JP4663834B2 - 揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制する方法とその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制する方法に関し、詳細には、トレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることを特徴とする揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制する方法と該方法により揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制した脂肪酸類含有組成物並びにトレハロース及び/又はマルチトールを有効成分とする揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤とその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂肪酸類は、純度の高いものはほとんど無臭であるが、紫外線照射したり、空気中に長期間放置したり、加熱処理を施したりすれば、脂肪酸類に特徴的で不快な変敗臭を生成することが知られている。これを矯臭する方法としては、例えば、魚介類や畜肉など脂肪酸類含有物の場合、古くから、唐辛子、胡椒、わさび、山椒、にんにく、しょうがなどの香辛料などを用いて調理する方法が採用されてきた。しかし、この方法は、変敗臭成分の生成自体を減少させる方法ではなく、単に強い刺激味や香りを付けてその不快臭をマスクしようとするものであって、しばしば、これら脂肪酸類含有物が本来持っている好ましい香りや味、色までも変えてしまう欠点を有しており、更に改善が求められている。また、別の脂肪酸類含有物である白米の場合、斯る脂肪酸類が変質し易く、精米直後から急激に鮮度低下を起こし、変敗臭の一種である米糠臭が発生しやすいことが知られている。この米麹臭の強弱が白米の新鮮さの基準あるいは品質保持の目安とまで言われており、この米糠臭を抑制する方法の確立が強く望まれている。
【0003】
近年、シクロデキストリン類の包接作用を利用した、変敗臭成分の揮散を抑制する矯臭方法も行われるようになってきた。しかし、この方法もせっかく包接した変敗臭成分が、包接作用を受け易い他の物質と容易に置換して、再び不快臭を放つ欠点のあることが知られており、その矯臭効果も充分ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これら従来技術の持つ種々の欠点に鑑み、一旦生成した後の変敗臭を矯臭するのではなく、変敗臭成分、とりわけ、揮発性アルデヒド類の生成自体及び/又は脂肪酸類の分解自体を抑制するという従来にない全く新しい技術思想に基づく変敗臭の発生抑制方法と、該方法を採用して揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制した組成物を提供するとともに、新規な揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤並びにその用途を確立することを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決するために、各種糖質の利用に着目し、鋭意研究を続けてきた。すなわち、揮発性アルデヒド類の始原物質である各種脂肪酸類と各種糖質とを共存させ、各種脂肪酸類からの揮発性アルデヒド類の生成抑制効果に与える各種糖質の影響を調べた。その結果、意外にも、トレハロース及び/又はマルチトールが他の糖質に比較して著効を示し、揮発性アルデヒド類の生成自体を著しく抑制することを見いだしたのみならず、その始原物質である脂肪酸類の分解自体をも著しく抑制することを見いだし、本発明を完成した。つまり、本発明は、変敗臭成分、主として、揮発性アルデヒド類の生成自体に着目し、その生成を根本的に抑制しようとする技術思想に基づくものである。このような、揮発性アルデヒド類の生成自体を抑制する技術思想は、従来着想されたことがなく、技術課題自体が新規である。しかも、本発明においては、トレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめて揮発性アルデヒド類の生成自体及び/又は脂肪酸類の分解自体を抑制するという構成を採用するものであって、先行技術にはそのような構成の開示はおろか、示唆すらもなく、全く新規である。換言すれば、本発明は目的、構成のいずれもが新規であり、それに伴う効果も新規且つ顕著である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の目的は、トレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることを特徴とする揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制する方法を提供することであり、第二の目的は、脂肪酸類含有物に、トレハロース及び/又はマルチトールの共存下で、保存及び/又は加工処理して揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制した脂肪酸類含有組成物を提供することであり、第三の目的は、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分とする揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤とその用途を提供することである。
【0007】
本発明で用いるトレハロース及び/又はマルチトールは、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制できるものであればよく、その由来、性状は問わない。トレハロースとしては、例えば、特開平7−170977号公報、特開平7−213283号公報等に開示される方法で製造されるトレハロースのシラップ、含水結晶又は無水結晶等が適宜採用できる。具体的には、高純度含水結晶トレハロース(登録商標「トレハオース」、株式会社林原商事販売)が有利に利用できる。マルチトールとしては、例えば、特公昭47−13699号公報、特公昭63−2439号公報等に開示される方法で製造されるマルチトールのシラップ又は無水結晶等が適宜採用できる。具体的には、無水結晶マルチトール(登録商標「マビット」、株式会社林原商事販売)が有利に利用できる。トレハロース及びマルチトールの混合物としては、市販のトレハロース及びマルチトールを任意の割合で混合しても良いし、例えば、特開平8−73482号公報で開示されているトレハロースとマルトースとの混合物を水素添加して製造したものを利用することも有利に実施できる。また、使用するトレハロース及び/又はマルチトールは必ずしも高純度の製品に限る必要はなく、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果に支障がない限り、必要に応じて、他の糖質、例えば、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどの還元性糖質、ソルビトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールなどの非還元性糖質、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、又はそれらの糖誘導体などのシクロデキストリン類、アラビアガム、プルラン、エルシナンなどの水溶性多糖類等の1種又は2種以上と併用することも随意である。
【0008】
本発明でいう揮発性アルデヒド類とは、室温条件下で揮発性を示すアルデヒド基を有する化合物を意味する。揮発性アルデヒド類としては、望ましくは、炭素数が10以下のアルデヒドであって、具体的には、メタナール(ホルムアルデヒド)、エタナール(アセトアルデヒド)、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、デカナールなどの飽和炭化水素系アルデヒドや、プロペナール、ブテナール、ペンテナール、ヘキセナール、ヘプテナール、オクテナール、ノネナール、ヘプタジエナール、デカジエナールなどの不飽和炭素水素系アルデヒドなどをいう。
【0009】
本発明でいう脂肪酸類とは、室温条件下で実質的に揮発性を示さない脂肪酸、脂肪酸塩又は脂肪酸エステルを意味する。脂肪酸としては、望ましくは、炭素数が14以上の高級脂肪酸であって、具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪酸や、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸などをいう。
【0010】
脂肪酸塩とは、前記脂肪酸と、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど許容しうる金属類との塩をいう。
【0011】
脂肪酸エステルとは、前記脂肪酸のカルボキシル基と、アルコール、グリセリン、糖などの水酸基とが結合したエステル化合物であって、その代表例としては、トリグリセリドなどの油脂、レシチンなどのリン脂質や、モノグリセリド、ポリグリセリド、シュガーエステルなどの乳化剤(界面活性剤)などがある。
【0012】
油脂としては、例えば、植物由来の大豆油、コーン油、小麦胚芽油、米糠油、なたね油、芥子油、ごま油、ピーナッツ油、サフラン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、カカオバターなど、動物由来の牛脂、乳脂、豚脂、鶏脂、卵黄油、魚油、鯨油、肝油、骨油など、更にはこれらを水素添加した硬化油などがある。また、ビタミンA、D、E、Kなど脂溶性ビタミン、ワックス、テルペノイド、ステロイド、カロチノイドなどの脂溶性物質と共存する油脂などがある。リン脂質としては、レシチン、ケファリン、リゾレシチン、リン脂酸などがある。
【0013】
本発明でいう脂肪酸類含有物としては、前記脂肪酸、その塩又はそのエステル誘導体を含有している物であればよく、望ましくは、脂肪酸類として約0.1w/w%(以下、本明細書では、特に断らない限り、w/w%を単に%で示す。)以上、更に望ましくは約0.5%以上含有しているものが望ましく、その形状は問わず、液状、ペースト状、固状のいずれであってもよい。
【0014】
脂肪酸類含有物の望ましい例としては、飲食物、化粧品、医薬品又はこれらの原料乃至はこれらの中間加工物や乳化剤などの添加物などが挙げられる。
【0015】
飲食物又はその原料乃至はその中間加工物としては、前記脂肪酸類を含有し、ヒト又は飼養動物のために、そのままで又はさらに加工して、エネルギー補給、健康維持、成長促進、病気の予防、治療促進などのために経口摂取又は経管投与されるものであればよく、例えば、生果、ジュース、ドライフルーツ、野菜エキス、野菜粉末、漬物など果物・野菜加工品、胡麻ペースト、ナッツペースト、コーンペーストなど種実ペースト、生餡、粉末こし餡など餡、サツマイモ粉、ヤマイモ粉などいも粉、生のままの胡麻、玄米、小麦、大麦、ライ麦、大豆、コーン、ピーナッツ、アーモンド、コーヒー豆、ココア豆など種実又はこれらの粉砕物、例えば、精白米(白米)、胚芽米、無洗米、精白大麦、精白ハト麦、精白キビなど精白穀類、米粉、小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、ハト麦粉、大豆粉、大豆胚芽粉、ソバ粉、コーンフラワーなど粉末穀類、焙煎した胡麻、玄米、小麦、大麦、ライ麦、大豆、コーン、ピーナッツ、アーモンド、コーヒー豆、ココア豆など種実又はこれらの粉砕物、例えば、すり胡麻、はったい粉、きな粉、荒挽きコーヒーなど種実加工物、などの農産品、イワシペースト、カキ肉エキス、ウニペースト、アジの開き、魚肉、魚粉などの水産品、畜肉、牛乳、乳クリーム、鶏肉、鶏卵などの畜産品、醤油、味噌、ソース、マヨネーズ、ドレッシングなどペースト状乃至液状調味料、粉末油脂、香辛料、ふりかけなど粉末調味料などの調味料、求肥、おかき、はじき豆、揚豆、かりんとう、揚せんべい、カステラなどの和菓子、チョコレート、チューインガム、パン、ケーキ、乳菓、クリーム菓子、スナック菓子などの洋菓子、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓、緑茶、ほうじ茶、紅茶、ウーロン茶、玄米茶、麦茶、ハト麦茶などの茶類、米飯、蒸米、餅、おにぎり、おかゆ、α化米、チャーハン、ピラフなどの米加工品、製菓、製パン、パスタ、麺、ピザ、ナン、パン粉、プレミックスなどの小麦加工品、豆乳、豆腐、厚揚、おから、おからハンバーグ、豆乳プリンなどの大豆加工品、麹、甘酒、清酒、みりん、ビール、蒸留酒、酢、味噌、醤油、糠漬、麹漬、粕漬、味噌漬、たまり漬などの発酵飲食物、ハム、ソーセージなどの畜肉加工品、かまぼこ、ちくわ、はんぺんなどの魚肉練製品、ウニ、イカなどを用いた塩辛、肉、魚の干物、小魚、エビ、イカ、貝、畜肉などを用いた珍味、佃煮、煮豆、サラダ、炒め物、揚げ物、煮物、卵焼、焼肉、焼き鳥、ハンバーグ、ぎょうざ、天ぷら、天かすなどの惣菜食品、練乳、粉乳、ヨーグルト、バター、チーズ、コーヒーフレッシュなどの乳加工品、ババロア、ムース、マシュマロ、プリン、シュークリーム、錦糸卵、だし巻卵、茶碗蒸し、マヨネーズなど卵加工品、畜肉、魚肉、鶏卵などを用いた瓶・缶詰、各種茶類から製造される茶飲料、甘酒、コーヒー飲料、乳飲料、乳酸菌飲料などの清涼飲料、清酒、ワイン、リキュールなどのアルコール飲料、即席うどん、即席ラーメン、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席スープ、レトルト食品、粉末食品、スナック食品などの即席食品、冷凍食品、離乳食、治療食、健康食品、ペプチド食品などがあり、更には、例えば、穀類ペレット、穀類粉末、植物油粕、発酵粕、米糠、小麦麸、大麦糠、脱脂糠、脱脂大豆、フィシュミール、フィシュソリュブル、肉粉、血粉、羽毛粉、脱脂粉乳、乾燥ホエー、さなぎ粕、アルファミールなどの飼料原料又はこれらを含有する配合飼料などがある。また、乳化剤として、例えば、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの添加物がある。
