JP2013237730A - フッ素系樹脂フィルムの製造方法 - Google Patents
フッ素系樹脂フィルムの製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2013237730A JP2013237730A JP2012109828A JP2012109828A JP2013237730A JP 2013237730 A JP2013237730 A JP 2013237730A JP 2012109828 A JP2012109828 A JP 2012109828A JP 2012109828 A JP2012109828 A JP 2012109828A JP 2013237730 A JP2013237730 A JP 2013237730A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fluororesin
- film
- producing
- fluororesin film
- stretching
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
Abstract
【課題】光透過性の高いフッ素系樹脂フィルムを簡便な方法で製造することが可能なフッ素系樹脂フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態のフッ素系樹脂について冷却速度を50〜1000℃/秒として急冷した後に延伸処理してフィルム化するという簡便な操作で、耐候性等のフッ素系樹脂由来の諸特性を有するとともに、広い波長範囲で高い光透過性を示すフィルムを低コストで製造することができる。また、得られたフィルムは、β相に由来する散乱ピークを有し、ポーリング処理を施すことによりによりフッ素系樹脂フィルムに圧電性等の強誘電性を付与することができる。
【選択図】図4
【解決手段】本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態のフッ素系樹脂について冷却速度を50〜1000℃/秒として急冷した後に延伸処理してフィルム化するという簡便な操作で、耐候性等のフッ素系樹脂由来の諸特性を有するとともに、広い波長範囲で高い光透過性を示すフィルムを低コストで製造することができる。また、得られたフィルムは、β相に由来する散乱ピークを有し、ポーリング処理を施すことによりによりフッ素系樹脂フィルムに圧電性等の強誘電性を付与することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、フッ素系樹脂フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、光透過性の高いフィルムを得ることが可能なフッ素系樹脂フィルムの製造方法に関する。
近年、高い透明性ないし高い光透過度を示すフッ素系樹脂フィルムの製造が検討されており、例えば、フッ素系樹脂の部位にかさ高い置換基を修飾することにより、結晶化を起こさないようにして透明な非晶性のフッ素系樹脂を合成する方法が提供されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかし、フッ素系樹脂は高価である上、複雑な非晶性フッ素系樹脂の合成法はさらなる価格の上昇を起こし、フッ素系樹脂の普及を妨げることになっていた。
また、フッ素系共重合樹脂として知られるトリフルオロ酢酸エチル(EFA)を高温下で一軸延伸することで、ラメラ結晶構造が変化し、結晶と非晶の電子密度差を減少させて透明な延伸試料を得る方法が提供されている(例えば、特許文献2及び非特許文献1を参照。)。しかし、高温下での熱延伸のため、加工に必要なエネルギーの消費が大きいことに加えて、環境への負荷が大きいという問題があった。
結晶性フッ素系ポリマーをアクリル系樹脂等とブレンド化し、溶融後に0℃近傍へ急冷して、アクリル系樹脂による結晶化の阻害、及び0℃近傍への急冷による結晶成長の抑制により、フッ素系樹脂の結晶化が抑制され透明なフッ素系ポリマー固体を得る方法が検討されている(例えば、特許文献3及び特許文献4を参照。)。しかしながら、ブレンドする材料としてアクリル系樹脂等のフッ素系樹脂以外の材料を使用するため、材料コストが余計に嵩むことや、溶融混練等の余計な工程や価格が増えてしまっていた。加えて、アクリル系樹脂はフッ素系樹脂と比較して環境耐性や耐食性が弱いため、ブレンドして使用した場合には耐環境性の低下が起きてしまうという問題があった。
さらに、溶媒キャスト法、蒸着法及びプラズマ法等により厚さの薄いフッ素系ポリマー薄膜を得る方法が検討されている(例えば、特許文献5を参照。)。しかし、これらの方法により得られたフッ素系樹脂フィルムは、十分な厚みがないために外装フィルム等としての使用が困難であることに加え、加工や成形が煩雑で困難という問題があった。
Macromolecules,41(20):p.7606―7615(2008)
このように、透明性ないし光透過性の高いフッ素系樹脂フィルムを製造する手段としてこれまでに種々の手段が検討されてきたが、製造のための操作が複雑であったり、コスト高になることや、高い透過性のフッ素系樹脂フィルムが得られない等の問題があり、改善が求められていた。
本発明の目的は、前記の課題に鑑みてなされたものであり、光透過性の高いフッ素系樹脂フィルムを簡便な方法で製造することが可能なフッ素系樹脂フィルムの製造方法を提供することにある。
