JP4286211B2 - 連続圧延機の板幅制御方法 - Google Patents
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Description
このような張力制御系は、それ自体複雑であると共に、板幅制御系等と相互に連携し複雑な制御系を構成していた。ゆえに、従来から、張力制御系をコントロールして板幅等を制御する際にはPID制御法や最適制御法等の手法が用いられていた。
ゆえに、特許文献1のように、単一のモデルを用いて、連続圧延機の板幅制御を行おうとしても、非線形性の強い部分において、その精度が非常に悪いものとなり、板幅を安定して制御することが困難であった。
この状況に対応するために、複数の制御モデルと、各制御モデルに対応する複数の評価関数とを用意し、かかる評価関数が極値を取るように最適制御を行うことが考えられる。しかしながら、この制御方法であると、制御対象の状況変化に伴って制御モデルを切り替える必要があり、この切り替えに起因するシステム不安定が非常に大きいものとなることが判明している。前記システム不安定は、制御モデルが切り替わること及び評価関数が切り替わることの両方に起因するものである。
これらを解決するために、非線形性の強い出側板幅と入力張力との関係を複数の板幅予測モデルを用いて表現し、かかる複数の板幅予測モデルを単一の評価関数で評価するようにすることで、安定で且つ精度のよい板幅の制御が可能となるとの技術思想を、本願出願人は創作するに至った。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、非線形性の強い出側板幅と入力張力との関係を複数の板幅予測モデルを用いて表現し、かかる複数の板幅予測モデルを単一の評価関数で評価するようにすることで、安定で且つ精度のよい板幅の制御を可能とすると共に、この制御を少ない計算負荷で行うことのできる連続圧延機の板幅制御方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、当該圧延スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該圧延スタンドの入側張力を変更することで圧延材の板幅を制御するに際し、前記圧延スタンドの出側板幅と入側張力との関係を表す板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定した上で、予め設定した制御周期で、この複数の板幅予測モデルから入側張力に応じて少なくとも1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該圧延スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該圧延スタンドの入側張力とすることで圧延材の板幅を制御すると共に、前記制御周期の起点と終点との間にチェック時刻を設け、このチェック時刻で前記入側張力の算出が完了したか否かを判定し、当該入側張力の計算が完了していない場合は、1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する入側張力を当該圧延スタンドに適用することを特徴とする。
また、圧延中に入側張力のレンジが変化した場合であっても、入側張力に応じた板幅予測モデルを使用して出側板幅及び入側張力を予測するため、常に安定且つ応答性の高い板幅制御が実現できるようになる。
好ましくは、現在の制御周期で得られた出側板幅の実績値と、1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する出側板幅の予測値との差を算出し、この算出された出側板幅の実測値と予測値との差に、予め設定された影響係数を乗じて外乱影響値を算出し、この外乱影響値と1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する入側張力とを加算した上で、当該圧延スタンドに適用するとよい。
