JP3979737B2 - 電気的特性測定用装置および電気的特性測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体素子の電気的特性測定用装置に関し、特に高耐圧特性を測定する測定用装置の構造および測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子、例えば高電圧駆動のMOSトランジスタにおける、例えばドレイン耐圧やジャンクション耐圧や絶縁膜耐圧といった電気的特性を測定する測定用の装置として、図6に概略的に示されているような構造を有する装置が使用されている。
【0003】
このような構造を有する装置100は、プローバと呼ばれ、測定試料190である半導体素子を載せる測定台110(プローバステージ)と、測定試料190(半導体素子)の測定端子(電極)に接触させる複数の探針130(プローブ)と、探針130の接触端130aとは反対側の端部130bを固定する探針固定部材150(プローブカード)と、この探針固定部材150を支持し、かつ外部に設けられている測定器とプローブとを電気的に接続させる配線がなされている支持部材170(プローバヘッド)とを具えている(図6)。そして、図示していないが、これらの他に、上述した構成要素を格納する筐体と、半導体素子をプローバステージまで搬送する搬送系を具えている。
【0004】
プローブ130を測定試料190の測定端子に接触させた後、プローブ130から測定試料190に所望の電圧を印加させることによって、測定試料である半導体素子の、例えばドレイン耐圧やジャンクション耐圧、絶縁膜耐圧といった電気的特性を測定する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような構成の測定用装置では、1000V程度の高電圧測定を行う場合、通常は、空気の雰囲気中で測定を行っている。そのため、この空気中に含有される水分や塵埃によって、電極や探針からリーク電流が発生して、正確な測定を行うのが困難であった。
【0006】
このため、水分や塵埃が含まれず、かつ反応性の高い物質を含まず腐蝕等の問題のない不活性ガス雰囲気中で測定を行うことが考えられる。例えば、測定用装置全体を不活性ガス雰囲気中に入れて行えばよい。しかしながら、このようにすると、測定に時間がかかり、また装置自体が大型化し、さらに大量の不活性ガスが必要となる。
【0007】
よって、不活性ガス雰囲気中で安定な測定を、スピーディにかつ安価に行うことができる電気的特性測定用装置で、よりコンパクトな装置および測定方法の出現が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、この発明の電気的特性測定用装置によれば、探針が半導体素子と接触している付近の空間領域の雰囲気、すなわち半導体素子の測定端子と探針との接触点を少なくとも囲む空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にするための不活性ガス噴出部を具えている。
【0009】
この発明の構成によれば、半導体素子の測定端子と、探針との接触点を少なくとも囲む周辺の空間領域には不活性ガスによる測定雰囲気が形成される。当然ながら、この接触点付近の空間領域に限らず、測定端子および探針の全部を囲む空間領域を不活性ガス雰囲気にしておいても良い。
【0010】
この不活性ガスには実質的に水分も塵埃も含まれていないし、また、これらが含まれていたとしても空気に比較してその量は著しく少量であると言えるので、測定雰囲気中の水分や塵埃が原因であるリーク電流の発生を抑制することができる。従って、この発明の装置によれば、従来よりも一層正確な測定を行うことができる。また、従来からある測定用装置に不活性ガス噴出部を取り付けるだけでよいため、よりコンパクトな装置にすることができる。また、半導体素子の測定領域付近の空間領域だけを不活性ガス雰囲気にすれば良いので、大量の不活性ガスを必要とはしない。このため、半導体素子の電気的特性の測定を、安価にしかもスピーディに行うことができる。
【0011】
また、この発明の電気的特性測定用装置には、表面に半導体素子を載置させる測定台と、半導体素子の測定端子に接触させる探針と、探針の接触端とは反対側の端部を固定し、測定台の上側に設けられている探針固定部材と、探針固定部材を支持する支持部材とが具えられている。そして、不活性ガス噴出部は、ガス供給管と、ガス噴出ノズルと、この不活性ガス噴出部を支持部材に固定する固定具とを具えていて、さらにガス噴出ノズルと接触点との間には、ガス噴出ノズルからの不活性ガスを接触点を囲む空間領域へ送り込むガス流路を具えている。
