JP3234642B2 - 深絞り加工用高張力冷延鋼板及びその製造方法 - Google Patents
深絞り加工用高張力冷延鋼板及びその製造方法Info
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Description
形性に優れる深絞り加工用高張力冷延鋼板とその製造方
法を提案するものである。この発明にかかる冷延鋼板
は、適宜表面処理やプレス加工をしたのち、例えば自動
車や家電製品などに使用され、場合によってはスポット
溶接して用いられるものであり、特にそれらに要求され
る成形性と強度を同時に付与することができるため、鋼
板の薄肉化、ひいては軽量化が達成できるものであっ
て、具体的には経済性に優れた引張強さが38kgf/mm2 以
上で、ランクフォード値すなわち平均r値が1.8 以上の
冷延鋼板が求められている。
施して極低炭素とし、さらに鋼中の固溶Cや固溶NをTi
などを含有させてこれらの炭窒化物として析出させCや
Nを固定した鋼をベースとして、これにSi、Mn及びPな
どを固溶させ、強度を高めた高張力冷延鋼板については
多くの提案がなされている。
の良好な高張力冷延鋼板とその製法においては、上記極
低炭素Ti添加鋼に多量のMn及びPを添加した冷延鋼板が
開示されている。この場合においては、適量のMn及びP
を添加することにより、焼鈍後少量の固溶Cが残存し、
これがr値を著しく向上させ、しかも、粒界に存在する
固溶Cのため二次加工脆性が効果的に防止されるとし、
さらに粒界強化のため必要に応じてBを添加してもよい
としている。しかしながら、Siを無添加としてPを添加
した場合スポット溶接性が劣化するという問題がある。
及びPの固溶強化成分を複合添加した冷延鋼板について
いくつかの開示がなされている。しかしながら、これら
のSi、Mn及びPの添加は単に固溶強化のためであり、個
々の成分の平均r値への影響は明らかにされているもの
の、高い深絞り性を有するこれら固溶成分間の複合添加
のバランスについては未だ解明されていないのが現状で
ある。
び固溶Nを固定するためのTi添加に加えて固溶Cのより
確実な固定を行うためNbを添加し、さらに二次加工脆性
の抑制のためにBを添加した、極低炭素Ti、Nb、B複合
添加鋼をベースにし、これをSiを含む低コストの合金添
加で、しかも通常の連続焼鈍で目標とする引張強さ38kg
f/mm2 以上、平均r値1.8 以上の耐二次加工脆性に優れ
る高張力冷延鋼板とその製造方法を提案することを目的
とする。
達成のため、上記の極低炭素Ti、Nb、B複合添加鋼に注
目し、鋭意研究を進めてきた。その結果、極低炭素Ti、
Nb、B複合添加鋼において、Si及びPの添加量にたいし
て、Mnの添加量を適当なバランスに保たせることによ
り、Nb添加によるより確実な固溶Cの固定化とあいまっ
て高い平均r値が得られることを新たに知見した。
起因していて、このため焼鈍後の平均r値の向上に有効
な(111)集合組織が発達するためである。一般に固
溶強化成分を単独に添加した場合、P及びSiについては
平均r値への影響は少なく、むしろ平均r値を上昇させ
る成分であるのに対して、Mnは平均r値を大きく劣化さ
せることが知られている。しかしながら、複合添加した
場合には、Si及びPのみでは、変態点が急激に上昇して
しまい、圧延条件及び焼鈍条件を規制する必要があっ
た。このため、変態点を下げる成分の添加が必要となっ
てきた。この変態点温度を下げる成分としては、Mn、N
i、Cu及びCrなどが挙げられるが、低コストでしかも有
効に変態点温度を低下させるためには、Mnの添加が有効
となる。しかしMnの添加量が多すぎると、低温変態相が
あらわれ熱延板を高強度にするとともに、焼鈍材の深絞
り性を大きく劣化させる。
量に応じた量のMnを添加することにより、熱延板を焼入
れ組織とすることなくフェライト組織とし、しかも、適
度なSi、Mn及びPのバランスを保たせることによりフェ
ライト粒径を微細にし、Nb添加によるより確実な固溶C
の固定とあいまって高い平均r値が得られるようにした
ものである。
らなることを特徴とする深絞り加工用高張力冷延鋼板で
あり、
て、Ar3 点(℃)以上、Ar3 点(℃)+100 ℃以下の圧
延仕上げ温度範囲で熱間圧延を終了し、650 ℃以下の温
度で巻取ったのち、冷間圧延を行い、その後750 ℃以上
の温度で連続焼鈍を施すことを特徴とする深絞り加工用
高張力冷延鋼板の製造方法である。
について述べる。 C:0.001 〜0.005 wt% Cは、再結晶時に固溶Cが多量に残存した場合、平均r
値を大きく劣化させる。また、固溶Cを固定させるTi、
NbもC含有量に応じて添加する必要があるためC含有量
はできるだけ低い方がよく、許容できる上限を0.005 wt
%とする。一方その下限は低いほどよいが、現在の製鋼
技術から0.001 wt%を下限とする。
