JP3799645B2 - 多価フェノール系化合物のキノンジアジドスルホン酸エステルおよびその用途 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多価フェノール化合物のキノンジアジドスルホン酸エステル、およびそれのレジスト分野への適用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェノール性水酸基を有する化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化して、半導体微細加工用のレジスト組成物における感光剤として用いることは公知である。すなわち、キノンジアジド基を有する化合物とノボラック樹脂を含有する組成物を金属基板上に塗布し、これに300〜500nmの波長の光を照射すると、キノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じ、アルカリ不溶の状態からアルカリ可溶の状態になることを利用して、かかる組成物はポジ型レジストとして用いられる。このポジ型レジストは、ネガ型レジストに比べて解像力に優れるという特徴を有することから、半導体用の各種集積回路の製作に利用されている。
【0003】
そして、半導体産業における集積回路は近年、高集積化に伴う微細化が進み、今やサブミクロンのパターン形成が要求されるに至っている。そのなかでも、リソグラフィープロセスは、集積回路作製時の重要な地位を占めており、ポジ型レジストについても、一層優れた解像度、すなわち高いγ値が求められるようになっている。
【0004】
キノンジアジド化合物およびノボラック樹脂を含有するレジスト材料については、各成分の組合せについて従来から数多くの提案がなされてきている。例えば特開平 1-189644 号公報(=USP 5,153,096)には、フェノール性水酸基を少なくとも2個有するトリフェニルメタン系の化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化したものを、感光剤として用いることが記載されている。しかしながらこうした公知の感光剤を用いても、現在の超高集積回路作製のための超微細加工用、いわゆるサブミクロンリソグラフィー用のレジストとしては限界があった。そこで、感度、解像度、耐熱性等のレジスト性能を向上させるために、種々の研究が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、レジスト組成物における感光剤として用いることができ、それによって高性能なレジスト組成物を与えるキノンジアジドスルホン酸エステルを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、このキノンジアジドスルホン酸エステルを用いて、高い感度、高い解像力、優れた耐熱性、良好なプロファイル、良好なフォーカス許容性、少ない現像残渣など、レジスト諸性能のバランスがとれ、半導体微細加工用として好適なレジスト組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、特定構造を有する多価フェノール化合物をo−キノンジアジドスルホン酸エステル化したものが、ポジ型レジスト組成物の感光剤として用いた場合に優れた結果を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、下式(I)で示される化合物を提供するものである。
【0009】
【0010】
式中、Q1 、Q2 およびQ3 の一つはo−キノンジアジドスルホニルを表し、残りは互いに独立に、水素またはo−キノンジアジドスルホニルを表す。
【0011】
また本発明は、式(I)で示される化合物を有効成分とする感光剤を提供し、さらには、この感光剤およびアルカリ可溶性ノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト組成物をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
式(I)において、Q1 、Q2 およびQ3 で表されるo−キノンジアジドスルホニルは、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニルなどであることができ、それぞれ次式で示されるものである。
【0013】
【0014】
これらのなかでも、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニル、とりわけ、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルが一般的である。また式(I)のなかでも、Q1 、Q2 およびQ3 のすべてがo−キノンジアジドスルホニルである化合物は重要である。
【0015】
式(I)で示される化合物は、下式(II)で示される1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン(以下、「ヒドロキシ体(II)」ということがある)を、脱ハロゲン化水素剤の存在下でo−キノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させることにより、製造できる。
【0016】
【0017】
ヒドロキシ体(II)は、例えば、2,5−キシレノールをホルムアルデヒドでモノメチロール化して得られる4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールをレゾルシンと反応させることにより、 容易に高純度で製造することができる。2,5−キシレノールとホルムアルデヒドの反応にあたっては、2,5−キシレノールに対してホルムアルデヒドを0.9〜1.8モル倍程度用い、水溶媒中、2,5−キシレノールに対して0.8〜1.2モル倍の塩基触媒の存在下、比較的低温、例えば5〜15℃の温度で反応させることにより、モノメチロール体を選択的に製造することができる。
【0018】
4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールとレゾルシンとの反応においては、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールに対して、レゾルシンを1〜10のモル比で用いるのが好ましく、さらには1.5〜6、とりわけ3〜5のモル比で用いるのがより好ましい。この反応は、一般に酸触媒の存在下で行われる。酸触媒は、無機酸、有機酸のいずれでもよく、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、なかでもp−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。酸触媒は、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールに対し、通常0.1〜1モル倍、好ましくは0.2〜0.5モル倍の範囲で使用される。また、この反応は通常、溶媒中で行われ、反応溶媒としては水が好ましく用いられる。反応溶媒、特に水は、レゾルシンの量を基準に、一般的には1〜5重量倍の範囲で、好ましくは2〜5重量倍、さらに好ましくは2〜3重量倍の範囲で使用される。この反応は、一般に大気圧下、例えば10℃から沸点までの範囲の任意の温度で行うことができる。反応を実施するにあたっては、レゾルシンおよび酸触媒を含む水溶液に、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールを徐々に、または分割して加えていくのが好ましい。
【0019】
こうした反応により、ヒドロキシ体(II)が生成する。反応溶媒として水を用いた場合は、反応混合物に、水と分液する性質を有する有機溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルのような酢酸エステル類、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトン類などを加え、ヒドロキシ体(II)を有機層へ移行させて分液し、次いで晶析などの操作を施すことにより、ヒドロキシ体(II)を取り出すことができる。この際、有機層を水洗して、金属分を低減させておくのが好ましい。また晶析には、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素溶媒が好ましく用いられる。
