JP3834852B2 - ペンタフェノール系化合物およびその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なペンタフェノール系化合物およびそれの感光剤分野への適用に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェノール性水酸基を有する化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化して、半導体微細加工用の感光性樹脂組成物における感光剤として用いることは公知である。すなわち、キノンジアジド基を有する化合物とノボラック樹脂を含む組成物を金属基体上に塗布し、これに300〜500nmの光を照射すると、キノンジアジド基が分解してカルボキシル基を生じ、アルカリ不溶の状態からアルカリ可溶の状態になることを利用して、かかる組成物はポジ型レジストとして用いられる。こうしたポジ型レジストは、ネガ型レジストに比べて解像力に優れるという特徴を有することから、半導体用の各種集積回路の製作に利用されている。
【0003】
そして、半導体産業における集積回路は近年、高集積化に伴い、微細化の一途をたどっており、今やサブミクロンのパターン形成が要求されるに至っている。そのなかでも、リソグラフィープロセスは、集積回路製造時の重要な地位を占めており、ポジ型レジストについても、一層優れた解像度(高いγ値)が求められるようになっている。
【0004】
キノンジアジド化合物およびノボラック樹脂を含有するレジスト材料については、各成分の組合せについて従来から数多くの提案がなされてきている。例えば特開平 1-189644 号公報(=USP 5,153,096)には、フェノール性水酸基を少なくとも2個有するトリフェニルメタン系の化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化したものを、感光剤として用いることが記載されている。しかしながらこうした公知の感光剤を用いても、現在の超高集積回路作製のための超微細加工用、いわゆるサブミクロンリソグラフィー用のレジストとしては限界があった。そこで、感度、解像度、耐熱性等のレジスト性能を向上させるための種々の研究が行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、感光性樹脂組成物の感光剤成分となりうる、あるいはその原料となりうる新規なフェノール系化合物を提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、かかる化合物を用いて、高い感度、高い解像力、良好なプロファイル、良好なフォーカス許容性、少ない現像残渣など、レジスト諸性能のバランスがとれた感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究を続けた結果、フェノール性水酸基を5個有する特定構造のフェノール系化合物を見出し、そしてこの化合物をキノンジアジドスルホン酸エステル化したものを感光剤として用いることにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
したがって本発明は、次式(I)で示されるペンタフェノール系化合物を提供するものである。
【0009】
【0010】
式中、R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 は互いに独立に、水素または1,2−ナフトキノンジアジド−4−もしくは−5−スルホニルを表す。ここでいう1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルとは、次のいずれかの式で示される基を意味する。
【0011】
【0012】
2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとパラクレゾールを反応させることにより、式(I)においてR1 、R2 、R3 、R4 およびR5 がすべて水素である化合物、すなわち、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを製造することができる。さらに、この2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルハライドと反応させることにより、式(I)で示され、R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 のうちの少なくとも一つが1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルとなった化合物を製造することができる。
【0013】
本発明はまた、式(I)において、R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 の一つが1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルであり、残りが互いに独立に、水素または1,2−ナフトキノンジアジド−4−もしくは−5−スルホニルである化合物を有効成分とする感光剤をも提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
式(I)において、 R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 のうち少なくとも一つが1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルである化合物は、紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザーなどを含む)のような放射線に感応する感光剤として有用であり、アルカリ可溶性ノボラック樹脂とともに、かかる感光剤を含有する感光性樹脂組成物とすることができる。 また、R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 がすべて水素である化合物は、かかる感光剤の前駆体として有用である。
