JP5717280B2 - アクリロニトリルの精製方法 - Google Patents
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Description
特許文献1には、アクリロニトリルの精製において、脱青酸脱水塔に酸及びハイドロキノンを添加して、アクリロニトリル及びシアン化水素の重合を抑制する方法が開示されている。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、アクリロニトリルの製造プロセスにおいて、製品品質の安定化及びアクリロニトリル製造プロセス負荷を軽減できる方法を提供することである。
[1]
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留装置の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量を算出して前記凝縮器を制御する工程を含む方法。
[2]
前記蒸留装置に供給及び前記蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度、を測定し、前記熱量バランスを求める、上記[1]記載のアクリロニトリルの精製方法。
[3]
前記蒸留塔の中段から前記溶液の一部を抜出し、その中段抜出し液を冷却及び油水分離した後、有機層を前記蒸留塔に戻し、水層を排出する工程を含み、
前記蒸留装置の供給液、塔底抜出液、前記塔頂ガス、及び前記水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度を測定し、前記熱量バランスを求める、上記[1]又は[2]記載のアクリロニトリルの精製方法。
[4]
前記除熱量を下記式(1)
Hf+Q1=Hh+Hb+Hw+Q2+Q3 (1)
(式(1)中、Hfは前記蒸留塔の供給液のエンタルピー、Hhは塔頂ガスのエンタルピー、Hbは塔底抜出液のエンタルピー、Hwは前記水層のエンタルピー、Q1はリボイラーの加熱量、Q2は前記凝縮器の除熱量、Q3は前記中段抜出し液の冷却による除熱量を示す。)
によって算出する、上記[3]記載のアクリロニトリルの精製方法。
[5]
アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する装置であって、
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスを凝縮する凝縮器と、を有し、
前記蒸留装置に供給及び前記蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定されて前記蒸留塔の熱量バランスが算出され、
前記蒸留塔の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量が算出される蒸留装置。
[6]
前記蒸留塔の中段に溶液の一部が中段抜出し液として抜出されるラインが設けられており、前記ラインは冷却器及び油水分離器に接続されており、
前記中段抜出し液は、前記冷却器により冷却され、かつ、前記油水分離器により油層と水層とに分離され、
前記蒸留塔の塔底抜出液、前記塔頂ガス、及び前記水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定され、前記熱量バランスが算出される、上記[5]記載の蒸留装置。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。装置や部材の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留装置の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量を算出して前記凝縮器を制御する工程を含む方法である。
急冷塔6上部から取り出されるガスをライン8により吸収塔9に導入する。吸収塔9の塔頂に回収塔12から抜き出した水を吸収水としてライン14から供給し、反応生成ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水に吸収させる。吸収されなかったプロピレン、プロパン、酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素等及び微量の有機物等は、吸収塔の塔頂のライン11より抜き出す。吸収塔9の塔底液はライン10より回収塔12に供給する。
回収塔12の塔頂に抽出水をライン15から導入し、抽出蒸留によりアセトニトリルを抽出分離する。アセトニトリルはライン16よりプロセス系外に抜き出す。また、大部分の水はライン13よりプロセス系外に抜き出す。回収塔の塔頂からライン17によりアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出し、図示していない凝縮器で凝縮した後、図示していないデカンターで有機層と水層の二層に分離する。アクリロニトリル、シアン化水素及び少量の水を含む有機層を脱青酸脱水塔18に供給する。水層は、(ライン10より)回収塔供給液又は(ライン15より)抽出水等として、前工程にリサイクルする。
