JP3269799B2 - 加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車排気部材の
用途に適し、とくに加工性、耐粒界腐食性および高温強
度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ステンレス
鋼に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フェライト系ステンレス鋼は、オーステ
ナイト系ステンレス鋼と比べて安価であることから、自
動車排気系部材として多用されている。さて、自動車排
気系部材に用いられる材料には、加工性(1次加工およ
び2次加工での加工性)、高温強度、耐粒界腐食性が要
求される。ここに、2次加工とは、1次加工(例えば、
深絞りや曲げ加工)の後に、張り出し成形加工を行なう
ことをいうものとする。最近になって、このような2次
加工を受けたステンレス鋼が、特に、気温が低い冬期
に、脆性破断を起こしやすいということが大きな問題と
なってきている。また、高温強度、耐粒界腐食性につい
ては、鋼成分を高純度化し、多量のNb及び/又はTiを添
加する対策がとられてきて、主に、高温環境ではSUS 43
0J1Lが、湿食が生じるような比較的低温ではSUH 409Lが
使用されている。これらの鋼種は、いずれも高温強度や
耐粒界腐食性への向上要求には応えつつあるが、ますま
す過酷な加工を受けるようになった最近の自動車排気系
部材としては、両鋼とも加工性が十分ではなく、特に1
次および2次の加工性の向上が強く求められている。さ
らに、耐腐食性についても、例えば自動車用マフラーで
は、その腐食環境はますます過酷になりつつあり、SUH
409Lでは、その耐粒界腐食性の一層の向上が求められて
いる。
【0003】ところで、このような用途を目指したフェ
ライト系ステンレス鋼の提案として、特開平4−228547
号公報には、高温強度、耐粒界腐食性、造管性を向上さ
せるという意図で、高純度化したNb−V−(Ti,Zr)複
合添加鋼が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開平4−228547号公報に例示される従来の鋼では、通常
の1次加工は可能であっても、2次加工性は十分ではな
かった。その上、前記1次加工といえども必ずしも十分
ではなかった。というのは、1次加工性を評価する指標
として、従来は、面内各方向のr値から求めた平均r
値、あるいは、圧延方向r値を用いており、もっぱらこ
の指標を念頭にしつつ、材料開発が進められてきた。し
かし、実際の冷延板では、面内で、異方性が存在するた
めに、最も低いr値を示す方向で、加工不良が生じてお
り、今までの材料の評価とは必ずしも対応していない。
むしろ、実際の加工性は、r値の最小値(以下、単にr
min と略記する)と対応すると思われる。この視点でみ
るとき、上記公報に開示の技術では十分な1次加工性が
得られないのは、従来、rmin の概念を取り入れた開発
が行われていなかったことが考えられる。
【0005】そこで、本発明の目的は、自動車エンジン
排気系部材に用いられているフェライト系ステンレス鋼
において、上記既知技術が抱えていた問題を解決し、1
次、2次の加工性、高温強度、耐粒界腐食性のいずれを
も同時に満足した材料を提供することにある。ここに、
1次加工性の具体的目標値は、rmin ≧0.9 であり、高
温強度の目標値は、900 ℃における0.2 %耐力≧15 MPa
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上掲の目的
の実現に向けて、1次および2次加工性、高温強度、耐
粒界腐食性の向上手段について検討した結果、NbとV、
さらにBを適正範囲で複合添加しすることが有効である
ことを見い出した。その際、同時に、TiおよびAlをでさ
るだけ含まないよう含有量を極力制限することが重要で
あることもわかった。本発明は、このような知見に基づ
いてなされたものであり、その要旨構成は以下のとおり
である。
【0007】 (1)C:0.02wt%以下、 Si:3.0 wt%以下、 Mn:0.6 wt%以下、 P:0.06wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Cr:2.0 〜20.0wt%、 Ni:1.0 wt%以下、 Nb:0.1 〜0.6 wt%、 V:0.05〜1.0 wt%、 Ti:0.020 wt%以下、 B:0.0002〜0.005 wt%、 Al:0.05wt%以下、 N:0.020 wt%以下を含有し、かつ、上記Nb量およびV
量は、 V(wt%)≧−4.5 Nb(wt%)+1.05 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
物からなることを特徴とする加工性、耐粒界腐食性およ
び高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ス
テンレス鋼。
【0008】(2)上記 (1)に記載の鋼において、さらにR
EM :0.001 〜0.10wt%を含有し、残部がFeおよび不可
避的不純物からなることを特徴とする加工性、耐粒界腐
食性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェラ
イト系ステンレス鋼。
【0009】(3)上記 (1)または (2)に記載の鋼におい
