JP2004167697A - 結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】PETボトル又はPETフィルムの結晶状態をできるだけ残した状態で再成形し、元の物性をできるだけ損なわずに良好な物性を発現することができる結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供する。
【解決手段】PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料(若しくは融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物)にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形する、又は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料(若しくは融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物)をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形する。
【選択図】 図2
【解決手段】PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料(若しくは融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物)にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形する、又は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料(若しくは融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物)をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法及びその成形品に関し、詳しくは、PETボトル又はPETフィルムを用いた成形体を製造する結晶性熱可塑性樹脂成形体の製造方法、及びこの製造方法よって得られる結晶性熱可塑性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境に対する意識が高まり、容器包装リサイクル法等の法的な規制の強化がなされている。廃プラスチックのリサイクルには、大別してケミカルリサイクル、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクルの3つがある。
【0003】
ケミカルリサイクルは樹脂をモノマーまで分解し再度、新しい樹脂として再生する方法である。ケミカルリサイクルで再生された樹脂はリサイクル方法の中で最も良好に用いられるが、再生に必要なエネルギー及びコストは大きく、利用が進んでいないのが現状である。
【0004】
サーマルリサイクルは樹脂を焼却時の熱を発電等に利用する方法である。サーマルリサイクルはエネルギーの回収効率がよく、現在最もよく用いられている。しかし、資源の有効利用という観点から必ずしも好ましいとはいえない。
【0005】
マテリアルリサイクルは成形品を分別、洗浄、粉砕し、再成形することにより成形品を得る方法である。これは資源の再利用という観点から理想的な方法であるといえるが、再成形した成形品は物性の低下、物性のバラツキなどの理由により利用用途が限定されている。
【0006】
一方、現在、再利用の要望の大きい廃プラスチックは、一旦市場に製品として出た後に廃棄、回収される一般廃棄物の廃プラスチックである。その多くは容器包装リサイクル法により回収されたものであり、容器や包装用のプラスチック、すなわちブロー成形やフィルム成形により成形されたプラスチックである。
【0007】
ブロー成形品やフィルム成形品は、従来樹脂の結晶サイズや結晶配向を制御するなどの結晶制御を施すことによって物性を向上することがなされてきた。具体的な結晶制御の方法としては、フィルム成形やブロー成形における延伸や結晶核剤の添加等である。
【0008】
上記結晶制御の具体例として、フィルム成形においては例えば特許文献1〜3に示されるように、2軸延伸と熱処理を組み合わせる方法、溶液流延法により未延伸フィルムを作り同時2軸延伸後熱処理をする方法、未延伸フィルムを若干膨潤させてから延伸する方法などが開示されている。
【0009】
またブロー成形においては、特許文献4〜6に示されるように、熱結晶されていない部分を無拘束で高延伸する方法、部分的に熱結晶化させた熱結晶化部を設け2軸延伸ブロー成形する方法、予備成型品を一次ブロー成形し更に加熱した後に2次ブロー成形する方法などが開示されている。
【0010】
従来このように結晶制御を行うことにより弾性率、耐熱性等の物性の向上を行っている。
【0011】
しかし、上記のように結晶制御されて成形されたブロー成形品やフィルム成形品が、例えば市場から回収されてリサイクルする場合など、一旦成形された後に再成形される際には、従来はその材料を加熱し溶融樹脂とすることで再成形されていた。これは、再成形の際に材料をその結晶融点以上に加熱することで、十分に可塑化し成形に必要な流動性を得て賦型するという考えに基づいている。
【0012】
しかしながら、融点以上に加熱し溶融樹脂とすることは、成型品に一旦形成された結晶が融解され、上記のように高度に結晶制御された元の結晶状態に戻らない為、良好な物性が得られにくくなる。また、元のような物性を得るためには、再度高度な結晶制御が必要になる。
【0013】
しかし、再成形の際は、一般的に材料の劣化を伴うので結晶制御には高度な技術を要しまた高価な設備も必要になる。さらに延伸などの結晶制御をすることが難しい射出成形や押出成形においては、再成形された成形品は本来持っていた優れた物性を失ってしまうことになる。
【0014】
マテリアルリサイクルの中でも、回収量の多い樹脂としては、PETボトルやPETフィルムの形で回収されるPET樹脂が挙げられる。これらは再利用のニーズも非常に大きい。しかし、従来これらを再成形した場合には、通常上記同様に再成形の際に材料をその結晶融点以上に加熱するので、高度に結晶制御された元の結晶状態に戻らない為、良好な物性が得られにくいという課題があった。特に、射出成形品や押出成形品といった延伸しにくい成形方法においては、結晶制御による物性向上が期待できないため、大型成形品への適用が難しいものであった。上記課題が解決されれば大型の成形品への適用が可能になり、例えば、土圧による座屈強度の必要な土木資材への適用を考えた場合に、弾性率を向上することで座屈強度が増し、マス、マンホール、大口径のパイプへの適用が可能になる。
【0015】
そこで、本発明者は、近年検討が盛んに行われている炭酸ガス(CO2)に代表される不活性ガスの可塑化効果に着目した。この不活性ガスの可塑化を利用した成形方法としては、例えば、特許文献7には、炭酸ガスを溶解し溶融粘度を低下させた溶融樹脂を、あらかじめ金型キャビティを溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上に炭酸ガスで加圧状態にして、金型キャビティに充填し、その後、樹脂を加圧し冷却固化する熱可塑性樹脂の射出成形方法が開示されている。しかしこの方法では樹脂を一旦溶融した状態にしたものに不活性ガスを導入し成形性を付与しており、高度に制御された結晶状態を保持することは容易ではない。
【0016】
以上のように、従来、結晶制御されて成形された、例えばPETボトルやPETフィルム等の再成形において、その結晶状態を壊すことなく再成形する方法はなかった。
【0017】
【特許文献1】
特開平1−299019号公報
【特許文献2】
特開平1−299020号公報
【特許文献3】
特開平02−92518号公報