熱量バランスは、例えば、蒸留装置に供給及び蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれるアクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度、をそれぞれ測定することにより求めることができる。
中段抜出し液を冷却及び油水分離した後、有機層を蒸留塔に戻し、水層を排出する場合、蒸留装置の熱量バランスは、例えば、蒸留装置の供給液、塔底抜出液、塔頂ガス、及び水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれるアクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度を、それぞれ測定することにより求めることができる。
Hf+Q1=Hh+Hb+Hw+Q2+Q3 (1)
ここで、脱青酸脱水塔に用いる重合禁止剤の入出エンタルピー差や装置からの放熱量は上述の熱量に比べ少量かつほぼ固定値なので、(1)式には含まれない。デカンター23d内の有機層を予熱して戻す場合は、(1)式左辺に、その加熱量を加える。エンタルピーは、0℃を基準として算出した熱量で、例えば15℃の水が2.0kg/hで供給されている場合、供給水のエンタルピーは、水の比熱1.0kcal/kg/℃を用い、2.0×1.0×(15−0)=30kcal/hと計算される。
Hf=Hf.an+Hf.hcn+Hf.wa (2)
Hh=Hh.an+Hh.hcn+Hh.wa (3)
Hb=Hb.an+Hb.hcn+Hb.wa (4)
Hw=Hw.an+Hw.hcn+Hw.wa (5)
脱青酸脱水塔18への供給液の質量Wf、凝縮器20から抜き出す粗シアン化水素ガスの質量Wh、塔底抜出液の質量Wb、デカンター23dから抜き出す水層液の質量Wwとの間には下記式(6)に示す関係が成り立つ。
Wf=Wh+Wb+Ww (6)
脱青酸脱水塔18への供給液(添字f)中の主成分であるアクリロニトリル(添字.an)、シアン化水素(添字.hcn)及び水(添字.wa)の質量をそれぞれWf.an、Wf.hcn、Wf.waとする。これら各成分の質量は、供給液の組成分析値と供給液の質量の積から計算できる。同様にして凝縮器20からライン21を通して抜き出す粗シアン化水素ガス(添字h)中の各成分の質量をそれぞれWh.an、Wh.hcn、Wh.wa、ライン24から抜き出す塔底抜出液(添字b)中の各成分の質量をそれぞれWb.an、Wb.hcn、Wb.wa、デカンター23dからライン23fを通して抜き出す水層液(添字w)の各成分の質量をそれぞれWw.an、Ww.hcn、Ww.waとする。これらには、下記式(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、及び(13)に示す関係が成り立つ。
Wf=Wf.an+Wf.hcn+Wf.wa (7)
Wh=Wh.an+Wh.hcn+Wh.wa (8)
Wb=Wb.an+Wb.hcn+Wb.wa (9)
Ww=Ww.an+Ww.hcn+Ww.wa (10)
Wf.an=Wh.an+Wb.an+Ww.an (11)
Wf.hcn=Wh.hcn+Wb.hcn+Ww.hcn (12)
Wf.wa=Wh.wa+Wb.wa+Ww.wa (13)
Hf.an=Wf.an×c.an×Tf (14)
Hf.hcn=Wf.hcn×c.hcn×Tf (15)
Hf.wa=Wf.wa×c.wa×Tf (16)
Hh.an=Wh.an×c.an×Th (17)
Hh.hcn=Wh.hcn×c.hcn×Th (18)
Hh.wa=Wh.wa×c.wa×Th (19)
Hb.an=Wb.an×c.an×Tb (20)
Hb.hcn=Wb.hcn×c.hcn×Tb (21)
Hb.wa=Wb.wa×c.wa×Tb (22)
Hw.an=Ww.an×c.an×Tw (23)
Hw.hcn=Ww.hcn×c.hcn×Tw (24)
Hw.wa=Ww.wa×c.wa×Tw (25)
本実施形態の方法においては、上記式(1)−(25)と上述したQ1、Q2、Q3から、表計算ソフト(Microsoft社のExcel等)により、熱量バランス計算シート(26)を作成する。
なお、化学工学的な観点からは反応系のマテリアルバランスと、ヒートバランスとを併せて設定することから、「熱量バランス」はマテリアル&ヒートバランス等と称される場合もある。
熱量バランス計算シート(26)により、脱青酸脱水塔に供給又は脱青酸脱水塔から抜出される溶液の熱量バランスを計算する。つまり、塔底液、塔頂液、中段抜出し液のそれぞれについて流量や組成を逐次把握し、各留分のエンタルピーを計算する。供給又は抜出される各留分の熱量が把握されれば、凝縮器20の除熱量Q2を以下のとおりに求めることができる。
まず、脱青酸脱水塔18への供給液の質量とその液組成及び液温度から供給液のエンタルピーHfを熱量バランス計算シート(26)にて計算する。脱青酸脱水塔18への供給液の質量Wf、液組成及び温度は、それぞれプロセスに設置された流量計、オンラインガスクロマトグラフィー及び温度計により測定される実測値を用いるのがよいが、液組成については、大きな変化はないので経験的な値を用いてもよい。
上述の供給液の場合と同様に、凝縮器20からの抜出流、塔底抜出流、デカンター23dからの水層抜出流それぞれの液質量、組成及び温度を計算シート(26)に入力する。
アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する装置であって、
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスを凝縮する凝縮器と、を有し、
前記蒸留装置に供給及び前記蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定されて前記蒸留塔の熱量バランスが算出され、
前記蒸留塔の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量が算出される蒸留装置。
前記蒸留塔の中段に溶液の一部が抜出されるラインが設けられており、前記ラインは冷却器及び油水分離器に接続されており、
前記蒸留塔の塔底抜出液、前記塔頂ガス、及び前記水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定され、前記熱量バランスが算出される、上記蒸留装置を用いて行うことができる。
アクリロニトリルの分析は、以下の装置及び条件でガスクロマトグラフィーにより行った。
ガスクロマトグラフィーは、装置として島津GC−17Aを用い、カラムはTC−FFAP 60m×0.32膜厚0.25μmを用いた。検出器はFID、キャリヤーガスにはヘリウムを用いた。
カラム温度条件は、以下の通りであった。
初期温度: 50℃
昇温速度: 5℃/分
最終温度1:180℃ 15分HOLD
昇温速度: 10℃/分
最終温度2:230℃ 10分HOLD
最終温度3:50℃ 5分HOLD
流量計:YKOGAWA製 差圧式流量計(オリフィス型) Differential Pressure Transmitter DP hard EJX
温度計:OKAZAKI製 抵抗温度計 Resistance Thermometer, Temperature Trans
プロピレン、アンモニア及び空気を内径8m、長さ20mの縦型円筒型の流動層反応器1に供給し、プロピレンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。流動層反応器1は、その内部に原料ガス分散管や分散板、除熱管及びサイクロンを有していた。脱青酸脱水塔18は、シーブトレイ55段からなり、下部より数えて37段目にライン17が接続された供給段を有し、24段目にサイドカット流を抜き出すライン23を有し、サイドカットクーラー23b、デカンター23dを経て、23段目にデカンター内の有機層を戻すライン23eを有していた。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−ビスマス−鉄系担持触媒を用い、静止層高2.7mとなるよう充填した。空気分散板から空気を56000Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロピレン6200Nm3/h及びアンモニアを6600Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.70kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させ、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。急冷塔6から流出したガスをライン8より吸収塔9に導入した。吸収塔9塔頂のライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。吸収水量は、吸収塔塔頂から排出されるガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるように調整した。吸収されなかったガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。
吸収塔塔底液を80℃に予熱し、回収塔12に供給した。回収塔12でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、図示していない回収塔デカンターで有機層と水層を形成させ、水層は回収塔12の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18への供給液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ13595kg/h及び35.0℃であった。供給液を採取し、アクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度を分析した。これらのデータから供給液の質量及び熱量バランスを計算した結果を表1に示す。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に送った。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により質量を測定し、その測定値は、11585kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一とした。塔底液を採取し、アクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度を分析した。これらのデータから塔底抜出液の質量及び熱量バランスを計算した結果を表4に示す。
