JP4272301B2 - トレッドパタ−ン形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、幅広の溝により区分されたトレッドブロック及び/又はトレッドリブに、複数の細い切り込みを設けた車両用タイヤにおいて、同一の外観を有しながらも互いに異なる走行特性を発揮しうるトレッドパタ−ンの形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用タイヤの走行特性は、本質的には、トレッド面に設ける幅広の溝によって形成される基本パターン、すなわちトレッドブロック及び/又はトレッドリブのサイズや形状の種類、数、および配置状態によって決定される。そして、このようなトレッドブロック及び/又はトレッドリブを有する車両用タイヤの形態には種々のものが存在するが、これらは要求される走行特性、すなわち主な使用目的に基づいて選択されている。
【0003】
また走行特性にさらに影響を与えるために、トレッドブロック及び/又はトレッドリブに、切り込みを襞状に形成したタイヤもある。例えば、冬用タイヤでは、雪上でのトラクション性能を改善するために、前記切り込み(サイプ)が採用されている。
【0004】
そしてタイヤの外観は、前記基本パターン以外にも、勿論この切り込みによっても決定づけられており、これが意味するところは、異なる走行特性を有する車両用タイヤでは、走行特性ごとに外観模様がかなり異なってしまうということである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、タイヤ市場においては、近年、車両とタイヤの外観によるマッチング、使用者における趣向の多様化、或いはタイヤのシリーズ化等の観点から、異なる走行特性を有しながらも、本質的には同一の外観を呈する車両用タイヤの出現が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、タイヤの基本性能を決定する幅広の溝と、走行特性には影響しない程度の浅い切り込みとによって全てのトレッドパタ−ンに共通する一つの固有の外観模様を設定するとともに、前記切り込みの一部に、走行特性に影響する深底部を設けることを基本として、前記深底部の形成状態、すなわち形成位置、形成長さ、巾、深さなどを違えることによって、本質的に同一の外観を呈する複数のトレッドパタ−ンに、夫々異なる走行特性を付与させることができ、例えば外観を主体としたタイヤ選択を可能とするなど、タイヤ選択の自由度を高め市場の要求に対応しうるトレッドパタ−ンの形成方法の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、幅広の溝により区分されるトレッドブロック及び/又はトレッドリブと、このトレッドブロック及び/又はトレッドリブに配される複数の細い切り込みとを有しかつ互いに異なる走行特性を具える複数のトレッドパタ−ンを形成する車両用タイヤのトレッドパタ−ン形成方法であって、
前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブから成りかつタイヤトレッドの基本性能を定める基本パタ−ンを、全てのトレッドパタ−ンに対して同一に決定する一方、
タイヤの走行特性に実質的に影響を与えない1mm以下の浅い深さを有して前記基本パタ−ンのトレッドブロック及び/又はトレッドリブに配される細い切り込みからなる切り込みパターンを、全てのトレッドパタ−ンに対して同一に決定するとともに、
当該のトレッドパタ−ンに要求される走行特性に応じて、前記切り込みパタ−ンをなす切り込みの少なくとも一部に、走行特性に影響を与えうる深さの深底部分を形成したことを特徴としている。
【0008】
また請求項2の発明は、前記切り込みの少なくとも一部に、走行特性に影響を与えうる深さの深底部分を設けたことを特徴としている。
【0009】
また請求項3の発明では、前記切り込みは、タイヤの幅及び/又は周長によって変化することを特徴としている。
【0010】
また請求項4の発明では、前記切り込みは、部分的に途切れていることを特徴としている。
【0011】
また請求項5の発明では、前記切り込みは、前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブの端縁から小距離を隔てて途切れたことを特徴としている。
【0012】
また請求項6の発明では、前記切り込みは、前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブの端縁から小距離を隔てて、その周りを取り囲む囲い線部を含むことを特徴としている。
【0013】