【0020】
こうして得られるヒドロキシ体(II)をo−キノンジアジドスルホン酸エステル化して、式(I)の化合物へと導くことができる。エステル化にあたっては、1,2−キノンジアジド骨格を有する各種のスルホン酸誘導体を用いることができるが、1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライド、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホン酸ハライド、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸ハライドなどが好ましく用いられる。スルホン酸ハライドを構成するハロゲンは、例えば塩素や臭素などであることができるが、通常は塩素であるのが好ましい。エステル化剤としては、特に、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホン酸クロライドが好ましく用いられる。また、2種以上の1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドを併用することもできる。
【0021】
エステル化反応において、エステル化剤としての1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドは、ヒドロキシ体(II)に対し、通常1.2〜3.2のモル比で用いられる。特に本発明においては、このモル比を2.8〜3.2の範囲とし、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 のほぼすべてがo−キノンジアジドスルホニルとなった化合物にするのが好ましい。
【0022】
この反応は、通常、脱ハロゲン化水素剤の存在下で行われる。脱ハロゲン化水素剤としては、一般的に塩基性の化合物、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのような無機塩基、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンのようなアミン類が挙げられる。脱ハロゲン化水素剤は、1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドに対し、通常1.05〜1.5のモル比、好ましくは1.05〜1.2、さらに好ましくは1.1〜1.2のモル比で用いられる。
【0023】
エステル化反応は通常、溶媒中で行われる。反応溶媒としては、エーテル類、ラクトン類、脂肪族ケトン類などが挙げられ、 なかでも、ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アセトンおよび2−ヘプタノンから選ぶのが好ましい。これらをそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができるが、とりわけ1,4−ジオキサンが好ましい。反応溶媒は、ヒドロキシ体(II)とキノンジアジドスルホン酸ハライドの合計量を基準に、通常は2〜6重量倍の範囲で、好ましくは3〜5重量倍、さらに好ましくは4〜5重量倍の範囲で使用される。
【0024】
このエステル化反応は、常圧下、常温付近で十分進行し、一般には20〜30℃の範囲の温度が採用され、2〜10時間程度行われる。反応終了後は、酢酸のような酸で中和し、固形物を濾過したあと、濾液を薄い酸水溶液、例えば0.1〜2重量%程度の濃度の酢酸水溶液と混合すれば、目的物であるエステルが析出してくる。これを濾過、洗浄および乾燥することにより、エステルを取り出すことができる。このエステル化反応においては、用いる1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドのモル比によって、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 のいずれか一つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(モノエステル)、それらのいずれか二つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(ジエステル)、ならびにそれらのすべてがキノンジアジドスルホニルとなったもの(トリエステル)の混合物として得られることがあるが、この混合物は、通常そのまま感光剤として用いることができる。なかでも感光剤として重要なのは、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 がすべて1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルとなった、2′,4,4′−トリス(6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホニルオキシ)−2,5−ジメチルジフェニルメタンである。
【0025】
式(I)の化合物は、近紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザー等を含む)などの放射線に感応する感光剤として、有利に使用することができる。この感光剤は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂と組み合わせて、ポジ型レジスト組成物とした場合に、特に高い効果を発揮する。
【0026】
式(I)で示される化合物を感光剤として含有するポジ型レジスト組成物は、さらに別の感光剤として、芳香族ヒドロキシ化合物のo−キノンジアジドスルホン酸エステルを含んでもよい。特に、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 がすべてo−キノンジアジドスルホニルとなった化合物を用いる場合は、別の芳香族ポリヒドロキシ化合物の部分o−キノンジアジドスルホン酸エステルを併用するのが有利である。このような任意に用いられる別の感光剤は、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有する芳香族ヒドロキシ化合物をo−キノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させて得られるエステルであることができる。エステル化される芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノンのようなポリヒドロキシベンゾフェノン類、2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2′,3′,4′,7,8−ペンタヒドロキシフラバン、4−(1′,2′,3′,4′,4′a,9′a−ヘキサヒドロ−6′−ヒドロキシ−5′−メチルスピロ[シクロヘキサン−1,9′−キサンテン]−4′a−イル)−2−メチルレゾルシノール、 4−(1′,2′,3′,4′,4′a,9′a−ヘキサヒドロ−6′−ヒドロキシスピロ[シクロヘキサン−1,9′−キサンテン]−4′a−イル)レゾルシノールのようなポリヒドロキシフラバン類、その他、2〜6個のベンゼン環を脂肪族炭化水素系の連結基で結合し、フェノール性水酸基を分子内に少なくとも2個有する化合物などであることができる。
【0027】
さらに具体的な感光剤としては、例えば、特開平 2-32352号公報(=USP 5,124,228)、特開平 2-103543号公報 (=EP-A-363,978)、特開平 2-269351号公報(=USP 5,290,656)、特開平 3-185447 号公報(=USP 5,283,155)、特開平 4-50851号公報(=USP 5,188,920)、特開平 4-295472号公報(=EP-A-505,987) 、特開平 5-323597号公報(=EP-A-570,884) 、特開平 6-167805 号公報(=EP-A-573,056) などに記載されるものが挙げられる。