【特許文献4】
特開平5−444号公報
【特許文献5】
特開平5−200839号公報
【特許文献6】
特開平2−106317号公報
【特許文献7】
特許第3218397号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来のPETボトル又はPETフィルムの再成形に関する問題点に鑑み、その結晶状態をできるだけ残した状態で再成形し、元の物性をできるだけ損なわずに良好な物性を発現することができる結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする。
請求項2記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする。
請求項3記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物に前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする。
請求項4記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物を前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする。
請求項5記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項3又は4記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、混合物が、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料100重量部に対して、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂0〜100重量部からなるものであることを特徴とする。
請求項6記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項3〜5の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする。
請求項7記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項1〜6の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、不活性ガスが炭酸ガス(CO2)であることを特徴とする。
請求項8記載の成型品は、請求項1〜7の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料が用いられる。
上記PETボトル又はPETフィルムは、通常、延伸、熱処理、核剤添加などの方法により結晶サイズや結晶配向が制御された結晶性熱可塑性樹脂であり、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、融点+約30℃まで昇温し測定した融解ピーク温度が、一旦、融点+約30℃まで昇温後、冷却した後に融点+約30℃まで昇温し測定した融解ピーク温度よりも高いか、示差走査熱量測定(DSC)において、融点+約30℃まで昇温し測定した結晶化度が、一旦、融点+約30℃まで昇温後、冷却した後に融点+約30℃まで昇温し測定した結晶化度よりも高い結晶性熱可塑性樹脂である。
【0021】
上記結晶性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性を有する結晶性樹脂を意味し、JISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)の測定を実施した場合に、融解ピークが存在するものをいう。
【0022】
また、本発明において融点とは、結晶性樹脂の場合JIS K7121により測定した融解ピーク温度(Tpm)であり、図1に示すように複数の融解温度が存在する場合は高温側とする。また、非結晶性樹脂の場合はJIS K7121により測定したガラス転移温度(Tmg)とする。
【0023】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、不活性ガスが溶解された前記粉砕材料をその融点以下の温度に加熱し賦形してもよいし(請求項1参照)、上記粉砕材料をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形してもよい(請求項2参照)。
【0024】
また、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物が用いられてもよい(請求項3、4参照)。
【0025】
上記粉砕材料とは、一旦成形された成型品が再成形のために粉砕された材料を意味し、特に限定されないが、例えば、一般廃棄物や産業廃棄物が回収され粉砕された材料が好適に用いられる。
【0026】
本発明においては、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の結晶状態をできるだけ残した状態とするため、不活性ガスの溶解時及び上記粉砕材料の加熱時の温度(以下、上記溶解時温度及び加熱時温度を総称して「再成形時温度」ともいう)は上記粉砕材料の融点以下とされる。
【0027】
上記再成形時温度は、上記粉砕材料の融点以下であれば特に限定されないが、再成形温度が低すぎると、樹脂の流動性が乏しくなりやすく複雑形状や大きいサイズ成形品を成形することができないことがあるので注意を要する。
上記再成形温度は、結晶状態の保持性による物性保持性と成形性との両立の点で、融点−30℃〜融点であることが更に好ましい。
【0028】
本発明においては、不活性ガスを用いることにより、PETボトル又はPETフィルムなどの結晶制御された結晶性熱可塑性樹脂をその融点以上に加熱しなくても樹脂を可塑化することができ、容易に成形することが可能となる。
【0029】
通常、不活性ガスは、上記PETボトル又はPETフィルム又は熱可塑性樹脂混合物を加熱することにより、素早く溶解させることができる。すなわち、加熱した状態で不活性ガスを溶解させることで可塑化が素早く進行し成形時間を短縮することが可能になる。具体的には、樹脂の形状にも依存するが、ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、常温では不活性ガスの溶解状態が飽和するのに数時間要するのに対して、加熱した場合にはその条件によって数分間若しくは数十秒間で溶解状態が飽和することもできる。
本発明においては、上記不活性ガスの特性を利用しつつも樹脂の融点以下の状態で可塑化し成形可能とするものである。
【0030】
上記不活性ガスの種類としては特に限定されず、フロン、低分子量の炭化水素、炭酸ガス、窒素、ネオン、ヘリウム、アルゴン等の無機ガスなどが挙げられる。中でも樹脂との反応性が低く、毒性、危険性のない点で、炭酸ガス、窒素、ネオン、ヘリウム、アルゴン等の無機ガスが好ましく。その中でも環境に与える悪影響が低く、ガスの回収の必要性が低い点で、炭酸ガス、窒素が更に好ましく、樹脂への溶解性まで考えると溶解度の高い炭酸ガスが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよいし2種類以上が併用されてもよい。
【0031】
本発明において、上記不活性ガスの溶解量は導入圧力によって調整される。不活性ガスの導入圧力は高いほうが不活性ガスの溶解量は多くなり、より低温で成形できるので結晶保持性が向上する点で好ましい。しかし、設備コストを抑えたい場合には、導入圧力をいわゆる「ボンベ圧」(炭酸ガスの場合は約7MPa、窒素の場合は約20MPa)以下にすることが望ましい。これにより加圧ポンプ等の設備が不要で設備コストを大幅に抑えることができる。しかし、上記導入圧力がボンベ圧の1/3(炭酸ガスの場合は約2.3MPa、窒素の場合は約6.7MPa)以下であると可塑化効果が小さくなり過ぎて十分な効果が得られないことがあるので注意を要する。
