JP3288514B2 - 深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法Info
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- JP3288514B2 JP3288514B2 JP01104094A JP1104094A JP3288514B2 JP 3288514 B2 JP3288514 B2 JP 3288514B2 JP 01104094 A JP01104094 A JP 01104094A JP 1104094 A JP1104094 A JP 1104094A JP 3288514 B2 JP3288514 B2 JP 3288514B2
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、高強度で、プレス成
形性に優れる深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法を
提案するものであって、とりわけ製造工程における冷間
圧延性に著しく優れる方法を提案するものである。この
発明にかかる冷延鋼板は、適宜表面処理やプレス加工を
したのち、例えば自動車や家電製品などに使用され、場
合によってはスポット溶接して用いられるものであり、
特にそれらに要求される成形性と強度を同時に付与する
ことができるため、鋼板の薄肉化、ひいては軽量化が達
成できるものであって、具体的には経済性に優れる引張
強さが38kgf/mm2 以上で、ランクフォード値すなわち平
均ｒ値が1.8 以上の冷延鋼板が求められている。
形性に優れる深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法を
提案するものであって、とりわけ製造工程における冷間
圧延性に著しく優れる方法を提案するものである。この
発明にかかる冷延鋼板は、適宜表面処理やプレス加工を
したのち、例えば自動車や家電製品などに使用され、場
合によってはスポット溶接して用いられるものであり、
特にそれらに要求される成形性と強度を同時に付与する
ことができるため、鋼板の薄肉化、ひいては軽量化が達
成できるものであって、具体的には経済性に優れる引張
強さが38kgf/mm2 以上で、ランクフォード値すなわち平
均ｒ値が1.8 以上の冷延鋼板が求められている。
【０００２】
【従来の技術】従来より、製鋼段階で十分に脱炭処理を
施して極低炭素とし、さらに鋼中の固溶Ｃや固溶ＮをTi
などを含有させてこれらの炭窒化物として析出させＣや
Ｎを固定した鋼をベースとして、これにSi、Mn及びＰな
どを固溶させ、強度を高めた高強度冷延鋼板については
多くの提案がなされている。
施して極低炭素とし、さらに鋼中の固溶Ｃや固溶ＮをTi
などを含有させてこれらの炭窒化物として析出させＣや
Ｎを固定した鋼をベースとして、これにSi、Mn及びＰな
どを固溶させ、強度を高めた高強度冷延鋼板については
多くの提案がなされている。
【０００３】例えば、特開昭63−190141号公報の成形性
の良好な高張力冷延鋼板とその製法においては、上記極
低炭素Ti添加鋼に多量のMn及びＰを添加した冷延鋼板が
提案開示されている。この提案においては、適量のMn及
びＰを添加することにより、焼鈍後少量の固溶Ｃが残存
し、これがｒ値を著しく向上させ、しかも、粒界に存在
する固溶Ｃのため二次加工脆性が効果的に防止されると
し、さらに粒界強化のため必要に応じてＢを添加しても
よいとしている。しかしながら、Siを無添加としてＰを
添加した場合スポット溶接性が劣化するという問題があ
る。
の良好な高張力冷延鋼板とその製法においては、上記極
低炭素Ti添加鋼に多量のMn及びＰを添加した冷延鋼板が
提案開示されている。この提案においては、適量のMn及
びＰを添加することにより、焼鈍後少量の固溶Ｃが残存
し、これがｒ値を著しく向上させ、しかも、粒界に存在
する固溶Ｃのため二次加工脆性が効果的に防止されると
し、さらに粒界強化のため必要に応じてＢを添加しても
よいとしている。しかしながら、Siを無添加としてＰを
添加した場合スポット溶接性が劣化するという問題があ
る。
【０００４】このほかにも、上記極低炭素鋼に、Si、Mn
及びＰの固溶強化成分を複合添加した冷延鋼板について
いくつかの開示がなされている。しかしながら、これら
のSi、Mn及びＰの添加は単に固溶強化のためであり、個
々の成分の平均ｒ値への影響は明らかにされているもの
の、高い深絞り性を有するこれら固溶成分間の複合添加
のバランスについては未だ解明されていないのが現状で
ある。
及びＰの固溶強化成分を複合添加した冷延鋼板について