また、本発明における課題解決のための技術的手段は、複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、当該圧延スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該圧延スタンドの入側張力を変更することで圧延材の板幅を制御するに際し、前記圧延スタンドの出側板幅と入側張力との関係を表す板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定した上で、予め設定した制御周期で、この複数の板幅予測モデルから予め設定された境界張力に応じて択一的に1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該圧延スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該圧延スタンドの入側張力とすることで圧延材の板幅を制御すると共に、前記制御周期毎に入側張力の実績値を採取した上で前記境界張力との偏差を算出し、この偏差の絶対値のなかで、最小の値を有する張力偏差最小値を選び出し、この張力偏差最小値に応じて、板幅予測モデルの予測時間を増減させることを特徴とする。
また、圧延中に入側張力のレンジが変化した場合であっても、入側張力に応じた板幅予測モデルを使用して出側板幅及び入側張力を予測するため、常に安定且つ応答性の高い板幅制御が実現できるようになる。
なお、前記張力偏差最小値が減少するにしたがって予測時間が長くなるように、張力偏差最小値と予測時間とを対応づけるテーブルを予め設定しておき、このテーブルを参照することで板幅予測モデルの予測時間を決定するとよい。
また、前記張力偏差最小値が予め設定しておいた閾値より小なる場合は、第1予測時間を採用し、張力偏差最小値が前記閾値より大なる場合は、第2予測時間を採用するものであって、第1予測時間>第2予測時間としてもよい。
こうすることで、評価関数は、制御対象である板幅をパラメータとして含むようになり、安定で且つ精度のよい板幅制御を行うことが可能となる。
さらに、前記板幅予測モデルに、現時刻での出側板幅と入側張力とを入力することで、複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出してもよく、前記予測された入側張力のうち、次時刻における入力張力を当該圧延スタンドの入力張力としてもよい。
薄鋼板等の圧延材は、加熱されたスラブ材をまず粗圧延スタンドに導入し、その後、連続圧延機である仕上げ圧延スタンドに導入することにより製造される。
各圧延スタンド間には、圧延材の長手方向の張力(以下、張力と呼ぶ)を調整するためのルーパ(張力調整手段)等が備えられいる。この張力調整手段により張力を調整することで、圧延材の板幅等を制御するようになっている。
ルーパ3には、圧延材2に接するルーパロール4が片持ち状に設けられており、その支点を中心として、ルーパロール4が圧延材2を持ち上げる方向に動くことが可能となっている。ルーパロール4が圧延材2を持ち上げて押圧することで、圧延材2の張力が増加することになり、ルーパ3は圧延材2の張力を調整可能となっている。
圧延スタンドBの出側には、出側板幅を計測するための板幅計5が設置してあり、その計測データすなわち出側実績板幅は、連続圧延機1に設けられた板幅制御装置の制御手段6に入力され、後述の板幅制御方法に基づいて、次制御周期における入側張力を予測し、張力調整手段3を介して圧延スタンドBの入側張力とするようになっている。
[第1実施形態]
前記制御手段6の中で処理される連続圧延機の板幅制御方法について、図2〜図4に基づいて説明する。
前記張力決定機能とは、前記複数の板幅予測モデルを用いて、前記予測された出側板幅をパラメータとした評価関数が最小になるように、将来の入側張力の時系列データを求めるものである。
まず、圧延スタンドBにおいて、現時刻(t=0)での出側実績板幅w(0)を板幅計5から、現時刻での入側実績張力σ(0)を張力調整手段3から取得する。(S31)
その後、複数の板幅予測モデルから入側張力に応じて少なくとも1つを選択し、
選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出する。すなわち、取得したw(0)とσ(0)とを基に、張力σ(0)に応じた板幅予測モデルを選択した上でそれを用い、1制御周期先すなわち次時刻(t=1)の出側予測板幅w(1)を算出するようにする。(S32)
ここで、制御周期は任意時間を採用することが可能であり、例えば、数十msecとするとよい。
なお、係数b1〜b3は、図5に示された近似直線(線形化モデル)の傾き量を示すものである。
