JP2007269019A - 結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶性熱可塑性樹脂の射出成形において、樹脂の結晶化速度を速めることによって目的とする耐熱性を得られる程度まで結晶化度を高めながら成形サイクルを短縮して生産性を向上させる射出成形法を提供する。
【解決手段】結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法であって、結晶核剤を0.1〜50重量%含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して二酸化炭素を0.2重量部以上溶解した溶融樹脂を、あらかじめ溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上にガスで加圧状態にしてある金型キャビティに充填し、その後、充填された溶融樹脂を加圧し冷却固化することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
【選択図】なし

Description

本発明は結晶性熱可塑性樹脂の射出成形において、樹脂の結晶化速度を速めることによって目的とする耐熱性を得られる程度まで結晶化度を高めながら成形サイクルを短縮して生産性を向上させる射出成形法に関する。
一般に、非晶性の熱可塑性樹脂の射出成形においては、金型内の樹脂をガラス転移温度以下に冷却するだけで目的とする成形品を得る事ができるが、結晶性の熱可塑性樹脂の射出成形においては、その樹脂の結晶化速度より速く樹脂を金型内で冷却した場合、得られる成形品は非晶質の成形品となり、その樹脂のガラス転移温度付近以下の耐熱性しか有しない。そこで、結晶性熱可塑性樹脂の射出成形において、得られる成形品の耐熱性を向上させるためには、金型内でその樹脂の結晶化速度より遅く冷却して、得られる成形品の結晶化度を目的とする耐熱性の得られる程度まで高めるように、より長時間金型内で保持する必要がある。そして、この様にして得られる成形品は目的の耐熱性を有する物が得られたとしても、金型内で成形品をより長時間保持する必要性があるために、成形サイクルの長い、生産性の低い成形品となってしまい、現実的には経済的に不利な成形品しか得られないことが多い。即ち、結晶性の熱可塑性樹脂の射出成形において、結晶化速度を上昇させて射出成形のサイクル時間を短縮して生産性を向上させながら且つ十分な耐熱性を付与できる程度まで結晶化度を高める方法が求められている。
また、近年、環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解される生分解性ポリマーが注目されている。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルや、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/アジピン酸の共重合体、生分解性を付与するために脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸などで変性されたテレフタル酸/エチレングリコールの共重合体のような脂肪族−芳香族共重合ポリエステル、微生物の体内で生産されるポリヒドロキシアルカノエート等のように、結晶性を有する熱可塑性のポリエステルが挙げられる。これらの熱可塑性のポリエステルの中でも、自然界に広く分布し、動植物や人畜に対して無害なポリ乳酸は、融点が140〜175℃であり十分な耐熱性を有するとともに、比較的安価な熱可塑性の生分解性樹脂として期待されている。
しかし、ポリ乳酸は結晶化速度が遅いために、ポリ乳酸のガラス転移温度である約60℃より低い温度の金型を用いて射出成形で成形した場合は、通常、非晶質の成形品となり、その結果、得られた成形品は60℃以上の温度では変形を起こし、耐熱性に劣るものとなる。
そこでポリ乳酸に耐熱性を付与する方法が多数報告されている。例えば、特許文献1には、乳酸系ポリマーに結晶核剤としてタルク、シリカ、乳酸カルシウムなどを添加して、射出成形、ブロー成形、圧縮成形などを行うことにより成形体を得る方法が提案されている。しかしこの方法では、熱処理を施していないために結晶化が不十分である上にポリマーの結晶化速度が遅いため生産性に劣るという問題がある。また、特許文献2には、結晶核剤としてポリグリコール酸およびその誘導体をポリL−ラクチドなどに加え、結晶化速度を上昇させることにより射出成形のサイクル時間を短縮するとともに、成形体の機械的特性を向上させる方法が提案されている。しかし、特許文献3には、前記の特許文献2に記載の方法によって射出成形により成形体を作製しようとしたが、成形条件によって成形体が得られなかった旨が記載されている。また、特許文献4には、結晶核剤および結晶化促進剤としてワックスを用い、成形体を結晶化温度で熱処理する方法あるいは結晶化温度に設定した金型内で一定時間保持する方法が開示されている。
しかし、結晶核剤として使用されるワックスは、一般にポリ乳酸との相容性が悪くブリードアウトしてくるため、少量しか添加できず、結晶核の形成には不十分である。さらに、特許文献5には、結晶核剤を使用せずに耐熱性を付与する方法として、未延伸シートを1.5〜5倍に延伸して結晶配向度と結晶化度を向上させる技術が開示されている。しかし、延伸シートを成形加工するとシートをさらに延伸することになり、一度延伸されたシートは延伸性に劣るため深絞り成形などには不向きとなって、必然的にその用途が限定されるという問題がある。また、特許文献6には、ポリ乳酸中のD体含有率と残留ラクチド量とを規制してポリ乳酸自体の結晶化(結晶化速度)を促進するとともに、適切な量の結晶核剤を添加することにより成形後のポリ乳酸の結晶化度を高めることで、耐熱性に優れた成形体が得られることを開示してあり、また、特許文献7では、融点が160℃以上またはD体含有量が2質量%以下のポリ乳酸を50質量部以上含有する生分解性ポリエステル系樹脂と、層間に1級ないし3級アミン塩、4級アンモニウム塩、またはホスホニウム塩を有する層状珪酸塩とを用いることにより、結晶化速度を速めて耐熱性の成形体を得る組成物が開示されているが、その結晶化促進効果はまだ不十分で、十分な耐熱性を有する射出成形品を短いサイクル時間で得ることは達成されていない。以上、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度を上昇させて射出成形のサイクル時間を短縮して且つ十分な耐熱性を付与する方法は未だに見出されていない。
一方、非特許文献1(J.Appl.Polym.Sci.,Vol.30,2633(1985))など、多くの文献に示されるように、二酸化炭素を樹脂に吸収させると、樹脂の可塑剤として働き、ガラス転移温度を低下させることが知られているが、樹脂の成形加工に広く応用されるに至ってはいない。わずかな応用事例として、特許文献8には、二酸化炭素や窒素などのガスを熱可塑性樹脂中に含ませ、キャビティ内のガスを除去しながら該樹脂をキャビティに充填することで、熱可塑性樹脂の流動性を向上させ、強度や外観低下のない成形品を得る方法が示されている。しかし、この方法では、ガスに二酸化炭素を使用した場合、最大でも約0.18重量%と樹脂中に含まれるガスの量が少なく、十分な流動性向上効果を得ることが難しく、また、キャビティを大気圧もしくは減圧とするため、樹脂充填行程中にフローフロントで生じる発泡により成形品表面に外観不良も生じやすい。また、特許文献9には、溶融したポリ乳酸と超臨界状態の二酸化炭素を接触させる事で耐熱性のポリ乳酸の成形品が得られる事が開示されているが、この特許文献9に開示された方法では、成形材料をガラス転移温度以下となるまで冷却する事が必要で、成形サイクルは長くなり、且つガラス転移温度以下へ冷却することによってポリ乳酸の結晶化は進まなくなり、よって、その結晶化促進効果はまだ不十分で、十分な耐熱性を有する射出成形品を短いサイクル時間で得ることは達成されていない。
