JP4869449B1 - パルプ複合強化樹脂及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1級アミン化合物の水溶液を含むパルプ粉砕物を攪拌しながら、エポキシ基で置換された脂肪族炭化水素基を有する第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物とを含む混合液をパルプ粉砕物に塗布する第一工程と、前記混合液を塗布したパルプ粉砕物を攪拌しながら、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する第二の界面活性剤並びにエラストマーを含む水分散液をパルプ粉砕物に付着させる第二工程と、前記水分散液を付着させたパルプ粉砕物と溶融状態のポリプロピレンとを混練する第三工程とを行う。
【選択図】なし
Description
また、本発明のパルプ複合強化樹脂は、セルロースを含むパルプ粉砕物の前記セルロースとエポキシ基で置換された炭素原子数10以上25以下の脂肪族炭化水素基を有する第一の界面活性剤との反応生成物が、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する第二の界面活性剤を含む重量平均分子量15000以上300000以下のポリイソブチレンを介して、ポリプロピレンと複合化したことを特徴とする。
本発明のパルプ複合強化樹脂の製造方法は、第1級アミン化合物の水溶液を含むパルプ粉砕物を攪拌しながら、エポキシ基で置換された脂肪族炭化水素基を有する第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物とを含む混合液(以下、適宜「第一混合液」ということがある。)をパルプ粉砕物に塗布する第一工程と、前記第一混合液を塗布したパルプ粉砕物を攪拌しながら、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する第二の界面活性剤並びにエラストマーを含む水分散液(以下、適宜「第二水分散液」ということがある。)をパルプ粉砕物に付着させる第二工程と、前記第二水分散液を付着させたパルプ粉砕物と溶融状態のポリプロピレンとを混練して複合化する第三工程とを含む。また、本発明のパルプ複合強化樹脂の製造方法では、所望のパルプ複合強化樹脂が得られる限り、第一工程、第二工程及び第三工程以外の他の工程を行ってもよい。
本発明のパルプ複合強化樹脂の製造方法では、第1級アミン化合物の水溶液を含むパルプ粉砕物を用意する。
第一工程では、第1級アミン化合物の水溶液を含むパルプ粉砕物に、第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物とを含む第一混合液を塗布する。
第一の界面活性剤は、エポキシ基で置換された脂肪族炭化水素基を有する界面活性剤である。第一の界面活性剤は親水性及び疎水性の両方を有し、親水性のセルロース並びに疎水性のエラストマーの両方に親和性を有する。このため、第一の界面活性剤の作用により、第二工程においてパルプ粉砕物とエラストマーの混和を促すことができる。
亜硝酸類化合物としては、通常、亜硝酸塩を用いる。亜硝酸類化合物は、例えば下記の反応式で示すように、第1級アミン化合物と反応してジアゾニウム塩を生じる。このようにして生じたジアゾニウム塩は、通常は第一の界面活性剤との親和性に優れ、パルプ粉砕物のセルロースと第一の界面活性剤との反応の触媒として作用する。なお、下記の反応式において、R1は第1級アミン化合物のアミノ基以外の部分を表し、X−はジアゾニウム塩におけるジアゾニウムイオンのカウンターアニオンを表す。
第一混合液は、所望のパルプ複合強化樹脂が得られる限り、第一の界面活性剤及び亜硝酸類化合物以外の成分を含んでいてもよい。
第一工程においてパルプ粉砕物に第一混合液を塗布すると、パルプ粉砕物に含まれる第1級アミン化合物と第一混合液に含まれる亜硝酸類化合物とが反応して、上述したようにジアゾニウム塩が生じる。このジアゾニウム塩が触媒となって、第一混合液に含まれる第一の界面活性剤とセルロースとが反応したり、第一の界面活性剤同士が反応したりする。
パルプ粉砕物への第一混合液の塗布は、パルプ粉砕物を攪拌しながら行う。パルプ粉砕物の全体に第一混合液を安定して塗布するためである。
具体的な方法としては、例えば、パルプ粉砕物を攪拌しながら、第一混合液をパルプ粉砕物に霧状に吹き付ける方法が挙げられる。この際、パルプ粉砕物を浮遊させた状態で第一混合液を吹き付けると、パルプ粉砕物の全体に第一混合液を効率良く塗布することができるので、好ましい。このような方法は、例えば、ヘンシェンミキサー等の、高速回転する羽根を備えた混合機を用いて行ってもよい。