図5は、圧延材の温度、板幅、移送速度を一定とした場合における、圧延スタンドで圧延される圧延材2の入力張力σ(t)と、板幅減少量Δw(t)との関係を示したものである。図からわかるように、両者は曲線で示される関係すなわち非線形関係を有しており、入側張力を増加させると出側板幅への影響が大きくなるようになっている。
板幅予測モデルを用いて計算を行う際は、入側張力の値σ(0)のレンジに応じて、式(1)〜式(3)のいずれか一つを用いるようにする。例えば、入側張力σ(0)が1.3(kg/mm)以下である場合は、式(1)を用いるようにする。
なお、S31の処理ステップでは、状態変数x(0)は適切に設定するものとする。
次に、圧延スタンドBにおける、2制御周期先(次々時刻、t=2)の出側予測板幅w(2)を算出するようにする。(S33)
現段階では、将来の入側張力の時系列データが求まっていないため、入側張力σ(1)としては任意且つ現実的な値を設定する。この任意の入側張力σ(1)と前段の処理ステップ(S31)で求められたw(1)を用いて、σ(1)の値に応じた板幅予測モデルを基に、t=2での出側予測板幅w(2)を算出する。
以上の処理を繰り返し行うことで、t=1〜Tまで、すなわち将来に亘る複数時刻での出側予測板幅w(t)を算出するできる。
次に、図4に示すステップに基づいて、算出された出側予測板幅w(1)〜w(T)から、最適制御の考え方に基づき、将来の複数時刻における入側張力σ(1)〜σ(T)を求める(張力決定機能)。
この式(4)に対して、式(5)の評価関数を導入する。この評価関数Jは、各予測時刻における出側板幅w(t)とその目標値w1(waim)との差の二乗をt=0からT−1まで加えた(積分した)ものを、パラメータ(変数)として有している。
評価関数J中にあるσ1,d1,z1,x1は中間変数といわれるものであって、図6中の処理S61で計算されるものである。かかるσ1,d1,z1,x1は、wが式(1)〜式(3)の関係を満足しながらw1と等しくなるために必要な値であって、式(6)、式(7)のような混合整数2次計画問題を解くことにより求まるものである。(S61)
この評価関数Jが最小値を取るような制約条件の下で、式(6)、式(7)を解くことにより、将来の複数時刻における最適な入側張力の時系列データ、すなわち目標値との誤差が将来にわたって最も小さくなる入側張力σ(1)〜σ(T)を求めることができる。(S62、S41)
具体的には、式(4)と式(5)とを連立させ整理すると、式(8)、式(9)を導出できる。この式(8)、式(9)を解くことで入力張力時系列σ(1)〜σ(T)を予測することができる。
式(8)、式(9)を解くことは、数学における混合整数2次計画問題といわれるものであって、近年の研究成果から解を求めることが可能となっている。ゆえに、制御周期毎に式(8)、式(9)を解き、行列Vの第1要素であるσ(t)を張力指令とすることにより、板幅予測モデル式(1)〜式(3)に対する評価関数Jを最小化する意味での最適制御入力が求まることとなる。
本実施形態の場合は、前記入側予測張力の時系列データσ(1)〜σ(T)の内で、次時刻の入側予測張力σ(1)すなわち時系列データの最初のσを、圧延スタンドBの入側張力として適用する。(S42)
換言すれば、σ(1)を制御手段6より出力し、張力調整手段3に入力する。張力調整手段3は、圧延材2の入側張力が予測値σ(1)となるように、ルーパロール4の押圧力を調整する。
その際、図7に示すように、当該張力決定のための繰り返し計算では、入力張力の初期値として、1つ前の制御周期で予測されたσ(1)〜σ(T)を採用すると共に、現在の出側板幅としては、実測値又は1つ前の制御周期で予測されたw(1)を用いるようにする。その後、前述の処理ステップを順次行うことで、入側張力時系列データσ(2)〜σ(T)を予測することができ、入側予測張力σ(2)を圧延スタンドBに適用するようにする。
制御周期毎に、これらデータシフト処理及び複数から選択された板幅予測モデルによる予測計算を順次繰り返すことにより、各制御周期における入側予測張力の時系列データが求まり、それぞれの時系列データでの最初の入側張力σを、圧延スタンドBの入側張力とするようにすることで、圧延スタンドBを制御するようにする。
