JPH022752B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は、自転車やこれに類するペダル推進式
の軽車両に適したハブ装置に関する。

＜従来の技術＞ 通常の自転車は一定の円軌道を回転する左右の
ペダルを交互に踏んで進行するようになつてい
る。しかし、このような回転式ペダルでは上死点
や下死点付近で踏み込み力が駆動力にほとんど変
換されず、駆動力が断続的になると共に効率が低
くなるという問題点がある。そこでこれを解決す
るために、一定の範囲で往復運動を繰り返す回動
レバー式のペダルや垂直移動式のペダルを左右に
設け、これを交互に踏み込んで得られる駆動力を
互いに独立して駆動輪に伝達する方式の自転車が
提案されている（例えば、特開昭50−30243号公
報あるいは特開昭51−31438号公報参照）。

＜発明が解決しようとする課題＞ これらの公報記載のものは、いずれも各ペダル
の駆動力をそれぞれ一方向クラツチを介して駆動
輪に伝達しており、また左右のペダルは交互の踏
み込みを可能とするために互いに逆方向に連動し
て動くように構成されている。このため、自転車
を後退させようとして駆動輪を後進方向に回転さ
せると、この回転が各一方向クラツチを介して左
右の各ペダルに伝達され、各ペダルが共に同じ方
向に駆動されるようとするが、各ペダルは逆方向
に動くように連動しているので互いに突つ張り合
う状態となり、駆動輪を後進方向に回転させるこ
とができない。従つて、駆動輪で地面をこすり、
あるいは地面から持ち上げないと自転車を後退さ
せることができず、取り扱いに不便である。特に
第２図に関して後述するような４輪車両などでは
重量も大きくなるので、駆動輪を回転させて後退
できない構造は極めて不便であり、上記公報のよ
うな種々の提案がありながら実用化されていない
原因となつていた。

本発明はこのような点に着目し、上記のような
問題点を解決することを目的としてなされたもの
である。

＜課題を解決するための手段＞ 上記の目的を達成するために、本発明のペダル
推進車両のハブ装置は、車両の本体に固定される
少なくとも１個のハブ軸と、このハブ軸に回転自
在に支持され、ペダル部から伝達される駆動力に
よつて回転される左右一対の駆動体と、上記ハブ
軸に回転自在に支持された少なくとも１個のハブ
シエルと、このハブシエルの内周面に形成された
ラチエツト部と上記駆動体に設けられた爪とで構
成され、上記各駆動体の前進方向の回転をそれぞ
れ上記ハブシエルに伝達する左右一対の一方向ク
ラツチと、上記ハブ軸に摺動自在に嵌挿され、そ
の外周に形成された大径部で上記一方向クラツチ
の爪を傾動させるスライダー、とを備えており、
このスライダーの位置を手動制御して爪を傾動さ
せることによりラチエツト部との係合を解除して
上記一方向クラツチの回転伝達作用を解除するよ
うにしている。

＜作用＞ 本発明では、スライダーの位置を手動制御して
左右一対の一方向クラツチの回転伝達作用を解除
すると、ハブシエルは駆動機構から切り離されて
フリーな状態となり、このハブシエルに取り付け
られた駆動輪は自由に後進方向に回転できること
になる。従つて、本発明のハブ装置を採用した車
両では、左右のペダルを互いに逆方向に動くよう
に連動させていても自由に後退させることができ
るのである。

＜実施例＞ 第１図及び第２図は本発明のハブ装置を採用し
たペダル推進車両の一例を示すものである。

第１図は通常の自転車の例であり、１はペダル
部、２は駆動輪、３は駆動輪２のハブ部である。
ペダル部１には回転式のペダル４ａ，４ｂが設け
られ、ペダル４ａ，４ｂに加えられる踏み込み力
はペダル部１とハブ部３との間に設けられたチエ
ーン５ａ，５ｂによつて駆動輪２に伝達される。

