以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。以下では、本発明の回生発電機付車両が、回生発電機であり電動モータとしての機能も有するモータジェネレータと、エンジンとを含むハイブリッド車両の場合を説明するが、モータジェネレータの代わりにエンジンに接続される回生発電機を用いる車両であってもよい。エンジンを備えず、モータジェネレータを有する電気自動車であってもよい。また、以下では、ハイブリッド車両が、外部電源からの充電機能を有するプラグイン型の場合を説明するが、ハイブリッド車両はプラグイン型の充電機能を持たないハイブリッド車両であってもよい。以下ではすべての図面の説明で同様の要素には同一の符号を付して説明する。
図1は、本発明の実施形態のハイブリッド車両10の概略構成を示している。ハイブリッド車両10は制御システム12を備える。制御システム12は、エンジン18と、第1モータジェネレータ22及び第2モータジェネレータ24と、インバータユニット26と、蓄電部であるバッテリ28と、変速レバー30と、ナビゲーション装置32と、表示部35と、制御装置50とを含む。
ハイブリッド車両10は、エンジン18及び第2モータジェネレータ24の少なくとも一方を駆動源として車輪16を駆動し走行する。以下では、第1モータジェネレータ22は「第1MG22」と記載し、第2モータジェネレータ24は「第2MG24」と記載する。
エンジン18は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。エンジン18は、制御装置50からの制御信号Si1により制御される。
第1MG22は、3相同期回転電機であり、エンジン18により駆動され発電する発電機の機能を有する。第1MG22の発電状態では、エンジン18からのトルクの少なくとも一部が、後述する動力分割機構34を介して第1MG22の回転軸に伝達される。第1MG22の発電電力は、インバータユニット26を介してバッテリ28に供給され、バッテリ28が充電される。
第1MG22は、バッテリ28から電力を供給され駆動されることにより、動力分割機構34を介してエンジン18を始動するエンジン始動モータの機能も有する。
第2MG24は、3相同期回転電機であり、後述するEVモードの実行時に駆動される。第2MG24は、バッテリ28からの電力を供給されて駆動され、車両の駆動力を発生するモータの機能を有する。第2MG24は、制動時の電力回生用の回生発電機の機能も有する。第2MG24の発電電力も、インバータユニット26を介して後述のバッテリ28に供給され、バッテリ28が充電される。第1MG22及び第2MG24として、誘導回転電機、または別の回転電機を用いることもできる。
動力伝達機構14は、動力分割機構34、動力分割機構34に連結された出力軸36、出力軸36に連結された減速機38、及び車軸40を含む。動力分割機構34は、遊星歯車機構により構成される。遊星歯車機構は、サンギヤ、ピニオンギヤ、キャリア、及びリングギヤを含む。例えば、サンギヤは、第1MG22の中空の回転軸の端部に接続される。キャリアは、エンジン18の駆動軸に接続される。リングギヤは、出力軸36に接続され、出力軸36は、直接に、または図示しない歯車減速機を介して第2MG24の回転軸に接続される。出力軸36は、減速機38を介して車輪16に連結された車軸40に接続される。動力分割機構34は、エンジン18からの動力を、出力軸36への経路と第1MG22への経路とに分割する。
インバータユニット26は、第1MG22及び第2MG24とバッテリ28との間に接続される。インバータユニット26は、第1MG22及びバッテリ28の間に接続される図示しない第1インバータと、第2MG24及びバッテリ28の間に接続される図示しない第2インバータとを含み、制御装置50からの制御信号Si2により制御される。
第1インバータは、バッテリ28から供給された直流電圧を交流電圧に変換して第1MG22に供給し、第1MG22を駆動する。第1インバータは、第1MG22がエンジン18の駆動に伴って発電した場合に、その発電により得られた交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をバッテリ28に供給する機能も有する。
第2インバータは、同様にバッテリ28からの直流電圧を交流電圧に変換して第2MG24に供給し、第2MG24を駆動する。第2インバータは、ハイブリッド車両10の回生制動時に、第2MG24により回生発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をバッテリ28に供給する機能も有する。各インバータの動作は、制御信号Si2により制御される。この場合、後述の制御装置50が第2MG24の回生トルクを制御することで第2MG24が回生発電し、車輪16に回生制動力が発生する。第2MG24の回生発電は、走行時に後述のアクセルペダルが非操作となった場合に行うことができる。第1インバータ及び第2インバータとバッテリ28との間に、バッテリ28の電圧を昇圧して各インバータに出力したり、各インバータから供給された電圧を降圧してバッテリ28に供給するDC/DCコンバータを接続してもよい。
バッテリ28は、ニッケル水素電池またはリチウムイオン電池により構成され、第1MG22及び第2MG24に第1インバータまたは第2インバータを介して接続される。バッテリ28は、各インバータを介して第1MG22及び第2MG24に電力を供給可能とする。バッテリ28の正極側には、図示しないバッテリ電流センサが取り付けられ、バッテリ電流センサは、充放電電流を検出し、その検出値を制御装置50に送信する。制御装置50は、この充放電電流の積算値からバッテリ28の充電残量であるSOC(state of charge)を算出する。