【0016】
化粧品としては、前記脂肪酸類を含有する、例えば、液状、ペースト状、固状の形態で、練り歯磨き、口紅、リップクリーム、口中香剤、うがい剤、入浴剤、制汗剤、石けん、シャンプー、リンス、ボディーソープ、ボディーローション、デオドラントスプレー、ヘアクリーム、色白剤、美肌剤、美毛剤、育毛剤などがある。
【0017】
医薬品としては、前記脂肪酸類を含有する、例えば、液状、ペースト状、固状の形態で、ドリンク剤、経口栄養剤、経管栄養剤、注射用脂肪乳剤、トローチ、肝油ドロップ、軟膏、錠剤、カプセル剤などがある。
【0018】
本発明でいう含有せしめるとは、接触共存させることをいい、例えば、脂肪酸類含有物にトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめる場合には、それによって、脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果が発揮できればよく、含有せしめる方法を問うものではない。望ましくは、脂肪酸類含有物に対して、トレハロース及び/又はマルチトールをできるだけ均一に接触させて共存せしめるのがよい。例えば、脂肪酸類含有物が、液状乃至ペースト状物のような多汁状態である場合には、これにトレハロース及び/又はマルチトールを粉末、結晶等の固状状態で、できるだけ均一に混合して含有せしめるか、又はシラップ状態でできるだけ均一に混合して含有せしめればよい。
【0019】
又、脂肪酸類含有物が固状である場合には、例えば、これを水で液状乃至ペースト状物のような多汁状態にした後、前述のように、処理して含有せしめるか、又はトレハロース及び/又はマルチトールをシラップ状態とし、これに固状の脂肪酸類を、分散、溶解乃至懸濁し、できるだけ均一に接触するようにして共存せしめればよい。又、脂肪酸類含有物が水分含有固状物のようなものの場合には、それをそのまま、又はそれを細断などの前処理を施した後、これにトレハロース及び/又はマルチトールの粉末又は結晶をふりかけ混合して、必要に応じて溶解又は融解させて、脂肪酸含有物に付着、被覆及び/又は浸透含有させるか又は脂肪酸類含有物をトレハロース及び/又はマルチトールを含むシラップ状物に浸漬するなどして、トレハロース及び/又はマルチトールをできるだけ均一に含有せしめればよい。また、脂肪酸類含有物にトレハロース及び/又はマルチトールを含む糖水溶液を噴霧するなどして、その表面をできるだけ均一に被覆することも有利に実施できる。必要に応じて、真空乾燥、通風乾燥、噴霧乾燥などの乾燥処理、無水糖質を利用した脱水処理などを施すことも、更に必要ならば、この乾燥処理、脱水処理などにより、含有させたトレハロース及び/又はマルチトールを晶析させることも有利に実施できる。
【0020】
脂肪酸類含有物が、例えば、トリグリセリドなど油脂、レシチンなどリン脂質、シュガーエステルなど乳化剤(界面活性剤)などの脂肪酸エステルの場合には、これに、例えば、撹拌、混合、加熱、加圧、乳化、粉末化、乾燥などの加工処理を施すに際し、例えば、粉末、結晶又はシラップ状態のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることにより、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することが有利に実施できる。
【0021】
また、脂肪酸類含有物が、例えば、イワシ、ニシン、サバ、ブリ、カレイ、ヒラメなど魚類、イクラ、タラコ、カズノコなど魚卵、イカ、タコなど軟体動物、エビ、シャコなど甲殻類、アサリ、シジミ、アワビ、ツブなど貝類などの水産品の場合には、これに、例えば、干す、漬ける、焼く、煮る、蒸す(蒸煮)、揚げる、煎る(焙煎)などの加工処理を施すに際し、例えば、粉末、結晶又はシラップ状態のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることにより、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することが有利に実施できる。
【0022】
また、脂肪酸類含有物が、例えば、大豆、菜種、芥子、胡麻、ピーナッツなど油糧用種実、米、小麦、大麦、ライ麦、ハト麦、キビ、ソバなど穀類、大豆、ピーナッツ、空豆、エンドウなど豆類、アーモンド、カシューナッツ、マカデミアナッツ、コーヒー豆、カカオ豆など嗜好品用種実などの種実の場合には、これに、例えば、精白、製粉、製油、蒸煮及び焙煎などの加工処理を施すに際し、例えば、粉末、結晶又はシラップ状態のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることにより、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することが有利に実施できる。具体例として、米の場合について述べれば、玄米にトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめ、常法通り、保存、貯蔵し、これを精米機で精米して、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制し、変敗臭の生成を抑制した高品質の白米を製造することも、また、常法に従って精米した直後の白米にトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめ、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制し、変敗臭の生成を抑制した高品質の白米にすることも有利に実施できる。このようにして得られた白米は、米糠臭の発生を抑制し、鮮度低下が抑制されていることから、無洗米やα化米に利用することも、また、風味良好な、飯米、蒸米、餅、おにぎり、おかゆ、チャーハン、ピラフなどに利用することも、更には、斯る蒸米及びこれを使用して得られる麹を主原料として、色調が良好で、風味の豊かな、甘酒、清酒、みりん、酢、味噌、醤油などの発酵飲食物に利用することも有利に実施できる。更に、清酒の例について述べると、先ず、上記のようにして得られる精白度を高めた白米を常法に従い蒸し上げて蒸米とし、この蒸米を使用し、後記実施例B−14の方法で麹を得る。続いて、これら蒸米及び麹を主原料とし、常法に従って清酒酵母を増殖させ、酒母を得る。この酒母に、前記蒸米及び麹を水とともに、常法に従って、初添、仲添、留添と順に加え、糖化・発酵せしめ、濾過すれば、風味豊かな高品質の清酒が得られる。
【0023】
脂肪酸類含有物が、例えば、レモン、ユズ、スダチ、ザボン、キンカン、バナナ、パイナップル、マンゴ、キィウィフルーツ、イチゴ、サンザシ、ブルーベリー、ブドウ、モモ、スモモ、リンゴ、ナシ、カキ等の果物類や、ニンジン、レンコン、タマネギ、ゴボウ、ダイコン、サトイモ、ヤマイモ、サツマイモ、ジャガイモ等の根菜、レタス、チコリ、ハクサイ、キャベツ、ケール、モロヘイヤ、アシタバ、ホウレンソウ、コマツナ、ノザワナ、シュンギク、チンゲンサイ、タラの芽、茶の若葉、シソの葉等の葉菜、オクラ、カリフラワー、ブロッコリー、ナス、トマト、キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、ピーマン、サヤエンドウ、サヤインゲン、エダマメ等の果菜、シイタケ、エノキ、シメジ等の茸を含む野菜類などからなる果物・野菜類の場合には、これに、例えば、干す、漬ける、焼く、煮る、蒸す(蒸煮)、揚げるなどの加工処理を施すに際し、該処理前、該処理中又は該処理後に、例えば、粉末、結晶又はシラップ状態のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることにより、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することが有利に実施できる。具体例として、バナナ、リンゴ、カボチャ、ニンジン、ジャガイモ、サヤインゲンなどを種食品として用いる揚げ物の場合について述べれば、これら種食品を必要により皮を剥き、適当な大きさに細断し、これにトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめ、必要により、ブランチング及び/又は衣をつけ、次いで、これを凍結するか又はしないで、食用油脂を使用して常圧もしくは減圧下で揚げて、高品質の各種フライ食品、例えば、スナック食品、フライ麺、惣菜、製菓・製パン材料、即席食品の具材などを製造することも有利に実施できる。
【0024】
脂肪酸類含有物を加工する際のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめる時期については問わず、該加工処理前、該加工処理中、該加工処理中のいずれか1時期もしくはこれらの時期から選ばれる2以上の時期であっても良く、本発明の揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制が達成できる時期であればよい。加工処理工程で脂肪酸類含有物の品温の上昇を伴う場合には、望ましくは、該加工処理前に含有させておくか、該加工処理中に含有させるか、あるいは、該加工処理直後でその品温が充分に低下していない間に含有させるのが好都合である。
【0025】
又、脂肪酸類含有物が、焙煎された直後の比較的高温の種実、例えば、煎り米、煎り麦、煎り豆、はじけたコーン、焙煎ココア豆、焙煎コーヒー豆や、フライされた直後の比較的高温の即席麺やスナック食品などの場合には、これにトレハロース及び/又はマルチトールを含有する水溶液を適量噴霧し、トレハロース及び/又はマルチトールを含有させるとともに該水溶液を直ちに蒸発させ蒸気を発生し、脂肪酸類含有物から空気を排除又は遮断し、併せて、気化熱を奪い、該高温の脂肪酸類含有物の品温を速やかに低下させる加工処理方法を採用することにより、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果を更に高めることも有利に実施できる。
【0026】
トレハロース及び/又はマルチトールを含有させる量は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果が発揮できる量であればよく、特に制限はないが、通常、脂肪酸類含有物に対して、無水物換算で、トレハロース及び/又はマルチトールを合計で約0.01%以上、望ましくは、約0.1%以上約98%未満、更に望ましくは、約1.0%以上約90%未満をできるだけ均一に含有せしめるのが好適である。通常、トレハロース及び/又はマルチトールの含有量が0.01%未満では揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制作用が不充分で、脂肪酸類が飲食物である場合には、30%以上では、得られる飲食物の甘味が強くなり過ぎる。しかし、甘味が付いてもかまわない場合、又は甘味の付くのがむしろ好ましい場合、例えば、脂肪酸類含有物を利用した珍味、スナック風食品、菓子風食品等の場合には、トレハロース及び/又はマルチトールを30%を越えて含有させることも、更には、この量をできるだけ高めてトレハロース含水結晶及び/又はマルチトール無水結晶を晶出させた吸湿性の低い安定な製品に仕上げることも有利に実施できる。