て、さらに Cu:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜3.0 wt% のうちから選ばれるいずれか1種または2種を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
る、加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエン
ジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼。
【0010】(4)上記 (1)〜 (3)のいずれか1つに記載
の鋼において、さらにCo:0.02〜0.3 wt%を含有し、残
部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
る、加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエン
ジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼。
【0011】(5)上記 (1)〜 (4)のいずれか1つに記載
の鋼において、さらにCa:0.001 〜0.03 wt %を含有
し、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴
とする、加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れる
エンジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳述する。
発明者らは、まずNb単独添加鋼においては、耐粒界腐食
性向上のために、多量のNbを添加する必要があり、かか
る成分系では、1次加工性が劣化し、また、2次加工性
も劣化するため、多量のB添加を必要とすることがわか
った。そして、このような多量のNb、Bの添加は、1次
加工性をさらに劣化させ、その上、Nbの多量添加はコス
ト上昇も招き、実用的ではないと判断した。次に、Nb−
Ti複合添加鋼に着目した。この場合には、比較的少ない
Nb量で、高温強度、耐粒界腐食性、1次加工性は向上す
るものの、2次加工性は多量のB添加を行わないと向上
せず、結果として、1次加工性、靱性が低下し、製造性
が劣化するという問題が生じ、自動車排気系材料として
必要なすべての特性 (高温強度、粒界腐食性、1次・2
次加工性) を兼備させることは、困難と考えられた。
【0013】ところが、Nb−V−B系では、比較的少な
いNbで、高温強度、耐粒界腐食性、1次加工性が向上
し、そのうえ、少ないB添加で、2次加工性も向上する
ことがわかった。ここで、特に重要な知見として得られ
たことは、V添加による1次加工性の向上は、Al量を極
微量に制限しないと発現されこと(図1参照)と、B添
加による2次加工性の向上は、Tiを極微量に制限しない
と発揮されないこと(後述する表1、2の比較鋼B参
照)である。以上述べた理由により、本発明では、特に
TiとAlの含有量の上限を厳しく制限することとした。こ
のようにして定めた、Ti、Al含有量の上限を極微量に制
限したNb−V−Bの成分系は、所期の目的にかない、高
温強度、耐粒界腐食性、1次、2次の加工性のすべてを
兼備した材料であることがわかった。また、排気部材に
求められる上記基本特性に加えて、耐酸化性向上のため
にはさらにREM の添加が、耐食性向上のためにはさらに
Cu、Moの添加が、溶接部の靱性向上のためにはさらにCo
の添加が有効であることを見いだした。これらの付加的
な添加元素は、基本特性のほかに、用途により要請され
る特性に応じて添加される。
【0014】次に、本発明において、フェライト鋼の成
分組成を限定した理由について説明する。 C:0.02wt%以下 Cは、靭性および加工性を劣化させる元素であり、0.02
wt%を超えると靱性および加工性の劣化が顕著となるた
め、0.02wt%以下とする。なお、靱性および加工性の上
から、C含有量は低いほどよく、0.01wt%以下に抑制す
るのが望ましい。
【0015】Si:3.0 wt%以下 Siは、耐酸化性、高温塩害性の向上に有効な元素である
が、3.0 wt%を超えると、1次、2次の加工性の劣化が
顕著になるので、3.0 wt%を上限とする。なお、Si含有
量は0.8 wt%以下とするのが望ましい。
【0016】Mn:0.6 wt%以下 Mnは、脱酸のため添加するが、過剰の添加は粗大なMnS
を形成し、加工性を低下させ、異方性を増大させる。こ
のため、Mn量は0.6 wt%以下、好ましくは0.2wt%以
下、さらに好ましくは0.1 wt%以下とする。
【0017】P:0.06wt%以下 Pは、耐食性に悪影響を及ぼすので少ないほどよいが、
脱P処理にはコストの上昇を伴う。このため、実生産上
許容しうる0.06wt%を上限とする。
【0018】S:0.01wt%以下 Sは、耐食性に悪影響を及ぼすので少ないほどよいが、
低S化処理にはコストの上昇を伴う。このため、実生産
上許容しうる0.01wt%以下とし、コスト的には0.002 〜
0.01wt%が望ましい。
【0019】Cr:2.0 〜20.0wt% Crは、耐食性の向上に寄与する元素であり、自動車用と
しては2.0 wt%以上の添加が必要である。しかし、20.0
wt%を超えて添加すると、加工性が低下し、またコスト
高にもなるので、その上限を20.0wt%、好ましくは16.0
wt%未満とする。
【0020】Ni:1.0 wt%以下 Niは、加工性を低下させる元素であるので、1.0 wt%以
下とする。
【0021】Nb:0.1 〜0.6 wt% Nbは、高温強度、耐粒界腐食性を高める元素であり、0.