SOCは、バッテリ28の電圧を検出する電圧センサの検出値と、バッテリ電流センサの検出値とから算出してもよい。なお、蓄電部としてキャパシタを用いることもできる。
電力変換装置82は、外部電源84からの交流電力を直流電力に変換し、バッテリ28へ直流電力を出力し、バッテリ28を充電する機能を有する。電力変換装置82は、制御装置50からの制御信号により制御される。この場合、車両の停止状態で、外部電源84に接続されたケーブル86に設けられたコネクタ88が、電力変換装置82に接続されたコネクタ90に接続されることによって、外部電源84からバッテリ28への充電が可能となる。
アクセル位置センサ41は、アクセルペダルの操作量を決定するアクセル位置APを検出し、そのアクセル位置APを表す信号は制御装置50に送信される。
車輪速度センサ42は、車輪16の単位時間当たりの回転数Vvを検出し、回転数Vvを表す信号は制御装置50に送信される。制御装置50は、回転数Vvに基づいて車速Vcを算出する。制御装置50は、第2MG24の回転数を検出する図示しない第2回転センサの検出値に基づいて車速Vcを算出してもよい。
変速レバー30は、操作によってR位置、N位置、D位置、M位置及びB位置のいずれか1つに切替可能である。変速レバー30の位置は図示しない位置センサによって検出され、検出位置を表す信号は制御装置50に送信される。D位置は標準前進走行モードであるDレンジモードに対応する。
クルーズモード設定部43は、運転者によって設定された設定車速に実際の車速が一致するように、車速を自動的に調整するクルーズ制御モード(Cruise Control mode)を選択するために設けられる。クルーズモード設定部43は、ステアリングホイールの周辺部に配置される図示しない第1レバーにより形成され、第1レバーの先端部に設けられた押しボタン式のスイッチのオンまたはオフにより、クルーズ制御モードの選択と非選択とが切替可能である。以下、クルーズ制御モードはCRモードといい、クルーズモード設定部43はCRモード設定部43という。
CRモード設定部43でのオンオフ状態を表す信号Vsetは、制御装置50に送信される。CRモード設定部43がオンされている場合でも、アクセルペダルまたはブレーキペダルが踏み込まれた場合にはCRモードの選択が解除される。
CRモード設定部43がオンされた場合に、第1レバーの先端部が一方側に操作されることで設定車速の増加の指示を表す信号が制御装置50に送信され、第1レバーの先端部が他方側に操作されることで設定車速の低下の指示を表す信号が制御装置50に送信される。
車速上限調整部44は、運転者によって設定された設定上限車速に実際の車速の上限を一致させるように、車速の上限を自動的に調整する車速上限調整モードを意味する「ASLモード」を選択するために設けられる。車速上限調整部44は、ステアリングホイールの周辺部に配置される図示しない第2レバーにより形成され、第2レバーの先端部に設けられた押しボタン式のスイッチのオンまたはオフにより、上限車速制限制御モードの選択と非選択とが切替可能である。
車速上限調整部44でのオンオフ状態を表す信号VLsetは、制御装置50に送信される。車速上限調整部44がオンされた場合に、第2レバーが一方側に操作されることで設定上限車速の増加の指示を表す信号が制御装置50に送信され、第2レバーが他方側に操作されることで設定上限車速の低下の指示を表す信号が制御装置50に送信される。なお、第1レバーと第2レバーとを共通の単一のレバーにより形成してもよい。
駐車支援設定部45は、運転者の所望の駐車位置に車両を誘導するように車輪を自動操舵する駐車支援モードを意味する「IPAモード」を選択するために設けられる。駐車支援設定部45は、車両後部に設けられ車両の後方を撮影するカメラの画像を表示する画像表示部と、画像表示部における運転者のタッチ操作を受け付ける操作受付手段とを含む。運転者によって変速レバーがR位置に操作された場合に、画像表示部は切替部を表示する。駐車支援設定部45は、運転者によって切替部がタッチ操作されることでIPAモードのオンまたはオフを切替可能とする。IPAモードのオンによってIPAモードが選択され、IPAモードのオフによってIPAモードが非選択となる。
駐車支援設定部45は、運転席周辺部に設けられた駐車支援スイッチが運転者によりオンされた状態で、変速レバーがR位置に操作された場合に、IPAモードがオンされる構成としてもよい。また、変速レバーがD位置に操作されている場合に、駐車支援スイッチのオン操作により、IPAモードがオンされる構成としてもよい。IPAモードのオンオフ状態の指示を表す信号IPASは、制御装置50に送信される。画像表示部は、後述するナビゲーション装置32の表示部と共通でもよい。
ナビゲーション装置32は、車両10が目的地に向けて走行することを支援し、現在位置から目的地までの走行経路と、到達所要時間とを提供する。ナビゲーション装置32は、図示しないGPSセンサから現在位置を取得する。ナビゲーション装置32は、道路の勾配情報及び法定速度を含む道路情報、交差点位置情報、信号機位置情報、一時停止位置情報を含む経路情報を記憶しており、経路情報に現在位置を照合して、地図内での現在位置を特定する。ナビゲーション装置32は、ユーザの操作によって目的地情報を取得し、目的地までの走行経路と到達所要時間とを算出する。ナビゲーション装置32は、図示しない方位センサから車両10の向きを取得する。
