以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、層構造などの説明の便宜上、下記に示す例においては基材層を下に配置した図と共に説明がなされるが、本発明は、必ずしもこの配置で使用などがなされるわけではない。なお、以下の説明において、層の厚み方向の一方を上または上方といい、層の厚み方向の他方を下または下方という場合がある。
<バリア性フィルム>
本発明の実施形態に係るバリア性フィルムについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバリア性フィルムの構成を簡略に示す部分断面図である。図1に示すように、バリア性フィルム10は、基材層11と、蒸着層12と、ガスバリア性塗布膜13とを備えている。バリア性フィルム10は、基材層11、蒸着層12およびガスバリア性塗布膜13が、基材層11、蒸着層12、ガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
[基材層]
基材層11は、以下で説明するポリエステルを主成分として含む樹脂組成物からなるものである。
(ポリエステル)
ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを共重合して得られるものである。本発明において使用されるポリエステルは、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールを含んでなり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸からなる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法などにより得ることができる。また、販売されているバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から販売されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
ジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸およびイソフタル酸などが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸などの、通常炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルなどの低級アルキルエステル、無水コハク酸などの上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸およびコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物がより好ましい。
これらのジカルボン酸は、一種または二種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリエステルは、上記のジオール単位およびジカルボン酸単位に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであってもよい。共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸および/またはその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能および/または3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤(カップリング剤)を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるので最も好ましい。
また、上記ポリエステルは、これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルでもよい。カップリング剤としては、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物などを使用することができるが、その量は、通常ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物を使用することができる。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの公知のジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリエステルは、上記したジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合させる従来公知の方法により得ることができる。具体的には、上記のジオール単位とジカルボン酸単位とのエステル化反応および/またはエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法、または有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法などによって製造することができる。
ポリエステルを製造する際に用いるジオール単位の使用量は、ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化および/またはエステル交換反応および/または縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般的に、周期表で、水素、炭素を除く第1族〜第14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも一種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ−ジケトナート塩などの有機基を含む化合物、さらには前記した金属の酸化物、ハロゲン化物などの無機化合物およびそれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなるため、重合時に液状であるか、またはエステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネートおよびこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマーなども好適に用いられる。さらには、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物も好適に用いられる。これらの中でも、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネートおよびテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名「C−94」)が好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の商品名「C−94」など)が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が挙げられる。また、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物を使用してもよい。これらの中でも、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどの観点から、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなる。使用する触媒量が少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。使用する触媒量としては、その使用量を低減させる程、生成するポリエステルの末端カルボキシル基量が低減されるため、使用する触媒量を低減させることが好ましい。
ジカルボン酸単位とジオール単位とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、通常、150〜260℃の範囲である。反応雰囲気は、通常窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaである。反応時間は、通常、1時間〜10時間である。
上記した製造工程において、カップリング剤を反応系に添加してもよい。カップリング剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で、無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
これらのカップリング剤を用いた高分子量ポリエステルは公知の方法を用いて製造することができる。カップリング剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。具体的には、ジカルボン酸単位とジオール単位とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、質量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルプレポリマーに上記カップリング剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。Mwが20,000以上のプレポリマーであれば、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので、反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
得られたポリエステルは、固化させた後、さらに重合度を高めたり、環状三量体などのオリゴマーを除去するため、必要に応じて固相重合を行ってもよい。具体的には、ポリエステルをチップ化して乾燥させた後、100〜180℃の温度で1〜8時間加熱してポリエステルを予備結晶化させ、続いて、190〜230℃の温度で、不活性ガス雰囲気下または減圧下において1〜数十時間加熱することにより行われる。
上記のようにして得られるポリエステルの固有粘度は、0.5dl/g〜1.5dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.6dl/g〜1.2dl/gである。固有粘度が0.5dl/g未満の場合は、引裂き強度をはじめ、半透過反射フィルム基材としてポリエステルフィルムに要求される機械特性が不足する可能性がある。他方、固有粘度が1.5dl/gを超えると、原料製造工程およびフィルム製膜工程における生産性が損なわれる。なお、固有粘度は、オルトクロロフェノール溶液で、35℃において測定される。
ポリエステルの製造工程において、または製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤を添加することができる。添加剤として、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤、着色顔料などが挙げられる。添加剤は、ポリエステル樹脂組成物全体に対して、5〜50質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲で添加されることが好ましい。
基材層11を構成する樹脂組成物には、上記したポリエステルに加えて、ポリエステルを製膜してフィルムを製造する際に発生する切れ端などを再利用した樹脂を含んでいてもよい。このような再利用に供されるポリエステルとしては、上記したバイオマス由来のジオール単位を含むポリエステルの他、従来の石化由来のジオール単位およびジカルボン酸単位からなるポリエステルであってもよい。このような再利用ポリエステルを使用することにより、環境負荷をより一層低減することができる。
ポリエステルを含む樹脂組成物は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、ポリエステル中の全炭素に対して10〜19%含まれることが好ましい。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、ポリエステル中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、ポリエステル中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioを、下記式(1)のように定義する。
Pbio(%)=PC14/105.5×100 ・・・(1)
例えば、PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本実施形態においては、樹脂組成物中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は、10〜19%であることが好ましい。樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量が10%未満であると、カーボンオフセット材料としての効果が乏しくなる。一方、上記したように、樹脂組成物中のバイオマス由来の炭素含有量は20%に近いほど好ましいが、フィルムの製造工程上の問題や物性面から、樹脂組成物中には上記したようなリサイクルポリエステルや添加剤を含む方が好ましいため、実際の上限は18%となる。