【0012】
これにより、ガス噴出ノズルから噴出される不活性ガスは、ガス流路を通って、探針の接触端付近の領域、すなわち端子と探針との接触点を少なくとも囲む空間領域の雰囲気を、水分や塵埃を含まないか実質的に含まない不活性ガスによる、測定雰囲気にすることができる。従って、探針から半導体素子の測定端子に高電圧を印加しても、水分や塵埃に起因するリーク電流の発生を抑えることができる。よって安定した電気的特性の測定が可能になる。
【0013】
また、ガス流路は、探針固定部材を支持部材側から測定台側へと貫通する穴を通っているのが良い。
【0014】
これにより、ガス噴出ノズルから噴出されるガスは、探針固定部材の穴から測定台側へ導入されて、接触点を囲む空間領域の雰囲気を、不活性ガスによる測定雰囲気にすることができる。
【0015】
また、ガス噴出ノズルから半導体素子の測定端子と探針との接触点を囲む空間領域へと通じていて装置内に構造上必然的に生じている隙間や空間を、ガス流路とすることができる。
【0016】
また、好ましくは、ガス噴出ノズルは、内部が中空の円柱または角柱の形状を有していて、一端面側は固定具によって、ガス供給管と連通するように支持部材に固定されているのがよい。
【0017】
このガス噴出ノズルは、探針固定部材を支持する支持部材に、固定具によって固定してある。このため、ガス噴出部を具えたこの発明の電気的特性測定用装置を、よりコンパクトに構成することができる。
【0018】
また、ガス噴出ノズルの固定側とは反対側の他端面にはガス噴出口が設けられているのがよい。
【0019】
これにより、不活性ガスは、ガス供給管からガス噴出ノズルを通ってガス噴出口から噴出される。探針固定部材に穴が形成されている場合には、この穴に向かって噴出されるように、ガス噴出ノズルを支持部材に取り付ければよい。このようにすれば、少なくとも測定端子と探針との接触点付近の空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0020】
また、好ましくは、ガス噴出ノズルの他端面および側面に複数のガス噴出口を設けておき、この複数のガス噴出口から不活性ガスを噴出させるのがよい。
【0021】
これにより、前述の接触点付近の空間領域を、より広域の範囲にわたって不活性ガス雰囲気の領域として形成することができる。よって、半導体素子の電気的特性の測定をより安定に行うことができる。
【0022】
また、好ましくは、ガス噴出ノズルの他端面および側面を網目構造として、この網目構造の網目をガス噴出口とするのがよい。
【0023】
半導体素子の電気的特性を測定する際、好ましい測定ガス雰囲気を形成するための、ある程度のガス流量が必要で、かつガスを噴出する勢い(ガス流速)も適宜設定する必要がある。ガス流速が遅すぎると、測定中に不活性ガス雰囲気となる空間領域に、この雰囲気を維持するだけのガス流量を確保することができなくなる。しかしながら、ガス流量を確保するために噴出するガスの勢いを強くする(ガスの流速を速くする)と、リーク電流の原因となる水分や塵埃を含んだ空気その他の、不活性ガス以外の外気を噴出ガス中に巻き込んでしまうおそれがある。このため、上述したようにガス噴出ノズルの他端面および側面を網目構造にすれば、噴出される不活性ガスの、好ましい測定ガス雰囲気を形成するガス流量を確保し、かつ噴出勢いを抑えることができる。これにより、接触点付近の空間領域に、不活性ガス以外の雰囲気を押し退けて、不活性ガス雰囲気を形成できる。よって、水分や塵埃を含んだ外気が測定のために利用される空間領域へ巻き込まれるのを抑制することができる。従って、接触点付近を囲む空間領域を含む、より広範囲の空間領域を不活性ガス雰囲気にすることができ、その結果、一層安定した測定を行うことができる。なお、網目構造はより細かい目にしたほうが、より高い効果が得られると考えられる。
【0024】
また、この発明の、探針固定部材にガス流路としての穴を具えた電気的特性測定用装置において、好ましくは、ガス噴出ノズルと探針固定部材の穴との間のガス噴出領域であって、探針固定部材上に、噴出されるガスの勢いを弱めるための緩衝用部材が設けられているのがよい。
【0025】
ガス噴出ノズルから噴出された不活性ガスは、一旦、緩衝用部材に衝突することによって散乱して噴出の勢いが抑えられる。このため、接触点付近の空間領域への外気の巻き込みを抑制することができ、従って、この空間領域の雰囲気を安定した測定ガス雰囲気として形成することができる。
【0026】
