JP4421473B2 - タイヤモールド用ピース及びピース式タイヤモールド - Google Patents
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Description
これらのピース54は、タイヤのトレッドパターンにより複数種類準備されるもので、通常は、金属製の鋳型に溶湯を高温・高圧にて流し込んで鋳造するダイカスト法にて鋳造し、機械加工にて必要寸法に加工した後、上記トレッドパターンにしたがって組合わされ、上記ホルダー53に取付けられる。
また、上記構成のピース式タイヤモールド50では、一般に、加硫時において発生する空気やガスをモールド外部へ排出するため、上記ピース54にベントホールと呼ばれる空気抜き用の貫通孔を形成してエア抜きを行っているが、上記ベントホールにはタイヤ加硫成形時にゴム材料が流れこみ、製品タイヤ表面にスピューと呼ばれるゴムの突起物が残ってしまうため、成形後にこれらのスピューを除去する作業が必要であった。そこで、ベントホールを形成せず、タイヤのトレッドパターンを各ピッチ毎に分割したバックブロックを組立てて、このバックブロック間に設けた隙間を介してモールド外部へ排出するスピューレスモールドが提案されている(例えば、特開平4−223108号公報など)が、上記スピューレスモールドでは、適切な位置に適切なエア抜きを確保することが難しいだけでなく、上記隙間から遠い部分ではエア抜きを十分に行うことができないといった問題点があった。
例えば、ミーリング(フライス加工)では、加工するスリット幅が微小なため、カッター強度や加工深さに限界があるだけでなく、加工時間が大幅にかかるため、実用的ではない。
また、放電加工も、電極作製が必要であるだけでなく、切粉の除去や電極曲がり等の限界のため、加工深さに限界があった。
また、CO2レーザー、YAGレーザー等のレーザー光を利用したレーザー加工では、レーザー光の焦点距離の関係から、溝幅を0.1mm以下とした場合には、加工深さに限界があった。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤモールド用ピースであって、上記スリットの他端側を、タイヤパターンを形成する突起部またはブレードの近傍に配置したものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤモールド用ピースであって、上記スリットの他端側を、上記突起部またはブレードに挟まれる角部に配置したものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のタイヤモールド用ピースであって、上記スリットの他端側を、モールドのピース分割面から10mm以上離れた部分に配置したものである。
また、請求項6に記載の発明は、タイヤを加硫成型するタイヤモールドの、タイヤのトレッド形成部に接する側に複数個のピースを配置して成るピース式タイヤモールドであって、上記ピースとして、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のタイヤモールド用ピースを用いたことを特徴とするものである。
最良の形態1.
図1は、本発明の最良の形態に係るピース式タイヤモールド10の構成を示す図で、同図において、11,12はタイヤサイド部に接する上,下モールド、13は上記上,下モールド11,12間に介装されるトレッドパターン形成部である。このトレッドパターン形成部13は、図2に示すような、ホルダー14と、このホルダー14の内側に取付けられた複数個のピース15とから成るセクターモールド16をタイヤ周方向に沿って複数個配列したもので、上記各ピース15はタイヤ面側に略円弧状の切欠部15aを有し、この切欠部15aの表面にタイヤのトレッドパターンを形成するための複数の突起部15bが形成されている。本例では、上記ピース15を、崩壊形である石膏鋳型にアルミニウムを注入し、低圧鋳造法により作製する。そして、上記作製されたそれぞれのピース15を、加硫するタイヤのトレッドパターンにしたがって組合わせてホルダー14に装着したセクターモールド16を、上,下のモールド11,12に組付けることにより、ピース式タイヤモールド10を作製する。
はじめに、作製するピースの設計図面に基づいて、石膏鋳型を作るためのマスターモデル(モデル型)を作製する(ステップS1)。このとき、機械加工の負荷を最小限にするため、比較的加工し易い材料(ケミウッドなど)を用い、必要部品のみNC工作機にて加工し、これらを共通コアフレームと呼ばれる、例えば、アルミ材質の型等にセットしてモデル型とすることが好ましいが、一体型として加工してもよい。
次に、上記モデル型に液状ゴムを流し込んで固化させ、反転ゴム型(元型)を作製する(ステップS2)。なお、当該ピースにて、タイヤのサイプのように細い溝を作製する際には、金属製(主としてステンレス)のブレードと呼ばれる部品を上記ゴム型に予め植え込んでおくようにする。
