成分a1〜a4は、そのまま混合接触させて使用しても差し支えないが、好ましくは無機物担体及び/又は粒子状ポリマー担体(a5)に担持させて使用させることが望ましい。該無機物担体および/または粒子状ポリマー担体(a5)としては、炭素質物、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩またはこれらの混合物あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。該無機物担体に用いることができる好適な金属としては、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−V2O5、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。これらの中でもSiO2およびAl2O3からなる群から選択された少なくとも1種の成分を主成分とするものが好ましい。
また、有機化合物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれも使用でき、具体的には、粒子状のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリノルボルネン、各種天然高分子およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
上記無機物担体及び/又は粒子状ポリマー担体は、このまま使用することもできるが、好ましくは予備処理としてこれらの担体を有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む変性有機アルミニウムオキシ化合物などに接触処理させた後に成分a5として用いることもできる。
【0041】
《成分(I-2)》
メタロセン系触媒によるエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体成分(I-2)においては、その分子量分布は、1.5〜5.0の範囲であり、1.5〜4.5であることがより好ましく、1.8〜3.5の範囲にあることがさらに望ましい。
また、成分(I-2)においては、組成分布パラメーターは、好ましくは1.01〜1.2、さらに好ましくは1.02〜1.18、より好ましくは1.03〜1.17の範囲にあることが望ましい。
【0042】
このメタロセン系触媒によるエチレンの単独重合体または共重合体(I-2)はシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と必要により助触媒、有機アルミニウム化合物、担体とを含む触媒の存在下にエチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるものである。
【0043】
このエチレン単独重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体(I-2)を製造する触媒であるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物のシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜10の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも1種の置換基を有する置換シクロペンタジエニル基等である。該置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成してもよい。
【0044】
上記炭素数1〜10の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロアルキル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフイル基等のアラルキル基等が例示される。これらの中でもアルキル基が好ましい。
置換シクロペンタジエニル基の好適なものとしては、メチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、n−ヘキシルシクロペンタジエニル基、1,3-ジメチルシクロペンタジエニル基、1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル基、1,3-n-プロピルメチルエチルシクロペンタジエニル基などが具体的に挙げられる。本発明の置換シクロペンタジエニル基としては、これらの中でも炭素数3以上のアルキル基が置換したシクロペンタジエニル基が好ましく、特に1,3-置換シクロペンタジエニル基が好ましい。
置換基同士すなわち炭化水素同士が互いに結合して1または2以上の環を形成する場合の置換シクロペンタジエニル基としては、インデニル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換インデニル基、ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換ナフチル基、炭素数1〜8の炭化水素基(アルキル基等)等の置換基により置換された置換フルオレニル基等が好適なものとして挙げられる。
【0045】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物の遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウムが好ましい。
該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常1〜3個を有し、また2個以上有する場合は架橋基により互いに結合していてもよい。なお、係る架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、アルキルシランジイル基、シランジイル基などが挙げられる。
【0046】
周期律表第IV族の遷移金属化合物においてシクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基などが挙げられる。
【0047】