【0028】
式(I)で示される化合物とともに他の感光剤を用いる場合、両者の割合は、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜設定される。本発明においては、こうした他のキノンジアジドスルホン酸エステルを用いる場合はその量も含めて、感光剤は、レジスト組成物中の全固形分の量を基準に10〜50重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0029】
ポジ型レジスト組成物を構成するアルカリ可溶性ノボラック樹脂は、フェノール性水酸基を少なくとも1個有する化合物とアルデヒドとを、酸触媒の存在下に縮合させて得られるものであって、その種類は特に限定されず、レジスト分野で用いられる各種のものであることができる。ノボラック樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。また、ノボラック樹脂のもう一方の原料であるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサールのような脂肪族アルデヒド類および、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドのような芳香族アルデヒド類が挙げられる。特にホルムアルデヒドは、約37重量%の水溶液として工業的に量産されており、好都合である。
【0030】
こうしたフェノール系化合物の1種または2種以上と、アルデヒド類の1種または2種以上とを、酸触媒の存在下で縮合させることにより、ノボラック樹脂が得られる。酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸のような無機酸、シュウ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸、酢酸亜鉛のような二価金属塩などが挙げられる。縮合反応は常法に従って行うことができ、例えば60〜120℃の範囲の温度で2〜30時間程度行われる。また、反応はバルクで行っても、適当な溶媒中で行ってもよい。
【0031】
得られるノボラック樹脂は、レジストの現像残渣を少なくするなどの目的で、例えば分別などの操作を施して、 そのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(UV254nmの検出器を使用)によるパターンにおいて、ポリスチレン換算分子量で900以下の成分の面積比が、未反応のフェノール系化合物のパターン面積を除く全パターン面積に対して25%以下、さらには20%以下となるようにしておくのが好ましい。分別を行う場合は、縮合により得られたノボラック樹脂を、良溶媒、例えばメタノールやエタノールのようなアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、エチルセロソルブのようなエチレングリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテートのようなエチレングリコールエーテルエステル類、テトラヒドロフランのようなエーテル類などに溶解し、この溶液を水中に注いで高分子量成分を沈澱させる方法、あるいはこの溶液を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのような貧溶媒と混合して分液する方法などが採用できる。
【0032】
こうした分別操作を施して高分子量成分を多くしたノボラック樹脂に、分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を加えることも有効である。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2個有する多価フェノール化合物が好ましく、例えば特開平 2-275955 号公報(=EP-A-358,871) や特開平 2-2560 号公報に記載のものなどが挙げられる。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を添加剤として用いる場合は、レジスト組成物中の全固形分の量を基準に、3〜40重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0033】
レジスト液の調製は、式(I)で示される化合物および任意に使用される他のo−キノンジアジドスルホン酸エステルからなる感光剤、アルカリ可溶性ノボラック樹脂、任意に添加剤として使用される分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物などの固形分を、溶剤に混合溶解することにより行われる。ここで用いる溶剤は、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発したあとに均一で平滑な塗膜を与えるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンのようなケトン類、酢酸n−アミル、乳酸エチル、ピルビン酸エチルのようなエステル類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類、その他、特開平 2-220056 号公報に記載のもの、特開平 4-362645 号公報に記載のもの、特開平 4-367863 号公報に記載のものなどが挙げられる。溶剤としては、それぞれの化合物を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0034】
こうして得られるレジスト組成物は、必要に応じてさらに、ノボラック樹脂以外の樹脂や染料などを、添加物として少量含有することもできる。
【0035】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0036】
参考例1: 2,5−キシレノールのモノメチロール化
5リットルの四つ口フラスコに、2,5−キシレノール610.9g、水酸化ナトリウム200gおよび水2500gを仕込み、12℃で攪拌しながら、37%ホルマリン565gを1時間30分かけて滴下し、引き続き同温度で4時間反応させた。反応終了後、28%アンモニア水89gを仕込み、30分攪拌してから酢酸400gを仕込み、濾過した。得られた濾過物を水洗したあと乾燥することにより、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノール609gを得た。
【0037】
参考例2: ヒドロキシ体(II)の合成
100mlの四つ口フラスコに、レゾルシン22.02g、p−トルエンスルホン酸1.90gおよび水44.04gを仕込み、そこへ室温で、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノール7.61gを30分で分割投入し、室温でさらに3時間反応させた。その後、反応マスに酢酸エチル50gおよびトルエン50gを投入して分液し、有機層を水洗してから濃縮し、析出した結晶を濾過した。濾過物をトルエンでリンスし、次に一昼夜減圧乾燥して、1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン〔ヒドロキシ体(II):液体クロマトグラフィーによる純度99%〕を7.64g得た。
【0038】
質量分析値: MS 244
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
2.00 (s, 3H); 2.07 (s, 3H); 3.54 (s, 2H);
6.08 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H);
6.28 (d, J = 2.1 Hz, 1H);
6.49 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.56 (s, 1H);
6.69 (s, 1H); 8.80 (s, 1H); 8.91 (s, 1H);
9.12 (s, 1H).