また第２図は駆動輪２を２個備えた４輪車両の
例であり、踏み込み力はチエーン５ａ，５ｂによ
つて左右の駆動輪２，２は別々に伝達される。

次に、第１図のように１個の駆動輪２を左右一
対のペダル４ａ，４ｂで駆動する場合の実施例に
ついて第３図乃至第６図により説明する。図にお
いて、１１はハブシエル、１２ａ，１２ｂはスプ
ロケツト、１３ａ，１３ｂは駆動体である。

ハブシエル１１は外径両端にスポーク穴１６を
設けた鍔部をそれぞれ有する円筒状のものであ
り、スポーク２０によつて駆動輪２が結合されて
いる。このハブシエル１１には両端から駆動体１
３ａ，１３ｂが挿入され、ハブシエル１１の内径
両端入口に形成されたベアリングレースと駆動体
１３ａ，１３ｂの中間外径部に形成されたベアリ
ングレースとの間にベアリング球２１を入れて回
転自在に支持される。

駆動体１３ａ，１３ｂは中心をハブ軸２２が貫
通しており、内径両端入口に形成されたベアリン
グレースとハブ軸２２に螺合された玉押２３のベ
アリングレースとの間にベアリング球２４を入れ
て回転自在に支持され、端部の大径部はハブシエ
ル１１の両側から外部へ突出し、外周にはスプロ
ケツト１２ａ，１２ｂが固定されている。ハブ軸
２２は通常の自転車と同様に車体のフレームに適
宜固定されている。

３５ａ，３５ｂはハブシエル１１の内周面両端
に設けられたラチエツト部、３６ａ，３６ｂは駆
動体１３ａ，１３ｂに形成された溝部に配置して
ピン３７により軸着され、駆動体１３ａ，１３ｂ
の前進回転時にラチエツト部３５ａ，３５ｂに係
合して駆動力を伝える爪である。この爪３６ａ，
３６ｂには、第６図に示すように係合方向への回
動力を付勢するばね３８がそれぞれ設けられてお
り、ラチエツト部３５ａと爪３６ａ、及びラチエ
ツト部３５ｂと爪３６ｂで前進用の一方向クラツ
チがそれぞれ構成されている。

３９はハブ軸２２に摺動自在に嵌挿されたスラ
イダー、４０はスライダー３９の戻しばね、４１
はスライダー３９を操作する制御レバーであり、
スライダー３９には爪３６ａ及び３６ｂの間隔に
合せて２個の大径部３９ａ，３９ｂが設けられて
いる。

ハブ軸２２には貫通穴２２ａが設けられてロツ
ド４２が挿通されており、ロツド４２の先端部分
ではハブ軸２２に直径方向に貫通した長穴２２ｂ
が設けられ、スライダー３９を直径方向に貫通す
るピン４３が長穴２２ｂに挿入され、ロツド４２
の先端をピン４３に当接されている。制御レバー
４１はブラケツト４４に軸４５によつて取付けら
れ、先端をロツド４２の頭部に当接しており、制
御レバー４１を回動して戻しばね４０の力に抗し
てロツド４２を押し込むことにより、スライダー
３９は長穴２２ｂに応じた範囲内で移動可能にな
つている。

第３図ａは、スライダー３９が図の左方向に位
置して一方向クラツチが入つた状態を示してい
る。すなわち、スライダー３９の大径部３９ａ，
３９ｂは爪３６ａ，３６ｂに対してずれた位置に
あり、爪３６ａ，３６ｂは第６図ａのようにラチ
エツト部３５ａ，３５ｂに係合した状態となつて
いる。従つて、駆動体１３ａ，１３ｂの前進回転
によつてハブシエル１１も前進回転し、自転車の
前進走行が行われる。なお駆動体１３ａ，１３ｂ
が停止した場合及び逆回転した場合にもハブシエ
ル１１の前進回転は可能であつて、支障なく惰力
走行することができる。