【0027】
また、本発明によれば、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分として含む揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤(以下、単に抑制剤と略称することがある。)を、脂肪酸類含有物に含有せしめて揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することも有利に実施できる。抑制剤中の有効成分としてのトレハロース及び/又はマルチトールの含量は、脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果が発揮できればよく、望ましくは、抑制剤に対して、無水物換算で、合計、約10%以上、更に望ましくは、約20%以上、更に望ましくは、約50%以上が好適である。本発明の抑制剤は、有効成分であるトレハロース及び/又はマルチトールだけから構成されてもよいし、必要に応じて、前述の還元性糖質、非還元性糖質、シクロデキストリン類、水溶性多糖類、香辛料、酸味料、旨味料、酒類、水溶性多糖類、無機塩、乳化剤、酸化防止剤、活性酸素消去作用を有する物質、紫外線吸収作用を有する物質及びキレート作用を有する物質から選ばれる他の物質から選ばれる1種又は2種以上を併用することも、また併用することにより揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果を増強することも、更にこの効果に加えて矯臭効果を発揮させることも随意である。更に必要ならば、公知の着香料、着色料、保存料、安定剤等を適量併用することも随意である。このようにして得られる抑制剤は、その形状を問わず、例えばシラップ、粉末、結晶、顆粒、錠剤等いずれの形状であってもよい。このようにして得られた抑制剤は、これを使用して脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果が発揮できればよく、その使用方法は問わない。例えば、前述のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめる脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制する方法に準じて使用すればよい。望ましくは、脂肪酸類含有物に抑制剤を含有せしめた後、例えば、常温又は冷蔵条件で保存、及び/又は、例えば、干す、漬ける、焼く、煮る、蒸す(蒸煮)、揚げる、煎る(焙煎)等の調理、更には、撹拌、混合、分離、加熱、加圧、乳化、粉末化、更には、精白、製粉、製油、蒸煮、焙煎等の加工処理を施して使用すればよく、脂肪酸類含有物に対する有効成分であるトレハロース及び/又はマルチトールの使用量も、前述のトレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめる方法と同様に使用すれば、脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果を有利に発揮し、脂肪酸類含有物の保存安定性を向上させることができる。また、本発明の抑制剤を、例えば、醤油、味噌、ソース、焼肉のたれ、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、マーガリン、バター、チーズ、サラダ油、天ぷら油、ゴマ油、ラー油、カキ油、ねりワサビ、ねりがらし、おろししょうが、食酢、みりん、新みりん、清酒、ワイン、アミノ酸系及び/又は核酸系調味料、食塩など各種調味料とともに利用して、脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果を発揮させ、風味豊かな惣菜や鍋物等を調製することも有利に実施できる。また、マヨネーズ、ドレッシングなどの脂肪酸類含有調味料を製造するに際し、本発明の抑制剤を含有せしめることにより、色調が良好で、風味の豊かな、保存安定性に優れた調味料を製造することも有利に実施できる。
【0028】
更に、本発明の抑制剤を、例えば、脂肪酸類を含有する化粧品や医薬品の原料や中間加工物とともに利用して、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解の抑制効果を発揮させ、高品質で安定な化粧品や医薬品を製造することも有利に実施できる。とりわけ、化粧品の場合には、それ自体が高品質を安定に保つのみならず、これを使用した皮膚、毛などに付着する汗、アカ、フケ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解を抑制することから、体臭の発生を予防し、皮膚の刺激やかゆみを予防し、更には、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症の治療・予防などに有利に利用できる。
【0029】
以下、実験で、本発明を詳細に説明する。すなわち、実験1乃至4で、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は変敗臭に及ぼす各種糖質共存の影響を説明し、実験5乃至8で、脂肪酸類の分解に及ぼす各種糖質共存の影響を説明し、実験9乃至15で、脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす各種糖質共存の影響を説明する。
【0030】
【実験1−1】
〈加熱によるα−リノレン酸からの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は変敗臭に及ぼす各種糖質共存の影響〉
α−リノレン酸100mg、セルロースパウダー0.5g、及び0.6Mリン酸緩衝液(pH6.0)0.25mlを20ml容バイアル瓶に採取し、これに糖質として、トレハロース(含水結晶)、マルチトール(無水結晶)、エリスリトール(無水結晶)、ソルビトール(無水結晶)、スクロース(無水結晶)、マルトース(含水結晶)、又はネオトレハロース(含水結晶)の5%水溶液1ml(糖質50mg)を加えて、それぞれ糖質のみが異なる7種の被験バイアル瓶を用意すると共に、糖質を加えない点でのみ異なる対照バイアル瓶を用意した。これらバイアル瓶をブチルゴム栓で密栓し、100℃で1時間加熱処理した。その後、室温に放冷し、次いでバイアル瓶を80℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温し、そのヘッドスペースガス(以下、HSGと略称する。)2m1をガスシリンジにて採取し、ガスクロマトグラフィー(以下、GLCと略称する。)により揮発性アルデヒド類の分析を行った。GLCの装置はGC−14B(株式会社島津製作所製)、分析カラムはキャピラリーカラムTC−FFAP(内径0.53mm×長さ30m、膜厚1.0μm;ジーエルサイエンス株式会社製)、キャリアーガスは流速10m1/minのヘリウムガス、インジェクション温度は200℃、カラムオーブン温度は40℃に5分間保持後、5℃/minの速度で230℃まで昇温、検出は水素炎イオン検出器で行った。また、試料の変敗臭についての官能検査を熟練したパネラー6人により直接臭いを嗅ぐ方法で行った。この検査は、糖質を共存させた場合の試料の変敗臭が、糖質無しの場合の試料と比較して、同程度、それより強い、又はそれより弱いと判断した人数で評価した。
【0031】
HSG分析結果及び官能評価の結果を表1にまとめた。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果から明らかなように、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系が、糖質無しの系に比べ、α−リノレン酸の加熱分解により生じるプロパナール、ブタナール、ヘキサナールのHSG中の濃度が著しく低く、官能的にも変敗臭が有意に弱く、優れていることが判った。他の糖質を共存させた系は、HSG中の揮発性アルデヒド類の濃度は糖質無しの系よりやや低い場合があるものの、官能評価においては、糖質無しの系との差異は全く認められなかった。
【0034】
【実験1−2】
〈標準揮発性アルデヒド類の揮散に及ぼす糖質共存の影響〉
実験1−1のトレハロース又はマルチトールを共存させた系において、HSG中の揮発性アルデヒド類の濃度が低いのは、α−リノレン酸からの揮発性アルデヒド類の生成反応を抑制したためか、あるいは生成した揮発性アルデヒド類の揮散を抑制したためかを確認するため、以下の実験を行った。揮発性アルデヒド類として、標準品のプロパナール、ブタナール及びヘキサナールを用いて、これらの揮散に及ぼすトレハロース、マルチトール又はスクロース共存の影響を調べた。プロパナール、ブタナール又はヘキサナール10mg、セルロースパウダー0.5g、0.6Mリン酸緩衝液(pH6.0)0.25ml、及び糖質5%水溶液1ml(糖質50mg)を20ml容バイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓後、これを80℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温し、そのHSG2mlをガスシリンジにて採取し、GLCにより揮発性アルデヒド類の分析を行った。また、糖質を加えない点でのみ異なる系を設け同様に処理して対照とした。
【0035】
それぞれの標準アルデヒドのHSG中への揮散濃度(μg/ml)を求め、及びその濃度について糖質無しの系を100とした場合の糖質を共存させた系の相対濃度を求め、結果を表2にまとめた。
【0036】
【表2】
【0037】
表2の結果から明らかなように、トレハロース又はマルチトールを共存させた系において、標準品のプロパナール、ブタナール及びヘキサナールのHSG中の相対濃度は、糖質無し又はスクロースを共存させた系と同程度であった。このことから、α−リノレン酸の加熱により生じるプロパナール、ブタナール及びヘキサナールのHSGへの揮散は、トレハロース又はマルチトールが共存していても抑えられず、それらの生成量をよく反映することが判明した。従って、表1の結果のトレハロース又はマルチトールの共存による変敗臭抑制作用は、これら糖質によるマスキング作用ではなく、α−リノレン酸を加熱した際のα−リノレン酸からの揮発性アルデヒド類の生成自体を抑制したことによると言える。とりわけ、トレハロースの共存は、揮発性アルデヒド類の生成自体をよく抑制し、優れていることが判明した。
【0038】
【実験2】
〈加熱によるリノール酸からの2,4−デカジエナールの生成及び/又は変敗臭に及ぼす各種糖質共存の影響並びに標準品の2,4−デカジエナールの揮散に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸として、リノール酸を用いた以外は、実験1−1と同様の方法で加熱処理し、HSG中の揮発性アルデヒド類の主成分である2,4−デカジエナールをGLCにより測定した。また、実験1−1と同様に変敗臭について官能検査した。更に実験1−2の方法に準じて、標準品の2,4−デカジエナールの揮散に及ぼす糖質共存の影響を調べた。
【0039】
HSG中の2,4−デカジエナール濃度(μg/ml)、及びその濃度について、糖質無しの系を100とした場合の糖質を共存させた系の相対濃度を求め、結果を表3にまとめた。
【0040】
【表3】
【0041】
表3の結果から明らかなように、標準2,4−デカジエナールの場合、トレハロース又はマルチトールを共存させた系では、2,4−デカジエナールのHSG中への揮散(相対濃度)が、それぞれ、42、28と低いことから、その揮散を一部抑制するマスキング作用が観察されるものの、それにもまして、リノール酸からのHSG中の2,4−デカジエナール(相対濃度)は、それぞれ、11、15と極めて低いことからトレハロース又はマルチトールが2,4−デカジエナールの生成自体を著しく抑制していることが判明した。2,4−デカジエナールは鶏油、鶏肉の特異臭とされており、トレハロースがその生成をよく抑制し、最も優れていた。
【0042】
【実験3−1】
〈植物性脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類生成ならびに該含有物のpH低下に及ぼす各種糖質共存の影響〉