1 wt%以上添加する必要がある。特に、Nb−V複合添加
により、優れた1次加工性が得られる。しかし、0.6 wt
%を超えて添加しても効果が飽和する傾向を示し、いた
ずらにコスト高を招くことになるので、その上限を0.6
wt%、好ましくは0.45wt%とする。なお、Nb−V複合添
加にあたり、耐粒界腐食性の点から、図2に示すよう
に、V(wt%)≧−4.5 Nb(wt%)+1.05を満足させる
必要がある。
【0022】V:0.05〜1.0 wt% Vは、Nbとの複合添加によって、1次加工性の向上に大
きく寄与する。図1は、1次加工性の指標としたrmin
値に及ぼすVの影響を示したものである。発明者らの調
査によると、平均r値が高くても、rmin が低いと、加
工できない場合があった。これは、実際に起こる破断
が、板面内の最も低いr値(rmin )の方向で生じるか
らである。このrmin 値は、1次加工性を考える上で重
要であるのにもかかわらず、従来は、あまり考慮されて
いかなった。発明者らの更なる検討の結果、Nb一Vの複
合添加は、平均r値とrmin 値の両方を向上させるのに
有効であることがわかった。その効果は、複合添加の場
合に、0.05wt%以上で顕著となるが、1.0 wt%超えて添
加しても、効果が飽和し、コスト高を招くことになるの
で、0.05〜1.0 wt%とする。なお、耐粒界腐食性の点か
ら、V(wt%)≧−4.5 Nb(wt%)+1.05を満足させる
必要があることは前述したとおりである。
【0023】Ti:0.020 wt%以下 Tiは、従来、Nb,V等と等価な効果があるとの考えが一
般的であったが、本発明の目的においては、2次加工性
および表面性状を劣化させる有害な元素であり、積極的
に排除しなければならない。その影響は、0.020 wt%を
超えると顕著に顕れるので、0.020 wt%以下に制限す
る。
【0024】B:0.0002〜0.005 wt% Nb−V成分系では、高温強度、耐粒界腐食性および1次
加工性が向上する反面で、2次加工性が劣化してしま
う。Bは、この2次加工性の改善に効果的な元素であ
る。改善の効果は0.0002wt%以上の添加で顕れるが、0.
005 wt%を超えて添加すると1次加工性の劣化が著しく
なる。したがって、B量は、0.0002〜0.005wt%の範囲
で添加する。
【0025】Al:0.05wt%以下 Alは、通常は脱酸材として使用するものの、1次加工性
を劣化させる有害な元素であり、積極的に排除する必要
がある。その影響は、0.05wt%を超えると顕著になるの
で、0.05wt%以下に制限する。
【0026】N:0.020 wt%以下 Nは、鋼の靱性および加工性を劣化させる元素である。
0.020 wt%を超えると、その程度が顕著になるので、0.