【0032】
このことから、設備コストと可塑化効果との両立の点で、導入圧力はボンベ圧の1/3〜ボンベ圧(炭酸ガスの場合は約2.3〜7MPa、窒素の場合は約6.7〜20MPa)であることが好ましい。導入圧力の上限は特に認められないが、通常、一般の設備の限界(炭酸ガスの場合は約30MPa、窒素の場合は約50MPa)以下とされる。
【0033】
本発明において、請求項3又は4記載のように、融点が上記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂(以下、「低融点熱可塑性樹脂」ともいう)が混合されたものであると、目的とする物性を持つ上記粉砕材料の結晶状態を保持したまま、上記低融点熱可塑性樹脂を溶融させて良好な成形性を得ることができる。この場合、成形温度としては、上記低融点熱可塑性樹脂の融点以上であることが好ましい。
【0034】
上記低融点熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、上記PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料との相溶性があるものが物性の向上が著しい点で好ましい。上記粉砕材料との相溶性があるものとしては、例えば、低結晶化度ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸等を共重合させたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0035】
また、相溶性を向上させる為に上記粉砕材料と低融点熱可塑性樹脂との混合物に相溶化剤を添加してもよい。
上記相溶化剤としては、例えば、EPR(エチレンプロピレンゴム)、COOH化PE(カルボキシル基化ポリエチレン)、COOH化PP(カルボキシル基化ポリプロピレン)、ポリスチレン−ポリエチレングラフト共重合体などが挙げられる。
【0036】
上記低融点熱可塑性樹脂の配合量としては、特に限定されないが、上記粉砕材料100重量部に対して0〜100重量部であることが好ましい。換言すると、上記混合物における上記粉砕材料の比率は50%以上であることが好ましい。上記比率が50%以上であると、上記PETボトル又はPETフィルムが元から有する良好な物性が、再成形品の物性に反映されやすくなる。また、上記粉砕材料がリサイクル樹脂である場合にはリサイクル率を向上することができる。
【0037】
本発明において、上記粉砕材料若しくは低融点熱可塑性樹脂との混合物には、非結晶状態の部分の結晶化を促進し物性を更に向上させるために、適宜結晶核剤の添加を併用することも有効である。
【0038】
本発明における成形方法としては、上記の条件を満足するものであれば特に限定されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形等に適用可能である。中でも成形時に延伸が難しい射出成形、押出成形において特に大きな効果を発揮することができる。
【0039】
本発明における成形品とは、上記製造方法によるものであれば特に限定されず、いわゆる最終成形品に限らず、例えば中間材料であるペレット等の成形品も含まれるものである。中間材料であるペレット等を、さらに再成形する場合においても本発明の製造方法を用いることで良好な物性を得ることが可能となる。
【0040】
(作用)
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、再成形温度がPETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の融点以下の温度で成形されるので、上記粉砕材料に含まれる高度に結晶制御された結晶状態が保持され、優れた物性が損なわれることを防止し良好な物性が保持された成形品を得ることができる。
【0041】
また、本発明においては不活性ガスを用いるので、再成形温度がPETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の融点以下の温度であっても、不活性ガスを溶解させることで十分に可塑化し成形に必要な流動性を得て成形することが可能となる。
【0042】
更に、上記粉砕材料と上記低融点熱可塑性樹脂との混合物を用いた場合には、不活性ガスを溶解することによって更に良好な流動性を持たせることができる。これは、再成形温度が粉砕材料の融点以下の温度であっても、上記低融点熱可塑性樹脂が溶融し、その溶融した樹脂に優先的に不活性ガスが溶解する為である。つまり不活性ガスが結晶部に溶解しにくく、非晶部に溶解しやすいことを利用したものである。
【0043】
このことで、上記低融点熱可塑性樹脂の部分が、より大きな流動性を持ち、上記粉砕材料に含まれる高度に結晶制御された結晶状態が保持されたまま賦型することができる。このため、上記粉砕材料を単独で用いた場合に比べ、より低温での成形が可能となり、その高度に結晶制御された結晶状態をより多く保持することができ、更に良好な物性を保持することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図2、3は本発明に係る熱可塑性樹脂発泡体の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
図5、6は本発明に係る熱可塑性樹脂発泡体の製造方法の他の実施形態を例示する説明図である。
(実施例1)
図2、3に示す射出成形装置を用いて結晶性熱可塑性樹脂成形品を製造した。PETボトルの原料として市販の飲料水用のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥したものを用いた。また、上記原料の融点をJIS K7121で測定したところ、図4に示すように融解ピークが存在し、高温側の融解ピーク温度(Tpm)は260.5℃であった。また、結晶化度は43%であった。
【0045】
不活性ガスとしては炭酸ガスを用い、上記原料を耐圧ホッパ12に投入した後、バルブ122、123、124を閉じ、炭酸ガスボンベ14、加圧ポンプ15、圧力調整バルブ141につながるバルブ121を開けて、温度40℃に加熱した耐圧ホッパ12内に炭酸ガスを導入し、この状態を5時間保持することで炭酸ガスを前原料に溶解させた。この時、炭酸ガスの圧力は3MPaに調整した。
【0046】
次いで、バルブ124を開き、シリンダ11温度は、最も高い場所の温度を255℃に設定して射出成形を行った。
このとき、金型2に充填した樹脂が発泡することを防止する為に、金型保圧の圧力を炭酸ガスの飽和圧力(ここでは約3MPa)以上である10MPaに保持し、樹脂温度がガラス転移温度(Tg:本実施例では73℃)以下である40℃になった後に取り出し厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0047】
(実施例2)
炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を250℃にしたこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
【0048】
(実施例3)
図5、6に示す射出成形装置を用いて結晶性熱可塑性樹脂成形品を製造した。PETボトル原料として市販の飲料水用のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥したものを用いた。また、上記原料の融点をJIS K7121で測定したところ、図4に示すように融解ピークが存在し、高温側の融解ピーク温度(Tpm)は260.5℃であった。また、結晶化度は43%であった。
