〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態は、原データ(原印字データ)及びボールド化(肉太化)データに基づき第1のピンによる印字と、第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に第2のピンによる印字とを制御する構成である。
この第1の実施の形態について、図1を参照する。図1は、プリンタの構成例を示している。
プリンタ2は、本開示のプリンタの一例であって、受信した原印字データ4からボールド指示6によりボールド化データ8を生成し、ボールド印字を行う構成である。このプリンタ2では、データ受信部10と、ボールド化データ生成部12と、印字制御部14と、印字ヘッド16とを備える。
原印字データ4は、図示しないホストコンピュータ等のデータ源から提供されるデータであって、この実施の形態では、ボールド化データ8に対して原データである。ボールド化データ8は、提供された原印字データ4の印字の肉太化(ボールド化)のために生成されるデータである。ボールド指示6は、原印字データ4からボールド化データ8を生成させる契機となるコマンド情報である。
データ受信部10は、原データである原印字データ4をデータ源から受信する手段であり、受信した原印字データ4を保持する機能を備えてもよい。
ボールド化データ生成部12は、ボールド化データ8の生成手段の一例であって、データ受信部10から原印字データ4を受けるとともに、必要に応じてボールド指示6を受け、原印字データ4に基づきボールド化データ8を生成させる。
印字制御部14は、印字ヘッド16の印字駆動を制御する手段であって、原印字データ4及びボールド化データ8に基づき、印字ヘッド16の第1のピン(例えば、印字ピン44:図5、図6)による印字と、第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に第2のピン(例えば、印字ピン46:図5、図6)による印字とを生じさせる。具体的には、ボールド指示6が無い場合には、データ受信部10から提供される原印字データ4を印字ヘッド16に印字させる。また、ボールド化データ生成部12からボールド化データ8が提供されている場合には、そのボールド化データ8を印字ヘッド16に印字させる。この原印字データ4と、ボールド化データ8の印字とを以てボールド印字を生成する。
そして、印字ヘッド16は、ヘッド移動方向の隣接位置に既述の第1及び第2のピンを備え、既述の通り、印字制御部14によって制御される構成である。
このプリンタ2の印字制御について、図2を参照する。図2は、印字制御の処理手順の一例を示すフローチャートである。
プリンタ2を駆動し、原印字データ4を例えば、ホストコンピュータから受信する(ステップS11)。そこで、ボールド指示6があるかを判定し(ステップS12)、ボールド指示6があれば(ステップS12のYES)、原印字データ4からボールド化データ8を生成する(ステップS13)。
ボールド化データ8の生成の後、原印字データ4及びボールド化データ8による印字を行う(ステップS14)。この印字は、ボールド印字であり、原印字データ4及びボールド化データ8に基づき、印字ヘッド16の第1のピン(例えば、印字ピン44:図5、図6)による印字と、第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に第2のピン(例えば、印字ピン46:図5、図6)による印字とを生じさせる。
また、ボールド指示6がない場合には(ステップS12のNO)、ボールド化データ8の生成がないので、原印字データ4の印字を行う(ステップS15)。
この場合、印字中にボールド指示6があれば、このボールド指示6を契機として原印字データ4からボールド化データ8の生成及びその印字を行う構成としてもよい。
原印字データ4からボールド化データ8の生成について、ボールド化データ生成部12で原印字データ4の特定ドット幅例えば、1ドット幅の場合にボールド化データ8を生成させ、1ドット幅を2ドット幅に印字する構成としてもよい。また、特定ドット幅以上の原印字データ4では、ボールド化データ8を生成させない構成としてもよい。