また、緩衝用部材の形状は、探針固定部材の穴の上側を覆わないようにしてあればどのような形状にしてもよい。これは、この穴の上側から顕微鏡を用いて、測定試料である半導体素子を観察するためである。よって例えば、緩衝用部材の形状は、例えば板状であり、噴出するガスが板の表面に衝突するように設けてあるのがよい。また、この板状の緩衝用部材には、表面から裏面へ貫通する開口部が複数設けられているのがよい。これにより、緩衝用部材に衝突して勢いの弱くなった不活性ガスは、開口部から探針固定部材の穴へと流れて、その結果、半導体素子の測定領域付近は不活性ガス雰囲気になる。
【0027】
また、緩衝用部材は、探針固定部材の穴の外側を囲うような、両端が開口している筒状であってもよい。上述した板状の緩衝用部材と同様に、この筒にも噴出されるガスを通すことのできる開口部が複数設けられているのがよい。また、筒の開口している端部の形状は、探針固定部材の穴と同様でもよいし、この穴よりも大きければ四角形など他の形状であってもよい。
【0028】
また、緩衝用部材に設けられる複数の開口部において、各開口部は、噴出するガスがほとんど衝突せずに通り抜けてしまうことのないようにする。このため、例えば、直径が1mm程度の大きさの開口部が、2×2cm2 の板に50個ぐらい、互いに等間隔に形成されている程度の密度で設けられているようにするのがよい。
【0029】
また、半導体素子の測定端子に探針を接触させて、この半導体素子の電気的特性を測定するに当たり、ガス噴出ノズルから不活性ガスを噴出させ、緩衝用部材によって探針固定部材上に噴出される不活性ガスの勢いを噴出時の勢いよりも弱めて、測定端子および探針を不活性ガス雰囲気に曝しながら測定を行うのがよい。
【0030】
これにより、ガス噴出ノズルから噴出された不活性ガスは、一旦、緩衝用部材に衝突することによって散乱して噴出の勢いが抑えられる。このため、接触点付近の空間領域への外気の巻き込みを抑制することができ、従って、この空間領域の雰囲気を安定した測定ガス雰囲気にして測定を行うことができる。このためリーク電流の発生を抑えられ、安定した測定を行うことができる。
【0031】
また、不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガスおよび希ガスの不活性ガス群から選ばれる1種類のガスもしくは2種類以上のガスを混合した混合ガスを用いるのがよい。
【0032】
例えば、2種類以上の混合ガスとする場合、比重の異なるガスを2種類以上混合させれば、より広範囲の雰囲気を不活性のガス雰囲気にすることができる。このため、より安定した測定が期待できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照してこの発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は発明を理解できる程度に各構成成分の形状、大きさおよび配置関係を概略的に示してあるに過ぎず、したがってこの発明を図示例に限定するものではない。
【0034】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態として、図1および図2を参照して、この発明の電気的特性測定用装置の好適な一例につき、説明する。図1(A)は、この発明の電気的特性測定用装置の主要な部分の構造を概略的に示す図であり、断面の切り口を示している。また、図1(B)は、電気的特性測定用装置を構成するガス噴出ノズルのガスを噴出する端面の構造を概略的に示す図である。図2は、この実施の形態の電気的特性測定用装置のガス流路の説明に供する、探針固定部材の概略的な立体図である。
【0035】
まず、図1(A)および図1(B)を参照して、この装置の構造につき説明する。
【0036】
この発明の電気的特性測定用装置10は、測定試料である半導体素子19の測定端子と探針との接触点を少なくとも囲む空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にするための不活性ガス噴出部21を具えている。
【0037】
この電気的特性測定用装置10は、表面に半導体素子19を載置させる測定台11と、半導体素子19の測定端子に接触させる探針13と、探針13の接触端13aとは反対側の端部13bを固定し、かつ測定台11の上側に設けられている探針固定部材15と、この探針固定部材15を支持する支持部材17とを具えている。
【0038】