すなわち、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、ポリエステル中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioが20%であり、バイオマス由来の炭素の含有量が樹脂組成物中の全炭素に対して10〜19%であることから、ジオール単位としてバイオマス由来のエチレングリコールと、ジカルボン酸単位として石化燃料由来のジカルボン酸とを用いて得られたポリエステルが、樹脂組成物全体に対して、50(=10%/20%)質量%〜95(=19%/20%)質量%含有されていることが好ましいことを意味する。
基材層11は、上記した樹脂組成物を製膜してフィルムに加工したものを使用することができる。樹脂組成物を樹脂フィルムとするには、従来のポリエステルからなる樹脂組成物をフィルムに加工する方法を用いることができる。例えば、樹脂組成物を公知の溶融押出機などでシート状に成形し、次いでシート状に成形した成形体(シート状成形体)を冷却することにより樹脂フィルムが製造される。具体的には、上記した樹脂組成物を乾燥させた後、ポリエステルの融点以上の温度(Tm)〜Tm+70℃の温度に加熱された溶融押出機に供給して、樹脂組成物を溶融し、例えばTダイなどのダイからシート状に押出し、次いで押出されたシート状成形体を回転している冷却ドラムなどで急冷固化することにより樹脂フィルムを成形することができる。
溶融押出機としては、一軸押出機、二軸押出機、ベント押出機、タンデム押出機などの公知の押出機を目的に応じて使用することができる。
樹脂フィルムは、シート状成形体を少なくともMD(Machine Direction)方向またはTD(Transverse Direction)方向の一軸方向に延伸処理することで得られる。なお、MD方向とは、溶融押出機を用いてシート状成形体を押出した時の押出し方向であり、TD方向とは、溶融押出機を用いてシート状成形体を押出した時の押出し方向と直交する方向である。シート状成形体を延伸する方法としては、公知の延伸方法が使用できる。例えば、縦方向一軸延伸、縦方向一軸多段延伸、横方向一軸延伸、縦横逐次二軸延伸、縦横同時二軸延伸、またはこれらの組合せなどにより、一軸または二軸方向にシート状成形体を延伸する。
樹脂フィルムは、二軸延伸して形成されていることが好ましい。シート状成形体を二軸延伸して樹脂フィルムを形成する場合、例えば、上記のようにして冷却ドラム上に押し出されたシート状成形体を、続いて、ロール加熱、赤外線加熱などで加熱し、縦方向に延伸する。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。縦延伸は、通常、50〜100℃の温度範囲で行われる。縦延伸の倍率は、樹脂フィルムの用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上4.2倍以下とするのが好ましい。延伸倍率が2.5倍未満の場合は、樹脂フィルムの厚み斑が大きくなり良好な樹脂フィルムを得ることが難しい。
縦延伸された樹脂フィルムは、続いて、横方向に延伸して、熱固定、熱弛緩の各処理工程を順次施す。これにより、二軸延伸フィルムとなる。横延伸は、通常、50〜100℃の温度範囲で行われる。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、2.5倍以上5.0倍以下とするのが好ましい。2.5倍未満の場合は樹脂フィルムの厚み斑が大きくなり良好な樹脂フィルムが得られ難く、5.0倍を超える場合は製膜中に破断が発生し易くなる。
横延伸の後、続いて熱固定処理を行うが、好ましい熱固定の温度範囲は、ポリエステルのTg+70〜Tm−10℃である。また、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。さらに熱収縮率の低滅が必要な用途については、必要に応じて熱弛緩処理を行ってもよい。
上記のようにして得られる樹脂フィルムの厚さは、その用途に応じて任意であるが、通常、3〜100μm、好ましくは5〜50μmである。このような樹脂フィルムの破断強度は、MD方向で5〜40kg/mm2、TD方向で5〜35kg/mm2である。また、樹脂フィルムの破断伸度は、MD方向で50〜350%、TD方向で50〜300%である。また、150℃の温度環境下に30分放置した時の収縮率は、0.1〜5%である。このように、樹脂フィルムは、従来の化石燃料由来の材料のみから製造されるポリエステルフィルムの物性と同等である。
[蒸着層]
蒸着層12は、基材層11の一方(上方)の面上に設けられ、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)からなる蒸着膜である。蒸着層12は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性の機能を有する層として機能する。バイオマス由来のポリエステル樹脂からなる基材層11に、物理気相成長(PVD)法を用いて形成された蒸着層12と、後記するガスバリア性塗布膜13とを設けることにより、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性を付与ないし向上させることができる。なお、蒸着層12は二層以上設けられてもよい。蒸着層12を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。また、蒸着層12は、基材層11の他方(下方)の面上に一層以上設けられてもよい。また、蒸着層12は、基材層11の両面にそれぞれ一層以上設けられてもよい。
本実施形態においては、蒸着層12は、真空蒸着法、酸化反応蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、およびイオンクラスタービーム法などのPVD法を用いて形成される。なお、PVD法を用いて形成された蒸着層には、有機物、すなわち、炭素成分などが含まれない。そのため、本実施形態において、PVD法を用いて形成された蒸着層は、有機物、すなわち、炭素成分を含まない蒸着層である。
真空蒸着法は、金属または金属酸化物を原料(蒸着材料)とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材層11の面に蒸着する方法である。酸化反応蒸着法は、原料として金属または金属酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて、これを基材層11の面に蒸着する方法である。また、酸化反応蒸着法は、酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式としてもよい。上記方法において、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、電子ビ−ム(EB)加熱方式などを用いて行うことができる。
蒸着層12は、アルミニウム酸化物(酸化アルミニウム)で形成されている。蒸着層12としては、酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することが好ましい。具体的には、蒸着層12は、式AlOX(式中、Xは、0.5〜1.5の範囲の数を表す。)で表される酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜である。蒸着層12は、膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が減少している酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を使用することができる。酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜は、式AlOX(式中、Xは、0.5〜1.5の範囲の数を表す。)で表され、その薄膜表面から内面に向かう深さ方向に向かってXの値が増加していることが好ましい。なお、本実施形態においては、上記の式中のXの値としては、基本的には、X=0.5以上のものを使用することができるが、本実施形態においては、X=1.0未満になると、着色が激しく、かつ、透明性に劣ることから、X=1.0以上のものを使用することが好ましい。また、X=1.5のものは、Alと酸素とが完全に酸化した状態のものであることから、上限としては、X=1.5までのものを使用することができる。なお、上記の式中のXの値が0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではない。
なお、Xの値の減少割合は、例えば、X線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy:XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy:SIMS)などの表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングするなどして分析する方法を利用して、蒸着層12の元素分析を行うことより確認することができる。
酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜は、例えば、巻き取り式真空蒸着装置などを使用して形成することができる。巻き取り式真空蒸着装置を用いて酸化アルミニウムの非結晶性の薄膜を形成する場合、真空チャンバーの真空度としては、100〜10−5mbarが好ましく、10−1〜10−4mbarがより好ましい。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10−2〜10−8mbarが好ましく、10−3〜10−7mbarがより好ましく、酸素導入後においては、10−1〜10−6mbarが好ましく、10−2〜10−5mbarがより好ましい。基材層11の搬送速度としては、10〜800m/分が好ましく、50〜600m/分がより好ましい。なお、酸素導入量などは、蒸着機の大きさなどによって異なる。
酸化アルミニウムの酸化度が高すぎると、形成される膜質が硬くなることから蒸着層12にクラックが入り易くなり、また、酸化アルミニウムの酸化度が低すぎると、透明性が低下する。そのため、基材層11への酸化アルミニウムの蒸着中ないし、蒸着直後の蒸着層12の紫外線(波長366nm)透過率が85〜96%の範囲が好ましく、87〜94%の範囲内がより好ましく、かつ蒸着層12の膜厚が加工処理の適性などを考慮して、150〜600Åの範囲内であることが好ましい。また、蒸着層12が酸化珪素からなる場合、一酸化珪素と珪素との混合物を原料とし、蒸着層12の膜厚が、後加工適性を考慮して、50〜300Åの範囲内であることが好ましい。
本実施形態においては、基材層11上に設ける蒸着層12の膜厚は、30〜100Åである。30Å未満であると、ガスバリア性塗布膜13を併用した場合であってもガスバリア性が不十分となる場合がある。一方、100Åを超えると、ガスバリア性フィルムを包装体に使用した場合にガスバリア性能が維持できない場合がある。この理由は定かではないが、蒸着層(アルミナ)12の厚みが100Åを超えると屈曲性が低下し、包装体のような用途に使用した場合に蒸着層12の一部に亀裂ないしピンホールが発生してガスバリア性が低下するものと考えられる。蒸着層12の膜厚は、好ましくは、40〜90Å、より好ましくは、50〜80Åの範囲である。なお、蒸着層12の膜厚は、例えば、蛍光X線分析装置(商品名:RIX2000型、株式会社理学製)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着層12の膜厚を変更する手段としては、蒸着層12の堆積速度を変更する方法、蒸着する速度を変更する方法などによって行うことができる。
基材層11に蒸着層12を形成する場合、基材層11の表面に、予め、コロナ放電処理、フレーム処理などを施しておくことが好ましい。これらの処理を施すことにより、基材層11と蒸着層12との接着強度を向上させることができる。これにより、基材層11および蒸着層12を強固に密着させて、その層間剥離(デラミネーション)などの発生を抑制することができる。コロナ放電処理は、公知のコロナ放電処理器を用い、発生させたコロナ雰囲気中に紙基材を通過させることにより行うことができる。フレーム処理は、公知のフレーム処理器を用い、紙基材表面を火で炙ることにより行うことができる。
また、コロナ放電処理、フレーム処理以外に、基材層11の表面に、予め、不活性ガスによるプラズマ処理を施しておいてもよい。これにより、基材層11の表面に蒸着層12を形成すると、基材層11と蒸着層12との接着性などを向上させ、基材層11および蒸着層12を強固に密着させて、その層間剥離(デラミネーション)などの発生を抑制することができる。また、基材層11に、PVD法を用いて蒸着層12を形成する直前に基材層11の表面をプラズマ処理することにより、基材層11の表面の水分、塵などを除去すると共にその表面の平滑化、活性化などの表面処理を施すことができる。