発泡剤を含有する樹脂を用い、外観がきれいでヒケやソリの少ない厚肉発泡成形品を得る手法としては、特許文献10に示されるような、一般にカウンタプレッシャ成形法と呼ばれている成形法がある。これは発泡用のガスを含んだ溶融樹脂を圧縮空気を満たしたキャビティ中に射出し、ついでキャビティの圧縮空気を金型外に開放し、キャビティ内圧力を低く保って樹脂を冷却する成形法であり、樹脂充填時のフローフロントでの発泡を抑制することで成形品の表面には発泡模様がなく、内部のみ発泡した成形品を作る技術である。カウンタプレッシャ成形法は、溶融樹脂を非発泡状態でキャビティにほぼ満たした後、樹脂充填時に固化した成形品表層よりも内側の溶融樹脂が冷却され、冷却に伴う体積収縮分が発泡するものである。このため、樹脂に発泡性を持たせる目的で樹脂中に含ませるガスの量は体積収縮を発泡でおぎなえる最低限とするのが基本的な考え方といえる。一般には樹脂中のガス量も通常、窒素で0.1重量%未満、二酸化炭素で0.15重量%未満であり、特許文献10の実施例では樹脂中の窒素ガス量は0.01〜0.15重量%程度と推定され、流動性を向上させることができるものではない。
そこで、特許文献11では、熱可塑性樹脂の射出成形法において、樹脂の物性、成形品の表面外観や生産性を損なうことなく、溶融樹脂の粘度を低減して成形を容易にする方法として、特定量の二酸化炭素を溶融樹脂に溶解させておくと、成形中のみ二酸化炭素が可塑剤として機能し、成形後成形品は変形せずに二酸化炭素が大気中に放散するため、樹脂性能を変えることなく溶融樹脂の粘度を低減し、成形を容易にできることを開示しているが、結晶性の熱可塑性樹脂において十分な耐熱性を有する射出成形品を短いサイクル時間で得ることについては一切開示されていない。
特開平8−193165号公報 特開平4−220456号公報 特開平8−193165号公報 特開平11−106628号公報 特開平9−25345号公報 特開2003−253009号公報 特開2003−261756号公報 特開平5−318541号公報 特開2003−236944号公報 特公昭62−16166号公報 国際公開第98/52734号公報 J.Appl.Polym.Sci.,Vol.30,2633(1985)
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂の射出成形において、耐熱性に優れた成形品を短い射出成形サイクルで生産性良く成形可能な結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法を提供するものである。
上記課題解決のため、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、特定量の結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂の射出成形において、特定量の二酸化炭素を溶解し溶融粘度を低下させた溶融樹脂を、あらかじめ金型キャビティを溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上にガスで加圧状態にした後、該金型キャビティに溶融樹脂を充填することにより、結晶化速度を速めて射出成形のサイクル時間を短縮して且つ十分な耐熱性を有する射出成形品が得られる射出成形の方法を見い出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の通りである。
1.結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法であって、結晶核剤を0.1〜50重量%含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して二酸化炭素を0.2重量部以上溶解した溶融樹脂を、あらかじめ溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上にガスで加圧状態にしてある金型キャビティに充填し、その後、充填された溶融樹脂を加圧し冷却固化することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
2.結晶核剤が無機系核剤であることを特徴とする1に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
3.結晶核剤が有機化層状ケイ酸塩であることを特徴とする2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
4.結晶核剤がタルクであることを特徴とする2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
5.結晶核剤が有機化層状珪酸塩とタルクの混合物であることを特徴とする2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
6.結晶性熱可塑性樹脂が生分解性熱可塑性樹脂であることを特徴とする1〜5のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
7.前記生分解性熱可塑性樹脂が生分解性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする6に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
8.前記生分解性ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂、変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする7に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
9.前記生分解性ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする7に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法
10.生分解性熱可塑性樹脂が、その末端基を封鎖する添加剤を含有することを特徴とする6〜9のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
11.生分解性熱可塑性樹脂が、非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする6〜10のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
12.溶融樹脂に溶解する二酸化炭素量が、結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して0.2重量部以上、5重量部以下である1〜11にいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
13.金型キャビティを加圧するガスが二酸化炭素で、その圧力が、大気圧を越え15MPa以下である1〜12のいずれかに記載の熱可塑性樹脂の射出成形法。
従来の方法では、目標の耐熱性を得るために溶融樹脂を金型キャビティ内へ射出した後で金型内で長い時間保持して結晶化度を高める必要があり、成形サイクルが長くて生産性の低かった結晶性熱可塑性樹脂でも、本発明の射出成形法を用いれば驚くべきほど結晶化速度を速められるので、従来法を用いた場合より短い時間で目標とする結晶化度の射出成形品を得る事ができ、目標とする耐熱性を有する成形品を短い成形サイクルで生産できるので、結晶性熱可塑性樹脂に耐熱性を付与して且つ生産性も向上させる効果がある。