また、不活性ガス噴出部21は、ガス供給管21aとガス噴出ノズル21bと、この不活性ガス噴出部21を支持部材17に固定する固定具21cとを具えている。そして、ガス噴出ノズル21bと測定端子および探針13間の接触点との間には、ガス噴出ノズル21bからの不活性ガスをこの接触点を囲む空間領域へ送り込むガス流路が具えられている。このガス流路として、一般的には、この装置10の構造上必然的に形成されている空隙や空間が用いられる。その他に、この実施の形態では、図2に示すように、探針固定部材15に支持部材17側から測定台11側へ貫通する穴15xをガス流路として形成してある(図2)。すなわち、この構成例では、探針固定部材15をドーナツ型状とかリング状の部材としている。この部材15を支持部材17へ取り付けたとき、半導体素子19の測定端子や探針13が上方からこの穴15xを介して見えるようにしておく。
【0039】
ここで説明する構成例では、電気的特性測定用装置10を半導体ウェハ上に形成された電子回路の電気的特性を効率よく試験するために、各電子回路の電極にプローブと呼ばれる探針を自動的に接触させて、探針に接続した外部の測定器による各電子回路の電気的試験を可能にするプローバと呼ばれる装置とする。
【0040】
これにより、このプローバ10は、測定台11としてのプローバステージと、探針13であるプローブと、探針固定部材15としてのプローブカードと、支持部材17であるプローバヘッドとを具えている(図1(A))。
【0041】
プローブカード15には、少なくとも半導体素子19の測定端子を含む測定領域が上方から見えるような大きさの穴15xが形成されている。この穴15xは主なるガス流路となって、ガス噴出ノズルから噴出する不活性ガスが、図中の矢印で示されているようにプローバヘッド17側からプローバステージ11側へと流れる(図2)。
【0042】
この実施の形態で測定する半導体素子19は、例えば、2000×300μm2 程度の大きさの大トランジスタで、半導体ウェハ上に形成された駆動電圧900Vの高電圧駆動MOSトランジスタとする。そして、一度に測定する測定領域は4×4mm2 程度の大きさとする。図1では図を分かり易くするために、1つの半導体素子19の2つの測定端子に接触させる2つのプローブ13しか示していない。しかし、周知の通り、実際には、40〜50本のプローブが設けられていて、これらプローブは被測定素子集団(TEG:Test element group)のそれぞれの素子の対応する測定端子に個別に接触している。この実施の形態では、プローブカード15に形成されている穴15xは、例えば直径1cmの円形のものとする(図2)。
【0043】
また、不活性ガス噴出部21は、プローバヘッド17の上側に固定具21cによって固定されている。この固定具21cによって、ガス供給管21aとガス噴出ノズル21bとは接合されて連通し、ガス供給管21aからガス噴出ノズル21bへガスが供給される。この場合、ガス噴出ノズル21bは、ここでは、例えば、内部が中空の円柱形状とし、このノズル21bの一端面21bx側を固定具21cによってガス供給管21aに固定する。そして、図1(B)に示しているように、ノズル21bの他端面21byの略中央にガス噴出口23が設けられている。この例では、例えばガス噴出口23の直径lを5mmとし、ガス噴出ノズル21bのガス噴出口23が設けられている端面21byの直径Lを20mmとする(図1(B))。また、ガス噴出ノズル21bは、ガス噴出口23から噴出する不活性ガスが、プローブカード15に設けられた穴15xがガス流路となって、この穴15xを通って半導体素子19の測定端子と探針13(プローブ)との接触点を含む空間領域に導入されるような位置に固定されている(図1(A))。
【0044】
このため、ガス噴出ノズル21bから噴出される不活性ガス25は、プローブカード15の穴15xからプローバステージ11側へ導入されて、プローブ13の、半導体素子19と接触している付近の空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にする。
【0045】
次に、この実施の形態の電気的特性測定用装置10を用いて、半導体素子19の電気的特性を測定する。
【0046】
この例では、例えば、測定試料19である半導体素子として、駆動電圧が900V程度の高電圧駆動MOSトランジスタを用いる。
【0047】
測定試料19をプローバステージ11の上に設置して、真空チャックにより固定する。次に、プローブ13の接触端13aを測定試料19のドレイン電極、ゲート電極およびソース電極の3つの端子に、それぞれ接触させる。そして、ゲート電極およびソース電極には0Vの電圧を印加する。そして、ドレイン電極には0Vから1000Vまでの電圧範囲で、徐々に高い電圧となるように印加させる。そして、ドレイン電極とソース電極との間に電流が100μA流れたときのドレイン電極への印加電圧をドレイン耐圧とする。