本実施形態では、前記制御方法を制御手段を通じて、オンラインで行っているが、オフライン計算をしておき、得られたデータに基づいて圧延スタンドを制御するようにしても何ら問題はない。
図8には、本実施形態にかかる板幅制御方法を圧延スタンドBに適用した際の、板幅実測値の一例を示している。
板幅減少量が2mm近傍で線形化された単一モデルを用いた場合、入側張力が増加し出側板幅減少量が増加するに従い(板幅減少量が4mmに近づくに従い)、板幅制御誤差が増加していることがわかる。
逆に、板幅減少量が4mm近傍で線形化された単一モデルを用いた場合、入側張力が減少し出側板幅減少量が少なくなるに従い(板幅減少量が2mmに近づくに従い)、板幅制御誤差が一旦は減少するものの再度増加していることがわかる。
図9,図10には、本実施形態にかかる板幅制御方法を用いて、板幅制御のシミュレーションを行った際の結果例を示している。
シミュレーションの条件は、以下の通りである。
板幅予測モデルの条件は、複数(3つ)のモデルを用いた場合(3分割)、入側張力が1kg/mm近傍で最適なモデルを用いた場合(分割なし(I))、入側張力が3kg/mm近傍で最適なモデルを用いた場合(分割なし(II))の3パターンを考える。
これらのパターンを考えることで、入側張力のレベルが変わった場合、すなわち、[数1]の(1)〜(3)の全ての数式モデルを使用する場合で、板幅制御方法の効果の差が検討できることになる。
板幅目標値を+2mmとした場合、分割なし(II)のケースについて、目標値に近づく過程の制御において明らかなオーバシュートが見られると共に、板幅目標値を+4mmとした場合では、分割なし(I)のケースにおいて、同様な大きなオーバシュートが見られる。本実施形態の板幅制御方法ではいずれの場合であっても、オーバシュートなく、良好に板幅の制御が行われている。
[第2実施形態]
ところが、第1実施形態において圧延中に外乱が印加された場合、検出された外乱に伴って、評価関数J内の中間変数σ1,d1,z1,x1,w1を最適化計算によって算出する必要がある。この最適化計算は混合整数2次計画問題であって、計算に要する時間は膨大であって短周期でのフィードバック制御を困難とする要因となっていた。
なぜこのような状況が発生するかといえば、繰り返し計算の初期の解候補として、1つ前の制御周期での解を用いるようにしているが、大きな外乱が印加された場合には、制御対象の状態が大きく変化し、当該制御周期での最適解が、一つ前の制御周期に算出された最適解から大きく乖離するからである。
そこで、本願出願人は、制御周期の中で計算が終了しなかった場合にも、良好な入側張力を算出できる技術を開発した。以下、第2実施形態として説明する。
前述の第1実施形態では、制御周期毎に現在から将来(Tステップ先)にわたっての入側張力の時系列データσ(1)〜σ(T)を算出し、現在の制御周期ではσ(1)を入側張力として圧延スタンドBに適用するようにしている。
また、「計算時間が間に合わない」ということを判定するために、制御周期毎にタイマーを起動し、制御周期内での計算開始からの時間を計測する。計測された計算時間があらかじめ設定した値よりも大きくなった場合、すなわち、前記制御周期の起点と終点との間の所定の時刻をチェック時刻とし、このチェック時刻で、前記開バルブ本数の修正量の算出が完了したか否かを判定し、当該修正量の計算が完了していない場合は、一つ前の制御周期で算出されたσ(2)を読み出して、現在の制御周期での入側張力として圧延スタンドBの入側張力として採用する。
以下、図11に基づいて、本実施形態の処理手順について説明する。
まず、第1実施形態と略同様に混合整数2次問題を解くことによる最適化計算を行い、将来に亘る入側張力σ(1)〜σ(T)を算出するようにする。
得られたσ(1)〜σ(T)を、制御手段6に設けられている記憶装置7(ハードディスク等)に保存するようにする。(S111)
加えて、上記処理とは並列的に、最適化計算の開始のタイミングでタイマをリセットする。当該タイマは、制御周期に比べ十分短い周期(少なくとも制御周期の10分の1の周期)で更新されるものとする。(S112)
タイマの更新に合わせて、タイマ値が設定値以上であって、さらに評価関数を最小にするσ(1)〜σ(T)の計算が終了しているかどうかがチェックされる。換言すればチェック時間以内に、入側張力σ(1)〜σ(T)が算出されたかどうか確認されることになる。(S113)