本発明では、まずトレッドブロック及び/又はトレッドリブからなる基本パタ−ンと、その表面の多数の細い切り込みからなる切り込みパターンとを、全てのトレッドパタ−ンに対して同一に形成することにより、この全てのトレッドパタ−ンは、全て同じ外観を呈することとなる。その際、表面の切り込みは、本質的には、タイヤの走行特性に何ら影響を及ぼさず、ただ単に目で見た仕上がりに関与するだけである。
【0014】
そして、各トレッドパタ−ンの走行特性を互いに区別するため、前記切り込みの一部に、比較的深い深さの深底部分が形成され、これによりこの深底部分がタイヤの走行特性に影響を及ぼしてくる。しかしながら、深底部分を形成する、すなわち切り込みを部分的に深くすることで車両タイヤの外観が実際変わることはなく、その結果、外観を変えることなく走行特性を変えることが可能となる。このことは、本発明の方法により、さまざまな走行特性を有するが、同一の外観を呈している車両用タイヤを製造することが可能であることを意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明のトレッドパタ−ン形成方法によって製造された車両用タイヤのトレッドパタ−ンの一例を示す。
【0016】
図において、車両用タイヤは、トレッド縁TE間のトレッド面2及びその両外側のタイヤ側面領域3に、多数の幅広の溝1がさまざまな形で設けられている。そして、このトレッド面2には、前記幅広の溝1によって区分された種々のトレッドブロック4及び/又はトレッドリブ5が配されている。なお以下に、前記トレッドブロック4及び/又はトレッドリブ5を総称してトレッド陸部という場合がある。
【0017】
又トレッド面2には、前記幅広の溝1に加えて、細い切り込み6が、前記トレッド陸部の表面に形成される。この切り込み6は所謂サイプであって、実質的に溝幅を有しないカット溝及び溝幅1.5mm未満の細溝を含むことができる。従って、前記幅広の溝1は、逆に、切り込み6よりも幅広、すなわち溝幅1.5mm以上の溝として理解することができる。
【0018】
なお本例では、前記切り込み6が、タイヤ軸方向の一方から他方に略直線状に傾斜してのびかつ交差角を例えば略直角とした菱形模様としてトレッド面2に略均等に配置される場合を例示しているが、さまざまな交差角の菱形模様とすることができ、さらには、図4に示す如く、菱形の形状がタイヤ軸方向で変化しても良い。なお図示されたパタ−ンは、タイヤ赤道Iに沿って延在する。
【0019】
ここで、前記幅広の溝1により区分される前記トレッド陸部は、タイヤの走行特性における基本性能を決定するタイヤトレッドの基本パタ−ンを構成する。
【0020】
それに対して、前記トレッド陸部に形成される切り込み6は、前記走行特性に実質的に影響を与えない程度の浅い深さを有して形成される。従って、切り込み6からなる切り込みパターンは、走行特性に何ら影響を及ぼさず、この切り込みパターンは、前記基本パタ−ンと共にタイヤの外観を決定するだけの、単なる装飾用として形成される。なお、前記「走行特性に実質的に影響を与えない程度の深さ」とは、約1.0mm以下の深さを意味する。
【0021】
そして本発明では、前記トレッドパターンの外観を変えることなく走行特性に変化をもたせるために、前記切り込み6の深さを部分的に深くする、すなわち切り込み6の少なくとも一部に、深底部分7を形成することを特徴としている。この深底部分7は、走行特性に影響を与えうる深さ、すなわち1.0mm以上の深さであって、当該のトレッドパタ−ンに要求される走行特性に応じて、適宜の位置に形成される。
【0022】
又図2、図3には、図1と同じ外観ではあるが、切り込み6の一部に深底部分7を形成することにより、走行特性を違えた2つのトレッドパターンの例を示している。同図には、前記深底部分7を切り込み6と区別するため、便宜上少し太い線で描いているが、このことは必ずしも前記深底部分7が切り込み6よりも広幅であることを意味するものではない。しかし、この切り込み6を、少なくとも部分的に深く、しかも広幅とすること等により深底部分7を形成することは可能である。
【0023】
ここで、前記深底部分7は、タイヤの走行特性に補助的な影響を及ぼしており、図1〜図3に図示されたトレッドパタ−ンは、それぞれ異なる走行特性を呈する。このことから明らかなように、外見上同じ外観を有しながら、異なる走行特性を有する車両用タイヤを製造することができる。
【0024】
なお前記深底部分7は、その形成位置以外にも、深さ、幅および長さを変化させることにより、走行特性に変化をもたせることができる。又この深底部分7は、ひとつのタイヤ内においても、またタイヤとタイヤとの間においても、異ならせることができる。この場合にも、タイヤの外観は都合のいいことに変わらない。
【0025】
次に、外観を決定する前記基本パタ−ンおよび切り込みパタ−ンに関しても、要求により自在に設定でき、例えば図4、5には、幅広の溝1からなる基本パタ−ンを実質的に同一としているが、切り込み6からなる切り込みパタ−ンを違えることによってタイヤの外観を相違させた場合を例示している。なお図4、5では、基本パタ−ンはトレッドブロック4のみによって形成されているが、トレッドリブ5のみによって形成されても良い。
