《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態を、図1〜図25(F)に基づいて説明する。
図1には、第1の実施形態の露光装置100の構成が概略的に示されている。この露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。後で説明する第2の実施形態においても同様である。
露光装置100は、図1に示されるように、ベース盤12上の−Y側端部近傍に配置された露光ステーション200(露光処理部)、ベース盤12上の+Y側端部近傍に配置された計測ステーション(計測処理部)300、2つのウエハステージWST1,WST2、リレーステージDRST、及びこれらの制御系等とを備えている。ここで、ベース盤12は、床面上に防振機構(図示省略)によってほぼ水平に(XY平面に平行に)支持されている。ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成り、その上面は平坦度が非常に高く仕上げられ、上述の3つのステージWST1,WST2,DRSTの移動の際のガイド面とされている。なお、図1において、露光ステーション200には、ウエハステージWST1が位置しており、ウエハステージWST1(より詳細にはウエハ微動ステージ(以下、微動ステージと略記する)WFS1)上にウエハWが保持されている。また、計測ステーション300には、ウエハステージWST2が位置しており、ウエハステージWST2(より詳細には微動ステージWFS2)上に別のウエハWが保持されている。
露光ステーション200は、照明系10、レチクルステージRST、投影ユニットPU及び局所液浸装置8等を備えている。
照明系10は、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系10は、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で規定されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図14参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図14参照)に送られる。なお、例えば米国特許出願公開第2007/0288121号明細書などに開示されているように、エンコーダシステムによってレチクルステージRSTの位置情報を計測しても良い。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、不図示の支持部材によって水平に支持されたメインフレーム(メトロロジーフレームとも呼ばれる)BDによってその外周部に設けられたフランジ部FLGを介して支持されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸方向と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられる。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系10からの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面がほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上で前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルRを保持するレチクルステージRSTとウエハWを保持する微動ステージWFS1(又は微動ステージWFS2)との同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系10、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。本実施形態では、メインフレームBDが、それぞれ防振機構を介して設置面(床面など)に配置される複数(例えば3つ又は4つ)の支持部材によってほぼ水平に支持されている。なお、その防振機構は各支持部材とメインフレームBDとの間に配置しても良い。また、例えば国際公開第2006/038952号に開示されているように、投影ユニットPUの上方に配置される不図示のメインフレーム部材、あるいはレチクルベースなどに対してメインフレームBD(投影ユニットPU)を吊り下げ支持しても良い。
局所液浸装置8は、本実施形態の露光装置100が、液浸方式の露光を行うことに対応して設けられている。局所液浸装置8は、液体供給装置5、液体回収装置6(いずれも図1では不図示、図14参照)、及びノズルユニット32等を含む。ノズルユニット32は、図1に示されるように、投影光学系PLを構成する最も像面側(ウエハW側)の光学素子、ここではレンズ(以下、「先端レンズ」ともいう)191を保持する鏡筒40の下端部周囲を取り囲むように不図示の支持部材を介して、投影ユニットPU等を支持するメインフレームBDに吊り下げ支持されている。ノズルユニット32は、液体Lqの供給口及び回収口と、ウエハWが対向して配置され、かつ回収口が設けられる下面と、液体供給管31A及び液体回収管31B(いずれも図1では不図示、図14参照)とそれぞれ接続される供給流路及び回収流路とを備えている。液体供給管31Aには、その一端が液体供給装置5(図1では不図示、図14参照)に接続された不図示の供給管の他端が接続されており、液体回収管31Bには、その一端が液体回収装置6(図1では不図示、図14参照)に接続された不図示の回収管の他端が接続されている。本実施形態では、主制御装置20が液体供給装置5(図14参照)を制御して、液体供給管31A及びノズルユニット32を介して先端レンズ191とウエハWとの間に液体を供給するとともに、液体回収装置6(図14参照 )を制御して、ノズルユニット32及び液体回収管31Bを介して先端レンズ191とウエハWとの間から液体を回収する。このとき、主制御装置20は、供給される液体の量と回収される液体の量とが常に等しくなるように、液体供給装置5と液体回収装置6を制御する。従って、先端レンズ191とウエハWとの間には、一定量の液体Lq(図1参照)が常に入れ替わって保持される。本実施形態では、上記の液体として、ArFエキシマレーザ光(波長193nmの光)が透過する純水を用いるものとする。なお、ArFエキシマレーザ光に対する純水の屈折率nは、ほぼ1.44であり、純水の中では、照明光ILの波長は、193nm×1/n=約134nmに短波長化される。
この他、露光ステーション200には、メインフレームBDに支持部材72Aを介してほぼ片持ち状態で支持された(一端部近傍が支持された)計測アーム71Aを含む微動ステージ位置計測系70Aが設けられている。ただし、微動ステージ位置計測系70Aについては、説明の便宜上、後述する微動ステージについての説明の後に、説明する。
計測ステーション300は、メインフレームBDに吊り下げ状態で固定されたアライメント装置99と、メインフレームBDから支持部材72Bを介して片持ち状態で支持された(一端部近傍が支持された)計測アーム71Bを含む微動ステージ位置計測系70Bと、を備えている。微動ステージ位置計測系70Bは、前述の微動ステージ位置計測系70Aとは、向きが反対であるが同様に構成されている。
アライメント装置99は、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示されているように、図3に示される5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を含む。詳述すると、図3に示されるように、投影ユニットPUの中心(投影光学系PLの光軸AX、本実施形態では前述の露光領域IAの中心とも一致)を通りかつY軸と平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LV上で、光軸AXから−Y側に所定距離隔てた位置に、検出中心が位置する状態でプライマリアライメント系AL1が配置されている。プライマリアライメント系AL1を挟んで、X軸方向の一側と他側には、基準軸LVに関してほぼ対称に検出中心が配置されるセカンダリアライメント系AL21,AL22と、AL23,AL24とがそれぞれ設けられている。すなわち、5つのアライメント系AL1,AL21〜AL24はその検出中心がX軸方向に沿って配置されている。なお、図1では、5つのアライメント系AL1,AL21〜AL24及びこれらを保持する保持装置(スライダ)を含んでアライメント装置99として示されている。なお、アライメント装置99の具体的な構成等については更に後述する。
ウエハステージWST1は、図1及び図2(A)等からわかるように、その底面に設けられた複数の非接触軸受、例えばエアベアリング94によりベース盤12の上に浮上支持され、粗動ステージ駆動系51A(図14参照)により、XY二次元方向に駆動されるウエハ粗動ステージ(以下、粗動ステージと略述する)WCS1と、粗動ステージWCS1に非接触状態で支持され、粗動ステージWCS1に対して相対移動可能なウエハ微動ステージ(以下、微動ステージと略述する)WFS1とを有している。微動ステージWFS1は、微動ステージ駆動系52A(図14参照)によって粗動ステージWCS1に対してX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向及びθz方向(以下、6自由度方向、又は6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)と記述する)に駆動される。
ウエハステージWST1(粗動ステージWCS1)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16Aによって計測される。また、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に支持された微動ステージWFS1(又は微動ステージWFS2)の6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70Aによって計測される。ウエハステージ位置計測系16A及び微動ステージ位置計測系70Aの計測結果(計測情報)は、粗動ステージWCS1、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置制御のため、主制御装置20(図14参照)に供給される。
ウエハステージWST2は、ウエハステージWST1と同様、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、粗動ステージ駆動系51B(図14参照)により、XY二次元方向に駆動される粗動ステージWCS2と、粗動ステージWCS2に非接触状態で支持され、粗動ステージWCS2に対して相対移動可能な微動ステージWFS2とを有している。微動ステージWFS2は、微動ステージ駆動系52B(図14参照)によって粗動ステージWCS2に対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動される。
ウエハステージWST2(粗動ステージWCS2)のXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、ウエハステージ位置計測系16Bによって計測される。また、計測ステーション300にある粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2(又はWFS1)の6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)の位置情報は微動ステージ位置計測系70Bによって計測される。ウエハステージ位置計測系16B及び微動ステージ位置計測系70Bの計測結果は、粗動ステージWCS2、微動ステージWFS2(又はWFS1)の位置制御のため、主制御装置20(図14参照)に供給される。
リレーステージDRSTは、粗動ステージWCS1,WCS2と同様、その底面に設けられた複数の非接触軸受(例えばエアベアリング(図示省略))によりベース盤12の上に浮上支持され、リレーステージ駆動系53(図14参照)により、XY二次元方向に駆動可能になっている。
リレーステージDRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報も含む)は、例えば干渉計及び/又はエンコーダなどを含む不図示の位置計測系によって計測される。位置計測系の計測結果は、リレーステージDRSTの位置制御のため、主制御装置20(図14参照)に供給される。
粗動ステージWCS1に微動ステージWFS1(又はWFS2)が支持されたとき、その微動ステージWFS1(又はWFS2)と粗動ステージWCS1とのX、Y、θzの3自由度方向に関する相対位置情報は、粗動ステージWCS1と微動ステージWFS1(又はWFS2)との間に設けられた相対位置計測器22A(図14参照)によって計測可能である。
同様に、粗動ステージWCS2に微動ステージWFS2(又はWFS1)が支持されたとき、その微動ステージWFS2(又はWFS1)と粗動ステージWCS2とのX、Y、θzの3自由度方向に関する相対位置情報は、粗動ステージWCS2と微動ステージWFS2(又はWFS1)との間に設けられた相対位置計測器22B(図14参照)によって計測可能である。
相対位置計測器22A,22Bとしては、例えば微動ステージWFS1,WFS2に設けられたグレーティングを計測対象とする、粗動ステージWCS1、WCS2に、それぞれ設けられた少なくとも2つのヘッドを含み、該ヘッドの出力に基づいて、微動ステージWFS1,WFS2のX軸方向、Y軸方向及びθz方向の位置を計測するエンコーダなどを用いることができる。相対位置計測器22A,22Bの計測結果は、主制御装置20(図14参照)に供給される。
上記各種計測系を含み、ステージ系の構成各部の構成等については、後に詳述する。
さらに、本実施形態の露光装置100は、図4に示されるように、投影ユニットPUの近傍に、可動ブレードBLが設けられている。可動ブレードBLは、ブレード駆動系58(図4では不図示、図14参照)によって、Z軸方向及びY軸方向に駆動可能である。可動ブレードBLは、+Y側の上端部に他の部分より突出した突出部が形成された板状の部材から成る。
本実施形態において、可動ブレードBLの上面は、液体Lqに対して撥液性である。本実施形態において、可動ブレードBLは、例えばステンレス等の金属製の基材と、その基材の表面に形成された撥液性材料の膜とを含む。撥液性材料は、例えばPFA(Tetra fluoro ethylene-perfluoro alkylvinyl ether copolymer)、PTFE(Poly tetra fluoro ethylene)、テフロン(登録商標)等を含む。なお、膜を形成する材料が、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂でも良い。また、可動ブレードBL全体が、PFA、PTFE、テフロン(登録商標)、アクリル系樹脂、及びシリコン系樹脂の少なくとも一つで形成されても良い。本実施形態において、液体Lqに対する可動ブレードBLの上面の接触角は、例えば90度以上である。
可動ブレードBLは、粗動ステージWCS1に支持されている微動ステージWFS1(又はWFS2)に−Y側から係合可能であり、その係合状態で微動ステージWFS1(又はWFS2)の上面とともに、見かけ上一体のフルフラットな面を形成する(例えば図22参照)。可動ブレードBLは、主制御装置20により、ブレード駆動系58を介して駆動され、微動ステージWFS1(又はWFS2)との間で液浸空間(液体Lq)の受け渡しを行う。なお、可動ブレードBLと微動ステージWFS1(又はWFS2)との間の液浸空間(液体Lq)の受け渡しについてはさらに後述する。
この他、本実施形態の露光装置100には、投影ユニットPUの近傍に、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されるものと同様の構成の斜入射方式の多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と略述する)AF(図1では不図示、図14参照)が設けられている。多点AF系AFの検出信号は、不図示のAF信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図14参照)。主制御装置20は、多点AF系AFの検出信号に基づいて、多点AF系AFの複数の検出点それぞれにおけるウエハW表面のZ軸方向の位置情報(面位置情報)を検出し、その検出結果に基づいて走査露光中のウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行する。なお、アライメント装置99(アライメント系AL1、AL21〜AL24)の近傍に多点AF系を設けて、ウエハアライメント(EGA)時にウエハW表面の面位置情報(凹凸情報)を事前に取得し、露光時には、その面位置情報と、後述する微動ステージ位置計測系70Aの一部を構成するレーザ干渉計システム75(図14参照)の計測値とを用いて、ウエハWのいわゆるフォーカス・レベリング制御を実行することとしても良い。この場合、投影ユニットPUの近傍に多点AF系を設けなくても良い。なお、レーザ干渉計システム75ではなく、微動ステージ位置計測系70Aを構成する後述のエンコーダシステム73の計測値を、フォーカス・レベリング制御で用いても良い。
また、本実施形態の露光装置100では、レチクルステージRSTの上方には、例えば米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されるように、CCD等の撮像素子を有し、露光波長の光(本実施形態では照明光IL)をアライメント用照明光とする画像処理方式の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2(図1においてはレチクルアライメント系RA2は、レチクルアライメント系RA1の紙面奥側に隠れている。)が配置されている。一対のレチクルアライメント系RA1,RA2は、投影光学系PLの直下に微動ステージWFS1(又はWFS2)上の後述する計測プレートが位置する状態で、主制御装置20により、レチクルRに形成された一対のレチクルアライメントマーク(図示省略)の投影像と対応する計測プレート上の一対の第1基準マークとを投影光学系PLを介して検出することで、投影光学系PLによるレチクルRのパターンの投影領域の中心と計測プレート上の基準位置、すなわち一対の第1基準マークの中心との位置関係を検出するために用いられる。レチクルアライメント系RA1,RA2の検出信号は、不図示の信号処理系を介して主制御装置20に供給される(図14参照)。なお、レチクルアライメント系RA1,RA2は設けなくても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2002/0041377号明細書などに開示されるように、微動ステージWFS1に光透過部(受光部)が設けられる検出系を搭載して、レチクルアライメントマークの投影像を検出することが好ましい。
ここで、ステージ系の各部の構成等について詳述する。まず、ウエハステージWST1,WST2について説明する。本実施形態では、ウエハステージWST1とウエハステージWST2とは、その駆動系、位置計測系などを含み、全く同様に構成されている。従って、以下では、代表的にウエハステージWST1を取り上げて説明する。
粗動ステージWCS1は、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視で(+Z方向から見て)X軸方向を長手方向とする長方形板状の粗動スライダ部91と、粗動スライダ部91の長手方向の一端部と他端部の上面にYZ平面に平行な状態でそれぞれ固定され、かつY軸方向を長手方向とする長方形板状の一対の側壁部92a,92bと、側壁部92a,92bそれぞれの上面に固定された一対の固定子部93a、93bと、を備えている。粗動ステージWCS1は、全体として、上面のX軸方向中央部及びY軸方向の両側面が開口した高さの低い箱形の形状を有している。すなわち、粗動ステージWCS1には、その内部にY軸方向に貫通した空間部が形成されている。
粗動ステージWCS1は、図5に示されるように、粗動スライダ部91の長手方向の中央の分離線を境として、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとの2つの部分に分離可能に構成されている。従って、粗動スライダ部91は、第1部分WCS1aの一部を構成する第1スライダ部91aと、第2部分WCS1bの一部を構成する第2スライダ部91bとから構成されている。
ベース盤12の内部には、図1に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル14を含む、コイルユニットが収容されている。
コイルユニットに対応して、粗動ステージWCS1の底面、すなわち第1スライダ部91a、第2スライダ部91bの底面には、図2(A)に示されるように、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数の永久磁石18から成る磁石ユニットが設けられている。磁石ユニットは、ベース盤12のコイルユニットと共に、例えば米国特許第5,196,745号明細書などに開示されるローレンツ電磁力駆動方式の平面モータから成る粗動ステージ駆動系51Aa、51Ab(図14参照)を、それぞれ構成している。コイルユニットを構成する各コイル14に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される(図14参照)。
第1、第2スライダ部91a、91bそれぞれの底面には、上記磁石ユニットの周囲に複数のエアベアリング94が固定されている。粗動ステージWCS1の第1部分WCS1a及び第2部分WCS1bは、それぞれエアベアリング94によって、ベース盤12上に所定のクリアランス、例えば数μm程度のクリアランスを介して浮上支持され、粗動ステージ駆動系51Aa、51Abによって、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に駆動される。