第一工程の後、第二工程を行なう前に、必要に応じて、第一混合液を塗布したパルプ粉砕物を乾燥させてもよい。第一混合液が溶媒を含む場合、乾燥によってパルプ粉砕物から前記溶媒が除去されるので、パルプ粉砕物の攪拌を容易に行うことが可能となる。
必要に応じて乾燥工程を行った後で、第二工程を行う。第二工程では、第一混合液を塗布した前記のパルプ粉砕物に、第二の界面活性剤並びにエラストマーを含む第二水分散液を付着させる。
第二の界面活性剤は、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する界面活性剤である。第二の界面活性剤は親水性及び疎水性の両方を有し、疎水性のエラストマーを、水に良好に分散させることができる。また、疎水基及び親水基として脂肪族炭化水素基及びエチレンオキサイド基を組み合わせた第二の界面活性剤は、セルロース誘導体、エラストマー及びポリプロピレンのいずれに対しても特に高い親和性を有し、パルプ粉砕物、エラストマー及びポリプロピレンの混和を顕著に促すことができる。
エラストマーは、通常は疎水性である。このため、エラストマーは、ポリプロピレンとの親和性に優れる一方で、セルロースとの親和性は一般に低い。しかし、セルロースに対して第一の界面活性剤を結合させたことにより、エラストマーの分子が前記の第一の界面活性剤に由来する枝状の炭素鎖と分子レベルで絡み合えるようになったので、エラストマーはパルプ粉砕物に対して強固に結着できるようになっている。
エラストマーの例としては、ポリイソブチレン(PIB)などが挙げられる。なお、エラストマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
第二水分散液は分散媒として水を含む。第二水分散液において、通常、第二の界面活性剤は水に溶解若しくは分散しており、また、エラストマーは水に分散している。このため、第二水分散液は、通常、水にエラストマーが分散したエマルジョンとなっている。
第二水分散液は、所望のパルプ複合強化樹脂が得られる限り、第二の界面活性剤、エラストマー及び水以外の成分を含んでいてもよい。
第二工程においてパルプ粉砕物に第二水分散液を付着させると、パルプ粉砕物の表面にエラストマーが付着する。
この際、第二水分散液に含まれる第二の界面活性剤の作用により、エラストマーは、パルプ粉砕物が有するセルロース誘導体と高い親和性を有して接触する。また、当該セルロース誘導体のセルロース骨格から分岐した第一の界面活性剤由来の枝状の炭素鎖は通常は疎水性であり、エラストマーに対する親和性が高い。このように高い親和性を有して接触することにより、エラストマーはパルプ粉砕物の表面に馴染み易くなっているので、エラストマーはパルプ粉砕物の表面に容易且つ均一に付着でき、したがって、エラストマーとパルプ粉砕物との界面に空気が侵入して気泡が生じることを防止できる。
第二工程において用いる第二水分散液は、例えば、エラストマーと第二の界面活性剤と水とを混合し、攪拌することにより製造できる。この際の温度は、通常50℃以下で行う。
具体的な方法としては、例えば、第一の界面活性剤を含む第一混合液を含有して湿潤状態のパルプ粉砕物を攪拌し、混合機内で浮遊する状態を維持しながら、エラストマーを含む第二水分散液をパルプ粉砕物に霧状に吹き付ける方法が挙げられる。エラストマーは極めて微細な粒子状で水中に均一分散しており、パルプ粉砕物が含んでいる第一の界面活性剤との優れた親和性によって、パルプ粉砕物の微細繊維間への侵入が容易となる。仮に、第二水分散液を噴霧せずに直接投入した場合は、均質な塗布状態が得られず、部分的に過度な湿潤状態を形成し、その部分がパルプ粉砕物の表面に存在する微細繊維に収束するため、十分な強度向上の効果が得られない可能性がある。このような方法は、例えば、ヘンシェンミキサー等の、高速回転する羽根を備えた混合機を用いて行ってもよい。
第二工程の後、第三工程を行なう前に、必要に応じて、第二水分散液を付着させられたパルプ粉砕物を乾燥させてもよい。乾燥によってパルプ粉砕物から水が除去されるので、パルプ粉砕物の攪拌を容易に行うことが可能となる。
必要に応じて乾燥工程を行った後で、第三工程を行う。第三工程では、第二水分散液を付着させたパルプ粉砕物と溶融状態のポリプロピレンとを混練して複合化する。前記の混練により、パルプ粉砕物とポリプロピレンとを含む組成物として、パルプ複合強化樹脂が得られる。