斯かる構成によれば、狭い印字ドット幅に対し、ボールド化データ8によるボールド印字を行うことができ、印字の鮮明化を図ることができる。また、多層紙による高複写印字の場合にも、上層部から下層部まで鮮明な印字を行うことができる。しかも、ボールド指示6のみでボールド印字を自動的に行うことができ、印字処理の操作性を高めることができる。
〔第2の実施の形態〕
第2の実施の形態は、第1の実施の形態を具体化した構成例である。この場合、印字ヘッドに二段ヘッドを用いており、原データ印字は一段目ピン、ボールド化印字は二段目ピンで行い、原印字データの印字ドットと、ボールド化データの印字ドットとは例えば、一段目ピンと二段目ピンのピッチ(P)の間隔が設定されている。
この第2の実施の形態について、図3を参照する。図3は、プリンタの構成例を示している。図3において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
プリンタ2は、既述の通り、本開示のプリンタの一例であって、上位装置であるホストコンピュータ18から原印字データ4やボールド指示6を受ける構成である。
ホストコンピュータ18は、原印字データ4やボールド指示6を出力するデータ源の一例である。プリンタ2に対するデータ源はホストコンピュータ18に限定されない。ディジタルカメラやゲーム機等、少なくとも原印字データ4を出力する電子機器であればよく、また、ボールド指示6はホストコンピュータ18以外例えば、プリンタ2側で指示してもよい。
プリンタ2は、データ受信部10と、制御情報受信部20と、ボールド化データ生成部12と、印字ヘッド16と、ラインバッファ22と、ヘッド制御部24とを備える。この場合、ラインバッファ22と、ヘッド制御部24とで既述の印字制御部14が構成されている。
制御情報受信部20は、ホストコンピュータ18からプリンタ2に対して発せられる制御情報であるボールド指示6を受信する手段の一例である。この制御情報受信部20では受信したボールド指示6により、ボールド化データ生成部12に対してボールド化の指示をする。
ホストコンピュータ18から原印字データ4が1ラインずつ転送されるので、データ受信部10はその原印字データ4を受信し、保持する。このデータ受信部10が受信した原印字データ4は、ラインバッファ22及びホールド化データ生成部12に転送される。ラインバッファ22は、原印字データ4を1ライン毎に保持する。
ホールド化データ生成部12は、1ライン毎に転送された原印字データ4に対応し、ボールド指示6がある場合、ボールド化データ8を生成する。
そこで、ヘッド制御部24は、ラインバッファ22からの原印字データ4と、ボールド化データ生成部12からのボールド化データ8とを受け、原印字データ4とボールド化データ8との印字を印字ヘッド16に行わせる。
次に、このプリンタ2のハードウェアについて、図4を参照する。図4は、プリンタのハードウェア構成例を示している。図4において、図3と同一部分には同一符号を付してある。
このプリンタ2には、図3に示す機能を実現する手段として、CPU(Central Processing Unit )26と、記憶部28と、入出力(I/O)部30と、印字ヘッド駆動部32と、表示部34と、印字ヘッド16とを備える。
CPU26は、印字制御、ボールド化処理、データ表示等の各種の制御や演算処理の処理手段の一例であって、記憶部28にあるOS(Operating System)、ファームウェアプログラムを実行する。この場合、ファームウェアプログラムは例えば、印刷ドライバである。このCPU26は、プログラムの実行により、既述のボールド化データ生成部12、印字制御部14を構成する。
記憶部28は、プログラム記憶部36と、データ記憶部38と、RAM(Random-Access Memory)40とを備える。プログラム記憶部36は、OSやファームウェアプログラムを格納する記憶手段であって、例えば、キャッシュメモリで構成される。データ記憶部38は、原印字データ4やボールド化データ8等、各種のデータを格納する記憶手段であって、ラインバッファ22等を構成する。このデータ記憶部38も例えば、キャッシュメモリで構成される。また、RAM40は、印字処理のワークエリアを構成する。
I/O部30は、データの入出力手段の一例であって、既述のデータ受信部10及び制御情報受信部20を構成する。