植物性脂肪酸類含有物として1998年福井県産の白米を用いた。精米直後の白米(品温約40℃)200gを、厚さ0.115mmの500ml容ポリエチレン袋に入れ、直ちに、糖質として、トレハロース(含水結晶)、マルチトール(無水結晶)、ソルビトール(無水結晶)、グルコース(無水結晶)、スクロース(無水結晶)、マルトース(含水結晶)又はラクトース(含水結晶)のいずれかをそれぞれ4g加え、できるだけ均一になるように混合し、密封し、25℃の恒温器内に放置して自然冷却し、その温度に保存した。保存2週間後に、それぞれのポリエチレン袋から白米5gを別々の20m1容バイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓後、これを60℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温し、そのHSG1mlをガスシリンジにて採取し、実験1−1と同様に、GLCによりHSG中の揮発性アルデヒド類を分析し、保存2週間後の白米1g当たりから生じた揮発性アルデヒド類の量を求めた。また、保存2週間後の白米10gをとり、これに脱イオン水10ml(pH6.64)を加え、25℃で30分間放置した後、それぞれの上澄液のpHをpHメーターで測定した。なお、糖質を加えない点でのみ異なる系を設け、同様に処理して対照とした。
【0043】
結果を表4にまとめた。
【0044】
【表4】
【0045】
表4の結果から明らかなように、保存2週間後において、トレハロース又はマルチトールを共存させた系は、糖質無しの系に比べ、HSG中の揮発性アルデヒド類の生成量がいずれも著しく低かった。トレハロース又はマルチトールの共存は、白米保存時において揮発性アルデヒド類の生成を著しく抑制することが判明した。とりわけ、トレハロースを共存させた系は、保存2週間後において、米糠臭又は古米臭の主成分の1種であるヘキサナールの生成が全くみられず最も優れていた。これに対して、ソルビトール、グルコース、スクロース又はマルトースによるその抑制作用の程度は、トレハロース又はマルチトールに比べるとかなり低いものであった。ラクトースを共存させた系は、トレハロース又はマルチトール以外の糖質の系に比べ、HSG中の総揮発性アルデヒド量が低いものの、ペンタナールについては糖質無しの系よりもむしろ高い値を示した。一方、pHの測定結果を見てみると、トレハロース又はマルチトールを共存させた系では、糖質無しの系に比べ、pHは比較的高かったのに対し、それ以外の糖質を共存させた系ではpHは比較的低く、糖質無しの系と同程度のものも見られた。因みに、精米直後の糖質無添加の白米を同様に処理して上澄のpHを調べたところ、pH6.93であった。このことから、白米は保存中にpHが低下し、トレハロース又はマルチトールの共存によってこれが抑制されることが判明した。したがって、以上に示した実験3−1の結果は、白米におけるトレハロース及び/又はマルチトールの共存が白米の鮮度低下を抑制し、その新鮮さを良く維持することを示している。
【0046】
【実験3−2】
〈植物性脂肪酸類含有物からの変敗臭成分の生成に及ぼすトレハロース共存の影響〉
植物性脂肪酸類含有物として玄米を用いた。1998年岡山県産の玄米500gを、厚さ0.115mmの500ml容ポリエチレン袋に入れ、次いで、微粉末にしたトレハロース(含水結晶)10gを添加し、トレハロースが玄米表面に均一に付着するように混合した。この混合物20gずつを50ml容バイアル瓶にそれぞれ採取し、ブチルゴム栓で密栓後、50℃の恒温室に保存した。保存期間0日(保存開始時)、7日及び14日の時点で、該バイアルのHSG1mlをガスシリンジにて採取し、実験1−1と同様にGLCによりHSG中の変敗臭成分(主な揮発性成分)の分析を行った。また、トレハロースを加えない点でのみ異なる系を設け、同様に処理して対照とした。保存期間0日、7日及び14日の各時点での、玄米1gから生じた主な揮発性成分の量を求め、結果を表5にまとめた。
【0047】
【表5】
【0048】
表5の結果から明らかなように、玄米の保存中にトレハロースを共存させた系は、共存させなかった系と比較して揮発性アルデヒド類を含む変敗臭成分の生成量が低く、トレハロースの共存により変敗臭成分の生成自体がよく抑制されることが判明した。揮発性成分のうちエタノールについては、保存期間0日の時点で、トレハロースの共存の有無により、それぞれ、52.2μg及び94.1μgであることから、その揮散を一部抑制するマスキング作用が観察されるものの、それにも増して、トレハロースの共存により、玄米の保存期間が延びるに従い、その生成自体がよく抑制されることが判明した。
【0049】
【実験4】
〈動物性脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成に及ぼす糖質共存の影響〉
動物性脂肪酸類含有物として鯖肉を用いた。鯖肉をミンチ機でミンチにし、その10gを50ml容バイアル瓶に採取し、これに種々の濃度のトレハロース水溶液5ml(トレハロース(含水結晶)を0.5g、1g又は2g含有。このトレハロース量は鯖肉重量に対してそれぞれ5%、10%又は20%に相当する。
)を添加して、ブチルゴム栓で密栓後、沸騰水浴中で15分間加熱した。バイアル瓶を室温に放冷の後、80℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温し、そのHSG1mlをガスシリンジにて採取し、揮発性アルデヒド類、トリメチルアミン及びエチルメルカプタンを分析した。メタナール以外の揮発性アルデヒド類及びトリメチルアミンはGLCにより分析した。メタナール及びエチルメルカプタンの分析には、それぞれの成分分析用のガス検知管(商品名ガステックNo.91L及びNo.72L:ジーエルサイエンス株式会社販売)を用いて、同様に処理したバイアル瓶のHSG5mlをガスシリンジにて採取し、ガス検知管の全量を通気して、メタナール及びエチルメルカプタンの濃度を測定した。対照として糖質無しの系、及び比較糖質としてソルビトール(無水結晶)を鯖肉重量に対して10%又は20%になるように添加した系も同様に試験した。
【0050】
鯖肉1g当たりから生じる揮発性アルデヒド類の量を求め、結果を表6に、同様に、トリメチルアミン及びエチルメルカプタンの量を求め、結果を表7にまとめた。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
表6の結果から明らかなように、トレハロースを共存させた系は、糖質無しの系に比べ、HSG中のいずれの揮発性アルデヒド類も生成量が著しく少なく、ソーセージや魚すり身などの水産加工品によく使われるソルビトール共存の系に比べても、いずれの揮発性アルデヒド類の生成量も著しく低いことが判明した。トレハロースの共存は、魚肉の加熱において、揮発性アルデヒド類の生成を著しく抑制し、この効果はトレハロースの添加量に応じて高くなることが判明した。また、表7の結果から明らかなように、トレハロースの共存は、水産品の特異臭であるトリメチルアミンやエチルメルカプタンの生成をも著しく抑制し、この効果もトレハロースの添加量に応じて高くなることが判明した。
【0054】
【実験5】
〈光照射によるリノール酸の分解に及ぼす糖質共存の影響〉
リノール酸100mg、セルロースパウダー0.5g、0.6Mリン酸緩衝液(pH6.0)0.25ml、及び糖質として、トレハロース(含水結晶)、マルチトール(無水結晶)又はスクロース(無水結晶)の5%水溶液1ml(糖質50mg)をそれぞれ20m1容バイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓し、25℃の恒温器内で蛍光灯を用いて、照度3200ルクスで照射した。経時的にバイアル瓶毎にサンプリングし、これに含まれるリノール酸を下記の方法でメチルエステル化後、GLCにより定量した。すなわち、それぞれのバイアル瓶にクロロホルム・メタノール混液(容積比2:1)20mlを加えてリノール酸を抽出し、得られた抽出液1mlを10ml容ナスフラスコに採取し、減圧下、濃縮、乾固した。これに内部標準物質として、濃度30mg/mlの1−エイコサノール・メタノール溶液1mlを加えて混合、溶解し、再度乾固し、これに三フッ化ホウ素メタノール溶液1mlを加え、密栓して沸騰水浴中で5分間反応させた。冷却後、これに脱イオン水1mlを加え、未反応の三フッ化ホウ素を分解した後、n−ヘキサン1mlを加えて、リノール酸メチルエステルを抽出した。このヘキサン層2μlをGLC分析に供した。光照射前のリノール酸量と光照射後のリノール酸量とから光照射によるリノール酸の分解率(%)を求めた。すなわち、分解率(%)は、次式により求めた。また、糖質を加えない点でのみ異なる系を設け、同様に処理して対照とした。
【0055】
【数1】
【0056】
GLCの装置はGC−14B(株式会社島津製作所製)、分析カラムはキャピラリーカラムTC−FFAP(内径0.53mm×長さ30m、膜厚1.0μm;ジーエルサイエンス株式会社製)、キャリアーガスは流速10m1/minのヘリウムガス、インジェクション温度は230℃、カラムオーブン温度は120℃に2分間保持後、5℃/minの速度で230℃まで昇温、検出は水素炎イオン検出器で行った。
【0057】
結果を表8にまとめた。
【0058】
【表8】
【0059】
表8の結果から明らかなように、光照射によるリノール酸の分解に及ぼす影響は、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系が、糖質無しの系に比べ、リノール酸の分解量が少なく、その分解を著しく抑制し、優れていることが判明した。スクロースにはその効果は認められなかった。
【0060】
【実験6】
〈加熱によるリノール酸の分解に及ぼす糖質共存の影響〉
リノール酸100mg、セルロースパウダー0.5g、0.6Mリン酸緩衝液(pH6.0)0.25ml、及び糖質として、トレハロース(含水結晶)、マルチトール(無水結晶)又はスクロース(無水結晶)の0乃至5w/v%水溶液1ml(糖質を0、12.5、25.0又は50mg含有)をそれぞれ20m1容バイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓し、100℃で1時間加熱した後、室温まで放冷した。実験5と同様に、加熱処理前後のリノール酸を、GLCにより定量した。加熱処理前のリノール酸量と加熱処理後のリノール酸量とから、実験5の方法に準じて、加熱によるリノール酸の分解率(%)を求めた。
【0061】
結果は表9にまとめた。
【0062】
【表9】
【0063】
表9の結果から明らかなように、加熱によるリノール酸の分解に及ぼす影響は、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系が、糖質無しの系と比較して、リノール酸の分解量が少なく、その分解を著しく抑制し、優れていることが判明した。抑制の程度は、糖質添加量に応じて強くなった。スクロースを共存させた系では、その抑制作用がほとんど見られなかった。
【0064】
【実験7】
〈加熱による高度不飽和脂肪酸の分解に及ぼす糖質共存の影響〉
高度不飽和脂肪酸としてエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸100mgを含むメタノール溶液0.5ml、及び糖質としてトレハロース(含水結晶)又はスクロース(無水結晶)の5%水溶液1ml(糖質50mg)を用いた以外は実験6と同様の方法で加熱処理した。加熱処理前後の高度不飽和脂肪酸を実験5の方法に準じてGLCにより定量し、加熱処理前の高度不飽和脂肪酸量と加熱処理後の高度不飽和脂肪酸量とから、加熱による高度不飽和脂肪酸の分解率(%)を求めた。
【0065】
結果は表10にまとめた。
【0066】
【表10】
【0067】
表10の結果から明らかなように、加熱による高度不飽和脂肪酸の分解に与える影響は、トレハロースを共存させた系が、糖質無しの系に比べ、いずれの高度不飽和脂肪酸も分解量が少なく、その分解を抑制し、優れていることが判明した。これに対して、スクロースを共存させた系では、その抑制作用は認められなかった。
【0068】
【実験8】
〈加熱による各種脂肪酸類の分解に及ぼす各種糖質共存の影響〉
脂肪酸としてα−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸又はステアリン酸の100mg、及び糖質としてトレハロース(含水結晶)、マルチトール(無水結晶)、エリスリトール(無水結晶)、ソルビトール(無水結晶)、スクロース(無水結晶)、マルトース(含水結晶)又はネオトレハロース(含水結晶)の5%水溶液1ml(糖質50mg)を用いた以外は実験6と同様の方法で加熱処理し、加熱処理前後の脂肪酸を実験5の方法に準じてGLCにより定量した。加熱処理前の脂肪酸量と加熱処理後の脂肪酸量とから、実験5の方法に準じて、加熱による脂肪酸の分解率(%)を求めた。