もし、当該チェック時間内にσ(1)〜σ(T)の計算が終了しておれば、第1実施形態の最適化計算は続行され、計算結果であるσ(1)〜σ(T)を記憶装置7に記憶しておく。(S113でNoの場合)。
以上の処理S111〜S115を行うことで、最適化計算が制御周期内に終了しない場合でも、一つ前の制御周期に算出した入側張力の予測値を用いて、準最適な制御を行うことができるようになり、出側板幅の変動幅を小さくすることができる。
[第3実施形態]
前述した第2実施形態の制御を、より応答性の高いものとするためには、1つ前の制御周期と現在の制御周期との間に起こった外乱を考慮し、その影響を1つ前の制御周期で求められたσ(2)に加味するようにするとよい。第3実施形態は、この考えに基づいた技術である。
詳しくは、1つ前の制御周期と現在の制御周期との間に起こった外乱の変化をB値(℃)として検出し、第2実施形態の方法で決定したσ(2)の値に対し、B値に基づく補正をした入側張力を圧延スタンドBに適用するようにしている。ここで「補正」とは、B値を用いて、B値分だけの板幅を補正するに必要な入力張力値(C値)を算出し、かかるC値をσ(2)に加算することをいう。B値を直接用いないのは、B値が長さの単位を有する量だからである。
図12に基づいて、以上の処理の詳細を求める。
まず、第1実施形態と略同様に混合整数2次問題を解くことによる最適化計算を行い、将来に亘る入側張力σ(1)〜σ(T)を算出するようにする。
得られたσ(1)〜σ(T)ならびに計算過程で算出された出側板幅w(1)〜w(T)を、制御手段6に設けられている記憶装置7(ハードディスク等)に保存するようにする。(S121)
加えて、上記処理とは並列的に、最適化計算の開始のタイミングでタイマをリセットする。当該タイマは、制御周期に比べ十分短い周期(少なくとも制御周期の10分の1の周期)で更新されるものとする。(S122)
タイマの更新に合わせて、タイマ値が設定値以上であって、さらに評価関数を最小にするσ(1)〜σ(T)の計算が終了しているかどうかがチェックされる。換言すればチェック時間以内に、入側張力σ(1)〜σ(T)が算出されたかどうかが確認されることになる。(S123)
もし、当該チェック時間内にσ(1)〜σ(T)の計算が終了しておれば、第1実施形態の最適化計算は続行され、計算結果であるσ(1)〜σ(T)を記憶装置7に記憶しておく。(S123でNoの場合)。
次に、図13に示すような、板幅域毎に設定された影響係数のテーブルから現在の出側板幅w(0)に対応する影響係数BT(すなわちσ/w)を読み込む。影響係数のテーブルは、例えば前記記憶装置7に保存されているものである。(S125)
さらに、現在の板幅実測値wrと、前周期での出側板幅予測値w(1)の差をとりB値を算出すると共に、B値にBTを乗じたC値を算出する。その後、読み込み済みである前周期での入側張力σ(2)にC値を加算することによりD値を算出する。(S126)
そして、当該D値を今回の制御周期での入側張力として出力するようにする。(S127)
以上述べた処理S121〜S127を行うことにより、1つ前の制御周期に算出した予測値を最新の外乱検出値に基づいて補正するため、より板幅変動を小さくすることができる。
[第4実施形態]
前述した第1実施形態を実際の連続圧延機4に適用した際に、圧延材5の入側張力が1つの板幅予測モデルの中で推移する場合、板幅予測モデルが切り替わることに起因する張力特性の変動を考慮する必要はない。しかしながら、近い将来に板幅予測モデルが切り替わることが明らかな場合は、その切り替わりを考慮した上で、入側張力の算出や出側板幅の予測を行うと、応答性の高い制御が可能となる。
図14には、従来法での板幅予測における予測点数に関するイメージが示されている。
この図で1番上のグラフは、時刻tでの現在入側張力の位置と予測区間(=予測点数T)を表しており、2番目の図は次の制御周期である時刻t+1での現在入側張力の位置と予測区間を表している。以降、順に制御周期毎での現在入側張力の位置と予測区間を表している。
一方、図15に示すように、本実施形態の技術は可変である予測点数Tを用いている。時刻tでは、現在の入側張力が、板幅予測モデルの境界張力から離れた位置にいるため、予測点数は小さい値であるT2が採用されており、時刻t+3では、入側張力が境界張力に近く、予測点数は大きな値であるT1が採用されている。