ポリプロピレンは、プロピレンを重合してなる繰り返し単位を有するポリマーである。ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他の単量体との共重合体であってもよい。なお、他の単量体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
パルプ粉砕物とポリプロピレンとの混練は、溶融状態のポリプロピレンを用いて行う。したがって、パルプ粉砕物とポリプロピレンとの混練は、ポリプロピレンが溶融状態となりうる程度に高温で行う。具体的な混練温度はポリプロピレンの組成及び分子量等に応じて設定してもよく、通常200℃以下、好ましくは180℃以下である。
上述した製造方法により、本発明のパルプ複合強化樹脂が得られる。このパルプ複合強化樹脂は、パルプ粉砕物のセルロースと第一の界面活性剤との反応生成物であるセルロース誘導体が、第二の界面活性剤を含むエラストマーを介して、ポリプロピレンと複合化した樹脂となっている。したがって、パルプ複合強化樹脂を巨視的に見れば、パルプ粉砕物の表面をエラストマーの層が覆い、更にその外側にポリプロピレンが充填された構成となっている。
本発明のパルプ複合強化樹脂は、以下のような利点を有している。
本発明のパルプ複合強化樹脂は、例えパルプ粉砕物にフィブリル化が生じていた場合であっても、パルプ粉砕物とエラストマーとの界面において気泡が残留し難い。これは、第一の界面活性剤及び第二の界面活性剤の作用により、セルロース誘導体とエラストマーとの親和性が高められているからである。すなわち、第一の界面活性剤がセルロースに結合することにより、得られるセルロース誘導体は第一の界面活性剤に由来する枝状の炭素鎖を有することになる。この炭素鎖は疎水性が高いため、エラストマーに対する親和性を向上させる作用がある。また、第二の界面活性剤は親水基及び疎水基を含むので、これらの親水基及び疎水基が親水性のセルロース骨格と疎水性のエラストマーとの親和性を高める作用を発揮する。さらに、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤はいずれも脂肪族炭化水素基を含み、その分子構造が似ているので、第一の界面活性剤と第二の界面活性剤の親和性は高く、これによってもセルロース誘導体とエラストマーとの親和性が高められている。したがって、エラストマーはパルプ粉砕物の表面に馴染み易くなり、フィブリル化した微細繊維の間隙を含むパルプ粉砕物の表面にエラストマーが容易に密接できるようになるので、気泡の残留を抑制できる。
セルロースは、多数のβ−グルコース分子がグリコシド結合によって直鎖状に重合した構造を有する天然高分子であり、水素結合によるらせん状の立体構造を有する。このセルロースと、一般に活性基を有さないポリプロピレンとの間には、分子同士の間又は高分子内の異なる部分同士の間に働く静電相互作用に基づく引力(分子間力)が及ばない。また、前記の相互作用が得られないため、セルロースとポリプロピレンの間では、分子同士の共有結合による化学架橋、並びに、分子鎖の部分結晶化などで生成した微少な固体相(例えば、結晶相又は非晶相)による物理架橋も形成され難い。このため、従来のようにセルロースとポリプロピレンとを混練するのみでは、セルロースとポリプロピレンとが容易に剥がれ、衝撃強度を向上させることは難しかった。
従来のパルプ複合強化樹脂では、パルプ粉砕物の添加によって樹脂の剛性を向上させることが可能となる一方で、パルプ粉砕物とポリプロピレンとが剥がれて欠陥が生じやすく、靭性に劣っていた。
本発明のパルプ複合強化樹脂は、パルプ粉砕物を含むため、通常は、ポリプロピレンのみからなる樹脂と比べて剛性及び耐熱性に優れる。また、エラストマーとして恒久的に変形可能な低弾性のものを用いれば、パルプ複合強化樹脂の流動性を向上させ、パルプ複合強化樹脂の成形性を高めることができる。
なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧の環境下において行った。
〔ポリイソブチレンの水分散液の用意〕
エラストマーであるポリイソブチレン(poly−iso−butylene;重量平均分子量200000)100部と、脂肪族炭化水素基及びエチレンオキサイド基を有する第二の界面活性剤2.5部とを、水中で高温で高速攪拌した。水の量は、ポリイソブチレンの濃度が10%となる量とした。これにより、水中にポリイソブチレンが分散したエマルジョン状の組成物として、ポリイソブチレンの水分散液を得た。