【0039】
実施例1: キノンジアジドスルホン酸エステル化
50mlの四つ口フラスコに、1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン1.22g、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド4.03g(モル比1:3)、および1,4−ジオキサン26.26gを仕込んで完溶させ、そこへ20〜30℃で、トリエチルアミン1.82gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で1時間攪拌した。次いで酢酸0.45gを添加し、同温度で1時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾過残渣を1,4−ジオキサン4.03gで洗浄した。濾液および洗液を、酢酸0.4gおよびイオン交換水40gの混合液に注いで1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、得られたウェットケーキをイオン交換水50gで攪拌洗浄した。次いで濾過し、得られたケーキを40℃で乾燥して、4.65gの感光剤Aを得た。
【0040】
質量分析値: MS 940
【0041】
実施例2: レジストの調製および評価
m−クレゾール/p−クレゾール=55/45(モル比)の混合物とホルムアルデヒドとを縮合させ、さらに分別して得られた、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が 9,000、ポリスチレン換算分子量で900以下の範囲の面積比が全パターン面積に対して14%であるノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を固形分換算で15部、 添加剤として4,4′−(2−ヒドロキシベンジリデン)ジ−2,6−キシレノールを3.9部、実施例1で得られた感光剤Aを1部、別の感光剤として4,4′−メチレンビス〔2−(4−ヒドロキシベンジル)−3,6−ジメチルフェノール〕と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとのモル比1:2の縮合物を5部、および2−ヘプタノンを用い、2−ヘプタノンが合計で50部となるように混合し、溶解した。 この液を孔径0.2μm のフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0042】
常法により洗浄したシリコンウェハーに、回転塗布機を用いて上記レジスト液を乾燥後の膜厚が1.1μm となるように塗布し、ホットプレートにて90℃で1分間ベークした。次いで、365nm(i線)の露光波長を有する縮小投影露光機〔(株)ニコン製品、NSR 1755i 7A、NA=0.5〕を用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。次にこのウェハーを、ホットプレートにて110℃で1分間ベークした。これを現像液“SOPD"〔住友化学工業(株)製品〕で1分間現像して、ポジ型パターンを得た。このポジ型パターンにつき、以下のようにして評価し、それぞれの結果を得た。
【0043】
実効感度: 0.50μm のラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)を測定したところ、290msecであった。
【0044】
解像度: ラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)で、膜減りなく分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、0.35μm であった。
【0045】
プロファイル: 実効感度における0.45μm ラインアンドスペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターンが垂直に切れていた。
【0046】
フォーカス(焦点深度): 実効感度において0.40μm ラインアンドスペースパターンが膜減りなく分離する焦点の幅を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、1.5μm であった。
【0047】
スカム: 走査型電子顕微鏡でスカム(現像残渣)の有無を観察したところ、スカムは認められなかった。
【0048】
γ値: 露光量の対数に対する規格化膜厚(=残膜厚/初期膜厚)をプロットし、その傾きθを求め、tan θをγ値として、このγ値は7.98であった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の式(I)で示される化合物は、ポジ型レジストなどの感光剤として有用である。そして、この化合物を含有するポジ型レジスト組成物は、感度、解像度、γ値、プロファイルなどの諸性能のバランスに優れ、また現像時のスカムがないなど、半導体の微細加工に適したものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、多価フェノール化合物のキノンジアジドスルホン酸エステル、およびそれのレジスト分野への適用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェノール性水酸基を有する化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化して、半導体微細加工用のレジスト組成物における感光剤として用いることは公知である。すなわち、キノンジアジド基を有する化合物とノボラック樹脂を含有する組成物を金属基板上に塗布し、これに300〜500nmの波長の光を照射すると、キノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じ、アルカリ不溶の状態からアルカリ可溶の状態になることを利用して、かかる組成物はポジ型レジストとして用いられる。このポジ型レジストは、ネガ型レジストに比べて解像力に優れるという特徴を有することから、半導体用の各種集積回路の製作に利用されている。
【0003】
そして、半導体産業における集積回路は近年、高集積化に伴う微細化が進み、今やサブミクロンのパターン形成が要求されるに至っている。そのなかでも、リソグラフィープロセスは、集積回路作製時の重要な地位を占めており、ポジ型レジストについても、一層優れた解像度、すなわち高いγ値が求められるようになっている。
【0004】