いくつかの開示がなされている。しかしながら、これら
のSi、Mn及びＰの添加は単に固溶強化のためであり、個
々の成分の平均ｒ値への影響は明らかにされているもの
の、高い深絞り性を有するこれら固溶成分間の複合添加
のバランスについては未だ解明されていないのが現状で
ある。
【０００５】また、これら引張特性にかかわる問題に加
えて、このような固溶強化成分を多量に含有する極低炭
素鋼では熱間圧延中にオーステナイトが未再結晶状態と
なるため、得られた熱延鋼板の強度が著しく上昇する。
そのため冷間圧延性が劣化する。すなわち冷間圧延が困
難になることに加え、鋼板の幅方向エッジに割れを生じ
やすくなるという問題がある。
えて、このような固溶強化成分を多量に含有する極低炭
素鋼では熱間圧延中にオーステナイトが未再結晶状態と
なるため、得られた熱延鋼板の強度が著しく上昇する。
そのため冷間圧延性が劣化する。すなわち冷間圧延が困
難になることに加え、鋼板の幅方向エッジに割れを生じ
やすくなるという問題がある。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、すでに特
願平４−２１１４８３号明細書（深絞り加工用高張力冷
延鋼板及びその製造方法）にて、Si, Ｐ量に応じてMnを
添加することにより熱延板の焼入れ組織の生成を防止で
きる手段を示したが未だ十分とは云えず、一層の冷間圧
延性の向上を図る必要があった。したがってこの発明
は、固溶Ｃ及び固溶Ｎを固定するためのTi添加に加えて
固溶Ｃのより確実な固定を行うためNbを添加し、さらに
二次加工脆性の抑制のためにＢを添加した極低炭素Ti、
Nb、Ｂ複合添加鋼をベースにし、これをSiを含む低コス
トの合金添加で、しかも通常の連続焼鈍で目標とする引
張強さ38kgf/mm2 以上、平均ｒ値1.8 以上の深絞り性に
優れる高強度冷延鋼板の製造方法であって、かつ、その
製造工程における冷間圧延性を著しく改善する製造方法
を提案することを目的とする。
願平４−２１１４８３号明細書（深絞り加工用高張力冷
延鋼板及びその製造方法）にて、Si, Ｐ量に応じてMnを
添加することにより熱延板の焼入れ組織の生成を防止で
きる手段を示したが未だ十分とは云えず、一層の冷間圧
延性の向上を図る必要があった。したがってこの発明
は、固溶Ｃ及び固溶Ｎを固定するためのTi添加に加えて
固溶Ｃのより確実な固定を行うためNbを添加し、さらに
二次加工脆性の抑制のためにＢを添加した極低炭素Ti、
Nb、Ｂ複合添加鋼をベースにし、これをSiを含む低コス
トの合金添加で、しかも通常の連続焼鈍で目標とする引
張強さ38kgf/mm2 以上、平均ｒ値1.8 以上の深絞り性に
優れる高強度冷延鋼板の製造方法であって、かつ、その
製造工程における冷間圧延性を著しく改善する製造方法
を提案することを目的とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】発明者らは、かかる目的
達成のため、上記の極低炭素Ti、Nb、Ｂ複合添加鋼に注
目し、鋭意研究を進めてきた。その結果、極低炭素Ti、
Nb、Ｂ複合添加鋼において、Si及びＰの添加量にたいし
て、Mnの添加量を適当なバランスに保たせることによ
り、Nb添加によるより確実な固溶Ｃの固定化とあいまっ
て高い平均ｒ値が得られることを新たに知見した。
達成のため、上記の極低炭素Ti、Nb、Ｂ複合添加鋼に注
目し、鋭意研究を進めてきた。その結果、極低炭素Ti、
Nb、Ｂ複合添加鋼において、Si及びＰの添加量にたいし
て、Mnの添加量を適当なバランスに保たせることによ
り、Nb添加によるより確実な固溶Ｃの固定化とあいまっ
て高い平均ｒ値が得られることを新たに知見した。
【０００８】これは、Mn添加による熱延母板の細粒化に
起因していて、このため焼鈍後の平均ｒ値の向上に有効
な（111 ）集合組織が発達するためである。一般に固溶
強化成分を単独に添加した場合、Ｐ及びSiについては平
均ｒ値への影響は少なく、むしろ平均ｒ値を上昇させる
成分であるのに対して、Mnは平均ｒ値を大きく劣化させ
ることが知られている。しかしながら、複合添加した場
合には、Si及びＰのみでは、変態点が急激に上昇してし
まい、圧延条件及び焼鈍条件を規制する必要があった。
このため、変態点を下げる成分の添加が必要となってき
た。低コストでしかも有効に変態点温度を低下させるた
めには、Mnの添加が有効となる。しかしMnの添加量が多
すぎると、低温変態相があらわれ熱延板を高強度にする
とともに、焼鈍材の深絞り性を大きく劣化させる。
起因していて、このため焼鈍後の平均ｒ値の向上に有効
な（111 ）集合組織が発達するためである。一般に固溶
強化成分を単独に添加した場合、Ｐ及びSiについては平