通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体化して不図示のロック機構を介してロックされている。すなわち、通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体的に動作する。そこで、以下では、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bが一体化して成る粗動ステージWCS1を駆動する平面モータから成る駆動系を、粗動ステージ駆動系51Aと呼ぶ(図14参照)。
なお、粗動ステージ駆動系51Aとしては、ローレンツ電磁力駆動方式の平面モータに限らず、例えば可変磁気抵抗駆動方式の平面モータを用いることもできる。この他、粗動ステージ駆動系51Aを、磁気浮上型の平面モータによって構成しても良い。この場合、粗動スライダ部91の底面にエアベアリングを設けなくても良くなる。
一対の固定子部93a、93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、外形が板状の部材から成り、その内部に微動ステージWFS1(又はWFS2)を駆動するための複数のコイルから成るコイルユニットCUa、CUbが収容されている。コイルユニットCUa、CUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。コイルユニットCUa、CUbの構成については、さらに後述する。ここで、微動ステージWFS1と微動ステージWFS2とは、全く同様に構成され、同様にして、粗動ステージWCS1に非接触で支持され、駆動されるが、以下では、微動ステージWFS1を代表的に取り上げて説明する。
一対の固定子部93a,93bそれぞれは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向を長手方向とする矩形板状の形状を有する。固定子部93aは、+X側の端部が側壁部92a上面に固定され、固定子部93bは、−X側の端部が側壁部92b上面に固定されている。
微動ステージWFS1は、図2(A)及び図2(B)に示されるように、平面視でX軸方向を長手方向とする八角形板状の部材から成る本体部81と、本体部81の長手方向の一端部と他端部にそれぞれ固定された一対の可動子部82a、82bと、を備えている。
本体部81は、その内部を後述するエンコーダシステムの計測ビーム(レーザ光)が進行可能とする必要があることから、光が透過可能な透明な素材で形成されている。また、本体部81は、その内部におけるレーザ光に対する空気揺らぎの影響を低減するため、中実に形成されている(内部に空間を有しない)。なお、透明な素材は、低熱膨張率であることが好ましく、本実施形態では一例として合成石英(ガラス)などが用いられる。なお、本体部81は、その全体が透明な素材で構成されていても良いが、エンコーダシステムの計測ビームが透過する部分のみが透明な素材で構成されていても良く、この計測ビームが透過する部分のみが中実に形成されていても良い。
微動ステージWFS1の本体部81(より正確には、後述するカバーガラス)の上面中央には、ウエハWを真空吸着等によって保持するウエハホルダ(不図示)が設けられている。本実施形態では、例えば環状の凸部(リム部)内に、ウエハWを支持する複数の支持部(ピン部材)が形成される、いわゆるピンチャック方式のウエハホルダが用いられ、一面(表面)がウエハ載置面となるウエハホルダの他面(裏面)側に後述するグレーティングRGなどが設けられる。なお、ウエハホルダは、微動ステージWFS1と一体に形成されていても良いし、本体部81に対して、例えば静電チャック機構あるいはクランプ機構等を介して、又は接着等により固定されていても良い。前者では、グレーティングRGは微動ステージWFS1の裏面側に設けられることになる。
さらに、本体部81の上面には、ウエハホルダ(ウエハWの載置領域)の外側に、図2(A)及び図2(B)に示されるように、ウエハW(ウエハホルダ)よりも一回り大きな円形の開口が中央に形成され、かつ本体部81に対応する八角形状の外形(輪郭)を有するプレート(撥液板)83が取り付けられている。プレート83の表面は、液体Lqに対して撥液化処理されている(撥液面が形成されている)。プレート83は、その表面の全部(あるいは一部)がウエハWの表面と同一面となるように本体部81の上面に固定されている。また、プレート83の−Y側端部には、図2(B)に示されるように、その表面がプレート83の表面と、すなわちウエハWの表面とほぼ同一面となる状態でX軸方向に細長い長方形の計測プレート86が設置されている。計測プレート86の表面には、前述した一対のレチクルアライメント系RA1,RA2それぞれにより検出される一対の第1基準マークと、プライマリアライメント系AL1により検出される第2基準マークとが少なくとも形成されている(第1及び第2基準マークはいずれも図示省略)。なお、プレート83を本体部81に取り付ける代わりに、例えばウエハホルダを微動ステージWFS1と一体に形成し、微動ステージWFS1の、ウエハホルダを囲む周囲領域(プレート83と同一の領域(計測プレート86の表面を含んでも良い)の上面に撥液化処理を施して、撥液面を形成しても良い。
図2(A)に示されるように、本体部81の上面には、二次元グレーティング(以下、単にグレーティングと呼ぶ)RGが水平(ウエハW表面と平行)に配置されている。グレーティングRGは、透明な素材から成る本体部81の上面に、固定(あるいは形成)されている。グレーティングRGは、X軸方向を周期方向とする反射型回折格子(X回折格子)と、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)と、を含む。本実施形態では、本体部81上で2次元グレーティングが固定あるいは形成される領域(以下、形成領域)は、一例として、ウエハWよりも一回り大きな円形となっている。なお、グレーティングRGに用いられる回折格子の種類は、機械的に溝等が形成されたもののみならず、例えば、感光性樹脂に干渉縞を焼き付けて作成したものであっても良い。
グレーティングRGは、保護部材、例えばカバーガラス84によって覆われて、保護されている。本実施形態では、カバーガラス84の上面に、ウエハホルダを吸着保持する前述の保持機構(静電チャック機構など)が設けられている。なお、本実施形態では、カバーガラス84は、本体部81の上面のほぼ全面を覆うように設けられているが、グレーティングRGを含む本体部81の上面の一部のみを覆うように設けても良い。また、保護部材(カバーガラス84)は、本体部81と同一の素材によって形成しても良いが、これに限らず、保護部材を、例えば金属、セラミックスで形成しても良い。また、グレーティングRGを保護するのに十分な厚みを要するため板状の保護部材が望ましいが、素材に応じて薄膜状の保護部材を用いても良い。
なお、グレーティングRGの形成領域のうち、ウエハホルダの周囲にはみ出す領域に対応するカバーガラス84の一面には、グレーティングRGに照射されるエンコーダシステムの計測ビームがカバーガラス84を透過しないように、すなわち、ウエハホルダ裏面の領域の内外で計測ビームの強度が大きく変動しないように、例えばその形成領域を覆う反射部材(例えば薄膜など)を設けることが望ましい。
この他、一面にグレーティングRGが固定又は形成される透明板の他面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置し、かつその透明板の一面側に保護部材(カバーガラス84)を設ける、あるいは、保護部材(カバーガラス84)を設けずに、グレーティングRGが固定又は形成される透明板の一面をウエハホルダの裏面に接触又は近接して配置しても良い。特に前者では、透明板の代わりにセラミックスなどの不透明な部材にグレーティングRGを固定又は形成しても良いし、あるいは、ウエハホルダの裏面にグレーティングRGを固定又は形成しても良い。あるいは、従来の微動ステージにウエハホルダとグレーティングRGを保持するだけでも良い。また、ウエハホルダを、中実のガラス部材によって形成し、該ガラス部材の上面(ウエハ載置面)にグレーティングRGを配置しても良い。
本体部81は、図2(A)からもわかるように、長手方向の一端部と他端部との下端部に外側に突出した張り出し部が形成された全体として八角形板状部材から成り、その底面の、グレーティングRGに対向する部分に凹部が形成されている。本体部81は、グレーティングRGが配置された中央の領域は、その厚さが実質的に均一な板状に形成されている。
本体部81の+X側、−X側の張り出し部それぞれの上面には、断面凸形状のスペーサ85a、85bが、それぞれの凸部89a、89bを、外側に向けてY軸方向に延設されている。
可動子部82aは、図2(A)及び図2(B)に示されるように、Y軸方向寸法(長さ)及びX軸方向寸法(幅)が、共に固定子部93aよりも短い(半分程度の)2枚の平面視矩形状の板状部材82a1、82a2を含む。2枚の板状部材82a1、82a2は、本体部81の+X側の端部に対し、前述したスペーサ85aの凸部89aを介して、Z軸方向(上下)に所定の距離だけ離間した状態でともにXY平面に平行に固定されている。この場合、板状部材82a2は、スペーサ85aと本体部81の+X側の張り出し部とによって、その−X側端部が挟持されている。2枚の板状部材82a1、82a2の間には、粗動ステージWCS1の固定子部93aの−X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82a1、82a2の内部には、後述する磁石ユニットMUa1、MUa2が、収容されている。
可動子部82bは、スペーサ85bにZ軸方向(上下)に所定の間隔が維持された2枚の板状部材82b1、82b2を含み、可動子部82aと左右対称ではあるが同様に構成されている。2枚の板状部材82b1、82b2の間には、粗動ステージWCS1の固定子部93bの+X側の端部が非接触で挿入されている。板状部材82b1、82b2の内部には、磁石ユニットMUa1、MUa2と同様に構成された磁石ユニットMUb1、MUb2が、収容されている。
ここで、前述したように、粗動ステージWCS1は、Y軸方向に両側面が開口しているので、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1に装着する際には、板状部材82a1、82a2、及び82b1、82b2間に固定子部93a、93bがそれぞれ位置するように、微動ステージWFS1のZ軸方向の位置決めを行い、この後に微動ステージWFS1をY軸方向に移動(スライド)させれば良い。
次に、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1に対して相対的に駆動するための微動ステージ駆動系52Aの構成について説明する。
微動ステージ駆動系52Aは、前述した可動子部82aが有する一対の磁石ユニットMUa1、MUa2と、固定子部93aが有するコイルユニットCUaと、可動子部82bが有する一対の磁石ユニットMUb1、MUb2と、固定子部93bが有するコイルユニットCUbと、を含む。
これをさらに詳述する。図6及び図7(A)並びに図7(B)からわかるように、固定子部93aの内部における−X側の端部には、複数(ここでは、12個)の平面視長方形状のYZコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)55、57が、Y軸方向に等間隔でそれぞれ配置された2列のコイル列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。YZコイル55は、上下方向(Z軸方向)に重ねて配置された平面視長方形状の上部巻線55aと、下部巻線55bと、を有する。また、固定子部93aの内部であって、上述した2列のコイル列の間には、Y軸方向を長手方向とする細長い平面視長方形状の一つのXコイル(以下、適宜「コイル」と略述する)56が、配置されている。この場合、2列のコイル列と、Xコイル56とは、X軸方向に関して等間隔で配置されている。2列のコイル列と、Xコイル56とを含んで、コイルユニットCUaが構成されている。
なお、以下では、図6〜図8(C)を用いて、一対の固定子部93a、93bのうち、一方の固定子部93a、及びこの固定子部93aに支持される可動子部82aについて説明するが、他方(−X側)の固定子部93b及び可動子部82bは、これらと同様に構成され、同様に機能する。従って、コイルユニットCUb、磁石ユニットMUb1,MUb2は、コイルユニットCUa、磁石ユニットMUa1,MUa2と同様に構成されている。
微動ステージWFS1の可動子部82aの一部を構成する+Z側の板状部材82a1の内部には、図6及び図7(A)並びに図7(B)を参照するとわかるように、X軸方向を長手方向とする平面視長方形の複数(ここでは10個)の永久磁石65a、67aが、Y軸方向に等間隔で配置された2列の磁石列が、X軸方向に所定間隔を隔てて配置されている。2列の磁石列それぞれは、コイル55、57に対向して配置されている。
複数の永久磁石65aは、図7(B)に示されるように、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極である永久磁石と、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極である永久磁石とが、Y軸方向に交互に配列されている。複数の永久磁石67aから成る磁石列は、複数の永久磁石65aから成る磁石列と同様に構成されている。
また、板状部材82a1の内部であって、上述の2列の磁石列の間には、X軸方向に離間して配置されたY軸方向を長手方向とする一対(2つ)の永久磁石66a1、66a2が、コイル56に対向して配置されている。図7(A)に示されるように、永久磁石66a1は、上面側(+Z側)がN極で下面側(−Z側)がS極となっており、永久磁石66a2は、上面側(+Z側)がS極で下面側(−Z側)がN極となっている。
上述した複数の永久磁石65a、67a及び66a1、66a2によって、磁石ユニットMUa1が構成されている。
−Z側の板状部材82a2の内部にも、図7(A)に示されるように、上述した+Z側の板状部材82a1と同様の配置で、永久磁石65b、66b1、66b2、67bが配置されている。これらの永久磁石65b、66b1、66b2、67bによって、磁石ユニットMUa2が構成されている。なお、−Z側の板状部材82a2内の永久磁石65b、66b1、66b2、67bは、図6では、磁石65a、66a1、66a2、67aに対して、紙面奥側に重なって配置されている。
ここで、微動ステージ駆動系52Aでは、図7(B)に示されるように、Y軸方向に隣接して配置された複数の永久磁石(図7(B)において、Y軸方向に沿って順に永久磁石65a1〜65a5とする)は、隣接する2つの永久磁石65a1及び65a2それぞれが、YZコイル551の巻線部に対向したとき、これらに隣接する永久磁石65a3が、上述のYZコイル551に隣接するYZコイル552の巻線部に対向しないように(コイル中央の中空部、又はコイルが巻き付けられたコア、例えば鉄芯に対向するように)、複数の永久磁石65及び複数のYZコイル55のY軸方向に関する位置関係(それぞれの間隔)が設定されている。なお、図7(B)に示されるように、永久磁石65a4及び65a5それぞれは、YZコイル552に隣接するYZコイル553の巻線部に対向する。永久磁石65b、67a、67bのY軸方向に関する間隔も、同様になっている(図7(B)参照)。
従って、微動ステージ駆動系52Aでは、一例として図7(B)に示される状態で、図8(A)に示されるように、コイル551,553の上部巻線及び下部巻線それぞれに、+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル551,553には−Y方向の力(ローレンツ力)が作用し、その反作用として、永久磁石65a、65bそれぞれには、+Y方向の力が作用する。これらの力の作用により、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して+Y方向に移動する。上記の場合とは逆に、コイル551,553に、それぞれ+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して−Y方向に移動する。
コイル57に電流を供給することにより、永久磁石67(67a,67b)との間で電磁相互作用が行われ、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動することができる。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFS1のY軸方向の位置を制御する。
また、微動ステージ駆動系52Aでは、一例として図7(B)に示される状態で、図8(B)に示されように、コイル552の上部巻線に+Z方向から見て左回りの電流、下部巻線に+Z方向から見て右回りの電流がそれぞれ供給されると、コイル552と永久磁石65a3との間に吸引力、コイル552と永久磁石65B3との間に反発力(斥力)がそれぞれ発生し、微動ステージWFS1は、これらの吸引力及び反発力によって粗動ステージWCS1に対して下方(−Z方向)、すなわち降下する方向に移動する。上記の場合とは逆向きの電流が、コイル552の上部巻線及び下部巻線のそれぞれに供給されると、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して上方(+Z方向)、すなわち上昇する方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、浮上状態の微動ステージWFS1のZ軸方向の位置を制御する。
また、図7(A)に示される状態で、図8(C)に示されるように、コイル56に+Z方向から見て右回りの電流が供給されると、コイル56に+X方向の力が作用し、その反作用として永久磁石66a1、66a2及び66b1,66b2それぞれには、−X方向の力が作用し、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して−X方向に移動する。また、上記の場合とは逆に、コイル56に+Z方向から見て左回りの電流が供給されると、永久磁石66a1、66a2及び66b1,66b2には、+X方向の力が作用し、微動ステージWFS1は、粗動ステージWCS1に対して+X方向に移動する。主制御装置20は、各コイルに供給する電流を制御することによって、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を制御する。
上述の説明から明らかなように、本実施形態では、主制御装置20は、Y軸方向に配列された複数のYZコイル55、57に対して、一つおきに電流を供給することによって、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動する。また、これと併せて、主制御装置20は、YZコイル55、57のうち、微動ステージWFS1のY軸方向への駆動に使用していないコイルに電流を供給することによって、Y軸方向への駆動力とは別に、Z軸方向への駆動力を発生させ、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1から浮上させる。そして、主制御装置20は、微動ステージWFS1のY軸方向の位置に応じて、電流供給対象のコイルを順次切り替えることによって、微動ステージWFS1の粗動ステージWCS1に対する浮上状態、すなわち非接触状態を維持しつつ、微動ステージWFS1をY軸方向に駆動する。また、主制御装置20は、微動ステージWFS1を粗動ステージWCS1から浮上させた状態で、Y軸方向と併せて独立にX軸方向にも駆動可能である。
また、主制御装置20は、例えば図9(A)に示されるように、微動ステージWFS1の+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる大きさのY軸方向の駆動力(推力)を作用させることによって(図9(A)の黒塗り矢印参照)、微動ステージWFS1をZ軸回りに回転(θz回転)させることができる(図9(A)の白抜き矢印参照)。なお、図9(A)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる駆動力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFS1をZ軸に対して左回りに回転させることができる。
また、主制御装置20は、図9(B)に示されるように、微動ステージWFS1の+X側の可動子部82aと−X側の可動子部82bとに、互いに異なる浮上力(図9(B)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFS1をY軸回りに回転(θy駆動)させること(図9(B)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図9(B)とは反対に、+X側の可動子部82aに作用させる浮上力を−X側よりも大きくすることで、微動ステージWFS1をY軸に対して左回りに回転させることができる。
さらに、主制御装置20は、例えば図9(C)に示されるように、微動ステージWFS1の可動子部82a、82bそれぞれにおいて、Y軸方向の+側と−側とに、互いに異なる浮上力(図9(C)の黒塗り矢印参照)を作用させることによって、微動ステージWFS1をX軸回りに回転(θx駆動)させること(図9(C)の白抜き矢印参照)ができる。なお、図9(C)とは反対に、可動子部82a(及び82b)の−Y側の部分に作用させる浮上力を+Y側の部分に作用させる浮上力よりも小さくすることで、微動ステージWFS1をX軸に対して左回りに回転させることができる。
以上の説明からわかるように、本実施形態では、微動ステージ駆動系52Aにより、微動ステージWFS1を、粗動ステージWCS1に対して非接触状態で浮上支持するとともに、粗動ステージWCS1に対して、非接触で6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)へ駆動することができるようになっている。