キノンジアジド化合物およびノボラック樹脂を含有するレジスト材料については、各成分の組合せについて従来から数多くの提案がなされてきている。例えば特開平 1-189644 号公報(=USP 5,153,096)には、フェノール性水酸基を少なくとも2個有するトリフェニルメタン系の化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化したものを、感光剤として用いることが記載されている。しかしながらこうした公知の感光剤を用いても、現在の超高集積回路作製のための超微細加工用、いわゆるサブミクロンリソグラフィー用のレジストとしては限界があった。そこで、感度、解像度、耐熱性等のレジスト性能を向上させるために、種々の研究が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的の一つは、レジスト組成物における感光剤として用いることができ、それによって高性能なレジスト組成物を与えるキノンジアジドスルホン酸エステルを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、このキノンジアジドスルホン酸エステルを用いて、高い感度、高い解像力、優れた耐熱性、良好なプロファイル、良好なフォーカス許容性、少ない現像残渣など、レジスト諸性能のバランスがとれ、半導体微細加工用として好適なレジスト組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、特定構造を有する多価フェノール化合物をo−キノンジアジドスルホン酸エステル化したものが、ポジ型レジスト組成物の感光剤として用いた場合に優れた結果を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち本発明は、下式(I)で示される化合物を提供するものである。
【0009】
【0010】
式中、Q1 、Q2 およびQ3 の一つはo−キノンジアジドスルホニルを表し、残りは互いに独立に、水素またはo−キノンジアジドスルホニルを表す。
【0011】
また本発明は、式(I)で示される化合物を有効成分とする感光剤を提供し、さらには、この感光剤およびアルカリ可溶性ノボラック樹脂を含有するポジ型レジスト組成物をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
式(I)において、Q1 、Q2 およびQ3 で表されるo−キノンジアジドスルホニルは、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニル、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニル、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホニルなどであることができ、それぞれ次式で示されるものである。
【0013】
【0014】
これらのなかでも、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニル、とりわけ、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルが一般的である。また式(I)のなかでも、Q1 、Q2 およびQ3 のすべてがo−キノンジアジドスルホニルである化合物は重要である。
【0015】
式(I)で示される化合物は、下式(II)で示される1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン(以下、「ヒドロキシ体(II)」ということがある)を、脱ハロゲン化水素剤の存在下でo−キノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させることにより、製造できる。
【0016】
【0017】
ヒドロキシ体(II)は、例えば、2,5−キシレノールをホルムアルデヒドでモノメチロール化して得られる4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールをレゾルシンと反応させることにより、 容易に高純度で製造することができる。2,5−キシレノールとホルムアルデヒドの反応にあたっては、2,5−キシレノールに対してホルムアルデヒドを0.9〜1.8モル倍程度用い、水溶媒中、2,5−キシレノールに対して0.8〜1.2モル倍の塩基触媒の存在下、比較的低温、例えば5〜15℃の温度で反応させることにより、モノメチロール体を選択的に製造することができる。
【0018】
4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールとレゾルシンとの反応においては、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールに対して、レゾルシンを1〜10のモル比で用いるのが好ましく、さらには1.5〜6、とりわけ3〜5のモル比で用いるのがより好ましい。この反応は、一般に酸触媒の存在下で行われる。酸触媒は、無機酸、有機酸のいずれでもよく、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられるが、なかでもp−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。酸触媒は、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールに対し、通常0.1〜1モル倍、好ましくは0.2〜0.5モル倍の範囲で使用される。また、この反応は通常、溶媒中で行われ、反応溶媒としては水が好ましく用いられる。反応溶媒、特に水は、レゾルシンの量を基準に、一般的には1〜5重量倍の範囲で、好ましくは2〜5重量倍、さらに好ましくは2〜3重量倍の範囲で使用される。この反応は、一般に大気圧下、例えば10℃から沸点までの範囲の任意の温度で行うことができる。反応を実施するにあたっては、レゾルシンおよび酸触媒を含む水溶液に、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノールを徐々に、または分割して加えていくのが好ましい。
【0019】
こうした反応により、ヒドロキシ体(II)が生成する。反応溶媒として水を用いた場合は、反応混合物に、水と分液する性質を有する有機溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルのような酢酸エステル類、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトン類などを加え、ヒドロキシ体(II)を有機層へ移行させて分液し、次いで晶析などの操作を施すことにより、ヒドロキシ体(II)を取り出すことができる。この際、有機層を水洗して、金属分を低減させておくのが好ましい。また晶析には、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素溶媒が好ましく用いられる。
【0020】
こうして得られるヒドロキシ体(II)をo−キノンジアジドスルホン酸エステル化して、式(I)の化合物へと導くことができる。エステル化にあたっては、1,2−キノンジアジド骨格を有する各種のスルホン酸誘導体を用いることができるが、1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライド、例えば、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホン酸ハライド、1,2−ベンゾキノンジアジド−4−スルホン酸ハライドなどが好ましく用いられる。スルホン酸ハライドを構成するハロゲンは、例えば塩素や臭素などであることができるが、通常は塩素であるのが好ましい。エステル化剤としては、特に、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホン酸クロライドが好ましく用いられる。また、2種以上の1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドを併用することもできる。