【0049】
上記原料を耐圧ホッパ12へ投入し、バルブ122、123を閉じた状態でバルブ124を開いて上記原料を射出成形装置1のシリンダ11内へ導入し、シリンダ11温度は、最も高い場所の温度を250℃に設定するとともに、不活性ガスとしては炭酸ガスを用い、炭酸ガスボンベ14から加圧ポンプ15、圧力調整バルブ141、バルブ125を経由してスクリューの内部を貫通するガス注入路20に導入し、炭酸ガスの注入圧力を6MPaに調整して注入口18よりシリンダ11内へ注入しつつ、射出成形を行った。
【0050】
尚、注入口18は図6に示すように、シリンダ11内の樹脂圧力が注入口18に導入された炭酸ガスの注入圧力より低くなるようにスクリューの軸径が小さい位置に配設されている。一般に、射出成形においてスクリューの回転と同時にスクリューが上流側に移動するので、シリンダ11側に不活性ガスの注入口18を設けた場合には不活性ガスの注入口18が、樹脂圧力を低くした位置に対して相対的に移動してしまい、安定的に不活性が溶解できないことがある。これに対して、上記のように不活性ガスをスクリュー側に設けた不活性ガスの注入口18から供給することで、不活性ガスの注入口18が、樹脂圧力を低くした位置に対して相対的に移動することなく安定的に不活性ガスを溶解することができる。
【0051】
上記において、金型保圧の圧力は、金型2に充填した樹脂が発泡することを防止する為に、炭酸ガスの飽和圧力(ここでは約6MPa)以上である10MPaに保持し、樹脂温度がガラス転移温度(Tg:本実施例では73℃)以下である40℃になった後に取り出し厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)150部との混合物を原料として用いたこと、炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を240℃にしたこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)60部との混合物を原料として用いたこと、炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を245℃にしたこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0054】
(比較例1)
不活性ガスとして炭酸ガスを用いなかったこと、及びシリンダ11温度として最も高い場所の温度を290℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0055】
(比較例2)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)150部との混合物を原料として用いたこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を280℃にしたこと以外は比較例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0056】
(比較例3)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した結晶性熱可塑性樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)60部との混合物を原料として用いたこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を280℃にしたこと以外は比較例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0057】
上記実施例1〜5、比較例1〜3により得られた成形品からダンベル片を打ち抜き、引っ張り試験(JIS K7113)を行い弾性率を測定した。また、DSCにより結晶化度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より明らかなように、実施例1〜3と比較例1とを比べると、実施例1〜3では比較例1と比べて、結晶化度が高くPETボトルが本来持つ高度に制御された結晶がある程度保持されていることが推察される。その結果、比較例1に比較して、高い弾性率が得られることが判明した。
【0060】
実施例2は炭酸ガス圧力を6MPaと高くすることにより、再成形温度をより低く設定しても結晶保持性が良好で、高い弾性率が得られることが判った。
【0061】
また、実施例3のように、射出成形装置のスクリューの原料供給部側で、一旦上記原料の融点以下の温度まで加熱された原料にシリンダ11内で不活性ガスを導入することで、ガスの溶解速度が速くなり、ガス溶解の為の成形前の保持時間が不要となる効果が得られることも判明した。
【0062】
実施例4、5と比較例2、3とを比べると、実施例4、5では比較例2、3に比較して、結晶化度が高くPETボトルが本来持つ高度に制御された結晶がある程度保持されていることが推察される。その結果、比較例2,3に比較して、高い弾性率が得られることが判明した。
【0063】
また、実施例4、5は低融点の熱可塑性樹脂として混合されたPET樹脂が溶融して炭酸ガスが優先的に溶解し、これにより良好な流動性が得られるとともに良好な物性が得られたものと考えられる。
【0064】
また、実施例5では上記混合物中のPETボトルの粉砕樹脂の割合が50%以上でるため、より良好な物性が得られたものと考えられる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法によれば、上記のようにPETボトル又はPETフィルムの結晶状態をできるだけ残した状態で再成形し、元の物性をできるだけ損なわずに良好な物性を発現することができる結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することができる。
【0066】
このため、例えば、結晶制御されて成形されたブロー成形品やフィルム成形品が、例えば市場から回収されてリサイクルする目的などで、一旦成形された後に再成形される際に好適な結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】融解ピーク温度が複数存在する場合のDSCの測定例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
【図3】図2における射出成形装置のシリンダ内部を例示する説明図である。
【図4】本発明の実施例1におけるDSCの一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法の他の実施形態を例示する説明図である。
【図6】図5における射出成形装置のシリンダ内部を例示する説明図である。
【符号の説明】
1 射出成形装置
2 金型
11 シリンダ
12 耐圧ホッパ
13 ホッパ
14 炭酸ガスボンベ
15 加圧ポンプ
16 ボンベ温調用ヒータ
17 スクリュー
18 注入口
20 ガス注入路
21 固定型
22 可動型
23 加熱用ヒータ
121〜125 バルブ
141 圧力調整弁
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法及びその成形品に関し、詳しくは、PETボトル又はPETフィルムを用いた成形体を製造する結晶性熱可塑性樹脂成形体の製造方法、及びこの製造方法よって得られる結晶性熱可塑性樹脂成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境に対する意識が高まり、容器包装リサイクル法等の法的な規制の強化がなされている。廃プラスチックのリサイクルには、大別してケミカルリサイクル、サーマルリサイクル、マテリアルリサイクルの3つがある。
【0003】
