JP5605922B2 - アクリロニトリルの精製方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、アクリロニトリルの精製において、脱青酸脱水塔に酸及びハイドロキノンを添加して、アクリロニトリル及びシアン化水素の重合を抑制する方法が開示されている。
従来、製品であるアクリロニトリルの収量を増加させることについては、当然ながら多くの関心が寄せられ、検討されてきた。一方、収量の増加という直接的な効果を目的とした改良の他にも、製品品質の安定化という間接的な改善によっても技術上及び経済上大きなメリットがあるが、これまで詳細な検討がなされていないのが現状である。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、アクリロニトリルの製造プロセスにおいて、製品品質を安定化させる方法を提供することである。
[1]
塔頂に凝縮器が接続された蒸留塔を用いて、アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記凝縮器の出口流体の温度を一定に維持する工程を含む方法。
[2]
前記凝縮器でアクリロニトリルとシアン化水素を分離し、
前記凝縮器から留出する還流液及び/又はシアン化水素ガスの温度を一定に維持する、上記[1]記載のアクリロニトリルの精製方法。
[3]
前記凝縮器へ冷媒を供給する管及び/又は冷媒を排出する管に調整弁が設けられ、前記凝縮器には出口流体の温度を測定するための温度計が設けられており、
前記凝縮器の出口流体の目標温度を設定し、前記凝縮器の出口流体の温度が前記目標温度より高い場合は前記調整弁の開度を調整することにより冷媒の供給量を増加させ、前記凝縮器の出口流体の温度が前記目標温度より低い場合は前記調整弁の開度を調整することにより冷媒の供給量を減少させる、上記[1]又は[2]記載の精製方法。
[4]
前記凝縮器の出口流体の温度の上限値及び下限値を設定し、前記凝縮器の出口流体の温度が前記下限値以上、前記上限値以下で推移するように、前記冷媒の供給量を前記調整弁によって調整する、上記[3]記載の精製方法。
[5]
蒸留塔と、
前記蒸留塔に接続され、冷媒の供給管及び排出管が設けられた凝縮器と、
を有する蒸留装置であって、
前記供給管及び/又は排出管に冷媒の供給量を調整するための調整弁が取り付けられており、
前記凝縮器の出口には温度計が設けられており、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって測定された温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度が目標温度より高い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、前記温度が前記目標温度より低い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされるように、前記温度調節計から前記調整弁に指示が送られ、
アクリロニトリル、シアン化水素及び水の分離精製に用いられる、蒸留装置。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
塔頂に凝縮器が接続された蒸留塔を用いて、アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記凝縮器の出口流体の温度を一定に維持する工程を含む方法である。
蒸留塔と、
前記蒸留塔に接続され、冷媒の供給管及び排出管が設けられた凝縮器と、
を有する蒸留装置であって、
前記供給管及び/又は排出管に冷媒の供給量を調整するための調整弁が取り付けられており、
前記凝縮器の出口には温度計が設けられており、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって測定された温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度が目標温度より高い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、前記温度が前記目標温度より低い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされるように、前記温度調節計から前記調整弁に指示が送られる、蒸留装置。
急冷塔6上部から取り出されるガスをライン8により吸収塔9に導入する。吸収塔9の塔頂に回収塔12から抜き出した水を吸収水としてライン14から供給し、反応生成ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水に吸収させる。吸収塔9に供給されたガスに含まれる成分のうち、吸収されなかったプロピレン、プロパン、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等及び微量の有機物等は、吸収塔の塔頂のライン11より抜き出す。吸収塔9の塔底液はライン10より回収塔12に供給する。
回収塔12の塔頂に抽出水をライン15から導入し、抽出蒸留によりアセトニトリルを抽出分離する。アセトニトリルはライン16よりプロセス系外に抜き出す。また、大部分の水はライン13よりプロセス系外に抜き出す。回収塔の塔頂からライン17によりアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出し、図示していない凝縮器で凝縮した後、図示していないデカンターで有機層と水層の二層に分離する。アクリロニトリル、シアン化水素及び少量の水を含む有機層を脱青酸脱水塔18に供給する。水層は前工程にリサイクルするのが好ましく、具体的にはライン10に合流させて回収塔供給液として利用するか、ライン15に合流させて抽出水等として利用する。