【0021】
エステル化反応において、エステル化剤としての1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドは、ヒドロキシ体(II)に対し、通常1.2〜3.2のモル比で用いられる。特に本発明においては、このモル比を2.8〜3.2の範囲とし、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 のほぼすべてがo−キノンジアジドスルホニルとなった化合物にするのが好ましい。
【0022】
この反応は、通常、脱ハロゲン化水素剤の存在下で行われる。脱ハロゲン化水素剤としては、一般的に塩基性の化合物、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのような無機塩基、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンのようなアミン類が挙げられる。脱ハロゲン化水素剤は、1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドに対し、通常1.05〜1.5のモル比、好ましくは1.05〜1.2、さらに好ましくは1.1〜1.2のモル比で用いられる。
【0023】
エステル化反応は通常、溶媒中で行われる。反応溶媒としては、エーテル類、ラクトン類、脂肪族ケトン類などが挙げられ、 なかでも、ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アセトンおよび2−ヘプタノンから選ぶのが好ましい。これらをそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができるが、とりわけ1,4−ジオキサンが好ましい。反応溶媒は、ヒドロキシ体(II)とキノンジアジドスルホン酸ハライドの合計量を基準に、通常は2〜6重量倍の範囲で、好ましくは3〜5重量倍、さらに好ましくは4〜5重量倍の範囲で使用される。
【0024】
このエステル化反応は、常圧下、常温付近で十分進行し、一般には20〜30℃の範囲の温度が採用され、2〜10時間程度行われる。反応終了後は、酢酸のような酸で中和し、固形物を濾過したあと、濾液を薄い酸水溶液、例えば0.1〜2重量%程度の濃度の酢酸水溶液と混合すれば、目的物であるエステルが析出してくる。これを濾過、洗浄および乾燥することにより、エステルを取り出すことができる。このエステル化反応においては、用いる1,2−キノンジアジドスルホン酸ハライドのモル比によって、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 のいずれか一つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(モノエステル)、それらのいずれか二つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(ジエステル)、ならびにそれらのすべてがキノンジアジドスルホニルとなったもの(トリエステル)の混合物として得られることがあるが、この混合物は、通常そのまま感光剤として用いることができる。なかでも感光剤として重要なのは、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 がすべて1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルとなった、2′,4,4′−トリス(6−ジアゾ−5,6−ジヒドロ−5−オキソ−1−ナフタレンスルホニルオキシ)−2,5−ジメチルジフェニルメタンである。
【0025】
式(I)の化合物は、近紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザー等を含む)などの放射線に感応する感光剤として、有利に使用することができる。この感光剤は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂と組み合わせて、ポジ型レジスト組成物とした場合に、特に高い効果を発揮する。
【0026】
式(I)で示される化合物を感光剤として含有するポジ型レジスト組成物は、さらに別の感光剤として、芳香族ヒドロキシ化合物のo−キノンジアジドスルホン酸エステルを含んでもよい。特に、式(I)中のQ1 、Q2 およびQ3 がすべてo−キノンジアジドスルホニルとなった化合物を用いる場合は、別の芳香族ポリヒドロキシ化合物の部分o−キノンジアジドスルホン酸エステルを併用するのが有利である。このような任意に用いられる別の感光剤は、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有する芳香族ヒドロキシ化合物をo−キノンジアジドスルホン酸ハライドと反応させて得られるエステルであることができる。エステル化される芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ペンタヒドロキシベンゾフェノンのようなポリヒドロキシベンゾフェノン類、2,4,4−トリメチル−2′,4′,7−トリヒドロキシフラバン、2,4,4−トリメチル−2′,3′,4′,7,8−ペンタヒドロキシフラバン、4−(1′,2′,3′,4′,4′a,9′a−ヘキサヒドロ−6′−ヒドロキシ−5′−メチルスピロ[シクロヘキサン−1,9′−キサンテン]−4′a−イル)−2−メチルレゾルシノール、 4−(1′,2′,3′,4′,4′a,9′a−ヘキサヒドロ−6′−ヒドロキシスピロ[シクロヘキサン−1,9′−キサンテン]−4′a−イル)レゾルシノールのようなポリヒドロキシフラバン類、その他、2〜6個のベンゼン環を脂肪族炭化水素系の連結基で結合し、フェノール性水酸基を分子内に少なくとも2個有する化合物などであることができる。
【0027】
さらに具体的な感光剤としては、例えば、特開平 2-32352号公報(=USP 5,124,228)、特開平 2-103543号公報 (=EP-A-363,978)、特開平 2-269351号公報(=USP 5,290,656)、特開平 3-185447 号公報(=USP 5,283,155)、特開平 4-50851号公報(=USP 5,188,920)、特開平 4-295472号公報(=EP-A-505,987) 、特開平 5-323597号公報(=EP-A-570,884) 、特開平 6-167805 号公報(=EP-A-573,056) などに記載されるものが挙げられる。
【0028】
式(I)で示される化合物とともに他の感光剤を用いる場合、両者の割合は、本発明の目的を阻害しない範囲で適宜設定される。本発明においては、こうした他のキノンジアジドスルホン酸エステルを用いる場合はその量も含めて、感光剤は、レジスト組成物中の全固形分の量を基準に10〜50重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0029】