均ｒ値への影響は少なく、むしろ平均ｒ値を上昇させる
成分であるのに対して、Mnは平均ｒ値を大きく劣化させ
ることが知られている。しかしながら、複合添加した場
合には、Si及びＰのみでは、変態点が急激に上昇してし
まい、圧延条件及び焼鈍条件を規制する必要があった。
このため、変態点を下げる成分の添加が必要となってき
た。低コストでしかも有効に変態点温度を低下させるた
めには、Mnの添加が有効となる。しかしMnの添加量が多
すぎると、低温変態相があらわれ熱延板を高強度にする
とともに、焼鈍材の深絞り性を大きく劣化させる。
【０００９】したがって、この発明は、Si及びＰの添加
量に応じた量のMnを添加することならびに熱間圧延後、
巻取り処理までの冷却速度を限定することにより、適度
なSi、Mn及びＰのバランスを保たせフェライト粒径を微
細にし、Nb添加によるより確実な固溶Ｃの固定とあいま
って高い平均ｒ値が得られるようにし、同時に、熱延板
の組織を焼入れ組織とすることなくフェライト組織と
し、熱延板を軟質化させて冷間圧延性を向上させるよう
にするものである。
量に応じた量のMnを添加することならびに熱間圧延後、
巻取り処理までの冷却速度を限定することにより、適度
なSi、Mn及びＰのバランスを保たせフェライト粒径を微
細にし、Nb添加によるより確実な固溶Ｃの固定とあいま
って高い平均ｒ値が得られるようにし、同時に、熱延板
の組織を焼入れ組織とすることなくフェライト組織と
し、熱延板を軟質化させて冷間圧延性を向上させるよう
にするものである。
【００１０】すなわち、この発明の要旨は、 Ｃ：0.001 wt％以上、0.005 wt％以下、 Si：0.2 wt％以上、1.0 wt％以下、 Mn：0.5 wt％以上、2.0 wt％以下、 Ti：0.01wt％以上、0.2 wt％以下、 Nb：0.001 wt％以上、0.02wt％以下、 Ｂ：0.0002wt％以上、0.005 wt％以下、 Ｐ：0.05wt％以上、0.15wt％以下、 Ｓ：0.02wt％以下、 sol Al：0.1 wt％以下及び Ｎ：0.005 wt％以下 を含み、かつ必要に応じて Cr：1.0wt ％以下、 Ni：1.5 wt％以下、 Mo：0.5 wt％以下及び Cu：1.5 wt％以下 のうちから選んだ１種又は２種以上を含有させ、 上記Si、Mn及びＰの含有量が、 0.2 ≦（Si（wt％）＋Ｐ（wt％））／Mn（wt％）≦1.0 の関係を満たし、残部は鉄及び不可避的不純物の組成か
らなる鋼スラブを素材として、Ar3 点（℃）以上、Ar3
点（℃）＋100 ℃以下の圧延仕上げ温度範囲で熱間圧
延を終了し、該温度より少なくとも700 ℃までの温度域
を８℃／ｓ以下の冷却速度で冷却し650 ℃以下の温度で
コイルに巻取ったのち、冷間圧延を行い、その後750 ℃
以上の温度で連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り加
工用高強度冷延鋼板の製造方法である。
らなる鋼スラブを素材として、Ar3 点（℃）以上、Ar3
点（℃）＋100 ℃以下の圧延仕上げ温度範囲で熱間圧
延を終了し、該温度より少なくとも700 ℃までの温度域
を８℃／ｓ以下の冷却速度で冷却し650 ℃以下の温度で
コイルに巻取ったのち、冷間圧延を行い、その後750 ℃
以上の温度で連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り加
工用高強度冷延鋼板の製造方法である。
【００１１】
【作用】この発明における鋼の化学成分組成の限定理由
について述べる。 Ｃ：0.001 〜0.005 wt％ Ｃは、再結晶時に固溶Ｃが多量に残存した場合、平均ｒ
値を大きく劣化させる。また、固溶Ｃを固定させるTi、
NbもＣ含有量に応じて添加する必要があるためＣ含有量
はできるだけ低い方がよく、許容できる上限を0.005 wt
％とする。一方その下限は低いほどよいが、現在の製鋼
技術から0.001 wt％を下限とする。
について述べる。 Ｃ：0.001 〜0.005 wt％ Ｃは、再結晶時に固溶Ｃが多量に残存した場合、平均ｒ
値を大きく劣化させる。また、固溶Ｃを固定させるTi、
NbもＣ含有量に応じて添加する必要があるためＣ含有量
はできるだけ低い方がよく、許容できる上限を0.005 wt
％とする。一方その下限は低いほどよいが、現在の製鋼
技術から0.001 wt％を下限とする。
【００１２】Si：0.2 〜1.0 wt％ Siは、固溶強化能が大きく、平均ｒ値を劣化させないた
め固溶強化成分として最適でありスポット溶接性の劣化
を抑制する。その効果の発現には最低でも0.2wt％を含
有させる必要がある。しかしながら、含有量が1.0 wt％
を超えると表面処理性が悪くなる。したがってその含有