ナビゲーション装置32は、走行経路上の車両の進行方向前方に交差点、信号機、一時停止位置のいずれか1つが近くにある場合に、その交差点または信号機の直前の停止位置、または一時停止位置を、車両10の目標停止位置として設定することができる。ナビゲーション装置32は、信号機の赤信号情報を含む交通インフラストラクチャ関係情報を取得して、車両前方の信号機が赤信号である場合にその信号機の直前の停止位置を目標停止位置として設定してもよい。以下、交通インフラストラクチャ関係情報は「インフラ情報」という。例えばインフラ情報は電波により外部の送信設備から受信されることができる。インフラ情報は、信号機位置及び車両の渋滞情報を含んでもよい。ナビゲーション装置32は、現在位置及び目標停止位置を含む情報を表す信号をCAN通信線によって制御装置50に送信する。
表示部35は、ディスプレイであり、後述する回生量拡大制御の実行中に、その実行中を表す所定表示を表示することで、運転者にその実行中を通知する機能を有する。表示部35の表示及び非表示は、制御装置50によって制御される。
制御装置50は、ECUと呼ばれるもので、CPUと、メモリを有する記憶部とを有するマイクロコンピュータを含む。図示の例では、制御装置50を1つの制御装置として示しているが、制御装置50は適宜複数の構成要素に分割して、互いに信号ケーブルで接続する構成としてもよい。制御装置50は、エンジン18を制御するエンジン制御部52、第1MG22及び第2MG24を制御するMG制御部54、回生量拡大制御部56、及び回生量拡大制限部58を有する。回生量拡大制御部56及び回生量拡大制限部58は後で説明する。
エンジン制御部52は、エンジン18に出力する制御信号Si1を生成し、MG制御部54は、インバータユニット26に出力する制御信号Si2を生成する。DC/DCコンバータが用いられる場合、制御信号Si2によってDC/DCコンバータの動作も制御される。
制御装置50は、運転者の操作として、アクセルペダルの操作に基づく走行要求出力Preqに応じてエンジン18、第1MG22及び第2MG24の駆動を制御する。具体的には、制御装置50は、アクセル位置APと車速Vcとに基づいて、予め記憶部で記憶されたマップまたは関係式に基づいて走行に要求される走行要求トルクTr*を算出する。走行要求トルクTr*は、出力軸36に出力されるトルクである。制御装置50は、走行要求トルクTr*と、第2MG24の回転数自体、または第2MG24の回転数から算出される回転数である出力軸36の回転数とから走行要求出力Preqを算出する。制御装置50は、走行要求出力Preqが出力軸36に出力されるように、エンジン18、第1MG22、及び第2MG24の駆動を制御する。
制御装置50は、走行要求出力Preqに、バッテリ28のSOCから基準SOCに近づけるための充放電要求電力を加えた出力を、目標エンジン出力Pe*として算出し、所定のエンジン高効率マップからエンジン18の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*を算出する。制御装置50は、エンジン18の目標回転数Ne*と、第1MG22の回転数Vm1及び第2MG24の回転数Vm2の検出値と、走行要求トルクTr*とから、所定の関係式を用いて第1MG22の目標回転数Vm1*及び目標トルクTr1*と、第2MG24の目標トルクTr2*とを算出する。エンジン18の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*と、第1MG22の目標回転数Vm1*及び目標トルクTr1*と、第2MG24の目標トルクTr2*とは、アクセル位置APまたはアクセル位置APと車速Vcとに基づいて、図示しない記憶部によって記憶されたマップから算出してもよい。
制御装置50は、算出されたエンジン18の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*をエンジン制御部52に出力し、エンジン制御部52は、目標回転数Ne*及び目標トルクTe*が得られるように制御信号Si1でエンジン18の駆動を制御する。また、制御装置50は、算出された第1MG22の目標回転数Vm1*及び目標トルクTr1*と、第2MG24の目標トルクTr2*とをMG制御部54に出力し、MG制御部54は、目標回転数Vm1*及び目標トルクTr1*,Tr2*が得られるように制御信号Si2で第1MG22及び第2MG24の駆動を制御する。
これによって、アクセルペダルの操作量が小さい場合または車速Vvが低い場合では、エンジン18が停止した状態で、第2MG24のみを駆動源として車両が走行する。また、制御装置50は、SOCが基準SOCよりも低い場合に、エンジン18を駆動して第1MG22による発電を行い、発電電力をバッテリ28に充電する。
また、アクセルペダルの操作量が大きい場合または車速Vvが高い場合にエンジン18が駆動され、エンジン18を駆動源として車両が走行する。この場合、制御装置50は、必要に応じてエンジン18とともに第2MG24を駆動させることで、両方を駆動源として車両が走行する。
回生量拡大制御部56は、ナビゲーション装置32から現在位置及び目標停止位置を含む経路情報を取得する。回生量拡大制御部56は、経路情報に基づいて、走行経路における運転者の動作による車両の停止及び減速の位置である目標停止位置及び後述の減速開始位置を予測または設定して、第2MG24の回生発電を制御する。これによって、回生量拡大制御部56は、目標停止位置までのバッテリ28における充電可能な回生発電量を拡大させる回生量拡大制御を行う。
図2は、ナビゲーション装置32で記憶される走行経路上の目標停止位置と、減速開始位置との関係を示している。図2では、ナビゲーション装置32で記憶される経路情報において、破線で示すように走行経路が設定され、走行経路上に信号機71及び一時停止位置72が設定される。この場合、車両10の現在位置がPであり、矢印α方向に進行する場合に、例えば現在位置から最も近いQ位置の信号機71の直前の停止ライン74が目標停止位置として設定される。
