JP3508520B2 - 溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼 - Google Patents
溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼Info
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好適であり、高温疲労特性、とくに溶接部の高温疲労特
性に優れたCr含有フェライト鋼に関するものである。
気ダクト部材、石油燃焼機器の部材などの高温で使用さ
れる部材にはフェライト系ステンレス鋼が使用されてい
る。この理由として、フェライト系ステンレス鋼がオー
ステナイト系ステンレス鋼よりも安価であること、熱膨
張係数が小さくて熱疲労特性に優れていることなどが挙
げられる。ここに、高温疲労特性は、 (1)耐久性の向
上、 (2)板厚減による軽量化等のうえから、高温部材に
とって重要な特性である。
を向上させるための試みが幾つか行われており、例え
ば、特開平8-291374号公報には、母材部の高温疲労特性
を向上させるための技術が、また、特開平9-118961号公
報には、使用中の高温強度の低下を抑制するための技術
が、それぞれ開示されている。
の従来技術は、いずれも母材部のみの耐久性を改善する
ためには有効であるものの、多くの溶接構造部材で必要
となる溶接部の特性向上に応えるものではなかった。と
いうのは、上記溶接部の中でも、ボンド部は、溶加材の
適正化によって、高強度化は可能であるが、溶接熱影響
部については、高温強度の低化は避けられないのが現実
であった。例えば、従来のフェライト系ステンレス鋼で
は、図1に示すように、母材と溶接熱影響部相当材の60
0 ℃における高温疲労特性を比較したとき、溶接熱影響
部の106 サイクル寿命時の疲労限が母材のそれの60%程
度にまで低下している。ここに、溶接熱影響部相当材と
は、溶接熱影響部の組織をシミュレートするため、115O
℃で1分間焼鈍処理したものである(以下、同じ)。な
お、疲労特性は、使用中に起こる高温強度の経時的低下
をも加味した結果を示し、製品使用時の総合的な特性を
表現していると考えられので、高温で長時間使用する材
料の評価に適したものである。
溶接加工を施した製品には、溶接部とくに溶接熱影響部
の高温疲労特性が必要であるのにもかかわらず、従来材
においては、溶接部の特性が母材のそれよりも著しく劣
り、実用に耐える十分な特性を具えていなかった。その
上、従来材では延性で代表される加工性が十分ではない
という問題もあった。そこで、本発明の目的は、上記既
知技術が抱えていた問題を解決し、溶接部とくに溶接熱
影響部の高温疲労特性に優れるCr含有フェライト鋼を提
案することにある。また、本発明の他の目的は、かかる
溶接熱影響部の高温疲労特性に加えて加工性にも優れる
Cr含有フェライト鋼を提案することにある。
の実現に向けて、溶接熱影響部の高温疲労特性(高温疲
労強度)におよぼす各種成分の影響について詳細な検討
を行った。その結果、前記特性に対して、全酸素量(従
来、特に断らないかぎり「O」として扱っていたもの)
のほか、Al2O3 として存在する酸素量が互いに大きな影
響を及ぼしていることを見いだし、本発明を完成するに
至った。
るものである。 (1) C:0.03wt%以下、Si:3.0wt%以下、Mn:0.58wt
%以下、P:0.06wt%以下、S:0.01wt%以下、Cr:1.
0〜20.0wt%、Al:0.05wt%以下、N:0.030wt%以下、
B:0.0002〜0.005wt%、Nb:1.0wt%以下、O:0.015
−(48/54)×insol.Al wt%以下を含有し、残部がFeおよ
び不可避的不純物からなることを特徴とする溶接部の高
温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼。
Co:1.0wt%以下、Cu:2.0wt%以下、Mo:3.0wt%以
下、Ni:2.0wt%以下のうちから選ばれるいずれか1種
または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純
物からなることを特徴とする溶接部の高温疲労特性に優
れたCr含有フェライト鋼。
て、さらにCa:0.0003〜0.003wt%を含有し、残部がFe
および不可避的不純物からなることを特徴とする溶接部
の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼。
の鋼において、さらにREM:0.001〜0.1wt%を含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴
とする溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト
鋼。
疲労特性に及ぼす酸素量の影響を調査した実験結果につ
いて説明する。図2は、成分組成がほぼ同じであって、
母材の高温疲労特性が同程度である、0.005 wt%C−0.