量は、0.2 wt％以上、1.0 wt％以下とする。
め固溶強化成分として最適でありスポット溶接性の劣化
を抑制する。その効果の発現には最低でも0.2wt％を含
有させる必要がある。しかしながら、含有量が1.0 wt％
を超えると表面処理性が悪くなる。したがってその含有
量は、0.2 wt％以上、1.0 wt％以下とする。
【００１３】Mn：0.5 〜2.0 wt％ Mnは、この発明において重要な成分である。MnはSiやＰ
とは異なり、変態点を下げる成分であるためこれを有効
に活用することにより、熱延板の粒径を極めて細かくす
ることができる。この熱延板の細粒化は、結晶粒界から
（１１１）集合組織が発達するため、平均ｒ値の向上に
非常に有効である。その効果は含有量が0.5 wt％以上で
得られる。一方Mn自体は平均ｒ値を劣化させる成分であ
るため、多量に含有させることは有害であり、その含有
量が2.0 wt％超えでは低温変態相が現れやすくなってフ
ェライト組織でなくなり、平均ｒ値を大きく劣化させ
る。したがってその含有量は、0.5 wt％以上、2.0 wt％
以下とする。
とは異なり、変態点を下げる成分であるためこれを有効
に活用することにより、熱延板の粒径を極めて細かくす
ることができる。この熱延板の細粒化は、結晶粒界から
（１１１）集合組織が発達するため、平均ｒ値の向上に
非常に有効である。その効果は含有量が0.5 wt％以上で
得られる。一方Mn自体は平均ｒ値を劣化させる成分であ
るため、多量に含有させることは有害であり、その含有
量が2.0 wt％超えでは低温変態相が現れやすくなってフ
ェライト組織でなくなり、平均ｒ値を大きく劣化させ
る。したがってその含有量は、0.5 wt％以上、2.0 wt％
以下とする。
【００１４】また、上記Siと下記するＰの含有量とMn含
有量とのバランスを、 0.2 ≦（Si（wt％）＋Ｐ（wt％））／Mn（wt％）≦1.0 とすることにより、上記のMnの有効性を発揮することが
できる。これはSiとＰの含有量の和のMn含有量に対する
比が0.2 より小さくなると平均ｒ値が劣化し、反対に1.
0 より多くなると変態点温度が高くなり、熱延板の細粒
化が望めなくなるためである。
有量とのバランスを、 0.2 ≦（Si（wt％）＋Ｐ（wt％））／Mn（wt％）≦1.0 とすることにより、上記のMnの有効性を発揮することが
できる。これはSiとＰの含有量の和のMn含有量に対する
比が0.2 より小さくなると平均ｒ値が劣化し、反対に1.
0 より多くなると変態点温度が高くなり、熱延板の細粒
化が望めなくなるためである。
【００１５】Ti：0.01〜0.2 wt％ Tiは、固溶Ｃ、Ｓ及びＮをTiC 、TiS 及びTiN として固
定するために含有させる。その効果は含有量が0.01wt％
未満では十分でなく、0.2 wt％を超えると燐化物が発生
し、伸び及び平均ｒ値を劣化させる。したがってその含
有量は0.01wt％以上、0.2 wt％以下とする。
定するために含有させる。その効果は含有量が0.01wt％
未満では十分でなく、0.2 wt％を超えると燐化物が発生
し、伸び及び平均ｒ値を劣化させる。したがってその含
有量は0.01wt％以上、0.2 wt％以下とする。
【００１６】Nb：0.001 〜0.02wt％ Nbは、Tiと同様にNbC として固溶Ｃを固定する有効な成
分である。Tiのみでも固溶Ｃの固定はできるが、Nbを複
合添加することにより、より確実にＣを固定することが
でき平均ｒ値を向上させる。その効果は含有量が0.001
wt％未満では十分でなく、0.02wt％を超えて含有させる
とオーステナイト未再結晶状態で熱間圧延することにな
って、焼鈍材の成形性に悪影響をおよぼす。したがって
その含有量は0.001 wt％以上、0.02wt％以下とする。
分である。Tiのみでも固溶Ｃの固定はできるが、Nbを複
合添加することにより、より確実にＣを固定することが
でき平均ｒ値を向上させる。その効果は含有量が0.001
wt％未満では十分でなく、0.02wt％を超えて含有させる
とオーステナイト未再結晶状態で熱間圧延することにな
って、焼鈍材の成形性に悪影響をおよぼす。したがって
その含有量は0.001 wt％以上、0.02wt％以下とする。
【００１７】Ｂ：0.0002〜0.005 wt％ Ｂは、二次加工脆性を抑制するために含有させる。とく
にTi、Nbを添加した極低炭素鋼板に固溶強化成分を含有
させると、耐二次加工脆性が悪化するためＢを含有させ
ることを必須とする。その効果は含有量が0.0002wt％以
上で発現するが、0.005 wt％を超えて過剰に含有させる
と、オーステナイトの再結晶を遅らせ熱間圧延時の負荷