ところで、後述の第７図は左右のペダルをその
往復運動が互いに逆に行なわれるように連動させ
た例を示しており、この場合には、解決しようと
する課題の項で述べたように一方向クラツチが入
つた状態の時に左右のスプロケツトを同時に逆回
転させようとしても、左右のペダルが逆方向に動
こうとして互いに突張りう状態となり、２個のス
プロケツトを同時に逆回転させることができない
ため、この状態のままでは後進回転が不可能で不
便である。本発明はこれを解決したものであり、
本実施例ではスライダー３９によりクラツチを切
つてハブシエル１１をフリーな状態にできるよう
にしている。

第３図ｂはこの状態を示したものであり、制御
レバー４１を時計方向に回転させてロツド４２を
押し込み、スライダー３９の右側に位置させて一
方向クラツチが切れた状態となつている。すなわ
ち、スライダー３９の大径部３９ａ，３９ｂは爪
３６ａ，３６ｂの後端を押して第６図ｂのように
ラチエツト部３５ａ，３５ｂとの係合を解除して
おり、ハブシエル１１は駆動機構から切り離され
てフリーな状態となつて自転車を自由に後退させ
ることが可能となるのである。スライダー３９を
移動させるための制御レバー４１の操作は足によ
つて直接行うか、あるいは例えばハンドルに設け
てワイヤで連結した操作リバーなどで行うように
すればよい。

なお、図示の実施例では戻しばね４０は圧縮状
態で設けられているが、これを引つ張りばねとし
てスライダー３９をワイヤやチエーンなどを引つ
張るようにしてもよい。また制御レバー４１の軸
４５による支持部に戻しばね４０の力より大きい
抵抗を持たせれば、ロツド４２を押した位置に保
持することができ、その他適宜の節動機構により
スライダー３９の位置を保持するようにしてもよ
い。なお、大径部３９ａ，３９ｂと爪３６ａ，３
６ｂの相互に接触する面には、テーパ部３９ｃ及
び３６ｃを設けてスライダー３９の移動が円滑に
行なわれるようにしてある。

なお、上記の実施例は左側のペダル４ａの駆動
力を伝達する機構と右側のペダル４ｂの駆動力を
伝達する機構とを１個のハブシエル１１の両側に
設けているが、第２図のように左右に設けた各駆
動輪に別々に駆動力を伝達する車両の場合には、
左側の駆動力伝達機構と右側の駆動力伝達機構を
分離して左右の各ハブシエルに設ければよい。

次に、駆動力を発生するペダル部１の例につい
て説明する。

第７図において、５１は前後の車輪間下部のハ
ンガ部に設けられた密閉型の歯車箱であり、歯車
箱５１内で２個の歯車５２ａ，５２ｂをかみ合わ
せ、歯車５２ａ，５２ｂを取り付けたクランク軸
５３ａ，５２ｂを歯車箱５１の両側面でベアリン
グ５４を支えてそれぞれ反対方向に左右に突出さ
せ、突出端にスプロケツト５５ａ，５５ｂとクラ
ンク５６ａ，５６ｂを固定し、クランク５６ａ，
５６ｂの先端に４ａ，４ｂをそれぞれ取り付けて
ある。スプロケツト５５ａ，５５ｂには歯底と中
心の間に円弧状の長穴５７をそれぞれ設け、フレ
ームから突出させたストツパーピン５８と組み合
わせることにより、クランク５６ａ，５６ｂが水
平方向を含む一定範囲内で回動できるようにして
あり、スプロケツト５５ａ，５５ｂと前述したハ
ブ部３のスプロケツト１２ａ，１２ｂとの間に
は、駆動用のチエーン５ａ，５ｂがそれぞれ掛け
られている。

なお、この例では歯車５２ａ，５２ｂのかみ合
わせによつて左右のクランク５６ａ，５６ｂが連
動しているので、長穴５７はスプロケツト５５
ａ，５５ｂの一方にあればよく、またこのような
回動範囲の規制は、例えばチエーン５ａ，５ｂの
一点とフレームとの間に一定以上には伸びない戻
しばねを設けるなど、他の適宜の手段によつて行
うことができる。