プラズマ処理方法としては、例えば、基材層11の面に、気体をア−ク放電により電離させることにより生じるプラズマガスを利用して基材層11の表面改質を行うプラズマ表面処理法などを用いることができる。具体的には、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、その他などの不活性ガスをプラズマガスとして使用し、プラズマ表面処理法で基材層11の表面をプラズマ処理することができる。なお、プラズマガスとしては、上記の不活性ガスに、さらに酸素ガスを添加した混合ガスを使用してもよい。
上記のプラズマ処理としては、プラズマ出力、プラズマガスの種類、プラズマガスの供給量、処理時間、その他などの条件を考慮してプラズマ処理を行なうことが好ましい。プラズマを発生させる方法としては、例えば、直流グロ−放電、高周波放電、マイクロ波放電、その他などの装置を利用して行うことができる。また、プラズマ処理は、大気圧プラズマ処理法などを利用してプラズマ処理面を形成することもできる。
[ガスバリア性塗布膜]
ガスバリア性塗布膜13は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する層である。ガスバリア性塗布膜13は、一般式R1 nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
ガスバリア性塗布膜13は、前記ガスバリア性組成物を調製する工程と、基材層11の一方の面に設けた蒸着層12の上に、必要に応じて、酸素ガスによるプラズマ処理した面を介して、上記のガスバリア性組成物を塗工して塗工膜を設ける工程と、上記の塗工膜を設けた基材層11を、20℃〜180℃で、かつ、上記基材層11の融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して、上記基材層11の一方の面に設けた蒸着層12の上に、要すれば、酸素ガスによるプラズマ処理面を介して、上記のガスバリア性塗布膜13を形成する工程と、を含む工程により製造することができる。
なお、本実施形態においては、ガスバリア性塗布膜13は、上記のように調整されたガスバリア性組成物を、基材層11の一方の面に設けた蒸着層12の上に二層以上積層してもよい。これにより、上記のガスバリア性塗布膜13を二層以上重層した複合ポリマー層を形成して製造することもできる。
上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用することができる。また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用される。
上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他などを使用することができる。本実施形態において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタンなどを挙げることができる。また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
また、上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、その他などのアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1 n M(OR2)m で表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他などを挙げることができる。なお、本実施形態において、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
本実施形態において、上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがSiであるアルコキシシランを使用することが好ましいものである。上記のアルコキシシランとしては、一般式Si(ORa)4(ただし、式中、Raは、低級アルキル基を表す。)で表されるものである。上記において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他などが用いられる。上記のアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、テトラエトキシシラン(Si(OC2H5)4)、テトラプロポキシシラン(Si(OC3H7)4)、テトラブトキシシラン(Si(OC4H9)4)、その他などを使用することができる。
また、本実施形態において、上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、例えば、一般式RbnSi(ORc)4−m(ただし、式中、nは、0以上の整数を表し、mは、1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他を表わす。)で表されるアルキルアルコキシシランを使用することもできる。上記のアルキルアルコキシシランの具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン(CH3Si(OCH3)3)、メチルトリエトキシシラン(CH3Si(OC2H5)3)、ジメチルジメトキシシラン((CH3)2Si(OCH3)2)、ジメチルジエトキシシラン((CH3)2Si(OC2H5)2)、その他などを使用することができる。上記のアルコキシシラン、アルキルアルコキシシランなどは、単独または二種以上を混合しても用いることができる。また、本実施形態において、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン、その他などを使用することができる。
本実施形態において、上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがZrであるジルコニウムアルコキシドを使用することができる。上記のジルコニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシジルコニウムZr((OCH3)4)、テトラエトキシジルコニウム(Zr(OC2H5)4)、テトラiプロポキシジルコニウム(Zr(iso−OC3H7)4)、テトラnブトキシジルコニウム(Zr(OC4H9)4)、その他などを使用することができる。
また、本実施形態において、上記の一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、例えば、MがTiであるチタニウムアルコキシドを使用することができる。上記のチタニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシチタニウム Ti(OCH3)4、テトラエトキシチタニウム(Ti(OC2H5)4)、テトライソプロポキシチタニウム(Ti(iso−OC3H7)4)、テトラnブトキシチタニウム(Ti(OC4H9)4)、その他などを使用することができる。
また、本実施形態において、上記の一般式R1 nM(OR2)m で表されるアルコキシドとしては、例えば、MがAlであるアルミニウムアルコキシドを使用することができる。上記のアルミニウムアルコキシドの具体例としては、例えば、テトラメトキシアルミニウム(Al(OCH3)4)、テトラエトキシアルミニウム(Al(OC2H5)4)、テトライソプロポキシアルミニウム(Al(iso−OC3H7)4)、テトラnブトキシアルミニウム(Al(OC4H9)4)、その他などを使用することができる。
なお、本実施形態においては、上記のようなアルコキシドは、その二種以上を混合して用いてもよい。特に、アルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるバリア性フィルムの靭性、耐熱性などを向上させることができ、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下が回避される。上記のジルコニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲であり、好ましくは、約5質量部であることが好ましい。上記において、10質量部を超えると、ガスバリア性塗布膜13が、ゲル化し易くなり、また、その膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際にガスバリア性塗布膜13が剥離し易くなる傾向にあることから、好ましくない。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いることによって、得られるガスバリア性塗布膜13の熱伝導率が低くなり、バリア性フィルム10の耐熱性が著しく向上するという利点がある。上記において、チタニウムアルコキシドの使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲であり、好ましくは、3質量部が好ましい。上記において、5質量部を超えると、ガスバリア性塗布膜13の脆性が大きくなり、基材層11を被覆した際に、ガスバリア性塗布膜13が剥離し易くなる傾向にあるため、好ましくない。
次に、ガスバリア性塗布膜13を形成するポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体としては、ポリビニルアルコ−ル系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ−ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを組み合わせて使用することができる。ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ−ル共重合体を使用することにより、ガスバリア性塗布膜13のガスバリア性、耐水性、耐候性、その他などの物性を著しく向上させることができる。特に、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することにより、上記のガスバリア性、耐水性、および耐候性などの物性に加えて、耐熱水性および熱水処理後のガスバリア性などに著しく優れたガスバリア性塗布膜13を形成することができる。
ポリビニルアルコ−ル系樹脂と、エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体とを組み合わせて使用する場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ−ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコ−ル共重合体=10:0.05〜10:6であることが好ましく、さらには、約10:1の配合割合で使用することがさらに好ましいものである。
ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体との含有量は、上記のアルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲であり、好ましくは、20〜200質量部位の配合割合でガスバリア性組成物を調製することが好ましい。上記において、500質量部を超えると、ガスバリア性塗布膜13の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルム10の耐水性および耐候性なども低下する傾向にあることから好ましくなく、さらに、5質量部を下回ると、ガスバリア性が低下することから好ましくない。
ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを使用することができる。上記のポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数十%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、もしくは、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、あるいは、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。上記のポリビニルアルコール系樹脂の具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)などを使用することができる。
エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを使用することができる。具体的には、酢酸基が数十モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含む。ケン化度は、特に限定されるものではないが、ガスバリア性の観点から、80モル%以上が好ましく、より好ましくは、90モル%以上、さらに好ましくは、95モル%以上である。また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは、20〜45モル%であるものことが好ましい。上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体の具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)などを使用することができる。