が大きくなり、しかも、焼鈍材の材質を劣化させる。し
たがってその含有量は、0.0002wt％以上、0.005 wt％以
下とする。
にTi、Nbを添加した極低炭素鋼板に固溶強化成分を含有
させると、耐二次加工脆性が悪化するためＢを含有させ
ることを必須とする。その効果は含有量が0.0002wt％以
上で発現するが、0.005 wt％を超えて過剰に含有させる
と、オーステナイトの再結晶を遅らせ熱間圧延時の負荷
が大きくなり、しかも、焼鈍材の材質を劣化させる。し
たがってその含有量は、0.0002wt％以上、0.005 wt％以
下とする。
【００１８】Ｐ：0.05〜0.15wt％ Ｐは、固溶強化成分として重要な成分であり、その固溶
強化能はSi及びMnにくらべて高く、平均ｒ値を向上させ
る成分でもある。その効果を得るためには0.05wt％以上
含有させる必要があるが、0.15wt％を超えて含有させる
と、粒界に偏析して粒界を脆化させ、さらに凝固時に中
心偏析の原因になる。したがってその含有量は0.05wt％
以上、0.15wt％以下とする。
強化能はSi及びMnにくらべて高く、平均ｒ値を向上させ
る成分でもある。その効果を得るためには0.05wt％以上
含有させる必要があるが、0.15wt％を超えて含有させる
と、粒界に偏析して粒界を脆化させ、さらに凝固時に中
心偏析の原因になる。したがってその含有量は0.05wt％
以上、0.15wt％以下とする。
【００１９】Ｓ：0.02wt％以下 Ｓは、平均ｒ値には影響を及ぼさないが、その含有量が
多くなるとMnS などの硫化物が増加し、伸びフランジ性
に代表される局部延性を低下させる原因となるため、そ
の含有量の上限を0.02wt％とする。
多くなるとMnS などの硫化物が増加し、伸びフランジ性
に代表される局部延性を低下させる原因となるため、そ
の含有量の上限を0.02wt％とする。
【００２０】sol Al：0.1 wt％以下 Alは、脱酸に必要な成分であるが、sol Al含有量が0.1
wt％を超えると脱酸効果が飽和するだけでなく介在物が
増加し、成形性に悪影響をおよぼす。したがってその含
有量は0.1 wt％以下とする。
wt％を超えると脱酸効果が飽和するだけでなく介在物が
増加し、成形性に悪影響をおよぼす。したがってその含
有量は0.1 wt％以下とする。
【００２１】Ｎ：0.005 wt％以下 Ｎは、不可避的に鋼中に混入する不純物成分であるが、
Ti添加によりTiN として固定し成形性を向上させる。し
かしながら、多量のTiN が形成されると加工性の劣化を
まねく。このため許容できる含有量の上限を0.005 wt％
とする。
Ti添加によりTiN として固定し成形性を向上させる。し
かしながら、多量のTiN が形成されると加工性の劣化を
まねく。このため許容できる含有量の上限を0.005 wt％
とする。
【００２２】Cr：1.0 wt％以下、Ni：1.5 wt％以下、M
o：0.5 wt％以下、Cu：1.5 wt％以下の１種又は２種以
上 Cr，Ni, Mo及びCuは、共に製造工程における冷間圧延性
や深絞り性にさほどの悪影響をおよぼすことなく高強度
化するのに有効な成分であり、必要に応じて選択的に単
独又は複合して添加できる。しかし過度の添加はコスト
アップの要因となるので、含有量の上限はそれぞれ、C
r：1.0 wt％、Ni：1.5 wt％、Mo：0.5 wt％及びCu：1.5
wt％とする。
o：0.5 wt％以下、Cu：1.5 wt％以下の１種又は２種以
上 Cr，Ni, Mo及びCuは、共に製造工程における冷間圧延性
や深絞り性にさほどの悪影響をおよぼすことなく高強度
化するのに有効な成分であり、必要に応じて選択的に単
独又は複合して添加できる。しかし過度の添加はコスト
アップの要因となるので、含有量の上限はそれぞれ、C
r：1.0 wt％、Ni：1.5 wt％、Mo：0.5 wt％及びCu：1.5
wt％とする。
【００２３】次に製造方法について述べる。製鋼、鋳造
条件は常法にしたがって行うことでよい。 熱間圧延仕上げ温度：Ar3 点〜Ar3 点＋100 ℃ 熱間圧延仕上げ温度は、Ar3 変態点に応じて変化させる
必要がある。Ar3 変態点未満では、二相域圧延となり、
焼鈍材の平均ｒ値に悪影響をおよぼす集合組織が発達し
てしまい好ましくない。一方、Ar3 変態点に対し相対的
に高い温度、すなわち100 ℃を超えて高くなると、熱延
板組織の粒径が粗くなって、焼鈍時に深絞り性に有効な
集合組織の発達が不十分となるために不適である。した
がって熱間圧延仕上げ温度はAr3 点（℃）からAr3 点
（℃）＋100 ℃までとする。
条件は常法にしたがって行うことでよい。 熱間圧延仕上げ温度：Ar3 点〜Ar3 点＋100 ℃ 熱間圧延仕上げ温度は、Ar3 変態点に応じて変化させる