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、具体的に説明する。
本発明では、結晶性熱可塑性樹脂が結晶核剤を含むことが必要である。結晶性熱可塑性樹脂に結晶核剤を混合する方法については特に限定はなく、公知の熱可塑性樹脂混練技術を用いることができる。すなわち、結晶性熱可塑性樹脂、種々の結晶核剤、例えば有機化層状ケイ酸塩とタルクを溶融混練することによって調製することができる。中でも混錬時に効率的にせん断応力をかけることで分散性を高められる二軸押出機による混錬方法が好適に用いられる。また、結晶化速度向上を補助するために添加する非イオン性界面活性剤、及び耐衝撃性を向上させるために添加する耐衝撃性向上剤、カルボキシル基末端封鎖剤の添加方法も、同様に二軸押出機に投入して溶融混練することで製造することができる。
本発明で用いられる結晶核剤は、無機系結晶核剤、有機系結晶核剤など特に限定されるものではない。固体状粒子物質であれば、樹脂組成物の結晶化を促進させる効果を有し結晶核剤として使用できる。結晶核剤には、無機系結晶核剤と有機系結晶核剤があり、無機系結晶核剤としてはタルク、珪藻土、焼成バーライト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、シリカ、クレー、ガラス、石灰石、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸第二鉄等が挙げられ、有機系結晶核剤としては木粉、澱粉、セルロース、セルロース誘導体、ポリ乳酸ステレオコンプレックスの例の様な光学活性を有するポリマーが形成する結晶体、主成分として用いる結晶性樹脂より高融点の別の樹脂結晶体等があげられる。
この中で結晶化速度を向上させる効果が大きい有機化層状ケイ酸塩、及びタルクが好ましく、より好ましくは有機化層状ケイ酸塩とタルクの混合物である。これらの好ましい結晶核剤を含有する結晶性熱可塑性樹脂は、目標とする耐熱性を有する成形品を短い成形サイクルで生産しやすくなる。以下にこれらの結晶核剤について更に詳細に説明する。
本発明における有機化層状ケイ酸塩とは、クレーの一種である層状ケイ酸塩の層間に存在する陽イオンを有機オニウム塩と交換処理することによって層状ケイ酸塩を有機化したものである。
層状ケイ酸塩としては、ピロフィライト、スメクタイト、バーミキュライト、マイカなどの粘土鉱物、Na型テニオライト、Li型テニオライトなどが挙げられる。また、上記の他に、カネマイト、マカタイト、マガディアイト、ケニアイトなどのアルミニウムやマグネシウムを含まない層状ケイ酸塩を使用することもできる。これらは天然に存在するものを精製したものであっても、水熱法など公知の方法で合成したものであってもよい。本発明において用いられる層状ケイ酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、バイデライト、サポナイト、合成フッ素化マイカなどが挙げられる。例えば、モンモリロナイトの例としては、SouthernClay社製、商品名、CloisiteNa、クニミネ工業社製、商品名、クニピアRGなどが、合成フッ素化マイカの例としてはコープケミカル社製、商品名、ソマシフME100などが挙げられる。有機オニウム塩とは、有機物成分とルイス塩基が配位結合をつくることによって生成された塩を指し、4級アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、有機スルホニウム塩等がこれに相当する。また、酸性の極性溶媒に溶解させた際に陽イオン性を呈する有機アミン化合物や、両性イオン化合物などもこれに相当するが、下記式(1)に示すような4級アンモニウム塩、又は陽イオン化した有機アミン化合物が好適に用いられる。
Figure 2007269019
式中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ、水素、又はメチル、エチル、ラウリル、セチル、オレイル、イソステアリル、ステアリル等に代表される飽和若しくは不飽和炭化水素である。該炭化水素は直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、エポキシ化されていてもよい。また炭化水素鎖は、牛脂やヤシ油に代表されるような天然物から誘導したものであってもよい。またシクロアルカンや芳香環、エステル構造を有していてもよく、ベタイン類のようにカルボン酸を有していてもよい。また、R1〜R4の炭化水素鎖のうち少なくとも一つは、10以上の炭素数を有することが好ましい。最長の炭化水素鎖を構成する炭素数が10未満である場合、有機化層状ケイ酸塩と結晶性熱可塑性樹脂との親和性が不十分であり、十分な核剤効果が得られない場合がある。Xは陰イオンを示し、特に限定されないが、主に塩化物イオンや臭化物イオンなどのハロゲン化物イオンが該当する。
好ましい有機化層状ケイ酸塩の構造は、用いる熱可塑性結晶性樹脂の種類によって異なるが、結晶性熱可塑性樹脂が後述するポリ乳酸系樹脂の場合は、有機化層状ケイ酸塩が水酸基を含んでいることが好ましい。水酸基はヒドロキシアルキレン基、ポリオキシアルキレン基等の形で存在してもよい。本発明における有機オニウム塩中の水酸基の位置は特に限定はないが、有機オニウム塩としてアンモニウム塩、アミンなどを用いる場合は窒素原子近傍に水酸基が結合したものが好適に用いられる。これらの例としては硬化タロウジエタノールアミンやドデシルジエタノールアミン、メチルオクタデシルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、メチルドデシルジヒドロキシプロピルアンモニウムクロリドが挙げられる。またポリオキシアルキレン基を含んだ有機アンモニウム化合物の例としては、ポリオキシエチレンオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、メチルジポリオキシプロピレンオクタデシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらポリオキシアルキレン基の付加モル数については任意のものを使用することができる。
有機化層状ケイ酸塩の具体例として、SouthernClay社製、商品名、Cloisite15A、Cloisite20A、Cloisite25A、コープケミカル社製、商品名、ソマシフMAE、MTEなどが挙げられる。また、水酸基を含有する有機化層状ケイ酸塩の具体例としては、SouthernClay社製、商品名、Cloisite30B、コープケミカル社製、商品名、ソマシフMEE、ソマシフMPEなどが挙げられる。
これらの水酸基を含む有機化層状ケイ酸塩を含有する熱可塑性結晶性樹脂は、より高い核剤効果により、短い成形サイクルで高い耐熱性を示す射出成型品を製造できる。また、これらの有機化層状ケイ酸塩が高分散することにより、成型体の剛性が向上するという効果もある。
本発明におけるタルクの平均粒子径は特に限定は無いが、0.1〜15μmの範囲が好ましい。その平均粒径は小さいほど好ましい。好ましくは15μm以下で、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは2μm以下である。粒子径が15μm以下のタルクの例として、富士タルク工業社制のLMP100(商品名)、LMP200(商品名)、松村産業社製のHiFiller5000PJ(商品名)などがあり、中でもHiFiller5000PJは粒子径が小さく本発明における結晶性熱可塑性樹脂の結晶化速度を高める効果が強い。また、このようなタルクは、樹脂との接着性を向上させるために表面処理を施していてもよい。このようなタルクは、市販されており、日本タルク株式会社、富士タルク工業株式会社等から販売されている。