ナビゲーション装置32は、運転者の動作による車両の停止及び減速の位置を学習する機能を持ってもよい。例えば、ナビゲーション装置32は、運転者の動作により車両がある頻度以上に停止される一時停止位置を含む特定の停止位置と、その停止位置直前の減速開始位置とを記憶する学習機能を持ち、特定の停止位置が現在位置の前方にある場合に目標停止位置として設定してもよい。制御装置50は、ナビゲーション装置32から目標停止位置及び現在位置を含む情報を取得する。
回生量拡大制御部56は、経路情報に基づいて、取得された目標停止位置及び現在位置と検出された車速とから、予め設定された関係式またはマップを用いて、予測された目標停止位置までのバッテリ28で回収可能な第2MG24による回生発電量を高くするための減速開始位置(ST1)を設定する。また、回生量拡大制御部56は、減速開始位置から回生発電を増大する時間である減速設定点tdと、減速設定点tdから増大させる回生発電に対応する回生トルクとを算出する。回生量拡大制御部56は、算出された減速設定点tdと回生トルクとに基づいて、運転者がアクセルペダルを非操作とした、すなわちアクセルオフしたことを前提条件として、第2MG24の回生発電を大きくするように制御する。この場合、回生量拡大制御部56は第2インバータを制御する。なお、減速設定点td及び減速開始位置を制御装置50で求めるのではなく、ナビゲーション装置32で推定し、それを制御装置50に送信してもよい。
なお、ナビゲーション装置32が運転者の動作による車両の停止及び減速の位置の学習機能を有する場合に、回生量拡大制御はその学習の結果に基づいて行われるようにしてもよい。ナビゲーション装置32がインフラ情報を取得する機能を有する場合に、回生量拡大制御はインフラ情報に基づいて行われるようにしてもよい。
図3は、目標停止位置で車両10を停止させる場合において、回生量拡大制御の許可及び禁止の場合を比較して、車速が低下する状態を示している。図3において、破線L1はDレンジモードで走行する場合で、回生量拡大制御が行われないと仮定した場合の減速状態である。この場合、CRモード、ASLモード、IPAモードのいずれも選択されない。破線L1は、減速設定点td以前で実線L2の回生量拡大制御が許可される場合と一致する。この場合、時間t1で運転者がアクセルオフとした後、時間t2で運転者がブレーキペダルを踏み込んで目標停止位置に対応する停止時点で車両10を停止させる。
破線L1のように回生量拡大制御を行わない場合、例えば時間t2でブレーキペダルが踏み込まれる場合に、踏み込み時の車速が高いので、t2から停止時点までの減速の程度が大きくなる。所定時間当たりに車速が低下する程度である減速度の増大に伴って第2MG24の回生発電量は大きくなるが、バッテリ28に電力が供給される速度である充電速度には許容上限がある。このため、減速度が許容上限に対応する所定値を超える場合、バッテリ28に充電されない無駄な発電電力が発生するので、燃費性能向上の面から改良の余地がある。
図3の実線L2は、破線L1の場合において、回生量拡大制御が許可される場合を示している。この場合、回生量拡大制御部56は、減速設定点td以降で、第2MG24の回生トルクをそれ以前よりも大きくして減速度が大きくなるように、第2インバータの制御によって回生発電を制御する。この場合、車両10を減速させる方向に働くエンジンブレーキに相当する制動トルクが大きくなる。このため、比較的早期に減速度が大きくなることによって、車速が比較的緩やかに低下するので、停止直前でも運転者は時間t3でブレーキペダルを強く踏み込む必要がなく、車両10の速度が急減少することがない。このため、バッテリ28における充電可能な回生発電量を拡大でき、燃費性能を向上できる。
回生量拡大制御部56は、ブレーキペダルを踏み込んだ場合の減速度の推定値がバッテリ28の充電速度の許容上限に対応する減速度よりも小さい所定値となるように、減速設定点tdを設定する。このような回生量拡大制御の実行においては、運転者の意図しない減速を回避するために、運転者がアクセルオフとすることが前提となる。また、このような減速度の大きさ及び減速設定点tdは車速に応じて異なる。例えば車速が高いほど減速設定点tdは現在位置から近い位置に設定する必要がある。このような理由から、回生量拡大制御部56は、検出された車速と、現在位置及び目標停止位置とに基づいて減速設定点tdを算出し、減速設定点tdから増大させる回生発電に対応する回生トルクを算出して、第2MG24の回生発電を制御する。
このような回生量拡大制御によれば、経路情報によって停止が予測される停止位置付近で、しかもアクセルオフした場合において、バッテリ28で充電可能な回生量が拡大されるので燃費を向上できる。しかも走行経路での停止位置付近以外でのアクセルオフが行われた場合における回生量を拡大することはしないので、車両の減速を運転者の意図に近づけることができる。
また、回生量拡大制限部58は、運転者の意図により選択されて自動的に車速を調整して車両10の走行を行う所定車速調整モードの実行中に、所定車速調整モードの非選択時と比較して回生量拡大制御を制限する。「回生量拡大制御の制限」は、回生量拡大制御の禁止と、回生量拡大制御の変更とのいずれもでよい。「回生量拡大制御の変更」は、回生量拡大制御において、所定車速調整モードの非選択時と比較して、回生量拡大の開始位置を停止時点のより近くに変更したり、または回生量拡大の程度を小さくするように回生量拡大制御を変更する。
図4は、回生量拡大制御を制限する条件を示している。回生量拡大制限部58は、所定車速調整モードであるCRモード(A1)と、別の所定車速調整モードであるASLモード(A2)と、IPAモード(A3)との少なくとも1つが選択された場合に回生量拡大制御を制限する。