【0069】
結果は表11にまとめた。
【0070】
【表11】
【0071】
表11の結果から明らかなように、加熱による各種脂肪酸類の分解に与える影響は、トレハロース又はマルチトールを共存させた系、とりわけ、トレハロースを共存させた系が、糖質無しの系に比べ、いずれの脂肪酸も分解量が少なく、その分解を著しく抑制し、優れていることが判明した。これに対して、エリスリトール、スクロース、マルトース又はネオトレハロースを共存させた系では、その抑制作用は認められなかった。ソルビトールを共存させた系も、α−リノレン酸、オレイン酸及びステアリン酸の加熱による分解を抑制したが、その結果はトレハロース又はマルチトールに比べるとはるかに弱いものであった。
【0072】
【実験9】
〈脂肪酸類含有物の発熱に及ぼす各種糖質共存の影響〉
揚げたての天かすなど脂肪酸類含有物は、空気中に放置されると、それに含まれる油脂の分解に伴う発熱現象を示すとともに揮発性アルデヒド類を発生し、場合によっては自然発火の危険をはらんでいることが知られている。そこで、天かすの放置時の発熱に及ぼす各種糖質共存の影響を以下のようにして調べた。すなわち、まず、小麦粉425重量部、コーンスターチ75重量部、糖質25重量部、水500重量部及びベーキングパウダー5重量部から成る組成のバッターを調製した。糖質としては、トレハロース、グルコース又はスクロースを使用した。それぞれのバッターを180℃のサラダ油で揚げて天かすを製造した。対照として、糖質無添加のバッターを同様に揚げて天かすを製造した。このようにして製造し、一夜冷蔵した天かすを、室温にまで戻した後、その180gずつを、それぞれアルミニウム缶(上面が解放され、下面が直径0.4mmの多孔板であって、内径5.6cm、高さ16.7cmの構造を有するアルミニウム製の円筒状の空缶)に詰め、次いで、それぞれの缶の上部から温度計(熱伝対)を缶中央部に挿入し、更に、それぞれの缶側面をグラスウール製断熱材で覆った後、150℃の恒温室に入れ、缶中央部の天かすの温度を経時的に測定した。
【0073】
結果は表12にまとめた。
【0074】
【表12】
【0075】
表12の結果から明らかなように、天かすに含まれる油脂の分解に伴う発熱の程度は、それに含まれる糖質によって異なり、トレハロースを使用した天かすは、グルコース又はスクロースを使用した天かす又は糖質を使用しない対照の天かすと比較して、品温の上昇が抑制され、油脂の分解に伴う発熱の少ないことが判明した。換言すれば、トレハロースを使用した天かすは、油脂の分解に伴う発熱が少なく、自然発火の懸念が少ないので、防火対策上、より安全性の高い脂肪酸類含有物といえる。
【0076】
【実験10】
〈脂肪酸類含有物の高温保存での変化に及ぼす各種糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物として、各種糖質を含有する天かすを用いて、脂肪酸類含有物の高温保存での変化に及ぼす各種糖質共存の影響を調べた。すなわち、まず、実験9の方法により、含有する糖質の異なる3種類の天かすと糖質を含有しない天かすを製造し、以上4種類の天かすをそれぞれ秤量缶に6gずつとり、これらを180℃の恒温室に0、1又は3時間保存し、各保存時間におけるそれぞれの天かすの着色の程度を肉眼観察するとともに、その重量を測定し、始発時の重量に対する重量変化(%)を求めた。結果を表13に示した。
【0077】
【表13】
【0078】
表13の結果から明らかなように、天かすを180℃の恒温室に保存した際の着色と重量の変化は、それに含まれる糖質によって異なり、トレハロースを使用した天かすは、グルコース又はスクロースを使用したもの又は糖質を使用しないものと比較して、褐変が抑制され、重量減少が抑制されることが判明した。この結果は、トレハロースが、天かすに多量含有される油脂の分解を抑制し、また、揮発性アルデヒド類の生成を抑制することと密接に関係しているものと考えられる。
【0079】
【実験11】
〈脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物としてマヨネーズを用いて、脂肪酸類含有物の光照射保存時の変化に及ぼす糖質共存の影響を調べた。すなわち、市販のマヨネーズ20重量部に糖質を1重量部加えかき混ぜ、糖質をマヨネーズに溶解させた。糖質としてはトレハロース又はスクロースを使用した。このようにして処理したマヨネーズの20gを、それぞれ透明なポリエチレン袋(120mm×85mm、膜厚0.04mm)中に密封し、25℃の恒温器内で蛍光灯を用いて照度9300ルクスの光を照射した。経時的にポリエチレン袋ごとにサンプリングした試料の揮発性アルデヒド類の量、過酸化物価及びカルボニル価を測定した。揮発性アルデヒド類の量は、試料の3gを20ml容バイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓し、80℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温した後に採取した2mlのHSGを、以下の条件でGLCに供して測定した。すなわち、GLCの装置はGC−14B(株式会社島津製作所製)、分析カラムはキャピラリーカラムSperuco−WAX(内径0.25mm×長さ60m、膜厚0.25μm;スペルコ株式会社製)、キャリアーガスは流速1.0ml/minのヘリウムガス、インジェクション温度は250℃、カラムオーブン温度は80℃に5分間保持後、5℃/minの速度で240℃まで昇温、検出は水素炎イオン検出器で行った。過酸化物価とカルボニル価は、日本薬学会編、『衛生試験法・注解1990』、金原出版発行(1990年)に記載の方法に準じて抽出処理した試料を、日本油化学協会編、『日本油化学協会制定 基準油脂分析試験法』(1983年)、2.4.12−71項に記載の過酸化物価の測定法及び2.4.22−73項に記載のカルボニル価の測定法にしたがって測定した。なお、糖質を加えない点のみ異なる系を設け、同様に処置して対照とした。揮発性アルデヒド類の量の測定結果を表14に、過酸化物価の測定結果を表15に、カルボニル価の測定結果を表16に、それぞれまとめた。
【0080】
【表14】
【0081】
【表15】
【0082】
【表16】
【0083】
表14、15及び16の結果から明らかなように、トレハロースを共存させた系は、スクロースを共存させた系や糖質無添加の系と比較して、揮発性アルデヒド類の量、過酸化物価、カルボニル価いずれも低い値を示し、マヨネーズに含まれる油脂の変敗の程度がトレハロースの共存により抑制された。この結果、マヨネーズ等の脂肪酸類含有物の光照射保存での変敗が、トレハロースの共存によりよく抑制されることが判明した。
【0084】
【実験12】
〈脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物として、各種糖質を含有する天かすを用いて、遮光下、温度25℃での保存に及ぼす糖質共存の影響を調べた。すなわち、実験9の方法に準じて、トレハロース、マルチトール、グルコース、マルトース及びスクロースから選ばれる糖質を含有する天かすと、糖質を含有しない天かすとを製造し、これらをそれぞれ透明なポリエチレン製袋に密封し、温度25℃の恒温室中に遮光下で30日間保存した。揮発性アルデヒド類の量の測定は、保存開始時及び保存開始30日後に、それぞれの天かす試料を粉砕して、その5gを20ml容のバイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓し、80℃に予熱したアルミブロック中で5分間加温した後、そのバイアル瓶から採取した2mlのHSGを用い、以下、実験11と同様の条件でGLCに供して行った。結果を表17にまとめた。
【0085】
【表17】
【0086】
表17の結果から明らかなように、天かすからの揮発性アルデヒド類の生成量は、その天かす製造時及び製造後の保存時に共存する糖質の種類により変り、トレハロース共存の場合、揮発性アルデヒド類の生成量が最も少なく、トレハロースが揮発性アルデヒド類の生成をよく抑制し、次いでマルチトールがこれに続いた。グルコースの共存は、対照の糖質無添加の場合よりも、むしろ、揮発性アルデヒド類の生成量が多く、その生成を促進していることが判明した。
【0087】
【実験13】
〈脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物として、トレハロース又はスクロースを含有する焙煎スライスアーモンドを温度25℃で14日間保存し、脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響を調べた。すなわち、市販のスライスアーモンド(厚さ約1mm)を温度70℃の濃度約70%のトレハロース水溶液に10分間浸漬し、水切りし、電気オーブンを用いて、温度160℃又は180℃で焙煎した。また、糖質として、トレハロースに代えて、同温度、同濃度のスクロース水溶液を用いて、スライスアーモンドを同様に焙煎した。これらを4gずつポリエチレン製袋に密封し、温度25℃の恒温室に遮光下で14日間保存した。これらの保存した焙煎スライスアーモンド試料を用いて、実験12と同様に処理して、揮発性アルデヒド類の種類と量を測定した。結果を表18にまとめた。
【0088】
【表18】
【0089】
表18の結果から明らかなように、焙煎スライスアーモンドからの揮発性アルデヒド類の生成量は、焙煎時及び焙煎後の保存時に共存する糖質の種類により変り、トレハロース共存の場合がスクロース共存の場合よりも少なく、トレハロースが揮発性アルデヒド類の生成をよく抑制することが判明した。
【0090】
【実験14】
〈脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物として、トレハロース又はマルトースを含有するフライニンジンを温度40℃で14日間保存し、脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響を調べた。すなわち、ニンジンの皮を剥ぎ、スライサーにかけて、厚さ約5mmのニンジン細断物とし、これを、糖質濃度18%のトレハロース又はマルトースを含む熱水(95℃)で3分間ブランチングした。また、糖質無添加で同様にブランチング処理したものを対照とした。更に、これらを、常法に従って、食用油を使用して減圧フライし、トレハロース又はマルトースを含有するフライニンジンと、対照として、糖質を共存させないフライニンジンとを製造した。これらフライニンジンをそれぞれ重量5gずつ20ml容のバイアル瓶に採取し、ブチルゴム栓で密栓し、温度40℃の恒温室で遮光下で14日間保存した。揮発性アルデヒド類の量の測定は、保存開始時及び保存14日間後に、実験12と同様に処理して行った。結果を表19にまとめた。
【0091】
【表19】
【0092】
表19の結果から明らかなように、フライニンジンからの揮発性アルデヒド類の生成量はフライ時及びフライ後の保存時に共存する糖質の有無及び種類により変り、トレハロース共存の場合が、糖質の共存しない場合及びマルトース共存の場合のいずれも場合よりも少なく、トレハロースが揮発性アルデヒド類の生成をよく抑制することが判明した。
【0093】
【実験15】
〈脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響〉
脂肪酸類含有物として、トレハロース及び/又はスクロースを含有するドーナツを温度30℃で、7日間及び14日間保持し、脂肪酸類含有物の変敗に及ぼす糖質共存の影響を調べた。すなわち、表20に示す配合でトレハロース及び/又はスクロースを含むドーナツ生地を調製し、常法に従ってフライしてドーナツを製造し、この製造直後のドーナツ1個(約6g)当り、濃度50%のトレハロース又はスクロース水溶液を約1g噴霧したものをそれぞれ4個ずつアルミラミネート製袋(17×10cm)に入れ、更に、袋内の空気量が約200mlになるよう空気を注入して密封し、温度30℃の恒温室に遮光下で、7日間及び14日間保存した。
【0094】
【表20】
【0095】
揮発性アルデヒド類の量の測定は、保存開始時、保存開始7日後及び14日後に、試料の入った袋を、予め温度80℃に加熱保持しておいた電気オーブンの中に入れ、温度80℃で5分間保持した後、それら袋内のHSGを2mlずつサンプリングし、実験11と同様にGLCに供して行った。結果を表21にまとめた。
【0096】
【表21】