そして、上記ゴム型に発泡石膏または非発泡石膏、あるいは、発泡石膏と非発泡石膏との混合品をスラリー化して流し込み反応させることにより石膏の生鋳型を作製(ステップS3)した後、これを乾燥して生鋳型の結晶水をとばして無水の乾燥鋳型(石膏鋳型)を作製する(ステップS4)。
次に、上記石膏鋳型20を用いてピースを鋳造する(ステップS5)。鋳型が石膏であるため、型強度上の制約から、鋳造方法としては、低圧鋳造法(0.1〜0.5kg/cm2)、または、重力鋳造法を用いることが好ましい。
次に、溶湯坩堝内に圧縮空気を送り、この圧縮空気のエア圧(0.1〜0.5kg/cm2)により、上記坩堝内の溶融アルミニウム36を給湯管(ストーク)37から、湯口32bを介して、石膏鋳型20内に注入して固化させる。
その後、上記シリンダー35により上記上面鉄板33を上昇させて石膏鋳型20を取り出した後、石膏鋳型20を壊して鋳造されたピース15を取り出す。
また、本例では、石膏鋳型の上面20aの周縁部にエア抜き溝21を多数形成し、鋳造時におけるエア抜きを十分行うことができるようにしているので、エアの残留による空洞等の発生もほとんどなく、ピース15の寸法精度を向上させることが可能となる。
上記取り出されたピース15は、機械加工にて必要寸法に仕上げ加工(ステップS6)した後、トレッドパターンにしたがって組合わせてセクターモールド16とし、このセクターモールド16を、上,下モールド11,12に組付けることにより、ピース式タイヤモールド10を作製する(ステップS7)。
なお、上記ピース15の機械加工は、加工基準面として製品裏面(裏胴という;ここでは、ホルダー14側)を旋盤加工し、その裏胴を基準にして必要寸法に加工するようにしている。
更に、上記石膏鋳型20に2つの堰24,24を設けて、上記石膏鋳型20に2方向からアルミニウムの溶湯を注入するようにしたので、溶融アルミニウムを石膏鋳型20に効率よく、かつ、均一に注入することができる。
また、上記例では、上記石膏鋳型の下面20b側に2つの堰24,24を設けて、2方向から石膏鋳型20に溶湯アルミニウムを注入するようにしたが、図7(a)〜(c)に示すように、石膏鋳型の下面20b側に、石膏鋳型20の長手方向の両サイドまで延長する湯溜り部26を設け、この湯溜り部26の両サイドに、上記湯溜り部26と空隙部23とを連通する堰27,27を設け、上記石膏鋳型20に2方向から溶湯アルミニウムを注入するようにしても、溶融アルミニウムを石膏鋳型20に効率よく、かつ、均一に注入することができる。
上記最良の形態1では、ピース式タイヤモールド10のセクターモールド16に用いられるピース15を、崩壊形である石膏鋳型20を用いて鋳造する場合について説明したが、図8に示すように、アルミニウムピース40,40の境界面であるピース分割面41近傍に、溝幅が0.1mm以下あるいは0.05mm以下のスリット42,42を形成して、タイヤ加硫時に発生するガス等を上記スリット42,42からピース分割面41に導きモールド外部へ逃すようにすれば、簡単な構成で容易にエア抜きを行うことができるノンスピュータイプのピース式タイヤモールドを得ることができる。
次に、本発明によるピースの作製方法について説明する。
はじめに、作製するピースの設計図面に基づいて、図9(a)に示すような、ゴム型40Aを作製する。そして、上記ゴム型40Aのピース分割面41A近傍、好ましくは、ピース分割面41Aに接触する位置に切込部43を形成し、この切込部43に上記ピース40を構成する材料であるアルミニウムとは異なる種類の金属から成る板状のシム部材44を差込んでおく。なお、エア抜きを効率よく行うためには、上記スリット42の深さとしては、3mm以上が好ましく、5mm以上とすると更に好ましいことから、本例では、上記シム部材44の挿入深さを5mm以上とした。
次に、上記ゴム型40Aに発泡石膏または非発泡石膏、あるいは、発泡石膏と非発泡石膏との混合品をスラリー化して流し込み反応させることにより石膏の生鋳型を製作した後、これを乾燥して、図9(b)に示すような石膏鋳型(反転型)40Bを作製する。このとき、上記ゴム型40Aに差込まれたシム部材44は上記石膏鋳型40Bに転写される。
そして、上記石膏鋳型40Bにアルミニウムの溶湯を注入して、図9(c)に示すようなアルミニウムピース(鋳造型)40を鋳造して、上記石膏鋳型40Bに転写されたシム部材44をアルミニウムピース40に転写する。そして鋳造後、上記アルミニウムピース40から上記シム部材44を引き抜くことにより、上記アルミニウムピース40のピース分割面41近傍に、図9(d)に示すような溝幅が0.1mm以下あるいは0.05mm以下の微細な幅を有するスリット42を形成することができる。このようなスリット42は、その幅が微細なため、エアは抜けるがゴムの侵入はないので、加硫後のタイヤ表面部における凹凸の発生を抑制することができる。
また、上記石膏鋳型40Bを用いたアルミニウムピース40を作製する際には、上記最良の形態1に記載のピースの製造方法を用いることが好ましい。
また、上記アルミニウムピース40を用いることにより、ピース分割面41にエア抜き用の微細なスリット42が形成された、ノンスピュータイプのピース式タイヤモールドを容易に得ることができる。