020 wt%以下、好ましくは0.010 wt%以下とする。
【0027】REM :0.001 〜0.10wt% REM は、希土類元素, すなわちYおよびLa, Ce等のラン
タノイドの元素群を意味する。0.001 wt%以上で耐酸化
性を向上させる効果を有するが、0.10wt%を超えて添加
すると、加工性の劣化が著しくなり、また高価でもある
ので、0.001 〜0.10wt%に限定する。なお、LaとCeを含
んだミッシュメタルといわれるものも、REM の一種であ
る。YおよびLaとCe等のランタノイドの元素群であれ
ば、単独, 複合のいずれの添加であっても耐酸化性向上
に寄与する。
【0028】Cu:0.05〜1.0 wt% Cuは、耐食性を向上させるため、必要に応じて添加す
る。その効果は0.05wt%以上の添加で発揮されるが、多
量の添加は加工性を劣化させるため、1.0 wt%以下に限
定する。なお、望ましい添加範囲は0.15〜0.30wt%であ
る。
【0029】Mo:0.05〜3.0 wt% Moは、耐食性を向上させるため、必要に応じて添加す
る。その効果は0.05wt%以上の添加で発揮されるが、多
量の添加は加工性を劣化させるため、1.0 wt%以下に限
定する。
【0030】Co:0.02〜0.3 wt% Coは、溶接部の靱性を向上させる。その効果は、0.02wt
% 以上の添加からあらわれるが、多量の添加は、加工性
の劣化およびコスト高となるので、0.3 wt% を上限とす
る。
【0031】Ca:0.001 〜0.03 wt % Caは、スラブ鋳造時において、介在物によるノズル詰ま
りを抑制する効果を有する元素であり、必要に応じて添
加する。その効果は、0.001 wt%以上の添加で顕れる
が、0.03wt%を超えて添加しても効果が飽和するばかり
でなく、Caを含む介在物が孔食の起点となり、耐食性を
劣化させるので、0.003 wt%を上限とする。
【0032】本発明鋼の製造方法は、この種の鋼を製造
する際に用いられる一般的な工程でよい。例えば、所定
の成分組成からなる鋼を転炉、電気炉等の通常の製鋼法
で溶製し、連続鋳造法または造塊法で鋼片とした後、熱
間圧延− (熱延板焼鈍) −酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍
−酸洗、さらに用途に応じて、冷間圧延−仕上げ焼鈍−
酸洗を繰り返し行う方法によればよい。特に熱延板焼鈍
を省略するプロセスがコスト上有利であり望ましい。
【0033】
【実施例】表1に示す成分組成の鋼を溶製し、1160℃に
加熱後、板厚5mmまで熱間圧延し熱延板とした。この
熱延板を、酸洗して、板厚2mmまで冷間圧延し、900
℃以上での仕上げ焼鈍、酸洗を順次行い、冷延焼鈍板と
した。かくして得られた冷延焼鈍板について、以下に示
す方法により、高温強度、耐粒界腐食性および1次、2
次の加工性を評価した。なお、熱延板についても、表面
観察を行い、○(手入れ不要)、×(手入れ必要)で判
定した。
【0034】
【表1】
【0035】(1) 高温強度 板厚2mmの板状試験片を用いて、900 ℃で、0.3 %/
分の速度で引張試験を行い、0.2 %耐力を測定した。現
行材の中で、エキゾーストマニホールドのような高温部
材に使用されているSUS430 J1Lの値が15 MPaであること
から、15 MPa以上を○、15 MPa未満を×として評価し
た。
【0036】(2) 耐粒界腐食性 マフラー、排気パイプのような、比較的低温の使用環境
では、主に、SUH 409Lが使用されている。試験条件を、
現行材SUH 409Lでは、粒界腐食が発生するような厳しい
条件に設定し、腐食の状態を評価した。その条件を次に
示す。 試験条件 1250℃−10分の加熱後、空冷することにより、粒界が腐
食されやすい状態にした後、改良型シュトラウス試験を
おこなった。腐食溶液は、硫酸100 ml/l、硫酸鋼100 g/
l とし、この液中で16時間の沸騰中浸せきとした。そ
の後180 度曲げを行ない、深さ1mm以上の割れの有
(×)無(○)で評価した。
【0037】(3) 1次加工性 圧延方向に対して、0°、45°、90°方向から、JIS 13
号Bの引張試験片(板厚2mm)を採取し、各方向のr
値を測定し、その最低値rmin から次のように評価し
た。 ○:rmin ≧ 0.9 △:rmin = 0.8〜 0.9未満 ×:rmin < 0.8 (4)2次加工性 1次加工により、絞り比2のカップを作成し、このカッ
プに、図3に示すような、一40℃での落重試験を行い、
割れの有(×)無(○)で評価した。
【0038】得られた試験結果を表2に示す。比較鋼A
は、Nb単独添加であるが、比較的Nbが少ないため、2次
加工性は優れているものの、rmin が低く、また、図2
の範囲を外れているため、耐粒界腐食性が劣る。さら
に、高温強度も不十分である。比較鋼Bは、Tiが添加さ
れているため、Bを0.0003wt%添加しているにも関わら
ず、2次加工性が劣り、また、熱延鋼板の表面性状も悪
い。比較鋼Cは、Nb−微量V材であり、図2の範囲を満
たしているため、耐粒界腐食性は優れているものの、多
量のNb添加によって、1次加工性を表すrmin が低く、
また、コスト高でもある。また、Bが無添加のため、2
次加工性も不十分である。比較鋼Dは、Alが添加されて
いるため、1次加工性に劣る。比較鋼Eは、Nb−微量V
−B材である。図2の範囲を満たしているため、耐粒界
腐食性は優れているものの、多量のNbが添加されている