【0048】
この一連の測定動作を行っている間、ガス噴出ノズル21bから不活性ガス25を噴出させて、少なくとも測定端子とプローブとの接触点を含む周辺の雰囲気を不活性ガス雰囲気とする。この例では、不活性ガス25として、例えば窒素ガスを用いる。
【0049】
この結果、半導体素子19とプローブ13とが接触する周辺には、不活性ガスによる測定雰囲気が形成される。よって、900V程度の高電圧を半導体素子19に印加して、電気的特性を調べる場合に、測定雰囲気中にリーク電流の原因となる水分や塵埃が入り込むのを防ぐことができる。従って安定した測定が可能となる。
【0050】
また、この実施の形態の測定用装置10は、従来の装置にガス噴出部21を設置しただけなので、コンパクトな構造である。また、この装置10であれば、接触点周辺の雰囲気だけを不活性ガス雰囲気にすることができるため、それほど大量の不活性ガスを必要としない。よって、測定を安価に、しかもスピーディに行うことができる。
【0051】
また、この実施の形態では、不活性ガス25が噴出するガス噴出ノズル21bの端面21byの略中央にガス噴出口23が設けられていたが、これに限らず、例えば、ガス噴出ノズルの端面に多数のガス噴出口が設けられていてもよい。また、例えば、端面が全面にわたり網目構造を有していてもよい。この場合、網目のひとつひとつがガス噴出口となる。
【0052】
また、この実施の形態では、中心部に穴15xが形成されたドーナツ型状の探針固定部材15(プローブカード)を用い、穴15xがガス流路となっていたが、これに限らず、例えば、探針13(プローブ)が固定できるような形状であれば、図3に示すような探針固定部材16であってもよい。図3は、この発明の電気的特性測定用装置の探針固定部材の形状の適用可能な一例である。なお、図3は、概略的な斜視図で示してある。探針固定部材16は、第1部材16aと第2部材16bとで構成されている。このような探針固定部材16を用いれば、ガス噴出ノズルから半導体素子の測定端子と探針との接触点付近の空間領域へ通じるガス流路は、穴を設けなくても確保することができる。そして図中の矢印で示すように、ガス噴出ノズルから噴出する不活性ガスが接触点周辺の空間領域へと流れる(図3)。
【0053】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態として、図4を参照して、ガス噴出部のガス噴出ノズルの形状が第1の実施の形態と異なる例につき説明する。図4(A)は、第2の実施の形態の電気的特性測定用装置の主要な部分の構造を概略的に示す図であり、断面の切り口を示している。また、図4(B)は、この実施の形態の電気的特性測定用装置を構成するガス噴出ノズルの構造を概略的に示す斜視図である。
【0054】
以下、第1の実施の形態と相違する点につき説明し、第1の実施の形態と同様の点についてはその詳細な説明を省略する。
【0055】
この実施の形態の電気的特性測定用装置30であるプローバは、第1の実施の形態の装置と同様に不活性ガス噴出部31を具えている。そして、この装置30の構造は、第1の実施の形態と同様、表面に半導体素子19を載置させる測定台11であるプローバステージと、半導体素子19の測定端子に接触させる探針13であるプローブと、プローブ13の接触端13aとは反対側の端部13bを固定し、かつプローバステージ11の上側に半導体素子19を覆うように設けられている探針固定部材15であるプローブカードと、このプローブカード15を支持する支持部材17であるプローバヘッドとを具えている。そしてプローブカード15には、プローバステージ11上の半導体素子19の測定端子を含む測定領域が露出する穴15xが形成されている。また、ガス供給管31aと、内部が中空で円柱形状のガス噴出ノズル31bと、固定具31cとを具えたガス噴出部31がプローバヘッド17に設けられている。固定具31cによって、ガス供給管31aとガス噴出ノズル31bの一端面31bx側とが接合され、かつガス噴出ノズル31bから噴出されるガスが、ガス流路であるプローブカード15の穴15xに導入されるようにプローバヘッド17に固定されている(図4(A))。また、ガス噴出ノズル31bの他端面31byおよび側面31bzは網目構造を有している。そして、この網の目がガス噴出口33となっている(図4(B))。
【0056】