また、本実施形態では、主制御装置20は、微動ステージWFS1に浮上力を作用させる際、固定子部93a内に配置された2列のコイル55、57(図6参照)に互いに反対方向の電流を供給することによって、例えば図10に示されるように、可動子部82aに対して、浮上力(図10の黒塗り矢印参照)と同時にY軸回りの回転力(図10の白抜き矢印参照)を作用させることができる。また、主制御装置20は、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、微動ステージWFS1の中央部を+Z方向又は−Z方向に撓ませることができる(図10のハッチング付き矢印参照)。従って、図10に示されるように、微動ステージWFS1の中央部を+Z方向に撓ませることによって、ウエハW及び本体部81の自重に起因する微動ステージWFS1(本体部81)のX軸方向の中間部分の撓みを打ち消して、ウエハW表面のXY平面(水平面)に対する平行度を確保できる。これにより、ウエハWが大径化して微動ステージWFS1が大型化した時などに、特に効果を発揮する。
また、ウエハWが自重等により変形すると、照明光ILの照射領域(露光領域IA)内において、微動ステージWFS1上に載置されたウエハWの表面が、投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入らなくなるおそれもある。そこで、主制御装置20が、上述した微動ステージWFS1のX軸方向に関する中央部を+Z方向に撓ませる場合と同様に、一対の可動子部82a、82bそれぞれに、互いに反対の方向のY軸回りの回転力を作用させることによって、ウエハWがほぼ平坦になるように変形され、露光領域IA内でウエハWの表面が投影光学系PLの焦点深度の範囲内に入るようにすることもできる。なお、図10には、微動ステージWFS1を+Z方向に(凸形状に)撓ませる例が示されているが、コイルに対する電流の向きを制御することによって、これとは反対の方向に(凹形状に)微動ステージWFS1を撓ませることも可能である。
なお、自重撓み補正及び/又はフォーカス・レベリング制御のためだけでなく、ウエハのショット領域内の所定点が露光領域IAを横切る間に、焦点深度の範囲内でその所定点のZ軸方向の位置を変化させて実質的に焦点深度を増大させる超解像技術を採用する場合にも、微動ステージWFS1(及びこれに保持されたウエハW)をY軸に垂直な面(XZ面)内で凹形状又は凸形状に変形させる手法を適用することができる。
本実施形態の露光装置100では、ウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光動作時には、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報(θz方向の位置情報を含む)は、主制御装置20により、後述する微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73(図14参照)を用いて計測される。微動ステージWFS1の位置情報は、主制御装置20に送られ、主制御装置20は、この位置情報に基づいて微動ステージWFS1の位置を制御する。
これに対し、ウエハステージWST1(微動ステージWFS1)が微動ステージ位置計測系70Aの計測領域外に位置する際には、ウエハステージWST1(及び微動ステージWFS1)の位置情報は、主制御装置20により、ウエハステージ位置計測系16A(図1及び図14参照)を用いて計測される。ウエハステージ位置計測系16Aは、図1に示されるように、粗動ステージWCS1側面に鏡面加工により形成された反射面に測長ビームを照射してウエハステージWST1のXY平面内の位置情報を計測するレーザ干渉計を含んでいる。なお、図1では図示が省略されているが、実際には、粗動ステージWCS1には、Y軸に垂直なY反射面とX軸に垂直なX反射面とが形成され、これに対応して、レーザ干渉計もX反射面、Y反射面にそれぞれ測長ビームを照射するX干渉計、Y干渉計とが設けられている。なお、ウエハステージ位置計測系16Aでは、例えばY干渉計は複数の測長軸を有し、各測長軸の出力に基づいて、ウエハステージWST1のθz方向の位置情報(回転情報)をも計測できる。なお、ウエハステージWST1のXY平面内での位置情報は、上述のウエハステージ位置計測系16Aに代えて、その他の計測装置、例えばエンコーダシステムによって計測しても良い。この場合、例えばベース盤12の上面に二次元スケールを配置し、粗動ステージWCS1の底面にエンコーダヘッドを設けることができる。
前述の如く、微動ステージWFS2は、上述した微動ステージWFS1と全く同様に構成されており、微動ステージWFS1に代えて、粗動ステージWCS1に非接触で支持させることができる。この場合、粗動ステージWCS1と、粗動ステージWCS1によって支持された微動ステージWFS2とによって、ウエハステージWST1が構成され、微動ステージWFS2が備える一対の可動子部(各一対の磁石ユニットMUa1、MUa2及びMUb1、MUb2)と粗動ステージWCS1の一対の固定子部93a、93b(コイルユニットCUa、CUb)とによって、微動ステージ駆動系52Aが構成される。そして、この微動ステージ駆動系52Aによって、微動ステージWFS2が、粗動ステージWCS1に対して、非接触で6自由度方向に駆動される。
また、微動ステージWFS2、WFS1は、それぞれ粗動ステージWCS2に非接触で支持させることができ、粗動ステージWCS2と、粗動ステージWCS2によって支持された微動ステージWFS2又はWFS1とによってウエハステージWST2が構成される。この場合、微動ステージWFS2又はWFS1が備える一対の可動子部(各一対の磁石ユニットMUa1、MUa2及びMUb1、MUb2)と粗動ステージWCS2の一対の固定子部93a、93b(コイルユニットCUa、CUb)とによって、微動ステージ駆動系52B(図14参照)が構成される。そして、この微動ステージ駆動系52Bによって、微動ステージWFS2又はWFS1が、粗動ステージWCS2に対して、非接触で6自由度方向に駆動される。
図1に戻り、リレーステージDRSTは、粗動ステージWCS1,WCS2と同様(ただし、第1部分と第2部分とに分離できるようには構成されていない)に構成されたステージ本体44と、ステージ本体44の内部に設けられた搬送装置46(図14参照)とを備えている。従って、ステージ本体44は、粗動ステージWCS1,WCS2と同様に、微動ステージWFS1又はWFS2を非接触で支持(保持)できるようになっており、リレーステージDRSTに支持された微動ステージは、微動ステージ駆動系52C(図14参照)によってリレーステージDRSTに対して6自由度方向(X、Y、Z、θx、θy、θz)に駆動可能である。ただし、微動ステージは、リレーステージDRSTに対して少なくともY軸方向にスライド可能であれば良い。
搬送装置46は、リレーステージDRSTのステージ本体44のX軸方向の両側壁に沿ってY軸方向に所定ストロークで往復移動可能でかつZ軸方向に関しても所定ストロークで上下動可能な搬送部材本体と、微動ステージWFS1又はWFS2を保持して搬送部材本体に対してY軸方向に相対移動可能な移動部材とを含む搬送部材48と、搬送部材48を構成する搬送部材本体及び移動部材を個別に駆動可能な搬送部材駆動系54(図14参照)とを備えている。
次に、図1に示されるアライメント装置99の具体的な構成等について、図11に基づいて説明する。
図11には、メインフレームBDが一部破断された状態で、アライメント装置99が斜視図にて示されている。アライメント装置99は、上述したように、プライマリアライメント系AL1と、4本のセカンダリアライメント系AL21、AL22、AL23、AL24と、を備えている。プライマリアライメント系AL1に対して+X側に配置される一対のセカンダリアライメント系AL21、AL22と、−X側に配置される一対のセカンダリアライメント系AL23、AL24とは、プライマリアライメント系AL1を中心として左右対称な構成となっている。また、セカンダリアライメント系AL21〜AL24は、例えば国際公開第2008/056735号(対応米国特許出願公開第2009/0233234号明細書)などに開示されているように、後述のスライダ及び駆動機構などを含む駆動システムによって独立に移動可能となっている。
プライマリアライメント系AL1は、支持部材202を介して、メインフレームBDの下面にて吊り下げ支持されている。プライマリアライメント系AL1としては、例えば、ウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(各アライメント系内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。このプライマリアライメント系AL1からの撮像信号は、主制御装置20に供給されるようになっている(図14参照)。
セカンダリアライメント系AL21、AL22の上面にはそれぞれスライダSL1、SL2が固定されている。スライダSL1、SL2の+Z側には、メインフレームBDの下面に固定されたFIA定盤302が設けられている。また、セカンダリアライメント系AL23、AL24の上面にはそれぞれスライダSL3、SL4が固定されている。スライダSL3、SL4の+Z側には、メインフレームBDの下面に固定されたFIA定盤102が設けられている。
セカンダリアライメント系AL24は、プライマリアライメント系AL1と同様、FIA系であって、内部にレンズ等の光学部材が設けられた略L字状の鏡筒109を含む。鏡筒109のY軸方向に延びる部分における上面(+Z側の面)には、前述したスライダSL4が固定されており、このスライダSL4は前述のFIA定盤102に対向して設けられている。
FIA定盤102は、磁性体かつ低熱膨張率の部材(例えば、インバ等)から成り、その一部(+Y側の端部近傍)に複数の電機子コイルを含む電機子ユニットが設けられている。電機子ユニットは、一例として、2つのY駆動用コイルと、一対のX駆動用コイル群とを含む。また、FIA定盤102の内部には、液体流路(不図示)が形成されており、該流路内を流れる冷却用液体により、FIA定盤102が所定温度に温調(冷却)されている。
スライダSL4は、スライダ本体、該スライダ本体に設けられた複数の気体静圧軸受、複数の永久磁石、及び磁石ユニットを含む。気体静圧軸受としては、FIA定盤102内の気体流路を介して気体が供給される、いわゆるグランド給気型の気体静圧軸受が用いられている。複数の永久磁石は、前述した磁性体から成るFIA定盤102と対向し、複数の永久磁石とFIA定盤102との間には、磁気的吸引力が常時作用している。従って、複数の気体静圧軸受に気体を供給しない間は、磁気的吸引力により、スライダSL4が、FIA定盤102の下面に最接近(接触)する。複数の気体静圧軸受に気体を供給すると、気体の静圧により、FIA定盤102とスライダSL4との間に斥力が発生する。磁気的吸引力と気体の静圧とのバランスにより、スライダSL4はその上面とFIA定盤102の下面との間に所定のクリアランスが形成された状態で維持(保持)される。以下においては、前者を「着地状態」と呼び、後者を「浮上状態」と呼ぶものとする。
磁石ユニットは、前述の電機子ユニットに対応して設けられており、本実施形態では、磁石ユニットと電機子ユニット(2つのY駆動用コイルと、一対のX駆動用コイル群)との間の電磁相互作用によって、スライダSL4にX軸方向の駆動力及びY軸方向の駆動力、並びにZ軸回りの回転(θz)方向の駆動力を作用させることができる。なお、以下においては、上記磁石ユニットと電機子ユニットとにより構成される駆動機構(アクチュエータ)を、「アライメント系モータ」と呼ぶものとする。
セカンダリアライメント系AL24の+X側に配置されたセカンダリアライメント系AL23は、上述したセカンダリアライメント系AL24と同様に構成され、スライダSL3もスライダSL4とほぼ同様に構成されている。また、スライダSL3とFIA定盤102との間には、前述と同様の駆動機構(アライメント系モータ)が設けられている。
主制御装置20は、セカンダリアライメント系AL24、及びAL23を駆動する(位置調整する)際、前述した気体静圧軸受に対して気体を供給することにより、スライダSL4、SL3とFIA定盤102との間に所定のクリアランスを形成することでスライダSL4、SL3を上記浮上状態とする。そして、主制御装置20は、該浮上状態を維持した状態で、不図示の計測装置の計測値に基づいて、各アライメント系モータを構成する電機子ユニットに供給する電流を制御することにより、スライダSL4(セカンダリアライメント系AL24)、スライダSL3(セカンダリアライメント系AL23)をX軸、Y軸及びθz方向に微小駆動する。
図11に戻り、セカンダリアライメント系AL21,AL22は、上述したセカンダリアライメント系AL23,AL24と同様の構成であり、スライダSL2は、上述したスライダSL3と左右対称の構成を有し、スライダSL1は、上述したスライダSL4と左右対称の構成を有している。また、FIA定盤302の構成は、上述したFIA定盤102と左右対称の構成を有している。
次に、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に移動可能に保持される(ウエハステージWST1を構成する)微動ステージWFS1又はWFS2の位置情報の計測に用いられる微動ステージ位置計測系70A(図14参照)の構成について説明する。ここでは、微動ステージ位置計測系70Aが微動ステージWFS1の位置情報を計測する場合について説明する。
微動ステージ位置計測系70Aは、図1に示されるように、ウエハステージWST1が投影光学系PLの下方に配置された状態で、粗動ステージWCS1の内部に設けられた空間部内に挿入されるアーム部材(計測アーム71A)を備えている。計測アーム71Aは、露光装置100のメインフレームBDに支持部材72Aを介して片持ち状態で支持(一端部近傍を支持)されている。従って、計測アーム71Aは、粗動ステージWCS1の移動に伴い、該粗動ステージWCS1の内部の空間部内に−Y側から挿入される。なお、アーム部材は、ウエハステージの移動の妨げにならない構成を採用する場合には、片持ち支持に限らず、その長手方向の両端部で支持されても良い。また、アーム部材は、前述したグレーティングRG(XY平面と実質的に平行なその配置面)よりも下方(−Z側)に配置されていれば良く、例えばベース盤12の上面よりも下方に配置しても良い。さらに、アーム部材はメインフレームBDに支持されるものとしたが、例えば防振機構を介して設置面(床面など)に設けても良い。この場合、メインフレームBDとアーム部材との相対的な位置関係を計測する計測装置を設けることが好ましい。アーム部材は、メトロロジーアームあるいは計測用部材などとも呼ぶことができる。
計測アーム71Aは、Y軸方向を長手方向とする、幅方向(X軸方向)よりも高さ方向(Z軸方向)の寸法が大きい縦長の長方形断面を有する四角柱状(すなわち直方体状)の部材であり、光を透過する同一の素材、例えばガラス部材が複数貼り合わされて形成されている。計測アーム71Aは、後述するエンコーダヘッド(光学系)が収容される部分を除き、中実に形成されている。計測アーム71Aは、前述したようにウエハステージWST1が投影光学系PLの下方に配置された状態では、先端部が粗動ステージWCS1の空間部内に挿入され、図1に示されるように、その上面が微動ステージWFS1の下面(より正確には、本体部81(図1では不図示、図2(A)等参照)の下面)に対向している。計測アーム71Aの上面は、微動ステージWFS1の下面との間に所定のクリアランス、例えば数mm程度のクリアランスが形成された状態で、微動ステージWFS1下面とほぼ平行に配置される。なお、計測アーム71Aの上面と微動ステージWFSの下面との間のクリアランスは、数mm以上でも以下でも良い。
微動ステージ位置計測系70Aは、図14に示されるように、微動ステージWFS1のX軸方向、Y軸方向、及びθz方向の位置を計測するエンコーダシステム73と、微動ステージWFS1のZ軸方向、θx方向及びθy方向の位置を計測するレーザ干渉計システム75とを備えている。エンコーダシステム73は、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を計測するXリニアエンコーダ73x、微動ステージWFS1のY軸方向の位置を計測する一対のYリニアエンコーダ73ya、73yb(以下、適宜これらを併せてYリニアエンコーダ73yとも呼ぶ)を含む。エンコーダシステム73では、例えば米国特許第7,238,931号明細書、及び国際公開第2007/083758号(対応する米国特許出願公開第2007/0288121号明細書)などに開示されるエンコーダヘッド(以下、適宜ヘッドと略述する)と同様の構成の回折干渉型のヘッドが用いられている。ただし、本実施形態では、ヘッドは、後述するように光源及び受光系(光検出器を含む)が、計測アーム71Aの外部に配置され、光学系のみが計測アーム71Aの内部に、すなわちグレーティングRGに対向して配置されている。以下、特に必要な場合を除いて、計測アーム71Aの内部に配置された光学系をヘッドと呼ぶ。
エンコーダシステム73は、微動ステージWFS1のX軸方向の位置を1つのXヘッド77x(図12(A)及び図12(B)参照)で計測し、Y軸方向の位置を一対のYヘッド77ya、77yb(図12(B)参照)で計測する。すなわち、グレーティングRGのX回折格子を用いて微動ステージWFS1のX軸方向の位置を計測するXヘッド77xによって、前述のXリニアエンコーダ73xが構成され、グレーティングRGのY回折格子を用いて微動ステージWFS1のY軸方向の位置を計測する一対のYヘッド77ya、77ybによって、一対のYリニアエンコーダ73ya、73ybが構成されている。
ここで、エンコーダシステム73を構成する3つのヘッド77x、77ya、77ybの構成について説明する。図12(A)には、3つのヘッド77x、77ya、77ybを代表して、Xヘッド77xの概略構成が示されている。また、図12(B)には、Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの計測アーム71A内での配置が示されている。
図12(A)に示されるように、Xヘッド77xは、その分離面がYZ平面と平行である偏光ビームスプリッタPBS、一対の反射ミラーR1a,R1b、レンズL2a,L2b、四分の一波長板(以下、λ/4板と表記する)WP1a,WP1b、反射ミラーR2a,R2b、及び反射ミラーR3a,R3b等を有し、これらの光学素子が所定の位置関係で配置されている。Yヘッド77ya、77ybも同様の構成の光学系を有している。Xヘッド77x、Yヘッド77ya、77ybそれぞれは、図12(A)及び図12(B)に示されるように、ユニット化されて計測アーム71Aの内部に固定されている。
図12(B)に示されるように、Xヘッド77x(Xリニアエンコーダ73x)では、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられた光源LDxから−Z方向にレーザビームLBx0が射出され、計測アーム71Aの一部にXY平面に対して45°の角度で斜設された反射面RPを介してY軸方向に平行にその光路が折り曲げられる。このレーザビームLBx0は、計測アーム71Aの内部の中実な部分を、計測アーム71Aの長手方向(Y軸方向)に平行に進行し、図12(A)に示される反射ミラーR3aに達する。そして、レーザビームLBx0は、反射ミラーR3aによりその光路が折り曲げられて、偏光ビームスプリッタPBSに入射する。レーザビームLBx0は、偏光ビームスプリッタPBSで偏光分離されて2つの計測ビームLBx1,LBx2となる。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1は反射ミラーR1aを介して微動ステージWFS1に形成されたグレーティングRGに到達し、偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2は反射ミラーR1bを介してグレーティングRGに到達する。なお、ここで「偏光分離」とは、入射ビームをP偏光成分とS偏光成分に分離することを意味する。
計測ビームLBx1,LBx2の照射によってグレーティングRGから発生する所定次数の回折ビーム、例えば1次回折ビームそれぞれは、レンズL2a,L2bを介して、λ/4板WP1a,WP1bにより円偏光に変換された後、反射ミラーR2a,R2bにより反射されて再度λ/4板WP1a,WP1bを通り、往路と同じ光路を逆方向に辿って偏光ビームスプリッタPBSに達する。
偏光ビームスプリッタPBSに達した2つの1次回折ビームは、各々その偏光方向が元の方向に対して90度回転している。このため、先に偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測ビームLBx1の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSで反射される。先に偏光ビームスプリッタPBSで反射された計測ビームLBx2の1次回折ビームは、偏光ビームスプリッタPBSを透過する。それにより、計測ビームLBx1,LBx2それぞれの1次回折ビームは同軸上に合成ビームLBx12として合成される。合成ビームLBx12は、反射ミラーR3bでその光路が、Y軸に平行に折り曲げられて、計測アーム71Aの内部をY軸に平行に進行し、前述の反射面RPを介して、図12(B)に示される、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられたX受光系74xに送光される。
X受光系74xでは、合成ビームLBx12として合成された計測ビームLBx1,LBx2の1次回折ビームが不図示の偏光子(検光子)によって偏光方向が揃えられ、相互に干渉して干渉光となり、この干渉光が不図示の光検出器によって検出され、干渉光の強度に応じた電気信号に変換される。ここで、微動ステージWFS1が計測方向(この場合、X軸方向)に移動すると、2つのビーム間の位相差が変化して干渉光の強度が変化する。この干渉光の強度の変化は、微動ステージWFS1のX軸方向に関する位置情報として主制御装置20(図14参照)に供給される。