印字ヘッド駆動部32は、印字ヘッド16の駆動手段の一例である。また、表示部34は、制御情報やメッセージの表示を行う手段であって、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)表示器で構成される。
次に、印字ヘッド16について、図5、図6及び図7を参照する。図5は印字ヘッドの印字ピン配列を示し、図6はヘッドのピン配列と印字分担例を示し、図7は印字ヘッドの縦断面を示している。
この印字ヘッド16は、図5に示すように、ヘッド面42に複数の上位側印字ピン44及び下位側印字ピン46を備え、各上位側印字ピン44及び各下位側印字ピン46を例えば、24ピンとする48ピン構成である。上位側印字ピン44及び下位側印字ピン46に付した番号1〜12は便宜上付したピン番号である。説明の都合上、上位側印字ピン44は太枠、下位側印字ピン46は細枠で示している。
上位側印字ピン44及び下位側印字ピン46において、横方向(X軸方向)が印字ヘッド16の移動方向(ライン方向)、縦方向(Y軸方向)が画素方向である。奇数番号1、3、5、7、9、11のピンは中心軸48を挟んで左側半分、偶数番号2、4、6、8、10、12のピンは右側半分に配置されている。
上位側印字ピン44及び下位側印字ピン46において、1番ピン及び2番ピンを中心線48から最も遠ざかった位置に設定し、奇数番ピンの各横方向の間隔及び偶数番ピンの横方向の間隔はピッチPの間隔が設定されている。また、奇数番ピンと偶数番ピンは高さ方向に互い違いに配列され、偶数番ピンの間隔は1ドットの間引き間隔であり、奇数番ピンも同様に1ドットの間引き間隔に設定されている。上位側印字ピン44と下位側印字ピン46とは、上位側印字ピン44を内側、下位側印字ピン46を外側にして略菱形状の配列とした二段印字ヘッドを構成している。
そして、この印字ヘッド16のヘッド右半分に配列されたピン番号2では、図6のAに示すように、上位側印字ピン44が原印字データ4の印字を担当し、同番号の下位側印字ピン46がボールド化データ8の印字を担当する。
また、この印字ヘッド16のヘッド左半分に配列されたピン番号1では、図6のBに示すように、下位側印字ピン46が原印字データ4の印字を担当し、同番号の上位側印字ピン44がボールド化データ8の印字を担当する。即ち、印字ヘッド16の右半分と左半分とでは上位側印字ピン44と下位側印字ピン46の印字の役割分担が異なっている。
そして、この印字ヘッド16は、図7に示すように、筐体部50に進退可能に上位側印字ピン44を内側、下位側印字ピン46を外側に配置し、各印字ピン44、46には支点52を介して駆動アーム部54が設けられている。
各印字ピン44、46のピン部56と駆動アーム部54とは鈍角状のL字形であり、駆動アーム部54には電磁ソレノイド58が配置されている。電磁ソレノイド58が印字ヘッド駆動部32(図4)の駆動出力により励磁されると、電磁ソレノイド58側に駆動アーム部54が引きつけられる。この結果、ピン部56が下降し、ヘッド面42から突出する。この突出によって印字ドットが生成される。
この実施の形態では、印字ヘッド16のヘッド面42の下側にはインクリボン60が配置され、このインクリボン60の下面側に複写用紙62が配置されている。そこで、インクリボン60の上側から印字ピン44、46が殴打されると、その殴打位置に印字ドットが生成されることになる。
次に、ホストコンピュータ18側の処理について、図8を参照する。図8は、ホストコンピュータ及びプリンタの処理手順の一例を示している。
ホストコンピュータ18では、原印字データ4が作成され(ステップS21)、必要に応じてボールド指示6の設定が行われる(ステップS22)。
この原印字データ4が作成されると、原印字データ4の出力、また、ボールド指示6があれば、その指示出力がプリンタ2側に出力される(ステップS23)。
そして、プリンタ2側の印刷処理に移行し、プリンタ2では、駆動を開始した後、ホストコンピュータ18から原印字データ4が転送されると、この原印字データ4を受信する(ステップS24)。この原印字データ4の受信を契機として、印刷処理が実行される(ステップS25)。
次に、ボールド指示6の一例について、図9を参照する。図9は、ボールド指示の画面表示の一例を示している。