A1のCRモードが運転者により選択された場合、制御装置50は、運転者のアクセルペダル及びブレーキペダルの非操作時に、車速の検出値を用いて、第1レバーにより設定された車速を自動的に維持するように、エンジン18及び第2MG24の少なくとも一方の駆動を制御し、車速を自動調整する。なお、制御装置50は、CRモードの選択中でも、運転者が所定量以上にアクセルペダルまたはブレーキペダルを踏み込んだ場合にはCRモードの選択を解除する。
A2のASLモードが選択された場合、制御装置50は、車速の検出値を用いて、第2レバーにより設定された上限車速を車速の検出値が超えないように、エンジン18及び第2MG24の駆動を制御し、車速を自動調整する。ASLモードの実行中では、運転者が上限車速付近でアクセルペダルを踏み込んでいても、制御装置50は、CRモードの実行中と同様に、上限車速で車速を一定に維持するように、エンジン18及び第2MG24の少なくとも一方の駆動を制御する。
A3のIPAモードが選択された場合、制御装置50は、画像表示部にタッチ操作で選択可能な「縦列駐車」及び「車庫入れ」を表示させる。タッチ操作により「縦列駐車」が選択された場合、制御装置50はステアリングホイールの自動操作によって運転者の縦列駐車を補助するように、図示しない電動パワーステアリング装置であるEPSの作動を制御する。また、「車庫入れ」が選択された場合、制御装置50はステアリングホイールの自動操作によって運転者の車庫入れを補助するように、EPSの作動を制御する。
例えば、縦列駐車が選択された場合、制御装置50は、画像表示部に表示されたカメラの撮影画像に重畳表示された駐車枠をユーザによって確定可能とする。駐車枠は撮影画像上で移動調整可能である。制御装置50は、確定された駐車枠に車両を誘導するようにEPSを制御する。縦列駐車、車庫入れいずれの場合も、制御装置50は、車速が所定範囲から外れた場合には、IPAモードの選択を解除する。
図5は、モード選択に対応して回生量拡大制御の実行可否を判定する方法を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、制御装置50の記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実行される。まず、ステップS10(以下、ステップSは単にSという。)において、CRモードが選択されているか否かが判定される。S10でCRモードが選択されていない場合、S12でASLモードが選択されているか否かが判定される。
S12でASLモードが選択されていない場合、S14でIPAモードが選択されているか否かが判定され、IPAモードが選択されていない場合には、S16で回生量拡大制御が許可される。この場合、例えば図3に実線L2で示すように、運転者のアクセルオフ後の減速設定点td以降で、車両の減速度が大きくなるように回生量拡大制御が実行される。この場合には、バッテリ28における充電可能な回生発電量を拡大でき、燃費性能を向上できる。
一方、図5のS10、S12、S14のいずれかの判定結果が肯定である場合、S18で回生量拡大制御が禁止される。例えばCRモードが選択されている場合に、図3に一点鎖線L3で示すように、アクセルペダルのオンオフ状態に関係なく、減速設定点td以降でも回生量拡大制御は実行されない。この場合、時間tbで運転者がブレーキペダルを踏み込むことによりCRモードが解除されて車速が低下し、時間t2でブレーキペダルをさらに踏み込むことで車両が急減速し、停止する。なお、S10,S12,S14の処理順序は適宜変更してもよい。
なお、図5のS18で回生量拡大制御の制限として禁止ではなく、所定車速調整モードの非選択の場合と比較して回生量拡大の開始が停止位置に近くなるように、回生量拡大制御を変更することもできる。この場合、例えば図4に二点鎖線L4で示すように、実線L2の場合に比べて減速設定点がtdからtcに変化する。この場合、回生量拡大制御は、実線L2の回生量拡大制御を実行する場合と比べて、回生量拡大制御が時間的に制限される。
このように所定車速調整モードの非選択時には、回生量拡大制御を行うことにより燃費性能を向上できる。しかも所定車速調整モードが選択され、そのモードの実行中には、所定車速調整モードの非選択時と比較して回生量拡大制御が制限されるので、所定車速調整モードの選択中にその選択が解除されて運転者が意図しない減速が不意に実行されることを抑制できる。例えばCRモード選択中のアクセルオフ時に一定車速が自動で維持されている場合に、突然にそのCRモードが解除され回生量拡大制御が実行され、車両が自動で減速されることを防止できる。このため、運転者の違和感発生を抑制できる。
なお、図1を参照して、上記の実施形態において、車両にCRモード設定部43の代わりに、レーダクルーズモード設定部46及び車間距離検出部48を設けることもできる。レーダクルーズモード設定部46は、所定車速調整モードであるレーダクルーズ制御モード(Radar Cruise Control mode)を選択するために設けられる。
レーダクルーズ制御モードは、自車両の前を走行する先行車両と自車両との車間距離を所定距離範囲に維持するように、自動で車速を調整する。以下、レーダクルーズ制御モードはRCRモードといい、レーダクルーズモード設定部46はRCRモード設定部46という。
RCRモード設定部46は、CRモード設定部43と同様に、ステアリングホイールの周辺部に配置される図示しないレバーにより形成され、レバーの先端部に設けられた押しボタン式のスイッチのオンまたはオフにより、RCRモードの選択と非選択とが切替可能である。レバーの先端部の操作された場合に、設定車速の増加または低下の指示を表す信号が制御装置50に送信される。。
RCRモード設定部46でのオンオフ状態を表す信号VRsetは、制御装置50に送信される。RCRモード設定部46がオンされている場合でも、アクセルペダルまたはブレーキペダルが踏み込まれた場合にはRCRモードの選択が解除される。