図12(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybには、それぞれの光源LDya、LDybから射出され、前述の反射面RPで光路が90°折り曲げられたY軸に平行なレーザビームLBya0、LByb0が入射し、前述と同様にして、Yヘッド77ya、77ybから、偏向ビームスプリッタで偏向分離された計測ビームそれぞれのグレーティングRG(のY回折格子)による1次回折ビームの合成ビームLBya12、LByb12が、それぞれ出力され、Y受光系74ya、74ybに戻される。ここで、光源LDya、LDybから射出されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とは、図12(B)における紙面垂直方向に重なる光路をそれぞれ通る。また、上述のように、光源から照射されるレーザビームLBya0、LByb0とY受光系74ya、74ybに戻される合成ビームLBya12、LByb12とが、Z軸方向に離れた平行な光路を通るように、Yヘッド77ya、77ybでは、それぞれの内部で光路が適宜折り曲げられている(図示省略)。
図13(A)には、計測アーム71Aの先端部が斜視図にて示されており、図13(B)には、計測アーム71Aの先端部の上面を+Z方向から見た平面図が示されている。図13(A)及び図13(B)に示されるように、Xヘッド77xは、X軸に平行な直線LX上で計測アーム71AのセンターラインCL(X軸方向の中点を通るY軸に平行な直線)から等距離にある2点(図13(B)の白丸参照)から、計測ビームLBx1、LBx2(図13(A)中に実線で示されている)を、グレーティングRG上の同一の照射点に照射する(図12(A)参照)。計測ビームLBx1、LBx2の照射点、すなわちXヘッド77xの検出点(図13(B)中の符号DP参照)は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致している(図1参照)。なお、計測ビームLBx1、LBx2は、実際には、本体部81と空気層との境界面などで屈折するが、図12(A)等では、簡略化して図示されている。
図12(B)に示されるように、一対のYヘッド77ya、77ybそれぞれは、計測アーム71Aの前述のセンターラインCLの+X側、−X側に配置されている。Yヘッド77yaは、図13(A)及び図13(B)に示されるように、Y軸に平行な直線LYa上で直線LXからの距離が等しい2点(図13(B)の白丸参照)から、グレーティングRG上の共通の照射点に図13(A)においてそれぞれ破線で示される計測ビームLBya1,LBya2を照射する。計測ビームLBya1,LBya2の照射点、すなわちYヘッド77yaの検出点が、図13(B)に符号DPyaで示されている。
Yヘッド77ybは、センターラインCLに関して、Yヘッド77yaの計測ビームLBya1,LBya2の射出点に対称な2点(図13(B)の白丸参照)から、計測ビームLByb1,LByb2を、グレーティングRG上の共通の照射点DPybに照射する。図13(B)に示されるように、Yヘッド77ya、77ybそれぞれの検出点DPya、DPybは、X軸に平行な直線LX上に配置される。
ここで、主制御装置20は、微動ステージWFS1のY軸方向の位置を、2つのYヘッド77ya、77ybの計測値の平均に基づいて決定する。従って、本実施形態では、微動ステージWFS1のY軸方向の位置は、検出点DPya、DPybの中点DPを実質的な計測点として計測される。中点DPは、計測ビームLBx1,LBX2のグレーティングRG上の照射点と一致する。
すなわち、本実施形態では、微動ステージWFS1のX軸方向及びY軸方向の位置情報の計測に関して、共通の検出点を有し、この検出点は、ウエハWに照射される照明光ILの照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する。従って、本実施形態では、主制御装置20は、エンコーダシステム73を用いることで、微動ステージWFS1上に載置されたウエハWの所定のショット領域にレチクルRのパターンを転写する際、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報の計測を、常に露光位置の直下(微動ステージWFS1の裏面側)で行うことができる。また、主制御装置20は、一対のYヘッド77ya、77ybの計測値の差に基づいて、微動ステージWFS1のθz方向の回転量を計測する。
レーザ干渉計システム75は、図13(A)に示されるように、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3を計測アーム71Aの先端部から、微動ステージWFS1の下面に入射させる。レーザ干渉計システム75は、これら3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3それぞれを照射する3つのレーザ干渉計75a〜75c(図14参照)を備えている。
レーザ干渉計システム75では、3本の測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、図13(A)及び図13(B)に示されるように、その重心が、照射領域(露光領域)IAの中心である露光位置に一致する、二等辺三角形(又は正三角形)の各頂点に相当する3点(計測アーム71Aの上面上の同一直線上に無い3点)から、それぞれZ軸に平行に射出される。この場合、測長ビームLBz3の射出点(照射点)はセンターラインCL上に位置し、残りの測長ビームLBz1、LBz2の射出点(照射点)は、センターラインCLから等距離にある。本実施形態では、主制御装置20は、レーザ干渉計システム75を用いて、微動ステージWFS1のZ軸方向の位置、θz方向及びθy方向の回転量の情報を計測する。なお、レーザ干渉計75a〜75cは、計測アーム71Aの−Y側の端部の上面(又はその上方)に設けられている。レーザ干渉計75a〜75cから−Z方向に射出された測長ビームLBz1、LBz2、LBz3は、前述の反射面RPを介して計測アーム71A内をY軸方向に沿って進行し、その光路がそれぞれ折り曲げられて、上述の3点から射出される。
本実施形態では、微動ステージWFS1の下面に、エンコーダシステム73からの各計測ビームを透過させ、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの透過を阻止する、波長選択フィルタ(図示省略)が設けられている。この場合、波長選択フィルタは、レーザ干渉計システム75からの各測長ビームの反射面をも兼ねる。波長選択フィルタは、波長選択性を有する薄膜などが用いられ、本実施形態では、例えば透明板(本体部81)の一面に設けられ、グレーティングRGはその一面に対してウエハホルダ側に配置される。
以上の説明からわかるように、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73及びレーザ干渉計システム75を用いることで、微動ステージWFS1の6自由度方向の位置を計測することができる。この場合、エンコーダシステム73では、計測ビームの空気中での光路長が極短くかつほぼ等しいため、空気揺らぎの影響が殆ど無視できる。従って、エンコーダシステム73により、微動ステージWFS1のXY平面内の位置情報(θz方向も含む)を高精度に計測できる。また、エンコーダシステム73によるX軸方向、及びY軸方向の実質的なグレーティング上の検出点、及びレーザ干渉計システム75によるZ軸方向の微動ステージWFS1下面上の検出点は、それぞれ露光領域IAの中心(露光位置)に一致するので、いわゆるアッベ誤差の発生が実質的に無視できる程度に抑制される。従って、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aを用いることで、アッベ誤差なく、微動ステージWFS1のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置を高精度に計測できる。また、粗動ステージWCS1が投影ユニットPUの下方にあり、粗動ステージWCS1に微動ステージWFS2が移動可能に支持されている場合には、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Aを用いることで、微動ステージWFS2の6自由度方向の位置を計測することができ、特に、微動ステージWFS2のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置については、アッベ誤差なく、高精度に計測できる。
また、計測ステーション300が備える微動ステージ位置計測系70Bは、図1に示されるように、微動ステージ位置計測系70Aと左右対称であるが、同様に構成されている。従って、微動ステージ位置計測系70Bが備える計測アーム71Bは、Y軸方向を長手方向とし、その+Y側の端部近傍が、支持部材72Bを介してメインフレームBDからほぼ片持ち支持されている。計測アーム71Bは、粗動ステージWCS2の移動に伴い、該粗動ステージWCS2の内部の空間部内に+Y側から挿入される。
粗動ステージWCS2がアライメント装置99の下方にあり、粗動ステージWCS2に微動ステージWFS2又はWFS1が移動可能に支持されている場合には、主制御装置20は、微動ステージ位置計測系70Bを用いることで、微動ステージWFS2(又はWFS1)の6自由度方向の位置を計測することができ、特に、微動ステージWFS2(又はWFS1)のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置については、アッベ誤差なく、高精度に計測できる。
図14には、露光装置100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、前述の局所液浸装置8、粗動ステージ駆動系51A,51B、微動ステージ駆動系52A,52B、及びリレーステージ駆動系53など、露光装置100の構成各部を統括制御する。
上述のようにして構成された本実施形態の露光装置100では、デバイスの製造に際し、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に保持された一方の微動ステージ(ここでは、一例としてWFS1であるものとする)に保持されたウエハWに対して、ステップ・アンド・スキャン方式の露光が行われ、そのウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンがそれぞれ転写される。このステップ・アンド・スキャン方式の露光動作は、主制御装置20により、事前に行われた、ウエハアライメントの結果(例えばエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)により得られるウエハW上の各ショット領域の配列座標を第2基準マークを基準とする座標に変換した情報)、及びレチクルアライメントの結果等に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へ微動ステージWFS1が移動されるショット間移動動作と、レチクルRに形成されたパターンを走査露光方式で各ショット領域に転写する走査露光動作と、を繰り返すことにより、行われる。なお、上記の露光動作は、先端レンズ191とウエハWとの間に液体Lqを保持した状態で、すなわち液浸露光により行われる。また、+Y側に位置するショット領域から−Y側に位置するショット領域の順で行われる。なお、EGAについては、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。
本実施形態の露光装置100では、上述の一連の露光動作中、主制御装置20により、微動ステージ位置計測系70Aを用いて、微動ステージWFS1(ウエハW)の位置が計測され、この計測結果に基づいてウエハWの位置が制御される。
なお、上述の走査露光動作時は、ウエハWをY軸方向に高加速度で駆動する必要があるが、本実施形態の露光装置100では、主制御装置20は、走査露光動作時には、図15(A)に示されように、原則的に粗動ステージWCS1を駆動せず、微動ステージWFS1のみをY軸方向に(必要に応じて他の5自由度方向にも併せて)駆動する(図15(A)の黒塗り矢印参照)ことで、ウエハWをY軸方向に走査する。これは、粗動ステージWCS1を駆動する場合に比べ、微動ステージWFS1のみを動かす方が駆動対象の重量が軽い分、高加速度でウエハWを駆動できて有利だからである。また、前述のように、微動ステージ位置計測系70Aは、その位置計測精度がウエハステージ位置計測系16Aよりも高いので、走査露光時には微動ステージWFS1を駆動した方が有利である。なお、この走査露光時には、微動ステージWFS1の駆動による反力(図15(A)の白抜き矢印参照)の作用により、粗動ステージWCS1が微動ステージWFS1と反対側に駆動される。すなわち、粗動ステージWCS1がカウンタマスとして機能し、ウエハステージWST1の全体から成る系の運動量が保存され、重心移動が生じないので、微動ステージWFS1の走査駆動によってベース盤12に偏荷重が作用するなどの不都合が生じることがない。
一方、X軸方向にショット間移動(ステッピング)動作を行う際には、微動ステージWFS1のX軸方向への移動可能量が少ないことから、主制御装置20は、図15(B)に示されるように、粗動ステージWCS1をX軸方向に駆動することによって、ウエハWをX軸方向に移動させる。
本実施形態では、上述した一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換、ウエハアライメント等が行われる。ウエハ交換は、微動ステージWFS2を支持する粗動ステージWCS2が、計測ステーション300又はその近傍の所定のウエハ交換位置にあるときに、不図示のウエハ搬送系によって、露光済みのウエハWが微動ステージWFS2上からアンロードされるとともに、新たなウエハWが微動ステージWFS2上へロードされることで行われる。ここで、ウエハ搬送系は、例えば多関節ロボットのアームから成る不図示のウエハ交換アームを備えており、該ウエハ交換アームは、先端部に円盤状のベルヌーイ・チャック(又はフロートチャックとも呼ばれる)を有する。ベルヌーイ・チャックは、周知の如く、ベルヌーイ効果を利用し、吹き出される流体(例えば空気)の流速を局所的に大きくし、対象物を非接触で固定(吸着)するチャックである。ここで、ベルヌーイ効果とは、流体の圧力は流速が増すにつれ減少するというベルヌーイの定理(原理)が、流体機械などに及ぼす効果を言う。ベルヌーイ・チャックでは、吸着(固定)対象物の重さ、及びチャックから吹き出される流体の流速で保持状態(吸着/浮遊状態)が決まる。すなわち、対象物の大きさが既知の場合、チャックから吹き出される流体の流速に応じて、保持の際のチャックと保持対象物との隙間の寸法が定まる。本実施形態では、ベルヌーイ・チャックは、ウエハWの吸着(固定ないし保持)に用いられる。
ウエハアライメントに際し、主制御装置20は、まず、図16に示されるように、プライマリアライメント系AL1の直下に微動ステージWFS2上の計測プレート86を位置決めすべく、微動ステージWFS2を駆動し、プライマリアライメント系AL1を用いて、第2基準マークを検出する。そして、主制御装置20は、その検出結果、すなわちプライマリアライメント系AL1の検出中心(指標中心)を基準とする第2基準マークの位置座標(X,Y)を、その第2基準マーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。
そして、主制御装置20は、ウエハステージWST2をステップ移動させつつ、ステップ位置毎に、プライマリアライメント系AL1を含む少なくとも1つのアライメント系を用いて、ウエハW上の特定の複数のショット領域(サンプルショット領域)に付設された、すなわちそのショット領域を区画するストリート(スクライブラインとも呼ばれる)に形成された1又は2以上のアライメントマークを検出する。そして、主制御装置20は、検出の都度、その検出結果、すなわちアライメント系AL1、又はAL2nの検出中心(指標中心)を基準とするアライメントマークの位置座標(X,Y)を、そのアライメントマーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。
以下、図16に示される43個のショット領域が配列されたウエハWを例にとって、ウエハW上の全てのショット領域をサンプルショット領域として選択し、個々のサンプルショット領域に付設された1つ又は2つの特定のアライメントマーク(以下、サンプルマークと呼ぶ)を検出する場合の、ウエハアライメントの手順を、説明する。ここで、ウエハW上には、第1行目及び第7行目に各3個、第2行目、第3行目、第5行目及び第6行目に各7個、第4行目に9個のショット領域が、それぞれ形成されている。なお、以下、適宜、プライマリアライメント系、セカンダリアライメント系を、ともにアライメント系と略記する。また、ウエハアライメント中のウエハステージWST2(微動ステージWFS2)の位置情報は、微動ステージ位置計測系70Bによって計測されるが、以下のウエハアライメントの手順の説明では、微動ステージ位置計測系70Bに関する説明は、省略する。
第2基準マークを検出した後、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、図16に示される位置から−Y方向に所定距離、かつ+X方向に所定距離の位置へ、ステップ駆動して、図17(A)に示されるように、ウエハW上の第1行目の第1及び第3ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを、アライメント系AL22、AL1の検出視野内にそれぞれ位置決めする。ここで、主制御装置20は、図16に示される位置から図17(A)に示される位置に、ウエハステージWST2を、ダイレクトに(斜めに)移動させても良いし、−Y方向、+X方向の順、又は+X方向、−Y方向の順で、ウエハステージWST2をステップ移動させても良い。いずれにしても、主制御装置20は、図17(A)に示される位置に、ウエハステージWST2を、位置決め後、アライメント系AL1,AL22を用いて2つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。
次に、主制御装置20は、図17(A)に示される位置にあるウエハステージWST2を−X方向にステップ駆動して、図17(B)に示されるように、ウエハW上の第1行目の第2及び第3ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを、アライメント系AL1、AL23の検出視野内にそれぞれ位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL1,AL23を用いて2つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。これにより、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、図17(B)に示される位置から−Y方向に所定距離、かつ+X方向に所定距離の位置へ、ステップ駆動して、図18(A)に示されるように、ウエハW上の第2行目の第1、第3、第5、及び第7ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、及びAL23の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL21,AL22、AL1、AL23を用いて4つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。次に、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、図18(A)に示される位置から−X方向にステップ駆動し、図18(B)に示されるように、ウエハW上の第2行目の第2、第4、第6、及び第7ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL22、AL1、AL23、AL24を用いて4つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。これにより、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様の手順で、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。
そして、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終わると、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、そのとき位置決めされている位置から、−Y方向に所定距離、かつ+X方向に所定距離の位置にステップ駆動して、図19(A)に示されるように、ウエハW上の第4行目の第1、第3、第5、第7、及び第9ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL21,AL22、AL1、AL23,AL24を用いて5つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。次に、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、図19(A)に示される位置から−X方向にステップ駆動して、図19(B)に示されるように、ウエハW上の第4行目の第2、第4、第6、第8、及び第9ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23,AL24を用いて5つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。
さらに、主制御装置20は、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第5及び第6行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。最後に、主制御装置20は、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第7行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。