ホストコンピュータ18には原印字データ4やボールド指示6を画面表示する表示部64が設けられ、この表示部64には設定メニューを立ち上げることにより、プリンタ詳細オプション66の表示画面68が表示される。
この表示画面68に表示されたプリンタ詳細オプション66では、詳細なドキュメント設定の下位設定として、濃淡設定の項目に印字モード選択部70が設定されている。この印字モード選択部70には、標準モードと、高複写モードとが含まれている。高複写モードがボールド指示6の一例である。高複写モードにカーソル表示を重ね、OKボタン72をクリックすれば、原印字データ4の印字に対しボールド指示6を付与することができる。
次に、ボールド印字の処理について、図10を参照する。図10はボールド印字の処理手順の一例を示している。
プリンタ2側で原印字データ4を受信すると、原印字データ4から1ライン分の読み込みを実行し(ステップS31)、ボールド指示6を受けているか即ち、ボールドモードかを判定する(ステップS32)。ボールドモードでなければ(ステップS32のNO)、通常印字処理として原印字データ4のみの印字処理を行う(ステップS33)。
ボールドモードであれば(ステップS32のYES)、原印字データ4からボールド化データ8を生成する(ステップS34)。この場合、ラインバッファ22を左からスキャンし、印字ドットに対応する印字ピンが印字ヘッド16の右半分にあるかを判定する(ステップS35)。
印字ドットに対応する印字ピンが印字ヘッド16の左半分にあれば(ステップS35のNO)、下位側印字ピン46で原印字データ4の印字を行い(ステップS36)、同番号の上位側印字ピン44でボールド化データ8の印字を行う(ステップS37)。
また、印字ドットに対応する印字ピンが印字ヘッド16の右半分にあれば(ステップS35のYES)、上位側印字ピン44で原印字データ4の印字を行い(ステップS38)、同番号の下位側印字ピン46でボールド化データ8の印字を行う(ステップS39)。
このような原印字データ4及びボールド化データ8の印字を経て、ラインバッファ22にあるデータが終了したかを判定し(ステップS40)、ラインバッファ22が終了していなければ(ステップS40のNO)、ステップS35からラインバッファ22にあるデータが終了するまで同様の処理を実行する。
そして、ラインバッファ22にあるデータが終了すれば(ステップS40のYES)、印字処理を終了する。
この印字処理について、図11を参照する。図11のAは印字のボールド化に用いられる印字ヘッドのピン配列を示し、図11のBはボールド印字の一例を示している。
ボールドモードにおいて、印字ヘッド16によるボールド印字74が実行される。ボールドモードにおいて、原印字データ4が1ドット幅の縦線であれば、図11のBに示すように、原印字76と、ボールド化印字78とを行い、両者によってボールド印字74が生成される。この場合、原印字76は、1ドット幅の縦線を表すデータの印字であり、ボールド化印字78は原印字データ4を横方向に1ドットだけシフト(この実施の形態では右方向にシフト)させたボールド化データ8の印字である。このように原印字76の横にボールド化印字78が付加されたボールド印字74では、1ドット幅の原印字データ4が2ドット幅の印字にボールド化(肉太化)されている。
図11のAから図11のBに対して書き込んだ矢印Xは、印字ヘッド16の移動方向を示している。また、印字ピン44、46と、原印字76、ボールド化印字78との間に書き込んだ矢印a、b、c、d、e、f、g、hは、印字ピン44、46と印字位置の関係を示している。Pは、印字ピン44、46のピッチ(図11のA)であるとともに、印字ドットのピッチ(図11のB)である。
二段ヘッドである印字ヘッド16の印字では、印字ヘッド16を左右に移動して印字部分に達すると、印字ヘッド16の右半分にある印字ピン44、46では、下位側印字ピン46が右側に印字し、上位側印字ピン44が左側に印字する。印字ヘッド16の左半分に配列された印字ピン44、46では、下位側印字ピン46が左側に印字し、上位側印字ピン44が右側に印字する。このように印字することにより、上位(一段目)と下位(二段目)の印字ピン44、46の左右の印字が反対となる。