【0015】
R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 がすべて水素である化合物、 すなわち、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールは、例えば、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとパラクレゾールを反応させることにより、製造することができる。この反応の原料となる2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールは、例えば、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとホルムアルデヒドを、アルカリ触媒の存在下で反応させることにより、製造できる。 また、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールは、パラクレゾールをホルムアルデヒドでジメチロール化して2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メチルフェノールとし、これを2,5−キシレノールと縮合させることにより、製造できる。
【0016】
2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールとパラクレゾールの反応において、パラクレゾールは、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対し、一般的には2〜50のモル比、好ましくは4〜20、さらに好ましくは8〜20のモル比で用いられる。 この際、酸触媒を存在させるのが好ましい。酸触媒は、塩酸や硫酸のような無機酸、蟻酸や酢酸、プロピオン酸、パラトルエンスルホン酸のような有機酸のいずれでもよいが、なかでも、塩酸や硫酸のような鉱酸またはパラトルエンスルホン酸が好ましく、とりわけパラトルエンスルホン酸が好ましく用いられる。酸触媒は、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールに対し、通常1当量以下、好ましくは0.1〜0.5当量の範囲で用いられる。
【0017】
この反応は溶媒中で行うのが好ましく、この場合の反応溶媒は、芳香族溶媒、それも芳香族炭化水素溶媒であるのが好ましい。芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、なかでもトルエンが好ましく用いられる。反応溶媒、例えば芳香族溶媒は、パラクレゾールの量を基準に、一般的には0.5〜5重量倍の範囲で、好ましくは1〜3重量倍、さらに好ましくは1〜2重量倍の範囲で使用される。
【0018】
反応は通常、10℃から沸点までの範囲、好ましくは15〜60℃の範囲の温度で、2〜3時間程度行われる。この反応は、通常大気圧下で進行する。
【0019】
芳香族溶媒中、室温付近で反応を行った場合は、反応の進行とともに、またそれより高い温度で反応を行った場合は、反応終了後室温付近まで冷却することにより、目的物である2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールの結晶が析出してくる。この結晶を取り出すことにより、粗生成物が得られ、その後任意の精製手段を施すことができる。例えば、この化合物は常温で芳香族溶媒への溶解度が小さいので、芳香族溶媒からの晶析を行うことにより、あるいは必要によりそれを繰り返すことにより、精製することができる。この際に用いる晶析溶媒は、反応に用いたものと同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
また、この化合物を、後述するようにキノンジアジドスルホン酸エステル化して、半導体製造用の感光性樹脂組成物における感光剤とする場合は、水への溶解度が9g/100g以下である溶媒に上記粗生成物を溶解したあと、水洗分液することにより、金属分を低減させておくのが好ましい。ここで、水への溶解度が9g/100g以下とは、20℃の水100gに溶ける最大量が9g以下であることを意味する。またここで用いる溶媒は、20℃において、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールの溶解度が1g/100g以上であるのが好ましい。かかる溶媒としては、酢酸エチルや酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルのような酢酸エステル類、メチルイソブチルケトンや2−ヘプタノンのようなケトン類などが挙げられ、なかでも酢酸エチルが好ましく用いられる。
【0021】
こうして金属の低減化を図った2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを含む溶液は、さらに芳香族溶媒を加えて、目的物を晶析させることができる。ここで用いる芳香族溶媒は、反応に用いたものと同じであっても異なっていてもよいが、好ましくはトルエンが用いられる。
【0022】
かくして得られる2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールは、例えばキノンジアジドスルホン酸エステル化して、感光剤とすることができる。エステル化にあたっては、1,2−キノンジアジド骨格を有する各種のスルホン酸誘導体を用いることができるが、好ましくは、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルハライドが用いられる。スルホニルハライドを構成するハロゲンは、例えば塩素や臭素などであることができるが、通常は塩素であるのが好ましく、したがって、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルクロライドが、エステル化剤として好ましく用いられる。また、1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルハライドと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルハライドの混合物を用いることもできる。