【0097】
表21の結果から明らかなように、ドーナツからの揮発性アルデヒド類の生成量は共存する糖質の種類によって変り、トレハロース共存の場合がスクロース(上白糖)共存の場合よりも少なく、トレハロースが揮発性アルデヒド類の生成をよく抑制することが判明した。
【0098】
詳細には、トレハロースによる揮発性アルデヒド類の生成抑制は、ドーナツ生地にトレハロースを配合しても、また、ドーナツ生地にトレハロースを配合することなく製造直後のドーナツ表面にトレハロース水溶液を噴霧しても、共に効果を発揮する。とりわけ、製造後のドーナツ表面にトレハロース水溶液を噴霧する場合、その抑制効果の高いことが判明した。
【0099】
以下に、実施例Aで本発明の揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤の例を、実施例Bで本発明の脂肪酸含有組成物の例をあげ、本発明をさらに具体的に説明する。
【0100】
【実施例A−1】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
マルトース高含有シラップ(登録商標「マルスター」、株式会社林原商事販売)に水を加えて濃度約40%とし、これに特開平7−170977号公報で開示したマルトース・トレハロース変換酵素をマルトースグラム当たり2単位加え、35℃、pH7.0で16時間反応させた後、常法に従って、加熱失活し脱色精製し濃縮して、シラップ当たりトレハロース約20%とともにグルコース、マルトース等還元性糖質を含有する水分約30%、DE約42のシラップ状製品を得た。本品は、室温で安定、取扱い容易であり、シラップ状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料に有利に利用できる。
【0101】
【実施例A−2】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
とうもろこし澱粉を濃度約30%の澱粉乳とし、これにα−アミラーゼを作用させて、DE約15の液化溶液を得、次いで、特開平7−213283号公報で開示した非還元性糖質生成酵素を澱粉グラム当たり5単位及びトレハロース遊離酵素を澱粉グラム当たり10単位及びイソアミラーゼを澱粉グラム当たり50単位加え、pH6.0、温度40℃で24時間反応させ、次いで、β−アミラーゼを澱粉グラム当たり10単位加えて10時間反応させた。本反応液を加熱して酵素を失活させた後、常法に従って、脱色、脱塩して精製し、濃縮して、シラップ当たりトレハロース約22%とともにグルコース、マルトース、マルトトリオース等還元性糖質を含有する水分約30%、DE約38のシラップ状製品を得た。
本品は、室温で安定、取扱い容易であり、シラップ状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料に有利に利用できる。
【0102】
【実施例A−3】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
実施例A−2の方法で得たシラップ状製品をオートクレーブに入れ、ラネーニッケル10%を添加し、撹拌しながら温度を90乃至120℃に上げ、水素圧を20乃至120kg/cm2に上げて水素添加を完了させた後、ラネーニッケルを除去し、次いで、常法に従って、脱色、脱塩して精製し、濃縮して、シラップ当たりトレハロース約21%とともにソルビトール、マルチトール、マルトトリイトール等非還元性糖質を含有する水分約30%、DE1.0未満のシラップ状製品を得た。本品は、実質的に還元性を示さず、きわめて安定、取扱い容易であり、シラップ状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料に有利に利用できる。
【0103】
【実施例A−4】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
水100重量部に、含水結晶トレハロース(登録商標「トレハオース」、株式会社林原商事販売)20重量部、ソルビトール10重量部、塩化カルシウム0.1重量部及びクエン酸0.2重量部を溶解混合し、容器に充填、加熱殺菌し、更に冷却して、シラップ状製品を得た。本品は、シラップ状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料、とりわけ、各種水産品・畜産品可食部の保存及び/又は加工処理材料に有利に利用できる。
【0104】
【実施例A−5】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
無水結晶トレハロース(株式会社林原商事販売)50重量部及び食塩50重量部を均一に混合して粉末製品を得た。本品は、粉末状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料に、とりわけ、マヨネーズ、ドレッシングなどの油性調味料や焙煎種実などの調味材料、更には、各種水産品・畜産品可食部の低塩度塩漬用材料などとして有利に利用できる。
【0105】
【実施例A−6】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
含水結晶トレハロース20重量部、β−シクロデキストリン含有粉末(登録商標「デキシパール」、株式会社林原商事販売)2重量部、及びプルラン1重量部を均一に混合した後、常法に従って、造粒機で造粒して顆粒製品を得た。本品は、顆粒状抑制剤として、脂肪酸類含有物の保存及び/又は加工処理材料に有利に利用できる。
【0106】
【実施例A−7】
〈揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤〉
含水結晶トレハロース25重量部、無水結晶マルチトール(登録商標「マビット」、株式会社林原商事販売)25重量部、プルラン1重量部、酒石酸0.1重量部及びリンゴ酸0.1重量部を均一に混合し、常法に従って、打錠機で打錠して、直径8mm、厚さ4.5mmの錠剤を得た。本品は、錠剤状抑制剤として、脂肪酸含有物の保存及び/又は加工処理材料、とりわけ、各種水産品・畜産品可食部を調理して、惣菜、鍋物等を調製する際に有利に利用できる。
【0107】
【実施例B−1】
〈魚卵加工品〉
実施例A−4の方法で得たシラップ状抑制剤を容器にとり、水で5倍希釈液とし、これに新鮮カズノコをざるに入れて浸漬し、1時間経過後ざるを上げて液切りして製品を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、冷蔵保存で変化が少なく、冷凍保存して解凍時のドリップが少なく、いずれの場合も、その鮮度をよく保持した。また、本品を、常法に従って、調理加工しても、揮発性アルデヒド類のみならずトリメチルアミンの臭気も低く、風味良好で、食感も良かった。
【0108】
【実施例B−2】
〈干物〉
生フグのフィレー100重量部に実施例A−5の方法で得た食塩含有粉末状抑制剤3重量部を均一にまぶして薄塩をし、次いでロール掛けして厚さ約8mmに延ばし、更に実施例A−4の方法で得たシラップ状抑制剤200重量部に30分間浸漬し、液切りし、一夜乾燥して製品を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その鮮度をよく保った干物であった。また、本品を、常法に従って、あぶっても揮発性アルデヒド類のみならずトリメチルアミンやエチルメルカプタンなどの臭気も低く、風味良好で食感もよかった。
【0109】
【実施例B−3】
〈煮干し〉
大釜に水100重量部を沸かし、これに実施例A−6の方法で得た顆粒状抑制剤2重量部を溶解し沸騰させ、次いで、これに生カタクチイワシ10重量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って乾燥させて製品を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、だしもよく取れ、その色調が良好な上、風味も豊かである。
【0110】
【実施例B−4】
〈煮干し〉
実施例B−3の方法で茹で上げたカタクチイワシを、更に、水100重量部に含水結晶トレハロース(登録商標「トレハオース」、株式会社林原商事販売)60重量部を溶解し沸騰させた大釜に5分間浸漬し、次いで、ざるから取り出し、常法に従って乾燥させ、トレハロースの含水結晶を晶出させた製品を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、だしもよく取れ、その色調が良好な上、風味も豊かである。また、本品は、吸湿性が低く安定で甘味を有し、珍味、スナック食品、菓子風食品、健康食品等としても有利に利用できる。
【0111】
【実施例B−5】
〈アサリのむき身〉
大釜に水100重量部を沸かし、これに、実施例A−3の方法で得たシラップ状抑制剤3重量部を混合して沸騰させ、次いで、これに生アサリ10重量部をざるに入れて浸漬して茹で上げ、ざるから取り出し、常法に従って、アサリの水煮むき身を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、更に佃煮にすることも、シーフードカレー、五目御飯などの調理材料に利用することも有利に実施できる。
【0112】
【実施例B−6】
〈茹でダコ〉
生タコ10重量部を実施例A−5の方法で得た食塩含有粉末状抑制剤を用いて、常法に従って塩もみし、これを、実施例A−7の方法で得た錠剤状抑制剤3重量部を水100重量部に溶解し沸かした大釜に入れ茹で上げ、茹でダコを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司ネタに使うことも、酢の物、おでん等の惣菜に用いることも有利に実施できる。
【0113】
【実施例B−7】
〈ニシンの酢漬〉
生ニシンのフィレーを、実施例A−5の方法で得た食塩含有粉末状抑制剤を用いて、常法に従って薄塩し、室温で1時間経過後、これを食酢100重量部に実施例A−1の方法で得たシラップ状抑制剤5重量部及びコンブ出し1重量部を溶解した調味液につけ、室温で5時間保ってニシンの酢漬を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶も良く、風味良好であった。本品を、適当な大きさの切り身にし、寿司のネタに使うことも、酢の物等の惣菜に用いることも有利に実施できる。
【0114】
【実施例B−8】
〈ブリの煮付け〉
生ブリの切り身100重量部を鍋に取り、これに実施例A−2の方法で得たシラップ状抑制剤10重量部、醤油10重量部及びみりん5重量部及び水10重量部を加え、常法に従って煮付けてブリの煮付けを得た。本品は揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶も良く、風味良好であった。
【0115】
【実施例B−9】
〈魚肉練製品〉
解凍したスケソウすり身4,000重量部に対し、実施例A−6の方法で得た顆粒状抑制剤80重量部、グルタミン酸ナトリウム80重量部、馬鈴薯澱粉200重量部、氷水300重量部、トリポリリン酸ナトリウム12重量部、食塩120重量部およびマルチトール10重量部とを溶解しておいた水溶液100重量部を擂潰し、約120gずつを定形して板付した。これらを、30分間で内部の品温が約80℃になるように蒸し上げた。続いて、室温で放冷した後、4℃で24時間放置して魚肉練製品を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、風味良好で、肌面が細やかで、艶やかな光沢を有しており、食感も良好であった。
【0116】
【実施例B−10】
〈ピーナッツクリーム〉
実施例A−3の方法で得たシラップ状抑制剤55重量部を加熱しつつ、これに、ピーナッツバター12重量部、ショートニング6重量部、無糖練乳5重量部、乳化剤0.4重量部、食塩0.2重量部、増粘剤0.5重量部、香料適量及び水18重量部を均一に混合溶解し、以後常法に従って煮詰め、瓶詰めしてピーナッツクリームを得た。
【0117】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶とも良く、風味も良好であった。
【0118】
【実施例B−11】
〈スナック風野菜食品〉
平鍋に、含水結晶トレハロース55重量部、無水結晶マルチトール10重量部及び水35重量部をとり、加熱溶解し、これに精製大豆油5重量部を加えて、常圧下で煮沸させつつ液温約140℃に加熱した。
【0119】
これに厚さ約5mmにスライスしたカボチャ5重量部を浸漬し、液温が約145℃になるまで加熱を続け、次いでざるに上げ、これに含水結晶トレハロースを少量まぶし、室温に一夜放置、熟成して表面に含水結晶トレハロースを晶出させたスナック風野菜食品を得た。