まず、制御開始時点において、あらかじめ記憶装置7に記憶しておいた各板幅予測モデルの境界張力σb(1)〜σb(m−1)を読み込むようにする。ここでmはモデルの個数を表す。(S161)
次に、現在の制御周期において採取された入側張力実測値σrを取得する。(S162)
そして、入側張力実測値σrと各境界値σb(1)〜σb(m−1)との差の絶対値eσ(1)〜eσ(m−1)を式(10)に基づいて算出する。各eσ(i)は、現在の入側張力から各境界張力までの距離(ノルム)に相当する値である。(S163)
続いて、mineσから予測点数Tを決定し(S165)、かかるTを用いて、第1実施形態の温度制御方法により圧延スタンドBに適用する入側張力を算出するようにする。(S166)
以上の処理S161〜S166は、すべて1回の制御周期に処理される内容である。
まず、制御開始時点において、あらかじめ記憶装置7に記憶しておいた、各モデルの境界値(境界張力)σb(1)〜σb(m−1)を読み込む。例えば、モデル数m=3、σb(1)=2、σb(2)=4である。
次に、現在の制御周期において採取された入側張力実測値σrを取得する。例えば、σr=3.2である。
これら、eσ(1)〜eσ(m−1)の内、最小の値mineσを求める。つまり、mineσ=0.8である。
求まったmineσ=0.8を式(11)に代入して、予測点数Tを決定する。mineσ=0.8であるので、T=5となる。
予測点数Tの決定方法のやり方は、上記のものに限定されない。
すなわち、図17、図18に示す如く、あらかじめ記憶装置7に記憶しておいた、mineσと予測点数Tを対応づけるテーブル、ならびに各モデルの境界張力σb(1)〜σb(m−1)を読み込んでおく。(S177)
mineσが算出された後、Tを決定する。
また、図18のようなテーブルを参照するのではなく、各制御周期において、mineσが算出された後、閾値eσsとmineσを比較し、もし、mineσがeσsよりも小さければ、予測点数TをT1とし、mineσがeσs以上であれば予測点数TをT2とするようにしてもよい。
このとき、T1>T2としておくことは非常に好ましい。なぜならば、境界張力に近づいた場合に予測点数Tを増やすことで、影響係数が変化した後の温度変化を考慮した入側張力σを決定できるようになるからである。
次に、入側張力の実測値σr=3.2を取得する。さらに、入側張力実測値σrと各境界値σb(1)〜σb(m−1)との差の絶対値eσ(1)〜eσ(m−1)を算出する。eσ(1)=|σr−σb(1)| = 1.2、eσ(2)=|σr−σb(2)| =0.8である。その後、eσ(1)〜eσ(m−1)の内、最小の値mineσ=0.8を求めるようにする。(S194〜S196)
続いて、mineσと閾値eσsを比較することにより予測点数Tを決定する。もし、mineσがeσsよりも小さければ、予測点数TをT1=10とし、mineσがeσs以上であれば予測点数TをT2=5とする。本実施例の場合、mineσ=0.8、eσs=0.5であることから、T=5となる。(S197〜S199)
この予測点数Tを用いて、第1実施形態の板幅予測方法に基づいて、入側張力σが算出される。(S1910)
以降、制御周期毎に以上の処理を繰り返す。
すなわち、薄鋼板の熱間連続圧延を例示して説明を行ったが、厚鋼板でもよく、冷間圧延であってもよい。
また、張力調整手段3としてルーパを用いるのではなく、圧延スタンドA,Bのワークロールの回転速度に差をつけることで、圧延材2の張力(入側張力)を調整するようにしてもよい。
2 圧延材
3 張力調整手段
6 制御手段
Claims (9)
- 複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、当該圧延スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該圧延スタンドの入側張力を変更することで圧延材の板幅を制御するに際し、
前記圧延スタンドの出側板幅と入側張力との関係を表す板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定した上で、予め設定した制御周期で、この複数の板幅予測モデルから入側張力に応じて少なくとも1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該圧延スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該圧延スタンドの入側張力とすることで圧延材の板幅を制御すると共に、