ケミカルリサイクルは樹脂をモノマーまで分解し再度、新しい樹脂として再生する方法である。ケミカルリサイクルで再生された樹脂はリサイクル方法の中で最も良好に用いられるが、再生に必要なエネルギー及びコストは大きく、利用が進んでいないのが現状である。
【0004】
サーマルリサイクルは樹脂を焼却時の熱を発電等に利用する方法である。サーマルリサイクルはエネルギーの回収効率がよく、現在最もよく用いられている。しかし、資源の有効利用という観点から必ずしも好ましいとはいえない。
【0005】
マテリアルリサイクルは成形品を分別、洗浄、粉砕し、再成形することにより成形品を得る方法である。これは資源の再利用という観点から理想的な方法であるといえるが、再成形した成形品は物性の低下、物性のバラツキなどの理由により利用用途が限定されている。
【0006】
一方、現在、再利用の要望の大きい廃プラスチックは、一旦市場に製品として出た後に廃棄、回収される一般廃棄物の廃プラスチックである。その多くは容器包装リサイクル法により回収されたものであり、容器や包装用のプラスチック、すなわちブロー成形やフィルム成形により成形されたプラスチックである。
【0007】
ブロー成形品やフィルム成形品は、従来樹脂の結晶サイズや結晶配向を制御するなどの結晶制御を施すことによって物性を向上することがなされてきた。具体的な結晶制御の方法としては、フィルム成形やブロー成形における延伸や結晶核剤の添加等である。
【0008】
上記結晶制御の具体例として、フィルム成形においては例えば特許文献1〜3に示されるように、2軸延伸と熱処理を組み合わせる方法、溶液流延法により未延伸フィルムを作り同時2軸延伸後熱処理をする方法、未延伸フィルムを若干膨潤させてから延伸する方法などが開示されている。
【0009】
またブロー成形においては、特許文献4〜6に示されるように、熱結晶されていない部分を無拘束で高延伸する方法、部分的に熱結晶化させた熱結晶化部を設け2軸延伸ブロー成形する方法、予備成型品を一次ブロー成形し更に加熱した後に2次ブロー成形する方法などが開示されている。
【0010】
従来このように結晶制御を行うことにより弾性率、耐熱性等の物性の向上を行っている。
【0011】
しかし、上記のように結晶制御されて成形されたブロー成形品やフィルム成形品が、例えば市場から回収されてリサイクルする場合など、一旦成形された後に再成形される際には、従来はその材料を加熱し溶融樹脂とすることで再成形されていた。これは、再成形の際に材料をその結晶融点以上に加熱することで、十分に可塑化し成形に必要な流動性を得て賦型するという考えに基づいている。
【0012】
しかしながら、融点以上に加熱し溶融樹脂とすることは、成型品に一旦形成された結晶が融解され、上記のように高度に結晶制御された元の結晶状態に戻らない為、良好な物性が得られにくくなる。また、元のような物性を得るためには、再度高度な結晶制御が必要になる。
【0013】
しかし、再成形の際は、一般的に材料の劣化を伴うので結晶制御には高度な技術を要しまた高価な設備も必要になる。さらに延伸などの結晶制御をすることが難しい射出成形や押出成形においては、再成形された成形品は本来持っていた優れた物性を失ってしまうことになる。
【0014】
マテリアルリサイクルの中でも、回収量の多い樹脂としては、PETボトルやPETフィルムの形で回収されるPET樹脂が挙げられる。これらは再利用のニーズも非常に大きい。しかし、従来これらを再成形した場合には、通常上記同様に再成形の際に材料をその結晶融点以上に加熱するので、高度に結晶制御された元の結晶状態に戻らない為、良好な物性が得られにくいという課題があった。特に、射出成形品や押出成形品といった延伸しにくい成形方法においては、結晶制御による物性向上が期待できないため、大型成形品への適用が難しいものであった。上記課題が解決されれば大型の成形品への適用が可能になり、例えば、土圧による座屈強度の必要な土木資材への適用を考えた場合に、弾性率を向上することで座屈強度が増し、マス、マンホール、大口径のパイプへの適用が可能になる。
【0015】
そこで、本発明者は、近年検討が盛んに行われている炭酸ガス(CO2)に代表される不活性ガスの可塑化効果に着目した。この不活性ガスの可塑化を利用した成形方法としては、例えば、特許文献7には、炭酸ガスを溶解し溶融粘度を低下させた溶融樹脂を、あらかじめ金型キャビティを溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力以上に炭酸ガスで加圧状態にして、金型キャビティに充填し、その後、樹脂を加圧し冷却固化する熱可塑性樹脂の射出成形方法が開示されている。しかしこの方法では樹脂を一旦溶融した状態にしたものに不活性ガスを導入し成形性を付与しており、高度に制御された結晶状態を保持することは容易ではない。
【0016】
以上のように、従来、結晶制御されて成形された、例えばPETボトルやPETフィルム等の再成形において、その結晶状態を壊すことなく再成形する方法はなかった。
【0017】
【特許文献1】
特開平1−299019号公報
【特許文献2】
特開平1−299020号公報
【特許文献3】
特開平02−92518号公報
【特許文献4】
特開平5−444号公報
【特許文献5】
特開平5−200839号公報
【特許文献6】
特開平2−106317号公報
【特許文献7】
特許第3218397号公報
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来のPETボトル又はPETフィルムの再成形に関する問題点に鑑み、その結晶状態をできるだけ残した状態で再成形し、元の物性をできるだけ損なわずに良好な物性を発現することができる結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする。
請求項2記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする。
請求項3記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物に前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする。
請求項4記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物を前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする。
請求項5記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項3又は4記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、混合物が、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料100重量部に対して、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂0〜100重量部からなるものであることを特徴とする。
請求項6記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項3〜5の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする。
請求項7記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、請求項1〜6の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法であって、不活性ガスが炭酸ガス(CO2)であることを特徴とする。
