JP3908702B2 - 連続圧延機の板幅制御方法 - Google Patents
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Description
このような張力制御系は、それ自体複雑であると共に、板厚制御系等と相互に連携し複雑な制御系を構成していた。ゆえに、従来から、張力制御系をコントロールして板幅等を制御する際にはPID制御法や最適制御法等の手法が用いられていた。
ゆえに、特許文献1のように、単一のモデルを用いて、連続圧延機の板幅制御を行おうとしても、非線形性の強い部分において、その精度が非常に悪いものとなり、板幅を安定して制御することが困難であった。
また、複数のモデルつまり複数の制御手段を用意し、これを切り換えて使用することも考えられるが、それぞれのモデルを統一的に取り扱うことができず、前記複数のモデルを切り換えたときに板幅制御が不安定となることがあった。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、前記複数の圧延スタンドのいずれか1つを当該スタンドとし、この当該スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該スタンドの入側張力を制御する連続圧延機の板幅制御方法において、当該スタンドの出側板幅と入側張力とをパラメータとする板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定し、この複数の板幅予測モデルから入側張力に応じて少なくとも1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該スタンドの入側張力とすることを特徴とする。
詳しくは、圧延中に入側張力のレンジが変化した場合であっても、入側張力に応じた板幅予測モデルを使用して出側板幅及び入側張力を予測するため、常に安定且つ応答性の高い板幅制御が実現できるようになる。
この技術的手段によれば、出側板幅の予測値と目標値との偏差の二乗積分をパラメータとした評価関数を設定し、この評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該スタンドの入側張力を算出することで、安定で且つ精度のよい板幅制御を行うことが可能となる。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記板幅予測モデルに、現時刻での出側板幅と入側張力とを入力することで、複数の予測時刻における当該スタンドの出側板幅を算出することを特徴とする。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、前記予測された入側張力のうち、次時刻における入力張力を当該スタンドの入力張力とすることを特徴とする。
この技術的手段によれば、予測された入側張力時系列データ中、次時刻の入側張力を圧延スタンドの入側張力として採用することで、安定で且つ精度のよい板幅制御を行うことが可能となる。
この技術的手段によれば、板幅予測モデルを、当該スタンドにおける入力張力と出側板幅変化量の関係を反映した線形式とすることができる。
薄鋼板等の圧延材は、加熱されたスラブ材をまず粗圧延スタンドに導入し、その後、連続圧延機である仕上げ圧延スタンドに導入することにより製造される。
各圧延スタンド間には、圧延材の長手方向の張力(以下、張力と呼ぶ)を調整するためのルーパ(張力調整手段)等が備えられいる。この張力調整手段により張力を調整することで、圧延材の板幅等を制御するようになっている。
ルーパ3には、圧延材2に接するルーパロール4が片持ち状に設けられており、その支点を中心として、ルーパロール4が圧延材2を持ち上げる方向に動くことが可能となっている。ルーパロール4が圧延材2を持ち上げて押圧することで、圧延材2の張力が増加することになり、ルーパ3は圧延材2の張力を調整可能となっている。
圧延スタンドBの出側には、出側板幅を計測するための板幅計5が設置してあり、その計測データすなわち出側実績板幅は、連続圧延機1に設けられた制御手段6に入力され、後述の板幅制御方法に基づいて、次制御周期における入側張力を予測し、張力調整手段3を介して圧延スタンドBの入側張力とするようになっている。
図2に示す如く、本実施形態の板幅制御方法は、大きく、予測機能と張力決定機能とに分かれている。前記予測機能は、現在の出側板幅と、現在の入側張力と、将来の入側張力の時系列データとを入力とし、入側張力レベルに応じた複数の板幅予測モデル(詳細は後述)を用いて、将来の出側板幅の時系列データを求めるものである。