これらの具体例としては以下のものがある。ジアルキルメタロセンとして、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジフェニルなどがある。モノアルキルメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフェニルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメチルクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムフェニルクロライドなどがある。
また、モノシクロペンタジエニルチタノセンであるペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルチタニウムトリクロライド)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルなどが挙げられる。
【0048】
置換ビス(シクロペンタジエニル)チタニウム化合物としては、ビス(インデニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエニルチタニウム化合物としては、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライド、ビス(1,2−ジエチルシクロペンタジエニル)チタニウムジフェニルまたはジクロライドまたは他のジハライド錯体、シリコン、アミンまたは炭素連結シクロペンタジエン錯体としてはジメチルシリルジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、メチレンジシクロペンタジエニルチタニウムジフェニルまたはジクロライド、他のジハライド錯体が挙げられる。
【0049】
ジルコノセン化合物としては、ペンタメチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ペンタエチルシクロペンタジエニルジルコニウムトリクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジフェニル、アルキル置換シクロペンタジエンとしては、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、それらのハロアルキルまたはジハライド錯体、ジアルキル、トリアルキル、テトラアルキルまたはペンタアルキルシクロペンタジエンとしてはビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、ビス(1,2−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジメチル、およびそれらのジハライド錯体、シリコン、炭素連結シクロペンタジエン錯体としては、ジメチルシリルジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライド、メチレンジシクロペンタジエニルジルコニウムジメチルまたはジハライドなどが挙げられる。
【0050】
さらに他のメタロセンとしては、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロライド、ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジメチル、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウムジクロライドなどが挙げられる。
【0051】
本発明の他の周期律表第IV族の遷移金属化合物の例として、下記化学式で示されるシクロペンタジエニル骨格を有する配位子とそれ以外の配位子および遷移金属原子が環を形成するものも挙げられる。
【化1】
上記化学式中、Cpは前記シクロペンタジエニル骨格を有する配位子、Xは水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル基、アリールシリル基、アリールオキシ基、アルコキシ基、アミド基、シリルオキシ基等を表し、YはSiR2、CR2、SiR2SiR2、CR2CR2、CR=CR、SiR2CR2、BR2、BRからなる群から選ばれる2価基、Zは−O−、−S−、−NR−、−PR−またはOR、SR、NR2、PR2からなる群から選ばれる2価中性リガンドを示す。ただし、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、シリル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、またはY、ZまたはYとZの双方からの2個またはそれ以上のR基は縮合環系を形成するものである。Mは周期律表第IV族の遷移金属原子を表す。
【0052】
この化学式で表される化合物の例としては、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチルシクロペンタジエニル)メチレンタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、(フェニルホスフイド)ジメチル(テトラメチルシクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドなどが挙げられる。
【0053】
本発明でいう助触媒としては、前記周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になし得る、または触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衡させうるものをいう。
本発明において用いられる助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ等が挙げられる。これらの中でもアルミノキサンが最も好ましい。
【0054】
また、触媒は無機または有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機または有機化合物の多孔質酸化物が好ましい。具体的には、SiO2、Al2O3、MgO、ZrO2、TiO2、B2O3、CaO、ZnO、BaO、ThO2等またはこれらの混合物が挙げられ、SiO2−Al2O3、SiO2−V2O5、SiO2−TiO2、SiO2−MgO、SiO2−Cr2O3等が挙げられる。