上記のガスバリア性組成物を調製する際、例えば、シランカップリング剤などを添加してもよい。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。本実施形態においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、または、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、一種または二種以上を混合して用いてもよい。本実施形態において、上記のようなシランカップリング剤の使用量は、上記のアルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部位の範囲内で使用することができる。シランカップリング剤を20質量部以上使用すると、ガスバリア性塗布膜13の剛性と脆性とが大きくなり、また、ガスバリア性塗布膜13の絶縁性および加工性が低下する傾向にあることから好ましくない。
上記のガスバリア性組成物を調製する際に用いられる、ゾルゲル法触媒、主として、重縮合触媒としては、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミンが用いられる。具体的には、例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、その他などを使用することができる。本実施形態においては、特に、N、N−ジメチルベンジルアミンが好適に用いられる。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部、好ましくは、約0.03質量部であることが好ましい。
また、上記のガスバリア性組成物を調製する際に用いられる、酸としては、上記ゾルゲル法の触媒、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。上記の酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸、または、酢酸、酒石酸などの有機酸、その他を使用することができる。上記の酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モルであり、好ましくは、約0.01モルであることが好ましい。
また、上記のガスバリア性組成物を調製する際、水は、上記のアルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8〜2モルの割合で用いることができる。上記の水の量が、2モルを超えると、上記のアルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、さらに、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性のポリマーとなり、そして、そのような多孔性のポリマーは、バリア性フィルムのガスバリア性を改善することができなくなることから、好ましくない。また、上記の水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行し難くなる傾向にあることから、好ましくない。
上記のガスバリア性組成物を調製する際に用いられる、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどが挙げられる。さらに、上記のガスバリア性組成物において、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態であることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択されるものである。ポリビニルアルコール系樹脂と、エチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用する場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。本実施形態において、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(商品名)として市販されているものを使用することができる。上記の有機溶媒の使用量は、通常、上記のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルゲル法触媒の合計量100質量部当り30〜500質量部である。
<バリア性フィルムの製造方法>
次に、バリア性フィルム10の製造方法の一例について説明する。まず、基材層11の一方の面に、PVD法を用いて酸化アルミニウムからなる蒸着層12を形成する。次に、上記のアルコキシシランなどのアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコ−ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシドなどを混合してガスバリア性組成物(塗工液)を調製する。
次に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)中では次第に重縮合反応が進行する。次いで、基材層11の一方の面に設けた蒸着層12の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)を塗布し、乾燥する。ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロ−ルコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコ−ト、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータなどの塗布手段を用いることができる。この塗布手段を用いることにより、1回あるいは複数回の塗布で、膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μmのガスバリア性塗布膜13を形成することができ、さらに、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃の温度で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、ガスバリア性塗布膜13を形成することができる。また、必要に応じて、ガスバリア性組成物を塗布する際に、予め、蒸着層12の上に、プライマー剤などを塗布することもできる。また、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、その他などの前処理を任意に施すことができる。
次に、上記の乾燥により、上記のアルコキシシランなどのアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体などの重縮合が進行し、塗工膜が形成される。さらに、好ましくは、上記の塗布操作を繰り返して、二層以上からなる複数の塗工膜を積層する。
次に、上記の塗工液を塗布した積層体を20℃〜180℃で、かつ、基材層11の融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃の範囲の温度で、10秒〜10分間加熱処理して、基材層11の一方の面に形成した蒸着層12の上に、上記のガスバリア性組成物(塗工液)によるガスバリア性塗布膜13を一層形成して、バリア性フィルム10を製造することができる。このようにして得られたバリア性フィルム10は、ガスバリア性に優れているものである。
また、本実施形態においては、上記のようにエチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用しない場合、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してバリア性フィルムを製造する場合には、熱水処理後のガスバリア性を向上させるため、例えば、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用して製造されたガスバリア性組成物を塗工して第1の塗工層(第1のガスバリア性塗布膜)を形成し、次いで、その第1の塗工層の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗工層(第2のガスバリア性塗布膜)を形成し、それらの複合層を形成するようにしてもよい。これにより、得られるバリア性フィルムのガスバリア性を向上させることができる。
また、上記のエチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層、または、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有するガスバリア性組成物により形成される塗工層を、複数層積層して形成するようにしてもよい。このようにして得られるバリア性フィルムのガスバリア性を向上させることができる。
なお、バリア性フィルム10は、基材層11の一方の面に、蒸着層12、ガスバリア性塗布膜13の他に、適宜、必要に応じて、ガスバリア性塗布膜13の面に不活性ガスによるプラズマ処理、酸素ガスによるプラズマ処理、またはプライマー処理などを適宜任意の順に処理を施してもよい。
以上の通り、バリア性フィルム10は、バイオマス由来のポリエステルを主成分として含む樹脂組成物からなる基材層11にPVD法により形成された所定の膜厚の蒸着層12と、ガスバリア性塗布膜13とを設けたフィルムであり、優れたバリア性を有することができる。これにより、バリア性フィルム10は、化石燃料由来の原料からなるPETフィルムを用いたバリア性フィルムと同等かそれ以上に高いバリア性を有することができる。また、バリア性フィルム10は、基材層11をカーボンニュートラルな材料からなる層で形成できるため、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたバリア性フィルムに比べて、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
また、バリア性フィルム10は、上記のような優れた特性を有するので、包装材料として有用であり、特に、O2、N2、H2O、CO2、その他などの透過を遮断、阻止するガスバリア性に優れるため、食品包装用フィルムを構成するバリア性基材として、好適に用いることができる。特に、O2、H2Oなどを充填した、いわゆる、ガス充填包装に用いた場合には、その優れたガスバリア性が充填ガスの保持に極めて有効である。また、N2またはCO2ガスなどを充填したガス充填包装に用いた場合でも、同様に、優れたガスバリア性が充填ガスの保持に極めて有効である。さらに、バリア性フィルム10は、熱水処理、特に高圧熱水処理(レトルト処理)にも優れ、極めて優れたガスバリア性特性を有する。
<積層フィルム>
次に、バリア性フィルム10を適用した積層フィルムについて説明する。図2は、本発明の実施形態に係るバリア性フィルムを適用した積層フィルムの構成を簡略に示す断面図である。図2に示すように、積層フィルム20Aは、バリア性フィルム10と、シーラント層21とを備え、バリア性フィルム10のガスバリア性塗布膜13の面上にシーラント層21を積層して構成されている。バリア性フィルム10の面上にシーラント層21を設けることにより、後述するようなガスバリア性に優れた包装体とすることができる。
なお、図2に示した実施形態においては、積層フィルム20Aは、バリア性フィルム10のガスバリア性塗布膜13の面上にシーラント層21を積層した構成としているが、積層フィルム20Aは、基材層11の蒸着層12が積層されている面とは反対側の面上にシーラント層21が積層するように構成するようにしてもよく、また、バリア性フィルム10のガスバリア性塗布膜13の面上、および基材層11の蒸着層12が積層されている面とは反対側の面上の両方にシーラント層が設けられていてもよい。
また、図2に示した実施形態においては、積層フィルム20Aが、バリア性フィルム10とシーラント層21とを備えた構成としているが、これに限定されるものではなく、バリア性フィルム10およびシーラント層21を備えていれば、後述するように、バリア性フィルム10とシーラント層21との間、シーラント層21のバリア性フィルム10が積層されている面とは反対側の面、またはバリア性フィルム10のシーラント層21が積層されている面側とは反対側の面などに、包装体の形態に応じて、他の層を有していてもよい。
[シーラント層]
シーラント層21は、図2に示すように、バリア性フィルム10のガスバリア性塗布膜13の面上に設けられている。シーラント層21は、熱によって相互に融着し得るヒートシール性樹脂のフィルムにより形成される層である。