車間距離検出部48は、ミリ波レーダまたはレーザレーダを用いて自車両から先行車両までの車間距離を検出するセンサを有し、その検出値を表す信号を制御装置50に送信する。
制御装置50は、運転者によりRCRモードが選択され、設定車速が設定された場合に、RCRモードを行う。この場合、制御装置50は、車間距離検出部48からの検出値がないか、または送信された検出値が調整用所定距離を越える距離である場合に、設定車速に実際の車速を一致させるように、エンジン18及び第2MG24の駆動を制御する。
一方、制御装置50は、車間距離検出部48から送信された検出値が調整用所定距離以内の距離である場合に、車間距離を上記の所定距離範囲に維持するように、車両を加速または減速させる。
このようにRCRモードを行う車両の場合も、CRモードを行う車両と同様に、RCRモードの実行中には、回生量拡大制御の禁止または変更を行って、所定車速調整モードの非選択時と比較して回生量拡大制御を制限する。例えば、図4を参照して、回生量拡大制限部58は、RCRモード(A1a)と、ASLモード(A2)と、IPAモード(A3)との少なくとも1つが選択された場合には回生量拡大制御を制限する。
なお、上記のCRモード、ASLモード、IPAモード、RCRモードのいずれかの実行によって、回生量拡大制御が禁止される場合に、制御装置50は、そのモードの実行中に表示部35において回生量拡大制御の実行中を表す所定表示が消えるように表示部35を制御してもよい。この場合、表示部35によって回生量拡大制御の実行が運転者に通知されないので、運転者は回生量拡大制御による意図しない減速が行われないことを認識でき、車両の挙動が運転者の意図に近い挙動となる。また、制御装置50は、回生量拡大制御の禁止中または制限中に、その禁止中または制限中を表す第2所定表示を表示部35に表示させるように制御してもよい。
次に、実施形態において、回生量拡大制御とは別の制御である走行計画に基づく計画切替制御と、充電目標変更制御との少なくとも一方の制御を組み合わせる場合を説明する。この場合、図1を参照して、制御装置50は、モード切替制御部62及び充電目標変更制御部64を有する。制御装置50は、モード切替制御部62及び充電目標変更制御部64の一方のみを有する構成でもよい。
まず、ハイブリッド車両の基本のモード切替を説明し、その後、モード切替制御部62を説明する。ハイブリッド車両10は、走行モードとしてHVモード及びEVモードを有する。「HVモード」は、CSモードとも呼ばれるもので、エンジン18及び第2MG24の少なくとも一方を駆動源として車両が走行するモードである。HVモードでは、車両の走行中に、後述のEVモードからHVモードへの切替時における現在のSOC(以下、「現在SOC」という。)、または現在SOCを中心とする所定範囲内のSOCを維持するように、エンジン18及び第2MG24の駆動と、エンジン駆動による第1MG22の発電と、制動時の第2MG24の回生発電との実行及び非実行を切り替えて制御する。例えば現在SOCが所定範囲の下限を下回った場合には、エンジン18の駆動によって第1MG22で発電させ、その発電電力をバッテリ28に充電する。逆に現在SOCが所定範囲の上限を上回った場合には、エンジン18を停止して第2MG24の駆動によってバッテリ28の充電電力を消費する。
「EVモード」は、CDモードとも呼ばれるもので、第2MG24のみを駆動源として車両が走行するモードである。EVモードでは、車両の走行中に、バッテリ28のSOCを維持せずに、積極的に第2MG24で消費する。この場合、エンジン18は駆動されない。EVモードでも、アクセルペダルの操作量が大きい場合、または車速が高い場合には、車両の走行要求出力を確保するためにエンジン18の出力も用いて車両を走行させるようにすることもできる。この場合でもエンジン18の駆動によってバッテリ28を充電することはしない。
制御装置50は、所定のEVモード開始条件を満たすことを前提に、EVモードを選択し、SOCがEVモード閾値よりも低い値である「HVモード閾値」以下となるまで、EVモードで走行するようにエンジン18、第1MG22及び第2MG24を制御する。これによって、後述する図7(B)(C)の「制御なし」で示すように、EVモードの実行後、SOCが所定値以下に低下した状態でHVモードに移行する。以上が、基本のモード切替である。
「EVモード開始条件」は、現在SOCが予め設定された「EVモード閾値」以上であり、かつ、バッテリ温度が所定温度範囲内であり、かつ、バッテリ出力可能電力が所定値以上であるとすることができる。なお、EVモードとHVモードとの切り替えは、車両で自動で実行される場合に限定するものではなく、運転者が図示しないEV−HV切換スイッチを操作することによって、手動でモード切替可能としてもよい。
モード切替制御部62は、現在SOCがEVモード閾値以上である場合に、ナビゲーション装置32から取得した現在位置、目的地、及び目的地までの走行経路を含む経路情報に基づいて、HVモード及びEVモードを切り替えるように、所定の走行計画を作成し、記憶部に記憶する。「走行計画」は、後述の車両効率である「EV走行効率」が高くなるように作成される。モード切替制御部62は、この走行計画に基づいてモードの切替制御を行う。
より具体的には、モード切替制御部62は、取得された経路情報に基づいて、車両が目的地に向かう場合の走行経路において、連続する複数の経路要素を求める。モード切替制御部62は、複数の経路要素において、予め設定された関係から算出されるEV走行効率が高くなるように走行計画を作成する。この場合、走行計画は、将来走行経路におけるEV走行効率が高くなることを重視して作成される。