ため、V添加にもかかわらず、1次加工性向上が不十分
となり、コスト高にもなる。比較鋼Fは、V−微量Nb材
である。図2の範囲を満たしていないため、耐粒界腐食
性は不十分であり、さらに、高温強度も不十分である。
比較鋼Gは、現行材(SUH 409L)である。いずれの特性
も発明鋼1〜7には及ばない。比較鋼Hは、現行材(SU
S430 J1L)である。図2の範囲を満たしているため、耐
粒界腐食性は優れているものの、V添加量が少ないた
め、1 次加工性を表すrmin が低い。また、Bが添加さ
れていないため、2次加工性も不十分である。これらの
比較例に対して、発明鋼1〜7は、いずれも、自動車排
気系部材が必要とする高温強度、耐粒界腐食性、1次加
工性、2次加工性といったすべての特性を、比較的少な
いNb添加量で達成させることが可能である。
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】上述したように、本発明によれば、高温
強度、耐粒界食性、加工性(1次および2次)のすべて
の特性に優れるフェライト系ステンレス鋼が提供できる
ようになり、これら特性が要求されるエンジン排気部材
の製造性、製品の品質を一段と高めることが可能とな
る。また、この鋼は、自動車エンジン排気部材同様な特
性が要求される、発電システムの排気経路部材の用途に
も適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al量、Ti量が異なるフェライト系ステンレス鋼
のrmin 値に及ぼすV量の影響を示すグラフである。
【図2】耐粒界腐食性に及ぼすNb量およびV量の影響を
示すグラフである。
【図3】2次加工性の試験方法を説明するための摸式図
である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−3606(JP,A) 特開 平10−237600(JP,A) 特開 平4−228547(JP,A) 特開 平10−17999(JP,A) 特開 平7−126812(JP,A) 特開 平7−331389(JP,A) 特開 平8−120417(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.02wt%以下、 Si:3.0 wt%以下、 Mn:0.6 wt%以下、 P:0.06wt%以下、 S:0.01wt%以下、 Cr:2.0 〜20.0wt%、 Ni:1.0 wt%以下、 Nb:0.1 〜0.6 wt%、 V:0.05〜1.0 wt%、 Ti:0.020 wt%以下、 B:0.0002〜0.005 wt%、 Al:0.05wt%以下、 N:0.020 wt%以下 を含有し、かつ、上記Nb量およびV量は、 V≧−4.5 Nb+1.05 の関係を満たして含有し、残部がFeおよび不可避的不純
    物からなることを特徴とする加工性、耐粒界腐食性およ
    び高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ス
    テンレス鋼。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の鋼において、さらにREM
    :0.001 〜0.10wt%を含有し、残部がFeおよび不可避
    的不純物からなることを特徴とする加工性、耐粒界腐食
    性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライ
    ト系ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2に記載の鋼におい
    て、さらにCu:0.05〜1.0 wt%、Mo:0.05〜3.0 wt%の
    うちから選ばれるいずれか1種または2種を含有し、残
    部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
    る、加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエン
    ジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼に
    おいて、さらにCo:0.02〜0.3 wt%を含有し、残部がFe
    および不可避的不純物からなることを特徴とする、加工
    性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン排気
    部材用フェライト系ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼に
    おいて、さらにCa:0.001 〜0.03 wt %を含有し、残部
    がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、
    加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン
    排気部材用フェライト系ステンレス鋼。
JP03869798A 1998-02-20 1998-02-20 加工性、耐粒界腐食性および高温強度に優れるエンジン排気部材用フェライト系ステンレス鋼 Expired - Fee Related JP3269799B2 (ja)

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