まず、リボイラーの加熱量と凝縮器の除熱量を一定にして、塔頂及び塔底のキー物質の濃度(質量%)を調べる。次いで、リボイラーの加熱量は変更しないで、凝縮器の除熱量のみを変更し、凝縮器の出口流体の温度を変化させる。凝縮器の出口流体の温度が異なる場合の塔頂及び塔底それぞれのキー物質の濃度を比較した時、塔頂及び塔底の分離スペックを安定的に保持できる特定の温度範囲が存在することを本発明者は発見した。
一般的な蒸留の場合、蒸留塔の各所、例えば、塔頂及び塔底で測定される温度がそれぞれ目標温度となるように制御することで、所期の分離スペックを達成する。しかしながら、アクリロニトリルの精製において、アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留(いわゆる脱青酸脱水塔を用いて蒸留)する場合、塔頂温度を目標温度に維持していても、塔頂から留出するシアン化水素ガス中のアクリロニトリルの濃度が安定せず、シアン化水素ガス中のアクリロニトリルの濃度が分離スペックを超えて上昇する現象が度々見られる。本発明者は、上記現象は、脱青酸脱水塔の塔上部、特にフィード段より上部においては、シアン化水素濃度とアクリロニトリル濃度の変化が著しいことに起因していることを見出した。つまり、塔頂からの留分はシアン化水素とアクリロニトリルという異なる凝縮潜熱及び比熱を有するものの混合物であるので、この留分を凝縮するために凝縮器で必要とされる除熱量は、それらの混合比によって大きく異なることになる(なお、凝縮器で必要とされる除熱量は、蒸気から液への相変化に伴う熱量、即ち凝縮熱が支配的である。)。つまり、塔頂温度は凝縮に必要な除熱量を必ずしも反映していないことが分った。従って、例え塔頂温度を一定に維持して、塔頂の分離スペックを安定的に維持しようと試みても、塔頂温度が目標温度内で変動している場合でさえ、除熱量を適切に設定できずに塔頂温度を上がってしまい、その結果、塔上部でのアクリロニトリルの濃度が上昇し、塔頂から留出する割合が上がってしまう。
これに対し、凝縮器の出口流体の温度は、凝縮器において、留出蒸気から凝縮分離したアクリロニトリルの凝縮液又は凝縮したアクリロニトリルをシアン化水素ガスから分離した後のガス温度であり、組成変化による影響をほとんど受けることがない。仮に、塔頂温度、凝縮器の除熱量が一定の状態で、塔頂留分の組成が変化し、アクリロニトリルの濃度が上がったとすると、混合物である留分の凝縮潜熱が上がるので、出口流体の温度は上昇することになる。つまり、出口流体の温度には塔頂から留出する留分の温度のみならず、間接的に留分の組成も反映されているので、これを一定に維持するように除熱量を決定することは、留分の温度のみならず組成の影響も反映させて除熱量にフィードバックできる適切な制御であると言える。
また、凝縮器の除熱量を決定する上で、出口流体の温度は気液接触を行っている塔内温度に比べて応答性も速く、管理に適している。よって適正な目標温度を定めて、出口流体の温度に応じて制御することで応答性よく凝縮器を運転し、凝縮器から抜き出すシアン化水素ガス中のアクリロニトリル濃度が塔頂の分離スペックになるよう容易に維持できる。さらに、質量バランス上、脱青酸脱水塔に供給したシアン化水素は、実質的にほぼ全てが凝縮器から抜き出されることになるので、粗アクリロニトリルからのシアン化水素の分離が充分になされ、塔底のシアン化水素濃度を分離スペック以内に維持することができる。即ち、塔頂の温度ではなく凝縮器の出口流体の温度を一定に維持することで、塔頂及び塔底の分離スペックを満たすことができる。
アクリロニトリルの分析は、以下の装置及び条件でガスクロマトグラフィーにより行った。
ガスクロマトグラフィーは、装置として島津GC−17Aを用い、カラムはTC−FFAP 60m×0.32膜厚0.25μmを用いた。検出器はFID、キャリヤーガスにはヘリウムを用いた。
カラム温度条件は、以下の通りであった。
初期温度:50℃
昇温速度:5℃/分
最終温度1:180℃ 15分HOLD
昇温速度:10℃/分
最終温度2:230℃ 10分HOLD
最終温度3:50℃ 5分HOLD
流量計:差圧式流量計(オリフィス型)
メーカー:YOKOGAWA、商品名:Differential Pressure Transmitter DP harp EJX
温度計:抵抗温度計
メーカー:OKAZAKI、商品名:Resistance Thermometer + Temperature Trans