前記の課題を解決するために、本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態とした結晶性フッ素系樹脂を、冷却速度を50〜1000℃/秒として急冷した後、延伸してフィルム化することを特徴とする。
本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、前記した本発明の構成において、前記延伸における延伸倍率が50〜500%であることを特徴とする。
本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、前記した本発明の構成において、延伸後、さらに、ポーリング処理を行うことを特徴とする。
本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、前記した本発明の構成において、前記冷却速度が100〜600℃/秒であることを特徴とする。
本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、前記した本発明の構成において、前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド)(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロ酢酸エチル(EFA)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態のフッ素系樹脂を急冷した後に延伸処理してフィルム化するという簡便な操作で、フッ素系樹脂由来の諸特性を有した上で、広い波長範囲で高い光透過性を示すフィルムを低コストで製造することが可能となる。また、得られたフィルムは、β相に由来する散乱ピークを有し、ポーリング処理を施すことによりフッ素系樹脂フィルムに圧電性等の強誘電性を付与することができる。
以下、本発明の一態様を説明する。本発明のフッ素系樹脂フィルムの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」とする場合もある。)は、溶融状態としたフッ素系樹脂を、冷却速度を50〜1000℃/秒として急冷した後、延伸してフィルム化するものである。なお、本発明において、「フィルム」は、「シート」を含むものとする。
本発明の製造方法で使用可能なフッ素系樹脂としては、結晶性のフッ素系樹脂やその共重合体であり、例えば、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド)(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロ酢酸エチル(EFA)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等が挙げられる。また、ポリフッ化ビニリデンの共重合体であるポリ(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)等を使用してもよい。これらの材料は、その1種を単独で使用してもよく、その2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
使用されるフッ素系樹脂の重量平均分子量は、例えば、50000〜1500000g/molとすることが好ましく、100000〜1300000g/molとすることが特に好ましい。
また、フッ素系樹脂には、本発明の目的及び効果を妨げない範囲において、従来公知の添加剤を添加するようにしてもよい。使用可能な添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、安定化剤、分散剤、酸化防止剤、艶消し剤、界面活性剤、帯電防止剤、シリカ、アルミナといった充填材、フッ素系表面改質剤及び加工助剤等の各種添加剤が挙げられ、それらの分散性が損なわれない範囲において添加することができる。
本発明に係る製造方法では、前記したフッ素系樹脂を溶融状態とした後に急冷するが、フッ素系樹脂を溶融状態とするには、使用するフッ素系樹脂の溶融温度(例えば170〜350℃等)で、数秒〜数分加熱するようにすればよい。
なお、フッ素系樹脂は、後工程で延伸するので、熱プレス等で170〜350℃で前もって加熱して、あらかじめ適当な厚さ(例えば、10〜450μmm)のフィルムないしシート状として溶融状態にするようにしてもよい。
溶融状態とされたフッ素系樹脂は急冷される。冷却速度は50〜1000℃/秒とするが、100〜600℃/秒とすることが好ましく、200〜500℃/秒とすることが特に好ましい。なお、温度は、フッ素系樹脂の実温とする。溶融状態のフッ素系樹脂を急冷することにより、無数の棒状の結晶構造が形成される。また、急冷における冷却時間は、0.1〜4秒であることが好ましく、0.3〜2秒であることがさらに好ましい。目安として、溶融状態のフッ素系樹脂が0.4〜2秒(好ましくは0.5〜1秒)で溶融状態から室温のレベルにまで冷却されるようにすればよい。
なお、前記の冷却速度は、冷却速度を常に一定値で制御している訳ではないので、冷却過程において冷却速度は常に変化する。そのため、代表的な冷却速度として、例えば、冷却過程において試料の温度が100℃の際の速度とすればよい。この場合、例えば、100℃近傍の温度曲線を二次間数等で近似し、得られた曲線に対して、100℃における傾きを求め、その値を100℃における冷却速度とすればよい。
フッ素系樹脂を急冷するための手段としては、溶融状態のフッ素系樹脂を前記した冷却速度で冷却できるものであれば特に制限はなく、例えば、水冷や冷却ロールを通過させる等、公知の冷却方法を使用することができる。