ポジ型レジスト組成物を構成するアルカリ可溶性ノボラック樹脂は、フェノール性水酸基を少なくとも1個有する化合物とアルデヒドとを、酸触媒の存在下に縮合させて得られるものであって、その種類は特に限定されず、レジスト分野で用いられる各種のものであることができる。ノボラック樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。また、ノボラック樹脂のもう一方の原料であるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサールのような脂肪族アルデヒド類および、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドのような芳香族アルデヒド類が挙げられる。特にホルムアルデヒドは、約37重量%の水溶液として工業的に量産されており、好都合である。
【0030】
こうしたフェノール系化合物の1種または2種以上と、アルデヒド類の1種または2種以上とを、酸触媒の存在下で縮合させることにより、ノボラック樹脂が得られる。酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸のような無機酸、シュウ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸のような有機酸、酢酸亜鉛のような二価金属塩などが挙げられる。縮合反応は常法に従って行うことができ、例えば60〜120℃の範囲の温度で2〜30時間程度行われる。また、反応はバルクで行っても、適当な溶媒中で行ってもよい。
【0031】
得られるノボラック樹脂は、レジストの現像残渣を少なくするなどの目的で、例えば分別などの操作を施して、 そのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(UV254nmの検出器を使用)によるパターンにおいて、ポリスチレン換算分子量で900以下の成分の面積比が、未反応のフェノール系化合物のパターン面積を除く全パターン面積に対して25%以下、さらには20%以下となるようにしておくのが好ましい。分別を行う場合は、縮合により得られたノボラック樹脂を、良溶媒、例えばメタノールやエタノールのようなアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、エチルセロソルブのようなエチレングリコールエーテル類、エチルセロソルブアセテートのようなエチレングリコールエーテルエステル類、テトラヒドロフランのようなエーテル類などに溶解し、この溶液を水中に注いで高分子量成分を沈澱させる方法、あるいはこの溶液を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのような貧溶媒と混合して分液する方法などが採用できる。
【0032】
こうした分別操作を施して高分子量成分を多くしたノボラック樹脂に、分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を加えることも有効である。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物としては、分子内にフェノール性水酸基を少なくとも2個有する多価フェノール化合物が好ましく、例えば特開平 2-275955 号公報(=EP-A-358,871) や特開平 2-2560 号公報に記載のものなどが挙げられる。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を添加剤として用いる場合は、レジスト組成物中の全固形分の量を基準に、3〜40重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0033】
レジスト液の調製は、式(I)で示される化合物および任意に使用される他のo−キノンジアジドスルホン酸エステルからなる感光剤、アルカリ可溶性ノボラック樹脂、任意に添加剤として使用される分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物などの固形分を、溶剤に混合溶解することにより行われる。ここで用いる溶剤は、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発したあとに均一で平滑な塗膜を与えるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、シクロヘキサノン、2−ヘプタノンのようなケトン類、酢酸n−アミル、乳酸エチル、ピルビン酸エチルのようなエステル類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類、その他、特開平 2-220056 号公報に記載のもの、特開平 4-362645 号公報に記載のもの、特開平 4-367863 号公報に記載のものなどが挙げられる。溶剤としては、それぞれの化合物を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0034】
こうして得られるレジスト組成物は、必要に応じてさらに、ノボラック樹脂以外の樹脂や染料などを、添加物として少量含有することもできる。
【0035】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0036】
参考例1: 2,5−キシレノールのモノメチロール化
5リットルの四つ口フラスコに、2,5−キシレノール610.9g、水酸化ナトリウム200gおよび水2500gを仕込み、12℃で攪拌しながら、37%ホルマリン565gを1時間30分かけて滴下し、引き続き同温度で4時間反応させた。反応終了後、28%アンモニア水89gを仕込み、30分攪拌してから酢酸400gを仕込み、濾過した。得られた濾過物を水洗したあと乾燥することにより、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノール609gを得た。
【0037】
参考例2: ヒドロキシ体(II)の合成
100mlの四つ口フラスコに、レゾルシン22.02g、p−トルエンスルホン酸1.90gおよび水44.04gを仕込み、そこへ室温で、4−ヒドロキシメチル−2,5−キシレノール7.61gを30分で分割投入し、室温でさらに3時間反応させた。その後、反応マスに酢酸エチル50gおよびトルエン50gを投入して分液し、有機層を水洗してから濃縮し、析出した結晶を濾過した。濾過物をトルエンでリンスし、次に一昼夜減圧乾燥して、1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン〔ヒドロキシ体(II):液体クロマトグラフィーによる純度99%〕を7.64g得た。
【0038】
質量分析値: MS 244
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
2.00 (s, 3H); 2.07 (s, 3H); 3.54 (s, 2H);
6.08 (dd, J = 8.3, 2.1 Hz, 1H);
6.28 (d, J = 2.1 Hz, 1H);
6.49 (d, J = 8.3 Hz, 1H); 6.56 (s, 1H);
6.69 (s, 1H); 8.80 (s, 1H); 8.91 (s, 1H);
9.12 (s, 1H).