そして、印字ヘッド16の右半分では、上位側印字ピン44(1段目)が原印字76、下位側印字ピン46(2段目)がボールド化印字78を印字する。ボールド化印字78(印字結果の右側)を印字する印字ピンが駆動されると、直後に上位側印字ピン44(1段目)と下位側印字ピン46(2段目)との駆動切替えを行い、原印字76を印字することにより、印字ヘッド16の上位側印字ピン44(1段目)と下位側印字ピン46(2段目)とを用いたボールド化印字78を行い、ボールド印字74を生成する。原印字76に対してボールド化印字78がピッチPの間隔で印字されている。
このボールド印字74の処理について、図12を参照する。図12はボールド印字のヘッド移動及び印字位置を示している。
線幅が1ドットの縦線の直線印字では、原印字76の横側にボールド化印字78によってボールド印字74が生成される。この場合、印字ヘッド16の右半分側では、ボールド指示6に基づき、原印字データ4はピン配列左側の上位側印字ピン44で印字され、ボールド化データ8は同番号の下位側印字ピン46で印字される(図6のA)。また、印字ヘッド16の左半分側では、ボールド指示6に基づき、原印字データ4はピン配列左側の下位側印字ピン46で印字され、ボールド化データ8は同番号の上位側印字ピン44で印字される(図6のB)。これらは既述の通りである。
この場合、図12のAに示すように、印字ヘッド16を矢印Rの方向に移動した際、印字ヘッド16の右半分での印字は、上位側ピン44を印字位置Q1まで移動して印字をする。その後、同番号の下位側印字ピン46で印字することにより、1回の移動により2回の印字をする。
また、図12のBに示すように、印字ヘッド16を矢印Rの方向に移動した際、印字ヘッド16の左半分での印字は、下位側ピン46を印字位置Q2まで移動して印字をする。その後、同番号の上位側ピン44で印字することにより、1回の移動により2回の印字をする。
このように、ボールド指示6があれば、原印字76をピン配列左側の印字ピン44又は46で印字後、同位置にある右側の印字ピン46又は44でボールド化印字78を行い、印字のボールド化が図られる。
次に、高複写印字について、図13及び図14を参照する。図13はボールド印字の原印字側の印字例、図14はボールド印字の原印字及びボールド化印字の印字例を示している。
この場合、インクリボン60の下側に例えば、3枚構成の複写用紙62A、62B、62Cが設置された場合の高複写印字を例示している。図13のAに示すように、上位側印字ピン44の殴打により、1枚目の複写用紙62Aには原印字76側の印字ドット80(図13のB)が生成される。同時に、3枚目の複写用紙62Cにも印字ドット82(図13のC)が生成される。印字ドット80、82はそれぞれ原印字データ4による原印字76であるが、複写用紙62Aには印字ピン44がインクリボン60のみを介して当たるため、印字ピン44の先端径にほぼ等しい印字径r1 が得られる。これに対し、複写用紙62Cには印字ピン44がインクリボン60及び複写用紙62A、62Bを介在して当たるため、印字径r1 より大きい印字径r2 (>r1 )が得られる。
ボールドモードでは、図14に示すように、印字ドット80、82に隣接して下位側印字ピン46による印字が行われる。印字ピン46の殴打により、1枚目の複写用紙62Aには原印字76側の印字ドット80に隣接し、ボールド化印字78による印字ドット81(図14のB)が生成される。同時に、3枚目の複写用紙62Cにも印字ドット82に隣接し、ボールド化印字78による印字ドット83(図14のC)が生成される。
印字径r1 、r2 については、印字ドット81、83も同様である。そして、このような隣接した印字ドット80、81、印字ドット82、83により、ボールド印字74が生成されている。2つの印字ドットによって印字幅の拡大が図られるとともに、印字速度を低下させることなく、印字の鮮明化が図られている。
以上述べた実施の形態について、特徴事項や利点を以下に列挙する。
(1) 二段ヘッドの利点を活かして高複写印字等、印字速度を低下させることなく、印字品質を高めることができる。
(2) 二段ヘッドシリアルドットプリンタにおいて、一番目のピンで印字後、直ちに二番目のピンにて同一箇所近傍(一番目と二番目のピッチ分の間隔)に印字するので、印字速度を犠牲にすることなく印字品質を高められる。