め固溶強化成分として最適でありスポット溶接性の劣化
を抑制する。その効果の発現には最低でも0.2wt%を含
有させる必要がある。しかしながら、含有量が1.0 wt%
を超えると表面処理性が悪くなる。したがってその含有
量は、0.2 wt%以上、1.0 wt%以下とする。
とは異なり、変態点を下げる成分であるためこれを有効
に活用することにより、熱延板の粒径を極めて細かくす
ることができる。この熱延板の細粒化は、結晶粒界から
(111)集合組織が発達するため、平均r値の向上に
非常に有効である。その効果は含有量が0.5 wt%以上で
得られる。一方Mn自体は平均r値を劣化させる成分であ
るため、多量に含有させることは有害であり、その含有
量が2.0 wt%超えでは低温変態相が現れやすくなってフ
ェライト組織でなくなり、平均r値を大きく劣化させ
る。したがってその含有量は、0.5 wt%以上、2.0 wt%
以下とする。
有量とのバランスを、
できる。これはSiとPの含有量の和のMn含有量に対する
比が0.2 より小さくなると平均r値が劣化し、反対に1.
0 より多くなると変態点温度が高くなり、熱延板の細粒
化が望めなくなるためである。
定するために含有させる。その効果は含有量が0.01wt%
未満では十分でなく、0.2 wt%を超えると燐化物が発生
し、伸び及び平均r値を劣化させる。したがってその含
有量は0.01wt%以上、0.2 wt%以下とする。
である。Tiのみでも固溶Cの固定はできるが、Nbを複合
添加することにより、より確実にCを固定することがで
き平均r値を向上させる。その効果は含有量が0.001 wt
%未満では十分でなく、0.02wt%を超えて含有させると
オーステナイト未再結晶状態で熱間圧延することになっ
て、焼鈍材の成形性に悪影響をおよぼす。したがってそ
の含有量は0.001 wt%以上、0.02wt%以下とする。
にTi、Nbを添加した極低炭素鋼板に固溶強化成分を含有
させると、耐二次加工脆性が悪化するためBを含有させ
ることを必須とする。その効果は含有量が0.0002wt%以
上で発現するが、0.005 wt%を超えて過剰に含有させる
と、オーステナイトの再結晶を遅らせ熱間圧延時の負荷
が大きくなり、しかも、焼鈍材の材質を劣化させる。し
たがってその含有量は、0.0002wt%以上、0.005 wt%以
下とする。
強化能はSi及びMnにくらべて高く、平均r値を向上させ
る成分でもある。その効果を得るためには0.05wt%以上
含有させる必要があるが、0.15wt%を超えて含有させる
と、粒界に偏析して粒界を脆化させ、さらに凝固時に中
心偏析の原因になる。したがってその含有量は0.05wt%
以上、0.15wt%以下とする。
多くなるとMnS などの硫化物が増加し、伸びフランジ性
に代表される局部延性を低下させる原因となるため、そ
の含有量の上限を0.02wt%とする。
wt%を超えると脱酸効果が飽和するだけでなく介在物が
増加し、成形性に悪影響をおよぼす。したがってその含
有量は0.1 wt%以下とする。
Ti添加によりTiN として固定し成形性を向上させる。し
かしながら、多量のTiN が形成されると加工性の劣化を
まねく。このため許容できる含有量の上限を0.005 wt%
とする。
条件は常法にしたがって行うことでよい。
必要がある。Ar3 変態点未満では、二相域圧延となり、
焼鈍材の平均r値に悪影響をおよぼす集合組織が発達し
てしまい好ましくない。一方、Ar3 変態点に対し相対的
に高い温度、すなわち100 ℃を超えて高くなると、熱延
板の粒径が粗くなって、焼鈍時に深絞り性に有効な集合
組織の発達が不十分となるために不適である。したがっ
て熱間圧延仕上げ温度はAr3 点(℃)からAr3 点(℃)
+100 ℃までとする。
添加されている場合、650 ℃を超えると平均r値が大き
く劣化することを見出したことによるものである。これ
は650 ℃超えの巻取り温度ではTi及びFeの燐化物が熱延
板に多量に析出し、詳細は不明であるが、これが焼鈍材
の平均r値に悪影響をおよぼすためと推測される。した
がって巻取り温度は650 ℃以下とする。
その圧下率も通常常識の範囲でよい。焼鈍は、連続焼鈍
が望ましい。その場合の焼鈍温度は再結晶が完了するよ
うに750 ℃以上とし、その上限はAc1 点温度(℃)+50
℃とすることが好ましい。
を素材として、これらを熱間圧延してコイルに巻取り、
酸洗後、80%の圧下率で冷間圧延を行って板厚 0.8mmと
し、40秒間のアランダムバス処理による焼鈍を施して得
られた鋼板について引張特性を調査した。
度、焼鈍温度及び引張特性の調査結果を表2にまとめて
示す。
て行い、平均r値は、15%の引張予ひずみを与えたのち
3点法にて測定し、L方向(圧延方向)、D方向(圧延
方向に対し45°方向)及びC方向(圧延方向に対し90°
方向) の平均値として