急冷されたフッ素系樹脂は、延伸されることによりフィルム化される。延伸は、一軸、二軸、同時、逐次等公知の延伸処理を用いることができる。延伸倍率は、ボイドの生成が支配的にならない50〜500%の範囲内とすることが好ましい。延伸倍率が50%を下回ると、降伏歪みを超えないためフィルムの顕著な配向が生じない場合があり、延伸倍率が500%を超えると、ボイドが発生してフィルムが白濁化する場合がある。延伸倍率は、50〜450%の範囲内とすることがさらに好ましく、100〜400%の範囲内とすることが特に好ましい。また、得られるフッ素系樹脂フィルムの厚さは、例えば、60〜350μm程度となるようにすればよい。
延伸倍率は、一軸延伸とする場合には、前記した50〜500%の範囲内とすることが好ましいが、一方、二軸延伸とする場合には、かかる範囲内とする中で、例えば、縦方向に50〜200%、横方向に50〜200%とするようにすることが好ましく、縦方向に50〜150%、横方向に50〜150%とするようにすることが特に好ましい。
延伸されて得られたフッ素系樹脂フィルムは、200〜900nmと紫外領域から赤外領域の波長領域において光透過性の高いフィルムとなる。例えば、本発明の製造方法で得られたフッ素系樹脂フィルムは、延伸後のフィルム厚さが約100μmにおいても、波長900nmにおいて透過率が約90%以上とポリメタクリル酸メチル(PMMA)に匹敵する高い値を示すだけでなく、特に、低波長の300nmにおいても透過率が80%以上と高い値を示すことから、PMMA等の汎用性光学フィルムと比べて格段に優れた光透過性を示す。
図1及び図2に、300%に延伸されたフッ素系樹脂(PVDF)フィルムのSAXS(小角X線散乱)パターンより得られた1次元データを示す。図1及び図2は、延伸されたフッ素系樹脂(PVDF)フィルムの2次元のSAXSパターンを、結晶ラメラの位置において、延伸方向に垂直に切り取って1次元データとしたものである。このうち、図1は、従来行われていた、溶融状態のフッ素系樹脂をホットプレート等の温度制御手段に載せて、所定温度になるように冷却させて結晶化(溶融結晶化)させた後に延伸したフッ素系樹脂フィルムであり、図2は、溶融状態のフッ素系樹脂を急冷して結晶化(以下、「急冷結晶化」と呼ぶこともある。)した後に延伸した本発明の製造方法により得られたフッ素系樹脂フィルムの結果である。図1に示すように、溶融結晶化で作製した試料では、ラメラ結晶が延伸方向に並ぶ。一方、図2に示すように、急冷で作製した試料ではラメラ結晶が大きく変形し、延伸方向に対して斜めに並んでいることが確認できる。
また、図3は、かかる2種類のフッ素樹脂系フィルムについて、誘電緩和測定によってラメラ結晶内の高分子鎖の分子運動性を確認した結果を示した図である。図3に示すように、急冷で作製した試料は溶融結晶化で作製した試料よりも分子運動性が大きいことが分かった。これは、溶融結晶化で作製したフッ素系樹脂(PVDF)においては、ラメラ結晶内においてフッ素系樹脂鎖が密にパッキングされており、フッ素系樹脂鎖の運動が抑制されていることを示している。また、この分子運動性の低下のために延伸による変形時に応力集中が働きラメラ間に空孔が出現した。一方、急冷で作製したフッ素系樹脂においては、ラメラ結晶内でのフッ素系樹脂鎖のパッキングが疎であり、フッ素系樹脂鎖の運動が比較的容易である。そのため、延伸過程においてラメラ結晶の変形が容易に生じ、空孔形成等が起こらなかったと考えられる。
延伸されたフッ素系樹脂フィルムは、熱固定を施すことにより、過熱してもほとんど熱収縮が起こらないようになり、寸法安定性が優れ、また、耐水性、耐摩耗性等の諸特性も向上する。熱固定は、概ね100〜150℃で5〜15分程度保持すればよい。本発明の製造方法で得られたフィルムは、熱固定後であっても、波長900nmでの透過率を90%以上と高い透明性を示すものである。なお、熱固定は、フッ素系樹脂を延伸してフィルム化する際に行うようにしてもよい。
以上説明した本発明に係るフッ素系樹脂フィルムの製造方法は、溶融状態のフッ素系樹脂を急冷した後に延伸処理してフィルム化するという簡便な操作で、耐候性、耐薬品性、撥水性、難燃性、防汚性等といったフッ素系樹脂由来の諸特性を有するとともに、広い波長範囲で高い光透過性を示すフィルムを低コストで製造することができる。
なお、延伸されたフィルムは、広い波長範囲で高い光透過性を示すだけでなく、β相に由来する散乱ピークが観測されることになる。よって、得られたフッ素系樹脂フィルムは、分極の方向性をそろえるためにポーリング処理を施すことが好ましい。ポーリング処理を施すことによりによりフッ素系樹脂フィルムに圧電性等の強誘電性を付与することができる。ポーリング処理は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、得られたフィルムを電極間に挟んで、例えば、100〜200MV/m程度の直流高電界を印加するようにすればよい。
本発明に係る製造方法で得られるフッ素系樹脂フィルムは、一般的な包装材料に加えて、前記したような特性を発揮させる機能性材料や電子材料等として広く使用することができる。例えば、通常用いられるフッ素系樹脂フィルムの用途に加えて、フッ素系材料特有の低屈折率及び広い波長領域における透明性を生かして、電気機器における光学部品構成材料や包装材料、太陽電池の保護フィルムや農業用被膜フィルム、優れた透明性、特にエネルギーの高い低波長領域における高い光透過性を生かして、LSI製造におけるリソグラフィ工程での防塵フィルムへの利用、優れた透明性に加えて、β相に由来する圧電性、及び高い誘電性を生かして、センサーやアクチュエータへの利用等が挙げられる。