【0023】
エステル化反応において、1,2−ナフトキノンジアジド−4−および/または−5−スルホニルハライドは、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールに対し、通常1.2〜5のモル比、好ましくは1.4〜4のモル比、さらに好ましくは1.4〜2.5のモル比で用いられる。
【0024】
この反応は、通常、脱ハロゲン化水素剤の存在下で行われる。脱ハロゲン化水素剤としては、一般的に塩基性の化合物、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムのような無機塩基、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンのようなアミン類が挙げられる。脱ハロゲン化水素剤は、1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルハライドに対し、通常1.05〜1.5のモル比、好ましくは1.05〜1.2、さらに好ましくは1.1〜1.2のモル比で用いられる。
【0025】
エステル化反応は通常、溶媒中で行われる。反応溶媒としては、エーテル類、ラクトン類、脂肪族ケトン類などが挙げられ、なかでも、ジオキソラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、アセトンおよび2−ヘプタノンから選ぶのが好ましい。これらをそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができるが、とりわけ1,4−ジオキサンが好ましい。反応溶媒は、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールとキノンジアジドスルホニルハライドの合計量を基準に、通常は2〜6重量倍の範囲で、好ましくは3〜5重量倍、さらに好ましくは4〜5重量倍の範囲で使用される。
【0026】
このエステル化反応は、常圧下、常温付近でも十分進行し、一般的には20〜30℃の範囲の温度が採用され、2〜10時間程度行われる。
【0027】
反応終了後は、酢酸のような酸で中和し、固形物を濾過したあと、濾液を薄い酸水溶液、例えば0.1〜2重量%程度の濃度の酢酸水溶液と混合すれば、目的物であるエステルが析出してくる。これを濾過、洗浄および乾燥することにより、エステルを取り出すことができる。
【0028】
このエステル化反応においては、 用いる1,2−ナフトキノンジアジドスルホニルハライドのモル比にもよるが、 通常は、式(I)におけるR1 、R2 、R3 、R4 およびR5 のいずれか一つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(モノエステル)、それらのいずれか二つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(ジエステル)、それらのいずれか三つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(トリエステル)、それらのいずれか四つがキノンジアジドスルホニルとなったもの(テトラエステル)、およびそれら五つのすべてがキノンジアジドスルホニルとなったもの(ペンタエステル)のうち、2種以上の混合物として得られる。この混合物は、通常そのまま感光剤として用いることができる。
【0029】
こうしてエステル化された化合物は、紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザー等を含む)などの放射線に感応する感光剤として有利に使用することができる。この感光剤は、アルカリ可溶性ノボラック樹脂と組み合わせて、ポジ型レジスト用の感光性樹脂組成物とした場合に、特に高い効果を発揮する。
【0030】
また、必要に応じて、他のフェノール系化合物の1,2−キノンジアジドスルホン酸エステルを併用することもできる。併用されるキノンジアジドスルホン酸エステルの具体例としては、特開平 5-204148 号公報に記載の化合物、特開平 5-323597 号公報(=EP-A-570,884) に記載の化合物、特開平 6-167805 号公報(=EP-A-573,056) に記載の化合物、次式(II)
【0031】
【0032】
(式中、R11およびR12の一方は−OQ4 を表し;
R11およびR12の他方、R13、R14ならびにR15は互いに独立に、水素、炭素数6以下のアルキル、炭素数6以下のシクロアルキル、炭素数6以下のアルケニル、炭素数6以下のアルコキシまたはハロゲンを表し;
R16およびR17は互いに独立に、水素、炭素数6以下のアルキル若しくは炭素数6以下のアルケニルを表すか、または両者が末端で一緒になって、両者が結合する炭素原子とともに炭素数6以下のシクロアルカン環を形成し;
Q1 、Q2 、Q3 およびQ4 の一つはo−キノンジアジドスルホニルを表し、残りは互いに独立に、水素またはo−キノンジアジドスルホニルを表す)
【0033】
で示される化合物(本出願人が先に出願した特願平 7-58826号に記載のもの)などが挙げられる。
【0034】
本発明においては、こうした他のキノンジアジドスルホン酸エステルを用いる場合はそれも含めて、感光剤は、感光性樹脂組成物中の全固形分の量を基準に、10〜50重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0035】
感光性樹脂組成物を構成するアルカリ可溶性ノボラック樹脂は、フェノール性水酸基を少なくとも1個有する化合物とアルデヒドとを、酸触媒の存在下に縮合させて得られるものであって、その種類は特に限定されるものでなく、レジスト分野で用いられる各種のものであることができる。ノボラック樹脂の原料となるフェノール系化合物としては、例えば、メタクレゾール、パラクレゾール、オルトクレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、t−ブチルハイドロキノンなどが挙げられる。 また、ノボラック樹脂のもう一方の原料であるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキサール、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。特にホルムアルデヒドは、約37重量%の水溶液として工業的に量産されており、好適に用いられる。