請求項8記載の成型品は、請求項1〜7の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法により製造されたものであることを特徴とする。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料が用いられる。
上記PETボトル又はPETフィルムは、通常、延伸、熱処理、核剤添加などの方法により結晶サイズや結晶配向が制御された結晶性熱可塑性樹脂であり、具体的には、示差走査熱量測定(DSC)において、融点+約30℃まで昇温し測定した融解ピーク温度が、一旦、融点+約30℃まで昇温後、冷却した後に融点+約30℃まで昇温し測定した融解ピーク温度よりも高いか、示差走査熱量測定(DSC)において、融点+約30℃まで昇温し測定した結晶化度が、一旦、融点+約30℃まで昇温後、冷却した後に融点+約30℃まで昇温し測定した結晶化度よりも高い結晶性熱可塑性樹脂である。
【0021】
上記結晶性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性を有する結晶性樹脂を意味し、JISK7121(プラスチックの転移温度測定方法)の測定を実施した場合に、融解ピークが存在するものをいう。
【0022】
また、本発明において融点とは、結晶性樹脂の場合JIS K7121により測定した融解ピーク温度(Tpm)であり、図1に示すように複数の融解温度が存在する場合は高温側とする。また、非結晶性樹脂の場合はJIS K7121により測定したガラス転移温度(Tmg)とする。
【0023】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、不活性ガスが溶解された前記粉砕材料をその融点以下の温度に加熱し賦形してもよいし(請求項1参照)、上記粉砕材料をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形してもよい(請求項2参照)。
【0024】
また、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物が用いられてもよい(請求項3、4参照)。
【0025】
上記粉砕材料とは、一旦成形された成型品が再成形のために粉砕された材料を意味し、特に限定されないが、例えば、一般廃棄物や産業廃棄物が回収され粉砕された材料が好適に用いられる。
【0026】
本発明においては、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の結晶状態をできるだけ残した状態とするため、不活性ガスの溶解時及び上記粉砕材料の加熱時の温度(以下、上記溶解時温度及び加熱時温度を総称して「再成形時温度」ともいう)は上記粉砕材料の融点以下とされる。
【0027】
上記再成形時温度は、上記粉砕材料の融点以下であれば特に限定されないが、再成形温度が低すぎると、樹脂の流動性が乏しくなりやすく複雑形状や大きいサイズ成形品を成形することができないことがあるので注意を要する。
上記再成形温度は、結晶状態の保持性による物性保持性と成形性との両立の点で、融点−30℃〜融点であることが更に好ましい。
【0028】
本発明においては、不活性ガスを用いることにより、PETボトル又はPETフィルムなどの結晶制御された結晶性熱可塑性樹脂をその融点以上に加熱しなくても樹脂を可塑化することができ、容易に成形することが可能となる。
【0029】
通常、不活性ガスは、上記PETボトル又はPETフィルム又は熱可塑性樹脂混合物を加熱することにより、素早く溶解させることができる。すなわち、加熱した状態で不活性ガスを溶解させることで可塑化が素早く進行し成形時間を短縮することが可能になる。具体的には、樹脂の形状にも依存するが、ポリエチレンテレフタレート(PET)の場合、常温では不活性ガスの溶解状態が飽和するのに数時間要するのに対して、加熱した場合にはその条件によって数分間若しくは数十秒間で溶解状態が飽和することもできる。
本発明においては、上記不活性ガスの特性を利用しつつも樹脂の融点以下の状態で可塑化し成形可能とするものである。
【0030】
上記不活性ガスの種類としては特に限定されず、フロン、低分子量の炭化水素、炭酸ガス、窒素、ネオン、ヘリウム、アルゴン等の無機ガスなどが挙げられる。中でも樹脂との反応性が低く、毒性、危険性のない点で、炭酸ガス、窒素、ネオン、ヘリウム、アルゴン等の無機ガスが好ましく。その中でも環境に与える悪影響が低く、ガスの回収の必要性が低い点で、炭酸ガス、窒素が更に好ましく、樹脂への溶解性まで考えると溶解度の高い炭酸ガスが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよいし2種類以上が併用されてもよい。
【0031】
本発明において、上記不活性ガスの溶解量は導入圧力によって調整される。不活性ガスの導入圧力は高いほうが不活性ガスの溶解量は多くなり、より低温で成形できるので結晶保持性が向上する点で好ましい。しかし、設備コストを抑えたい場合には、導入圧力をいわゆる「ボンベ圧」(炭酸ガスの場合は約7MPa、窒素の場合は約20MPa)以下にすることが望ましい。これにより加圧ポンプ等の設備が不要で設備コストを大幅に抑えることができる。しかし、上記導入圧力がボンベ圧の1/3(炭酸ガスの場合は約2.3MPa、窒素の場合は約6.7MPa)以下であると可塑化効果が小さくなり過ぎて十分な効果が得られないことがあるので注意を要する。
【0032】
このことから、設備コストと可塑化効果との両立の点で、導入圧力はボンベ圧の1/3〜ボンベ圧(炭酸ガスの場合は約2.3〜7MPa、窒素の場合は約6.7〜20MPa)であることが好ましい。導入圧力の上限は特に認められないが、通常、一般の設備の限界(炭酸ガスの場合は約30MPa、窒素の場合は約50MPa)以下とされる。
【0033】
本発明において、請求項3又は4記載のように、融点が上記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂(以下、「低融点熱可塑性樹脂」ともいう)が混合されたものであると、目的とする物性を持つ上記粉砕材料の結晶状態を保持したまま、上記低融点熱可塑性樹脂を溶融させて良好な成形性を得ることができる。この場合、成形温度としては、上記低融点熱可塑性樹脂の融点以上であることが好ましい。
【0034】
上記低融点熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、上記PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料との相溶性があるものが物性の向上が著しい点で好ましい。上記粉砕材料との相溶性があるものとしては、例えば、低結晶化度ポリエチレンテレフタレート、非晶性ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸等を共重合させたポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0035】
また、相溶性を向上させる為に上記粉砕材料と低融点熱可塑性樹脂との混合物に相溶化剤を添加してもよい。
上記相溶化剤としては、例えば、EPR(エチレンプロピレンゴム)、COOH化PE(カルボキシル基化ポリエチレン)、COOH化PP(カルボキシル基化ポリプロピレン)、ポリスチレン−ポリエチレングラフト共重合体などが挙げられる。
【0036】
上記低融点熱可塑性樹脂の配合量としては、特に限定されないが、上記粉砕材料100重量部に対して0〜100重量部であることが好ましい。換言すると、上記混合物における上記粉砕材料の比率は50%以上であることが好ましい。上記比率が50%以上であると、上記PETボトル又はPETフィルムが元から有する良好な物性が、再成形品の物性に反映されやすくなる。また、上記粉砕材料がリサイクル樹脂である場合にはリサイクル率を向上することができる。
【0037】