【0026】
図4の切り込みパタ−ンにおいては、前記切り込み6が、タイヤ軸方向の一方から他方に向かってS字状にのびる曲線をなし、トレッド面2の中央領域Aにおいては交差角度が直角ではないが、タイヤ軸方向の両外側にいくにつれ、直角に近づく菱形模様として形成されている場合を例示している。なお前記S字状では、その一部に直線状部分を含んでも良い。
【0027】
又図5の切り込みパタ−ンにおいては、前記切り込み6が、タイヤ軸方向の一方から他方に向かってS字状にのびる曲線をなし、互いに交差することなく略平行に配列させた波形模様として形成されている場合を例示している。
【0028】
このように、切り込み6自体の形状やその配列により、切り込み6、6間の間隔及び/又はその傾斜角度を、タイヤ軸方向及び/又はタイヤ周方向にさまざまに変化させることができ、求められる外観を決定する際に非常に有利である。
【0029】
なお切り込みパタ−ンにおいて、前記切り込み6のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、約30〜約60度、特に約40〜50度の範囲であることが好ましい。このような切り込み6に基づいて形成される深底部分7は、走行特性により大きな影響を与えることが判明しており、走行特性を要求される値に設定するために有利となる。
【0030】
また前記切り込みパタ−ンにおいて、切り込み6、6間の間隔は、約5〜約20mm、特に約8〜約12mmの範囲であることが好ましい。このこともまた、求められる走行特性を設定する上で有利に作用する。
【0031】
なお図4においても、前記図1〜3の例の如く、切り込み6の一部に深底部分7(図示しない)を適宜形成することにより、図4と同じ外観を有しながら走行性能を夫々違えた一連のタイヤを提供できる。又図5においても、同様に、図5と同じ外観を有しながら走行性能を夫々違えた一連のタイヤを提供できる。
【0032】
すなわち、同じ外観を呈しながらも異なる走行特性を持つ一連の車両用タイヤをシリーズ化して製造するために、その外観を変えることなく、走行特性をさまざまに変化させうるためのトレッドパタ−ンがここに考えだされたのである。この際、製造は複雑ではなくコストも低く抑えうる。
【0033】
次に、図6に、前記切り込みパタ−ンのさらに他の実施例を例示する。図6には、幅広の溝1からなる基本パタ−ンが、例えば図1〜3の基本パタ−ンと実質的に同一であるが、しかし切り込み6からなる切り込みパタ−ンを違えることによってタイヤの外観を相違させた場合を例示している。
【0034】
本例の切り込みパタ−ンでは、トレッド面2のある限られた領域、本例では中央領域Aのトレッド陸部にのみ切り込み6が形成されており、ショルダ−領域Bのトレッド陸部には切り込み6が全く形成されていない場合を例示している。このような構成とすることにより、切り込みパタ−ンがタイヤの走行特性に与える影響をより低く抑えることができ、又外観に変化を与えることも可能となる。なお前記中央領域Aとは、トレッド面2のうち、最外側に位置するトレッド陸部よりもタイヤ軸方向内側の領域を意味し、ショルダ−領域Bとは、この最外側に位置するトレッド陸部を含むタイヤ軸方向の外側領域を意味する。
【0035】
そして、本例では、前記切り込み6が与える走行特性に対する影響をさらに減じるために、この切り込み6が、各トレッド陸部内で部分的に途切れることを特徴としている。
【0036】
詳しくは、本例では、前記切り込み6は、トレッド陸部の端縁8から小距離を隔ててこのトレッド陸部の周りを実質的に取り囲む囲い線部9と、この囲い線部9により囲まれた内領域に配される内線部10とから形成される場合を例示している。すなわち、本例では、前記内線部10の外端が、前記囲い線部9と交わって終端し、これによって前記内線部10(切り込み6)は、トレッド陸部の前記端縁8から小距離を隔てて途切れることとなる。
【0037】
さらに本例では、前記内線部10は、例えば略菱形模様状に形成されており、この菱形形状の頂点近傍でも、前記内線部10(切り込み6)は、互いに交差することなく途切れている。
【0038】
このように、前記切り込み6に、途切れ部分を形成することによって、トレッド陸部の剛性変化がなくなり、切り込み6の走行特性に与える影響を著減しうる。しかも、タイヤの外観への印象度合いを大きく変化させうるなど、異なるタイヤシリーズを作成するうえで役立つ。特に前記切り込み6を、トレッド陸部の端縁8から小距離を隔てて途切れさせることにより、高い効果が生まれる。
【0039】