上述のようにして、全てのショット領域に対するサンプルマークの検出が終了すると、主制御装置20は、サンプルマークの検出結果とそのサンプルマーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とを用いて、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示される統計演算を行って、ウエハW上の全てのショット領域の配列(位置座標)を算出する。すなわち、EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)を行う。そして、主制御装置20は、その算出結果を、第2基準マークの検出結果とその検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とを用いて、第2基準マークの位置を基準とする配列(位置座標)に変換する。
以上のように、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、Y軸方向に関しては、−Y方向に徐々にステップ駆動しながら、X軸方向に関しては、+X方向、−X方向に往復駆動して、ウエハW上の全てのショット領域に付設されたアライメントマーク(サンプルマーク)を検出する。ここで、本実施形態の露光装置100では、5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を用いることができるので、X軸方向の往復駆動の距離は短く、且つ1回の往復における位置決め回数も2回と少ない。そのため、単一のアライメント系を用いてアライメントマークを検出する場合と比べて、格段に短時間でアライメントマークを検出することができる。なお、スループット上問題がない場合には、前述の全ショット領域をサンプルショットとするウエハアライメントを、プライマリアライメント系AL1のみを用いて行っても良い。この場合には、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン、すなわち、プライマリアライメント系AL1に対するセカンダリアライメント系AL21〜AL24の相対位置の計測が不要となる。
本実施形態では、主制御装置20は、第2基準マークの検出を含み、ウエハアライメントの際には、計測アーム71Bを含む微動ステージ位置計測系70Bを用いてウエハアライメント時における粗動ステージWCS2に支持された微動ステージWFS2のXY平面内の位置計測を行う。ただし、これに限らず、主制御装置20は、ウエハアライメント時の微動ステージWFS2の移動を粗動ステージWCS2と一体で行う場合には、前述したウエハステージ位置計測系16B(及び相対位置計測器22B)を介してウエハWの位置を計測しながらウエハアライメントを行っても良い。あるいは、例えば、ウエハステージ位置計測系16B及び相対位置計測器22Bを用いて、ウエハW(微動ステージWFS2)のθz回転を計測し、微動ステージWFS2のX位置及びY位置を、微動ステージ位置計測系70Bを用いて計測しながらウエハアライメントを行っても良い。
また、計測ステーション300と露光ステーション200とが離間しているので、ウエハアライメント時と露光時とでは、微動ステージWFS2の位置は、異なる座標系上で管理される。そこで、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。
このようにして微動ステージWFS2に保持されたウエハWに対するウエハアライメントが終了するが、このときは未だ、露光ステーション200において微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対する露光が続行されている。図20(A)には、このウエハWに対するウエハアライメントが終了した段階の、粗動ステージWCS1、WCS2及びリレーステージDRSTの位置関係が示されている。
主制御装置20は、粗動ステージ駆動系51Bを介してウエハステージWST2を図20(B)中の白抜き矢印で示されるように、−Y方向に所定距離駆動し、所定の待機位置(例えば、投影光学系PLの光軸AX)とプライマリアライメント系AL1の検出中心との中央位置にほぼ一致)に静止しているリレーステージDRSTに接触又は500μm程度隔てて近接させる。
次に、主制御装置20は、微動ステージ駆動系52B,52CのY駆動コイルに流れる電流を制御して、ローレンツ力により微動ステージWFS2を、図20(C)中の黒塗り矢印で示されるように、−Y方向に駆動し、粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへ微動ステージWFS2を移載する。図20(D)には、リレーステージDRSTへの微動ステージWFS2の移載が終了した状態が示されている。
主制御装置20は、図20(D)に示される位置にリレーステージDRST及び粗動ステージWCS2を待機させた状態で、微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光が終了するのを待つ。
図22には、露光が終了した直後のウエハステージWST1の状態が示されている。
主制御装置20は、露光終了に先立って、図21の白抜き矢印で示されるように、ブレード駆動系58を介して図4に示される状態から可動ブレードBLを所定量下方に駆動する。これにより、図21に示されるように、可動ブレードBL上面と投影光学系PLの下方に位置する微動ステージWFS1(及びウエハW)上面とが同一面上に位置する。そして、主制御装置20は、この状態で、露光が終了するのを待つ。
そして、露光が終了すると、主制御装置20は、ブレード駆動系58を介して可動ブレードBLを+Y方向に所定量駆動し(図22中の白抜き矢印参照)、可動ブレードBLを、微動ステージWFS1に接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接させる。すなわち、主制御装置20は、可動ブレードBLと微動ステージWFS1とをスクラム状態に設定する。
次に、主制御装置20は、図23に示されるように、可動ブレードBLと微動ステージWFS1とのスクラム状態を維持しつつ、ウエハステージWST1と一体で可動ブレードBLを+Y方向に駆動する(図23の白抜き矢印参照)。これにより、先端レンズ191との間に保持されていた液体Lqで形成される液浸空間が、微動ステージWFS1から可動ブレードBLに渡される。図23には、液体Lqで形成される液浸空間が微動ステージWFS1から可動ブレードBLに渡される直前の状態が示されている。この図23の状態では、先端レンズ191と、微動ステージWFS1及び可動ブレードBLとの間に、液体Lqが保持されている。なお、可動ブレードBLと微動ステージWFS1とを近接させて駆動する場合、液体Lqの漏出が防止あるいは抑制されるように可動ブレードBLと微動ステージWFS1とのギャップ(クリアランス)を設定することが好ましい。ここで、近接は、可動ブレードBLと微動ステージWFS1とのギャップ(クリアランス)が零の場合、すなわち両者が接触する場合をも含む。
そして、微動ステージWFS1から可動ブレードBLへの液浸空間の受け渡しが終了すると、主制御装置20は、図24に示されるように、微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、前述の待機位置で微動ステージWFS2を保持して、粗動ステージWCS2と近接した状態で待機しているリレーステージDRSTに接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接する。この微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、+Y方向に移動している途中の段階で、主制御装置20は、搬送部材駆動系54を介して搬送装置46の搬送部材48を粗動ステージWCS1の空間部内に挿入している。
そして、微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1が、リレーステージDRSTに接触又は近接した時点で、主制御装置20は、搬送部材48を上方に駆動して、下方から微動ステージWFS1を支持させる。
そして、この状態で、主制御装置20は、不図示のロック機構を解除し、粗動ステージWCS1を、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとに分離する。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1から離脱可能となる。そこで、主制御装置20は、図25(A)の白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS1を支持している搬送部材48を下方に駆動する。
そして、主制御装置20は、粗動ステージWCS1の、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとを合体後、不図示のロック機構をロックする。
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS1を下方から支持する搬送部材48をリレーステージDRSTのステージ本体44の内部に移動させる。図25(B)には、搬送部材48の移動が行われている状態が示されている。また、主制御装置20は、搬送部材48の移動と並行して、微動ステージ駆動系52C,52AのY駆動コイルに流れる電流を制御して、ローレンツ力により微動ステージWFS2を、図25(B)中の黒塗り矢印で示されるように、−Y方向に駆動し、微動ステージWFS2をリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1に移載(スライド移動)する。
また、主制御装置20は、微動ステージWFS1がリレーステージDRSTの空間に完全に収容されるように、搬送部材48の搬送部材本体をリレーステージDRSTの空間に収容後、微動ステージWFS1を保持している移動部材を搬送部材本体上で+Y方向に移動させる(図25(C)中の白抜き矢印参照)。
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1を、−Y方向に移動して、可動ブレードBLから微動ステージWFS2に、先端レンズ191との間で保持されている液浸空間を渡す。この液浸空間(液体Lq)の受け渡しは、前述した微動ステージWFS1から可動ブレードBLへの液浸領域の受け渡しと逆の手順で行われる。
そして、主制御装置20は、露光開始に先立って、前述の一対のレチクルアライメント系RA1,RA2、及び微動ステージWFS2の計測プレート86上の一対の第1基準マークなどを用いて、通常のスキャニング・ステッパと同様の手順(例えば、米国特許第5,646,413号明細書などに開示される手順)で、レチクルアライメントを行う。図25(D)には、レチクルアライメント中の微動ステージWFS2が、これを保持する粗動ステージWCS1とともに示されている。そして、主制御装置20は、レチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作を行い、ウエハW上の複数のショット領域にレチクルRのパターンをそれぞれ転写する。この露光は、図25(E)及び図25(F)からも明らかなように、レチクルアライメント後、微動ステージWFS2を一端−Y側に戻し、ウエハW上の+Y側のショット領域から−Y側のショット領域の順で行われる。
上記の液浸空間の受け渡し、レチクルアライメント及び露光と並行して、以下のような動作が行われている。
すなわち、主制御装置20は、図25(D)に示されるように、微動ステージWFS1を保持している搬送部材48を粗動ステージWCS2の空間内に移動させる。このとき、主制御装置20は、搬送部材48の移動とともに、微動ステージWFS1を保持している移動部材を搬送部材本体上で+Y方向に移動させる。
次に、主制御装置20は、不図示のロック機構を解除し、粗動ステージWCS2を、第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとに分離するとともに、図25(E)中の白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS1を保持している搬送部材48を上方に駆動し、微動ステージWFS1を、微動ステージWFS1が備える各一対の可動子部が、粗動ステージWCS2の一対の固定子部に係合可能となる高さに位置決めする。
そして、主制御装置20は、粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとを合体させる。これにより、露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1が、粗動ステージWCS2に支持される。そこで、主制御装置20は、不図示のロック機構をロックする。
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS1を支持している粗動ステージWCS2を、図25(F)の白抜き矢印で示されるように+Y方向に駆動し、計測ステーション300に移動させる。
その後、主制御装置20によって、微動ステージWFS1上では、ウエハ交換、第2基準マークの検出、ウエハアライメント等が、前述と同様の手順で行われる。
そして、主制御装置20は、ウエハアライメントの結果得られたウエハW上の各ショット領域の配列座標を、第2基準マークを基準とする配列座標に変換する。この場合も、微動ステージ位置計測系70Bを用いて、アライメントの際の微動ステージWFS1の位置計測が行われる。
このようにして微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対するウエハアライメントが終了するが、このときは未だ、露光ステーション200において微動ステージWFS2に保持されたウエハWに対する露光が続行されている。
そして、主制御装置20は、前述と同様にして、微動ステージWFS1をリレーステージDRSTへ移載する。主制御装置20は、リレーステージDRST及び粗動ステージWCS2を前述の待機位置で待機させた状態で、微動ステージWFS2上のウエハWに対する露光が終了するのを待つ。
以降、同様の処理が、微動ステージWFS1、WFS2を交互に用いて繰り返し行われ、複数枚のウエハWに対する露光処理が連続して行われる。
以上詳細に説明したように、本実施形態の露光装置100によると、露光ステーション200において、粗動ステージWCS1に相対移動可能に保持された微動ステージWFS1(又はWFS2)上に載置されたウエハWがレチクルR及び投影光学系PLを介して露光光ILで露光される。この際、粗動ステージWCS1に移動可能に保持されている微動ステージWFS1(又はWFS2)のXY平面内の位置情報は、主制御装置20により、微動ステージWFS1(又はWFS2)に配置されたグレーティングRGに対向する計測アーム71Aを有する微動ステージ位置計測系70Aのエンコーダシステム73を用いて計測される。この場合、粗動ステージWCS1には、その内部に空間部が形成され、微動ステージ位置計測系70Aの各ヘッドは、この空間部内に配置されているので、微動ステージWFS1(又はWFS2)と微動ステージ位置計測系70Aの各ヘッドとの間には、空間が存在するのみである。従って、各ヘッドを微動ステージWFS1(又はWFS2)(グレーティングRG)に近接して配置することができ、これにより、微動ステージ位置計測系70Aによる微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報の高精度な計測が可能になる。また、この結果、主制御装置20による粗動ステージ駆動系51A及び/又は微動ステージ駆動系52Aを介した微動ステージWFS1(又はWFS2)の高精度な駆動が可能になる。
また、この場合、計測アーム71Aから射出される、微動ステージ位置計測系70Aを構成するエンコーダシステム73、レーザ干渉計システム75の各ヘッドの計測ビームのグレーティングRG上の照射点は、ウエハWに照射される露光光ILの照射領域(露光領域)IAの中心(露光位置)に一致している。従って、主制御装置20は、いわゆるアッベ誤差の影響を受けることなく、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報を高精度に計測することができる。また、計測アーム71AをグレーティングRGの直下に配置することによって、エンコーダシステム73の各ヘッドの計測ビームの大気中の光路長を極短くできるので、空気揺らぎの影響が低減され、この点においても、微動ステージWFS1(又はWFS2)の位置情報を高精度に計測することができる。
また、本実施形態では、計測ステーション300には、微動ステージ位置計測系70Aと左右対称に構成された微動ステージ位置計測系70Bが設けられている。そして、計測ステーション300において、粗動ステージWCS2に保持された微動ステージWFS2(又はWFS1)上のウエハWに対するウエハアライメントがアライメント系AL1、AL21〜AL24などによって行われる際、粗動ステージWCS2に移動可能に保持されている微動ステージWFS2(又はWFS1)のXY平面内の位置情報が、微動ステージ位置計測系70Bによって高精度に計測される。この結果、主制御装置20による粗動ステージ駆動系51B及び/又は微動ステージ駆動系52Bを介した微動ステージWFS2(又はWFS1)の高精度な駆動が可能になる。
また、本実施形態では、露光ステーション200側の計測アーム71Aと計測ステーション300側の計測アーム71Bとは、互いの自由端と固定端とが反対向きに設定されているので、それらの計測アーム71A,71Bに邪魔されることなく、粗動ステージWCS1を計測ステーション300に(より正確には、リレーステージDRSTに)近づけることができるとともに、粗動ステージWCS2を露光ステーション200に(より正確には、リレーステージDRSTに)近づけることができる。
また、本実施形態によると、露光前のウエハを保持する微動ステージWFS2(又はWFS1)の粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへの受け渡し及びリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1への受け渡しは、粗動ステージWCS2、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS1の上端面(一対の固定子部93a、93bを含むXY平面に平行な面(第1面))に沿って微動ステージWFS2(又はWFS1)を、スライド移動させることで行われる。また、露光済みのウエハを保持する微動ステージWFS1(又はWFS2)の粗動ステージWCS1からリレーステージDRSTへの受け渡し及びリレーステージDRSTから粗動ステージWCS2への受け渡しは、第1面の−Z側に位置する、粗動ステージWCS1、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS2の内部の空間内で微動ステージWFS1(又はWFS2)を移動させることで行われる。従って、粗動ステージWCS1とリレーステージDRSTとの間、及び粗動ステージWCS2リレーステージDRSTとの間における、ウエハの受け渡しを、装置のフットプリントの増加を極力抑制して、実現することが可能になる。
また、上記実施形態では、リレーステージDRSTは、XY平面内で移動可能な構成であるにもかかわらず、前述の一連の並行処理動作の説明から明らかなように、実際のシーケンスでは、前述した待機位置に待機したままである。この点においても、装置のフットプリントの増加が抑制されている。
また、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Aを介して粗動ステージWCS1の第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとがそれぞれ駆動され、該第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとが分離すると、分離前の粗動ステージWCS1によって保持されていた微動ステージWFS1(又はWFS2)を、露光済みのウエハWを保持したまま、粗動ステージWCS1から容易に離脱させることができる。すなわち、微動ステージWFS1と一体でウエハWを粗動ステージWCS1から容易に離脱させることができる。
この場合において、本実施形態では、粗動ステージWCS1の内部の空間部内に先端部が位置する片持ち支持状態の計測アーム71Aの固定端から自由端に向かう方向(+Y方向)に粗動ステージWCS1と一体で微動ステージWFS1(又はWFS2)を移動させた後、粗動ステージWCS1を第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとに分離させて、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、粗動ステージWCS1から容易に離脱させるので、その離脱の際に、計測アーム71Aに邪魔されることなく、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、粗動ステージWCS1から離脱させることができる。
また、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)が粗動ステージWCS1から離脱した後、露光前のウエハWを保持する別の微動ステージWFS2(又はWFS1)を、粗動ステージWCS1に保持させる。従って、露光済みのウエハWを保持する微動ステージWFS1(又はWFS2)と、露光前のウエハWを保持する別の微動ステージWFS2(又はWFS1)とを、それぞれウエハWを保持したままの状態で、粗動ステージWCS1から離脱、又は粗動ステージWCS1に保持させることが可能になる。
また、主制御装置20により、搬送部材駆動系54を介して搬送部材48が駆動され、露光済みのウエハWを保持したまま粗動ステージWCS1から離脱した微動ステージWFS1(又はWFS2)がリレーステージDRSTの内部空間に収納される。
