JP5209218B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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αh<−1.2Y+17 (1)
(上記一般式(1)中のαhは湿度膨張係数(×10−6/%RH)、Yはヤング率(GPa)を示す。)の関係を具備すること、フィルム面方向における少なくとも一方向のヤング率が4.5GPa以上であること、フィルム面方向における少なくとも一方向の湿度膨張係数が1〜7(×10−6/%RH)の範囲にあること、フィルムの温度膨張係数が14×10−6/℃以下である方向が、フィルムの幅方向であること、融点が200〜260℃の範囲にあること、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分であること、二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体、特にリニア記録方式の高密度磁気記録テープのベースフィルムに使用されることの少なくともいずれかを具備する二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムを形成する芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなるものである。具体的な前述の式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分などが挙げられる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の芳香族ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。そして、前述のとおり、溶融時の流動性やその後の結晶性が改良されていることから、製膜性に優れた、例えば厚み斑の均一なフィルムとなる。
αh<−1.2Y+17 (1)
(ここで、αhは湿度膨張係数(×106/%RH)を、Yはヤング率(GPa)を示す。)
αh<−1.2Y+16.5 (1’)
よりさらに
αh<−1.2Y+16.0 (1’’)
である。
αh>−1.2Y+12.0 (1’’’)
程度である。上述のようなヤング率、αtやαhは、前述の共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、先ほどのフィルムの面方向における少なくとも一方向、好ましくは温度膨張係数が14×10−6/%RH以下である方向の湿度膨張係数(αh)の上限は8×10−6/%RH以下、さらに7×10−6/%RH以下、特に6×10−6/%RH以下の範囲にあることが、特に磁気記録テープにしたときの寸法安定性の点で好ましい。なお、下限は特に制限されないが、製膜性などの点から1×10−6/%RH程度である。特に、磁気記録テープにベースフィルムに用いる場合、上記式(1)を満足する方向が二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向であることが、磁気記録テープとしたとき、トラックずれなどを極めて抑制できることから好ましい。なお、本発明において、フィルムの面方向とはフィルムの厚みに直交する方向であり、フィルムの幅方向とはフィルムの製膜方向(長手方向、縦方向と称することもある。)に直交する方向であり、横方向と称することもある。
つぎに、本発明における芳香族ポリエステルの製造方法について、詳述する。
まず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸と例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、例えばエチレングリコールとを反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られる芳香族ポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.2dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。なお、前述の通り、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を、そのエステル化合物を経由せずグリコールと直接反応させることにより、反応副生物であるジエチレングリコールなどの副生物の含有量を低減することもできる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、製膜方向と幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであり、例えば以下のような方法で製造することが製膜性を維持しつつ、温湿度膨張係数を低減しやすいことから好ましい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。なお、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されていることから極めて延伸性に富む反面、同じ延伸倍率ではヤング率が低くなる傾向があり、目的とするヤング率を得るにはより高めの延伸倍率で延伸することが必要である。なお、通常であれば、延伸倍率を上げると製膜安定性が損なわれるが、本発明では6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されているので延伸性が非常に高く、そのような問題は無い。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
ガラス転移点、融点はDSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal Analyst2100)により昇温速度20℃/minで測定した。
グリコール成分については、試料10mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に600Mの1H−NMR(日立電子製、JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400M 13C−NMR(日立電子製、JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(×10−6/℃)である。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
テレフタル酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.73dl/gで、酸成分の65モル%がテレフタル酸成分、酸成分の35モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98.5モル%がエチレングリコール成分、1.5モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は233℃、ガラス転移温度は91℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
テレフタル酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.68dl/gで、酸成分の80モル%がテレフタル酸成分、酸成分の20モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は230℃、ガラス転移温度は85℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.78dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98.5モル%がエチレングリコール成分、1.5モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は240℃、ガラス転移温度は112℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.81dl/gで、酸成分の94モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の6モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は255℃、ガラス転移温度は117℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例4において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を5.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.2倍に、熱固定処理温度を210℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。なお、得られたフィルムは、幅方向のヤング率が極めて低く、磁気記録媒体としたときに幅方向の寸法変化が大きく、また幅方向に張力が係ると非常に伸びやすいものであった。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.78dl/gで、酸成分の57モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の43モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98.5モル%がエチレングリコール成分、1.5モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は253℃、ガラス転移温度は116℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。なお、該ポリエチレン−2,6−ナフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は270℃、ガラス転移温度は120℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例1において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例1において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.5倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を3.4倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
参考例として、特許文献3の実施例1に記載されたヤング率、温度膨張係数そして湿度膨張係数の結果を、表1に示す。
Claims (9)
- 芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分との芳香族ポリエステルからなる二軸配向ポリエステルフィルムであって、
芳香族ジカルボン酸成分の5モル%以上50モル%未満が、下記式(I)
で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分であること、芳香族ポリエステルの主たる繰り返し単位が、アルキレン−2,6−ナフタレートおよびアルキレンテレフタレートからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコールであること、そしてフィルム面方向における少なくとも一方向の温度膨張係数(αt)が14×10−6/℃以下であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。 - フィルム面方向における少なくとも一方向のヤング率と湿度膨張係数とが以下の一般式(1)の関係を具備することを満足する請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
αh<−1.2Y+17 (1)
(上記一般式(1)中のαhは湿度膨張係数(×10−6/%RH)、Yはヤング率(GPa)を示す。) - フィルム面方向における少なくとも一方向のヤング率が4.5GPa以上である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- フィルム面方向における少なくとも一方向の湿度膨張係数が1〜7(×10−6/%RH)の範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 温度膨張係数が14×10−6/℃以下である方向が、フィルムの幅方向である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 芳香族ポリエステルの融点が200〜260℃の範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 磁気記録媒体がリニア記録方式の高密度磁気記録テープである請求項8記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
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