(3) 二段ヘッドシリアルドットプリンタにおいて、一番目のピンで印字後、横に微小移動の後、二番目のピンにて同一箇所近傍に印字するので、印字速度を犠牲にすることなく、印字品質を高められる。
(4) 隣接するドット印字は、印字ヘッド16の移動と隣接する2つのピンを駆動して印字するので、印字時間の短縮を図ることができる。
(5) 原印字データ4の印字と、ボールド化データ8の印字はそれぞれ独立した印字ピンの駆動により行うので、時間消費を拡大することなく、シャープなボールド印字を得ることができる。
(6) 印字ヘッドは、印字要求があるピンを電磁石により進退させ、インクリボンを印字媒体に押下して印字することができる。
(7) 印字ピンの押下時間を拡大させないので、1ピン当たりの印字時間が短く、総印字時間を拡大させることはない。
(8) 印字ピンの押下時間を長くすると、印字ドットの回りにリボンのインクやカーボンの染みが生じて印字ドット径が大きくなる不都合があるが、押下時間を拡大しないので、斯かる不都合は生じない。同様に、高複写の場合、下層部にある複写用紙のカーボンインクの染みも生じることがなく、印字ドットを不必要に大きくすることがない。
(9) 印字ヘッドを移動時、印字ヘッド右側の印字では上位側のピンが印字位置まで移動して印字をし、その後、同番号のピンの下位側のピンで印字することにより、1回の移動で2回の印字をし、ボールド印字を実現できる。
(10) 印字ヘッドを移動時、印字ヘッド左側の印字では下位側のピンが印字位置まで移動して印字をし、その後、同番号のピンの上位側のピンで印字することにより、1回の移動で2回の印字をし、同様に、ボールド印字を実現できる。
(11) ホストコンピュータ18からのボールド指示6によってボールド印字74を自動的且つ容易に実現することができる。
(12) ホストコンピュータ18からプリンタ2のデータ受信部10に1ラインずつデータを転送することにより、プリンタ側で受信した1ラインのデータに対してボールド化処理を行うので、印字精度の高いボールド印字74を実現できる。
〔第3の実施の形態〕
第3の実施の形態は、原印字データの印字幅に応じてボールド化データの生成を行い、印字幅を拡大する構成である。
この第3の実施の形態について、図15を参照する。図15は、第3の実施の形態に係るボールド印字の処理手順の一例を示している。
この実施の形態においても、第2の実施の形態と同様のプリンタ構成を用いるので、その詳細な説明を省略する。
この実施の形態の処理手順では、図15に示すように、ボールド指示6の有無を判定し(ステップS51)、ボールド指示6がなければ(ステップS51のNO)、既述の通り、印字処理(ステップS55)に移行する。ボールド指示6があれば(ステップS51のYES)、原印字データ4の印字幅のチェックを行う(ステップS52)。この印字幅のチェックは、文字や記号又は線等の印字対象単位で行えばよいが、ドット単位で行ってもよい。この実施の形態では、所定ドット幅以下の印字部分の一例として、1ドット単位で印字幅をチェックする。
そこで、印字幅が1ドット幅かを判定し(ステップS53)、印字幅が1ドット幅を超えていれば(ステップS53のNO)、印字処理に移行し、ボールド化処理は行わない。また、印字幅が1ドット幅であれば(ステップS53のYES)、既述のボールド化処理(ステップS54)を実行し、印字処理(ステップS55)に移行する。
斯かる構成とすれば、印字幅が狭いために不鮮明化する印字劣化を精度よく改善することができる。
この場合、印字幅の監視について、2ドット以上の印字幅があれば、ボールド化処理を回避する処理としてもよい。
〔他の実施の形態〕
(1) 上記実施の形態では、印字を1ピッチの間隔で行っているが、印字精度を上げるため、印字ヘッド16を微小移動させ、印字位置を制御してもよい。
(2) 上記実施の形態では、1ピッチの間隔で印字しているが、印字ヘッド16の微小移動により、1ピッチ以下又は1ピッチを超える間隔で印字してもよい。
(3) 上記実施の形態では、ホストコンピュータ18側で高複写設定をし、ボールド指示6をプリンタ2側に付与しているが、プリンタ2側でボールド設定を行い、ボールド指示を行うようにしてもよい。ボールド化表示をプリンタ2側の表示部34に表示してもよい。