16wt%Si−0.09wt%Mn−0.025 wt%P−0.004 wt%S−
11.8wt%Cr−0.010 wt%Al−0.43Nb−0.009 wt%N−0.
009 wt%Oの成分からなる鋼(鋼C)と、0.005 wt%C
−0.15wt%Si−0.08wt%Mn−0.024 wt%P−0.002 wt%
S−11.2wt%Cr−0.004 wt%Al−0.35Nb−0.007 wt%N
−0.008 wt%Oからなる鋼(鋼1)について、溶接熱影
響部相当材の高温疲労特性として、(溶接熱影響部相当
材の106 サイクル疲労限)/(母材の106 サイクル疲労
限)で定義した疲労強度比を600 ℃で調べた結果であ
る。図2のように、鋼Cと鋼1とには疲労強度比に大き
な違いがあった。
(P)の相違する原因を追求したところ、両者には鋼中
のAl2O3 量の相違があることがわかった。この点に着目
して、さらに詳細に検討した結果を図3に示す。図3の
ように、疲労強度比を高めるためには、Al2O3 としての
酸素量と全酸素量(O)との間に、一定の関係が満たさ
れていることが重要であることがわかった。そして、疲
労強度比を高めるためには、Al2O3 としての酸素量を
(48/54)×酸不溶Al(insol Al)で表した場合に、O≦
0.015 − (48/54)×(insol Al)の関係があれば、溶接熱
影響部でも高温疲労の低下が小さく、母材の疲労限の70
%を超えることを見い出した。
明確ではないが、以下のように考えられる。溶接熱影響
部では、熱履歴を受けても、粗大なAl2O3 は安定して存
在する。一方、Nb、Ti、Zr、V 、Crの炭化物やNbラーベ
ス相(Nb−Fe金属間化合物)などの多くは、溶接熱影響
部の熱履歴で固溶してしまう。その後、固溶状態のNb、
Ti、Zr、V 、Crが、高温で負荷を受けているとき、炭化
物やNbラーベス相として析出する際に、粗大なAl2O3 が
これら再析出の核になって、結果的に、粗大なAl2O3 表
面に存在しやすくなる。このようにして、溶接熱影響部
では、Nb、Ti、Zr、Crの微細析出物による疲労限向上効
果が働かなくなることが考えられる。これに対し、Al2O
3 量が少ない場合には、溶接熱履歴にさらされた時に多
くの酸化物も溶解し、高温疲労の下で、Nb、Ti、Zr、Cr
などが再析出する際に、それぞれが微細に析出する。そ
してこれら析出物の強化作用によって、溶接熱影響部の
高温疲労特性の低下が少なくなると考えられる。
性にとって酸素の存在形態の影響が大きく、とくに溶接
熱影響部が受ける熱履歴でも、安定して存在する粗大な
介在物(Al2O3 )が疲労限低下に大きな影響を及ぼして
いることが分かった。ただし、このAl2O3 として存在す
る酸素量の影響は、図3で示されるように、全酸素量
(O)によって変化し、O量が少ない場合にはAl2O3 と
して存在する酸素量も緩和される。その関係が、Al2O3
として存在する酸素量と全酸素量との関係として、上記
式で表されるものといえる。なお、Al2O3 の分析方法は
後述するとおりである。
て、Bを添加することが有効であることも知見した。B
は、一般に、粒界に偏析し、粒界強度を高めることがよ
く知られている。これに対して、本発明の成分組成にお
いて、Bは加工性を高め、その効果は、特に比較的低Cr
レベルで顕著であることを知見した。この理由は、粒界
に析出しやすい酸化物が、B添加によって、粒内にも分
散析出し、加工性が向上したものと考えられる。
分組成を限定した理由について説明する。 C:0.03wt%以下 Cは、靭性および加工性を劣化させる元素であり、0.03
0 wt%を超えると靱性および加工性の劣化が顕著となる
ため、0.03wt%以下とする。なお、靱性および加工性の
上から、C含有量は低いほどよく、0.010 wt%以下に抑
制するのが望ましい。
ると、その影響が顕著になるので、3.0 wt%を上限とす
る。なお、Siの含有量は、好ましくは1.0 wt%以下、よ
り好ましくは、0.20wt%以下である。
を形成し、耐食性および溶接熱影響部の高温疲労限を低
下させる。このため、Mn量は0.58wt%以下、好ましくは
0.15wt%以下とする。
脱P処理にはコストの上昇を伴う。このため、実生産上
許容しうる0.06wt%を上限とする。
低S化処理にはコストの上昇を伴う。このため、実生産
上許容しうる0.01wt%を上限とする。
寄与する元素であり、1.0 wt%以上の添加が必要であ
る。しかし、20.0wt%を超えて添加すると、加工性に対
する酸素の悪影響が大きくなり、加工性が低下し、また
コスト高にもなる。このため、Cr添加量の上限は、20.0
wt%、好ましくは17.0wt%、より好ましくは12.0wt%と
する。なお、最も好ましいCr含有量は10.0〜12.0wt%で
ある。
いが、0.05wt%までは許容しうるので0.05wt%以下とす
る。
0.030 wt%を超えると、その程度が顕著になるので、0.