必要がある。Ar3 変態点未満では、二相域圧延となり、
焼鈍材の平均ｒ値に悪影響をおよぼす集合組織が発達し
てしまい好ましくない。一方、Ar3 変態点に対し相対的
に高い温度、すなわち100 ℃を超えて高くなると、熱延
板組織の粒径が粗くなって、焼鈍時に深絞り性に有効な
集合組織の発達が不十分となるために不適である。した
がって熱間圧延仕上げ温度はAr3 点（℃）からAr3 点
（℃）＋100 ℃までとする。
【００２４】熱間圧延後の冷却条件：圧延仕上げ温度か
ら少なくとも700 ℃までの温度域の冷却速度が８℃／ｓ
以下 熱間圧延をAr３ 点以上で終了し、その後常法の50℃／
ｓ程度の冷却速度で冷却を行うことにより、深絞り性に
好ましい微細なフェライト組織が得られる。しかしなが
ら、冷却速度が８℃／ｓを超えて速い場合、熱間圧延中
にオーステナイトに蓄積された歪が十分に解放されない
まま冷却過程でフェライト変態を起すので、熱延板が硬
質化し冷間圧延性が劣化する。すなわちこの発明は、熱
間圧延後緩冷却することにより熱間圧延中に蓄積された
歪を解放でき熱延板の軟質化が達成できることを新規に
見出し、熱間圧延後の冷却速度を８℃／ｓ以下とするも
のである。また、緩冷却による歪放出の効果は700 ℃未
満の温度になると発揮できないので、圧延仕上げ温度か
ら700 ℃までの温度域を緩冷却すなわち８℃／ｓ以下と
することでよい。
ら少なくとも700 ℃までの温度域の冷却速度が８℃／ｓ
以下 熱間圧延をAr３ 点以上で終了し、その後常法の50℃／
ｓ程度の冷却速度で冷却を行うことにより、深絞り性に
好ましい微細なフェライト組織が得られる。しかしなが
ら、冷却速度が８℃／ｓを超えて速い場合、熱間圧延中
にオーステナイトに蓄積された歪が十分に解放されない
まま冷却過程でフェライト変態を起すので、熱延板が硬
質化し冷間圧延性が劣化する。すなわちこの発明は、熱
間圧延後緩冷却することにより熱間圧延中に蓄積された
歪を解放でき熱延板の軟質化が達成できることを新規に
見出し、熱間圧延後の冷却速度を８℃／ｓ以下とするも
のである。また、緩冷却による歪放出の効果は700 ℃未
満の温度になると発揮できないので、圧延仕上げ温度か
ら700 ℃までの温度域を緩冷却すなわち８℃／ｓ以下と
することでよい。
【００２５】巻取り温度：650 ℃以下 巻取り温度の限定は、この発明のようにTi及びＰが複合
添加されている場合、650 ℃を超えると平均ｒ値が大き
く劣化することを見出したことによるものである。これ
は650 ℃超えの巻取り温度ではTi及びFeの燐化物が熱延
板に多量に析出し、詳細は不明であるが、これが焼鈍材
の平均ｒ値に悪影響をおよぼすためと推測される。した
がって巻取り温度は650 ℃以下とする。
添加されている場合、650 ℃を超えると平均ｒ値が大き
く劣化することを見出したことによるものである。これ
は650 ℃超えの巻取り温度ではTi及びFeの燐化物が熱延
板に多量に析出し、詳細は不明であるが、これが焼鈍材
の平均ｒ値に悪影響をおよぼすためと推測される。した
がって巻取り温度は650 ℃以下とする。
【００２６】冷間圧延は常法にしたがって行えばよく、
その圧下率も通常常識の範囲でよい。焼鈍は、連続焼鈍
が望ましい。その場合の焼鈍温度は再結晶が完了するよ
うに750 ℃以上とし、その上限はAc1 点（℃）＋50℃と
することが好ましい。なお、焼鈍後の鋼板に通常常識の
範囲で調質圧延を行うこともよい。
その圧下率も通常常識の範囲でよい。焼鈍は、連続焼鈍
が望ましい。その場合の焼鈍温度は再結晶が完了するよ
うに750 ℃以上とし、その上限はAc1 点（℃）＋50℃と
することが好ましい。なお、焼鈍後の鋼板に通常常識の
範囲で調質圧延を行うこともよい。
【００２７】以上、この発明によれば熱間圧延につづく
冷間圧延を極めて容易にするものであり、かつ得られる
鋼板は、優れる特性を有し深絞り用高張力冷延鋼板とし
て自動車用や家電用などに有利に適用できるものであ
る。また、上記冷延鋼板は溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜
鉛めっき鋼板としても好適である。
冷間圧延を極めて容易にするものであり、かつ得られる
鋼板は、優れる特性を有し深絞り用高張力冷延鋼板とし
て自動車用や家電用などに有利に適用できるものであ
る。また、上記冷延鋼板は溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜
鉛めっき鋼板としても好適である。
【００２８】
【実施例】表１に示す化学成分組成を含有する鋼片を素
材として、条件を種々変化させて熱間圧延し、酸洗を経