(4) 上記実施の形態では、ボールド化印字の一例として多層の複写用紙に対する高複写印字を例示したが、これに限定されない。印字媒体は、複写用紙以外の印字用紙を用いてもよい。
(5) 上記実施の形態では、プリンタ2に接続される上位装置としてホストコンピュータ18を例示しているが、これに限定されない。ホストコンピュータ18に代え、電子ゲーム機、テレビジョン受像機、ディジタルカメラ等、印字データを出力する電子機器であればよい。
(6) 上記実施の形態では、印字ヘッド16が上位側印字ピン44、下位側印字ピン46をそれぞれ24ピンで構成し、48ピン構成であるが、これに限定されない。これ以上のピン数の印字ヘッドを用いてもよいし、これ以下のピン数の印字ヘッドであってもよい。
(7) 上記実施の形態では、ボールド化データを生成させる所定ドット幅以下の印字部分として、1ドットを例示しているが、所定ドット幅には、1ドットを超えるドット幅を包含する。
〔比較例〕
比較例は二段ヘッドを用いた通常印字、印字ピンの押圧時間を延長した印字、多重印字等を示している。
この比較例に用いる二段ヘッド及び印字について、図16を参照する。図16は印字ヘッドのピン構成及びその印字例を示している。
この印字ヘッド200は、図16のAに示すように、上位側印字ピン202及び下位側印字ピン204のそれぞれを24ピンとする48ピン構成であって、概ね菱形状に配列されている。説明の都合上、上位側印字ピン202は太枠、下位側印字ピン204は細枠で記載している。
この印字ヘッド200の印字にあっては、印字ヘッド200を左から右に移動させた際に、48ピンのそれぞれが印字位置に移動したときに稼働する。即ち、図16のBに示すように、印字データに応じた縦線の印字例206が得られる。
上位側印字ピン202及び下位側印字ピン204と印字例206とに付された番号は、印字の順番を示し、印字例206から上位側印字ピン202及び下位側印字ピン204の稼働ピンの関係を知ることができる。印字例206においても、上位側印字ピン202による印字ドット208を太枠、下位側印字ピン204による印字ドット210を細枠で示している。
この印字ヘッド200を用いた複写印字について、通常印字、印字ピンの押圧時間を長くした印字、重複印字等がある。
(1) 通常印字
通常印字で例えば、3枚複写の印字を行った場合には、図17のAに示すように、3枚の複写用紙212a、212b、212cの上にインクリボン214が重ねられ、このインクリボン214の上に印字ヘッド200の例えば、印字ピン202の先端が押し当てられる。印字ピン202の先端部が押し当てられたインクリボン214及び複写用紙212の部分には、印字ピン202の先端部により窪み216を生じる。この窪み216は、印字ピン202に接触するインクリボン214側が最も小さく、複写用紙212の重なり及び複写用紙212の厚さに応じ、下層方向に向かって拡大する。この結果、最上層の複写用紙212aの印字ドット径r3 (図17のB)に比較し、最下層の複写用紙212cの印字ドット径r4 (図17のC)が大きくなる。
このように、印字ドット径rが大きくなるが、複写用紙の重ね枚数が増加するに連れ、複写印字が不十分となり、かすれたり不鮮明になるという課題がある。このようなかすれや不鮮明な印字は、複写紙の複写枚数が多い場合、複写紙のインクの浸透性が悪い場合に顕著である。しかし、印字の鮮明化のため、使用する複写用紙を限定することは、使い勝手の悪化を招くことになる。
(2) 印字ピンの押圧時間を長くした印字
印字ピン202、204の押圧時間を長くした場合には、1枚目の複写用紙212aには、図18のAに示すように、印字218の周囲にインクリボン214のインクの染み220が生じ、この染み220で印字218のドット径r(=r5 )が大きくなる。更に3枚目の複写用紙212cには印字222の周囲に2枚目の複写用紙212bのカーボンの染み224を生じて印字222のドット径r(=r6 >r5 )が大きくなる(図18のB)。
また、印字ピン202、204の押圧時間を長く設定した場合には、1ピン当たりの印字に要する時間が長くなり、プリント時間が長大化する。