以下、実施例及び参考例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
フッ素系樹脂フィルムの製造(1):
下記(1)〜(3)の操作を用いて、フッ素系樹脂フィルムを製造した。
フッ素系樹脂フィルムの製造(1):
下記(1)〜(3)の操作を用いて、フッ素系樹脂フィルムを製造した。
(1)フィルム試料の作製:
フッ素系樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)(重量平均分子量 220000g/mol)(KF1000:(株)クレハ製)を、設定温度を200℃とした熱プレスの天板で挟んで加熱押圧して、厚さが20〜500μmのフィルム試料とした。
フッ素系樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)(重量平均分子量 220000g/mol)(KF1000:(株)クレハ製)を、設定温度を200℃とした熱プレスの天板で挟んで加熱押圧して、厚さが20〜500μmのフィルム試料とした。
(2)急冷操作:
(1)で得られたフィルム試料を190〜230℃近傍のホットプレートで5分間加熱して、溶融状態とした後、30℃に設定した水浴で急冷した。冷却速度は約200℃/秒であった。
(1)で得られたフィルム試料を190〜230℃近傍のホットプレートで5分間加熱して、溶融状態とした後、30℃に設定した水浴で急冷した。冷却速度は約200℃/秒であった。
図4は、本操作における冷却時間−温度曲線を示した図である。なお、参考例1として、実施例1(1)(2)の操作と同様にして溶融させたポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、急冷する代わりに、ホットプレート(温度制御手段)に載せて30℃になるように冷却させて溶融結晶化する冷却操作(以下、「通常の冷却操作」とする場合もある。)も示している。図4には、参考例1における冷却時間−温度曲線もあわせて示している。参考例1の冷却速度は約20℃/秒であった。
図5は、実施例1の冷却操作と参考例1(通常の冷却操作)で得られたフィルム試料のHv光散乱結果を示した図である。なお、結晶化温度は、30℃である。図5に示すように、通常の冷却操作で溶融結晶化させて作製した参考例1のフィルム試料では、四つ葉状の散乱パターンが観測され、球晶構造が形成されている。一方、実施例1(2)の急冷(冷却)操作で急冷結晶化して作製したフィルム試料では、中心に十字状の散乱パターンが観測され、棒状の結晶構造が形成されていることが確認できた。
次に、フィルム試料についてSEM(走査型電子顕微鏡)による観察結果(SEM画像)を図6に示す。通常の冷却操作で溶融結晶化して作製した参考例1の試料フィルムでは大きな球晶構造が形成されていることが確認できた。一方、実施例1(2)の急冷操作で急冷結晶化して作製したフィルム試料では、棒状の無数の結晶が出現していることが確認できた。
なお、フィルム試料の熱安定性を評価するために、冷却後のフッ素系樹脂フィルム(実施例1及び比較例1の両方)について、温度120℃において24時間保持したが、高次構造に変化は観測されなかった。
(3)延伸操作:
(2)で得られたフィルム試料を、参考例1のものも含めサイズ30mm×10mmに切断した。切断したフィルム試料を、延伸倍率が300%になるように一軸延伸を行って厚さが93μmのフッ素系樹脂フィルムとした。
(2)で得られたフィルム試料を、参考例1のものも含めサイズ30mm×10mmに切断した。切断したフィルム試料を、延伸倍率が300%になるように一軸延伸を行って厚さが93μmのフッ素系樹脂フィルムとした。
図7は、延伸操作で得られたフッ素系樹脂フィルムの外観写真を示した図である。図7に示すように、通常の冷却操作で溶融結晶化させて作製した参考例1のフッ素系樹脂フィルムでは、白濁して透明なフィルムとはならなかったが、実施例1(2)に示した急冷操作で急冷結晶化して作製した方法で得られたフッ素系樹脂フィルムは、降伏点を超えた延伸によって透明化した。
また、得られたフッ素系樹脂フィルムに対し、可視・紫外分光法を用いて波長200−900nmの光の透過率測定を行った結果を図8に示す。なお、透過率の結果は、実施例1及び参考例1で得られたフッ素系樹脂フィルムを、Lambert−Beer式を用いて厚みを95μmに統一したものである。なお、参照として、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)の結果(延伸しないもの)も併せて載せている。図8に示すように、通常の冷却操作で溶融結晶化した参考例1で作製したフッ素系樹脂フィルムでは、延伸により全ての波長範囲で透過率が20%以上減少している。これに対して、実施例1で作製したフッ素系樹脂フィルムは、延伸により全ての波長領域で透過率が増加しており、特に、波長900nmにおいて透過率が93%と高い値を出すだけでなく、低波長の300nmにおいても透過率が80%となっており、広い波長領域で高い透過率を示すことが確認できた。
また、実施例1で得られたフッ素系樹脂フィルムについて、熱固定のために、140℃で10分間フッ素系樹脂フィルムを保持したところ、透過率は高波長領域(波長900nm)において91%と、依然高い値を示した。また、低波長領域においても、波長360nmまでは80%以上の透過率を維持していた。