本発明における結晶核剤としては、前記有機化層状ケイ酸塩とタルクの混合物が最も好ましい。これらの混合物系の結晶核剤は単独で用いる場合に比べて核剤効果が高く、結晶化速度を速めてより短い時間で目標とする結晶化度の射出成形品を得ることができる。これらの有機化層状ケイ酸塩の混合比に特に限定は無いが、有機化層状ケイ酸塩100重量部に対して、タルクが20重量部〜500重量部が好ましい。
本発明で用いられる結晶核剤の含有量は射出成形に用いられる結晶性熱可塑性樹脂と結晶核剤の合計100重量%に対して、0.1〜50重量%であることが必要である。結晶核剤が0.1重量%未満では結晶化速度向上の効果が小さくなり、50重量%を超えると結晶核剤の樹脂への分散性が低下する傾向にあり、また、射出成形時の成形加工性、得られた成形品の機械的物性が低下する傾向にある。好ましくは結晶性熱可塑性樹脂と結晶核剤の合計100重量%に対して、結晶核剤の含有量が0.5〜30重量%の範囲であり、より好ましくは1〜20重量%の範囲であり、特に好ましくは2〜10重量%の範囲である。
本発明の成形法で使用される結晶性熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、シンジオタクチック−ポリスチレン、アイソタクチック−ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイドなどの結晶性の熱可塑性のプラスチック材料、生分解性を有する結晶性熱可塑性樹脂であるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンなどの脂肪族ポリエステル、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/アジピン酸の共重合体、或いは後述するような生分解性熱可塑性樹脂などである。また、これらを一種または二種以上混合したブレンド物、これらに各種充填材を配合した物、およびこれらの結晶性熱可塑性樹脂で、一度成形されたものを再度回収して、粉砕、ペレット化して得られたリサイクル原料も含めたものも好ましく用いることができる。
好ましくは、二酸化炭素との親和性が高く、二酸化炭素の溶解度が高い熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、脂肪族ポリエステル、脂肪族芳香族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチック−ポリスチレンなどであり、更に好ましくは、近年のプラスチック廃棄物処理問題の観点から、リサイクルされたポリエチレンテレフタレート、および生分解性熱可塑性樹脂などが用いられる。
本発明における生分解性熱可塑性樹脂とは、JIS K6950(2000)又はJIS K6951(2000)又はJIS K6953(2000)又はOECD 301C又はISO 17556の少なくともどれか1つに準拠して測定した生分解度が各試験法記載期間内で60%(理論値)以上である熱可塑性樹脂である。具体的には、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトンポリグリコール酸、ポリ(グリコール酸/乳酸)共重合体、テレフタル酸/1,4−ブタンジオール/アジピン酸の共重合体などの生分解性ポリエステル樹脂、あるいは、生分解性を付与するために脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸などで変性されたテレフタル酸/エチレングリコールの共重合体のような変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂、微生物によって生産されるポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレートヴァレート、ポリヒドロキシブチレートと他のβヒドロキシ酪酸類との共重合体、ポリβヒドロキシ酪酸共重合体類などのポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系樹脂、ポリビニルアルコール、天然物利用系の化学修飾澱粉、酢酸セルロース、澱粉/化学合成系生分解性ポリマーブレンド物、およびこれらの複数のブレンド物などの例が挙げられる。
これらの中で好ましくは、生分解性ポリエステル樹脂、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート樹脂(PHA)などが用いられる。特に好ましくは、植物由来の原料から生産されるポリ乳酸系樹脂で、結晶化速度が遅いために従来の射出成形法では耐熱性を有する成形品を得るためには長い成形サイクルを要して生産性が悪いため経済的に不利な樹脂であり、本発明の効果が特に顕著である。
ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸単独重合体、乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体、またはそれらの混合物であって、ポリ乳酸単独重合体、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体、またはそれらの混合物である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、得られる射出成形品の剛性が低下する傾向にあり、また、結晶化速度が遅くなる傾向にあり、得られる射出成形品の耐熱性が低下する傾向にある。結晶化速度が速くなり、得られる射出成形品の耐熱性がより向上するという点から、好ましくはポリ乳酸単独重合体、乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれらの混合物であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸単独重合体であり、より更に好ましくはD体の含有量が5%以下、L体の含有量が95%以上のポリ乳酸単独重合体、またはL体の含有量が5%以下、D体の含有量が95%以上のポリ乳酸単独重合体であり、特に好ましくはD体の含有量が2%以下、L体の含有量が98%以上のポリ乳酸単独重合体、またはL体の含有量が2%以下、D体の含有量が98%以上のポリ乳酸単独重合体である。
ポリ乳酸系樹脂の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000未満では得られる射出成形品の機械的物性が不十分となる傾向があり、1000000を超えると溶融粘度が高くなり、物性の安定した射出成形品は得られ難い傾向にある。
成型体の耐化学薬品性、耐衝撃性を向上させるために、一般的に樹脂の分子量を高くすることが考えられるが、分子量を高くするとその成形時の流動性、結晶化速度が遅くなり、成型性が損なわれたり、得られる成形品の耐熱性が低下する傾向がある。本発明の成型法は、成型時の樹脂粘度を下げることができるので、押出成形に使用されるような高分子量の樹脂を良好に使用できる。また、成形品の耐衝撃性を向上させるためにゴム系のポリマーをブレンドして強化した場合にも、流動性を低下させず、また、結晶化速度を低下させず成形サイクルを長くせずに射出成形サイクルと得られる成形品の耐熱性の両立を可能にできる。
更に、結晶性熱可塑性樹脂としてポリ乳酸に代表される生分解性ポリエステル樹脂を用いる場合、得られる射出成型品の耐久性を向上させる観点、及び溶融成型時の加水分解、エステル交換反応等を抑制する観点から、末端封鎖剤を添加することが好ましい。この末端封鎖剤を添加した場合、上述のゴム系材料添加の際と同様に、射出成型時の溶融樹脂の流動性が著しく低くなり、射出成型性が著しく悪くなるのが一般的である。しかし、本発明の射出成型法を用いることで、耐久性と射出成型時の流動性を両立することができる。