これにより、この実施の形態の装置30のガス噴出ノズル31bから噴出される不活性ガス25が、プローブカード15の穴15xからプローバステージ11側へ導入されることによって、プローブ13の、半導体素子19と接触している付近の空間領域を不活性ガス雰囲気にすることができる。また、ガス噴出口33はガス噴出ノズル31bの他端面31byおよび側面31bzに多数形成されているため、より広範囲の領域を不活性ガス雰囲気にすることができる。また、ガス噴出ノズル31bが網目構造であるために、測定を行っている間、半導体素子の測定端子とプローブとの接触点を囲む空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にするためのガス流量を、外気を巻き込むほどの勢いでガスを噴出して維持する必要はない。よって、ガスの噴出する勢いによって、水分や塵埃を含んだ外気が不活性ガス雰囲気中に巻き込まれるおそれを回避することができる。
【0057】
従って、測定雰囲気中にあるリーク電流の原因の水分や塵埃を減少させることができ、半導体素子の電気的特性の測定をより安定して行うことができる。
【0058】
また、この実施の形態のガス噴出ノズルは円柱形状であったが、形状はこれに限るものではない。例えば、ノズルの先端部分が半球のような形状を有していてこの表面に多数のガス噴出口が形成されているようなものでも良い。
【0059】
また、この実施の形態の探針固定部材も、中心部に穴15xが形成されたドーナツ型状の部材に限らず、図3に示されているような形状の探針固定部材16としても良い。
【0060】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態として、図5を参照して、ガス噴出ノズルと探針固定部材との穴との間のガス噴出領域であって、探針固定部材上に噴出されるガスの勢いを弱めるための緩衝用部材が設けられている例につき説明する。図5(A)は、この実施の形態の電気的特性測定用装置の主要な部分の構造を概略的に示す図であり、断面の切り口を示している。また、図5(B)は、緩衝用部材の概略的な斜視図である。
【0061】
以下、第1および第2の実施の形態と相違する点につき説明し、同様の点についてはその詳細な説明を省略する。
【0062】
この実施の形態の電気的特性測定用装置40であるプローバは、第1の実施の形態の装置と同様の不活性ガス噴出部21を具えている。そして、その装置40の構造は、第1の実施の形態と同様、表面に半導体素子19を載置させる測定台11であるプローバステージと、半導体素子19の測定端子に接触させる探針13であるプローブと、プローブ13の接触端13aとは反対側の端部13bを固定し、かつプローバステージ11の上側に半導体素子19を覆うように設けられている探針固定部材15であるプローブカードと、このプローブカード15を支持する支持部材17であるプローバヘッドとを具えている。そしてプローブカード15には、プローバステージ11上の半導体素子19の測定端子を含む測定領域が、上方から見える穴15xが形成されている。この穴15xは、ガス流路となる。また、ガス供給管21aと、内部が中空で円柱形状のガス噴出ノズル21bと、固定具21cとを具えたガス噴出部21がプローバヘッド17に設けられている。固定具21cによって、ガス供給管21aとガス噴出ノズル21bの一端面21bx側とが接合され、かつガス噴出ノズル21bから噴出されるガスがプローブカード15の穴15xに導入されるようにプローバヘッド17に固定されている。そして、他端面21byには、第1の実施の形態と同様にガス噴出口23が設けられている(図5(A))。
【0063】
また、この実施の形態においては、ガス噴出ノズル21bから噴出される不活性ガス25の勢いを弱めるための緩衝用部材41が設けてある。
【0064】
緩衝用部材41として、この実施の形態では、プローブカード15の穴15xの周囲を囲むような、両端(41aおよび41b)が開口している筒状の部材がプローブカード15上に設けられるのがよい。この筒状部材41の開口している一端41aが、プローブカード15に接している。また、開口している端部(41aおよび41b)の形状はこの例では、四角形である。ここでは、横幅が2cmで縦幅が2cmの板に、直径1mmの開口部43が50個程度、均等に形成されている板状部材45が4つ組み合わされて、四角い筒状部材41を構成している(図5(B))。筒状部材41を構成している板状部材45の材料は、例えばプラスチックとする。ガス噴出ノズル21bから不活性ガス25を噴出させると、この不活性ガス25がプローブカード15の穴15xに入る前に、この筒状部材41に一旦衝突する。これにより噴出する不活性ガス25の勢いを抑えることができる。そして、筒状部材41に形成されている複数の開口部43を通り、プローブカード15の穴15xに、不活性ガスが導入される。これにより、プローブ13の、半導体素子19と接触している付近の領域を不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0065】