図9は、得られたフッ素系樹脂フィルムの延伸前後の広角X線散乱測定結果を示した図である。図9に示したように、実施例1(2)の急冷操作を含んだ工程で製造したフッ素系樹脂フィルムにおいてはβ相に由来する散乱ピークを観測することができた。従って、実施例1で製造したフィルムが、図9に示したように広い波長範囲で光の高透過性を示すだけでなく、ポーリング処理により強誘電性を持つことが確認できた。
[実施例2]
フッ素系樹脂フィルムの製造(2):
使用したフッ素系樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)の代わりに、ポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)共重合体(PVDF/TrFE:フッ化ビニリデンの質量比が共重合体全体の80%、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン=80/20)(VT−100、ダイキン工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様な方法を用いて、フッ素系樹脂フィルムを製造した。なお、延伸倍率は、実施例2は275%、後記する参考例2は150%とした。
フッ素系樹脂フィルムの製造(2):
使用したフッ素系樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)の代わりに、ポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)共重合体(PVDF/TrFE:フッ化ビニリデンの質量比が共重合体全体の80%、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン=80/20)(VT−100、ダイキン工業(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様な方法を用いて、フッ素系樹脂フィルムを製造した。なお、延伸倍率は、実施例2は275%、後記する参考例2は150%とした。
また、参考例2として、フッ素系樹脂として前記したポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)共重合体を用いて、実施例1(1)(2)の操作と同様にして溶融させたポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)共重合体を、急冷する代わりにホットプレート(温度制御手段)に載せて30℃になるように冷却させて(冷却速度は前記した参考例1と共通)溶融結晶化する冷却操作(通常の冷却操作)を行った後、300%の一軸延伸を行って得られたフッ素系樹脂フィルムを製造した。
図10は、得られたフッ素系樹脂フィルムに対し、可視・紫外分光法を用いて波長200−900nmの光の透過率測定を行った結果を示した図である。なお、実施例1と同様に、透過率の結果は、得られたフッ素系樹脂フィルムを、Lambert−Beer式を用いて厚みを95μmに統一している。図10に示したように、実施例1と同様、急冷で作製した実施例2のフィルム試料は延伸により透過率が増加することが確認できた。一方、通常の冷却操作で溶融結晶化で作製した参考例2のフィルム試料は、延伸により透過率が減少した。
本発明は、一般的な包装材料に加えて、機能性材料や電子材料等として使用されるフッ素系樹脂フィルムを製造する方法として有利に使用することができる。
Claims (5)
- 溶融状態とした結晶性フッ素系樹脂を、冷却速度を50〜1000℃/秒として急冷した後、延伸してフィルム化することを特徴とするフッ素系樹脂フィルムの製造方法。
- 前記延伸における延伸倍率が50〜500%であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系樹脂フィルムの製造方法。
- 延伸後、さらに、ポーリング処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフッ素系樹脂フィルムの製造方法。
- 前記冷却速度が100〜600℃/秒であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のフッ素系樹脂フィルムの製造方法。
- 前記フッ素系樹脂が、ポリフッ化ビニリデン(ポリビニリデンフルオライド)(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロ酢酸エチル(EFA)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF−HFP)、ポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のフッ素系樹脂フィルムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012109828A JP2013237730A (ja) | 2012-05-11 | 2012-05-11 | フッ素系樹脂フィルムの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2012109828A JP2013237730A (ja) | 2012-05-11 | 2012-05-11 | フッ素系樹脂フィルムの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013237730A true JP2013237730A (ja) | 2013-11-28 |