【0055】
有機アルミニウム化合物として、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムハライド;アルキルアルミニウムセスキハライド;アルキルアルミニウムジハライド;アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0056】
《製造方法》
本発明のエチレン(共)重合体(I)の製造方法は、前記触媒の存在下、実質的に溶媒の存在しない気相重合法、スラリー重合法、溶液重合法等で製造され、実質的に酸素、水等を断った状態で、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等に例示される不活性炭化水素溶媒の存在下または不存在下で製造される。重合条件は特に限定されないが、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜110℃であり、重合圧力は低中圧法の場合、通常、常圧〜70kg/cm2G、好ましくは常圧〜20kg/cm2Gであり、高圧法の場合通常1500kg/cm2G以下が望ましい。重合時間は低中圧法の場合通常3分〜10時間、好ましくは5分〜5時間程度が望ましい。高圧法の場合、通常1分〜30分、好ましくは2分〜20分程度が望ましい。また、重合は一段重合法はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段重合法など特に限定されるものではない。
【0057】
本発明のエチレン(共)重合体において、重合時の触媒成分を実質的に塩素等のハロゲンを含まないものとすると、得られる重合体にもこれらハロゲンが含まれず、したがって化学的安定性、衛生性が優れ、食品、衛生、医療関連用途に好適である。また電気部品、電線部材、電子レンジに関する包装材料および容器に適用した場合、周辺の金属部品等の錆の発生が抑えられるといった特徴を有する。
【0058】
尚、エチレン(共)重合体(I)に対しては、有機あるいは無機フィラー、粘着付与剤、酸化防止剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、分散剤、核剤、発泡剤、難燃剤、架橋剤、紫外線防止剤、(不)飽和脂肪酸アミド、(不)飽和高級脂肪酸の金属塩等の滑剤などの公知の添加剤を、本願発明の特性を本質的に阻害しない範囲で添加することができる。
これらの添加剤の中でも、滑剤、粘着付与剤、無機フィラーは作業性をより向上させるために好適に用いられる。
滑剤としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、等の脂肪酸アミド;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、オレイン酸ジグリセライド等の脂肪酸グリセリンエステル化合物およびそれらのポリエチレングリコール付加物等が挙げられる。
また無機フィラーとしては、軽質および重質炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ゼオライト、炭酸マグネシウム、長石等が挙げられる。
粘着付与剤としては、ポリブテン、ヒマシ油誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、ロジンおよびロジン誘導体、石油樹脂およびそれらの水添物等のタッキファイヤー、ゴム等が挙げられる。これら粘着付与剤は0.5〜20重量部の範囲で配合することができる。
顔料としてはカーボンブラック、チタン白等の他、市販の各種着色剤マスターバッチが好適に用いられる。
【0059】
さらに適度の滑り性、帯電防止性、防曇性を得るための添加剤についても配合することができる。
具体的には、ソルビタン脂肪酸エステルとして、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンモノステアレート等;グリセリン脂肪酸エステルとして、グリセリンモノオレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート等;ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノオレート、テトラグリセリンモノオレート、テトラグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンモノラウレート、ヘキサグリセリンモノオレート、デカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノオレート等の他、多価アルコールの脂肪酸エステルおよびこれらのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アミドおよびこれらのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
これらの添加剤は単独あるいは混合組成物として使用されるが、添加量としては通常0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.3重量%である。添加量が0.01重量%未満では添加剤による改質効果が十分ではなく、0.5重量%を越える場合には添加剤の表面への浮き出し量が多く、べたつき、その結果、作業性が著しく低下するなどの問題が起こるため好ましくない。
【0060】
〈(II)エポキシ化合物〉
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物においては、成分(II)として、分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物を含有する。
このエポキシ化合物において、分子内にエポキシ基を2個以上有する必要があり、1個では、積層体に用いた場合に、他層との接着性の向上効果が充分でない。エポキシ化合物の分子量は3000以下であることが必要であり、1500以下であればより好ましい。分子量が3000を超えると、やはり他層との接着強度が不十分となる。
エポキシ化合物としてはフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油等が挙げられる。なかでも、エポキシ化植物油は安全性の面から食品などの包装材料用途の積層体には最も好ましい。