これについて、図6を用いてさらに詳しく説明する。図6は、走行計画に基づく切替制御である計画切替制御を実行する場合(A)と、計画切替制御を行わない場合(B)とにおけるモード切替を示している。図6では、1例として、山道、市街地、及び高速道路を通過するように、出発地から目的地までの走行経路が設定されている。走行経路は、予め設定した条件に基づいて、連続する複数の経路要素D1、D2・・・D6に分割される。
制御装置50は、各経路要素D1、D2・・・D6において、道路勾配及び法定速度から、予測平均車速と、走行時に車両に加わる予測負荷とを算出し、記憶する。制御装置50は、各経路要素D1、D2・・・D6において、車両がEV走行した場合のエネルギ効率に対応し、車両効率である「EV走行効率」を算出し、記憶する。「EV走行効率」は、予測平均車速と予測負荷とに基づいて所定の関係式で算出される。EV走行効率は、予測平均車速が低くなるほど高くなり、予測平均車速が高くなるほど低くなる関係を有する。EV走行効率は、予測負荷が低くなるほど高くなり、予測負荷が高くなるほど低くなる。
制御装置50は、EV走行効率、予測平均車速、及び予測負荷の関係を表すマップのデータを予め制御装置50の記憶部に記憶している。制御装置50は、ナビゲーション装置32から取得した経路情報から複数の経路要素D1、D2・・・D6での予測平均車速及び予測負荷を算出し、マップのデータからそれぞれのEV走行効率を算出する。
図6(A)では各経路要素において、(3)(2)・・・のようにEV走行効率が高い場合に高くなる点数を設定している。図6(A)に示すように、負荷が高くなる山道、及び車速が高くなる高速道路では、EV走行効率が低い。このため、点数が(3)(2)(4)と低い。一方、車速が低く、かつ道路勾配が小さい市街地では、EV走行効率は高い。このため、点数が(10)(9)(8)と高い。
モード切替制御部62は、各経路要素のうち、EV走行効率が最高で、点数が最高の経路要素(例えばD3)から効率が低くなる順に1つまたは複数を選択し、選択した経路要素(例えばD3,D4,D6)にEVモードを設定し、残りの経路要素(例えばD1,D2,D5)にHVモードを設定するように走行計画を作成する。この走行計画では、選択した経路要素(例えばD3,D4,D6)の全体でEVモードを実行した場合に、出発地で残っていたSOCとHVモード閾値のSOCとの差分を使い切れるようにする。好ましくは、走行計画では、目的地の直前で、出発地で残っていたSOCとHVモード閾値のSOCとの差分を使い切れるようにする。
モード切替制御部62は、作成された走行計画に基づいて目的地までの走行経路で、HVモード及びEVモードを所定タイミングで切り替える計画切替制御を行う。
図7は、出発地から目的地までの残距離(A)と、計画切替制御を実行しない場合のSOC(B)及び走行モード(C)と、計画切替制御実行の場合のSOC(D)と、EV走行効率(E)と、計画切替制御実行の場合の走行モード(F)とを示している。図7の(B)(C)は基本のモード切替である。
図7に示すように、出発地から目的地までの走行経路が設定され、目的地でSOCが所定のEVモード開始条件を満たす場合に、計画切替制御が実行されない場合には、(B)(C)に示すように、EVモード開始後、SOCが所定のEVモード閾値以下に低下した状態で、HVモードに移行する。
一方、制御装置50は、(E)のEV走行効率に基づいて、(F)のモード切替を行う走行計画を作成する。この場合、(E)で破線D1,D2,D3,D4で囲んだ部分に対応する経路要素がEV走行効率の高い部分として選択され、EVモードとして設定され、残りの経路要素にHVモードが設定される。
モード切替制御部62は、走行計画に基づいて計画切替制御を実行する。この場合、(D)に示すように、車両が目的地に向かって走行する場合にSOCはHVモードでほぼ一定に維持され、EVモードでSOCが徐々に低下し、これが目的地まで繰り返される。この場合、目的地直前で、出発地に残っていたSOCでHVモード閾値までのSOCを使い切ることが可能となる。このため、車両の燃費性能が向上する。
次に、充電目標変更制御部64(図1)を説明する。充電目標変更制御部64は、ナビゲーション装置32から現在位置と、所定値以上の勾配を持つ特定降坂路位置を含む経路情報を取得する。充電目標変更制御部64は、走行経路における特定降坂路位置の情報に基づいて、バッテリ28のSOCの制御目標値を変更する充電目標変更制御を行う。
図8は、充電目標変更制御を行う場合の走行経路上の特定降坂路76及び車両位置と、車両位置に対応するSOCとの関係を示している。特定降坂路76を車両が矢印方向に進行して降りる場合、アクセルオフによる第2MG24の回生発電によってSOCが急激に上昇する。一方、車両10が特定降坂路76の手前に位置する場合にSOCが十分に高い場合、特定降坂路76での走行により得られる発電量をバッテリ28で十分に回収できず、無駄になるおそれがある。
充電目標変更制御部64は、取得された現在位置及び特定降坂路76の位置から、車両10が特定降坂路76の前の所定距離以内にある場合に、SOCの制御目標値である基準SOCを所定値以下に低下させるように、第2MG24を積極的に駆動させるEV走行を行うように制御する。これによって、車両のU1位置からU2位置までの間でSOCを十分に低下させ、特定降坂路76の開始位置であるU3位置から終了位置であるU4位置までに回生発電により得られる電力をバッテリ28で十分に回収できる。このため、効率のよい走行を実現できる。
なお、制御装置50はナビゲーション装置32から渋滞位置を有する渋滞情報を含むインフラ情報を取得して、車両10が渋滞位置の前の所定距離以内にある場合に、特定降坂路76の場合と同様に、基準SOCを所定値以下に低下させるように制御する構成としてもよい。この場合も、渋滞位置で車両が減速するので、回生発電により得られる電力をバッテリ28で十分に回収できる。