て圧下率：80％の冷間圧延を行い板厚：0.8 mmの鋼板と
した。ついで該鋼板を温度：800 ℃、時間：40秒間の連
続焼鈍を施したのち、圧下率：0.8 ％の調質圧延を行っ
た。
材として、条件を種々変化させて熱間圧延し、酸洗を経
て圧下率：80％の冷間圧延を行い板厚：0.8 mmの鋼板と
した。ついで該鋼板を温度：800 ℃、時間：40秒間の連
続焼鈍を施したのち、圧下率：0.8 ％の調質圧延を行っ
た。
【００２９】
【表１】
【００３０】かくして得られた熱延材について引張り強
さを調査し冷間圧延性の指標とするとともに、調質圧延
材について引張り強さ、全伸び及び平均ｒ値を調査し
た。ここで、引張試験はＪＩＳ５号試験片を用いて行
い、平均ｒ値は１５％引張り予歪を与えたのち、３点法
にて測定したＬ方向（圧延方向）、Ｄ方向（圧延方向に
対し４５°の方向）及びＣ方向（圧延方向に対し９０°
の方向）の平均値として 平均ｒ値＝（ｒL ＋２ｒD ＋ｒc ) ／４ から求めた。熱間圧延条件及び調査結果を表２にまとめ
て示す。
さを調査し冷間圧延性の指標とするとともに、調質圧延
材について引張り強さ、全伸び及び平均ｒ値を調査し
た。ここで、引張試験はＪＩＳ５号試験片を用いて行
い、平均ｒ値は１５％引張り予歪を与えたのち、３点法
にて測定したＬ方向（圧延方向）、Ｄ方向（圧延方向に
対し４５°の方向）及びＣ方向（圧延方向に対し９０°
の方向）の平均値として 平均ｒ値＝（ｒL ＋２ｒD ＋ｒc ) ／４ から求めた。熱間圧延条件及び調査結果を表２にまとめ
て示す。
【００３１】
【表２】
【００３２】表１及び２から明らかなように、この発明
の適合鋼を用いた場合で、この発明に適合する条件で熱
間圧延し緩冷却した適合例の熱延板は比較例の熱延板に
比し、引張り強さは低く冷間圧延性が優れていることを
示し、さらに、この発明の適合例の調質圧延材は、引張
り強さ：45 kgf／mm2 以上、全伸び：35％以上、平均ｒ
値1.8 以上と極めて優れる特性を示している。
の適合鋼を用いた場合で、この発明に適合する条件で熱
間圧延し緩冷却した適合例の熱延板は比較例の熱延板に
比し、引張り強さは低く冷間圧延性が優れていることを
示し、さらに、この発明の適合例の調質圧延材は、引張
り強さ：45 kgf／mm2 以上、全伸び：35％以上、平均ｒ
値1.8 以上と極めて優れる特性を示している。
【００３３】
【発明の効果】この発明は、極低炭素Ti、Nb、Ｂ複合添
加鋼をベースとして、Si、Mn及びＰの含有量の関係を特
定して含有させる低コストの合金添加鋼を用い、熱間圧
延及びその後の冷却条件を特定することにより、熱間圧
延後の冷間圧延性を向上させ、かつ優れる深絞り加工用
高強度冷延鋼板を得るもので、この発明によれば、上記
冷延鋼板の製造を容易にし、経済性にも優れていること
から、自動車用、家電製品用などに用いて極めて有利で
ある。
加鋼をベースとして、Si、Mn及びＰの含有量の関係を特
定して含有させる低コストの合金添加鋼を用い、熱間圧
延及びその後の冷却条件を特定することにより、熱間圧
延後の冷間圧延性を向上させ、かつ優れる深絞り加工用
高強度冷延鋼板を得るもので、この発明によれば、上記
冷延鋼板の製造を容易にし、経済性にも優れていること
から、自動車用、家電製品用などに用いて極めて有利で
ある。
フロントページの続き (72)発明者 加藤 俊之 千葉県千葉市中央区川崎町１番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (56)参考文献 特開 平６−10094（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−57372（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−25798（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−173247（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−345954（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名) C21D 8/02 - 8/04 C21D 9/46 - 9/48 C22C 38/00 - 38/60
Claims (2)
- 【請求項１】 Ｃ：0.001 wt％以上、0.005 wt％以下、 Si：0.2 wt％以上、1.0 wt％以下、 Mn：0.5 wt％以上、2.0 wt％以下、 Ti：0.01wt％以上、0.2 wt％以下、 Nb：0.001 wt％以上、0.02wt％以下、 Ｂ：0.0002wt％以上、0.005 wt％以下、 Ｐ：0.05wt％以上、0.15wt％以下、 Ｓ：0.02wt％以下、 sol Al：0.1 wt％以下及び Ｎ：0.005 wt％以下 を含んで、上記Si、Mn及びＰの含有量が、 0.2 ≦（Si（wt％）＋Ｐ（wt％））／Mn（wt％）≦1.0 の関係を満たし、残部は鉄及び不可避的不純物の組成か
