JP5209219B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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フィルム面方向における少なくとも一方向が以下の式(1)
αh<−1.2Y+17 (1)
(上記一般式(1)中のαhは湿度膨張係数(ppm/%RH)、Yはヤング率(GPa)を示す。)の関係を具備すること、フィルムの少なくとも一方向のヤング率が6GPa以上であること、フィルムの少なくとも一方向における湿度膨張係数が1〜7ppm/RHの範囲にあること、フィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が10ppm/℃以下であること、融点が200〜260℃の範囲にあること、二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体、特にリニア記録方式の高密度磁気記録テープのベースフィルムに使用されることの少なくともいずれかを具備する二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
本発明において、二軸配向ポリエステルフィルムを形成する芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなるものである。具体的な前述の式(I)で示される芳香族ジカルボン酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。また、グリコール成分としては、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分などが挙げられる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の芳香族ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出すことで得られる。そして、前述のとおり、溶融時の流動性やその後の結晶性が改良されていることから、製膜性に優れた、例えば厚み斑のない均一なフィルムとなる。
αh<−1.2Y+17 (1)
(ここで、αhは湿度膨張係数(×106/%RH)を、Yはヤング率(GPa)を示す。)
αh<−1.2Y+16.5 (1’)
よりさらに
αh<−1.2Y+16.0 (1’’)
である。
αh>−1.2Y+12.0 (1’’’)
程度である。上述のようなヤング率、αhや後述するαtは、前述の共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、少なくとも1方向、好ましくはフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が×10−6/℃以下であることが好ましい。フィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が10×10−6/℃以下であることで環境変化に対する優れた寸法安定性を発現することが出来る。なお、特許文献3の結果から、ポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフタレートを共重合した場合、温度膨張係数は大きくなってしまうと予想されるが特定の共重合量の範囲で共重合し、かつそれを延伸することで、驚くべきことに温度膨張係数を小さく出来たのが本発明である。温度膨張係数の下限は制限されないが、通常−15×10−6/℃である。好ましい温度膨張係数(αt)は−10×10−6/℃〜10×10−6/℃、さらに−7×10−6/℃〜7×10−6/℃、特に−5×10−6/℃〜5×10−6/℃の範囲であることが、例えば磁気記録テープとしたとき、雰囲気の温湿度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
つぎに、本発明における芳香族ポリエステルの製造方法について、詳述する。
まず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸と例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と、例えばエチレングリコールとを反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られる芳香族ポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.3dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。なお、前述の通り、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を、そのエステル化合物を経由せずグリコールと直接反応させることにより、反応副生物であるジエチレングリコールなどの副生物の含有量を低減することもできる。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、製膜方向と幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであり、例えば以下のような方法で製造することが、製膜性を維持しつつ、ヤング率を向上させやすいことから好ましい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。なお、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されていることから極めて延伸性に富む反面、同じ延伸倍率ではヤング率が低くなる傾向があり、目的とするヤング率を得るにはより高めの延伸倍率で延伸することが必要である。なお、通常であれば、延伸倍率を上げると製膜安定性が損なわれるが、本発明では6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が共重合されているので延伸性が非常に高く、そのような問題は無く、特に延伸倍率をより高くできることから、厚みが10μm以下、さらに8μm以下の薄いフィルムで特に有用である。なお、フィルムの厚みの下限は特に制限されないが、通常1μm程度、好ましくは3μmである。
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
ガラス転移点、融点はDSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal lyst2100)により昇温速度20℃/minで測定した。
グリコール成分については、試料10mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に600Mの1H−NMR(日立電子製 JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、芳香族ジカルボン酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400M 13C−NMR(日立電子 JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(×10−6/℃)である。
得られたフィルムを、フィルムの幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.66dl/gで、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は240℃、ガラス転移温度は117℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、製膜方向の延伸温度を135℃に、製膜方向の延伸倍率を5.3倍に、幅方向の延伸温度を135℃に、幅方向の延伸倍率を5.8倍に、熱固定処理温度を210℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.72dl/gで、酸成分の94モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の6モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は255℃、ガラス転移温度は119℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例3において、製膜方向の延伸温度を135℃に、製膜方向の延伸倍率を3.0倍に、幅方向の延伸温度を135℃に、幅方向の延伸倍率を5.0倍に、熱固定処理温度を210℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.77dl/gで、酸成分の80モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の20モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.1重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は252℃、ガラス転移温度は116℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.77dl/gで、酸成分の65モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の35モル%が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.4μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.1重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は247℃、ガラス転移温度は116℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
実施例1において、製膜方向の延伸温度を135℃に、製膜方向の延伸倍率を4.8倍に、幅方向の延伸温度を135℃に、幅方向の延伸倍率を6.7倍に、熱固定処理温度を190℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるポリエチレン−2,6-ナフタレートを得た。なお、該ポリエチレン−2,6-ナフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレン−2,6-ナフタレートの融点は270℃、ガラス転移温度は120℃であった。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例1において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
比較例1において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.5倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を3.4倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
参考例として、特許文献3の実施例1に記載されたヤング率、温度膨張係数そして湿度膨張係数の結果を、表1に示す。
Claims (9)
- 芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分との芳香族ポリエステルからなる二軸配向ポリエステルフィルムであって、
芳香族ジカルボン酸成分の5モル%以上50モル%未満が、下記式(I)
で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分であること、芳香族ポリエステルの主たる繰り返し単位が、アルキレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位およびアルキレンテレフタレート単位からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、グリコール成分の90モル%以上がエチレングリコール成分であること、そしてフィルム面方向における直交する2方向のヤング率がともに5.0GPa以上であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。 - フィルム面方向における少なくとも一方向が以下の式(1)の関係を具備する請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
αh<−1.2Y+17 (1)
(上記一般式(1)中のαhは湿度膨張係数(×10−6/%RH)、Yはヤング率(GPa)を示す。) - フィルムの少なくとも一方向のヤング率が6GPa以上である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- フィルムの少なくとも一方向における湿度膨張係数が1〜7×10−6/%RHの範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- フィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が10×10−6/℃以下である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 融点が200〜260℃の範囲にある請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分である請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項1記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 磁気記録媒体がリニア記録方式の高密度磁気記録テープである請求項8記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
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