ハイブリッド車両10は、上記のモード切替制御部62及び充電目標変更制御部64の一方または両方を備えるように構成できる。この場合、制御装置50は、CRモードまたはASLモードの選択時に、CRモードまたはASLモードによる走行における回生量拡大制御の制限を行いながら、計画切替制御及び充電目標変更制御の一方または両方を行う。
図9は、モード選択に対応して、回生量拡大制御と、計画切替制御(または充電目標変更制御)との実行可否を判定する方法を示すフローチャートである。なお、以下では計画切替制御及び充電目標変更制御のうち、計画切替制御のみを行う場合を説明するが、充電目標変更制御を行う場合の実行可否も同様である。
制御装置50は、図9のフローチャートで示す方法を予め記憶部で記憶したプログラムにより実行することができる。S20からS24の処理は、図5のS10からS14の処理と同様である。図9のS24でIPAモードが選択されていない場合に、S26で回生量拡大制御及び計画切替制御のいずれの実行も許可される。一方、S20、S22,S24によって、CRモード、ASLモード、IPAモードのいずれかが選択されている場合、S28で回生量拡大制御の実行は禁止されるが、計画切替制御の実行は許可される。
上記の構成では、計画切替制御及び充電目標変更制御でも、運転者のアクセルペダルの操作に基づく要求に沿うように車両の目標駆動力が設定され、減速時の減速度が自動で変更されることはないか、またはその変更が少ない。このため、CRモード、ASLモード、及びIPAモードのいずれかが選択された場合でも、その選択されたモードと、計画切替制御または充電目標変更制御との制御上の干渉は少ない。したがって、選択されたモードの実行による制御と、計画切替制御または充電目標変更制御との許可によって、モード選択時における車両の挙動を運転者の意図に近づけながら、計画切替制御または充電目標変更制御による燃費向上を図れる。
上記の実施形態において、本発明の回生発電機付車両の構成は図1に示した構成に限定するものではなく、例えばハイブリッド車両でない車両を用いてもよい。例えば発電機として、電動モータの機能を有しない単純な発電機を用いることもできる。
図10は、本発明の制御システムを適用する別の車両10Aの構成を示している。車両10Aは、エンジン18、変速装置100、差動装置102及び発電機104を備える。車両10Aは走行モータを備えていない。エンジン18の動力は変速装置100、差動装置102、車軸40を介して車輪16に伝達される。発電機104はエンジン18の回転軸に連結され、エンジン18の駆動によって発電し、発電した電力をインバータ106を介してバッテリ28に供給し充電する。発電機104は、図1の第1MG22と同様に三相回転電機である。制御装置50はインバータ106の動作を制御することで発電機104の発電を制御する。
車両10Aの制動時には、車輪16からの動力が変速装置100、エンジン18を介して発電機104に伝達される。この場合、制御装置50は、インバータ106の制御によって発電機104の回生トルクを制御することで車輪16に回生制動力を発生させる。この場合、発電機104は回生発電機として機能する。制御装置50は、図1の制御装置50と同様に回生量拡大制御部56及び回生量拡大制限部58を有する。回生量拡大制御部56は、経路情報に基づいて、運転者の動作による車両の停止及び減速の位置を予測して発電機104の回生発電を制御することにより、バッテリ28における充電可能な回生発電量を拡大させる回生量拡大制御を実行する。回生量拡大制限部58は、運転者により選択される所定車速調整モードの実行中には、所定車速調整モードの非選択時と比較して回生量拡大制御を制限する。所定車速調整モードは、上記の実施形態の場合と同様である。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施できるのは勿論である。例えば、図1の構成ではナビゲーション装置32を用いた制御システム12を説明したが、ナビゲーション装置を省略して、その代わりに信号機位置及び信号機の赤信号情報を含むインフラ情報を経路についての情報として受信する受信部を有する構成としてもよい。制御装置50は、インフラ情報から車両前方にある信号機の赤信号情報を取得した場合に、信号機直前と推測される位置を目標停止位置として計算により取得し、目標停止位置までの距離及び車速の検出値を用いて回生量拡大制御を実行することができる。
また、制御装置50は、回生量拡大制御を行う際に、表示部35によって、減速設定点td以降での大きな減速を運転者に促すように所定の表示を行う機能を持つ構成としてもよい。また、回生量拡大制御の実行状態を通知する通知部は表示部35に限定するものではなく、音声で回生量拡大制御の実行状態を通知する音声出力部としてもよい。
また、上記の実施形態において、車両は、所定車速調整モードとして、CRモード、RCRモード、ASLモードの1つまたは2つのモードのみを行う構成でもよい。車両は、IPAモードを行わない構成としてもよい。
また、車両に図示しない充電残量拡大スイッチを設けて、充電残量拡大スイッチが運転者にオンされた場合に、制御装置50は、充電拡大制御を実行して充電残量拡大スイッチのオフ時よりも、バッテリの目標充電残量であるSOC基準を高くすることもできる。この場合、充電残量拡大スイッチがオンされた場合に、計画切替制御及び充電目標変更制御のいずれもSOCに大きく影響されるので、制御装置50は、計画切替制御及び充電目標変更制御のいずれの制御も禁止することができる。この構成によれば、計画切替制御及び充電目標変更制御の一方または両方と、充電拡大制御との制御上の干渉を防止できる。