本発明において、上記粉砕材料若しくは低融点熱可塑性樹脂との混合物には、非結晶状態の部分の結晶化を促進し物性を更に向上させるために、適宜結晶核剤の添加を併用することも有効である。
【0038】
本発明における成形方法としては、上記の条件を満足するものであれば特に限定されず、例えば、射出成形、押出成形、ブロー成形、フィルム成形等に適用可能である。中でも成形時に延伸が難しい射出成形、押出成形において特に大きな効果を発揮することができる。
【0039】
本発明における成形品とは、上記製造方法によるものであれば特に限定されず、いわゆる最終成形品に限らず、例えば中間材料であるペレット等の成形品も含まれるものである。中間材料であるペレット等を、さらに再成形する場合においても本発明の製造方法を用いることで良好な物性を得ることが可能となる。
【0040】
(作用)
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法は、再成形温度がPETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の融点以下の温度で成形されるので、上記粉砕材料に含まれる高度に結晶制御された結晶状態が保持され、優れた物性が損なわれることを防止し良好な物性が保持された成形品を得ることができる。
【0041】
また、本発明においては不活性ガスを用いるので、再成形温度がPETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料の融点以下の温度であっても、不活性ガスを溶解させることで十分に可塑化し成形に必要な流動性を得て成形することが可能となる。
【0042】
更に、上記粉砕材料と上記低融点熱可塑性樹脂との混合物を用いた場合には、不活性ガスを溶解することによって更に良好な流動性を持たせることができる。これは、再成形温度が粉砕材料の融点以下の温度であっても、上記低融点熱可塑性樹脂が溶融し、その溶融した樹脂に優先的に不活性ガスが溶解する為である。つまり不活性ガスが結晶部に溶解しにくく、非晶部に溶解しやすいことを利用したものである。
【0043】
このことで、上記低融点熱可塑性樹脂の部分が、より大きな流動性を持ち、上記粉砕材料に含まれる高度に結晶制御された結晶状態が保持されたまま賦型することができる。このため、上記粉砕材料を単独で用いた場合に比べ、より低温での成形が可能となり、その高度に結晶制御された結晶状態をより多く保持することができ、更に良好な物性を保持することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図2、3は本発明に係る熱可塑性樹脂発泡体の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
図5、6は本発明に係る熱可塑性樹脂発泡体の製造方法の他の実施形態を例示する説明図である。
(実施例1)
図2、3に示す射出成形装置を用いて結晶性熱可塑性樹脂成形品を製造した。PETボトルの原料として市販の飲料水用のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥したものを用いた。また、上記原料の融点をJIS K7121で測定したところ、図4に示すように融解ピークが存在し、高温側の融解ピーク温度(Tpm)は260.5℃であった。また、結晶化度は43%であった。
【0045】
不活性ガスとしては炭酸ガスを用い、上記原料を耐圧ホッパ12に投入した後、バルブ122、123、124を閉じ、炭酸ガスボンベ14、加圧ポンプ15、圧力調整バルブ141につながるバルブ121を開けて、温度40℃に加熱した耐圧ホッパ12内に炭酸ガスを導入し、この状態を5時間保持することで炭酸ガスを前原料に溶解させた。この時、炭酸ガスの圧力は3MPaに調整した。
【0046】
次いで、バルブ124を開き、シリンダ11温度は、最も高い場所の温度を255℃に設定して射出成形を行った。
このとき、金型2に充填した樹脂が発泡することを防止する為に、金型保圧の圧力を炭酸ガスの飽和圧力(ここでは約3MPa)以上である10MPaに保持し、樹脂温度がガラス転移温度(Tg:本実施例では73℃)以下である40℃になった後に取り出し厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0047】
(実施例2)
炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を250℃にしたこと以外は実施例1と同様にして成形品を得た。
【0048】
(実施例3)
図5、6に示す射出成形装置を用いて結晶性熱可塑性樹脂成形品を製造した。PETボトル原料として市販の飲料水用のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥したものを用いた。また、上記原料の融点をJIS K7121で測定したところ、図4に示すように融解ピークが存在し、高温側の融解ピーク温度(Tpm)は260.5℃であった。また、結晶化度は43%であった。
【0049】
上記原料を耐圧ホッパ12へ投入し、バルブ122、123を閉じた状態でバルブ124を開いて上記原料を射出成形装置1のシリンダ11内へ導入し、シリンダ11温度は、最も高い場所の温度を250℃に設定するとともに、不活性ガスとしては炭酸ガスを用い、炭酸ガスボンベ14から加圧ポンプ15、圧力調整バルブ141、バルブ125を経由してスクリューの内部を貫通するガス注入路20に導入し、炭酸ガスの注入圧力を6MPaに調整して注入口18よりシリンダ11内へ注入しつつ、射出成形を行った。
【0050】
尚、注入口18は図6に示すように、シリンダ11内の樹脂圧力が注入口18に導入された炭酸ガスの注入圧力より低くなるようにスクリューの軸径が小さい位置に配設されている。一般に、射出成形においてスクリューの回転と同時にスクリューが上流側に移動するので、シリンダ11側に不活性ガスの注入口18を設けた場合には不活性ガスの注入口18が、樹脂圧力を低くした位置に対して相対的に移動してしまい、安定的に不活性が溶解できないことがある。これに対して、上記のように不活性ガスをスクリュー側に設けた不活性ガスの注入口18から供給することで、不活性ガスの注入口18が、樹脂圧力を低くした位置に対して相対的に移動することなく安定的に不活性ガスを溶解することができる。
【0051】
上記において、金型保圧の圧力は、金型2に充填した樹脂が発泡することを防止する為に、炭酸ガスの飽和圧力(ここでは約6MPa)以上である10MPaに保持し、樹脂温度がガラス転移温度(Tg:本実施例では73℃)以下である40℃になった後に取り出し厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0052】
(実施例4)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)150部との混合物を原料として用いたこと、炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を240℃にしたこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0053】
(実施例5)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)60部との混合物を原料として用いたこと、炭酸ガスの圧力を6MPaに調整したこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を245℃にしたこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0054】
(比較例1)