あるいは、図11に示すように、スリット47を、アルミニウムピース40のほぼ中央部に設けるとともに、上記スリット47をピース40背面側まで貫通させて、ピース40背面側に形成された図示しない排気孔に連通するようにすれば、排気効率を更に向上させることができる。このような、ピース40背面側まで貫通するスリット47を設ける際には、スリット47の端部をピース分割面41まで延長する必要がない。また、スリットの長さを必要最小限にするため、その両端部をともに、タイヤパターンを形成する突起部またはブレードの近傍に位置するようにすることが好ましい。具体的には、図10の領域Cに示すような、タイヤパターンを形成する突起部45またはブレード46に周囲を囲まれているようなエア抜きが難しい部分に、上記のような、ピース40の背面側間で貫通するスリット47を設けるようにすれば、エア抜きを更に効率的に行うことができる。
また、上記例では、板状のシム部材44を用いてストレート溝状のスリット42,47を形成した場合について説明したが、シム部材の厚みや形状を適宜変更することにより、直線的なスリットだけでなく、波形等の曲線的なスリットも形成することができる。
また、上記例では、ピースの母体材料をアルミニウムとしたが、これに限るものではない。但し、本例のように石膏鋳型40Bを用いる場合には、上記アルミニウムやアルミニウムなどを基材とする軽合金を用いることが好ましい。
また、上記例では、シム部材44を転写する鋳型の材料として石膏を用いたが、これに限るものではなく、例えば、高硬度ウレタンなどのように、上記シム部材44の差込みあるいは転写が可能な材料を用いて上記石膏鋳型40に相当する鋳型を構成してもよい。
また、上記のピースを製造する際に、ゴム型に、上記ピースの母体材料とは異なる異種金属から成る板状のシム部材を差込み、これを転写した石膏鋳型に上記母体材料の溶湯を注入・固化してピースを鋳造した後、上記シム部材が転写されたピースから上記シム部材を抜き取って上記ピースにスリットを形成するようにしたので、所定の深さのスリット、あるいは、ピースを貫通するスリットを自在に形成することができる。
また、上記方法により作製された、モールドのピース分割面に連通するスリットを有するピースを用いたり、モールドのピース背面側に形成される排気孔に連通するスリットを有するピースを用いることにより、簡単な構成で容易にエア抜きを行うことができるノンスピュータイプのピース式タイヤモールドを得ることができる。
13 トレッドパターン形成部、14 ホルダー、15 ピース、
16 セクターモールド、20 石膏鋳型、21 エア抜き溝、
22 湯溜り部、23 空隙部、24 堰、25 冷やし金、30 低圧鋳造機、
31 炉本体フレーム、32 ベース鉄板、33 上面鉄板、34 ガイド部材、
35 押えシリンダー、36 溶融アルミニウム、37 給湯管、
40 アルミニウムピース、40A ゴム型、40B 石膏鋳型、41 ピース分割面、42,42A,42B,47 スリット、43 切込部、44 シム部材、
45 突起部、46 ブレード。
Claims (6)
- タイヤのトレッド形成部に接する側に複数個のピースを配置して成るピース式タイヤモールドに用いられる、モールド内面側に開口するスリットを備えたタイヤモールド用ピースであって、上記スリットを、その一端側がモールドのピース分割面に接触し、他端側がタイヤパターンを形成する突起部またはブレードにより区画されるタイヤの陸部に相当する部分に位置するように配置したことを特徴とするタイヤモールド用ピース。
- 上記スリットの他端側を、タイヤパターンを形成する突起部またはブレードの近傍に配置したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤモールド用ピース。
- 上記スリットの他端側を、上記突起部またはブレードに挟まれる角部に配置したことを特徴とする請求項2に記載のタイヤモールド用ピース。
- 上記スリットの他端側を、モールドのピース分割面から10mm以上離れた部分に配置したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のタイヤモールド用ピース。
- タイヤのトレッド形成部に接する側に複数個のピースを配置して成るピース式タイヤモールドに用いられる、モールド内面側に開口するスリットを備えたタイヤモールド用ピースであって、上記スリットは、タイヤパターンを形成する突起部またはブレードにより区画されるタイヤの陸部に相当する部分の上記突起部または上記ブレードで囲まれた部分に、両端部がともに上記突起部または上記ブレードの近傍に位置するように配置されており、かつ、上記ピースの背面側まで貫通していることを特徴とするタイヤモールド用ピース。
- 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のタイヤモールド用ピースをタイヤ周方向に沿って複数個配置して成ることを特徴とするピース式タイヤモールド。
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