らなる鋼スラブを素材として、Ar3 点（℃）以上、Ar3
点（℃）＋100 ℃以下の圧延仕上げ温度範囲で熱間圧
延を終了し、該温度より少なくとも700 ℃までの温度域
を８℃／ｓ以下の冷却速度で冷却し650 ℃以下の温度で
コイルに巻取ったのち、冷間圧延を行い、その後750 ℃
以上の温度で連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り加
工用高強度冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項２】 Ｃ：0.001 wt％以上、0.005 wt％以下、 Si：0.2 wt％以上、1.0 wt％以下、 Mn：0.5 wt％以上、2.0 wt％以下、 Ti：0.01wt％以上、0.2 wt％以下、 Nb：0.001 wt％以上、0.02wt％以下、 Ｂ：0.0002wt％以上、0.005 wt％以下、 Ｐ：0.05wt％以上、0.15wt％以下、 Ｓ：0.02wt％以下、 sol Al：0.1 wt％以下及び Ｎ：0.005 wt％以下 を含み、かつ Cr：1.0wt ％以下、 Ni：1.5 wt％以下、 Mo：0.5 wt％以下及び Cu：1.5 wt％以下 のうちから選んだ１種又は２種以上を含有させて、上記
Si、Mn及びＰの含有量が、 0.2 ≦（Si（wt％）＋Ｐ（wt％））／Mn（wt％）≦1.0 の関係を満たし、残部は鉄及び不可避的不純物の組成か
らなる鋼スラブを素材として、Ar3 点（℃）以上、Ar3
点（℃）＋100 ℃以下の圧延仕上げ温度範囲で熱間圧
延を終了し、該温度より少なくとも700 ℃までの温度域
を８℃／ｓ以下の冷却速度で冷却し、650 ℃以下の温度
でコイルに巻取ったのち、冷間圧延を行い、その後750
℃以上の温度で連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り
加工用高強度冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP01104094A JP3288514B2 (ja) | 1994-02-02 | 1994-02-02 | 深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP01104094A JP3288514B2 (ja) | 1994-02-02 | 1994-02-02 | 深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH07216452A JPH07216452A (ja) | 1995-08-15 |
| JP3288514B2 true JP3288514B2 (ja) | 2002-06-04 |
Family
ID=11766949
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP01104094A Expired - Lifetime JP3288514B2 (ja) | 1994-02-02 | 1994-02-02 | 深絞り加工用高強度冷延鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3288514B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP5283402B2 (ja) * | 2008-03-07 | 2013-09-04 | 日新製鋼株式会社 | 耐溶融金属脆化割れ性に優れたＺｎ−Ａｌ−Ｍｇ系めっき鋼板 |
| JP5447564B2 (ja) * | 2012-03-16 | 2014-03-19 | 新日鐵住金株式会社 | 冷延鋼板の製造方法 |
| JP5716760B2 (ja) * | 2013-01-10 | 2015-05-13 | 新日鐵住金株式会社 | 冷延鋼板の製造方法 |
-
1994
- 1994-02-02 JP JP01104094A patent/JP3288514B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH07216452A (ja) | 1995-08-15 |
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