また、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Bを介して粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとが分離された状態で、搬送部材駆動系54を介して搬送部材48が駆動され、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)が所定高さに位置決めされる。そして、主制御装置20により、粗動ステージ駆動系51Bを介して粗動ステージWCS2の第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとが一体化されることで、露光済みのウエハWを保持した微動ステージWFS1(又はWFS2)を、リレーステージDRSTから粗動ステージWCS2に受け渡すことができる。
さらに、主制御装置20により、露光前のウエハWを保持する微動ステージWFS2(又はWFS1)が、微動ステージ駆動系52B,52Cを介して粗動ステージWCS2からリレーステージDRSTへ、さらには微動ステージ駆動系52C,52Aを介してリレーステージDRSTから粗動ステージWCS1へ、移載される。
従って、本実施形態の露光装置100によると、ウエハWが大型化しても、特に支障なく、微動ステージWFS1又はWFS2と一体でウエハWを、粗動ステージWCS1、リレーステージDRST、及び粗動ステージWCS2の3者間で、受け渡すことができる。
また、可動ブレードBLは、微動ステージWFS1(又はWFS2)が先端レンズ191(投影光学系PL)との間で液体Lqを保持しているとき、Y軸方向に関して微動ステージWFS1(又はWFS2)に接触又は300μm程度のクリアランスを介して近接するスクラム状態となり、該スクラム状態を維持して微動ステージWFS1(又はWFS2)と共にY軸方向に沿って計測アーム71Aの固定端側から自由端側に移動し、その移動後に先端レンズ191(投影光学系PL)との間で液体Lqを保持する。このため、計測アーム71Aに邪魔されることなく、先端レンズ191(投影光学系PL)との間に保持される液体Lq(該液体Lqによって形成される液浸空間)を、微動ステージWFS1(又はWFS2)から可動ブレードBLに受け渡すことが可能となる。
また、本実施形態の露光装置100によると、微動ステージWFS1(又はWFS2)を精度良く駆動することができるので、この微動ステージWFS1(又はWFS2)に載置されたウエハWをレチクルステージRST(レチクルR)に同期して精度良く駆動し、走査露光により、レチクルRのパターンをウエハW上に精度良く転写することが可能になる。また、本実施形態の露光装置100では、露光ステーション200において、微動ステージWFS1(又はWFS2)上に載置されたウエハWに対する露光動作を行うのと並行して、計測ステーション300において、微動ステージWFS2(又はWFS1)上のウエハ交換、及びそのウエハWに対するアライメント計測などを行うことができるので、ウエハ交換、アライメント計測、露光の各処理をシーケンシャルに行う場合に比べて、スループットの向上が可能である。
なお、上記実施形態では、図25(A)〜図25(C)を用いて、露光済のウエハWを保持する微動ステージWFS1を先にリレーステージDRSTの搬送部材48に受渡し、その後でリレーステージDRSTに保持された微動ステージWFS2をスライドさせて粗動ステージWCS1で保持することとした。しかし、これに限らず、微動ステージWFS2を先にリレーステージDRSTの搬送部材48に受渡し、その後で粗動ステージWCS1に保持された微動ステージWFS1をスライドさせてリレーステージDRSTで保持しても良い。
また、上記実施形態では、微動ステージWFS1、WFS2を、粗動ステージWCS1、WCS2間で入れ替えるために、リレーステージDRSTに対して粗動ステージWCS1、WCS2をそれぞれ近接させる場合、リレーステージDRSTと粗動ステージWCS1、WCS2とのギャップ(クリアランス)を300μm程度に設定するものとしたが、このギャップは、例えば可動ブレードBLと微動ステージWFS1とを近接させて駆動する場合などのように狭く設定する必要はない。この場合、リレーステージDRSTと粗動ステージとの間での微動ステージの移動時に微動ステージが大きく傾かない(要はリニアモータの固定子と可動子とが接触しない)範囲で、リレーステージDRSTと粗動ステージとを離しても良い。すなわち、リレーステージDRSTと粗動ステージWCS1、WCS2とのギャップは、300μm程度に限らず、極端に大きくしても良い。
なお、上記実施形態の露光装置100では、ウエハWを保持する微動ステージWFS1、WFS2は、ウエハアライメント時には、計測ステーション300にある粗動ステージWCS2に支持され、露光時には、露光ステーション200にある粗動ステージWCS1に支持される。このため、微動ステージWFS1、WFS2(及びこれに保持されるウエハW)の自重等に起因する撓みの状態が、露光時とウエハアライメント時とで異なることが考えられる。このような場合を考慮して、予め、粗動ステージWCS1に支持された状態における微動ステージWFS1、WFS2の撓みと、粗動ステージWCS2に支持された状態における微動ステージWFS1、WFS2の撓みとの差を、求め、その差に起因して生じるウエハWのX,Y座標値のずれを、撓みに伴うアライメントマークの検出誤差を補正するためのオフセット情報として求めておいても良い。
あるいは、粗動ステージWCS1,WCS2に支持されている際の微動ステージWFS1、WFS2の撓みの程度、すなわちウエハWの面位置を統一するために、さらに撓みに伴うアライメントマークの検出誤差(及び露光の際のフォーカス誤差等)を回避するために、図10に示されるように+Z方向に(凸形状に)、又は−Z方向に(凹形状に)、微動ステージWFS2(WFS1)を撓めることとしても良い。
ただし、本実施形態では、露光ステーション200、計測ステーション300のいずれにおいても、微動ステージWFS1、WFS2のXY平面内の位置は、微動ステージWFS1、WFS2に配置されたグレーティングRGを用いるエンコーダシステムによって計測され、また、微動ステージWFS1、WFS2が撓んだとき、これに伴ってグレーティングRGも同様に撓む。このため、実際には、微動ステージWFS1、WFS2の撓みの程度が、露光時とアライメント時とで異なっても、大きな影響は生じない。特に、ウエハWの全ショット領域を、サンプルショット領域とするウエハアライメント(EGA)を行う場合には、微動ステージWFS1、WFS2の撓みの程度が、露光時とアライメント時とで異なっても、殆ど支障はない。プライマリアライメント系AL1のみを用いて、全ショット領域を、サンプルショット領域とするウエハアライメント(EGA)を行う場合には、微動ステージWFS1、WFS2の撓みの程度は考慮する必要がない。
なお、上記実施形態では、粗動ステージWCS1,WCS2に加えて、リレーステージDRSTを備える場合について説明したが、以下で説明する第2の実施形態のように、リレーステージは、必ずしも設けなくても良い。この場合には、例えば粗動ステージWCS2と粗動ステージWCS1との間で微動ステージの受け渡しを直接行う、あるいは例えばロボットアームその他の支持装置を介して粗動ステージWCS1,WCS2に対して、微動ステージを受け渡すこととすれば良い。前者の場合、例えば粗動ステージWCS1に対して微動ステージを渡し、粗動ステージWCS1から微動ステージを受け取って不図示の外部搬送系に渡す搬送機構を、粗動ステージWCS2に設けても良い。この場合、外部搬送系によってウエハを保持する微動ステージを粗動ステージWCS2に対して装着するようにすれば良い。後者の場合、粗動ステージWCS1、WCS2の一方が支持する微動ステージを支持装置に受け渡し、他方が支持する微動ステージを一方に直接受け渡し、最後に支持装置が支持している微動ステージを他方に受け渡す。この場合、支持装置としては、ロボットアームなどの他、通常時は、床面から上方に突出しないようにベース盤12の内部に収まっており、粗動ステージWCS1、WCS2が2つの部分に分離した際に上昇して微動ステージを支持し、支持したまま下降する上下動可能なテーブルなどを用いることができる。この他、粗動ステージWCS1、WCS2の粗動スライダ部91にY軸方向に細長い切り欠きが形成されている場合には、軸部が床面から上方に突出した上下動可能なテーブルなどを用いることもできる。いずれにしても支持装置は、その微動ステージを支持する部分が、少なくとも一方向に可動で、微動ステージを支持した状態で、粗動ステージWCS1、WCS2間で微動ステージが直接受け渡される際、その妨げとならない構造であれば良い。いずれにしてもリレーステージを設けない場合には、その分装置のフットプリントを小さくすることができる。
《第2の実施形態》
以下、本発明の第2の実施形態を、図26〜図45に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いると共に、その説明を簡略化し若しくは省略する。
図26には、本第2の実施形態の露光装置1100の概略的な構成が平面図にて示され、図27には、図26の露光装置1100を概略的に示す側面図が示されている。また、図29(A)には、の露光装置1100が備えるウエハステージを示す−Y方向から見た側面図が示され、図29(B)には、ウエハステージの平面図が示されている。また、図30(A)には、粗動ステージが取り出して示す平面図にて示され、図30(B)には、粗動ステージが2部分に分離した状態が平面図にて示されている。
露光装置1100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。
露光装置1100は、図26及び図27に示されるように、ベース盤12上の計測ステーション300と前記露光ステーション200との間に配置されたセンターテーブル130を、前述のリレーステージに代えて、備えている。また、露光装置1100では、センターテーブル130が設けられたことに対応して、粗動ステージWCS1、WCS2の粗動スライダ部91に、U字状の切り欠き95が形成されている(図30(A)参照)。
露光装置1100では、微動ステージ位置計測系70A,70Bに加えて、微動ステージWFS1(又はWFS2)の少なくともθz回転を計測する微動ステージ位置計測系70C(図32参照)が、設けられている。
露光装置1100では、その他の部分の構成は、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様になっている。以下では、重複説明を避ける観点から、露光装置100との相違点を中心に説明を行う。
センターテーブル130は、図26に示されるように、計測ステーション300と前記露光ステーション200との間の位置であって、前述の基準軸LV上にその中心がほぼ一致して配置されている。センターテーブル130は、図28に示されるように、ベース盤12の内部に配置された駆動装置132と、該駆動装置132によって上下に駆動される軸134と、軸134の上端に固定された平面視X字形のテーブル本体136とを備えている。センターテーブル130の駆動装置132は、主制御装置20によって制御される(図32参照)。
露光装置1100が備える粗動ステージWCS1、WCS2は、図30(A)に、粗動ステージWCS1を代表的に取り上げて示されるように、粗動スライダ部91の長手方向(X軸方向)の中央のY軸方向の一側(+Y側)端部に前述の駆動軸134の直径より大きな幅のU字状の切り欠き95が形成されている。
通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体化して不図示のロック機構を介してロックされている。すなわち、通常は、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとは、一体的に動作する。そして、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bが一体化して成る粗動ステージWCS1が、粗動ステージ駆動系51Aa、51Abを含む粗動ステージ駆動系51Aによって駆動される(図32参照)。
粗動ステージWCS2も、粗動ステージWCS1と同様に第1部分WCS2aと第2部分WCS2bとの2つの部分に分離可能に構成され、粗動ステージ駆動系51Aと同様に構成された粗動ステージ駆動系51Bによって駆動される(図32参照)。なお、粗動ステージWCS2は、粗動ステージWCS1とは反対向き、すなわち粗動スライダ部91の切り欠き95がY軸方向の他側(−Y側)に向かって開口する向きで、ベース盤12上に配置されている。
微動ステージ位置計測系70Cは、図26に示されるように、計測ステーション300に設けられたヘッドユニット98A〜98Dを含んで構成されている。ヘッドユニット98A〜98Dは、アライメント系AL1、AL21〜AL24(アライメント装置99)の周囲に配置され、不図示の支持部材を介して、メインフレームBDに吊り下げ状態で固定されている。
ヘッドユニット98A及び98Bは、図31に拡大して示されるように、それぞれ、アライメント系AL21,AL22及びAL23,AL24の−Y側に、X軸方向に等間隔で配列された複数(ここでは10個)のY軸方向を計測方向とするエンコーダヘッド(Yヘッド)96k,97k(k=1〜10)を備えている。ヘッドユニット98C及び98Dは、それぞれ、アライメント系AL21,AL22及びAL23,AL24の+Y側に、X軸方向に等間隔で配列された複数(ここでは8個)のYヘッド96k,97k(k=11〜18)を備えている。以下では、必要に応じて、Yヘッド96k,97kをYヘッド96,97とも表記する。Yヘッド96,97の配置については後述する。
図29(B)に示されるように、プレート83の上面におけるX軸方向(図29(B)における紙面内左右方向)の一側と他側の領域それぞれには、Yヘッド96,97の計測対象であるYスケール87Y1,87Y2が固定されている。Yスケール87Y1,87Y2それぞれは、例えばX軸方向を長手方向とする格子線が所定ピッチでY軸方向に沿って配列される、Y軸方向を周期方向とする反射型の格子(例えば1次元回折格子)によって構成されている。
Yスケール87Y1,87Y2は、例えば薄板状のガラスに上記回折格子の目盛りを、例えば1μmピッチで刻んで作成されている。なお、図29(B)では、図示の便宜上から、格子のピッチは、実際のピッチに比べて格段に広く図示されている。その他の図においても同様である。なお、Yスケール87Y1,87Y2に用いられる回折格子の種類は、機械的に溝等が形成されたもののみならず、例えば、感光性樹脂に干渉縞を焼き付けて作成したものであっても良い。また、回折格子を保護するために、撥水性を備えた低熱膨張率のガラス板で、その表面がウエハの表面と同じ高さ(面位置)になるようにして回折格子をカバーしても良い。
Yヘッド96,97は、次の条件a〜cを満足するように配置されている。
a.ウエハアライメント時などに微動ステージWFS1(又はWFS2)がアライメント装置99の下方を移動する際に、常に、各1つのYヘッド96,97がそれぞれ微動ステージWFS1(又はWFS2)上のYスケール87Y1,87Y2に対向する。
b.微動ステージWFS1(又はWFS2)がアライメント装置99の下方でX軸方向に移動する際、隣接する2つのYヘッド96間及び97間でつなぎ処理(位置計測情報の連続性を保障するための処理)を行うべき位置にあるときには、その隣接する各2つのYヘッドが、それぞれ、Yスケール87Y1,87Y2に同時に対向する。すなわち、Yヘッド96,97のX軸方向の配列間隔は、それぞれ、Yスケール87Y1,87Y2のX軸方向の幅(格子線の長さ)よりも短い(狭い)。
c.微動ステージWFS1(又はWFS2)がアライメント装置99の下方でY軸方向に移動する際、Yヘッド961〜9610と9611〜9618との間(ヘッドユニット98A,98C間)でつなぎ処理を行うべき位置にあるときには、ヘッドユニット98A,98Cに属する各1つのYヘッドが同時にYスケール87Y1に対向する。同様に、Yヘッド971〜9710と9711〜9718との間(ヘッドユニット98B,98D間)でつなぎ処理を行うべき位置にあるときには、ヘッドユニット98B,98Dに属する各1つのYヘッドが同時にYスケール87Y2に対向する。すなわち、ヘッドユニット98A,98CのY軸方向の離間距離とヘッドユニット98B,98DのY軸方向の離間距離とは、それぞれ、Yスケール87Y1,87Y2のY軸方向の長さよりも短い。
なお、Yヘッド96,97は、Yスケール87Y1,87Y2の上面から数mm程度上方の位置に配置されている。
Yヘッド96のそれぞれは、Yスケール87Y1に上方(+Z側)から計測ビームを照射し、Yスケール87Y1(回折格子)から発生する回折光を受光して、Yスケール87Y1(すなわち微動ステージWFS1(又はWFS2)の+X端部)のY位置を計測する。同様に、Yヘッド97のそれぞれは、Yスケール87Y2に上方(+Z側)から計測ビームを照射し、Yスケール87Y2(回折格子)から発生する回折光を受光して、Yスケール87Y2(すなわち微動ステージWFS1(又はWFS2)の−X端部)のY位置を計測する。
前述のように、微動ステージWFS1(又はWFS2)がアライメント装置99の下方を移動する際に、ヘッドユニット98A,98C及び98B,98Dに属する少なくとも各1つのYヘッド96及び97が、それぞれYスケール87Y1、87Y2に対向する。従って、ヘッドユニット98A,98C及び98B,98Dによって、微動ステージWFS1(又はWFS2)のθz回転(及びY位置)が計測される。ここで、Yスケール87Y1とYスケール87Y2とは回折格子の周期方向(Y軸方向)に垂直な方向(X軸方向)に十分に離間している。従って、微動ステージ位置計測系70Cは、微動ステージWFS1(又はWFS2)のθz回転(θz方向の位置)を高精度で計測することができる。
微動ステージ位置計測系70Cで計測された情報(位置情報)は、前述した微動ステージ位置計測系70Bで計測された情報(位置情報)等とともに、主制御装置20に供給される。主制御装置20は、アライメント装置99の計測ステーション300の内部及びその近傍の領域で、微動ステージ位置計測系70Cからの位置情報に基づいて微動ステージWFS1(又はWFS2)(ウエハステージWST2)を回転制御しつつ、微動ステージ位置計測系70Bからの位置情報に基づいてXY平面内で駆動(位置制御)することができる。
図32には、露光装置1100の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置1100の構成各部を統括制御する。
本第2の実施形態では、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様に、一方の微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光と並行して、他方の微動ステージWFS2上では、ウエハ交換、ウエハアライメント等が行われる。ウエハ交換は、前述した第1の実施形態の露光装置100と同様にして行われる。
ウエハアライメントに際し、主制御装置20は、要求される位置合わせ精度、スループット等より少なくとも次の2つのモード(それぞれ精度優先モードとスループット優先モードと呼ぶ)のいずれかを選択する。
ウエハアライメントの精度(位置合わせ精度)を重要視する場合、精度優先モードが選択される。精度優先モードでは、プライマリアライメント系AL1のみを用いてウエハアライメントが行われる。
以下、図33に示される43個のショット領域が配列されたウエハWに対して、精度優先モードにおけるウエハアライメントの手順を説明する。以下、適宜、プライマリアライメント系AL1をアライメント系AL1と略記する。
主制御装置20は、まず、図33に示されるように、微動ステージ位置計測系70B,70Cを用いて微動ステージWFS2の位置(全6自由度方向についての位置)を計測し、その計測結果に基づいて、微動ステージWFS2を、そのθz回転(θz方向の位置)を基準状態に維持しつつXY方向に駆動して、アライメント系AL1の直下に微動ステージWFS2上の計測プレート86を位置決めする。この時、微動ステージ位置計測系70Cを構成するYヘッド9615,9714が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図33中の黒丸参照)。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL1を用いて計測プレート86上の第2基準マークを検出する。そして、主制御装置20は、その検出結果、すなわちアライメント系AL1の検出中心(指標中心)を基準とする第2基準マークの位置座標(X,Y)を、その第2基準マーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。なお、以下では、微動ステージ位置計測系70Bを用いてのウエハステージWST2(微動ステージWFS2)の位置計測に関しては、特に必要な場合を除きその説明を省略する。