前記張力決定機能とは、前記複数の板幅予測モデルを用いて、前記予測された出側板幅をパラメータとした評価関数が最小になるように、将来の入側張力の時系列データを求めるものである。
まず、圧延スタンドBにおいて、現時刻(t=0)での出側実績板幅w(0)を板幅計5から、現時刻での入側実績張力σ(0)を張力調整手段3から取得する。(S31)
取得したw(0)とσ(0)とを基に、張力σ(0)に応じた板幅予測モデルを選択した上でそれを用い、1制御周期先すなわち次時刻(t=1)の出側予測板幅w(1)を算出するようにする。(S32)
ここで、制御周期は任意時間を採用することが可能であり、例えば、数十msecとするとよい。
なお、係数bは、図5に示された近似直線(線形化モデル)の傾き量を示すものである。
図5は、圧延材の温度、板厚、移送速度を一定とした場合における、圧延スタンドで圧延される圧延材2の入力張力σ(t)と、板幅減少量Δw(t)との関係を示したものである。図からわかるように、両者は曲線で示される関係すなわち非線形関係を有しており、入側張力を増加させると出側板幅への影響が大きくなるようになっている。
板幅予測モデルを用いて計算を行う際は、入側張力の値σ(0)のレンジに応じて、[数1]の(1)〜(3)のいずれか一つを用いるようにする。例えば、入側張力σ(0)が1.3(kg/mm)以下である場合は、[数1]の(1)を用いるようにする。
なお、S31の処理ステップでは、状態変数x(0)は適切に設定するものとする。
次に、圧延スタンドBにおける、2制御周期先(次々時刻、t=2)の出側予測板幅w(2)を算出するようにする。(S33)
現段階では、将来の入側張力の時系列データが求まっていないため、入側張力σ(1)としては任意且つ現実的な値を設定する。この任意の入側張力σ(1)と前段の処理ステップ(S31)で求められたw(1)を用いて、σ(1)の値に応じた板幅予測モデルを基に、t=2での出側予測板幅w(2)を算出する。
以上の処理を繰り返し行うことで、t=1〜Tまで、すなわち将来に亘る複数時刻での出側予測板幅w(t)を算出するできる。
次に、図4に示すステップに基づいて、算出された出側予測板幅w(1)〜w(T)から、最適制御の考え方に基づき、将来の複数時刻における入側張力σ(1)〜σ(T)を求める(張力決定機能)。
この[数2]に対して、[数3]の評価関数を導入する。この評価関数Jは、各予測時刻における出側板幅w(t)とその目標値w1(waim)との差の二乗をt=0からT−1まで加えた(積分した)ものを、パラメータ(変数)として有している。
この評価関数Jが最小値を取るような制約条件の下で、[数2]を解くことにより、将来の複数時刻における最適な入側張力の時系列データ、すなわち目標値との誤差が将来にわたって最も小さくなる入側張力σ(1)〜σ(T)を求めることができる。(S41)
具体的には、[数2]と[数3]とを連立させ整理すると、[数4]を導出できる。この[数4]を解くことで入力張力時系列σ(1)〜σ(T)を予測することができる。
[数4]を解くことは、数学における混合整数2次計画問題といわれるものであって、近年の研究成果から解を求めることが可能となっている。ゆえに、制御周期毎に[数4]を解き、Vの第1要素であるσ(t)を張力指令とすることにより、板幅予測モデル[数1]に対する評価関数Jを最小化する意味での最適制御入力が求まることとなる。
本実施形態の場合は、前記入側予測張力の時系列データσ(1)〜σ(T)の内で、次時刻の入側予測張力σ(1)すなわち時系列データの最初のσを、圧延スタンドBの入側張力として適用する。(S42)
換言すれば、σ(1)を制御手段6より出力し、張力調整手段3に入力する。張力調整手段3は、圧延材2の入側張力が予測値σ(1)となるように、ルーパロール4の押圧力を調整する。
その際、図6に示すように、当該張力決定のための繰り返し計算では、入力張力の初期値として、1つ前の制御周期で予測されたσ(1)〜σ(T)を採用すると共に、現在の出側板幅としては、1つ前の制御周期で予測されたw(1)を用いるようにする。その後、前述の処理ステップを順次行うことで、入側張力時系列データσ(2)〜σ(T)を予測することができ、入側予測張力σ(2)を圧延スタンドBに適用するようにする。