030 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とする。
下 酸素は、多くなると酸化物を粗大化させ、溶接熱影響部
の熱履歴を受けた後も安定した酸化物として残り、溶接
熱影響部の高温疲労特性および加工性を劣化させる。溶
接熱影響部の高温疲労特性および加工性の劣化を抑制す
るには、図3で示したように、O(全酸素)量を0.015
− (48/54)×insol.Al wt%以下に制限する必要があ
る。ここに、insol.Alは酸不溶のAlを意味し、そのほと
んどはAl2O3 であることから、 (48/54)×insol.Alによ
って、Al2O3 として存在する酸素を計算できる。なお、
このinsol.Alは、日本鉄鋼協会の鋼中非金属介在物分析
小委員会による「鋼中酸化物系介在物の抽出分離定量法
に関する研究」(昭和62年1月)に従う測定方法によ
り、酸に溶けないAl量を分析した値である。上記のOは
加工性に有害であるものの、過度に低減するとことは、
生産性の低下、コスト高、さらに溶接部の溶け込み性の
劣化を招く。これらのことを考慮して、O量の下限は、
好ましくは0.004 wt%、さらに好ましくは0.006 wt%と
するのがよい。
ずしも、明らかではないが、Bが粒界に偏析し、これ
が、粒界に析出しやすい何らかの酸化物を分散させる作
用により、加工性を向上させるものと考えられる。その
効果は0.0002wt%から現われるが、0.005 wt%を超える
と多量のBNが生成し、靱性を劣化させるので、0.0002
〜0.005 wt%、好ましくは0.0003〜0.001 wt%とする。
寄与する。しかしながら、1.0 wt%を超えて添加すると
多量のラーベス相が析出し、鋼の室温での強度を著しく
高め、成形性を劣化させる。このため、Nb量は1.0 wt%
以下、好ましくは0.1 〜0.5 wt%、さらに好ましくは0.
2 〜0.4 wt%とする。
効な元素であるが、高価な元素であるので1.0 wt%以下
とする。なお、上記効果を発揮させるためには0.03wt以
上添加するのが望ましい。
め、必要に応じて添加する。その効果は0.05wt%以上の
添加で発揮されるが、多量の添加は加工性を劣化させる
ため、2.0 wt%以下に限定する。なお、望ましい添加範
囲は0.15〜0.30wt%である。
素であるが、高価な元素であり、コスト高を招くので、
3.0 wt%以下に限定する。
の効果は0.6 wt%以上の添加で顕著となるが、多量の添
加はコスト高になるため、2.0 wt%以下にする。
詰まりを抑制する効果を有し、必要に応じて添加する。
その効果は、0.0003wt%以上の添加で顕れるが、0.003
wt%を超えて添加しても効果が飽和するばかりでなく、
Caを含む介在物が孔食の起点となり、耐食性を劣化させ
るので、0.003 wt%を上限とする。
ンタノイドの元素群を意味する。0.001 wt%以上で耐酸
化性を向上させる効果を有するが、0.1 wt%以上添加す
ると加工性の劣化が著しくなり、また高価でもあるの
で、0.001 〜0.1wt%に限定する。なお、LaとCeを含ん
だミッシュメタルと言われるものも、REMの一種であ
る。YおよびLaとCe等のランタノイドの元素群であれ
ば、単独, 複合のいずれの添加であっても耐酸化性向上
に寄与する。
する際に用いられる一般的な工程でよい。例えば、所定
の成分組成からなる鋼を転炉、電気炉等の通常の製鋼法
で溶製し、連続鋳造法または造塊法で鋼片とした後、熱
間圧延− (熱延板焼鈍) −酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍
−酸洗、さらに用途に応じて、冷間圧延−仕上げ焼鈍−
酸洗を繰り返し行う方法によればよい。特に熱延板焼鈍
を省略するプロセスがコスト上有利であり望ましい。た
だし、特にO≦0.015 − (48/54)×insol.Alを満足する
ように酸素量をコントロールするためには、例えば、Al
添加を極力抑えることが必要である。それによってinso
l.Alが低く抑えられるため、酸素の上限規制が緩和され
る。しかし、Alは強力な脱酸材であるため、酸素の低下
をSiまたはMn等の他の脱酸材によって補う必要がある。
としての酸素量、すなわち、(48/54) ×insol.Alとの関
係に配慮しつつ溶製し、1150℃に加熱後、板厚5mmま
で熱間圧延し熱延板とした。この熱延板を、酸洗して、
板厚2mmまで冷間圧延し、900 〜950 ℃で仕上げ焼鈍
した。得られた冷延焼鈍板について、以下に示す方法に
より、室温の加工性および600 ℃での高温疲労特性の評
