JP2011120445A - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents

モータ制御装置および車両用操舵装置 Download PDF

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Abstract

【課題】回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】仮想回転座標系であるγδ座標系のγ軸電流Iγでモータが駆動される。γδ座標系は制御上の回転角である制御角θに従う座標系である。制御角θとロータ角θとの差(負荷角θ)に応じたアシストトルクが発生する。検出操舵トルクTがフィードバックされ、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけるように、加算角αが生成される。加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に加算されることにより、制御角θの今回値θ(n)が求められる。補正制御部38は、推定誘起電圧の二乗和Σに基づき、加算角ガード41による加算角補正の実施/非実施を決定し、加算角リミッタ24における制限値を変更する。
【選択図】図1

Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置、およびそれを用いた車両用操舵装置に関する。ブラシレスモータは、たとえば、車両用操舵装置の駆動源として使用可能である。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、一般的には、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。しかし、レゾルバは、高価であり、配線数が多く、また、設置スペースも大きい。そのため、ブラシレスモータを備えた装置のコスト削減および小型化が阻害されるという課題がある。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、磁極の位相を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開2007-267549号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置その他の車両用操舵装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置、およびこのようなモータ制御装置を備えた車両用操舵装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を指示値に基づいて制御するためのモータ制御装置(5)であって、制御上の回転角である制御角(θ)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(31〜36B)と、前記制御角に加算すべき加算角(α)を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、前記モータの誘起電圧を推定し、推定された誘起電圧の二乗値(Σ)を演算する誘起電圧二乗値演算手段(28,37)と、前記誘起電圧二乗値演算手段によって演算された誘起電圧二乗値に基づいて前記指示値を補正する補正手段(21A,38,39,41,43,44,60〜64,70,71)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が適値に導かれることによって、適切なトルクが発生する。
さらに、この発明では、モータの誘起電圧が推定され、その二乗値(誘起電圧二乗値)に基づいて、モータ制御用の指示値に補正が加えられる。誘起電圧二乗値は、モータの回転状態(とくにロータ角速度の大きさ)を反映している。したがって、モータ誘起電圧二乗値を用いることによって、指示値に対して、モータの回転状態に応じた適切な補正を施すことができ、これにより、モータを一層適切に制御することができる。
とくに、車両用操舵装置に用いられるモータにおいては、ロータ角速度や発生トルクが著しく変化する。そこで、誘起電圧二乗値に基づいて指示値を補正することで、車両用操舵装置の駆動源としてのモータを適切に制御することができ、操舵フィーリングを向上できる。
前記補正手段は、指示値の一例としての前記制御角を補正するものであってもよい。また、前記補正手段は、前記加算角を補正することによって、前記制御角を実質的に補正するものであってもよい。
請求項2記載の発明は、前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が第1所定値(Cth1)以上になると前記指示値の補正を開始する、請求項1記載のモータ制御装置である。
ロータ角速度の絶対値が大きいほど誘起電圧二乗値が大きくなる。したがって、誘起電圧二乗値の大小に応じて指示値の補正を行うか否かを決定することによって、ロータ角速度の絶対値の大小に応じて補正を行うか否かを決定できる。さらに、この発明では、誘起電圧二乗値が第1所定値以上になると補正を開始しているので、指示値を適切に補正することができる。
たとえば、ロータ角速度を用いて指示値を補正する場合、ロータ角速度推定値の信頼性が低ければ補正の精度が低くなる。とくに、低角速度域では、ロータ角速度の推定精度が低い。そこで、誘起電圧二乗値が充分に大きいときにロータ角速度推定値を用いた補正を実行すれば、指示値を適切に補正することができる。ロータ角速度と等価な値として、所定周期間(たとえば前記演算周期間)におけるロータ角変位を用いてもよい。
請求項3記載の発明は、前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が第1所定値(Cth1)以上の状態が所定時間(Ta)以上継続したときに前記指示値の補正を開始する、請求項1記載のモータ制御装置である。この発明では、誘起電圧二乗値が第1所定値以上の状態が所定時間以上継続したときに補正を開始しているので、指示値を適切に補正することができる。ロータ角速度と等価な値として、たとえば、所定周期間(たとえば前記演算周期間)におけるロータ角変位が用いられる場合には、前記所定時間(Ta)はこの所定周期以上の時間に設定されてもよい。