不活性ガスとして炭酸ガスを用いなかったこと、及びシリンダ11温度として最も高い場所の温度を290℃に設定したこと以外は実施例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0055】
(比較例2)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した粉砕樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)150部との混合物を原料として用いたこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を280℃にしたこと以外は比較例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0056】
(比較例3)
実施例1と同様の、市販の飲料水のPETボトルを粉砕、洗浄し、70℃で24時間乾燥した結晶性熱可塑性樹脂100重量部と、上記樹脂の融点より低融点の熱可塑性樹脂としてPET樹脂(ユニチカ社製「PET MA−1344P」、融点231℃、弾性率2.3GPa)60部との混合物を原料として用いたこと、シリンダ11温度の最も高い場所の温度を280℃にしたこと以外は比較例1と同様にして厚み3mm、φ200mmの円盤形の成形品を得た。
【0057】
上記実施例1〜5、比較例1〜3により得られた成形品からダンベル片を打ち抜き、引っ張り試験(JIS K7113)を行い弾性率を測定した。また、DSCにより結晶化度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1より明らかなように、実施例1〜3と比較例1とを比べると、実施例1〜3では比較例1と比べて、結晶化度が高くPETボトルが本来持つ高度に制御された結晶がある程度保持されていることが推察される。その結果、比較例1に比較して、高い弾性率が得られることが判明した。
【0060】
実施例2は炭酸ガス圧力を6MPaと高くすることにより、再成形温度をより低く設定しても結晶保持性が良好で、高い弾性率が得られることが判った。
【0061】
また、実施例3のように、射出成形装置のスクリューの原料供給部側で、一旦上記原料の融点以下の温度まで加熱された原料にシリンダ11内で不活性ガスを導入することで、ガスの溶解速度が速くなり、ガス溶解の為の成形前の保持時間が不要となる効果が得られることも判明した。
【0062】
実施例4、5と比較例2、3とを比べると、実施例4、5では比較例2、3に比較して、結晶化度が高くPETボトルが本来持つ高度に制御された結晶がある程度保持されていることが推察される。その結果、比較例2,3に比較して、高い弾性率が得られることが判明した。
【0063】
また、実施例4、5は低融点の熱可塑性樹脂として混合されたPET樹脂が溶融して炭酸ガスが優先的に溶解し、これにより良好な流動性が得られるとともに良好な物性が得られたものと考えられる。
【0064】
また、実施例5では上記混合物中のPETボトルの粉砕樹脂の割合が50%以上でるため、より良好な物性が得られたものと考えられる。
【0065】
【発明の効果】
本発明の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法によれば、上記のようにPETボトル又はPETフィルムの結晶状態をできるだけ残した状態で再成形し、元の物性をできるだけ損なわずに良好な物性を発現することができる結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することができる。
【0066】
このため、例えば、結晶制御されて成形されたブロー成形品やフィルム成形品が、例えば市場から回収されてリサイクルする目的などで、一旦成形された後に再成形される際に好適な結晶性熱可塑性樹脂成形品の製造方法及びその成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】融解ピーク温度が複数存在する場合のDSCの測定例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法の一実施形態を示す説明図である。
【図3】図2における射出成形装置のシリンダ内部を例示する説明図である。
【図4】本発明の実施例1におけるDSCの一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法の他の実施形態を例示する説明図である。
【図6】図5における射出成形装置のシリンダ内部を例示する説明図である。
【符号の説明】
1 射出成形装置
2 金型
11 シリンダ
12 耐圧ホッパ
13 ホッパ
14 炭酸ガスボンベ
15 加圧ポンプ
16 ボンベ温調用ヒータ
17 スクリュー
18 注入口
20 ガス注入路
21 固定型
22 可動型
23 加熱用ヒータ
121〜125 バルブ
141 圧力調整弁
Claims (8)
- PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料にその融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料をその融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物に前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解させた後に、前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱し賦形することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料と、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂との混合物を前記粉砕材料の融点以下の温度に加熱した後に、前記粉砕材料の融点以下の温度で不活性ガスを溶解しつつ賦形することを特徴とする結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- 混合物が、PETボトルの粉砕材料又はPETフィルムの粉砕材料100重量部に対して、融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂0〜100重量部からなるものであることを特徴とする請求項3又は4記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- 融点が前記粉砕材料の融点以下の温度である熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項3〜5の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- 不活性ガスが炭酸ガス(CO2)であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法。
- 請求項1〜7の何れか1項記載の結晶性熱可塑性樹脂成型品の製造方法により製造された成型品。
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JP2007269019A (ja) * | 2006-03-10 | 2007-10-18 | Asahi Kasei Chemicals Corp | 結晶性熱可塑性樹脂の射出成形法 |
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2002
- 2002-11-15 JP JP2002332726A patent/JP2004167697A/ja not_active Withdrawn
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