プロピレン、アンモニア及び空気を内径8m、長さ20mの縦型円筒型の流動層反応器1に供給し、プロピレンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。流動層反応器1は、その内部に原料ガス分散管や分散板、除熱管及びサイクロンを有していた。脱青酸脱水塔18は、シーブトレイ55段からなり、塔底から数えて37段目に供給段を有し、24段目にサイドカット流を抜き出すライン23を有し、サイドカットクーラー23b、デカンター23dを経て、23段目にデカンター内の有機層を戻すライン23eを有していた。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−ビスマス−鉄系担持触媒を用い、静止層高2.7mとなるよう充填した。空気分散板から空気を56000Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロピレン6200Nm3/h及びアンモニアを6600Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.70kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させ、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。急冷塔6から流出したガスをライン8より吸収塔9に導入した。吸収塔9塔頂のライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。吸収水量は、吸収塔塔頂から排出されるガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるように調整した。吸収されなかったガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。
吸収塔塔底液を80℃に予熱し、回収塔12に供給した。回収塔12でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、図示していない回収塔デカンターで有機層と水層を形成させ、水層は回収塔12の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18へのフィード液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ13595kg/h及び35.0℃であった。
脱青酸脱水塔18の塔頂ライン19から粗シアン化水素ガスを抜き出して凝縮器20に送り、冷却して分縮した。凝縮器20に用いた冷媒20aは、6℃の水であった。凝縮したシアン化水素を含む液を還流液として塔頂に還流し、凝縮しなかった不純物の少ないシアン化水素ガスをライン21から系外に抜き出した。凝縮器の出口流体(シアン化水素ガス)の温度は、凝縮器下部に取り付けられた温度計22bにて測定し、目標温度である29℃となるよう、温度調節計22aを介して、冷媒20aの流量調節弁20bを制御した。
脱青酸脱水塔18の24段から塔内液を抜き出し、サイドカットクーラー23bで冷却した。サイドカットクーラー23bに用いた冷媒23aは、25℃の水であった。サイドカットクーラーの除熱量Q3は、デカンター23dの液温が30℃となるように、冷媒23aの流量で調整した。塔から抜き出したサイド流は、デカンター23dにて有機層と水層の二層に分離し、水層は、ライン23fにより抜き出し、回収塔12の供給液にリサイクルした。有機層はライン23eにより、塔の23段に戻した。
リボイラー24aの熱源には、回収塔12下部から抜き出した110℃のプロセス水を用いた。与えた熱量Q1は200×103kcal/h/t−アクリロニトリルとし、製品塔25にて製品として取得したアクリロニトリルの質量が、時間当たり11.5tであったので、2300×103kcal/hとなるよう、リボイラー24aに通じるプロセス水24bの流量を調整した。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に送った。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により、質量を測定し、その測定値は、11585kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一であり86℃であった。
アクリロニトリル生産量を11.5±0.2t/hとした時期約6ヶ月間、上記のような運転を継続した。この間、凝縮器の出口流体の温度は、29±0.3℃であった。
脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
生産計画の変更によりアクリロニトリル生産量を12.7t/hに増量したこと以外は、実施例1と同一の設備及び方法でアクリロニトリルを製造した。
リボイラー熱量は2540×103kcal/hまで増加させた。凝縮器20の出口流体の温度が29℃となるよう温度調節計22aを介して、冷媒20aの流量調節弁20bを制御した。脱青酸脱水塔18の塔内の各温度及びデカンター23dの温度は、実施例1とほぼ同一であった。
アクリロニトリル生産量を12.7±0.2t/hとした時期約3ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段の温度は、29±0.3℃であった。脱青酸脱水塔18は安定的に運転でき、この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppm以下であり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