価を行った。
号Bの引張試験片(板厚mm)を採取し、伸びElを次式
により測定した。 El=(El0 +2×El45+El90)/4 ただし、El0 、El45、El90はそれぞれ圧延方向に対し0
°、45°、90°方向の伸び値である。Elの値が、38%以
上をAA、35%以上38%未満をA 、35%未満をB として評
価した。
響部相当材について、600 ℃でシェンク式疲労試験を行
い、106 疲労限を測定した。溶接熱影響部の疲労限が母
材からどの程度劣化しているかを表わすパラメーターと
して、疲労強度比Pを次式で求めた。 P=(溶接熱影響部相当材の106 サイクル疲労限)/
(母材の106 サイクル疲労限)
明鋼1〜16は、溶接熱影響部の高温疲労限が母材の70%
を超え、優れた高温疲労特性を示している。その上、優
れた加工性を有している。これに対して、本発明範囲を
外れた比較鋼は、溶接熱影響部の高温疲労限がいずれも
母材の70%以下である。また、加工性も総じて劣ってい
る。
は、低コスト化に必須となる脱酸工程の簡素化を行っ
て、比較的多量の酸素を含んでいても、良好な加工性と
良好な溶接熱影響部の高温疲労特性を兼ね備えている。
熱影響部の高温疲労特性に優れ、あるいは又さらに、加
工性にも優れた安価な材料を提供することが可能とな
る。従って、本発明は、加工性や溶接性が要求される分
野、例えば、自動車やオートバイの排気系材料、火力発
電システムの排気経路部材、厨房品等の用途に適用し
て、その耐久性の向上に寄与するところ大である。
0 ℃における高温疲労特性を示すグラフである。
たグラフである。
度比に及ぼす影響を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】C:0.03wt%以下、Si:3.0wt%以下、M
n:0.58wt%以下、P:0.06wt%以下、S:0.01wt%以
下、Cr:1.0〜20.0wt%、Al:0.05wt%以下、N:0.030
wt%以下、B:0.0002〜0.005wt%、Nb:1.0wt%以下、
O:0.015−(48/54)×insol.Al wt%以下を含有し、残
部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする
溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼。 - 【請求項2】請求項1に記載の鋼において、さらにCo:
1.0wt%以下、Cu:2.0wt%以下、Mo:3.0wt%以下、N
i:2.0wt%以下のうちから選ばれるいずれか1種または
2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物から
なることを特徴とする溶接部の高温疲労特性に優れたCr
含有フェライト鋼。 - 【請求項3】請求項1または2に記載の鋼において、さ
らにCa:0.0003〜0.003wt%を含有し、残部がFeおよび
不可避的不純物からなることを特徴とする溶接部の高温
疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼。 - 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼に
おいて、さらにREM:0.001〜0.1wt%を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする溶
接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼。
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JP33575497A JP3508520B2 (ja) | 1997-12-05 | 1997-12-05 | 溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼 |
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Family
ID=18292097
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP33575497A Expired - Lifetime JP3508520B2 (ja) | 1997-12-05 | 1997-12-05 | 溶接部の高温疲労特性に優れたCr含有フェライト鋼 |
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