この実施の形態の電気的特性測定用装置40を用いて、第1の実施の形態と同様にして駆動電圧が900V程度の半導体素子19の電気的特性を測定する。ガス噴出ノズル21bから噴出される不活性ガス25は、例えば窒素ガスとする。
【0066】
この結果、半導体素子19とプローブ13とが接触する接触点周辺の空間領域に窒素ガスによる測定雰囲気が形成される。測定を行っている間、この接触点周辺の空間領域が窒素ガスによる測定雰囲気となるように、ガス噴出ノズル21bから噴出する窒素ガスは、ある程度の流速で噴出されなければならない。ガスの流速が速すぎると水分や塵埃を含んだ外気が測定雰囲気中に巻き込まれるおそれがあるが、この実施の形態では、ガス噴出ノズル21bから噴出した窒素ガス25が、一旦緩衝用部材41に衝突し、散乱することによって噴出の勢いを抑えることができる。そして、緩衝用部材41には複数の開口部43が設けてあり、窒素ガス25はこの開口部43を通ってプローブカード15の穴15xの中へ導入される。これにより、半導体素子19とプローブ13とが接触する付近の領域を安定した窒素ガス雰囲気にすることができる。従って、半導体素子19と接触するプローブ13に高電圧を印加しても、リーク電流の発生を抑えることができる。このため、安定した測定が可能となる。
【0067】
また、この実施の形態の測定用装置40は、従来の装置にガス噴出部21と緩衝用部材41とを設置しただけなので、コンパクトである。また、この装置40であれば、半導体素子の測定端子とプローブ13との接触点周辺を囲む空間領域の雰囲気だけを不活性ガス雰囲気にすることができるため、それほど大量の不活性ガスを必要としない。よって、測定を安価に、しかもスピーディに行うことができる。
【0068】
また、この実施の形態において、緩衝用部材として開口している端面の形状が四角形の筒状部材が用いられているが、これに限らず、両端が開口している円筒形の部材でもよい。また、プローブカードの穴の上側を塞ぐことなく、ガス噴出ノズルと穴との間に、不活性ガスの勢いを弱め、かつプローブカードの穴の中へ不活性ガスを導入することのできる部材であれば、どのような形状を有していてもよい。例えば、複数の開口部を有する板状部材でもよい。例えば、この板状部材を、噴出する不活性ガスを遮蔽するような位置に設置する。これにより、噴出する不活性ガスは板状部材に衝突および散乱した後、開口部からプローブカードの穴の中へ導入する。よって、半導体素子の測定端子とプローブとの接触点周辺の空間領域を好ましい不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0069】
また、第1、第2および第3の実施の形態において、ガス噴出ノズルから噴出させる不活性ガスとして窒素ガスを用いているが、これに限らず、ArガスやCO2 ガス等のほかの不活性ガスを用いてもよいし、これらの混合ガスを用いてもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態において、プローブが2つの例を挙げたが、これに限らず、プローブは必要に応じた数設けることができる。
【0071】
また、これらの実施の形態において、駆動電圧が900Vの高電圧駆動MOSトランジスタの測定を行っているが、これに限らず、他の半導体素子のジャンクション耐圧や絶縁膜耐圧など、他の電気的特性の測定を行ってもよい。
【0072】
また、この発明の電気的特性測定用装置を用いて測定される半導体素子は、高電圧駆動の素子に限らず、駆動電圧が700V以下の素子においても同様の効果が得られる。
【0073】
【発明の効果】
上述した説明から明らかなように、この発明の電気的特性測定用装置によれば、半導体素子の測定端子と探針との接触点を少なくとも囲む空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にするための不活性ガス噴出部を具えている。
【0074】
これにより、接触点周辺の空間領域には不活性ガスによる測定雰囲気が形成されるために、測定雰囲気中の水分や塵埃が原因であるリーク電流の発生を抑制することができる。従って正確な測定を行うことができる。また、従来からある測定用装置に不活性ガス噴出部を取り付けるだけでよいため、よりコンパクトな装置の構造にすることができる。また、大量の不活性ガスを必要とはしないため、半導体素子の電気的特性の測定を、安価にしかもスピーディに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、第1の実施の形態の電気的特性測定用装置の主要な部分の構造を概略的に示す断面図であり、(B)は、ガス噴出ノズルの端面の構造を示す図である。