本発明で使用する末端封鎖剤としては、本発明におけるポリ乳酸系樹脂などの末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に限定されるものではない。本発明においてかかる末端封鎖剤は、脂肪族ポリエステル樹脂の末端を封鎖するだけでなく、脂肪族ポリエステルなどの有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、上記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。
このようなカルボキシル基末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、イソチオシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物及び/又はカルボジイミド化合物、イソシアネート化合物が好ましい。
カルボキシル基末端封鎖剤として用いることのできるエポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。その他のエポキシ化合物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。具体的なエポキシ系末端封鎖剤の例としては東亜合成社製のARFON(商品名)、日本油脂社製のブレンマーCP50S(BLCPS)(商品名)、ナガセ化成社製デナコールEX−711(商品名)などが挙げられる。
カルボキシル基末端封鎖剤として用いることのできるオキサゾリン系末端封鎖剤の例としては日本触媒社製のエポクロスRPS1005(商品名)、武田薬品社製2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。
本発明で末端封鎖剤として使用することのできるカルボジイミド化合物とは、分子内に少なくとも一つの、(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を有する化合物であり、例えば適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。カルボジイミド系末端封鎖剤の例としては日清紡社製のカルボジライトLA1、HMV−8CA(商品名)などが挙げられる。
上記末端封鎖剤は1種又は2種以上の化合物を任意に選択して使用することができるが、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物を含む組み合わせが好ましく用いられる。本発明における末端封鎖剤は、用途に応じて適量、生分解性ポリエステル樹脂に添加すればよいが、おおよそ生分解性ポリエステル樹脂を100重量部としたときに、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜5重量部がさらに好ましく、0.1〜3重量部が特に好ましい。添加法としては、生分解性ポリエステル樹脂と共に二軸押し出し機で混練することが好ましい。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂として生分解性ポリエステル系樹脂を用いる場合
、非イオン性界面活性剤を添加することが好ましい。非イオン性界面活性剤は、射出成型時の生分解性ポリエステル系樹脂、特にポリ乳酸系樹脂の可塑化効果、ひいては本発明の射出成型法の特徴である結晶化速度向上効果を補助する働きがある。
本発明における非イオン性界面活性剤とは、親水部と疎水部とから構成される。疎水部の構造としては、ラウリル基、セチル基、オレイル基、イソステアリル基、ステアリル基等に代表される飽和又は不飽和炭化水素基が挙げられ、該炭化水素は直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、エポキシ化されていてもよい。また、牛脂やヤシ油に代表されるような天然物から精製した脂肪酸から誘導したものであってもよい。また構造中にロジンやラノリンのようなシクロアルカン構造や、ベンゼンやフェノール類などの芳香族構造、又はアクリレートやメタクリレートなどのエステル構造を有していてもよい。またベタイン類のようにカルボン酸を有していてもよい。
親水部の構造としては、ヒドロキシアルキレン、ポリオキシアルキレン、カルボキシル、エステル、アミン構造のうちいずれかを有していることが好ましい。より好ましくはヒドロキシアルキレン、ポリオキシアルキレン構造である。
このような条件を満たす非イオン性界面活性剤の例として、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル、ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリコール、モノ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ステアリルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン等が挙げられる。このような範囲の構造を有する非イオン性界面活性剤の具体例として、日本エマルジョン社製、商品名、エマレックス602、エマレックス703、エマレックス805、エマレックス1605、エマレックス600di−S、エマレックスET−8020などのエマレックスシリーズが挙げられる。
これらの非イオン性界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリコール、モノ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリルが本発明における生分解性ポリエステル系樹脂の結晶化速度を向上させる効果が高い。
これらの中でポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリコールが更に好ましい。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリコールについて更に詳しく説明する。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの中でも、アルキル基の炭素鎖長が12〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく、炭素鎖長が18のポリオキシエチレンステアリルエーテルが更に好ましい。これらの例として、日本エマルジョン社製、商品名、エマレックス602、エマレックス610、エマレックス620、エマレックス630、エマレックス640などが挙げられる。親水部については特に限定はないが、ポリオキシエチレンの付加モル数は2以上が好ましく、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは20程度である。これらの界面活性剤の例としては、エマレックス620、エマレックス610、エマレックス602などが挙げられる。
ジ脂肪酸ポリオキシエチレングリコールについては、脂肪酸の炭素鎖長は12〜18のものが好ましく、特に炭素数が18であるジステアリン酸ポリオキシエチレングリコールが好ましい。このジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリコールを含有する脂肪族ポリエステル樹脂組成物から得られる成型品は、耐熱性に優れるだけでなく耐衝撃性にも優れるという特徴がある。これらの例として、日本エマルジョン社製、商品名、エマレックス600di−Sなどが挙げられる。