【0036】
こうしたフェノール系化合物の1種または2種以上と、アルデヒドの1種または2種以上とを、酸触媒の存在下に縮合させることにより、ノボラック樹脂が得られる。酸触媒としては、有機酸、無機酸、二価金属塩などが用いられ、具体例としては、シュウ酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸亜鉛などが挙げられる。縮合反応は常法に従って行うことができ、例えば60〜120℃の範囲の温度で2〜30時間程度行われる。また、反応はバルクで行っても、適当な溶媒中で行ってもよい。
【0037】
得られるノボラック樹脂は、レジストの現像残渣を少なくするなどの目的で、例えば分別などの操作を施して、 そのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(UV254nmの検出器を使用)によるパターンにおいて、ポリスチレン換算分子量で900以下の成分の面積比が、未反応のフェノール系化合物のパターン面積を除く全パターン面積に対して25%以下、さらには20%以下となるようにしておくのが好ましい。分別を行う場合は、ノボラック樹脂を、良溶媒、例えばメタノールやエタノールのようなアルコール、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン、エチルセロソルブのようなエチレングリコールエーテル、エチルセロソルブアセテートのようなエチレングリコールエーテルエステル、テトラヒドロフランのような環状エーテルなどに溶解し、この溶液を水中に注いで高分子量成分を沈澱させる方法、あるいはこの溶液を、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンのような貧溶媒と混合して分液する方法などが採用できる。
【0038】
こうした分別操作を施して高分子量成分を多くしたノボラック樹脂に、分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を加えることも有効である。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物としては、分子構造中にフェノール性水酸基を2個以上有するものが好ましく、例えば特開平 2-275955 号公報(=EP-A-358,871) や特開平 2-2560 号公報に記載のものなどが挙げられる。分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を用いる場合は、感光性樹脂組成物中の全固形分の量を基準として、3〜40重量%の範囲で含有させるのが好ましい。
【0039】
感光性樹脂組成物を含むレジスト液の調製は、感光剤およびノボラック樹脂、あるいは必要に応じてさらに分子量900以下のアルカリ可溶性フェノール系化合物を、溶剤に混合溶解することにより行われる。ここで用いる溶剤は、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発したあとに均一で平滑な塗膜を与えるものが好ましい。このような溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートやエチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、ピルビン酸エチルや酢酸n−アミル、乳酸エチルのようなエステル類、2−ヘプタノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類、その他、特開平 2-220056 号公報に記載のもの、特開平 4-362645 号公報に記載のもの、特開平 4-367863 号公報に記載のものなどが挙げられる。溶剤としては、それぞれの化合物を単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0040】
こうして得られるレジスト液ないしは感光性樹脂組成物は、必要に応じてさらに、添加物として少量の樹脂や染料を含有することもできる。
【0041】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特にことわらないかぎり重量基準である。
【0042】
参考例1: 2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノールの製造
3リットルの四つ口フラスコに、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール263.6g、水酸化ナトリウム67.2g、水1169.3g、およびテトラヒドロフラン107.5gを仕込んで溶解し、40℃に調温した。そこへ37%ホルマリン340.9gを1時間かけて滴下し、その後、同温度で2時間攪拌した。反応終了後、90%酢酸水溶液134.4gで中和してから25℃に冷却した。析出した結晶を濾過し、イオン交換水1000gでリンスした。得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール265g(純度80%)を得た。収率69.4%。
【0043】
質量分析: MS 436
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
1.95 (s, 3H); 2.05 (s, 6H); 2.10 (s, 6H);
3.78 (s, 4H); 4.65 (s, 4H); 5.23 (brs, 2H);
6.31 (s, 2H); 6.70 (s, 2H); 8.18 (brs, 1H);
8.60 (brs, 2H).