【0061】
ここでのエポキシ化植物油とは、天然植物油の不飽和二重結合を過酸などを用いてエポキシ化したものであり、エポキシ化大豆油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化サフラワー油、エポキシ化コーン油などを挙げることができる。
尚、植物油をエポキシ化する際に若干副生するエポキシ化されていない若しくはエポキシ化が不十分な油分の存在は本発明の効果をなんら妨げるものではない。
これらのエポキシ化合物(II)の配合量は、樹脂成分に対して、即ち、樹脂成分が成分(I)と成分(II)だけであれば、それらの合計に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜0.9重量%の範囲で添加される。添加量が0.01重量%未満では接着強度向上効果が充分でなく、5重量%を超えると成形体に臭いがつく他、表面がべたつき、また、光学特性の低下という問題が生じる為、好ましくない。
【0062】
〈(III)オレフィン系重合体〉
本発明においては、成分(III)として、エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体をさらに含有していることが望ましい。この成分(III)は必須成分ではないが、添加することにより、接着性をさらに向上させることができる。
エポキシ基と反応する官能基としては、酸無水物基、カルボキシル基、またはカルボン酸金属塩のうちのいずれか1種以上の基を分子内に有することが好ましい。これらの官能基は共重合法またはグラフト法によりポリオレフィン分子中に導入される。
共重合法によって製造されるエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系共重合体としては、エチレンと共重合可能な化合物とエチレンとの多元共重合体が挙げられる。共重合に用いるエチレンと共重合可能な化合物としては、(メタ)アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム塩等のα,β−不飽和カルボン酸金属塩、および無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物等が挙げられる。この他にも、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有化合物、アリルアミン等の不飽和アミノ化合物等が例示されるが、この限りではない。
また、これらのエポキシ基と反応可能な官能基を有する不飽和化合物に加えて、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、ビニルアルコールエステル等を共重合した多元共重合体を使用することができる。また、これらの化合物とエチレンとの共重合体は、2種類以上を併用することもできる。
【0063】
グラフト変性によってエポキシ基と反応可能な官能基を導入したポリオレフィンは、ポリオレフィンとラジカル発生剤と変性用の化合物とを溶融もしくは溶液状で作用させて製造するのが一般的である。
グラフト変性用のポリオレフィンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのホモポリマーの他、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの共重合体や、それらの混合物などが挙げられる。
また、例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体のように、エポキシ基と反応可能な酸あるいは酸無水物基などを既に含むような共重合体をさらにグラフト変性したものを用いても良い。
【0064】
変性に使用するラジカル発生剤の種類については特に限定はないが、一般に、有機過酸化物が用いられ、例えば、ジt−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類、i−ブチルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類、ジi−プロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類、t−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、t−ブチルハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類が例示される。中でも、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ベンゾイルパーオキサイド等が好ましい。
変性用の不飽和化合物としては、上記エチレンと共重合可能な化合物と同様の不飽和化合物が用いられる。
【0065】
(III)成分であるエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体の使用量は、樹脂成分に対して、すなわち、樹脂成分が成分(I)と成分(II)と成分(III)だけであれば、それらの合計に対して50重量%未満であり、2〜25重量%が好ましく、5〜20重量%が特に好ましい。50重量%よりも多いと、接着強度が向上するものの、成分(I)のエチレン(共)重合体に基づく機械特性、光学特性、熱特性が低下する上に、コストアップとなる。
本発明においては、その特性を本質的に損なわない範囲において、造核剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、紫外線吸収剤、分散剤などの公知の添加剤を添加することができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を製造するには、上記各成分をヘンシェルミキサー、リボンミキサー等により混合するか、混合したものをさらにオープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して混練する方法を適宜利用すればよい。溶融混練の温度は、通常110〜350℃、扱い易さから120〜300℃が好ましい。