例は引張強さが40kgf/mm2 以上で良好な平均r値を示し
ているが、さらに表2の平均r値を(Si(wt%)+P
(wt%)/Mn(wt%)のパラメータでまとめると図1の
ようになり、Si、P及びMnの含有量の関係を、
る。
均r値におよぼす巻取り温度の影響をグラフにして示す
と図2のようになり、巻取り温度が高くなり700 ℃にな
るとすでに平均r値は劣化している。
加鋼をベースとして、Si、Mn及びPの含有量の関係を特
定して含有させることにより、低コストの合金添加で、
しかも通常の連続焼鈍で、耐二次加工脆性に優れる深絞
り加工用高張力冷延鋼板を得るもので、この発明による
鋼板は、経済性にも優れていることから、自動車用、家
電製品用などに用いて有利である。
めたグラフである。
ラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】C:0.001 wt%以上、0.005 wt%以下、 Si:0.2 wt%以上、1.0 wt%以下、 Mn:0.5 wt%以上、2.0 wt%以下、 Ti:0.01wt%以上、0.2 wt%以下、 Nb:0.001 wt%以上、0.02wt%以下、 B:0.0002wt%以上、0.005 wt%以下、 P:0.05wt%以上、0.15wt%以下、 S:0.02wt%以下、 sol Al:0.1 wt%以下及び N:0.005 wt%以下 を含んで、上記Si、Mn及びPの含有量が、 【数1】 0.2 ≦(Si(wt%)+P(wt%))/Mn(wt%)≦1.0 の関係を満たし、残部は鉄及び不可避的不純物の組成か
らなることを特徴とする深絞り加工用高張力冷延鋼板。 - 【請求項2】C:0.001 wt%以上、0.005 wt%以下、 Si:0.2 wt%以上、1.0 wt%以下、 Mn:0.5 wt%以上、2.0 wt%以下、 Ti:0.01wt%以上、0.2 wt%以下、 Nb:0.001 wt%以上、0.02wt%以下、 B:0.0002wt%以上、0.005 wt%以下、 P:0.05wt%以上、0.15wt%以下、 S:0.02wt%以下、 sol Al:0.1 wt%以下及び N:0.005 wt%以下 を含んで、上記Si、Mn及びPの含有量が、 【数2】 0.2 ≦(Si(wt%)+P(wt%))/Mn(wt%)≦1.0 の関係を満たし、残部は鉄及び不可避的不純物の組成か
らなる鋼スラブを素材として、Ar3 点(℃)以上、Ar3
点(℃)+100 ℃以下の圧延仕上げ温度範囲で熱間圧延
を終了し、650 ℃以下の温度で巻取ったのち、冷間圧延
を行い、その後750 ℃以上の温度で連続焼鈍を施すこと
を特徴とする深絞り加工用高張力冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP21148392A JP3234642B2 (ja) | 1992-08-07 | 1992-08-07 | 深絞り加工用高張力冷延鋼板及びその製造方法 |
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JP21148392A JP3234642B2 (ja) | 1992-08-07 | 1992-08-07 | 深絞り加工用高張力冷延鋼板及びその製造方法 |
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JPH0657372A JPH0657372A (ja) | 1994-03-01 |
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Family Applications (1)
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JP21148392A Expired - Fee Related JP3234642B2 (ja) | 1992-08-07 | 1992-08-07 | 深絞り加工用高張力冷延鋼板及びその製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP6354299B2 (ja) * | 2014-05-01 | 2018-07-11 | 新日鐵住金株式会社 | 耐二次加工脆性に優れた440MPa級高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 |
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- 1992-08-07 JP JP21148392A patent/JP3234642B2/ja not_active Expired - Fee Related
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