【0039】
実施例1: キノンジアジドスルホン酸エステル化
50mlの四つ口フラスコに、1,3−ジヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼン1.22g、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライド4.03g(モル比1:3)、および1,4−ジオキサン26.26gを仕込んで完溶させ、そこへ20〜30℃で、トリエチルアミン1.82gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、30℃で1時間攪拌した。次いで酢酸0.45gを添加し、同温度で1時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾過残渣を1,4−ジオキサン4.03gで洗浄した。濾液および洗液を、酢酸0.4gおよびイオン交換水40gの混合液に注いで1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、得られたウェットケーキをイオン交換水50gで攪拌洗浄した。次いで濾過し、得られたケーキを40℃で乾燥して、4.65gの感光剤Aを得た。
【0040】
質量分析値: MS 940
【0041】
実施例2: レジストの調製および評価
m−クレゾール/p−クレゾール=55/45(モル比)の混合物とホルムアルデヒドとを縮合させ、さらに分別して得られた、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が 9,000、ポリスチレン換算分子量で900以下の範囲の面積比が全パターン面積に対して14%であるノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を固形分換算で15部、 添加剤として4,4′−(2−ヒドロキシベンジリデン)ジ−2,6−キシレノールを3.9部、実施例1で得られた感光剤Aを1部、別の感光剤として4,4′−メチレンビス〔2−(4−ヒドロキシベンジル)−3,6−ジメチルフェノール〕と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとのモル比1:2の縮合物を5部、および2−ヘプタノンを用い、2−ヘプタノンが合計で50部となるように混合し、溶解した。 この液を孔径0.2μm のフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0042】
常法により洗浄したシリコンウェハーに、回転塗布機を用いて上記レジスト液を乾燥後の膜厚が1.1μm となるように塗布し、ホットプレートにて90℃で1分間ベークした。次いで、365nm(i線)の露光波長を有する縮小投影露光機〔(株)ニコン製品、NSR 1755i 7A、NA=0.5〕を用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。次にこのウェハーを、ホットプレートにて110℃で1分間ベークした。これを現像液“SOPD"〔住友化学工業(株)製品〕で1分間現像して、ポジ型パターンを得た。このポジ型パターンにつき、以下のようにして評価し、それぞれの結果を得た。
【0043】
実効感度: 0.50μm のラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)を測定したところ、290msecであった。
【0044】
解像度: ラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)で、膜減りなく分離するラインアンドスペースパターンの最小寸法を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、0.35μm であった。
【0045】
プロファイル: 実効感度における0.45μm ラインアンドスペースパターンの断面形状を、走査型電子顕微鏡で観察したところ、パターンが垂直に切れていた。
【0046】
フォーカス(焦点深度): 実効感度において0.40μm ラインアンドスペースパターンが膜減りなく分離する焦点の幅を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、1.5μm であった。
【0047】
スカム: 走査型電子顕微鏡でスカム(現像残渣)の有無を観察したところ、スカムは認められなかった。
【0048】
γ値: 露光量の対数に対する規格化膜厚(=残膜厚/初期膜厚)をプロットし、その傾きθを求め、tan θをγ値として、このγ値は7.98であった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の式(I)で示される化合物は、ポジ型レジストなどの感光剤として有用である。そして、この化合物を含有するポジ型レジスト組成物は、感度、解像度、γ値、プロファイルなどの諸性能のバランスに優れ、また現像時のスカムがないなど、半導体の微細加工に適したものである。
Claims (6)
- Q1 、Q2 およびQ3 がすべてo−キノンジアジドスルホニルである請求項1記載の化合物。
- o−キノンジアジドスルホニルが1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルである請求項1または2記載の化合物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物を有効成分とする感光剤。
- 請求項4記載の感光剤およびアルカリ可溶性ノボラック樹脂を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
- さらに、分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を含有する請求項5記載の組成物。
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JP2004361554A (ja) * | 2003-06-03 | 2004-12-24 | Tokyo Ohka Kogyo Co Ltd | 1つの基板上に集積回路と液晶ディスプレイ部分が形成された基板製造用ポジ型ホトレジスト組成物およびレジストパターンの形成方法 |
PL3542780T3 (pl) * | 2008-07-21 | 2022-05-02 | Unigen, Inc. | Szereg związków wybielających (rozjaśniających) |
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1996
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