前記制御周期の起点と終点との間にチェック時刻を設け、このチェック時刻で前記入側張力の算出が完了したか否かを判定し、当該入側張力の計算が完了していない場合は、1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する入側張力を当該圧延スタンドに適用することを特徴とする連続圧延機の板幅制御方法。 - 現在の制御周期で得られた出側板幅の実績値と、1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する出側板幅の予測値との差を算出し、
この算出された出側板幅の実測値と予測値との差に、予め設定された影響係数を乗じて外乱影響値を算出し、
この外乱影響値と1つ前の制御周期で既算出であって現在の制御周期に対応する入側張力とを加算した上で、当該圧延スタンドに適用することを特徴とする請求項1に記載の連続圧延機の板幅制御方法。 - 複数の圧延スタンドで圧延材に張力をかけながら圧延する連続圧延機で、当該圧延スタンドの出側板幅の実績値と目標値との偏差をなくすように、当該圧延スタンドの入側張力を変更することで圧延材の板幅を制御するに際し、
前記圧延スタンドの出側板幅と入側張力との関係を表す板幅予測モデルを入力張力レベルに応じて複数設定した上で、予め設定した制御周期で、この複数の板幅予測モデルから予め設定された境界張力に応じて択一的に1つを選択し、選択された板幅予測モデルを用いて、将来の複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出し、前記算出された出側板幅をパラメータとする評価関数を設定して、予測時間全体に亘って当該評価関数が最小となるように、各予測時刻における当該圧延スタンドの入側張力を算出し、前記算出された入側張力を当該圧延スタンドの入側張力とすることで圧延材の板幅を制御すると共に、
前記制御周期毎に入側張力の実績値を採取した上で前記境界張力との偏差を算出し、この偏差の絶対値のなかで、最小の値を有する張力偏差最小値を選び出し、この張力偏差最小値に応じて、板幅予測モデルの予測時間を増減させることを特徴とする連続圧延機の板幅制御方法。 - 前記張力偏差最小値が減少するにしたがって予測時間が長くなるように、張力偏差最小値と予測時間とを対応づけるテーブルを予め設定しておき、このテーブルを参照することで板幅予測モデルの予測時間を決定することを特徴とする請求項3に記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記張力偏差最小値が予め設定しておいた閾値より小なる場合は、第1予測時間を採用し、張力偏差最小値が前記閾値より大なる場合は、第2予測時間を採用するものであって、第1予測時間>第2予測時間であることを特徴とする請求項3に記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記評価関数は、出側板幅の予測値と目標値との偏差の二乗積分をパラメータとして有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記板幅予測モデルに、現時刻での出側板幅と入側張力とを入力することで、複数の予測時刻における当該圧延スタンドの出側板幅を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記予測された入側張力のうち、次時刻における入力張力を当該圧延スタンドの入力張力とすることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
- 前記板幅予測モデルは線形式から構成され、該線形式は、前記圧延スタンドにおける入力張力と出側板幅変化量の関係を線形近似することで得られる近似直線の傾き量をパラメータとして有していることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の連続圧延機の板幅制御方法。
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