更に、押圧時間を長くすれば、印字濃度は濃くなるものの、通常印字に比べ印字が遅く、用紙の複写能力によっては複写用紙の2枚目、3枚目の印字が濃くなる効果が表れないことがある。これは、複写のインクの浸透性が低い場合、押圧時間が長くても濃度が濃くならない場合がある。
(3) 多重印字の場合
同一行を2度印字するため、通常印字に比較し、単純には印字速度が半分になる。また、印字ピンの押圧時間を長くすれば、印字速度は更に低下し、3倍程度の時間を要することになる。しかも、2度印字の場合、単純に同じ位置の印字では押圧時間を長くした場合とさほどの変化はない。
(4) その他の印字
印字位置を数ドットずらして印字する方法や、濃度を高くしたインクを用いてインクを滲ませる方法等があるが、(1) 〜(3) で述べた課題を解決することはできない。
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
(付記1) ヘッド移動方向の隣接位置に第1及び第2のピンを備える印字ヘッドと、
受信した原データからボールド化データを生成するデータ生成部と、
前記原データ及び前記ボールド化データに基づき前記第1のピンによる印字と、前記第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に前記第2のピンによる印字とを制御する印字制御部と、
を備えることを特徴とするプリンタ。
(付記2) 前記第2のピンによる印字位置は、前記第1のピンによる印字位置から、前記第1のピンと前記第2のピンとの間のピッチの間隔だけ変位していることを特徴とする付記1に記載のプリンタ。
(付記3) 前記第2のピンは、前記第1のピンによる印字から前記印字ヘッドを微動させた後、印字することを特徴とする付記1に記載のプリンタ。
(付記4) 前記データ生成部は、前記原データから所定ドット幅以下の印字部分を検出し、該印字部分に前記ボールド化データを生成させることを特徴とする付記1に記載のプリンタ。
(付記5) 前記データ生成部は、前記原データから所定ドット幅を超える印字部分を検出し、該印字部分に前記ボールド化データを生成させないことを特徴とする付記1に記載のプリンタ。
(付記6) 前記データ生成部は、ボールド化指示の有無を判定し、ボールド化指示を受けた場合に前記ボールド化データを生成することを特徴とする付記1に記載のプリンタ。
(付記7) プリンタに搭載されたコンピュータで実行する印字制御プログラムであって、
受信した原データからボールド化データを生成する機能と、
前記原データ及び前記ボールド化データに基づき第1のピンによる印字と、前記第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に第2のピンによる印字とを制御する機能と、
を前記コンピュータに実行させる印字制御プログラム。
(付記8) 更に、前記原データから所定ドット幅以下の印字部分を検出し、該印字部分に前記ボールド化データを生成させる機能と、
を含むことを特徴とする付記7に記載の印字制御プログラム。
(付記9) 更に、ボールド化指示の有無を判定し、ボールド化指示を受けた場合に前記ボールド化データを生成する機能と、
を含むことを特徴とする付記7に記載の印字制御プログラム。
(付記10) 受信した原データからボールド化データを生成するステップと、
前記原データ及び前記ボールド化データに基づき第1のピンによる印字と、前記第1のピンによる印字位置又は該印字位置の近傍位置に第2のピンによる印字とを制御するステップと、
を含むことを特徴とする印字制御方法。
(付記11) 更に、前記第2のピンを前記第1のピンによる印字から前記印字ヘッドを微動させた後、印字するステップと、
を含むことを特徴とする付記10に記載の印字制御方法。
(付記12) 更に、前記原データから所定ドット幅以下の印字部分を検出し、該印字部分に前記ボールド化データを生成させるステップと、
を含むことを特徴とする付記10に記載の印字制御方法。
(付記13) 更に、ボールド化指示の有無を判定し、ボールド化指示を受けた場合に前記ボールド化データを生成するステップと、
を含むことを特徴とする付記10に記載の印字制御方法。
以上説明したように、プリンタ、印字制御プログラム及び印字制御方法の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。