酸及び塩素等の変色又は変質を促す残留薬品が無い回収紙を用意した。この回収紙を、対向する2枚のディスクを設けた粉砕機に投入し、前記ディスク間に設けた間隙内において解繊及び粉砕して、パルプ粉砕物を得た。
第一の界面活性剤100%と亜硝酸類化合物である亜硝酸ナトリウム0.1%とを含有した第一の界面活性剤組成物を用意した。この第一の界面活性剤は、エポキシ基を分子内の末端(具体的には、アルキル基の末端)に備えた第4級アンモニウム塩であり、前記のアルキル基としてステアリル基及びベヘニル基を用いたアルキルトリメチル型のカチオン界面活性剤であった。これを、第一の界面活性剤の濃度が5%となるように水と混合し、混合液を得た。
このように調製した混合液を、前記のようにジエチレントリアミン水溶液を吹き付けた直後のパルプ粉砕物に対し、攪拌を維持した状態で、第一の界面活性剤の量で0.2部だけ霧状に吹き付け、パルプ粉砕物の表面に塗布した(第一工程)。
撹拌を維持した状態で、混合機の底部から50℃に加温した乾燥空気を吹き込み、パルプ粉砕物を乾燥させ、水分含有率を10%以下にした時点で乾燥空気の吹き込みを停止した。
乾燥させたパルプ粉砕物に対し、先に用意したポリイソブチレンの水分散液を、ポリイソブチレンの量で1.8部だけ霧状で吹き付け、パルプ粉砕物の表面に均一に付着させた(第二工程)。
この後、50℃の乾燥空気を再度吹込み、水分含有率が5%〜10%のパルプ粉砕物を得た。
前記のパルプ粉砕物と、溶融状態のポリプロピレン(poly−propylene)とを、パルプ粉砕物の量が35%となるように、押出機を用いて減圧下で、シリンダー温度180℃、ノズル温度175℃において混練し、パルプ複合強化樹脂を製造した(第三工程)。得られたパルプ複合強化樹脂は、ストランド状に押出成形し、吸湿に伴う発泡等を防止するために空冷固化を行い、これを適度に裁断してペレット化した。
得られたパルプ複合強化樹脂について、以下の要領で評価を行った。結果を表1に示す。
JIS K 7210(230℃、2.16kg荷重)に準じて、パルプ複合強化樹脂のメルトフローインデックス(Melt flow index。略称MFI;メルトインデックス(Melt index(略称MI))ともいう。;ISOではメルトフローレート(Melt flow rate(略称MFR)))を測定した。具体的には、ヒーターで加熱された円筒容器内で一定量の合成樹脂を、定められた温度で加熱及び加圧し、容器底部に設けられた開口部(ノズル)から10分間あたりに押し出される樹脂量を測定する。測定値は、「g/10min」との単位で表示される。試験機械は、JIS K 6760で定められた押出し形プラストメータを用いる。
JIS K 7171に準じて、パルプ複合強化樹脂の曲げ強度を測定した。
JIS K 7203に準じて、パルプ複合強化樹脂の曲げ弾性率を測定した。
JIS K 7110に準じて、ノッチがある場合とノッチが無い場合の両方について、衝撃強度を測定した。
JIS K 7191(荷重4.7kgf/cm2)に準じて、パルプ複合強化樹脂の熱変形温度を測定した。
ペレット化したパルプ複合強化樹脂を平板状に押出成形し、得られた成形体を観察することにより、外観の意匠性を評価した。ここでの評価基準は、以下の通りである。
優:光沢にムラが無く、また、着色が無く透明である。
良:光沢に僅かにムラがあるが、着色が無く透明である。
可:光沢にムラがあるか、着色があるが、許容範囲に収まる。
不良:光沢にはっきりとムラがあり、明らかに白化している。
第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物を含む混合液をパルプ粉砕物に塗布する操作を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表1に示す。
ポリイソブチレンの水分散液をパルプ粉砕物に付着させる操作を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表1に示す。
第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物を含む混合液をパルプ粉砕物に塗布する操作、及び、ポリイソブチレンの水分散液をパルプ粉砕物に付着させる操作をリボンミキサーで行ない、パルプ粉砕物を攪拌した状態で行わず、代わりにパルプ粉砕物が滞留した状態で行ったこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表1に示す。