【0066】
〔積層体〕
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、接着性が良好なため、各種積層体として用いると、特にその特性を発揮することができる。
このポリオレフィン系樹脂組成物からなる層と隣接する層(以下、基材層とする)としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の熱可塑性樹脂のフィルムまたはシートの他、珪素酸化物やアルミニウム等の薄膜を蒸着した樹脂フィルム、鉄、アルミニウム等の金属箔、紙等、一般にフィルムまたはシートとして用いられているものを使用できる。また、織布、不織布、板体のいずれでもかまわない。また、これらの基材層は必要に応じてコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、紫外線処理等の表面処理が行なわれていても良い。
これらの基材層の中でも、ポリアミド、ポリエステルのフィルムまたはシート、アルミ箔が包装材料等で多量に使用されており、本発明における樹脂組成物はこれらの基材に対して特に優れた接着性を発揮する。
尚、積層体としては、当該ポリオレフィン系樹脂組成物層と基材層の他にも、種々の層を設けていてもかまわない。
【0067】
本発明の積層体を成形するには、押出しラミネート成形、共押出し成形、感熱接着法、カレンダー成形、中空成形、インフレーション成形等の方法を用いることができる。特に押出しラミネート成形においては従来依然のものに比して著しい接着強度の改善効果がみられる。
ここでいう押出ラミネート成形とは、熱可塑性樹脂を押出機を用いて加熱、溶融、Tダイより膜状に押出し、各種フィルム、箔等の基材の上に載せ、製膜と接着とを同時に行なう方法であり、生産性の特長を活かして包装材料や剥離紙等の分野で広く行なわれているものである。
【0068】
押出ラミネート成形における成形温度は、従来のチーグラー触媒によるエチレン・α−オレフィン共重合体およびメタロセン系エチレン・α−オレフィン共重合体の場合、成形性の点から、200〜300℃の範囲が一般的であるが、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物では200〜350℃の範囲での成形が可能である。
これは、従来のエチレン・α−オレフィン共重合体では300℃を超えると、熱分解を起こし、ラミネート時に溶融張力の低下に伴い、高速成形性が低下し、同時にネックインが大きくなるのに対して、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物では、280℃以上の温度でエポキシ化合物が介在した架橋反応が起こり、安定した高速成形性および低ネックインを発現することができる為である。300℃以上の高温で成形することにより、各種基材に対する接着強度は大きく改善される。
また、押出ラミネート成形の場合には、溶融膜にオゾンを含む空気を吹きつけて溶融膜表面を酸化させるオゾン処理や、溶融膜を圧着する直前に基材の接着面側にコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等の前処理を行なうことでさらに接着強度を向上させることもできる。また、得られた積層体を40℃以上、樹脂の融点以下の温度で熱処理を行なうことでさらに強固な接着強度を得ることもできる。
【0069】
【実施例】
以下に実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔試験方法〕
密度:
JIS K6760に準拠した。
MFR:
JIS K6760に準拠した。
DSC測定:
厚さ0.2mmのシートを熱プレスで成形し、約5mgの試料を打抜き、230℃で10分間保持後、2℃/分で0℃迄冷却後、再び、10℃/分で170℃まで昇温し、表れた最高温ピークの頂点の温度を最高ピーク温度Tmとした。
【0070】
分子量分布Mw/Mn:
GPC装置(ウォータース150型)を用い、溶媒として135℃のODCBを使用した。カラムは東ソーのGMHHR-H(S)を用いた。
高速成形性(DD):
90mmφ(50rpm)の押出機を用いて、Tダイ幅800mm、Tダイからロール迄のエアギャップ120mmの条件下、温度300℃で引取速度を増速し、溶融膜の安定性を観察し、耐用できる最高速度を測定した。
ネックイン:
上記押出機により膜厚25μm、引取速度150m/分で成形し、基材上のコート幅を測定し、ダイス幅との差(mm)を測定した。
【0071】
接着強度:
ネックイン測定時と同じ条件で基材に押出ラミネート法により積層して積層体を製造し、その得られた積層体を15mm幅の短冊状にカットし、300mm/分の速度で180℃剥離を行い、その強度(g/15mm)を測定した。
基材としては、二軸延伸ポリアミドフィルム(オリエンテッドナイロン(ONy):東洋紡績(株)製「ハーデンフィルムN1100」、幅860mm、厚さ15μm)と、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET:二村化学工業(株)製「太閣ポリエステルフィルムFE2001」、幅860mm、厚さ12μm)とを用いた。
透明性:
幅860mm、厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を基材とし、上記条件で製造した積層体のヘイズを測定した。測定は、JIS K7105に準じた。
【0072】
〔エチレン(共)重合体(I-1)の製造〕
▲1▼固体触媒の調製
窒素下で電磁誘導攪拌機付き触媒調製器(No.1)に精製トルエンを加え、ついでジプロポキシジクロロジルコニウム(Zr(OPr)2Cl2)28gおよびメチルシクロペンタジエン48gを加え、0℃に系を保持しながらトリデシルアルミニウムを45gを滴下した。滴下終了後、反応系を50℃に保持して16時間攪拌した。この溶液をA液とした。
次に、窒素下で別の攪拌器付き触媒調製器(No.2)に精製トルエンを加え、前記A溶液と、ついでメチルアルミノキサン6.4molのトルエン溶液を添加し反応させた。これをB液とした。