第2基準マークを検出した後、主制御装置20は、図34(A)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−Y方向に所定距離かつ+X方向に所定距離ステップ駆動して、ウエハW上の第1行目の第1ショット領域に付設された1つのサンプルマークを、アライメント系AL1の検出視野内に位置決めする。なお、アライメントマークは、ショット領域を区画するストリート(スクライブラインとも呼ばれる)に形成されている。この場合において、主制御装置20は、図33に示される位置から図34(A)に示される位置に、ウエハステージWST2を直線的に移動させても良いし、+X方向、−Y方向の順でステップ移動させても良い。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この時、Yヘッド9613,9713が微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図34(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図34(B)中に白抜き矢印で示されるようにウエハステージWST2を−X方向にステップ駆動して、ウエハW上の第1行目の第2及び第3ショット領域のそれぞれに付設された各1つのサンプルマークを順次アライメント系AL1の検出視野内に位置決めし、位置決め毎にアライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この一連のサンプルマークの検出において、逐次、Yヘッド9613〜9616,9713〜9716が切り換えられ、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられる。これにより、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、図35(A)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−Y方向に所定距離かつ−X方向に所定距離ステップ駆動して、ウエハW上の第2行目の第1ショット領域に付設された1つのサンプルマークを、アライメント系AL1の検出視野内に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この時、Yヘッド9618,9718が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図35(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図35(B)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を+X方向にステップ駆動し、ウエハW上の第2行目の第2〜第7ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを順次アライメント系AL1の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、位置決め毎に、アライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この一連のサンプルマークの検出において、逐次、Yヘッド9618〜9611,9718〜9711が切り換えられ、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられる。これにより、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様の手順で、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。ただし、ウエハステージWST2のステップ駆動の方向が逆になる。また、マーク検出に先立ってウエハステージWST2を−Y方向に駆動することにより、Yヘッド9611〜9618から961〜9610(ヘッドユニット98Cから98A)へ使用するYヘッド(ヘッドユニット)が切り換えられる。同様に、Yヘッド9711〜9718から971〜9710(ヘッドユニット98Dから98B)へ使用するYヘッド(ヘッドユニット)が切り換えられる。
そして、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終わると、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、そのとき位置決めされている位置から、図36(A)中に白抜き矢印で示されるように、−Y方向に所定距離かつ−X方向に所定距離ステップ駆動して、ウエハW上の第4行目の第1ショット領域に付設された1つのサンプルマークを、アライメント系AL1の検出視野内に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この時、Yヘッド9610,9710が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図36(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図36(B)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を+X方向にステップ駆動して、ウエハW上の第4行目の第2〜第9ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを順次アライメント系AL1の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、位置決め毎に、アライメント系AL1を用いてサンプルマークを検出する。この一連のサンプルマークの検出において、逐次、Yヘッド9610〜961,9710〜971が切り換えられ、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられる。これにより、第4行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
さらに、主制御装置20は、第3及び第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第5及び第6行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。最後に、主制御装置20は、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第7行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。
上述のようにして、全てのショット領域に対するサンプルマークの検出が終了すると、主制御装置20は、サンプルマークの検出結果とそのサンプルマーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とを用いて、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示される統計演算を行って、ウエハW上の全てのショット領域の配列座標(位置座標)を算出する。すなわち、EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)を行う。そして、主制御装置20は、その算出結果を、第2基準マークの検出結果とその検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とを用いて、第2基準マークの位置を基準とする配列座標(位置座標)に変換する。この配列座標が、露光の際に、ウエハW上の全てのショット領域をレチクルRのパターンの投影位置である露光位置との位置合わせの際の目標位置情報として用いられることになる。
以上のように、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、Y軸方向に関しては、−Y方向に徐々にステップ駆動しながら、X軸方向に関しては、+X方向、−X方向に往復駆動して、ウエハW上の全てのショット領域に付設されたアライメントマーク(サンプルマーク)を検出する。ここで、精度優先モードでは、微動ステージ位置計測系70Bによる位置計測の基準点と同じ位置(XY位置)に検出中心を有するアライメント系AL1のみを用いるので、ウエハW上の全てのショット領域(の基準点、例えば中心点)のそれぞれとグレーティングRGの各点との1対1の対応関係を得ることができ、ウエハアライメントの最高精度(最高位置合わせ精度)が得られる。この場合、グレーティングRGが経時的に変形しても、上記の1対1の対応関係が得られるので、ウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上のショット領域を露光領域IAに対して位置合わせする際にグレーティングRGの変形の影響による位置合わせ誤差(レチクルパターンとウエハW上のショット領域との重ね合わせ誤差)が生じることがない。
一方、スループットを重要視する場合、スループット優先モードが選択される。スループット優先モードでは、5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を用いてウエハアライメントが行われる。このスループット優先モードでは、前述した第1の実施形態と同様のウエハアライメントが行われる。
以下、図33に示される43個のショット領域が配列されたウエハWに対して、スループット優先モードにおけるウエハアライメントの手順を説明する。以下、適宜、セカンダリアライメント系をアライメント系と略記する。
まず、主制御装置20は、先と同様の手順で、アライメント系AL1を用いて計測プレート86上の第2基準マークを検出し、アライメント系AL1の検出中心(指標中心)を基準とする第2基準マークの位置座標(X,Y)を、その第2基準マーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。
次に、主制御装置20は、図37(A)中に白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS2を+X方向に駆動して、アライメント系AL22の直下に微動ステージWFS2上の計測プレート86を位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL22を用いて計測プレート86上の第2基準マークを検出する。この時、微動ステージ位置計測系70CのYヘッド9612,9712が微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図37(A)中の黒丸参照)。同様に、主制御装置20は、アライメント系AL21を用いて第2基準マークを検出する。(なお、第2基準マークとの位置関係が既知の別のマークを検出しても良い。)そして、主制御装置20は、それらの検出結果、すなわちアライメント系AL21,AL22の検出中心(指標中心)を基準とする第2基準マークの位置座標(X,Y)を、その第2基準マーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。
次に、主制御装置20は、図37(B)中に白抜き矢印で示されるように、微動ステージWFS2を−X方向に駆動して、アライメント系AL23の直下に計測プレート86を位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL23を用いて第2基準マークを検出する。この時、微動ステージ位置計測系70CのYヘッド9617,9717が微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図37(B)中の黒丸参照)。同様に、主制御装置20は、アライメント系AL24を用いて第2基準マークを検出する。(なお、第2基準マークとの位置関係が既知の別のマークを検出しても良い。)そして、主制御装置20は、それらの検出結果、すなわちアライメント系AL23,AL24の検出中心(指標中心)を基準とする第2基準マークの位置座標(X,Y)を、その第2基準マーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値と関連付けて、不図示のメモリに格納する。
主制御装置20は、以上の検出結果を用いて、セカンダリアライメント系AL21〜AL24のベースライン、すなわち、プライマリアライメント系AL1の検出中心に対するセカンダリアライメント系AL21〜AL24の検出中心の相対位置を求める。また、必要な場合には、主制御装置20は、前述の保持装置(スライダ)を駆動制御してセカンダリアライメント系AL21〜AL24の検出中心の相対位置を調整する。
ベースライン計測の後、主制御装置20は、図38(A)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−Y方向に所定距離かつ+X方向に所定距離ステップ駆動して、ウエハW上の第1行目の第1及び第3ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを、アライメント系AL22、AL1の検出視野内にそれぞれ位置決めする。ここで、主制御装置20は、アライメント系AL24を用いて第2基準マークを検出したときの位置から図38(A)に示される位置に、ウエハステージWST2を、ダイレクトに(斜めに)移動させても良いし、+X方向、−Y方向の順でウエハステージWST2をステップ移動させても良い。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL1,AL22を用いて2つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド9614,9714が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図38(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図38(B)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−X方向にステップ駆動して、ウエハW上の第1行目の第2及び第3ショット領域に付設された各1つのサンプルマークを、アライメント系AL1、AL23の検出視野内にそれぞれ位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL1,AL23を用いて2つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド9615,9715が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図38(B)中の黒丸参照)。これにより、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、図39(A)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−Y方向に所定距離かつ+X方向に所定距離ステップ駆動して、ウエハW上の第2行目の第1、第3、第5、及び第7ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、及びAL23の検出視野内に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL21,AL22、AL1、AL23を用いて4つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド9614,9714が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図39(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図39(B)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−X方向にステップ駆動し、ウエハW上の第2行目の第2、第4、第6、及び第7ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL22、AL1、AL23、AL24を用いて4つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド9615,9715が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図39(B)中の黒丸参照)。これにより、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
次に、主制御装置20は、第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様の手順で、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。ただし、ウエハステージWST2のステップ駆動の方向が逆になる。また、マーク検出に先立ってウエハステージWST2を−Y方向に駆動することにより、Yヘッド9611〜9618から961〜9610(ヘッドユニット98Cから98A)へ使用するYヘッド(ヘッドユニット)が切り換えられる。同様に、Yヘッド9711〜9718から971〜9710(ヘッドユニット98Dから98B)へ使用するYヘッド(ヘッドユニット)が切り換えられる。
そして、第3行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終わると、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、そのとき位置決めされている位置から、図40(A)中に白抜き矢印で示されるように、−Y方向に所定距離かつ+X方向に所定距離の位置にステップ駆動して、ウエハW上の第4行目の第1、第3、第5、第7、及び第9ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。位置決め後、主制御装置20は、アライメント系AL21,AL22、AL1、AL23,AL24を用いて5つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド965,975が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図40(A)中の黒丸参照)。
次に、主制御装置20は、図40(B)中に白抜き矢印で示されるように、ウエハステージWST2を−X方向にステップ駆動して、ウエハW上の第4行目の第2、第4、第6、第8、及び第9ショット領域に付設された各1つのサンプルマークのそれぞれを、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23、AL24の検出視野内に位置決めする。そして、主制御装置20は、アライメント系AL21、AL22、AL1、AL23,AL24を用いて5つのサンプルマークを同時にかつ個別に検出する。この時、Yヘッド966,976が、微動ステージWFS2のθz回転の計測に用いられている(図40(B)中の黒丸参照)。これにより、第4行目のショット領域に対するサンプルマークの検出が終了する。
さらに、主制御装置20は、第3及び第2行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第5及び第6行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。最後に、主制御装置20は、第1行目のショット領域に対するサンプルマークの検出と同様に第7行目のショット領域に対するサンプルマークの検出を行う。
上述のようにして、全てのショット領域に対するサンプルマークの検出が終了すると、主制御装置20は、サンプルマークの検出結果とそのサンプルマーク検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とベースライン計測の結果とを用いて、例えば米国特許第4,780,617号明細書などに開示される統計演算を行って、ウエハW上の全てのショット領域の配列座標(位置座標)を算出する。すなわち、EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)を行う。そして、主制御装置20は、その算出結果を、第2基準マークの検出結果とその検出時における微動ステージ位置計測系70Bの計測値とを用いて、第2基準マークの位置を基準とする配列座標(位置座標)に変換する。
以上のように、主制御装置20は、ウエハステージWST2を、Y軸方向に関しては、−Y方向に徐々にステップ駆動しながら、X軸方向に関しては、+X方向、−X方向に往復駆動して、ウエハW上の全てのショット領域に付設されたアライメントマーク(サンプルマーク)を検出する。ここで、本実施形態の露光装置1100では、5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を用いることができるので、X軸方向の往復駆動の距離は短く、且つ1回の往復における位置決め回数も2回と少ない。そのため、単一のアライメント系を用いてアライメントマークを検出する場合と比べて、格段に短時間でアライメントマークを検出することができる。この場合も、ウエハW上の全てのショット領域に付設されたアライメントマークを検出し、かつアライメントマークの検出に用いられるアライメント系AL1、AL21〜AL24の位置関係が求められているので、実質的に、ウエハW上の全てのショット領域(の基準点、例えば中心点)のそれぞれとグレーティングRGの各点との1対1の対応関係を得ることができる。従って、ウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上のショット領域を露光領域IAに対して位置合わせする際にグレーティングRGの変形の影響による無視できないレベルの位置合わせ誤差(レチクルパターンとウエハW上のショット領域との重ね合わせ誤差)が殆ど生じることがない。
なお、上述のスループット優先モードにおけるウエハアライメントでは、5つのアライメント系AL1、AL21〜AL24を用いたが、これに限らず、例えば3つのアライメント系AL1、AL21、AL22を用いることとしても良い。主制御装置20は、要求される位置合わせ精度、スループット等より使用するアライメント系を選択する。
微動ステージWFS1に保持されたウエハWに対するステップ・アンド・スキャン方式の露光と、微動ステージWFS2上のウエハWに対するウエハアライメントとの並行処理においては、通常、ウエハアライメントが先に終了する。主制御装置20は、所定の待機位置にウエハステージWST2を待機させた状態で、微動ステージWFS1上のウエハWに対する露光が終了するのを待つ。
主制御装置20は、露光終了に先立って、前述と同様に、可動ブレードBLを所定量下方に駆動する。
そして、露光が終了すると、図41に示されるように、主制御装置20は、微動ステージWFS1から可動ブレードBLへの液浸空間の受け渡しを開始する。この受け渡しは、前述の第1の実施形態と同様の手順で、行われる。
そして、図42に示されるように、微動ステージWFS1から可動ブレードBLへの液浸空間の受け渡しが終了すると、主制御装置20は、微動ステージWFS1を保持する粗動ステージWCS1を、さらに+Y方向に駆動して、前述の待機位置で微動ステージWFS2を保持して待機している粗動ステージWCS2の近傍まで移動させる。これにより、粗動ステージWCS1により、微動ステージWFS1がセンターテーブル130の真上に搬送される。このとき、図43に示されるように、粗動ステージWCS1が、内部空間にセンターテーブル130を収容し、かつセンターテーブル130の真上で微動ステージWFS1を支持する状態となる。図44には、このときの露光装置1100の状態が平面図にて示されている。ただし、可動ブレードBLの図示は省略されている。他の平面図においても同様である。