【図2】第1の実施の形態の電気的特性測定用装置を構成する探針固定部材の形状の説明に供する立体図である。
【図3】探針固定部材のひとつの適用例を示す概略的な斜視図である。
【図4】(A)は、第2の実施の形態の電気的特性測定用装置の部分的な構造を概略的に示す断面図であり、(B)は、ガス噴出ノズルの斜視図である。
【図5】(A)は、第3の実施の形態の電気的特性測定用装置の部分的な構造を概略的に示す断面図であり、(B)は、緩衝用部材の概略的な斜視図である。
【図6】従来の電気的特性測定用装置の部分的な構造を示す概略図である。
【符号の説明】
10,30,40,100:電気的特性測定用装置(プローバ)
11,110:測定台(プローバステージ)
13,130:探針(プローブ)
13a,130a:接触端
13b,130b:反対側の端部
15,16,150:探針固定部材(プローブカード)
15x:穴(ガス流路)
16a:第1部材
16b:第2部材
17,170:支持部材(プローバヘッド)
19,190:半導体素子(高電圧駆動MOSトランジスタ、測定試料)
21,31:不活性ガス噴出部
21a,31a:ガス供給管
21b,31b:ガス噴出ノズル
21bx,31bx:一端面
21by,31by:他端面
21c,31c:固定具
23,33:ガス噴出口
25:不活性ガス(窒素ガス)
31bz:側面
41:緩衝用部材(筒状部材)
41a:一端
41b:端部
43:開口部
45:板状部材
Claims (7)
- 半導体素子の測定端子に探針を接触させて該半導体素子の電気的特性を測定する電気的特性測定用装置において、
前記測定端子および前記探針間の接触点を少なくとも囲む空間領域の雰囲気を不活性ガス雰囲気にするための、不活性ガス噴出部を具え、
表面に前記半導体素子を載置させる測定台と、前記半導体素子の測定端子に接触させる探針と、該探針の接触端とは反対側の端部を固定し、かつ前記測定台の上側に設けられている探針固定部材と、該探針固定部材を支持する支持部材とを具え、
前記不活性ガス噴出部は、ガス供給管と、ガス噴出ノズルと、該不活性ガス噴出部を前記支持部材に固定する固定具とを具え、さらに
前記ガス噴出ノズルと前記接触点との間には、該ガス噴出ノズルからの前記不活性ガスを前記接触点を囲む空間領域へ送り込むガス流路を具え、
前記ガス噴出ノズルは、内部が中空の円柱または角柱の形状を有し、該ガス噴出ノズルの一端面側は前記固定具によって前記ガス供給管と連通するように前記支持部材に固定されていて、
前記ガス噴出ノズルの他端面および側面に複数のガス噴出口が設けられている
ことを特徴とする電気的特性測定用装置。 - 請求項1に記載の電気的特性測定用装置において、
前記ガス流路は、前記探針固定部材を前記支持部材側から前記測定台側へと貫通する穴を通っている
ことを特徴とする電気的特性測定用装置。 - 請求項1または2に記載の電気的特性測定用装置において、
前記ガス噴出ノズルの他端面にはガス噴出口が設けられている
ことを特徴とする電気的特性測定用装置。 - 請求項1または2に記載の電気的特性測定用装置において、
前記ガス噴出ノズルの他端面および側面は網目構造を有しており、該網目構造の網目がガス噴出口である
ことを特徴とする電気的特性測定用装置。 - 請求項2〜4のいずれか一項に記載の電気的特性測定用装置において、
前記ガス噴出ノズルと前記探針固定部材の穴との間のガス噴出領域であって、前記探針固定部材上に、噴出されるガスの勢いを弱めるための緩衝用部材が設けられている
ことを特徴とする電気的特性測定用装置。 - 半導体素子の測定端子に探針を接触させて、該半導体素子の電気的特性を測定するに当たり、
ガス噴出ノズルから不活性ガスを噴出させ、緩衝用部材によって探針固定部材上に噴出される該不活性ガスの勢いを噴出時の勢いよりも弱めて、前記測定端子および前記探針を該不活性ガス雰囲気に曝しながら前記測定を行う
ことを特徴とする電気的特性測定方法。 - 請求項6に記載の電気的特性測定方法において、
前記不活性ガスを、窒素ガス、二酸化炭素ガスおよび希ガスの不活性ガス群から選ばれる1種類のガスもしくは2種類以上の混合ガスとする
ことを特徴とする電気的特性測定方法。
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