次に、窒素下で攪拌器付き調製器(No.1)に精製トルエンを加え、次いで予め400℃で所定時間焼成処理したシリカ(富士デビソン社製、グレード#952、表面積300m2/g)1400gを加えた後、前記B溶液の全量を添加し、室温で攪拌した。ついで窒素ブローにて溶媒を除去して流動性の良い固体触媒粉末を得た。これを触媒Cとした。
【0073】
▲2▼試料の重合
連続式の流動床気相法重合装置を用い、重合温度70℃、全圧20kgf/cm2Gでエチレンと1−ヘキセンの共重合を行った。前記触媒Cを連続的に供給して重合を行い、系内のガス組成を一定に保つため、各ガスを連続的に供給しながら重合を行い、共重合体(I−▲1▼)を製造した。
(I−▲1▼)エチレン・1−ヘキセン共重合体
密度:0.911g/cm3
MFR:11g/10分
分子量分布(Mw/Mn):2.6
組成分布パラメーターCb:1.19
TREFピーク温度:83.2、96.5℃
d−0.008logMFR:0.903
【0074】
〔エチレン(共)重合体(I-2)の製造〕
攪拌機を付したステンレス製オートクレーブを窒素置換し精製トルエンを入れた。次いで、ブテン−1を添加し、更にビス1,3ジメチル(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド(Zrとして0.02mモル)とメチルアルモキサン[MAO](MAO/Zr=100[モル比])の混合溶液を加えた後、120℃に昇温した。次ぎにエチレンを張り込み重合を開始した。エチレンを連続的に重合しつつ全圧を維持して1時間重合を行い、エチレン・ブテン−1共重合体(I−▲2▼)を得た。
(I−▲2▼)エチレン・ブテン−▲1▼共重合体
密度:0.918g/cm3
MFR:3.8g/10分
分子量分布(Mw/Mn):2.3
組成分布パラメーター(Cb):1.05
TREFピーク温度:94.7℃
d−0.008logMFR:0.901
(I−▲3▼)エチレン・ブテン−1共重合体
気相法チーグラー触媒品(日本ポリオレフィン(株)製)
密度:0.920g/cm3
MFR:7.0g/10分
【0075】
〔成分(III)〕
エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系共重合体として以下のものを使用した。
(III−▲1▼)エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)
三菱油化(株)製「ユカロンA221M」
MFR:7.0g/10分
アクリル酸:8.5重量%
(III−▲2▼)無水マレイン酸変性ポリエチレン
MFR:36.6g/10分
無水マレイン酸:0.09重量%
【0076】
〔実施例1〕
成分(I)としてI−▲1▼のエチレン・1−ヘキセン共重合体に、成分(II)としてエポキシ化大豆油(旭電化(株)製「O−130P」)を0.5重量%加え、φ30mmの二軸押出機を用いて200℃で溶融混練してポリオレフィン系樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物をφ90mmの押出機を有する押出ラミネーターを用いてTダイ幅800mm、エアギャップ120mm、温度280℃で、基材上に押し出して積層体を製造した。
この実施例1のものであると、成形膜はネックインが小さく、得られた積層体は良好な接着性、透明性を発揮した。
【0077】
〔実施例2〕
成形温度を305℃とする以外は実施例1と同様にして成形を行った。
エポキシ化合物を添加することにより、300℃以上でも成形が可能となり、良好な接着強度が得られた。
〔実施例3〕
成分(II)としてエポキシ化大豆油を3.0重量%添加する以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、積層体を製造した。
この組成物についても、良好な成形性を示し、接着性、透明性ともに良好であった。
〔実施例4〕
成形温度を305℃とする以外は実施例2と同様にして成形を行った。この場合も溶融膜は安定しており、透明性、接着強度共に良好であった。
【0078】
〔実施例5〕
成分(I)としてI−▲2▼を使用する以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、積層体を製造した。
この組成物についても、成形性は良好であり、接着性、透明性も良好であった。
〔実施例6〕
成形温度を305℃とする以外は実施例5と同様にして成形を行った。この場合も溶融膜は安定しており、透明性、接着強度共に良好であった。
〔実施例7〕
成分(II)としてエポキシ化亜麻仁油を0.5重量%添加する以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、積層体を製造した。
この組成物についても、良好な成形性を示し、接着性、透明性ともに良好であった。
【0079】
〔実施例8〕
成形温度を305℃とする以外は実施例7と同様にして成形を行った。この場合も溶融膜は安定しており、透明性、接着強度共に良好であった。
〔実施例9〕
成分I−▲1▼と成分III−▲1▼の重量比が80:20の割合になるように混合した組成物に、成分(II)として、エポキシ化大豆油を0.5重量%添加し、実施例1同様に、溶融混練して組成物を得た。
得られた組成物を用いて実施例1と同様に積層体を製造した。
このものにおいても、良好な成形性と優れた接着性、透明性を示した。
〔実施例10〕
成形温度を305℃とする以外は実施例9と同様にして成形を行った。この場合も溶融膜は安定しており、透明性は若干低下するものの、接着強度はさらに向上した。
〔実施例11〕
成分I−▲1▼と成分III−▲2▼の重量比が80:20の割合になるように混合した組成物に、成分(II)として、エポキシ化大豆油を0.5重量%添加し、実施例1同様に、溶融混練して組成物を得た。
得られた組成物を用いて実施例1と同様に積層体を製造した。
このものにおいても、良好な成形性と優れた接着性、透明性を示した。
〔実施例12〕
成形温度を305℃とする以外は実施例11と同様にして成形を行った。この場合も溶融膜は安定していた。透明性は実施例10と同様に若干低下するものの、接着強度はさらに向上した。
【0080】
〔比較例1〕
成分(II)のエポキシ化合物を添加せずに、エチレン(共)重合体I−▲1▼単独で実施例1と同様に、成形温度280℃で積層体を製造した。
このときのネックインはエポキシ化合物を添加したものよりも大きい上に、充分な接着強度も得られなかった。