そして、主制御装置20は、センターテーブル130の駆動装置132を介してテーブル本体136を上方に駆動して、下方から微動ステージWFS1を支持させる。そして、この状態で、主制御装置20は、不図示のロック機構を解除し、粗動ステージ駆動系51Aa、51Abを介して粗動ステージWCS1を、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとに分離する。これにより、微動ステージWFS1が粗動ステージWCS1からテーブル本体136に渡される。そこで、主制御装置20は、微動ステージWFS1を支持しているテーブル本体136を駆動装置132を介して下方に駆動する。
そして、主制御装置20は、粗動ステージWCS1の、第1部分WCS1aと第2部分WCS1bとを合体後、不図示のロック機構をロックする。これにより、粗動ステージWCS1が分離前の状態に戻る(一体化する)。
次に、主制御装置20は、粗動ステージWCS2を一体化した粗動ステージWCS1にY軸方向に関してほぼ接触させるとともに、微動ステージ駆動系52A,52Bを介して微動ステージWFS2を、−Y方向に駆動して、粗動ステージWCS2から粗動ステージWCS1に移載(スライド移動)する。
次に、主制御装置20は、微動ステージWFS2を支持した粗動ステージWCS1を、図45中に白抜き矢印で示されるように、−Y方向に移動させて、可動ブレードBLから微動ステージWFS2に、先端レンズ191との間で保持されている液浸空間を渡す。この液浸空間(液体Lq)の受け渡しは、前述した微動ステージWFS1から可動ブレードBLへの液浸領域の受け渡しと逆の手順で行われる。
その後、主制御装置20により、微動ステージWFS2を保持した粗動ステージWCS1が、露光ステーション200に駆動され、レチクルアライメント、そのレチクルアライメントの結果と、ウエハアライメントの結果(ウエハW上の各ショット領域の第2基準マークを基準とする配列座標)とに基づいて、ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行われる。
上述した微動ステージWFS2上のウエハWに対する露光と並行して、微動ステージWFS1上では、ウエハ交換、ウエハアライメント等が、前述の微動ステージWFS2側と同様にして行われる。以後、上記と同様の処理が、繰り返し行われる。
以上詳細に説明したように、本第2の実施形態の露光装置1100によると、前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。これに加えて、本第2の実施形態の露光装置1100によると、主制御装置20は、ウエハアライメントに際して、精度優先モードを選択した場合には、微動ステージ位置計測系70Bを用いて微動ステージWFS2の位置を計測しつつ、微動ステージ位置計測系70Bの位置計測の基準点と同じ位置(XY位置)に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1のみを用いて、微動ステージWFS2に保持されるウエハW上の全ショット領域のそれぞれに付設された各1以上のアライメントマークを検出する。主制御装置20は、各アライメントマークの検出に際して、微動ステージ位置計測系70Cを用いて微動ステージWFS2のθz回転を計測し、その結果を用いて微動ステージWFS2を回転制御する。従って、この精度優先モードにおけるウエハアライメントの結果に基づいて、露光の際に、微動ステージWFS2を駆動することで、ウエハW上の全てのショット領域を露光位置に高精度に位置合わせすること、ひいては全てのショット領域のそれぞれとレチクルパターンとの高精度(最高精度)の重ね合わせが可能となる。
また、主制御装置20は、ウエハアライメントに際して、スループット優先モードを選択した場合には、微動ステージ位置計測系70Bの位置計測の基準点と同じ位置(XY位置)に検出中心を有するプライマリアライメント系AL1と、プライマリアライメント系AL1の検出中心と既知の位置関係にある検出中心を有するセカンダリアライメント系AL21〜AL24とを用いて、微動ステージWFS2に保持されるウエハW上の全ショット領域のそれぞれに付設された各1以上のアライメントマークを検出する。このスループット優先モードにおけるウエハアライメントの結果に基づいて、露光の際に、微動ステージWFS2を駆動することで、十分なスループットで十分な重ね合わせ精度を実現することが可能となる。
なお、上記第2の実施形態では、アライメント装置99(アライメント系AL1、AL21〜AL24)の周囲に配置されたYヘッド96,97(ヘッドユニット98A〜98D)と微動ステージWFS1(又はWFS2)上に設けられたYスケール87Y1,87Y2とから、微動ステージWFS1(又はWFS2)のθz位置を計測する微動ステージ位置計測系70Cが構成されている場合について例示した。しかし、これに限らず、例えば、Yスケール87Y1,87Y2に代えて、グレーティングRGを用いる構成を採用することも可能である。図46には、このような構成の微動ステージ位置計測系を採用した場合の一例が示されている。図46では、微動ステージWFS1(又はWFS2)の本体部81の上面のほぼ全域に渡って、前述のグレーティングRGが形成されるとともに、Yスケール87Y1,87Y2の配置領域に対応する本体部81(プレート83)上面の領域には、撥液処理がなされていない(撥液面が形成されていない)。この場合、Yヘッド96,97のそれぞれは、プレート83及びカバーガラス84(図29(A)参照)を介して上方(+Z側)から計測ビームをグレーティングRGに照射し、グレーティングRGのY回折格子から発生する回折光を受光して、グレーティングRG(すなわち微動ステージWFS1(又はWFS2))の+X端部と−X端部におけるY位置を計測する。従って、Yヘッド96,97の計測結果に基づいて、微動ステージWFS1(又はWFS2)のθz回転を求めることができる。
また、上記実施形態では、微動ステージ位置計測系70Bが、プライマリアライメント系AL1の検出中心と同じ位置(XY位置)を計測基準点とする単一の計測アーム71Bを備える場合について例示したが、これに限らず、図47に示されるように、計測アーム71Bに加えて、エンコーダシステム(少なくともXヘッドとYヘッドとを各1つ含むヘッド部)をそれぞれ備える4つの計測アーム71B1〜71B4を、さらに備える微動ステージ位置計測系70Bを用いても良い。4つの計測アーム71B1〜71B4がそれぞれ備えるエンコーダシステムは、セカンダリアライメント系AL21〜AL24の検出中心と同じ位置(XY位置)をそれぞれ計測基準点とする。計測アーム71B,71B1〜71B4を備える微動ステージ位置計測系70Bを用いて(スループット優先モードにおける)ウエハアライメントを行うことにより、精度優先モードと同程度の位置合わせ精度とスループット優先モードと同程度の高スループットを同時に達成することができる。
なお、上記第1、第2の実施形態のそれぞれ(以下、各実施形態と略記する)では、ウエハアライメントに際し、ウエハW上の全ショット領域のそれぞれに付設された各1つのアライメントマークを検出することとしたが、これに限らず、要求される位置合わせ精度、スループット等に応じて、検出するアライメントマークの数を選択することとしても良い。
なお、上記各実施形態では、微動ステージ位置計測系70A,70Bが、全体が例えばガラスによって形成され、内部を光が進行可能な計測アーム71A,71Bを備える場合を説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、計測アームは、少なくとも前述の各レーザビームが進行する部分が、光を透過可能な中実な部材によって形成されていれば良く、その他の部分は、例えば光を透過させない部材であっても良いし、中空構造であっても良い。また、例えば計測アームとしては、グレーティングに対向する部分から計測ビームを照射できれば、例えば計測アームの先端部に光源や光検出器等を内蔵していても良い。この場合、計測アームの内部にエンコーダの計測ビームを進行させる必要は無い。
また、計測アームは、各レーザビームが進行する部分(ビーム光路部分)が中空などでも良い。あるいは、エンコーダシステムとして、格子干渉型のエンコーダシステムを採用する場合には、回折格子が形成される光学部材を、セラミックス又はインバーなどの低熱膨張性のアームに設けるだけでも良い。これは、特にエンコーダシステムでは、空気揺らぎの影響を極力受けないように、ビームが分離している空間が極めて狭く(短く)なっているからである。さらに、この場合、温度制御した気体を、微動ステージ(ウエハホルダ)と計測アームとの間(及びビーム光路)に供給して温度安定化を図っても良い。さらに、計測アームは、その形状は特に問わない。
なお、上記各実施形態では、計測アーム71A,71Bは同じメインフレームBDに設けられているが、これに限らず、異なる支持部材に設けても良い。例えば投影系(投影ユニットPU)アライメント系(アライメント装置99)とを別々の支持装置で支持し、投影系の支持装置に計測アーム71Aを、アライメント系の支持装置に計測アーム71Bを設けても良い。
なお、上記各実施形態では、計測アーム71A,71BがメインフレームBDに一体的に固定されているので、内部応力(熱応力を含む)によって計測アーム71A,71Bにねじれ等が発生し、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとの相対位置が変化する可能性がある。そこで、かかる場合の対策として、計測アーム71A,71Bの位置(メインフレームBDに対する相対位置、又は基準位置に対する位置の変化)を計測し、アクチュエータ等で計測アーム71A,71Bの位置を微調整する、あるいは、測定結果を補正するなどしても良い。
また、上記各実施形態では、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとが一体である場合について説明したが、これに限らず、計測アーム71A,71BとメインフレームBDとが、分離されていても良い。この場合、メインフレームBD(あるいは基準位置)に対する計測アーム71A,71Bの位置(あるいは変位)を計測する計測装置(例えばエンコーダ及び/又は干渉計など)と、計測アーム71A,71Bの位置を調整するアクチュエータ等とを設け、主制御装置20その他の制御装置が、計測装置の計測結果に基づいて、メインフレームBD(及び投影光学系PL)と、計測アーム71A,71Bとの位置関係を、所定の関係(例えば一定)に維持することとすれば良い。
また、計測アーム71A,71Bに、光学的な手法により計測アーム71A,71Bの変動を計測する計測システム(センサ)、温度センサ、圧力センサ、振動計測用の加速度センサ等を設けても良い。あるいは、計測アーム71A,71Bの変動を測定する歪みセンサ(歪みゲージ)、又は変位センサ等を設けても良い。そして、これらのセンサで求めた値を使って、微動ステージ位置計測系70A及び/又はウエハステージ位置計測系68A、又は微動ステージ位置計測系70B及び/又はウエハステージ位置計測系68Bで得られた位置情報を補正するようにしても良い。
また、上記各実施形態では、計測アーム71A(又は71B)が、メインフレームBDから1つの支持部材72A(又は72B)を介して片持ち状態で支持された場合について説明したが、これに限らず、例えば、X軸方向に離れた2本の吊り下げ部材を含むU字状の吊り下げ部を介して計測アーム71A(又は71B)をメインフレームBDから吊り下げ支持しても良い。この場合、2本の吊り下げ部材の間を微動ステージが移動できるように、その2本の吊り下げ部材の間隔を設定することが望ましい。
また、上記各実施形態では、微動ステージ位置計測系70A,70Bが、片持ち支持状態の計測アーム71A,71Bをそれぞれ備えている場合について例示したが、微動ステージ位置計測系70A,70Bは、必ずしも、計測アームを備えている必要はない。すなわち、微動ステージ位置計測系70A,70Bに相当する、第1計測系,第2計測系の少なくとも一方は、粗動ステージWCS1,WCS2の空間部内にグレーティングRGに対向して配置され、該グレーティングRGに少なくとも1本の計測ビームを照射し、該計測ビームのグレーティングRGからの回折光を受光するヘッドを有し、該ヘッドの出力に基づいて微動ステージWFS1(又はWFS2)の少なくともXY平面内の位置情報を計測できれば足りる。すなわち、第1計測系(上記実施形態の微動ステージ位置計測系70Aがこれに相当)は、露光ステーションに保持部材(微動ステージ)が来たとき、該保持部材に少なくとも1本の第1計測ビームを下方から照射し、該第1計測ビームの戻り光を受光して保持部材のXY平面内の位置情報を計測できれば、その構成を問わない。また、第2計測系(上記各実施形態の微動ステージ位置計測系70Bがこれに相当)は、計測ステーションに保持部材(微動ステージ)が来たとき、該保持部材に少なくとも1本の第2計測ビームを下方から照射し、該第2計測ビームの戻り光を受光して前記保持部材のXY平面内の位置情報を計測できれば、その構成を問わない。
また、上記各実施形態では、エンコーダシステム73が、Xヘッドと一対のYヘッドとを備える場合について例示したが、これに限らず、例えばX軸方向及びY軸方向の2方向を計測方向とする二次元ヘッド(2Dヘッド)を、1つ又は2つ設けても良い。2Dヘッドを2つ設ける場合には、それらの検出点がグレーティング上で露光位置を中心として、X軸方向に同一距離離れた2点になるようにしても良い。
なお、微動ステージ位置計測系70Aは、レーザ干渉計システム75を備えることなく、エンコーダシステム73のみで微動ステージの6自由度方向に関する位置情報を計測できるようにしても良い。この場合、例えばX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダを用いることができる。例えば、2次元のグレーティングRG上の同一直線上に無い3つの計測点に、X軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダと、Y軸方向とZ軸方向に関する位置情報を計測可能なエンコーダとを含む合計3つのエンコーダから計測ビームを照射し、グレーティングRGからのそれぞれの戻り光を受光することで、グレーティングRGが設けられた移動体の6自由度方向の位置情報を計測することとすることができる。また、エンコーダシステム73の構成は上記実施形態に限られないで任意で構わない。
なお、上記各実施形態では、微動ステージの上面、すなわちウエハに対向する面にグレーティングが配置されているものとしたが、これに限らず、グレーティングは、ウエハを保持するウエハホルダに形成されていても良い。この場合、露光中にウエハホルダが膨張したり、微動ステージに対する装着位置がずれたりした場合であっても、これに追従してウエハホルダ(ウエハ)の位置を計測することができる。また、グレーティングは、微動ステージの下面に配置されていても良く、この場合、エンコーダヘッドから照射される計測ビームが微動ステージの内部を進行しないので、微動ステージを光が透過可能な中実部材とする必要がなく、微動ステージを中空構造にして内部に配管、配線等を配置することができ、微動ステージを軽量化できる。
なお、上記各実施形態では、計測アーム71A,71Bの内部を進行させて計測ビームを微動ステージのグレーティングRGに下方から照射するエンコーダシステムを用いるものとしたが、これに限らず、計測アームにエンコーダヘッドの光学系(ビームスプリッタ等)を設け、その光学系と光源とを光ファイバで接続し、その光ファイバを介して光源からレーザ光を光学系に伝送する、及び/又は光学系と受光部とを光ファイバで接続し、その光ファイバによりグレーティングRGからの戻り光を光学系から受光部に伝送するエンコーダシステムを用いても良い。
また、上記実施形態では、粗動ステージWCS1、WCS2が、第1部分と第2部分とに分離可能でかつ第1部分と第2部分とが係合可能である場合について説明したが、これに限らず、第1部分と第2部分とは、物理的には常時離れていても、相互に接近及び離間可能で、離間した際には、保持部材(上記実施形態の微動ステージ)を離脱可能で、接近した際には、保持部材を支持可能であれば良い。
また、微動ステージを粗動ステージに対して駆動する駆動機構は、上記各実施形態で説明したものに限られない。例えば実施形態では、微動ステージをY軸方向に駆動するコイルが微動ステージをZ軸方向に駆動するコイルとしても機能したが、これに限らず微動ステージをY軸方向に駆動するアクチュエータ(リニアモータ)と、微動ステージをZ軸方向に駆動する、すなわち微動ステージを浮上させるアクチュエータとを、それぞれ独立して設けても良い。この場合、微動ステージに常に一定の浮上力を作用させることができるので、微動ステージのZ軸方向の位置が安定する。なお、上記各実施形態では、微動ステージが備える可動子部82a,82bが側面視でU字状である場合について説明したが、微動ステージを駆動するリニアモータが備える可動子部は勿論、固定子部もU字状である必要はない。
なお、上記各実施形態では、微動ステージWFS1,WFS2は、ローレンツ力(電磁力)の作用により粗動ステージWCS1又WCS2に非接触支持されたが、これに限らず、例えば微動ステージWFS1,WFS2に真空予圧型の空気静圧軸受等を設けて、粗動ステージWCS1又WCS2に対して浮上支持しても良い。また、上記実施形態では、微動ステージWFS1,WFS2は、全6自由度方向に駆動可能であったが、これに限らず少なくともXY平面に平行な二次元平面内を移動できれば良い。また、微動ステージ駆動系52A,52Bは、上述したムービングマグネット式のものに限らず、ムービングコイル式のものであっても良い。さらに微動ステージWFS1,WFS2は、粗動ステージWCS1又はWCS2に接触支持されていても良い。従って、微動ステージWFS1,WFS2を粗動ステージWCS1又はWCS2に対して駆動する微動ステージ駆動系は、例えばロータリモータとボールねじ(又は送りねじ)とを組み合わせたものであっても良い。
なお、上記各実施形態では、ウエハステージの移動範囲全域でその位置計測が可能となるように微動ステージ位置計測系を構成しても良い。この場合にはウエハステージ位置計測系が不要になる。また、上記実施形態において、ベース盤12をウエハステージの駆動力の反力の作用により移動可能なカウンタマスとしても良い。この場合、粗動ステージをカウンタマスとして使用してもしなくても良いし、粗動ステージを上記実施形態と同様にカウンタマスとして使用するときでも粗動ステージを軽量化することができる。
また、上記各実施形態では、計測ステーション300において、ウエハWに対する計測の一例としてアライメントマーク計測(ウエハアライメント)が行われるものとしたが、これに加えて(あるいはこれに代えて)ウエハW表面の投影光学系PLの光軸AX方向の位置を計測する面位置計測が行われても良い。この場合、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書に開示されるように、面位置計測と同時に、ウエハを保持する微動ステージの上面の面位置計測を行い、これらの結果を用いて、露光時のウエハWのフォーカス・レベリング制御を行っても良い。
なお、上記各実施形態の露光装置で用いられるウエハは、450mmウエハに限られものでなく、それよりサイズの小さいウエハ(300mmウエハなど)でも良い。
なお、上記各実施形態では、露光装置が液浸型の露光装置である場合について説明したが、これに限られるものではなく、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置にも本発明は好適に適用することができる。
なお、上記実施形態では、スキャニング・ステッパに本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に本発明を適用しても良い。ステッパなどであっても、露光対象の物体が搭載されたステージの位置をエンコーダで計測することにより、干渉計を用いてこのステージの位置を計測する場合と異なり、空気揺らぎに起因する位置計測誤差の発生を殆ど零にすることができ、エンコーダの計測値に基づいて、ステージを高精度に位置決めすることが可能になり、結果的に高精度なレチクルパターンの物体上への転写が可能になる。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも本発明は適用することができる。
また、上記実施形態の露光装置における投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系PLは屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、本発明の露光装置では、照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置に本発明を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、本発明は適用できる。
また、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。かかる可変成形マスクを用いる場合には、ウエハ又はガラスプレート等が搭載されるステージが、可変成形マスクに対して走査されるので、このステージの位置をエンコーダシステム及びレーザ干渉計システムを用いて計測することで、上記各実施形態と同等の効果を得ることができる。
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも本発明を適用することができる。
なお、本発明の露光装置でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した各実施形態の露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記各実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。