【0044】
実施例1: 2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールの製造
1リットルの四つ口フラスコに、パラトルエンスルホン酸1.90g、パラクレゾール86.51gおよびトルエン176.83gを仕込んで30℃に調温した。そこへ、参考例1で得られた純度80%の2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール21.83gを10分割して、1時間30分で投入し、その後同温度でさらに3時間攪拌した。反応終了後、濾過し、トルエン200gでリンスした。得られた濾過物を、トルエン200gと酢酸エチル400gの混合液に60℃で仕込んで溶解させ、さらにイオン交換水400gを加えて攪拌し、分液した。その後、1%シュウ酸水溶液400gを仕込んで攪拌し、分液することにより脱金属を行った。次にイオン交換水400gでの洗浄を4回行ったあと、オイル層を濃縮した。濃縮マスにトルエン200gを加えて20℃まで冷却し、濾過後、トルエン200gでリンスした。 得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを22.87g(定量純度94.6%)得た。2,6−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチル−2,5−ジメチルベンジル)−4−メチルフェノール基準の収率は87.7%であった。
【0045】
質量分析: MS 616
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
1.88 (s, 6H); 1.95 (s, 3H); 2.03 (s, 6H);
2.13 (s, 6H); 3.78 (s, 4H); 3.88 (s, 4H);
6.28 (s, 2H); 6.32 (s, 2H);
6.68 (d, J = 8.2 Hz, 2H); 6.70 (s, 2H);
6.74 (d, J = 8.2 Hz, 2H); 7.95 (brs, 2H);
8.12 (brs, 1H); 9.20 (brs, 2H).
【0046】
実施例2: キノンジアジドスルホン酸エステル化
100mlの四つ口フラスコに、2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノールを1.85g、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライドを1.61g、および1,4−ジオキサンを17.33g仕込んで、25℃に調温した。そこへトリエチルアミン0.73gを1時間かけて滴下し、その後さらに3時間反応させた。反応終了後、酢酸0.18gで中和し、濾過した。その濾液を酢酸0.8gおよびイオン交換水80gの混合液に加えて1時間攪拌し、析出した結晶を濾過し、洗浄した。得られた濾過物を45℃で一昼夜減圧乾燥して、3.23gの感光剤を得た。2,6−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−2,5−ジメチルベンジル〕−4−メチルフェノール基準の収率は99.4%であった。
【0047】
メイン成分の分析値
質量分析: MS 1080
1H−NMR(ジメチルスルホキシド) δ(ppm) :
1.70 (s, 6H); 1.95 (s, 3H); 2.05 (s, 6H);
2.13 (s, 6H); 3.75 (s, 4H); 3.86 (s, 4H);
6.22 (s, 2H); 6.40 (s, 2H);
6.65 (d, J = 8.2 Hz, 2H); 6.72 (s, 2H);
6.88 (d, J = 8.2 Hz, 2H);
7.42 (d, J = 7.9 Hz, 2H);
7.64 (t, J = 7.9 Hz, 2H);
7.75 (d, J = 7.9 Hz, 2H); 8.04 (s, 2H);
8.15 (s, 1H); 8.25 (d, J = 7.9 Hz, 2H);
8.62 (d, J = 7.9 Hz, 2H).