プロパン、アンモニア及び空気を実施例1と同じ流動層反応器1に供給し、プロパンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−バナジウム系担持触媒を用い、静止層高2.2mとなるよう充填した。空気分散板から空気を64500Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロパン4300Nm3/h及びアンモニアを4300Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.75kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させた。また、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。
急冷塔6から取り出したガスをライン8より吸収塔9に導入した。塔頂ライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。未吸収のガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。吸収塔塔頂から取り出したガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるよう、吸収水量を調整した。
吸収塔塔底液を予熱し、回収塔12に供給した。回収塔でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、有機層と水層を形成させ、水層は回収塔の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18へのフィード液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ6219kg/h及び35.0℃であった。
脱青酸脱水塔18の塔頂ライン19から粗シアン化水素ガスを抜き出して凝縮器20に送り、冷却して分縮した。凝縮器20に用いた冷媒20aは、6℃の水であった。凝縮したシアン化水素を含む液を還流液として塔頂に還流し、凝縮しなかった不純物の少ないシアン化水素ガスをライン21から系外に抜き出した。凝縮器の出口流体(シアン化水素ガス)の温度は、凝縮器下部に取り付けられた温度計22bにて測定し、目標温度である29℃となるよう、温度調節計22aを介して、冷媒20aの流量調節弁20bを制御した。
脱青酸脱水塔18の24段から塔内液を抜き出し、サイドカットクーラー23bで冷却した。サイドカットクーラー23bに用いた冷媒23aは、25℃の水であった。サイドカットクーラーの除熱量Q3は、デカンター23dの液温が30℃となるように、冷媒23aの流量で調整した。塔から抜き出したサイド流は、デカンター23dにて有機層と水層の二層に分離し、水層は、ライン23fにより抜き出し、回収塔12の供給液にリサイクルした。有機層はライン23eにより、塔の23段に戻した。
リボイラー24aの熱源には、回収塔12下部から抜き出した110℃のプロセス水を用いた。与えた熱量Q1は、250×103kcal/h/t−アクリロニトリルとし、製品塔25にて製品として取得したアクリロニトリルの質量が、時間当たり5.22tであったので、1305×103kcal/hとなるよう、リボイラー24aに通じるプロセス水24bの流量を調整した。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に供給した。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により、質量を測定し、その測定値は5312kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一であり86℃であった。
アクリロニトリル生産量を5.22±0.17t/hとした時期約4ヶ月間、上記運転を継続した。この間、温度制御段の温度は、29±0.4℃であった。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、
この間、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300±20ppmであり、塔底から抜き出されるアクリロニトリル中のシアン化水素濃度は40±10ppmであった。またこの間、アクリロニトリル製品中のシアン化水素濃度は5ppmであり、高品質のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
脱青酸脱水塔の凝縮器の出口流体の温度管理を行わず、脱青酸脱水塔の最上段を温度制御段とし、当該段の温度が30℃となるよう運転したこと以外は、実施例1と同一の設備及び方法でプロピレンのアンモ酸化反応を実施し、3ヶ月間アクリロニトリルを製造した。この間、温度制御段の温度は30℃で変化がなかったが、製造開始から1ヵ月後に、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度が1000ppmに上昇した。凝縮器の除熱量Q2が不足していると判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を上げてQ2を増加させところ、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかったが、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300ppmまで減少した。