シーラント層21を形成する材料としては、熱によって相互に融着し得る樹脂であれば、特に限定されず、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、エチレン・ポリプロピレンのランダムもしくはブロック共重合体樹脂、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、ヒートシール性エチレン・ビニルアルコール樹脂、または、共重合した樹脂メチルペンテン系樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは環状オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他などの樹脂などが挙げられる。これらは、単独でも二種以上の混合物として使用してもよい。シーラント層21は、上記のような樹脂のフィルムないしシート、あるいはそのコーティング膜などとして使用することができる。
シーラント層21を形成する材料として、ポリエチレンを用いる場合、その原料として、化石燃料から得られるエチレンの他に、バイオマス由来のエチレンを重合したものを用いてもよい。
ここでバイオマス由来のエチレンとは、バイオマスエタノールを原料として製造されたものである。バイオマス由来のエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法により得ることができる。バイオマス由来のエチレンは、バイオマスエタノールを原料として製造することができるが、特に、植物原料から得られるバイオマス由来の発酵エタノールを用いることが好ましい。植物原料は、特に限定されず、従来公知の植物を用いることができる。例えば、トウモロコシ、サトウキビ、ビート、およびマニオクを挙げることができる。
本実施形態において、バイオマス由来の発酵エタノールとは、植物原料より得られる炭素源を含む培養液にエタノールを生産する微生物またはその破砕物由来産物を接触させ、生産した後、精製されたエタノールをいう。培養液からのエタノールの精製は、蒸留、膜分離、および抽出などの従来公知の方法が適用可能である。例えば、ベンゼン、シクロヘキサンなどを添加し、共沸させるか、または膜分離などにより水分を除去するなどの方法が挙げられる。
バイオマス由来のエチレンを得るために、この段階で、エタノール中の不純物総量が1ppm以下にするなどの高度な精製をさらに行ってもよい。
エタノールの脱水反応によりエチレンを得る際には通常触媒が用いられるが、この触媒は、特に限定されず、従来公知の触媒を用いることができる。プロセス上有利なのは、触媒と生成物の分離が容易な固定床流通反応であり、例えば、γ―アルミナなどが好ましい。
エタノールの脱水反応は吸熱反応であるため、通常加熱条件で行う。商業的に有用な反応速度で反応が進行すれば、加熱温度は限定されないが、下限は、好ましくは100℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは300℃以上の温度である。上限も特に限定されないが、エネルギー収支および設備の観点から、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
反応圧力も特に限定されないが、後続の気液分離を容易にするため、常圧以上の圧力が好ましい。工業的には触媒の分離の容易な固定床流通反応が好適であるが、液相懸濁床、流動床などでもよい。
エタノールの脱水反応においては、原料として供給するエタノール中に含まれる水分量によって反応の収率が左右される。一般的に、脱水反応を行う場合には、水の除去効率を考えると、水が無いほうが好ましい。しかしながら、固体触媒を用いたエタノールの脱水反応の場合、水が存在しないと、他のオレフィン、特にブテンの生成量が増加する傾向にあることが判明した。少量の水が存在しないと、脱水後のエチレン二量化を抑えることができないためと推察される。許容される水の含有量の下限は、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上必要である。上限は特に限定されないが、物質収支上および熱収支の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20%以下である。
このようにしてエタノールの脱水反応を行うことにより、エチレン、水および少量の未反応エタノールの混合部が得られるが、常温において5MPa以下ではエチレンは気体であるため、これら混合部から気液分離により水やエタノールを除去し、エチレンを得ることができる。この方法は公知の方法で行なうことができる。
気液分離により得られたエチレンは、さらに蒸留され、このときの操作圧力が常圧以上であること以外は、蒸留方法、操作温度、および滞留時間などは特に制約されない。
原料がバイオマス由来のエタノールの場合、得られたエチレンには、エタノール発酵工程で混入した不純物であるケトン、アルデヒド、およびエステルなどのカルボニル化合物ならびにその分解物である炭酸ガスや、酵素の分解物・夾雑物であるアミンおよびアミノ酸などの含窒素化合物ならびにその分解物であるアンモニアなどが極微量含まれる。エチレンの用途によっては、これら極微量の不純物が問題となるおそれがあるので、精製により除去してもよい。精製方法は、特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。好適な精製操作としては、例えば、吸着精製法を挙げることができる。用いる吸着剤は、特に限定されず、従来公知の吸着剤を用いることができる。例えば、高表面積の材料が好ましく、吸着剤の種類としては、バイオマス由来のエタノールの脱水反応により得られるエチレン中の不純物の種類・量に応じて選択される。
なお、エチレン中の不純物の精製方法として苛性水処理を併用してもよい。苛性水処理をする場合は、吸着精製前に行うことが好ましい。この場合、苛性処理後、吸着精製前に水分除去処理を施す必要がある。
このようにして得られたバイオマス由来のエチレンを重合して得られたポリエチレンを、シーラント層21を構成する材料として用いることにより、カーボンニュートラルな材料からなる層で形成できるため、上記したバイオマス由来の原料を用いて得られたポリエステルとの併用によって、より一層、化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
バイオマス由来のエチレンとしては、市販のものを使用してもよく、例えば、ブラスケム社製の「C4LL−LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)」のサトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を使用することができる。
なお、本実施形態では、シーラント層21は一層としているが、シーラント層21は二層以上設けられていてもよい。シーラント層21を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
シーラント層21の厚さとしては、20〜200μmが好ましく、30〜130μmがより好ましい。
バリア性フィルム10の上面側(内面側)にシーラント層21をラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネーション法、溶融押出しラミネーション法などが挙げられる。また、上記の積層を行う際に、必要に応じて、例えば、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理、その他などの前処理をフィルムに施すことができる。中でも、ドライラミネーション法が、接着強度に優れ、より好ましいものである。
[他の層]
積層フィルム20Aは、バリア性フィルム10およびシーラント層21以外に、その他の層を少なくとも一層有してもよい。その他の層としては、例えば、支持体、樹脂層、印刷層などを挙げることができる。その他の層を二層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。これら他の層は、ドライラミネーション法により接着層を介して、あるいは溶融押出しラミネーション法により接着樹脂層を介して互いに積層することができる。
接着層は、積層しようとする層(例えば樹脂層)の表面に、ラミネートに用いられる接着剤(ラミネート用接着剤)を塗布して乾燥させることにより形成することができる。ラミネート用接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で積層フィルムを構成する層の塗布面に塗布することができる。塗布量としては、0.1g/m2〜10g/m2(乾燥状態)が好ましく、1g/m2〜5g/m2(乾燥状態)がより好ましい。
接着樹脂層は、熱可塑性樹脂を用いて溶融押出しラミネーション法により形成される。接着樹脂層に使用できる熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂などを用いることができる。これらの材料は、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
また、積層フィルム20Aの一方または両方の面には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性などの表面機能などの付与を目的として、二次加工を施すことができる。二次加工の例としては、例えば、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっきなど)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティングなど)などが挙げられる。また、積層フィルム20Aに、ラミネート加工(ドライラミネートや押出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、包装体などの成型品を製造することもできる。
このように、積層フィルム20Aは、バリア性フィルム10を備えたフィルムであり、バリア性フィルム10が優れたバリア性を有するため、本発明による積層フィルムを包装体材料として用いることにより、優れたガスバリア性を備えた包装体を実現することができる。
<包装体>
積層フィルム20Aは、バイオマス由来のPETフィルムからなる基材層11に、PVD法を用いて形成された蒸着層12と、更にその上にガスバリア性塗布膜13とを、二層構造として設けることにより、蒸着層12の膜厚が薄くても高いバリア性を有する蒸着層12を形成できるため、包装体として好適に用いることができる。包装体としては、例えば、包装製品(包装袋)、蓋材、ラミネートチューブ、液体用容器、紙カップ、および各種ラベル材料などを挙げることができる。包装袋として、例えば、スタンディングパウチ型、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型などの種々の形態の包装袋が挙げられる。積層フィルムの厚さは、その用途に応じて、適宜決定することができる。例えば、30〜300μm、好ましくは35〜180μmの厚みのフィルムの形態で用いられる。積層フィルムを適用した包装体の一例について、以下説明する。なお、本実施形態では、以下に例示する包装体のシーラント層21以外の各層は、一層としているが、これに限定されるものではなく、二層以上有していてもよい。また、以下に例示する包装体は印刷層を備えているが、これに限定されるものではなく、印刷層を備えていなくてもよい。
[スタンディングパウチ]
上述した本発明の積層フィルムを適用したスタンディングパウチについて説明する。図3は、スタンディングパウチの構成の一例を簡略に示す図である。図3に示すように、スタンディングパウチ30は、2枚の胴部(側面シート)31と、底部(底面シート)32とで構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31と底面シート32とが別部材で構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31を構成する積層フィルムのシーラント層が最内層となるように製袋して形成された包装体である。
側面シート31は、積層フィルムを用いて形成することができる。図4は、胴部を形成する積層フィルムの部分断面図である。図4に示すように、側面シート31を形成する積層フィルム20Bは、シーラント層21、支持体33、印刷層34、およびバリア性フィルム10を備え、シーラント層21、支持体33、印刷層34、バリア性フィルム10を、内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成されている。また、バリア性フィルム10は、側面シート31の外面側から内面側に向かって基材層11、蒸着層12、およびガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。スタンディングパウチ30は、側面シート31のシーラント層21同士をヒートシールして接着させることにより製袋される。