Family
ID=49763045
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2012109828A Pending JP2013237730A (ja) | 2012-05-11 | 2012-05-11 | フッ素系樹脂フィルムの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2013237730A (ja) |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5532182B1 (ja) * | 2012-12-25 | 2014-06-25 | ダイキン工業株式会社 | 透明性に優れたフッ素樹脂フィルム |
JP2016125029A (ja) * | 2015-01-07 | 2016-07-11 | 三菱レイヨン株式会社 | フッ化ビニリデン系樹脂組成物及びその成形品 |
WO2017033701A1 (ja) * | 2015-08-26 | 2017-03-02 | デンカ株式会社 | 樹脂フィルムの製造方法 |
WO2019203243A1 (ja) * | 2018-04-20 | 2019-10-24 | Agc株式会社 | ロールフィルム、ロールフィルムの製造方法、銅張積層体の製造方法、及びプリント基板の製造方法 |
WO2019221041A1 (ja) * | 2018-05-14 | 2019-11-21 | 学校法人 関西大学 | 新規な強誘電体材料 |
CN111936561A (zh) * | 2018-03-30 | 2020-11-13 | 大金工业株式会社 | 成型体 |
WO2021006258A1 (ja) | 2019-07-10 | 2021-01-14 | Agc株式会社 | 長尺フィルム、長尺フィルムの製造方法、長尺積層体の製造方法及び長尺積層体 |
WO2021200627A1 (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-07 | Agc株式会社 | フッ素樹脂フィルム及びその製法 |
-
2012
- 2012-05-11 JP JP2012109828A patent/JP2013237730A/ja active Pending
Cited By (19)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5532182B1 (ja) * | 2012-12-25 | 2014-06-25 | ダイキン工業株式会社 | 透明性に優れたフッ素樹脂フィルム |
WO2014103845A1 (ja) * | 2012-12-25 | 2014-07-03 | ダイキン工業株式会社 | 透明性に優れたフッ素樹脂フィルム |
US9822225B2 (en) | 2012-12-25 | 2017-11-21 | Daikin Industries, Ltd. | Fluororesin film having excellent transparency |
JP2016125029A (ja) * | 2015-01-07 | 2016-07-11 | 三菱レイヨン株式会社 | フッ化ビニリデン系樹脂組成物及びその成形品 |
WO2017033701A1 (ja) * | 2015-08-26 | 2017-03-02 | デンカ株式会社 | 樹脂フィルムの製造方法 |
JPWO2017033701A1 (ja) * | 2015-08-26 | 2018-06-28 | デンカ株式会社 | 樹脂フィルムの製造方法 |
TWI712637B (zh) * | 2015-08-26 | 2020-12-11 | 日商電化股份有限公司 | 樹脂薄膜之製造方法 |
CN111936561A (zh) * | 2018-03-30 | 2020-11-13 | 大金工业株式会社 | 成型体 |
EP3763772A4 (en) * | 2018-03-30 | 2021-11-24 | Daikin Industries, Ltd. | MOLDED BODY |
JP7321145B2 (ja) | 2018-03-30 | 2023-08-04 | ダイキン工業株式会社 | 成形体 |
US11773225B2 (en) | 2018-03-30 | 2023-10-03 | Daikin Industries, Ltd. | Molded article |
WO2019203243A1 (ja) * | 2018-04-20 | 2019-10-24 | Agc株式会社 | ロールフィルム、ロールフィルムの製造方法、銅張積層体の製造方法、及びプリント基板の製造方法 |
WO2019221041A1 (ja) * | 2018-05-14 | 2019-11-21 | 学校法人 関西大学 | 新規な強誘電体材料 |
JPWO2019221041A1 (ja) * | 2018-05-14 | 2021-07-29 | 学校法人 関西大学 | 新規な強誘電体材料 |
JP7381454B2 (ja) | 2018-05-14 | 2023-11-15 | 学校法人 関西大学 | 新規な強誘電体材料 |
WO2021006258A1 (ja) | 2019-07-10 | 2021-01-14 | Agc株式会社 | 長尺フィルム、長尺フィルムの製造方法、長尺積層体の製造方法及び長尺積層体 |