また、本発明における結晶性熱可塑性樹脂には、所望により当該技術分野において用いられる公知の添加剤、すなわち可塑剤、熱安定化剤、酸化防止剤、難燃剤、離型剤、更に下記のような有機充填剤(籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維、及び絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維、紙粉、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉など)を添加することができる。
また、本発明における結晶性熱可塑性樹脂には、当該分野において用いられる耐衝撃性向上剤を添加することで、得られる成型体の衝撃強度を向上させることができる。例えば下記の各種耐衝撃改良剤などから選ばれる少なくとも1種のものを用いることができる。
すなわち、ポリエチレン、ポリプロプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、各種アクリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(たとえば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ジエンゴム(たとえばポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(たとえばスチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合せしめたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエン又はイソプレンとの共重合体、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、ポリウレタンゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどが挙げられる。
特に結晶性熱可塑性樹脂として前記生分解性ポリエステル樹脂を用いる場合は、エラストマーをマレイン酸変性したもの、又はアミン変性したもの等を好ましく用いることができる。これらのエラストマーの例として、旭化成ケミカルズ社の水添スチレン系熱可塑性エラストマー「タフテックM1911」(商品名)、「タフテックM1913」(商品名)、「タフテックM1943」(商品名)、又は、同じく旭化成ケミカルズ社製の末端アミン変性エラストマーである「TDM19」(商品名)などが挙げられる。
本発明において、結晶性熱可塑性樹脂に配合して用いられる二酸化炭素は、溶融樹脂すなわち溶融状態の結晶性熱可塑性樹脂に対する溶解度が大きく、樹脂や金型、成形機素材を劣化させないこと、成形する環境に対し危険性がないこと、安価であること、また成形後に成形品から速やかに揮発することなどの制約を満たす物であれば良く、場合によっては炭素数1〜5の飽和炭化水素およびその一部水素をフッ素で置換したフロン、水、アルコールなどの液体と併用でき、これらの2種以上の混合物であっても併用できる。好ましくは二酸化炭素の含有量が60重量%以上の二酸化炭素混合物を用いる場合であり、より好ましくは二酸化炭素の含有量が80重量%以上の二酸化炭素混合物を用いる場合であり、特に好ましくは二酸化炭素の含有量が99重量%以上の二酸化炭素を用いる場合である。
二酸化炭素は結晶性熱可塑性樹脂に良く溶解して良好な可塑剤になって結晶性熱可塑性樹脂の流動性を向上させる。金型キャビティに射出する溶融樹脂中の二酸化炭素量を直接測定することは難しいため、本発明では、二酸化炭素を含む樹脂を用いて射出成形した成形直後における成形品の重量と、成形品を融点よりも約30℃低い熱風乾燥機中に24時間以上放置し、成形品中に含まれていた二酸化炭素量が放散して一定になった成形品の重量の差を、金型キャビティに射出する溶融樹脂中の二酸化炭素量とした。なお、この測定法で後述のカウンタプレッシャ成形を使用しても、得られる二酸化炭素量は、カウンタプレッシャ成形をしないときとほぼ同じであり、差は無視できる。
ここでいうカウンタプレッシャ成形とは、樹脂充填工程中に溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上に金型キャビティをガスで加圧状態にして、樹脂を金型キャビティに射出する成形方法全体をさし、樹脂を高い圧力下で冷却固化する通常の保圧方法が併用される。保圧方法としてはキャビティに溶融樹脂を補充する樹脂保圧、樹脂中や樹脂金型界面にガスなどの圧力流体を注入する方法、キャビティ体積を減少させる射出圧縮法などがあげられる。
本発明で溶融状態の熱可塑性樹脂に溶解させる二酸化炭素量は、結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.2重量部以上である。流動性を顕著に向上させるには0.2重量部以上が必要であり、好ましくは0.3重量部以上である。また、二酸化炭素の溶解量の最大量は樹脂の種類にも依存するが、3〜5重量部程度である。これは、二酸化炭素をむやみに増やしても二酸化炭素量に対する樹脂の流動性向上効果が少なくなることや、二酸化炭素の気化により樹脂が発泡しやすくなり、カウンタプレッシャ成形法により成形品表面の発泡模様発生を防止するとしても、必要な金型内のガス圧力(カウンタ圧力)が著しく高くなるためであり、好ましい二酸化炭素溶解量は5重量部以下で、より好ましくは3重量部以下である。
また、発泡を目的としたカウンタプレッシャ成形においては、二酸化炭素を発泡ガスに使う場合、重炭酸ナトリウム、クエン酸などの化学発泡剤を樹脂とともに可塑化し、発泡剤が熱分解して生じた二酸化炭素を溶融樹脂中に溶解させることがある。しかし、溶融粘度を低下させる目的で化学発泡剤を使用することは、可塑剤効果が二酸化炭素よりも少なく、樹脂から放散しにくい水の生成を伴うこと、粉末状の発泡剤分解物が樹脂中に残り、樹脂物性や成形品表面の平滑性を低下させること、発生するガス量に対し化学発泡剤が高価であることから、実用的とはいえない。
結晶性熱可塑性樹脂に二酸化炭素を溶解させる方法として、次の二つの方法が好ましい。一つは、あらかじめ粒状や粉状の結晶性熱可塑性樹脂を二酸化炭素雰囲気中に置き二酸化炭素を吸収させて、成形機に供給する方法で、二酸化炭素の圧力や雰囲気温度、吸収させる時間により吸収量が決まる。この方法では、可塑化時に樹脂が加熱されるに従って樹脂中の二酸化炭素の一部が揮散するため、溶融樹脂中の二酸化炭素量はあらかじめ吸収させた量よりも少なくなる。このため、成形機のホッパなど樹脂の供給経路も二酸化炭素雰囲気にすることが望ましい。他の方法は、成形機のシリンダ内で樹脂を可塑化するとき、または可塑化した樹脂に二酸化炭素を溶解させる方法で、成形機のホッパ付近を二酸化炭素雰囲気にしたり、スクリュの中間部や先端、シリンダから可塑化樹脂に二酸化炭素を注入する。スクリュやシリンダの中間部から二酸化炭素を注入する場合には、注入部付近のスクリュ溝の深さを深くして、樹脂圧力を低くすることが好ましい。また、二酸化炭素を注入後、樹脂中に均一に溶解、分散させるため、スクリュにダルメージの混練ピンなどのミキシング機構を付けたり、樹脂流路にスタティックミキサを設けることが好ましい。射出成形機としては、インラインスクリュ方式でもスクリュプリプラ方式でも使用できるが、スクリュプリプラ方式は、樹脂を可塑化する押出し機部分のスクリュデザインや二酸化炭素の注入位置の変更が容易であることから、特に好ましい。
結晶性熱可塑性樹脂中の二酸化炭素は、熱可塑性樹脂が固化した後に成形品を大気中に放置すれば徐々に大気中に放散する。放散により成形品に気泡を生じることはなく、放散後の成形品の性能は本来熱可塑性樹脂が有するものと変わらない。
本発明ではあらかじめ金型キャビティを、樹脂充填中に溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上にガスで加圧状態にして、射出成形する。キャビティに封入するガス圧力は、成形品表面の発泡模様が消える最低圧力であれば良く、一工程に使用するガスの量を最小限に押さえ、金型キャビティのシールやガス供給装置の構造を簡単にするためにもガス圧力は低い方が好ましい。ガス圧力が15MPaを越えると金型を開こうとする力が無視できなくなったり、金型キャビティのシールが難しくなるなどの問題が生じやすい。したがって、金型キャビティを加圧するガスの圧力は、大気圧を越え15MPa以下であることが好ましい。