以上、計算した数値を(1)式に代入し、凝縮器20の除熱量Q2を計算すると、1115×103kcal/hとなった。
アクリロニトリル生産量を11.5±0.2t/hとした時期約6ヶ月間、上記の除熱量Q2で脱青酸脱水塔の運転を行った。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、高純度のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
生産計画の変更によりアクリロニトリル生産量を12.7t/hに増量したこと以外は、実施例1と同一の設備でアクリロニトリルを製造した。
熱量Q1は2550×103kcal/hまで、除熱量Q3は795×103kcal/hまで増加させた。
Wf、Wh、Ww及びWbは、それぞれ15015kg/h、844kg/h、1515kg/h及び12795kg/hとなった。
脱青酸脱水塔への供給液の組成分析を行ったところ、実施例1と同一であったため、他箇所の組成分析は行わず、実施例1と同一とした。脱青酸脱水塔18の塔内の各温度及びデカンター23dの温度は、実施例1と同一と仮定した。
以上より、算出した除熱量Q2は1125×103kcal/hであり、この除熱量Q2で脱青酸脱水塔の運転を行った。脱青酸脱水塔18の塔内の各温度及びデカンター23dの温度は、実施例1と同一となった。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、高純度のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
プロパン、アンモニア及び空気を実施例1と同じ流動層反応器1に供給し、プロパンのアンモ酸化反応を下記の通り行った。
流動層触媒は、粒径10〜100μm、平均粒径55μmであるモリブデン−バナジウム系担持触媒を用い、静止層高2.2mとなるよう充填した。空気分散板から空気を64500Nm3/h供給し、原料ガス分散管からプロパン4300Nm3/h及びアンモニアを4300Nm3/h供給した。反応温度は440℃となるよう除熱管で制御した。圧力は0.75kg/cm2Gであった。
反応生成ガスを急冷塔6に導入し、水と向流接触させた。また、未反応のアンモニアを硫酸で中和除去した。
急冷塔6から取り出したガスを吸収塔9に導入した。塔頂ライン14より吸収水を導入し、ガスと向流接触させ、ガス中のアクリロニトリル、アセトニトリル及びシアン化水素を水中に吸収させた。未吸収のガスは、吸収塔塔頂ライン11より取り出し、焼却した。吸収塔塔頂から取り出したガス中のアクリロニトリル濃度が100volppmとなるよう、吸収水量を調整した。
吸収塔塔底液を予熱し、回収塔12に供給した。回収塔でアセトニトリル及び大部分の水を分離し、塔頂ライン17からアクリロニトリル、シアン化水素及び水を留出させた。該留出蒸気を凝縮し、有機層と水層を形成させ、水層は回収塔の供給ライン10にリサイクルし、有機層は脱青酸脱水塔18に供給した。
脱青酸脱水塔18への供給液は、ライン17に設置された図示していない流量計及び温度計により、質量及び温度を測定した。測定値は、それぞれ6219kg/h及び35.0℃であった。供給液を採取し、アクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度を分析した。これらのデータから供給液の質量及び熱量バランスを計算した結果を表5に示す。
塔底ライン24から粗アクリロニトリルを抜き出し、製品塔25に供給した。塔底抜出液は、ライン24に設置された図示していない流量計により、質量を測定した。測定値は、5312kg/hであった。塔底抜出液の温度は、脱青酸脱水塔18の塔底の液温と同一とした。塔底液を採取し、アクリロニトリル、シアン化水素及び水の濃度を分析した。これらのデータから塔底抜出液の質量及び熱量バランスを計算した結果を表8に示す。
アクリロニトリル生産量を5.22±0.17t/hとした時期約4ヶ月間、上記の除熱量Q2で脱青酸脱水塔の運転を行った。脱青酸脱水塔は安定的に運転でき、高純度のアクリロニトリル製品を安定的に取得できた。また、粗シアン化水素の純度も安定しており、シアン化水素誘導体の品質にも問題はなかった。
脱青酸脱水塔に係わる熱量バランス計算から凝縮器の除熱量を算出しなかったこと以外は、実施例1と同一の設備でアクリロニトリルを製造した。リボイラーの熱量Q1及び凝縮器の除熱量Q2の調整は、運転中、塔底液のシアン化水素及び水の濃度及び/又は凝縮器から抜出される粗シアン化水素中に留出するアクリロニトリルの濃度を測定して、これらが分離スペックを満たすよう調整した。