【0120】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、色、艶とも良く、風味も良好であった。
【0121】
【実施例B−12】
〈白米〉
玄米(古米)100重量部を撹拌しつつ、これに25%トレハロース水溶液4重量部をできるだけ均一に噴霧混合した後、一夜放置し、常法に従って、精米機にかけ白米を得た。本品は、トレハロースを約0.2%含有し、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、保存安定性に優れた高品質の白米である。本品は、風味良好なごはん、おにぎり、おかゆなどの原料として有利に利用できる。また、本品は、そのまま無洗米として利用することも、更にα化米などに加工して利用することも有利に実施できる。また、本精米工程で副産物として得られた米糠は、トレハロースを含有しており、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好で、糠漬又は糠床の原料、米糠油の原料、更にはこのままで又は脱脂糠にして配合飼料の原料などとして有利に利用できる。
【0122】
【実施例B−13】
〈無洗米〉
もみすり直後の玄米100重量部にトレハロース含水結晶粉末1重量部を混合して貯蔵庫に6ケ月間保存し、次いで、これを精米機にかけ白米とした。この白米を金網製無端ベルト上に移し、白米を混合しつつ移動させながら、まず、高圧噴霧水で極短時間洗浄し、次いで、実施例A−6の方法で得た顆粒状抑制剤20%及び乳酸カルシウム1%を含有する水溶液1重量部を噴霧し、更に乾燥、秤量、充填して無洗米を得た。本品は、トレハロースを約0.3%含有し、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、保存安定性に優れた高品質の無洗米である。また、本品は、ご飯、おにぎり、おかゆなどに利用して風味が良好であるばかりでなく、カルシウムを強化しており、健康の維持・増進にも好適である。
【0123】
【実施例B−14】
〈麹〉
実施例B−12の方法で得た白米を、室温の水に5時間浸漬し、ざるに上げ、これを蒸し器に入れて蒸し上げ、次いで、シート上に広げて約35℃に冷却し、これに種麹としてアスペルギルス・オリゼの培養物を約0.1%混合し、更にこの混合物をバットに入れて27℃の恒温室で品温を約30乃至38℃の範囲に保ちつつ2日間培養して、麹を製造した。本品は、着色の程度も低く、はぜ込み良好で、風味に優れた高品質の麹である。本品は、甘酒、清酒、味噌、醤油、麹漬などの各種発酵飲食物の製造に有利に利用できる。
【0124】
【実施例B−15】
〈甘酒〉
実施例B−12の方法で得た白米10重量部を、常法に従って水を加えて炊き上げ、次いで、得られた飯米を冷却して55℃とし、これに実施例B−14の方法で得た麹30重量部と食塩0.1重量部を混合して50乃至55℃で8時間保ち、更に、これをミキサーにかけ、小包に充填し、殺菌して甘酒を得た。本品は、色調もよく、風味豊かな高品質の甘酒である。
【0125】
【実施例B−16】
〈沢庵新漬(糠漬)〉
大根3000重量部を常法に従って下漬し、サッカリンナトリウム1重量部とともに中漬し、続いて、実施例B−12の方法で副産物として得たトレハロースを含有している米糠170重量部、サッカリンナトリウム1重量部、グリシン3重量部、グルタミン酸ナトリウム20重量部、複合調味料7重量部、還元水飴50重量部、食塩36重量部、エタノール6重量部及び10%プルラン水溶液50重量部からなる床で仕上げ漬して製品を得た。本品は、色、艶もよく、風味、歯ごたえも良好で、高品質の沢庵新漬であった。
【0126】
【実施例B−17】
〈小麦粉〉
精選した小麦100重量部に、トレハロース20%水溶液2重量部を噴霧混合し、常法に従って製粉して、小麦粉を得た。本品は、トレハロース約0.3%を含有し、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、保存安定性に優れた高品質の小麦粉である。本品は、製菓、製パン、パスタ、麺、冷凍ピザ、各種プレミックスなどに有利に利用できる。また、本製粉工程で副産物として得られた小麦麩は、トレハロースを含有しており、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好で、小麦胚芽油の原料や配合飼料の原料などとして有利に利用できる。
【0127】
【実施例B−18】
〈サラダ油〉
精選した大豆100重量部を圧扁した後、これに実施例A−3の方法で得たシラップ状抑制剤を水に糖濃度約25%になるように希釈した水溶液2重量部をできるだけ均一に噴霧混合し、次いで、常法に従って、加熱処理し、溶剤(n−ヘキサン)で脂質を抽出し、減圧蒸留して溶剤を除去し、更に、脱ガム、脱塩、脱色、脱臭、ウィンタリングを含む精製工程を経て、大豆サラダ油を製造した。本製油工程中、加熱処理時における揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解がよく抑制され、高品質のサラダ油が容易に製造できる。本品は、高品質で保存安定性に優れ、例えば、天ぷら、フライ用の油脂として、また、マヨネーズ、ドレッシング用油脂として有利に利用できる。また、本製油工程で副産物として得られた脱脂大豆はトレハロースを含有しており、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好で、豆腐、油揚、きな粉、味噌、醤油などの原料として、また、配合飼料の原料などとして有利に利用できる。
【0128】
【実施例B−19】
〈マヨネーズ〉
ミキサーに卵黄17重量部、食酢13重量部、実施例A−5の方法で得た粉末状抑制剤3重量部、砂糖1重量部、香辛料1重量部及びサラダ油65重量部を撹拌混合し、次いで、常法に従って、ホモゲナイザーにかけ、濾過後、容器に充填してマヨネーズを製造した。本品は、色調が良好で、風味も豊かな上、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、保存安定性に優れた商品価値の高いマヨネーズである。
【0129】
【実施例B−20】
〈粉末卵黄〉
生卵から調製した卵黄を、プレート式加熱殺菌機で60乃至64℃で殺菌し、得られる液状卵黄1重量部に対して、無水結晶マルチトール3重量部及び無水結晶トレハロース粉末3重量部の割合で混合した後、粉末化して粉末卵黄を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保ち、プレミックス、冷菓、乳化剤などの製菓用材料としてのみならず、経口流動食、経管流動食などの離乳食、治療用栄養剤などとしても有利に利用できる。また美肌剤、育毛剤などとしても有効に利用できる。
【0130】
【実施例B−21】
〈粉末油脂〉
大豆サラダ油150重量部及びレシチン1重量部に水20重量部を室温で混合した後、これに無水結晶トレハロース150重量部を混合して含水結晶トレハロースに変換させ粉末化し、篩いにかけて高品質のサラダ油含有粉末を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好で、プレミックス、冷菓、スポンジケーキ、キャンデー類などの製菓材料、マヨネーズ、ドレッシング、ポタージュ、スープ、シチュー、チャーハンなどの調味材料、高カロリー経管流動食などの治療用栄養剤、更には配合飼料材料などとして有利に利用できる。
【0131】
【実施例B−22】
〈粉末状配合乳化剤〉
ショ糖脂肪酸エステル30重量部、グリセリンモノ脂肪酸エステル10重量部、ソルビタンモノ脂肪酸エステル10重量部、無水結晶マルトース(登録商標「ファイントース」、株式会社林原商事販売)30重量部、及び水35重量部を加え、90乃至95℃に加熱混合して、均一なペースト状の配合乳化剤とし、これに結晶性α−マルトース粉末80重量部及び無水結晶トレハロース100重量部を混合し、熟成、粉砕して粉末状配合乳化剤を製造した。本品は、乳化力、気泡力ともに充分で、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好である。本品は、製菓、製パンなどの食品用途のみならず、洗浄剤などの化粧品用途、分散剤などの医薬品用途などとして広く利用される。本品を利用したスポンジ、パンなどの食品は、外観、物性、品質に優れ、風味も良好である。
【0132】
【実施例B−23】
〈食品用プレミックス〉
小麦粉100重量部、砂糖70重量部、含水結晶トレハロース40重量部、実施例B−22の方法で得た粉末状配合乳化剤6重量部、脱脂粉乳2重量部及び粉末香料(バニラ)0.15重量部を均一に混合し、一定量ずつ袋詰めして製菓用プレミックス粉を製造した。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好である。
【0133】
本プレミックス粉100重量部に、全卵70重量部及び水14重量部を加え、常法に従って、充分にホイップし、型に入れて焼き上げ、スポンジケーキを製造した。本スポンジケーキは、きめが細かく、口当たり、風味とも良好であった。
【0134】
【実施例B−24】
〈焙煎アーモンド〉
精選したアーモンド100重量部を常法に従って焙煎し、この高温の焙煎アーモンドを撹拌しつつ、実施例A−5の方法で得た粉末状抑制剤を水に糖濃度約20%になるように溶解した水溶液2重量部をできるだけ均一に噴霧混合し、次いで、粉末状の食塩をまぶして焙煎アーモンドを得た。本品は、風味の優れた焙煎アーモンドで、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性が良好で、そのままおやつとして、また、各種製菓、製パン材料などとして有利に利用できる。
【0135】
【実施例B−25】
〈焙煎スライスアーモンド〉
市販のスライスアーモンド(厚さ約1mm)を70℃の濃度約70%のトレハロース水溶液に10分間浸漬し、水切りし、次いで、電子オーブンを用いて180℃で焙煎し、色調、テクスチャー、風味のいずれの点においても良好な焙煎スライスアーモンドを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好で、そのままおやつとして、また、各種製菓・製パン材料などとして有利に利用できる。また、本品は、焙煎したスライスアーモンドの表面を無色透明で光沢のあるトレハロースのキャンディーで薄く覆われており、見栄えのする高品質の製品である。
【0136】
【実施例B−26】
〈減圧フライバナナ〉
バナナの皮を剥き、カッターにかけて厚さ約1cmのバナナ細断物とし、これを、50℃の濃度約40%のトレハロース水溶液に10分間浸漬し、次いで、水切りし、更に、常法にしたがって食用油脂を使用して減圧フライし、形状、色調、テクスチャー、風味のいずれの点においても良好な減圧フライバナナを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好であり、そのままおやつとして、また、各種製菓・製パン材料などとして有利に利用できる。
【0137】
【実施例B−27】
〈減圧フライリンゴ〉
リンゴを洗浄し、スライサーにかけて得た、厚さ約5mmのリンゴ細断物を、実施例A−3の方法で得たシラップ状抑制剤を水で希釈するとともに食塩を添加して調製した、糖濃度約30%及び食塩約0.1%の60℃の水溶液に15分間浸漬し、水切りし、次いで、−20℃で凍結保存した。これを常法にしたがって食用油脂を使用して減圧フライし、形状、テクスチャー、風味のいずれの点においても良好な減圧フライリンゴを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好であり、そのままおやつとして、また、各種製菓・製パン材料などとして有利に利用できる。
【0138】
【実施例B−28】
〈減圧フライニンジン〉
ニンジンの皮を剥き、スライサーにかけて、厚さ約5mmのニンジン細断物とし、これを食塩約0.1%及びトレハロース約40%を含む60℃の水溶液に20分間浸漬し、水切りし、次いで、ブランチングを2分間行い、更に常法にしたがって、食用油脂を使用して減圧フライし、形状、テクスチャー、風味のいずれの点においても良好な減圧フライニンジンを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好であり、そのままおやつとして、また、各種製菓・製パン材料、即席食品の具材などとして有利に利用できる。
【0139】
【実施例B−29】
〈フライポテト〉