制御周期毎に、これらデータシフト処理及び複数から選択された板幅予測モデルによる予測計算を順次繰り返すことにより、各制御周期における入側予測張力の時系列データが求まり、それぞれの時系列データでの最初の入側張力σを、圧延スタンドBの入側張力とするようにすることで、圧延スタンドBを制御するようにする。
本実施形態では、前記制御方法を制御手段を通じて、オンラインで行っているが、オフライン計算をしておき、得られたデータに基づいて圧延スタンドを制御するようにしても何ら問題はない。
図7には、本実施形態にかかる板幅制御方法を圧延スタンドBに適用した際の、板幅実測値の一例を示している。
板幅減少量が2mm近傍で線形化された単一モデルを用いた場合、入側張力が増加し出側板幅減少量が増加するに従い(板幅減少量が4mmに近づくに従い)、板幅制御誤差が増加していることがわかる。
逆に、板幅減少量が4mm近傍で線形化された単一モデルを用いた場合、入側張力が減少し出側板幅減少量が少なくなるに従い(板幅減少量が2mmに近づくに従い)、板幅制御誤差が一旦は減少するものの再度増加していることがわかる。
図8,図9には、本実施形態にかかる板幅制御方法を用いて、板幅制御のシミュレーションを行った際の結果例を示している。
シミュレーションの条件は、以下の通りである。
板幅予測モデルの条件は、複数(3つ)のモデルを用いた場合(3分割)、入側張力が1kg/mm近傍で最適なモデルを用いた場合(分割なし(I))、入側張力が3kg/mm近傍で最適なモデルを用いた場合(分割なし(II))の3パターンを考える。
これらのパターンを考えることで、入側張力のレベルが変わった場合、すなわち、[数1]の(1)〜(3)の全ての数式モデルを使用する場合で、板幅制御方法の効果の差が検討できることになる。
板幅目標値を+2mmとした場合、分割なし(II)のケースについて、目標値に近づく過程の制御において明らかなオーバシュートが見られると共に、板幅目標値を+4mmとした場合では、分割なし(I)のケースにおいて、同様な大きなオーバシュートが見られる。本実施形態の板幅制御方法ではいずれの場合であっても、オーバシュートなく、良好に板幅の制御が行われている。
すなわち、薄鋼板の熱間連続圧延を例示して説明を行ったが、厚鋼板でもよく、冷間圧延であってもよい。
また、張力調整手段3としてルーパを用いるのではなく、圧延スタンドA,Bのワークロールの回転速度に差をつけることで、圧延材2の張力(入側張力)を調整するようにしてもよい。
2 圧延材
3 張力調整手段
6 制御手段
Claims (5)
- 複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、前記複数の圧延スタンドのいずれか1つを当該スタンドとし、この当該スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該スタンドの入側張力を制御する連続圧延機の板幅制御方法において、
当該スタンドの出側板幅と入側張力とをパラメータとする板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定し、この複数の板幅予測モデルから入側張力に応じて少なくとも1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該スタンドの入側張力とすることを特徴とする連続圧延機の板幅制御方法。 - 前記評価関数は、出側板幅の予測値と目標値との偏差の二乗積分をパラメータとして有していることを特徴とする請求項1に記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記板幅予測モデルに、現時刻での出側板幅と入側張力とを入力することで、複数の予測時刻における当該スタンドの出側板幅を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記予測された入側張力のうち、次時刻における入力張力を当該スタンドの入力張力とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 当該スタンドにおける入力張力と出側板幅変化量の関係を線形近似することで得られる近似直線の傾き量を算出して、前記板幅予測モデルを、当該傾き量をパラメータとして有する線形式とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
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