(支持体)
支持体33は、延伸ポリエステル系樹脂層、延伸ポリアミド系樹脂層、延伸ポリオレフィン系樹脂層、紙基材(紙層)など、上記した本実施形態の積層フィルムを支持し、側面シート31の強度特性や耐衝撃性などを向上させることができるものであれば、特に限定されるものではなく、公知のものを用いて形成することができる。また、支持体33として、バイマス由来の材料を用いてもよい。また、支持体33は、これらの層を一層単独または二層以上を組み合わせて使用することができる。
支持体33として用いることができるポリエステル系樹脂層は、従来公知の化石燃料由来のポリエステルの他、バイオマス由来のポリエステルを用いることができる。また、ポリエステル系樹脂層は、従来の化石燃料由来の原料を含む樹脂材料とバイオマス由来の原料を含む樹脂材料とを混合してなる層であってもよい。
なお、接着性を向上させるため、ジカルボン酸成分として、スルホン酸基含有ジカルボン酸を含むものを使用してもよい。スルホン酸基含有ジカルボン酸としては、スルホン酸金属塩含有ジカルボン酸などが挙げられる。スルホン酸金属塩含有ジカルボン酸としては、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−〔4−スルホフェノキシ〕イソフタル酸などの金属塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)が挙げられる。特に、良好な接着性および耐変形性を得る観点からは、ナトリウムスルホテレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を使用することが好ましい。スルホン基含有ポリエステルにおいて、スルホン酸基含有ジカルボン酸の共重合比率は、全酸成分に対して、好ましくは0.5〜10モル%である。また、その極限粘度は、好ましくは0.3〜0.8dl/gである。
スタンディングパウチ30の用途に応じて、種々のポリエステル系樹脂を使用することができ、二種以上の混合物であってもよい。例えば、ポリエステルを使用する場合には、優れた熱寸法安定性、保香性および耐熱性を有する支持体が得られる。また、スルホン基含有ポリエステルを使用する場合、高い層間接着強度を有する共押出しフィルムが得られる。
ポリエステル系樹脂層には、必要に応じて、例えば滑剤など種々の添加剤を含有していてもよい。
また、支持体33として用いることができるポリアミド系樹脂層としては、主として、脂肪族ポリアミドを用いてもよいが、その他のポリアミド成分、例えば、芳香族ポリアミドなどを含有してもよい。脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)などの脂肪族、脂環式などのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸またはその誘導体との重縮合反応で得られる脂肪族ポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸などの縮合によって得られるポリアミド樹脂、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム化合物から得られるポリアミド樹脂、または、これらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXD6などの脂肪族ポリアミド系樹脂を使用することができる。中でも、好適な脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン−6/6,6などが挙げられる。二種以上の脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン6とナイロン6/6,6との任意の割合の組み合わせが挙げられる。
ポリエステル系樹脂層やポリアミド系樹脂層を支持体33として用いて形成した場合、支持体33をシーラント層21との接着性を向上させるために、支持体33とシーラント層21との間には、変性ポリオレフィンからなる変性ポリオレフィン樹脂層を設けてもよい。変性ポリオレフィンは、主成分であるポリオレフィンの一部を共重合または共縮合などにより他の物質(モノマー)で置換するか、または、適当な物質(モノマー)を局所的に反応させるなどの方法により変性したポリオレフィン樹脂である。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン、ポリエチレン系樹脂、または、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
好ましい変性ポリオレフィンとしては、ポリオレフィンセグメントとオレフィン以外の極性を有するセグメントとがブロック状および/またはグラフト状および/またはランダム状に結合している構造を有する共重合体であり、例えば、プロピレン系ポリオレフィンセグメントと乳酸を構成成分として含むセグメントとの共重合体、エチレン系ポリオレフィンセグメントとアクリル酸単位を構成成分として含むセグメントとの共重合体、プロピレン系ポリオレフィンセグメントとアクリル酸単位を構成成分として含むセグメントとの共重合体などが挙げられる。具体的には、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂として、三井化学(株)製のアドマーSE800、SF740、SF731、SF730を用いることができる。
また、支持体33を構成するバイマス由来の材料としては、上記以外にも、市販されているポリ乳酸フィルムを使用してもよく、例えば、三井化学東セロ社から販売されているポリ乳酸フィルムを好適に使用することができる。
また、支持体33として用いることができる紙層としては、所望の剛性などに応じて任意の紙を使用することができ、例えば上質紙、模造紙、アート紙、コート紙、純白ロール紙、特殊両更クラフト紙、晒クラフト紙などの他、耐水性を高めたラベル用紙、コップ原紙などを使用することができる。
紙層の厚さは、50〜200g/m2の範囲であり、より好ましくは75〜120g/m2である。紙層の厚さが50g/m2未満では薄すぎて支持体33の剛性が不足する。また、紙層の厚さが200g/m2を超える場合は、支持体33の剛性が高くなりすぎ、コスト高や加工適性の問題が懸念される。
支持体33をバイオマス由来の原料を含む樹脂材料を用いて形成することで、支持体33はカーボンニュートラルとなる。支持体33が紙基材(紙層)からなる場合、積層フィルムは、基材層11および支持体33がカーボンニュートラルな樹脂からなる層で形成されているため、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を2つ以上有する積層フィルムを製造することができる。これにより、支持体33の形成に用いるための化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
支持体33の形成方法は、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではない。支持体33は、これらの材料を押出しラミネート法を用いて形成してもよいし、予め、Tダイ法またはインフレーション法などを用いて製膜したフィルムとして、ドライラミネート法などを用いて印刷層34に積層してもよい。
(印刷層)
印刷層34は、必要に応じて設けることができ、例えば図4に示すように、バリア性フィルム10と支持体33との間に設けることができる。印刷層34は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示のために、文字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層34は、全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。
印刷層34は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、通常のインクビヒクルの一種または二種以上を主成分とし、必要に応じて、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他などの添加剤の一種または二種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料などの着色剤を添加し、溶媒、希釈剤などで充分に混練して得たインキ組成物を用いることができる。
上記のインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの一種または二種以上を併用することができる。
印刷層34の形成方法は、特に限定されるものではなく、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷その他などの通常の印刷法を用いることができる。このような印刷層34の形成方法を用いてインキ組成物を支持体33の外面側に所望の印刷模様を印刷して印刷層34を形成することができる。
インキ組成物の塗布量は、塗布後の乾燥状態で1μm〜8μm位が好ましく、塗布部において2g/m2〜3g/m2であることがより好ましい。
印刷層34は、予め、支持体33の印刷層形成側に表面処理を行った後に形成することが好ましい。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガスなどを用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品などを用いて処理する酸化処理、その他などの前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤などを任意に塗布し、表面処理することもできる。
なお、本実施形態では、印刷層34がバリア性フィルム10と支持体33との間に設けられているが、支持体33が透明である場合には、印刷層34はシーラント層21と支持体33との間に設けられてもよい。
スタンディングパウチ30の底面シート32は、蒸着層を有する延伸ナイロンフィルム、シーラント層を積層した積層フィルムなどを使用することができる。
スタンディングパウチ30は、従来より公知の製造方法を用いて製造することができ、例えば、2枚の側面シート31をシーラント層21が最内層となるように側面シート31同士を対向させて重ね合わせると共に、2枚の側面シート31の間に底面シート32を挿入し、側面シート31および底面シート32をヒートシールして製造する。
ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シールなどの公知の方法で行うことができる。
スタンディングパウチ30は、バリア性に優れることから、有機化合物を有効成分として含む化成品、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品などの包装のために、例えば、貼付剤の外袋として、または液体洗剤、液体柔軟剤、液体石鹸などの詰め替え用内容物に使用されるスタンディングパウチとして好適に使用することができる。また、スタンディングパウチ30は、バリア性に優れることから、大容量の液体を充填する必要があるスタンディングパウチのように、高い耐衝撃性が求められる包装袋にも適している。
また、側面シート31を形成する積層フィルム20Bは、図4に示すような層構成に限定されるものではなく、図2に示した層構成であってもよい。また、支持体33を構成する材料に応じて、各層を適宜任意の位置に変更してもよく、例えば、図5に示すように、側面シート31を形成する積層フィルム20Cは、シーラント層21、バリア性フィルム10、支持体33、および印刷層34を備え、積層フィルム20Cは、シーラント層21、バリア性フィルム10、支持体33、印刷層34を内面側から外面側に向かってこの順に積層した層構成であってもよい。なお、バリア性フィルム10は、側面シート31の外面側から内面側に向かって基材層11、蒸着層12、およびガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
また、積層フィルムをヒートシールする形態に応じて、スタンディングパウチ以外に種々の包装袋とすることができる。図6は、ピロー袋の一例を簡略に示す図であり、図7は、3方シール袋の一例を簡略に示す図であり、図8は、4方シール袋の一例を簡略に示す図である。なお、図6〜図8中、ヒートシール箇所をハッチングで表示する。図6に示すように、ピロー袋41は、図2、4および5に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルムの対向する2面をヒートシールして接着させることで得られる。また、図7に示すように、3方シール袋42は、図2、4および5に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルム20A〜20Cの3方をヒートシールして接着させることで得られる。また、図8に示すように、4方シール袋43は、図2、4および5に示すような積層フィルム20A〜20Cのシーラント層21が最内層となるように製袋して、積層フィルム20の4方をヒートシールして接着させることで得られる。