又本例においても、囲い線部9及び内線部10は、トレッド陸部の表面にほんの1.0mm以下の深さで形成されて、基本パターンと共にタイヤの外観を決定するだけである。ここでも、タイヤの走行特性に変化を与えるものは、切り込み6の一部に形成される深溝部分7(図示しない)であって、その形成位置、深さ、幅および長さを変化させることにより、同一の外観を有するタイヤにも異なる走行特性を付与することができる。
【0040】
なお切り込み6では、少なくとも一部が途切れていれば良く、前記囲い線部9及び内線部10の特徴を、別々に或いは互いに結びつけて切り込みパターンを形成することができる。すなわち、切り込み6として、菱形模様の代わりに、任意の他の模様、例えばカ−ブした曲線、特に波形曲線も考えられ、この時、自在な中間位置で途切れさせることもあり、又両端をトレッド陸部の端縁8から小距離隔てて終端させることもある。また囲い線部9を形成しその内側に配する内線部10を前記波形曲線等の菱形模様以外の模様で形成することもでき、さらには前記図4、5の如く、内線部10、10間の間隔及び/又はその傾斜角度を、タイヤ軸方向及び/又はタイヤ周方向にさまざまに変化させることもできる。
【0041】
【発明の効果】
叙上の如く、本発明のトレッドパタ−ンの形成方法は、タイヤの基本性能を決定する幅広の溝と、走行特性には影響しない程度の浅い切り込みとによって共通する一つの固有の外観模様を設定するとともに、前記切り込みの一部に、走行特性に影響する深底部分を設けている。従って、深底部分の形成状態、すなわち形成位置、形成長さ、巾、深さなどを違えることによって、本質的に同一の外観を呈しながらも異なる走行特性を持つ一連の車両用タイヤをシリーズ化して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用タイヤにおいて設定された共通するトレッド模様の一例を示す平面図である。
【図2】切り込みの溝底に深底部分を形成することにより、図1のトレッド模様を共通としながら走行特性を違えたトレッドパターンの一例を示す平面図である。
【図3】切り込みの溝底に深底部分を形成することにより、図1のトレッド模様を共通としながら走行特性をさらに違えたトレッドパターンの他の例を示す平面図である。
【図4】共通するトレッド模様の他の例を示す平面図である。
【図5】共通するトレッド模様のさらに他の例を示す平面図である。
【図6】途切れ部を有する切り込みの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1 幅広の溝
4 トレッドブロック
5 トレッドリブ
6 切り込み
7 深底部分
8 端縁
9 囲い線部
Claims (6)
- 幅広の溝により区分されるトレッドブロック及び/又はトレッドリブと、このトレッドブロック及び/又はトレッドリブに配される複数の細い切り込みとを有しかつ互いに異なる走行特性を具える複数のトレッドパタ−ンを形成する車両用タイヤのトレッドパタ−ン形成方法であって、
前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブから成りかつタイヤトレッドの基本性能を定める基本パタ−ンを、全てのトレッドパタ−ンに対して同一に決定する一方、
タイヤの走行特性に実質的に影響を与えない1mm以下の浅い深さを有して前記基本パタ−ンのトレッドブロック及び/又はトレッドリブに配される細い切り込みからなる切り込みパターンを、全てのトレッドパタ−ンに対して同一に決定するとともに、
当該のトレッドパタ−ンに要求される走行特性に応じて、前記切り込みパタ−ンをなす切り込みの少なくとも一部に、走行特性に影響を与えうる深さの深底部分を形成したことを特徴とするトレッドパタ−ン形成方法。 - 前記切り込みの少なくとも一部に、走行特性に影響を与えうる深さの深底部分を設けたことを特徴とする請求項1記載のトレッドパタ−ン形成方法。
- 前記切り込みは、タイヤ軸方向及び/又は周方向に変化することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のトレッドパタ−ン形成方法。
- 前記切り込みは、部分的に途切れていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のトレッドパタ−ン形成方法。
- 前記切り込みは、前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブの端縁から小距離を隔てて途切れたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のトレッドパタ−ン形成方法。
- 前記切り込みは、前記トレッドブロック及び/又はトレッドリブの端縁から小距離を隔てて、その周りを取り囲む囲い線部を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のトレッドパタ−ン形成方法。
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