本発明の実施形態に係る車両下部構造10について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印RHは車幅方向の一方側である前方向を向いた場合の車両右側、矢印LHは車幅方向の他方側である前方向を向いた場合の車両左側をそれぞれ示す。以下の説明で、特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、前方向を向いた場合の左右を示すものとする。
図2には、車両下部構造10が適用された自動車Vを構成するアンダボディ12が模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、アンダボディ12は、フロア14と、フロア14の前端から立設されたダッシュロア部16と、フロア14の後端から立設されたロアバック部18とを有する。また、ダッシュロア部16の車幅方向両端には、車両後側に回り込む前側壁16Aが連設されており、ロアバック部18の車幅方向両端には、車両前側に回り込む後側壁18Aが延設されている。以上により、アンダボディ12は、図2に示される如く全体としてバスタブ状(側壁の一部が切りかかれたバスタブ状)に形成されている。
フロア14は、全体として略平板状に形成されており、それぞれ前後方向に長手と骨格構造として左右一対のロッカ20と、センタ骨格部22とを有する。ロッカ20は、フロア14の車幅方向外端でダッシュロア部16からロアバック部18に至る骨格部材とされている。センタ骨格部22は、フロア14の車幅方向中央部でダッシュロア部16からロアバック部18に至る骨格部材とされている。図1に示される如く、ロッカ20、センタ骨格部22は長手方向に直交する断面視で閉断面構造とされている。また、図1及び図2に示される如く、ロッカ20の車幅方向外側には、衝撃吸収部26が設けられている。
フロア14は、アッパパネル28とロアパネル30との2部材の上下合わせ構造の接合により構成されている。具体的には、図1に示される如く、ロアパネル30は、水平面に沿って略平坦な下壁としての底壁32と、底壁の側周縁から立設された外側壁34とを含んで構成されている。図示は省略するが、底壁32の前縁からはダッシュロア部16の前壁を構成するダッシュ前壁が立設され、底壁32の後縁からはロアバック部18の後壁を構成するロアバック後壁が立設されている。外側壁34の上端からは、略水平面に沿って車幅方外向きに上向きの接合面としての外フランジ36が張り出されている。
アッパパネル28は、底壁32と対向する上壁として、左右一対のロッカ上壁38及びセンタ上壁40を有する。ロッカ上壁38及びセンタ上壁40は、略水平面に沿って平坦に形成されている。したがって、ロッカ上壁38及びセンタ上壁40は、底壁32と平行に配置されている(これらの対向面が平行とされている)。
ロッカ上壁38の車幅方向外端からは、外フランジ36と接合される下向きの接合面としての外フランジ42が略水平面に沿って張り出されている。また、ロッカ上壁38の車幅方向内端からは外側壁34に対向するロッカ内壁44が垂下されている。ロッカ内壁44の下端からは、上向きの接合面としての底壁32に接合される下向きの接合面としての内フランジ46が車幅方向内向きに張り出されている。
さらに、センタ上壁40の車幅方向両端からは、互いに対向するセンタ側壁48が垂下されている。左右のセンタ側壁48の各下端には、互いに車幅方向に遠ざかるように張り出され底壁32に接合される下向きの接合面としてのセンタフランジ50が連設されている。図2に示される如く内フランジ46とセンタフランジ50とは、互いに前後端部が連結フランジ52にて連結されている。図示は省略するが、アッパパネル28の前端には、ロアパネル30の前壁と対向してダッシュロア部16を構成するダッシュ後壁が立設されている。また、アッパパネル28の後端には、ロアパネル30のロアバック後壁と対向してロアバック部18を構成するロアバック前壁が立設されている。
そして、アッパパネル28とロアパネル30を上下合わせで組み立て、外フランジ36と外フランジ42とを接合すると共に、内フランジ46、センタフランジ50、連結フランジ52を底壁32に接合すると、フロア14(アンダボディ12)が構成される。この状態で、左右のロッカ20は、底壁32と外側壁34とロッカ上壁38とロッカ内壁44とで囲まれた略四角形(平行四辺形)枠状の閉断面とされている。また、センタ骨格部22は、センタ上壁40と左右のセンタ側壁48と底壁32とで囲まれた略四角形(台形)枠状の閉断面とされている。
この実施形態では、アッパパネル28とロアパネル30との接合により、フロア14、ダッシュロア部16、ロアバック部18を含むアンダボディ12の主要部が構成されるようになっている。また、この実施形態では、アッパパネル28、ロアパネル30は、それぞれ繊維強化プラスチックとしてのCFRPにて構成されており、各接合部位は接着、融着又は溶着等により接合されている。
また、上記した通り左右のロッカ20の車幅方向外側には衝撃吸収部26が設けられている。衝撃吸収部26はエネルギ吸収部材であるEA材54が外装材であるアウタパネル(サイドメンバアウタ)55に覆われて構成されている。EA材54は、車幅方向内端において外側壁34から車幅方向外向きに張り出されたリブ56に固定されており、上側及び車幅方向外側からアウタパネル55にて覆われている。アッパパネル28の外フランジ42の車幅方向外端からは、立フランジ60が上向きに立設されている。一方、アウタパネル55におけるEA材54を上側から覆う部分の車幅方向内端からは、立フランジ62が上向きに立設されている。立フランジ60と立フランジ62とが接着等によって接合されることで、アウタパネル55はアンダボディ12に固定されている。