[蓋材]
本実施形態の積層フィルムを用いて蓋材を形成することができる。蓋材は、積層フィルムを構成する支持体33が紙層で構成される場合であり、図2、図4および図5に示すような層構成の積層フィルム20A〜20Cを用いて形成することができる。
蓋材は、バリア性に優れることから、カップ形状の包装容器、特に、カップラーメンやカップ焼きそばなどの熱湯を注ぎ加食化するインスタント食品、電子レンジで加熱する食品その他の即席食品、加温された飲料、電子レンジで加熱する飲料、スナック菓子、菓子、ゼリーなどの内容物を密封するための包装容器の蓋材として好適に使用することができる。
[チューブ容器]
本実施形態においては、上記した積層フィルムを用いてチューブ容器を形成することができる。図9は、チューブ容器の一例を簡略に示す部分断面図である。図9に示すように、チューブ容器50は、頭部51と、筒状胴部52とを備えている。
頭部51は、中空円錐型の肩部53と注出口部54とからなり、一体に形成されている。
筒状胴部52は、頭部51の肩部53と連接している。筒状胴部52は、積層フィルムを用いて形成することができる。図10は、チューブ容器の筒状胴部を形成する積層フィルムの部分断面図である。図10に示すように、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Dは、第1のシーラント層21A、バリア性フィルム10、印刷層34、および第2のシーラント層21Bを備え、第1のシーラント層21A、バリア性フィルム10、印刷層34、第2のシーラント層21Bを、筒状胴部52の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成されている。また、バリア性フィルム10は、筒状胴部52の内面側から外面側に向かって基材層11、蒸着層12、およびガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
筒状胴部52は、筒状胴部52の両端部の第1のシーラント層21Aと第2のシーラント層21Bとを重ね合わせ、その重ね合せ部分をヒートシールして溶着することで作製される。筒状胴部52は、その一方の開口部の上部に頭部51が連結される。なお、筒状胴部52の両端部は、第1のシーラント層21Aと第2のシーラント層21Bとを重ね合わせる方法に限定されるものではなく、第2のシーラント層21B同士を重ね合わせてもよい。
ヒートシールする方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール、火炎シールなどの従来公知の方法で行うことができる。
チューブ容器50の製造方法の一例を説明する。筒状胴部52の一方の開口部に、例えば、圧縮成形法などの通常の方法によって、頭部51を連結する。その後、筒状胴部52の頭部51と連結した他方の開放端から内容物を充填し、開放端を熱溶着して底シール部55を形成する。これにより、内容物が充填包装されたチューブ容器50を得ることができる。注出口部54に装着するキャップ56は、注出口部54の形状に対応して、例えば螺合させ、または嵌合させるなど、各種の方法により装着する。
チューブ容器50は、バリア性に優れることから、例えば、練り歯磨き、化粧品、糊、練り辛子、練りわさび、クリーム、絵の具、軟骨、医薬品、およびその他の従来公知の製品などの内容物の減容を抑制することができるため、チューブ容器として好適に使用することができる。
また、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Dは、図10に示すような層構成に限定されるものではなく、積層フィルム20Dの層構成は、適宜任意に調整することができる。筒状胴部52を形成する積層フィルムを形成する積層フィルムの他の層構成の一例を図11に示す。図11に示すように、筒状胴部52を形成する積層フィルム20Eは、ガスバリア性塗布膜13と印刷層34との間にポリオレフィン系樹脂層57を設け、印刷層34と第2のシーラント層21Bとの間に支持体33を設けてもよい。
ポリオレフィン系樹脂層57は、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、または環状ポリオレフィン系の樹脂、またはこれら樹脂を主成分とする共重合樹脂、変性樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリブテン、ポリノルボネンなどの環状ポリオレフィン、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を用いることができる。また、層間の密着性を向上させるために、上記したポリオレフィン系樹脂を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂などが適用できる。これらの樹脂は、単独または複数を組み合せて使用できる。
ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他などを改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤などを添加することができ、その添加量としては、ごく微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料などの着色剤、その他などを使用することができ、更には、改質用樹脂なども使用することができる。
ポリオレフィン系樹脂層57の厚さとしては、通常、5〜800μm、好ましくは10〜500μmの範囲内で適宜設定することができ、厚い場合には多層構成としてよい。厚さがこの範囲未満では、水分バリア性が不足し、この範囲以上では、過剰品質となり、また成形性も低下する。
なお、上記したような酸変性ポリオレフィン系樹脂などの極性基を有するポリオレフィン系樹脂を用いて溶融押出しラミネート法によりガスバリア性塗布膜13の面上にポリオレフィン樹脂層57を積層する場合には、アンカーコート剤などの表面処理を行うことなく、ポリオレフィン系樹脂層57を積層させることができる。
[液体紙容器]
本実施形態においては、上記した積層フィルムを用いて液体紙容器を形成することができる。図12は、液体紙容器の一例を示す斜視図である。図12に示すように、液体紙容器60は、側面を含む四角筒状の胴部61と、四角板状の底部62と、上部63とを有している。
上部63は、対向する一対の傾斜板63aと、傾斜板63a間に位置するとともに傾斜板63a間に折込まれる一対の折込部64とを有している。一対の傾斜板63aには各々の上端にのりしろ65が設けられ、一対の傾斜板63aは各々の上端に設けられたのりしろ65により互いに接着されている。一対の傾斜板63aのうちの一方の傾斜板63aに注出口66が取付けられている。なお、本実施形態においては、図12に示したように、傾斜板63aに注出口66を設け、この注出口66がキャップ67により密封されていてもよいが、これに限定されるものではなく、例えば、傾斜板63aに注出口66およびキャップ67を備えていない実施形態であってもよい。
このような液体紙容器60は、ゲーベルトップ型の液体紙容器であり、内部に酒、焼酎、ワイン、牛乳、ジュースなどの飲料水などを収納する。注出口66からキャップ67を取り外して液体紙容器60内から飲料水などの内容物を取出す。
液体紙容器60は、積層フィルムを用いて形成することができる。図13は、液体紙容器に用いられる積層フィルムの構成の一例を示す断面図である。図13に示すように、液体紙容器60を形成する積層フィルム20Fは、第1のシーラント層21A、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57、支持体33、第2のシーラント層21B、および印刷層34を備え、第1のシーラント層21A、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57、支持体33、第2のシーラント層21B、および印刷層34を、液体紙容器60の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成されている。また、バリア性フィルム10は、液体紙容器60の内面側から外面側に向かって基材層11、蒸着層12、およびガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
支持体33としては、上記のような紙基材(紙層)を用いることができる。支持体33を構成する紙基材としては、上記の通り、例えば、カード紙、アイボリー紙、マニラボールなどの板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、合成紙、クレイコート紙、クラフト紙、上質紙などの公知の紙を用いることができる。支持体33の紙の量は、液体紙容器60の形態に応じて適宜決定すればよいが、通常、100g/m2〜500g/m2である。
また、支持体33上に第2のシーラント層21Bを積層させる前に、支持体33の表面にコロナ放電処理、フレーム処理などを施してもよい。これらの処理を施すことで層間の接着強度を向上させることができる。コロナ放電処理は、公知のコロナ放電処理器を用い、発生させたコロナ雰囲気中に紙基材を通過させることにより行うことができる。フレーム処理は、公知のフレーム処理器を用い、紙基材表面を火で炙ることにより行うことができる。
次に、液体紙容器60の製造方法の一例について説明する。液体紙容器60は、上記した材料を用いて従来公知の方法により製造することができる。具体的には、紙基材層61の一方の面に第2のシーラント層21Bを形成する材料を押出コーティング法を用いて第2のシーラント層21Bを形成する。次に、第2のシーラント層21Bに情報が印刷された印刷層34を印刷して設ける。次に、紙基材層71の他方の面に、蒸着層12およびガスバリア性塗布膜13が形成された基材層11が供給され、紙基材層71とバリア性フィルム10との間に、ポリオレフィン系樹脂層57を構成する樹脂材料が溶融押出しされ、ポリオレフィン系樹脂層57が形成される。次に、基材層11上にアンカーコート剤が塗布される。次に、第1のシーラント層21Aを構成するシーラントフィルムが供給され、第1のシーラント層21Aが形成される。このように得られた積層フィルムが巻取られる。
得られた積層フィルム20Fを製函して、ゲーブルトップ型、ブリック型など種々の形状の液体紙容器60を製造することができる。
なお、本実施形態においては、第2のシーラント層21Bに印刷層34を印刷して設けた後、紙基材層71とバリア性フィルム10との間にポリオレフィン系樹脂層57を設けるようにしているが、液体紙容器60の製造方法は、これに限定されるものではなく、第2のシーラント層21Bに印刷層34を印刷して設けた後、紙基材層71とバリア性フィルム10との間にポリオレフィン系樹脂層57を設ける前に、第2のシーラント層21Bが設けられた紙基材層71に対してインラインまたはオフラインでロータリーダイカットにより、紙基材層71の流れ方向およびこれに直交する方向にミシン目を入れて、図12に示すように、胴部切目線72および連結切目線73を形成するようにしてもよい。
液体紙容器60は、バリア性に優れることから、日本酒、焼酎、ワインなどのアルコール類、牛乳などの乳飲料、オレンジジュースやお茶などの清涼飲料などの食品、カーワックス、シャンプーや洗剤などの化学製品など液体全般の包装紙容器として好適に用いることができる。
[紙カップ]
上述した本実施形態の積層フィルムを用いて紙カップを形成することができる。図14は、紙カップの一部を切除した斜視図である。図14に示すように、紙カップ80は、上部にフランジ部81を有し、かつ直径が開口部へ向かって徐々に広がる円筒状の胴部82と、胴部82の下端(一端)に設けられた底部83とを備えている。胴部82は、その上端が外側に丸められたフランジ部81が設けられている。なお、紙カップ80は、内容物を収納した後に、胴部82のフランジ部81に沿って蓋材が貼着されることにより密封される。蓋材はガスバリア性を有していることが好ましく、従来公知のガスバリア性を有する蓋材を使用することもでき、また、上記した本発明の積層フィルムを使用して形成された蓋材を使用することもできる。
胴部82は、積層フィルムを用いて形成することができる。図15は、紙カップの胴部に用いられる積層フィルムの構成の一例を示す部分断面図である。図15に示すように、胴部82を形成する積層フィルム20Gは、シーラント層21、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57、支持体33、および印刷層34を備え、シーラント層21、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57、支持体33、および印刷層34を、胴部82の内面側から外面側に向かってこの順に積層して構成されている。また、バリア性フィルム10は、胴部82の内面側から外面側に向かって基材層11、蒸着層12、およびガスバリア性塗布膜13の順に積層して構成されている。