〔比較例2〕
比較例1で調製した樹脂組成物を用いて、成形温度305℃で積層体の製造を試みた。しかしながら、I−▲1▼単独では、305℃で熱分解の為に溶融膜が不安定で、製膜が不可能な状態であった。
〔比較例3〕
成分(II)の代りに、エポキシ化されていない大豆油を0.5重量%添加する他は実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、積層体を製造した。
このものはネックインが非常に大きく、接着強度も不十分であった。
〔比較例4〕
比較例3で調製した樹脂組成物を用いて、成形温度305℃で積層体の製造を試みた。しかしながら、305℃で熱分解の為に溶融膜が不安定で、製膜が不可能な状態であった。
〔比較例5〕
成分(I)として、I−▲3▼エチレン・ブテン−1共重合体を使用する他は実施例1と同様にして、積層体を製造した。このものでは、良好な成形性と接着強度を示したが、透明性で劣っていた。
【0081】
【表1】
【0082】
【発明の効果】
本発明は、優れた物性、加工性および基材との良好な接着性を有する新規なエチレン(共)重合体を含む組成物であり、分子量分布が狭いにもかかわらず、比較的広い組成分布をもち、かつ低分子量成分および非晶質成分の含有量が少なく、機械物性、成形加工性、光学特性および耐熱性に優れる。特に、押出しラミネート成形、Tダイ成形、インフレーションフィルム成形等によってポリエステル、ポリアミド、金属箔等と積層した際の接着強度に優れる。
また、積層体は、接着強度、透明性、ヒートシール性に優れ、溶剤抽出成分量が少ない為、食品や衣料等の各種包装材、容器等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 成分(I-1)についての連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のグラフである。
【図2】 成分(I-2)についての連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のグラフである。
Claims (8)
- 成分(I):下記(イ)〜(ニ)の要件を満足するエチレン(共)重合体と、
成分(II):分子内にエポキシ基を2個以上有し、分子量が3000以下であるエポキシ化合物とからなり、
樹脂成分に対する成分(II)の割合が0.01〜5重量%であり、
前記成分(I)のエチレン(共)重合体が、少なくとも共役二重結合をもつ有機環状化合物および周期律表第 IV 族の遷移金属化合物を含む触媒の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合させることにより得られたものであることを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
(イ)密度が、0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが、0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が、1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが、2.00以下 - さらに成分(III):エポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体を含有し、樹脂成分に対する成分(III)の割合が50重量%未満であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記成分(I)のエチレン(共)重合体が、下記(イ)〜(ヘ)の要件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(I-1)であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.08〜2.0
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に複数個存在すること
(ヘ)25℃におけるオルソジクロロベンゼン可溶分量X(wt%)と密度d及びメルトフローレート(MFR)が次の関係を満足すること
(a)d−0.008logMFR≧0.93の場合
X<2.0
(b)d−0.008logMFR<0.93の場合
X<9.8×103×(0.9300−d+0.008logMFR)2+2.0 - 前記成分(I)のエチレン(共)重合体が、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子と周期律表第IV族の遷移化合物を含む少なくとも1種の触媒の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合することにより得られた下記(イ)〜(ホ)の要件を満足するエチレン・α−オレフィン共重合体(I-2)であることを特徴とする請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
(イ)密度が0.86〜0.97g/cm3
(ロ)メルトフローレートが0.01〜100g/10分
(ハ)分子量分布(Mw/Mn)が1.5〜5.0
(ニ)組成分布パラメーターCbが1.01〜1.2
(ホ)連続昇温溶出分別法による溶出温度−溶出量曲線のピークが実質的に1個存在する - 成分(II)のエポキシ化合物がエポキシ化植物油であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 前記成分(III)のエポキシ基と反応する官能基を有するオレフィン系重合体が、酸無水物基、カルボキシル基、カルボン酸金属塩からなる群から選ばれた少なくとも1種の基を分子内に有するポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物からなる層を有することを特徴とする積層体。
- 前記ポリオレフィン系樹脂組成物からなる層に隣接する層が、ポリエステル、ポリアミド、アルミニウムのいずれかからなることを特徴とする請求項7記載の積層体。
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