製造開始から2ヵ月後に製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素の濃度が20ppmまで上昇しオフスペック品となった。この時、脱青酸脱水塔の塔底液中のシアン化水素濃度は、120wtppmであった。凝縮器の除熱量Q2が過多と判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を下げてQ2を減少させたところ、製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素濃度が5ppmまで減少しオンスペック品となった。また、塔頂から留出するシアン化水素中に留出するアクリロニトリルの割合は600ppmまで上昇し、シアン化水素誘導体の品質が落ちていた。この間、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかった。
脱青酸脱水塔の凝縮器の出口流体の温度管理を行わず、脱青酸脱水塔の最上段を温度制御段とし、当該段の温度が30℃となるよう運転したこと以外は、実施例3と同一の設備及び方法でプロパンのアンモ酸化反応を実施し、2ヶ月間アクリロニトリルを製造した。この間、温度制御段の温度は30℃で変化がなかったが、製造開始から2週間後に、脱青酸脱水塔塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度が1000ppm以上に上昇した。凝縮器の除熱量Q2が不足していると判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を上げてQ2を増加させところ、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかったが、塔頂から留出するシアン化水素中のアクリロニトリル濃度は300ppmまで減少した。
製造開始から4週間後に製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素の濃度20ppmまで上昇しオフスペック品となった。この時、脱青酸脱水塔の塔底液中のシアン化水素濃度は、120wtppmであった。凝縮器の除熱量Q2が過多と判断し、凝縮器に通じる冷媒の流量を下げてQ2を減少させたところ、製品として取得したアクリロニトリル中のシアン化水素濃度が5ppmまで減少しオンスペック品となった。また、塔頂から留出するシアン化水素中に留出するアクリロニトリルの割合は600ppmまで上昇し、シアン化水素誘導体の品質が落ちていた。この間、脱青酸脱水塔の最上段の温度は30℃で変化がなかった。
2 プロピレン及び/又はプロパンの供給管
3 アンモニアの供給管
4 空気(酸素)の供給管
6 急冷塔
5、7、8 ライン
9 吸収塔
10、11 ライン
12 回収塔
13、14、15、16、17 ライン
18 脱青酸脱水塔
19 ライン
20 脱青酸脱水塔凝縮器
20a 脱青酸脱水塔凝縮器に供給する冷媒
20b 調製弁
20b’ 凝縮器の冷媒の供給管と排出管とを接続する流量調節弁
21、22、23、23c、23e、23f ライン
22b 温度計
22a 温度調節計
23a 脱青酸脱水塔サイドカットクーラーに供給する冷媒
23b 脱青酸脱水塔サイドカットクーラー
23d 脱青酸脱水塔デカンター
24、24c ライン
24a 脱青酸脱水塔リボイラー
24b 脱青酸脱水塔リボイラーに供給する熱媒
25 製品塔
26、27、28、29 ライン
30 製品塔凝縮器
31 ライン
A フィード段
B チムニートレイ
Claims (5)
- 塔頂に凝縮器が接続された蒸留塔を用いて、アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記凝縮器の出口流体の温度を一定に維持する工程を含む方法。 - 前記凝縮器でアクリロニトリルとシアン化水素を分離し、
前記凝縮器から留出する還流液及び/又はシアン化水素ガスの温度を一定に維持する、請求項1記載のアクリロニトリルの精製方法。 - 前記凝縮器へ冷媒を供給する管及び/又は冷媒を排出する管に調整弁が設けられ、前記凝縮器には出口流体の温度を測定するための温度計が設けられており、
前記凝縮器の出口流体の目標温度を設定し、前記凝縮器の出口流体の温度が前記目標温度より高い場合は前記調整弁の開度を調整することにより冷媒の供給量を増加させ、前記凝縮器の出口流体の温度が前記目標温度より低い場合は前記調整弁の開度を調整することにより冷媒の供給量を減少させる、請求項1又は2記載の精製方法。 - 前記凝縮器の出口流体の温度の上限値及び下限値を設定し、前記凝縮器の出口流体の温度が前記下限値以上、前記上限値以下で推移するように、前記冷媒の供給量を前記調整弁によって調整する、請求項3記載の精製方法。
- 蒸留塔と、
前記蒸留塔に接続され、冷媒の供給管及び排出管が設けられた凝縮器と、
を有する蒸留装置であって、
前記供給管及び/又は排出管に冷媒の供給量を調整するための調整弁が取り付けられており、
前記凝縮器の出口には温度計が設けられており、
前記温度計は温度調節計を介して前記調整弁に接続されており、
前記温度計によって測定された温度が前記温度調節計に送信され、
前記温度が目標温度より高い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が増やされ、前記温度が前記目標温度より低い場合には前記調整弁の開度が調整されることにより冷媒の供給量が減らされるように、前記温度調節計から前記調整弁に指示が送られ、
アクリロニトリル、シアン化水素及び水の分離精製に用いられる、蒸留装置。
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