運転開始直後、Q1過剰及び/又はQ2不足により凝縮器からの還流量が少なかったためか、粗シアン化水素中に留出するアクリロニトリルの割合が高かった。そこで、まず、Q2を上げてみたが、前記Q2の増加量が適正値を超えて多過ぎたためか、塔の圧力が不安定となり、また塔底の液レベルが変動(低下)する現象(塔内の蒸気量及び液量が過多となり、トレイから液が降下しにくくなる現象(フラッディング))が見られた。なお、塔底液のレベルは多少の低下があっても差し支えない程度に余裕を持って運転するのが通常であるが、許容できる範囲を超えて低下してしまうと、塔底液を抜出すポンプがキャビテーションを起こして稼動できなくなってしまうので、液レベルの変動が小さい運転が望まれる。続いて、Q1及びQ2の調整頻度を上げて運転を実施した塔底液の組成分析を参照し、塔圧の変動がないよう段階的に減調整した。最終的に、塔底液の組成は、シアン化水素が50wtppm以下、水が1.0wt%以下になるようにした。この調整に2日間要した。その間、アクリロニトリル品質が悪化した。また、アクリロニトリル生産量に関して、計画生産量を達成できなかった。
脱青酸脱水塔に係わる熱量バランス計算から凝縮器の除熱量を算出しなかったこと以外は、実施例3と同一の設備でアクリロニトリルを製造した。リボイラーの熱量Q1及び凝縮器の除熱量Q2の調整は、運転中、塔底液のシアン化水素及び水の濃度及び/又は凝縮器から抜出される粗シアン化水素中に留出するアクリロニトリルの濃度を測定して、これらが分離スペックを満たすよう調整した。
運転開始直後、Q2が過多であったためか、塔底液中のシアン化水素濃度が高かった。そこで、Q1を上げてみたが、この時、塔の圧力が不安定となり、塔底の液レベルが変動(低下)する現象が見られた。続いて、Q1及びQ2の調整頻度を上げて運転を実施した塔底液の組成分析を参照し、塔圧の変動がないよう段階的に減調整した。最終的に、塔底液の組成は、シアン化水素が50wtppm以下、水が1.0wt%以下になるようにした。この調整に2日間要した。その間、アクリロニトリル品質が悪化した。また、アクリロニトリル生産量に関して、計画生産量を達成できなかった。
2 プロピレン及び/又はプロパンの供給管
3 アンモニアの供給管
4 空気(酸素)の供給管
6 急冷塔
5、7、8 ライン
9 吸収塔
10、11 ライン
12 回収塔
13、14、15、16、17 ライン
18 脱青酸脱水塔
19 ライン
20 脱青酸脱水塔凝縮器
20a 脱青酸脱水塔凝縮器に供給する冷媒
21、22、23、23c、23e、23f ライン
23a 脱青酸脱水塔サイドカットクーラーに供給する冷媒
23b 脱青酸脱水塔サイドカットクーラー
23d 脱青酸脱水塔デカンター
24、24c ライン
24a 脱青酸脱水塔リボイラー
24b 脱青酸脱水塔リボイラーに供給する熱媒
25 製品塔
26、27、28、29 ライン
30 製品塔凝縮器
31 ライン
Claims (6)
- 蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスの凝縮器と、を有する蒸留装置を用いてアクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する工程を含むアクリロニトリルの精製方法であって、
前記蒸留装置の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量を算出して前記凝縮器を制御する工程を含む方法。 - 前記蒸留装置に供給及び前記蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度、を測定し、前記熱量バランスを求める、請求項1記載のアクリロニトリルの精製方法。
- 前記蒸留塔の中段から前記溶液の一部を抜出し、その中段抜出し液を冷却及び油水分離した後、有機層を前記蒸留塔に戻し、水層を排出する工程を含み、
前記蒸留装置の供給液、塔底抜出液、前記塔頂ガス、及び前記水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度を測定し、前記熱量バランスを求める、請求項1又は2記載のアクリロニトリルの精製方法。 - 前記除熱量を下記式(1)
Hf+Q1=Hh+Hb+Hw+Q2+Q3 (1)
(式(1)中、Hfは前記蒸留塔の供給液のエンタルピー、Hhは塔頂ガスのエンタルピー、Hbは塔底抜出液のエンタルピー、Hwは前記水層のエンタルピー、Q1はリボイラーの加熱量、Q2は前記凝縮器の除熱量、Q3は前記中段抜出し液の冷却による除熱量を示す。)
によって算出する、請求項3記載のアクリロニトリルの精製方法。 - アクリロニトリル、シアン化水素及び水を含む溶液を蒸留する装置であって、
蒸留塔と、前記蒸留塔に接続された、塔頂ガスを凝縮する凝縮器と、を有し、
前記蒸留装置に供給及び前記蒸留装置から抜出される溶液及び/又はガスの質量及び温度、並びに前記溶液及び/又はガスに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定されて前記蒸留塔の熱量バランスが算出され、
前記蒸留塔の熱量バランスから前記凝縮器の除熱量が算出される蒸留装置。 - 前記蒸留塔の中段に溶液の一部が中段抜出し液として抜出されるラインが設けられており、前記ラインは冷却器及び油水分離器に接続されており、
前記中段抜出し液は、前記冷却器により冷却され、かつ、前記油水分離器により油層と水層とに分離され、
前記蒸留塔の塔底抜出液、前記塔頂ガス、及び前記水層の質量及び温度、並びにこれらに含まれる前記アクリロニトリル、前記シアン化水素及び前記水の濃度が測定され、前記熱量バランスが算出される、請求項5記載の蒸留装置。
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