ジャガイモを洗浄し、細断機にかけて1辺が約1cmの四角柱状の細断物とし、これを、食塩0.1%及びトレハロース約30%を含む50℃の水溶液に20分間浸漬し、水切りし、次いでブランチングを3分間行い、更に−20℃で凍結保存した。これを常法にしたがって常圧下でフライし、形状、テクスチャー、風味のいずれの点においても良好なフライポテトを得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性も良好であり、そのままおやつとして、また、惣菜などとして有利に利用できる。
【0140】
【実施例B−30】
〈アイスクリーム〉
生クリーム(油脂含量約46%)18重量部、脱脂粉乳7重量部、全乳51重量部、砂糖8重量部、含水結晶トレハロース6重量部、ラクトスクロース含有粉末(登録商標『乳化オリゴ』)4重量部、黒練り胡麻3重量部、プルラン1重量部、及びアラビアガム2重量部の混合物を溶解し、70℃で30分間保って殺菌した後、ホモゲナイザーで乳化分散させ、次いで、3乃至4℃にまで急冷して一夜熟成した後、フリーザーで凍結させてアイスクリームを得た。本品は、胡麻風味のアイスクリームで、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、保存安定性も良好で、口当たりもよく、オーバーランも適当であった。また、本品は、ビフィズス増殖活性を有する健康食品としても有利に利用できる。
【0141】
【実施例B−31】
〈麦茶〉
精選した大麦100重量部を常法に従って焙煎し、この高温の焙煎大麦に10%トレハロース水溶液2重量部を均一に噴霧混合し、通風乾燥し、小袋に充填、包装して麦茶を得た。本品は、風味の優れた麦茶で、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性に優れている。
【0142】
【実施例B−32】
〈緑茶飲料〉
緑茶(煎茶)3重量部を熱水180重量部で浸出し、この浸出液に、L−アスコルビン酸、α−グルコシルルチン(商品名『αGルチン』、株式会社林原商事販売)及び含水結晶トレハロースを、それぞれ、濃度0.05%(w/v)、0.01%(w/v)及び0.7%(w/v)になるように添加して溶解し、次いで、500ml容プラスチック製透明ボトルに充填し、殺菌して、ボトル入り緑茶飲料を製造した。本品は、揮発性アルデヒド類の精製及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、緑茶本来の色調、風味に優れた高品質の緑茶飲料で、その保存安定性も良好である。
【0143】
【実施例B−33】
〈配合飼料〉
粉麩30重量部、脱脂粉乳35重量部、実施例B−12の方法で副産物として得た米糠10重量部、ラクトスクロース高含有粉末10重量部、ビタミン剤10重量部、魚粉5重量部、第二リン酸カルシウム5重量部、液状油脂3重量部、炭酸カルシウム3重量部、食塩2重量部、含水結晶トレハロース2重量部及びミネラル剤2重量部を配合して、配合飼料を製造した。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、その保存安定性の良好な、家畜、家禽などのための飼料であって、とりわけ、子豚用飼料として好適である。また、本品は、ビフィズス菌増殖効果、ミネラル吸収促進効果を発揮し、飼育動物の感染予防、下痢予防、肥育促進、糞便の臭気抑制などに有利に利用できる。更に、本品は、必要に応じて、他の飼料材料、例えば、穀類、小麦粉、澱粉、油粕類、糟糠類などの濃厚飼料材料や、ワラ、乾草、バガス、コーンコブなどの粗飼料材料などと併用して、他の配合飼料にすることもできる。
【0144】
【実施例B−34】
〈石けん〉
重量比4対1の牛脂及びヤシ油を通常のけん化・塩析法に供して得られるニートソープ96.5重量部に、含水結晶トレハロース1.5重量部、アスコルビン酸2−グルコシド0.5重量部、白糖0.5重量部、マルチトール1重量部、感光素201号0.0001重量部と、適量の香料を加え、均一に混合した後、枠に流し込み、冷却・固化させて石鹸を製造した。
【0145】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ石けんである。本品は、汗、アカ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制するので、体臭の発生やかゆみを予防する石けんとして有利に利用できる。
【0146】
【実施例B−35】
〈化粧用乳液〉
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル0.5重量部、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール1.0重量部、親油型モノステアリン酸グリセリン1.0重量部、ベヘニルアルコール0.5重量部、アボガド油1.0重量部、リノール酸0.1重量部およびビタミンE、防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに、1,3−ブチレングリコール5.0重量部、L−乳酸ナトリウム3.5重量部、実施例A−3の方法で得たシラップ状抑制剤3.0重量部、カルボキシビニルポリマー0.1重量部および精製水80.3重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合し乳液を製造した。
【0147】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ色白剤である。また、汗、アカ、フケ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、体臭発生の予防、皮膚刺激やかゆみの予防、さらには、シミ、ソバカス、日焼けなど色素沈着症剤の治療用、予防用などに有利に利用できる。
【0148】
【実施例B−36】
〈化粧用クリーム〉
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、DL−乳酸カリウム5重量部、ベヘニルアルコール1重量部、エイコサテトラエン酸2重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリル10重量部および防腐剤の適量を、常法に従って加熱溶解し、これに含水結晶トレハロース2重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部および精製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。
【0149】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ色白剤である。また、汗、アカ、フケ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、体臭発生の予防、皮膚刺激やかゆみの予防、更には、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症の治療用、予防用などに有利に利用できる。
【0150】
【実施例B−37】
〈化粧用クリーム〉
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリコール2重量部、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン5重量部、DL−乳酸カリウム5重量部、ベヘニルアルコール1重量部、エイコサテトラエン酸2重量部、流動パラフィン1重量部、トリオクタン酸グリセリル10重量部および防腐剤の適量を常法に従って加熱溶解し、これに含水結晶トレハロース1.6重量部、ヒアルロン酸ナトリウム0.1重量部、グリチルリチン酸ジカリウム0.1重量部、アロエベラ0.1重量部、メリッサエキス0.05重量部、カミツレエキス0.05重量部、1,3−ブチレングリコール5重量部および精製水66重量部を加え、ホモゲナイザーにかけ乳化し、更に香料の適量を加えて撹拌混合しクリームを製造した。
【0151】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ色白剤である。本品は、汗、アカ、フケ、皮脂などからの揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、体臭発生の予防、皮膚刺激やかゆみの予防や、シミ、ソバカス、日焼けなどの色素沈着症の治療用、予防用などに有利に利用できる。また、本品は、保湿性に優れている上、皮膚に対する刺激性が低いので、過敏症を懸念することなく利用することができる。
【0152】
【実施例B−38】
〈注射用脂肪乳剤〉
大豆サラダ油10重量部、大豆レシチン1.0重量部、水90重量部および含水結晶トレハロース10重量部をミキサーにて10分間撹拌混合して粗乳化液を得、これを加圧噴射型乳化機(マントン・ゴーリン社製)で窒素気流中、600kg/cm2にて均質化して平均粒径0.2μ以下の水中油型微粒子乳剤とし、以下常法に従って膜濾過して無菌化し、注射用バイアル瓶に分注して施栓し、これを加熱滅菌して静脈注射用脂肪乳剤を製造した。
【0153】
本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、高品質を安定に保つ静脈注射用脂肪乳剤である。また、本品はエネルギー補給用の経口摂取用又は経管投与用流動食としても好適である。
【0154】
【実施例B−39】
〈栄養剤〉
無水結晶マルトース500重量部、実施例B−20の方法で得た粉末卵黄190重量部、脱脂粉乳200重量部、実施例B−21の方法で得た粉末油脂100重量部、塩化ナトリウム4.4重量部、塩化カリウム1.85重量部、硫酸マグネシウム4重量部、チアミン0.01重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1重量部、ビタミンEアセテート0.6重量部及びニコチン酸アミド0.04重量部からなる配合物を調製し、この25gずつを、ラミネートアルミ製小袋に充填し、ヒートシールして、用時溶解タイプの栄養剤を得た。本品は、揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解をよく抑制し、室温下で安定であることから、低温貯蔵の必要もなく、その上、溶解性、分散性に優れている。本品は、1袋分を約150乃至300mlの温水に溶解して、経口摂取又は経管投与することにより、容易にエネルギー補給、栄養補給を行うことができ、健康維持、成長促進、病気の予防、治療の促進、スポーツ後の疲労回復促進などに有利に利用できる。なお、本品は、ヒトのみならず、家畜のための経口摂取又は経管投与用組成物としても有利に利用できる。
【0155】
【発明の効果】
上記したように、本発明は、従来技術とは全く違って、トレハロース及び/又はマルチトールを含有せしめることにより、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物からの揮発性アルデヒド類の生成自体及び/又は脂肪酸類の分解自体を抑制する方法と、この方法で得られた組成物を提供するものであり、併せて、トレハロース及び/又はマルチトールを有効成分とする揮発性アルデヒド類の生成及び/又は脂肪酸類の分解抑制剤とその用途を提供するものである。また、本発明は、トレハロース及び/又はマルチトールが、非還元性の糖質で安定であることから、脂肪酸類又は脂肪酸類含有物、例えば、飲食物、化粧品、医薬品又はそれらの原料又は中間加工物を保存及び/又は加工処理するに際して、それに含まれるビタミン、アミノ酸、ペプチド等の栄養成分、旨味成分を破壊することが少なく、得られる組成物は高品質を安定に保つ特徴を有している。従って、本発明の確立は、脂肪酸類及び/又は脂肪酸類含有物の新たな保存及び/又は加工処理手段を提供するのみならず、利用面においても高品質で安定な飲食物、化粧品、医薬品など各種組成物を提供することとなり、これが与える影響は広く、とりわけ、農水畜産品、飲食品、健康食品、更には、化粧品、医薬品等の業界に与える産業的意義は極めて大きい。
Claims (2)
- α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸から選ばれる1種又は2種以上の脂肪酸と、脂肪酸に対して無水物換算で50質量%以上のα,α−トレハロースからなる脂肪酸含有組成物。
- 飲食物、化粧品、医薬品、又はこれらの原料乃至中間加工物である請求項1に記載の脂肪酸含有組成物。
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