ロッカ20及びアウタパネル55の下部(図1に示されている部分)には、乗員乗降用の開口部の下縁を成すロッカステップ部58が形成されている。ロッカステップ部58においては、立フランジ60と立フランジ62との接合部は、オープニングトリム64にて被覆されている。
図1及び図2に示される如く、以上説明したアンダボディ12では、乗員が着座する図示しない車両用シートを前後方向にスライド可能に支持するためのシートレール66が固定されている。この実施形態では、車幅方向外側のシートレール66は、ロッカ20のロッカ上壁38に固定されている。また、車幅方向内側のシートレール66は、センタ骨格部22のセンタ上壁40に固定されている。以下、具体的に説明する。
各ロッカ20の閉断面内には、それぞれカラー部材としてのカラーナット68が配設されている。各カラーナット68は、下端部にフランジ68Aを有し、底壁32を貫通した状態でフランジ68Aにおいて底壁32の下面に接着されている。各カラーナット68の上端は段付き構造とされており、大径部においてロッカ上壁38の下面に接着されると共に小径部がロッカ上壁38から露出されている。
各シートレール66は、締結具としてのボルト70がカラーナット68に螺合されることでロッカ上壁38に締結固定されている。この状態でロッカ上壁38は、カラーナット68上端の大径部とシートレール66とに挟み込まれている。各カラーナット68の小径部がスペーサとして機能することで、ロッカ上壁38に過大な圧縮荷重が作用することが抑制されている。
センタ骨格部22の閉断面内には、左右の座席用の各カラーナット68が配設されている。各カラーナット68は、底壁32を貫通した状態でフランジ68Aにおいて底壁32の下面に接着されている。各カラーナット68の段付きの上端側では、大径部においてセンタ上壁40の下面に接着されると共に小径部がセンタ上壁40から露出されている。各シートレール66は、ボルト70がカラーナット68に螺合されることでセンタ上壁40に締結固定されている。この状態でセンタ上壁40は、カラーナット68上端の大径部とシートレール66とに挟み込まれている。各カラーナット68の小径部がスペーサとして機能することで、センタ上壁40に過大な圧縮荷重が作用することが抑制されている。
図2に示される如く、前後方向に長手とされた各シートレール66は、前端側及び後端側において、ボルト70のカラーナット68への螺合によってアンダボディ12の骨格部(ロッカ上壁38、センタ上壁40)に固定されている。なお、水等の侵入防止のためにシートレール66と外フランジ36とを接着するようにしても良い。また、ロッカ20の閉断面内に、カラーナット68を取り囲むようにして該断面を内側から支持するブロック材を配置しても良い。このブロック材は、繊維強化プラスチックにて構成しても良く、アルミニウム等の金属材にてカラーナット68と一体に構成しても良い。
次に、本実施形態の作用を説明する。
上記構成の車両下部構造10では、ロッカ20、センタ骨格部22にシートレール66が長手方向を一致させて固定されている。このため、前後方向に長い骨格部材であるロッカ20、センタ骨格部22は、固定されたシートレール66によって、上下方向、車幅方向の曲げに対し補強(補剛)されている(断面2次モーメントが増されている)。
また、車両下部構造10では、アッパパネル28とロアパネル30とが、上下合わせの接合部Jv(外フランジ42と外フランジ36、底壁32と内フランジ46、及び底壁32とセンタフランジ50)によって接合されることで、ロッカ20及びセンタ骨格部22が形成されている。このため、車両下部構造10が適用された自動車Vの前面衝突時の荷重に対しアンダボディ12の変形が抑制される。
この点を補足すると、図3に示される如く自動車Vが前面衝突に至ると、ロッカ20、センタ骨格部22の設置高と衝突体Iの衝突位置との高さの差ΔHによって、ロッカ20、センタ骨格部22には上下方向の曲げモーメントMvが生じる。この曲げモーメントMvによる上下曲げに対し、図6に示される比較例では、左右合わせの接合部Jhの圧縮側(上側)には接合部の剥がれ(口開き)が生じる懸念がある。すなわち、閉断面構造のロッカ100は、構造的に、ロッカインナ102とロッカアウタ104との左右合わせのフランジの座屈により接合部Jhの剥がれが生じやすい。この接合部の剥がれは、閉断面の崩れ(開放)による曲げ耐力の低下の原因になるので、骨格自体又は接合部の補強が要求される。
これに対して車両下部構造10では、上記の通り上下合わせの接合部Jvによって接合されたアッパパネル28とロアパネル30とでロッカ20、センタ骨格部22が構成されているので、曲げモーメントMvにより図4に示される如く変形する。すなわち、上下合わせの接合部Jvは、曲げモーメントMvにより板厚方向に曲げられるため、上下曲げに対し接合部Jvが剥がれ難い。これにより、対し接合部Jvの剥がれに起因するロッカ20、センタ骨格部22の断面崩れが防止又は著しく抑制され、上記した比較例で要求される補強を不要とすることができる。
さらに、車両下部構造10では、シートレール66をロッカ20、センタ骨格部22に締結固定するためのカラーナット68が、ロッカ20、センタ骨格部22の閉断面の対向壁を構成するロッカ上壁38、センタ上壁40と底壁32とを繋いでいる。これによってもロッカ20、センタ骨格部22が上下曲げに対し補強される。