【0048】
参考例2: ノボラック樹脂の製造
四つ口フラスコに、メタクレゾール148.5部、パラクレゾール121.5部、メチルイソブチルケトン252部、10%シュウ酸水溶液37.0部および90%酢酸水溶液84.8部を仕込み、100℃の油浴で加熱攪拌しながら、37%ホルマリン129.5部を40分かけて滴下し、その後さらに15時間反応させた。次に水洗、脱水して、ノボラック樹脂を42.3%含有するメチルイソブチルケトン溶液466部を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は4300であった。
【0049】
この溶液450部を、底抜きセパラブルフラスコに仕込み、さらにメチルイソブチルケトン909.6部およびn−ヘプタン996.1部を加えて、60℃で30分間攪拌したあと、静置し、分液した。分液で得られた下層のマスに、2−ヘプタノンを380部加え、メチルイソブチルケトンおよびn−ヘプタンをエバポレーターにより除去して、ノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は9000であり、ポリスチレン換算分子量で900以下の範囲の面積比は、全パターン面積に対して14%であった。
【0050】
適用例
参考例2で得たノボラック樹脂の2−ヘプタノン溶液を固形分換算で15部、添加剤としての1,3−ビス〔1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕ベンゼンを3.9部、実施例2で得られた感光剤を5部、別の感光剤としての1,2,3−トリヒドロキシ−4−(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルベンジル)ベンゼンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホンニルクロライドとのモル比1:4の縮合物を1部、および2−ヘプタノンを、2−ヘプタノンが合計で50部となるように混合し、溶解した。この液を孔径0.2μm のフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト液を調製した。
【0051】
常法により洗浄したシリコンウェハーに、回転塗布機を用いて上記レジスト液を、乾燥後の膜厚が1.1μm となるように塗布し、ホットプレートにて90℃で1分間ベークした。次いで、365nm(i線)の露光波長を有する縮小投影露光器〔(株)ニコン製品、NSR 1755i 7A、NA=0.5〕を用いて、露光量を段階的に変化させて露光した。次にこのウェハーを、ホットプレートにて110℃で1分間ベークした。 これを現像液“SOPD"〔住友化学工業(株)製品〕で1分間現像して、ポジ型パターンを得た。それぞれのポジ型パターンについて、以下のようにして評価し、それぞれの結果を得た。
【0052】
実効感度: 0.50μm のラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)を測定したところ、230msecであった。
【0053】
解像度: ラインアンドスペースパターンが1:1になる露光量(実効感度)で、膜減りなく分離するラインアンドスペースパターンの寸法を、走査型電子顕微鏡で測定したところ、0.375μm であった。
【0054】
プロファイル: 実効感度における0.45μm ラインアンドスペースパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡で観察したところ、 パターンが垂直に切れていた。
【0055】
フォーカス(焦点深度): 実効感度において、0.40μm ラインアンドスペースパターンが膜減りなく分離する焦点の幅を、走査型電子顕微鏡で観察し、測定したところ、1.5μm であった。
【0056】
スカム: 走査型電子顕微鏡でスカム(現像残渣)の有無を観察したところ、スカムは認められなかった。
【0057】
γ値: 露光量の対数に対する規格化膜厚(=残膜厚/初期膜厚)をプロットし、その傾きθを求め、tan θをγ値として、このγ値は6.82であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明による式(I)で示されるペンタフェノール系化合物のなかで、R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 のうちの少なくとも一つが1,2−ナフトキノンジアジドスルホニルであるものは、 感光性樹脂組成物用の感光剤として有用であり、またR1 、R2 、R3 、R4 およびR5 がすべて水素であるものは、上記感光剤の前駆体として有用である。そして、1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化された上記感光剤を含む感光性樹脂組成物は、半導体微細加工用として、感度および解像力に優れ、また現像残渣がないなど、レジスト諸性能のバランスがとれたものとなる。
Claims (4)
- R1、R2、R3、R4およびR5 がすべて水素である請求項1記載の化合物。
- R1、R2、R3、R4およびR5 の少なくとも一つが1,2−ナフトキノンジアジド−4−または−5−スルホニルである請求項1記載の化合物。
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1995
- 1995-10-18 JP JP27030595A patent/JP3834852B2/ja not_active Expired - Lifetime
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