金型キャビティに圧入するガスとしては、空気や窒素をはじめとして、樹脂に対して不活性な各種ガスの単体あるいは混合物が使用できるが、結晶性熱可塑性樹脂への溶解度が高く、金型表面状態の成形品への転写性を向上させる効果が高い二酸化炭素が好ましく用いられる。キャビティを二酸化炭素で加圧する場合、特開平10−128783号公報、特開平11−245256号公報に開示してあるように、キャビティ内ガス圧力を高めた方が、良好な転写性が得られるため、高度な転写性が要求される場合には、成形機の型締め力や金型のシール性能に応じ、可能な限りガス圧力を高めることが望ましい。金型キャビティ内のガスとして二酸化炭素と他のガスの混合ガスを用いる場合の二酸化炭素含有量は高い方が好ましく、80容量%以上が特に好ましい。ガスは各種温度のガスが使用できる。大気温度のガスは勿論、加熱ガスも良好に使用できる。加熱ガスの場合、二酸化炭素を溶解し易い液体の気化物と二酸化炭素の混合ガスは良好に使用できる。
本発明では結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、二酸化炭素を0.2重量部以上溶解した第1の結晶性熱可塑性樹脂と、第2の熱可塑性樹脂を逐次または同時に金型キャビティに射出する成形法も良好に使用できる。二酸化炭素を0.2重量部以上溶解した第1の結晶性熱可塑性樹脂を射出し、次いで二酸化炭素を含有しない第2の熱可塑性樹脂を射出して金型キャビティを満たす射出成形法も使用できる。第2の熱可塑性樹脂は、第1の結晶性熱可塑性樹脂と、同種の結晶性の熱可塑性樹脂で二酸化炭素含量が異なる場合、分子量が異なる場合、また別種の熱可塑性樹脂である場合、更に二酸化炭素含量が異なる場合などであり、この組み合わせは適宜選択できる。第1の結晶性熱可塑性樹脂に二酸化炭素を配合することで溶融粘度を低下させ、第1の結晶性熱可塑性樹脂の耐熱性の向上した均一な表層と、第2の熱可塑性樹脂の内核からなる複合射出成形品を得ることもできる。第1の結晶性熱可塑性樹脂に耐熱性、耐化学薬品性、難燃性、物理的性質などに優れた熱可塑性樹脂およびその組成物を使用することで、表層を第1の結晶性熱可塑性樹脂で被覆し、各種性能を向上させることもできる。
結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、二酸化炭素を0.2重量部以上結晶性熱可塑性樹脂に配合して第1の結晶性熱可塑性樹脂の流動性を良くすることにより、成形品のポリマー鎖の配向を低減することができる。すなわち射出成形では熱可塑性樹脂は金型キャビティ内を一般にファウンテンフローと呼ばれる流動をする。射出された熱可塑性樹脂は冷却された金型壁面に接触するとその界面に固化層が形成され、後から射出される熱可塑性樹脂はその固化層の内側を流動して前進する。固化層と流動する内層の界面部が最も剪断速度が大きくなり、この剪断速度が大きい界面部のポリマー鎖の配向が最も大きくなる。二酸化炭素を配合することにより第1の結晶性熱可塑性樹脂の流動性を良くすると、この界面部の配向を低減することができる。この結果、成形品全体でもポリマー鎖の配向を低減でき、成形品の複屈折率の低減、耐衝撃強度の向上などの改良ができる。
本発明で良好に成形される成形品は、光学機器部品、弱電機器、電子機器、事務機器などのハウジング、各種自動車部品、各種日用品、などの熱可塑性樹脂射出成形品である。特に好ましくは、ポリ乳酸系樹脂に代表される生分解性の熱可塑性樹脂を用いて射出成形され、従来の成形方法であれば、結晶化速度が遅いために成形サイクルを短くすると耐熱性の低い成形品しか得られず、耐熱性を上げるためには成形サイクルが長くなって経済性の低い成形品となってしまう様な電子機器、電気機器、事務機器のハウジングなどであり、艶消し状やパターン状のシボ成形品にも良好に使用できる。ハンディパソコンの薄肉筐体などの用途では、耐熱性の向上に加えて、成形が容易になり、成形品の品質が向上したり、製品デザインの自由度が増したりすることが期待できる。本発明で成形されるこれらの成形品は耐熱性が向上して且つ成形サイクルも従来法より短く出来ると同時に、型表面の再現性が良くなり、光沢度が向上し、ウエルドラインの目立ちが少なくなり、型表面のシャープエッジの再現性や、微細な型表面の凹凸の再現性も良くなる。
また上述の通り、本発明では、高分子量で樹脂物性は優れるものの結晶化速度が遅くて、結晶性樹脂でありながら非晶性の成形品しか得られなかった樹脂や、耐衝撃性を改良するためにゴム成分を加えたために結晶化速度が遅くなった樹脂や、難燃剤を添加することで結晶化速度が遅くなった樹脂などの成形が容易となる。
以下に実施例、比較例を用いて本発明の効果をさらに具体的に説明する。
<樹脂>
射出成形に使用した樹脂は、NatureWorks社のポリ乳酸 4032D(商品名)を用いた。成形前はペレット状である。
<結晶核剤>
結晶核剤としては表1に示したような結晶核剤を表2及び表3に示すような混合比で使用した。
<ガス>
ガスとしては純度99%以上の二酸化炭素を使用した。
<成形機>
成形機には、可塑化部と射出プランジャ部が分離したソディックプラステック製TR50(商品名)を使用した。スクリュは直径25mm、L/D30の2ステージタイプで、第2フィード部に二酸化炭素の供給口を設けた。射出プランジャの直径は28mmである。
<金型>
金型は、成形品がタンザク形状ものを用いた。タンザク金型の製品部は縦横各100mm、10mm、厚み4mmで、ゲートの幅5mm、厚み2mmでランド長さ4mmであり、ランナ断面が直径5mmの円形、ランナ長さが140mm、スプル平均直径4.3mm長さ55mmで、ノズルタッチ部の直径が3.5mmである。金型は通常のカウンタプレッシャのキャビティ、スプル、ランナの外周をOリングでシールして、キャビティを気密構造とした。
<カウンタプレッシャ用ガス供給装置>
カウンタプレッシャ用ガス供給装置は特開平10−128783号公報に記載の装置を用いた。すなわち、液化二酸化炭素を充填したボンベを40℃で保温しガス供給源として用いた。ガスはボンベより加温器を通り、減圧弁にて所定圧力に調圧された後、約40℃に保温された内容量100cm3のガス溜に溜められる。金型キャビティへのガス供給は、ガス溜の下流にある供給用電磁弁を開け、同時に解放用電磁弁を閉じることで行われ、樹脂充填中はガス溜とキャビティはつながっている。樹脂充填が終了すると同時に、供給用電磁弁を閉じ、解放用電磁弁を開けることでガスを金型外に解放する。
<射出成形性及び成型品の性能評価方法>
以下の方法で射出成型性及び成形品の性能評価を実施した。
(1)離型性の評価:下記の指標に基いて行った。
◎:全く変形せず射出成型機から取り出すことができる。
○:殆ど変形せず射出成型機から取り出すことができる。
△:少し変形する。
×:大きく変形し、炭酸ガスによる発泡が認められる。
(2)熱変形温度(HDT):ASTMD−648規格に従い熱変形温度を測定した。尚、試験片に与える曲げ応力は0.45MPaの条件で測定した。
(3)二酸化炭素溶解量:成形直後に成形品の重量を測定した後、成形品を約24時間大気中に放置し、次に、80℃の真空乾燥機中に48時間放置した後の成形品の重量を測定し、両重量の差を溶融樹脂中に含まれていた二酸化炭素量とした。
[実施例1]