本実施例のペダル部１はこのような構成であ
り、左右のペダル４ａ，４ｂの一方を踏み込むと
他方が上がるので、これを交互に踏み込むことに
よつて自転車を走行させることができるのである
が、ペダル４ａ，４ｂは踏み込み方向に対して直
角な方向、すなわちこの例においては水平方向を
含む一定の範囲内で往復するものであるため、踏
み込み力を効率よくしかも途切れることなく駆動
力に変換することができるのである。この時の足
を動かす幅はペダルの軌跡が円軌道を描く従来の
ものよりも少なくてすむので、この点からも走行
が楽になり、またその幅は可動範囲内で自由に選
択できるので乗りやすい自転車が得られる。

なお、第７図の実施例は本発明のハブ機構と組
み合わせるのに好適なペダル部の一例であり、ペ
ダル部としては垂直移動式なので他の形式のもの
を用いることも可能である。

＜発明の効果＞ 上述の実施例の説明からも明らかなように、本
発明のペダル推進車両のハブ装置は、ペダル部か
らの駆動力を伝達する左右一対の駆動機構を設
け、この各駆動機構にそれぞれ設けられている一
方向クラツチをスライダーの位置を手動制御する
ことによつて解除できるようにしたものであり、
これによりハブシエル駆動機構から切り離されて
自由に回転できる状態となる。

従つて、一方向クラツチを切つた状態で駆動輪
を後進方向に回転させれば、左右のペダルを互い
に逆方向に動くように連動させていても各ペダル
が互いに突つ張り合う状態にはならず、駆動輪を
自由に後進回転させることができるようになり、
通常の回転式ペダルの問題点を解決することを目
的とした回動レバー式のペダルや垂直移動式のペ
ダルにおける新しい問題点、すなわち駆動輪を回
転させながら後退できず極めて不便であるという
問題点を簡単に解決し、これらの方式のペダル装
置の実用化が容易となるのである。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ及び第１図ｂは本発明のハブ装置を用
いた自転車の側面図及び平面図、第２図ａ及び第
２図ｂは本発明のハブ装置を用いた４輪車の側面
図及び平面図、第３図ａ及び第３図ｂは本発明の
一実施例の一部破断平面図、第４図は同要部の破
断平面図、第５図は同上のハブ軸の平面図、第６
図ａ及び第６図ｂは一方向クラツチの動作説明
図、第７図ａはペダル部の一例の側面図、第７図
ｂは同正面図、第７図ｃは第７図ｂのＣ−Ｃ線に
沿う一部破断平面図である。 １……ペダル部、２……駆動輪、３……ハブ
部、４ａ，４ｂ……ペダル、５ａ，５ｂ……チエ
ーン、１１……ハブシエル、１３ａ，１３ｂ……
駆動体、２２……ハブ軸、３５ａ，３５ｂ……ラ
チエツト部、３６ａ，３６ｂ……爪、３９……ス
ライダー、３９ａ，３９ｂ……大径部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 車両の本体に固定される少なくとも１個のハ
   ブ軸と、このハブ軸に回転自在に支持され、ペダ
   ル部から伝達される駆動力によつて回転される左
   右一対の駆動体と、上記ハブ軸に回転自在に支持
   された少なくとも１個のハブシエルと、このハブ
   シエルの内周面に形成されたラチエツト部と上記
   駆動体に設けられた爪とで構成され、上記各駆動
   体の前進方向の回転をそれぞれ上記ハブシエルに
   伝達する左右一対の一方向クラツチと、上記ハブ
   軸に摺動自在に嵌挿され、その外周に形成された
   大径部で上記一方向クラツチの爪を傾動させるス
   ライダー、とを備えており、このスライダーの位
   置を手動制御して爪を傾動させることによりラチ
   エツト部との係合を解除して上記一方向クラツチ
   の回転伝達作用を解除するようにしたことを特徴
   とするペダル推進車両のハブ装置。 ２ ペダル部が互いに逆方向に動くように連動し
   て往復運動を繰り返す左右一対のペダルで構成さ
   れており、一方の駆動体が前進方向に回転する時
   には他方の駆動体が後退方向に回転するようにさ
   れた特許請求の範囲第１項記載のペダル推進車両
   のハブ装置。