表1より、実施例1のパルプ複合強化樹脂は、衝撃強度が高く、気泡による意匠性の低下を防止できることが分かる。特に、第一の界面活性剤を用いなかった比較例1と比べて、実施例1では、曲げ強度、曲げ弾性率、及び衝撃強度の大幅な向上が見られることから、第一の界面活性剤をセルロースに導入することにより、分子の絡み合いによる衝撃強度及び靭性の向上が実現できたことが確認された。
エラストマーであるポリイソブチレンの重量平均分子量を15000に変更したこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表2に示す。
エラストマーであるポリイソブチレンの重量平均分子量を300000に変更したこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表2に示す。
第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物を含む混合液を塗布する操作、並びに、ポリイソブチレンの水分散液をパルプ粉砕物に付着させる操作を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表2に示す。
エラストマーであるポリイソブチレンの重量平均分子量を10000に変更したこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表2に示す。
エラストマーであるポリイソブチレンの重量平均分子量を350000に変更したこと以外は実施例1と同様にして、パルプ複合強化樹脂を製造し、評価した。結果を表2に示す。
表2から、実施例4,5に比べ、実施例2,3の方が衝撃強度に優れることが分かる。このことから、エラストマーであるポリイソブチレンの分子量は、セルロース分子に導入された第一の界面活性剤由来の枝状の炭素鎖とエラストマーの分子との絡み合いに影響を及ぼし、ひいてはセルロース誘導体とポリイソブチレンとの接合力に影響を及ぼすことが分かる。
また、表2から、実施例4,5に比べ、実施例2,3の方が外観意匠に優れることが分かる。このことから、エラストマーであるポリイソブチレンの分子量は、ポリイソブチレンのパルプ粉砕物の表面への馴染み易さにも影響を及ぼし、ひいては気泡の発生にも影響を及ぼすことが分かる。
これらの事項から、衝撃強度の改善及び気泡防止のためには、エラストマーの分子量には適切な範囲が存在することが確認された。
Claims (7)
- 第1級アミン化合物の水溶液を含むパルプ粉砕物を攪拌しながら、エポキシ基で置換された炭素原子数が10以上25以下の脂肪族炭化水素基を有する第一の界面活性剤と亜硝酸類化合物とを含む混合液をパルプ粉砕物に塗布する第一工程と、
前記混合液を塗布したパルプ粉砕物を攪拌しながら、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する第二の界面活性剤並びに重量平均分子量が15000以上300000以下のポリイソブチレンを含む水分散液をパルプ粉砕物に付着させる第二工程と、
前記水分散液を付着させたパルプ粉砕物と溶融状態のポリプロピレンとを混練して複合化する第三工程とを含む、パルプ複合強化樹脂の製造方法。 - 前記第一の界面活性剤が、第4級アンモニウム塩型のカチオン系の界面活性剤であって、アルキルトリメチル型界面活性剤又はアルキルジメチルベンジル型界面活性剤である、請求項1記載のパルプ複合強化樹脂の製造方法。
- 前記第一の界面活性剤が、エポキシ基を分子の末端に有する、請求項1又は2記載のパルプ複合強化樹脂の製造方法。
- 前記第一の界面活性剤の前記脂肪族炭化水素基の炭素原子数が10以上20以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパルプ複合強化樹脂の製造方法。
- 前記第二の界面活性剤の前記疎水基が、直鎖状のアルキル基からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のパルプ複合強化樹脂の製造方法。
- セルロースを含むパルプ粉砕物の前記セルロースとエポキシ基で置換された炭素原子数10以上25以下の脂肪族炭化水素基を有する第一の界面活性剤との反応生成物が、脂肪族炭化水素基を有する疎水基及びエチレンオキサイド基を有する親水基を有する第二の界面活性剤を含む重量平均分子量15000以上300000以下のポリイソブチレンを介して、ポリプロピレンと複合化した、パルプ複合強化樹脂。
- 前記第二の界面活性剤の前記疎水基が、直鎖状のアルキル基からなる、請求項6記載のパルプ複合強化樹脂。
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