例えば図6に示される比較例では、ロッカインナ102における上壁102U及び下壁102Lがカラーナット68にて繋がれているものの、カラーナット68によるロッカ100の断面維持効果は得られない。これに対して車両下部構造10では、カラーナット68がアッパパネル28側のロッカ上壁38、センタ上壁40と、ロアパネル30側の底壁32とを繋いでいる。このため、車両下部構造10では、上下曲げに対しロッカ20、センタ骨格部22の断面形状が変形することが抑制される。すなわち、シートレール66の取り付けによる上記補強効果(断面2次モーメントの増加)に加え、カラーナット68によるロッカ20、センタ骨格部22の断面維持(断面形状の変形防止)による曲げに対する補強が果たされる。特に、ロッカ上壁38、センタ上壁40と底壁32とが平行であるため、ロッカ20、センタ骨格部22の上下方向の曲げに対しカラーナット68が倒れたり位置ずれすることが抑制される(上下の壁間で突っ張る姿勢に維持される)。これにより、上記したカラーナット68によるロッカ20、センタ骨格部22の高い補強効果が得られる。
またさらに、車両下部構造10では、ロッカ20、センタ骨格部22にシートレール66が固定されるため、シートレール66を固定するためのブラケット等を別途設ける必要がなく、部品点数が少なく構造が簡単である。換言すれば、車両下部構造10は、シートレール66を直接的にロッカ20、センタ骨格部22に固定する構成の採用によって、該シートレール66をロッカ20、センタ骨格部22の補強に供している。
このように、本実施形態に係る車両下部構造10では、簡単な構造で、車両前後方向に長手とされるロッカ20、センタ骨格部22の剛性、強度を向上することができる。さらに、車両下部構造10では、上記の通り上下合わせの接合部Jvにてロッカ20、センタ骨格部22が形成されているため、該ロッカ20、センタ骨格部22がフロア14に一体化された構成が実現された。すなわち、フロア14の一般部(ロッカ20、センタ骨格部22を除く部分)と、ロッカ20及びセンタ骨格部22とを、アッパパネル28とロアパネル30との接合により一体に形成することができ、部品点数の一層の削減に寄与している。
なお、ロッカ20、センタ骨格部22の断面形状は上記実施形態における形状限定されることはなく、各種の形状を取り得る。例えば、図5に示される如き変形例に係る構成としても良い。図5に示される変形例では、ロッカ80は、アッパフロア82とロアフロア84との上下合わせの接合により構成されている。
具体的には、ロアフロア84は、フロア14の一般部を構成するフロアパネル86と、フロアパネル86の車幅方向外端から垂下された内側壁88と、内側壁88の下端から車幅方向外向きに延設されたロッカ下壁90と、ロッカ下壁90の車幅方向外端から立設された外側壁92と、外側壁92の上端から車幅方向外向きに延設された外フランジ94とを有する。一方、アッパフロア82は、ロッカ下壁90と対向するロッカ上壁95と、ロッカ上壁95の車幅方向外端から車幅方向外向きに延設された外フランジ96と、ロッカ上壁95の車幅方向内端から車幅方向内向きに延設された内フランジ98とを有する。
そして、ロアフロア84の外フランジ94とアッパフロア82の外フランジ96とを接着等によって接合することで、内側壁88とロッカ下壁90と外側壁92とロッカ上壁95とで囲まれた閉断面構造のロッカ80が形成されている。シートレール66は、ロッカ下壁90とロッカ上壁95とを繋ぐカラーナット68にボルト70が螺合されることで、ロッカ上壁95に締結固定されている。
この変形例に係るロッカ80をロッカ20に代えて有する構成においても、上記実施形態と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
なお、上記実施形態では、車幅方向外側のシートレール66がロッカ20に固定されると共に、車幅方向内側のシートレール66がセンタ骨格部22に固定される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車幅方向外側のシートレール66がロッカ20に固定されると共に、車幅方向内側のシートレール66がブラケット等を介してフロア14に固定される構成としても良い。また例えば、車幅方向内側のシートレール66がセンタ骨格部22に固定されると共に、車幅方向外側のシートレール66がブラケット等を介してフロア14に固定される構成としても良い。
また、上記した実施形態では、アッパパネル28、ロアパネル30がCFRPにて構成された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、アッパパネル28、ロアパネル30が鋼板等の金属材にて構成されても良い。
さらに、上記した実施形態では、カラー部材としてカラーナット68を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カラー部材として円筒状のカラーを用いると共に締結具としてカラーを貫通するボルト及び該ボルトに螺合するナットを用い、カラーの上端側にシートレール66が締結されると共に該カラーの下端に他の部品を共締めする構成としても良い。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施可能であることは言うまでもない。