支持体33としては、上記のような紙基材(紙層)を用いることができる。支持体33の紙の坪量としては、200〜300g/m2の範囲が、カップ成形上好ましい。
胴部82を形成する積層フィルム20Gは、具体的には、シーラント層21として低密度ポリエチレン、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57として低密度ポリエチレン、および支持体33を、この順に積層した積層フィルムを用いることができる。また、底部83についても、胴部82と同様に、シーラント層21として低密度ポリエチレン、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57として低密度ポリエチレン、および支持体33を、この順に積層した積層フィルムを用いることができる。
本実施形態においては、積層フィルム20Gは、支持体33の外面側に印刷層34を設けているが、これに限定されるものではなく、印刷層34の外面側または支持体33と印刷層34との間にさらにシーラント層21を設けるようにしてもよい。
図16は紙カップの製造方法の概略の一例を示した説明図である。図16に示すように、図15の積層体から扇形状に切り出されて所定の輪郭が与えられた胴部ブランク82’の印刷層34が外側に、印刷層34が内側に位置するようにして円筒状に丸め、両端部82a’を重ね合わせた状態でヒートシール加工によりこれらを接着する。これにより、胴部2には胴貼部85が形成される。
また、不図示のカップ原紙から円形状に底部ブランク83’を切り出し、底部ブランク83’の外周縁を下方に屈曲させ、屈曲部83a’を形成する。なお、底部ブランク83’を、積層フィルム20Gから切り出してもよい。
次に、円筒状に加工された胴部ブランク82’の下部に成形加工済の底部ブランク83’を配置する。そして、底部ブランク83’の屈曲部83a’が胴部ブランク82’の下端部で包み込まれるように、胴部ブランク82’の下端部を折り曲げる。その状態を保持しつつ底部ブランク83’の屈曲部83a’と胴部ブランク82’の下端部とが重なり合う部分をホットエアーにて溶融し、その部分に所定の圧力を加えることによりこれらを一体化する。その後、胴部82の上端部にフランジ部81を形成することにより、紙カップ80が完成する。胴部82を形成する積層フィルム20Gは、紙カップ80の内面側から外面側に向かって、シーラント層21、バリア性フィルム10、ポリオレフィン系樹脂層57、支持体33、および印刷層34の順に積層され、印刷層34が最も外側に位置するように構成される。
紙カップ80は、バリア性に優れることから、スナック菓子、熱湯を注ぎ加食化するインスタント食品、電子レンジで加熱する食品その他の即席食品、加温された飲料、電子レンジで加熱する飲料などを入れる容器として好適に用いることができる。
本実施形態では、胴部82が積層フィルム20Gを用いて形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、底部83のみ、または胴部82および底部83が積層フィルム20Gを用いて形成されていてもよい。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの例によって、何ら限定されるものではない。
<実施例1>
[バイオマス由来のポリエステルの合成]
テレフタル酸83質量部とバイオマスエチレングリコール(インディアグライコール社製)62質量部とをスラリーとして反応槽に供給し、常法の直重方法で、エステル化反応を240℃で5時間行った。その後、トリメチルフォスフェート(アルドリッチ社製)を0.013質量部添加(酸成分に対して15mmol%)してから高温真空条件下の重合反応に移行させた。まず、40分間で、真空度を4000Pa、重合温度280℃にまで昇温し、次いで、その重合温度280℃のまま、真空度を200Paまで下げて溶融重合反応を行い、ポリマーを合成した。反応時間は3時間であった。合成したポリマーは、ストランドの形で流水中に吐出し、ペレタイザによってペレット化した。得られたペレットを160℃において5時間乾燥後、窒素雰囲気下50Paの真空下205℃で固相重合して固有粘度0.8dl/gのポリマーを得た。なお、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(成分比:3/2)溶媒を用い、35℃で測定した溶融粘度から算出した。得られたポリマーの示差熱分析(装置:島津製作所DSC−60、測定条件:ヘリウムガス中、6℃/分で昇温)を行ったところ、ガラス転移温度は69℃を示し、化石燃料由来の原料から得られる既知のPETと同等であった。また、得られたバイオマス由来のPETの放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は16%であった。
[バイマスPETフィルムの作製]
上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット90質量部と、滑剤として平均粒子径1.0〜4.0μmの多孔性シリカを600ppm含む化石燃料由来のポリエチレンテレフタレートとを溶融混練することによりマスターバッチを作製した。次いで、上記のようにして得られたポリエチレンテレフタレートペレット60質量部と、再利用PET(フィルム製膜時の耳ロスなどの製造工程内ロス部分をリペレットしたもの)30質量部と、マスターバッチ10質量部とを乾燥した後押出機に供給し、285℃で溶融し、Tダイよりシート状に押出し、冷却ロールにて冷却固化させて未延伸シートを得た。次いでこの未延伸シートを、低速側駆動ロールの速度を6.5m/min、高速側駆動ロールの速度を22m/minとして、縦方向に3.5倍の倍率で延伸し、さらに、テンターにて横方向に3.5倍の倍率で延伸して厚みが12.13μmである二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。
(放射製炭素測定)
上記のようにして得られた二軸延伸ポリエステルフィルム(バイオマスPETフィルム)の放射製炭素測定を行ったところ、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量は14%であった。
[バリア性フィルムの作製]
まず、上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム(厚さ12μm)を用意し、一方の面にコロナ処理を施した。コロナ処理を施したバイオマスPETフィルムを巻き取り式の真空蒸着装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、そのバイオマスPETフィルムのコロナ処理面に、アルミニウムを蒸着源に用いて、酸素ガスを供給しながら、エレクトロンビーム(EB)加熱方式によるPVD法により、下記の蒸着条件により、膜厚80Åの酸化アルミニウムの蒸着層を形成し、図1に示すような層構成を有するバリア性フィルム10を作製した。
(蒸着条件)
蒸着チャンバー内の真空度:2×10−4mbar
電子ビーム電力:25kW
続いて、酸化アルミニウム蒸着層を形成した直後に、蒸着層の表面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用して、酸素ガスおよびアルゴンガスの混合ガスによりプラズマ処理を行った。
次いで、PVD法により形成した酸化アルミニウム蒸着層のプラズマ処理面に、下記のようにして調製したバリア塗工液をコーティングして、次いで、加熱処理して、厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成することにより、バリア性フィルムを製造した。
上記したバリア塗工液は、下記の組成表に従って調製した、組成aの、ポリビニルアルコール、イソプロピルアルコール、およびイオン交換水からなる混合液に、組成bの、エチルシリケート、シランカップリング剤、イソプロピルアルコール、塩酸、およびイオン交換水からなる加水分解液を加えて攪拌し、無色透明のバリア塗工液を得た。
<比較例1>
上記のようにして得られたバイオマスPETフィルム(厚さ12μm)を用意し、一方の面にコロナ処理を施した。コロナ処理を施したバイオマスPETフィルムをプラズマ化学気相成長装置の送り出しロールに装着し、次いで、これを繰り出し、そのバイオマスPETフィルムのコロナ処理面に、下記の蒸着条件により、膜厚120Åの酸化珪素の蒸着層を形成した。
(蒸着条件)
原料:ヘキサメチルジシロキサン
導入ガス量:ヘキサメチルジシロキサン:酸素ガス:ヘリウム=1.0:1.5:1.0(単位:slm)
真空チャンバー内の真空度:2×10−3mbar
冷却・電極ドラム供給電力:6kW
続いて、酸化珪素蒸着層を形成した直後に、蒸着層の表面に、グロー放電プラズマ発生装置を使用して、酸素ガスおよびアルゴンガスの混合ガスによりプラズマ処理を行った。
次いで、CVD法により形成した酸化珪素蒸着膜のプラズマ処理面に、実施例1と同様にして厚さ0.3μm(乾操状態)のガスバリア性塗布膜を形成することにより、バリア性フィルムを製造した。
<比較例2>
実施例1のバイオマスPETフィルム(厚さ12μm)に代えて一般の石化由来のPETフィルム(「E−5100」、東洋紡績社製、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてバリア性フィルムを製造した。
<比較例3>
比較例1のバイオマスPETフィルム(厚さ12μm)に代えて一般の石化由来のPETフィルム(「E−5100」、東洋紡績社製、厚さ12μm)を用いたこと以外は、比較例1と同様にしてバリア性フィルムを製造した。
実施例1、比較例1〜3の各々のPETフィルムの種類、蒸着層の形成方法を以下の表2に示す。
<評価>
実施例1、比較例1〜3で得られた各積層フィルムのバリア性として、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。
(酸素透過度の測定)
実施例1、比較例1〜3で得られた各積層フィルムを、温度23℃、湿度60RH%の環境下において、酸素透過度測定機(オクストラン(OX−TRAN)、モコン(MOCON)社製)を用いて、酸素透過度を測定した。測定結果を以下の表2に示す。なお、酸素透過度が1.0以下の場合を良好と評価した。また、表2中、「−」は、未測定の場合である。
(水蒸気透過度の測定)
実施例1、比較例1〜3で得られた各積層フィルムを、温度40℃、湿度90RH%の環境下において、水蒸気透過度測定機(パーマトラン(PERMATRAN)、モコン(MOCON)社製)を用いて、水蒸気透過度を測定した。測定結果を以下の表2に示す。なお、水蒸気透過度が2.0以下の場合を良好と評価した。
表2から明らかなように、バイオマスPETフィルムにPVD法を用いて蒸着層が形成されたバリア性フィルムは、バイオマスPETフィルムにCVD法を用いて蒸着層が形成されたバリア性フィルム、既存の石化由来のPETフィルムからなる基材層にPVDまたはCVD法を用いて蒸着層が形成されたバリア性フィルムよりも高いバリア性を有していることが確認された。
<実施例2>
[スタンディングパウチの作製]
実施例1で作製したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に印刷層を形成した。次いで、バリア性フィルムの印刷面と、二軸延伸ナイロンフィルム(支持体)とをドライラミネート法を用いて貼合した。さらに、二軸延伸ナイロンフィルムと、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(シーラント層)とをドライラミネート法を用いて貼合して、積層フィルム1を得た。積層フィルム1は、外面から、基材層、蒸着層、ガスバリア性塗布膜、印刷層、接着剤層、二軸延伸ナイロンフィルム、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが、順次積層されたものである。
また、外面から順に、二軸延伸ナイロンフィルム、酸化珪素の蒸着層、ガスバリア性塗布膜、接着剤層、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルムが積層された積層フィルム2を準備した。なお、酸化珪素の蒸着層はCVD法を用いて形成されたものであり、CVD法を用いて形成された蒸着層は、有機物、すなわち、炭素成分を含む蒸着層である。側面シートとして上記の積層フィルム1を用い、底面シートとして上記積層フィルム2を用いて、図3に示すスタンディングパウチを作製した。
<実施例3>
[ピロー袋の作製]
実施例1で作製したバリア性フィルムのガスバリア性塗布膜の面に印刷層を形成した。次いで、バリア性フィルムの印刷層の面に、ポリプロピレンフィルム(シーラント層)をドライラミネート法を用いて貼合することにより、積層フィルム3を得た。積層フィルム3は、外面から、基材層、蒸着層、ガスバリア性塗布膜、印刷層、接着剤層、およびポリプロピレンフィルムが、順次積層されたものである。積層フィルム3を用いて、図6に示すピロー袋を作製した。