表2で示す樹脂組成となるように、樹脂原料を同方向2軸押出機を用いて溶融混練後ペレタイズした。そのペレットを射出成型機に投入した。供給する二酸化炭素の圧力は、減圧弁で3MPaに保ちつつ、第2フィード部内に注入した。二酸化炭素注入時のスクリュ回転数は150rpmとした。金型への溶融樹脂充填途中での発泡を防止するために、5MPaの二酸化炭素によるカウンタプレッシャを加えて射出成形を行い、しかも射出充填後十分な保圧をすることで気泡のない成形品を成形した。その他の射出条件は下記のとおりである。シリンダー温度:180℃、金型温度:100℃、射出圧力:110MPa、保持圧力:40MPa、射出時間:0.5秒、保持時間:5秒、冷却時間:20秒〜100秒。良好な成形品が得られる最短の冷却時間は20秒で、その成形品のHDTを表2に示した。
[比較例1]
表2の比較例1の欄に示した混合比に組成を変更する以外は実施例1と全く同様の条件で射出成型を行った。比較的良好な成形品が得られる最短の冷却時間は100秒で、その成形品のHDTを表2に示した。
[比較例2]
表2の比較例2の欄に示した混合比に組成を変更する以外は実施例1と全く同様の条件で射出成型を行った。冷却時間100秒以内では良好な成形品は得られず、HDTの測定は不可能であった。
[比較例3]
表2の比較例3の欄に示した混合比に組成を変更する以外は実施例1と全く同様の条件で射出成型を行った。良好な成形品が得られる最短の冷却時間は60秒で、その成形品のHDTを表2に示した。
表2に射出成型性、成型品の性能評価の結果を示す。実施例1と比較例3の比較から、炭酸ガス含浸によって、ポリ乳酸の結晶化速度が高められ、サイクル時間が短くなっていることがわかる。また、比較例2からわかるように、ポリ乳酸単独に炭酸ガスを含浸して射出成型しても、発泡が進行して射出成型体が得られなかった。これらのことから、結晶核剤を含む熱可塑性樹脂に炭酸ガスを含浸するという本発明の効果が明確に認められる。
[実施例2]
表3で示す樹脂組成となるように、樹脂原料を同方向2軸押出機を用いて溶融混練後ペレタイズした。そのペレットを射出成型機に投入した。供給する二酸化炭素の圧力は、減圧弁で5MPaに保ちつつ、第2フィード部内に注入した。二酸化炭素注入時のスクリュ回転数は150rpmとした。金型への溶融樹脂充填途中での発泡を防止するために、5MPaの二酸化炭素によるカウンタプレッシャを加えて射出成形を行い、しかも射出充填後十分な保圧をすることで気泡のない成形品を成形した。その他の射出条件は下記のとおりである。シリンダー温度:180℃、金型温度:90℃、射出圧力:110MPa、保持圧力:40MPa、射出時間:0.5秒、保持時間:5秒、冷却時間:10秒〜100秒。良好な成形品が得られる最短の冷却時間は10秒で、その成形品のHDTを表3に示した。
[実施例3、4]
表3の実施例3、4の欄に示した混合比に組成を変更した以外は実施例2と全く同様の条件で射出成型を行った。良好な成形品が得られる最短の冷却時間は20秒で、その成形品のHDTを表3に示した。
[比較例4]
表3の比較例4の欄に示した混合比に組成を変更し、金型温度を96℃に変更した以外は実施例2と全く同様の条件で射出成型を行った。比較的良好な成形品が得られる最短の冷却時間は100秒で、その成形品のHDTを表3に示した。
あった。
[比較例5]
表3の比較例5の欄に示した混合比に組成を変更し、金型温度を96℃に変更した以外は実施例2と全く同様の条件で射出成型を行った。冷却時間100秒以内では良好な成形品は得られず、熱変形温度(HDT)の測定は不可能であった。
[比較例6、7]
表3の比較例6、7の欄に示した混合比に組成を変更した以外は実施例2と全く同様の条件で射出成型を行った。良好な成形品が得られる最短の冷却時間は60秒で、その成形品のHDTを表3に示した。
Figure 2007269019
Figure 2007269019
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本発明の射出成形法は、目標とする耐熱性を有する成形品を短い成形サイクルで生産できるので、光学機器部品、弱電機器、電子機器、事務機器などのハウジング、ハンディパソコンの薄肉筐体、各種自動車部品、各種日用品などの結晶性の熱可塑性樹脂射出成形品を製造する方法として有用である。特に、ポリ乳酸系樹脂に代表される生分解性の結晶性熱可塑性樹脂を用いた射出成形法において有用である。

Claims (13)

  1. 結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法であって、結晶核剤を0.1〜50重量%含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して二酸化炭素を0.2重量部以上溶解した溶融樹脂を、あらかじめ溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上にガスで加圧状態にしてある金型キャビティに充填し、その後、充填された溶融樹脂を加圧し冷却固化することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  2. 結晶核剤が無機系核剤であることを特徴とする請求項1に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  3. 結晶核剤が有機化層状ケイ酸塩であることを特徴とする請求項2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  4. 結晶核剤がタルクであることを特徴とする請求項2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  5. 結晶核剤が有機化層状珪酸塩とタルクの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  6. 結晶性熱可塑性樹脂が生分解性熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  7. 前記生分解性熱可塑性樹脂が生分解性ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  8. 前記生分解性ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂、変性ポリエチレンテレフタレート系樹脂及びポリヒドロキシアルカノエート(PHA)系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つの樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  9. 前記生分解性ポリエステル系樹脂がポリ乳酸系樹脂であることを特徴とする請求項7に記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  10. 生分解性熱可塑性樹脂が、その末端基を封鎖する添加剤を含有することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  11. 生分解性熱可塑性樹脂が、非イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  12. 溶融樹脂に溶解する二酸化炭素量が、結晶核剤を含む結晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して0.2重量部以上、5重量部以下である請求項1〜11のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
  13. 金型キャビティを加圧するガスが二酸化炭素で、その圧力が、大気圧を越え15MPa以下である請求項1〜12のいずれかに記載の結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法。
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