CN114026158A (zh) * | 2019-07-10 | 2022-02-08 | Agc株式会社 | 长条形膜、长条形膜的制造方法、长条形层叠体的制造方法和长条形层叠体 |
WO2021200627A1 (ja) * | 2020-03-31 | 2021-10-07 | Agc株式会社 | フッ素樹脂フィルム及びその製法 |
CN115335438A (zh) * | 2020-03-31 | 2022-11-11 | Agc株式会社 | 氟树脂膜及其制造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2013237730A (ja) | フッ素系樹脂フィルムの製造方法 | |
Dallaev et al. | Brief review of PVDF properties and applications potential | |
JP6477472B2 (ja) | 延伸ポリプロピレンフィルム | |
Tashiro et al. | Structural phase transition in ferroelectric fluorine polymers: X-ray diffraction and infrared/Raman spectroscopic study | |
KR101489115B1 (ko) | 고분자 압전 재료 및 그 제조 방법 | |
JP2011181748A (ja) | 分極化樹脂フィルムの製造方法 | |
CN106536631B (zh) | 膜及其制造方法 | |
KR101826402B1 (ko) | 필름 및 고분자 압전 재료 | |
PT103318A (pt) | Filmes não porosos na fase beta de poli(fluoreto de vinilideno) (pvdf) e método para o seu processamento | |
Bargain et al. | Semicrystalline organization of VDF-and TrFE-based electroactive terpolymers: impact of the trans-1, 3, 3, 3-tetrafluoropropene termonomer | |
JP6343687B2 (ja) | 高分子圧電フィルム及びその製造方法 | |
Ye et al. | High energy density and charge–discharge efficiency of uniaxial stretched poly (vinylidene fluoride-hexafluoropropylene) film with electroactive phase conversion | |
TWI759589B (zh) | 成形體 | |
JP2019172787A (ja) | 延伸フィルム、及び、圧電フィルム | |
JP6300948B2 (ja) | 高分子圧電フィルム | |
JP6597623B2 (ja) | エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体シートおよびその製造方法 | |
Zhao et al. | Methanol environment induced smaller crystallite size to enhance energy storage properties of poly (vinylidene fluoride) | |
TWI649367B (zh) | 保護膜、偏光器及包含其之顯示裝置 | |
US11773225B2 (en) | Molded article | |
Yamada et al. | Test of ferroelectricity in non-stretched poly (vinylidene fluoride)/clay nanocomposites | |
Batra et al. | Optical parametric investigation on a poled PVDF thin-film for optoelectronic devices | |
JP5957648B2 (ja) | フッ化ビニリデンと、トリフルオロエチレン又はテトラフルオロエチレンとの共重合体とフラーレンとの混合膜及びその製造方法 | |
EP2400574A1 (en) | Polymer sheet material with piezoelectric properties and a method for manufacturing | |
WO2020157238A1 (en) | Thermoplastic composition comprising a blend of one or more vdf copolymers and one or more acrylic or methacrylic ester polymers. | |
WO2020157237A1 (en) | Method for manufacturing an article from a composition comprising a blend of one or more vdf polymers and one or more acrylic or methacrylic ester polymers. |