請求項4記載の発明は、前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が前記第1所定値よりも小さい第2所定値(Cth2)以下になると前記指示値の補正を停止する、請求項2または3記載のモータ制御装置である。
この発明では、誘起電圧二乗値が第1所定値以上になると(あるいは誘起電圧二乗値が第1所定値以上の状態が所定時間以上継続すると)補正を開始し、誘起電圧二乗値が第2所定値(<第1所定値)以下になると補正を停止する構成であるので、補正の開始および停止に対してヒステリシスが与えられている。これにより、誘起電圧二乗値の微小変化によって指示値補正の有無が変更されることがないから、モータの制御を安定化できる。
たとえば、ロータ角速度を用いて指示値を補正する場合、ロータ角速度推定値の信頼性が低ければ補正の精度が低くなる。とくに、低角速度域では、ロータ角速度の推定精度が低い。そこで、誘起電圧二乗値が小さいときにはロータ角速度推定値を用いた補正を停止し、誘起電圧二乗値が充分に大きいとき(あるいは誘起電圧二乗値が充分に大きい状態が所定時間以上継続したとき)にロータ角速度推定値を用いた補正を実行すれば、指示値を適切に補正することができる。
請求項5記載の発明は、前記加算角演算手段によって演算された加算角を所定の制限値(ωmax)で制限する加算角制限手段(24)をさらに含み、前記補正手段は、前記加算角制限手段における前記制限値を変更する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ制御装置である。加算角に適切な制限を加えることによって、実際のロータの回転に比して過大な加算角が制御角に加算されることを抑制できる。これにより、適切にモータを制御することができる。さらに、この発明では、誘起電圧二乗値に基づいて制限値が変更される。前述のとおり、誘起電圧二乗値はロータ角速度に対応している。また、加算角は制御周期間における制御角の変化量であるから、回転座標系の角速度に対応している。したがって、誘起電圧二乗値に応じて制限値を補正することによって、ロータ角速度に応じて加算角を制限できる。これにより、より一層適切なモータ制御が可能になる。
前記制限値は、たとえば、次式によって定められた上限値以下の範囲で定められることが好ましい。ただし、次式における「最大ロータ角速度」とは、電気角でのロータ角速度の最大値である。
制限値の上限値=最大ロータ角速度×演算周期
たとえば、モータの回転を所定の減速比の減速機構を介して車両用操舵装置の操舵軸に伝達している場合には、最大ロータ角速度は、最大操舵角速度(操舵軸の最大回転角速度)×減速比×極対数で与えられる。「極対数」とは、ロータが有する磁極対(N極とS極との対)の数である。
請求項6記載の発明は、前記補正手段は、前記加算角演算手段によって演算された加算角に前記誘起電圧二乗値に応じたゲイン(Gα)を乗算することにより、実質的に前記指示値を補正する、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成では、誘起電圧二乗値に応じたゲインが加算角に乗じられることによって、加算角が補正される。したがって、前制御周期の制御角に今制御周期の加算角を加算して得られる今制御周期の制御角(指示値の一例)が、実質的に、誘起電圧二乗値に応じた補正を受けることになる。誘起電圧二乗値はロータ角速度に対応した値を有するので、結果的に、ロータ角速度に応じて制御角を補正できることになる。これにより、ロータ角速度に応じて制御角を適切に補正できる。
具体的には、誘起電圧二乗値が小さいほど小さくなる特性のゲインを加算角に乗じてもよい。これにより、ロータ角速度が遅い低速領域ほど加算角の絶対値が抑制されるので、駆動対象に与えられるモータトルクが小さくなる。たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与えるモータを制御する場合には、ステアリングホイール等の操作部材の操作初期における操舵補助力(アシストトルク)が抑制される。これにより、ステアリングホイール等を切り始めたときに良好な手応え感が得られる。
逆に、誘起電圧二乗値が大きいほど小さくなる特性のゲインを加算角に乗じてもよい。これにより、ロータ角速度が大きい高速領域ほど加算角が抑制されるので、駆動対象に与えられるモータトルクが小さくなる。たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与えるモータを制御する場合には、ステアリングホイール等の操作部材の操作速度が大きくなるほど操舵補助力が抑制される。これにより、いわゆるダンピング制御を行うことができ、ふらつき感を抑制できる。
請求項7記載の発明は、前記加算角演算手段によって演算された加算角を所定の制限値で制限する加算角制限手段をさらに含み、前記補正手段は、前記加算角制限手段における前記制限値を変更する手段と、前記加算角制限手段によって制限された後の加算角に前記誘起電圧二乗値に応じたゲインを乗算することにより、実質的に前記指示値を補正する手段とを含む、請求項1記載のモータ制御装置である。
この発明では、誘起電圧二乗値に応じて制限値を補正することによって、ロータ角速度に応じて加算角を制限できる。さらに、加算角制限手段によって制限された後の加算角に前記誘起電圧二乗値に応じたゲインを乗算することによって、ロータ角速度に応じて制御角を補正できる。したがって、より適切なモータ制御が可能になる。
請求項8記載の発明は、前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が所定値(Lth)以上のときは第1態様で前記指示値を補正し、前記誘起電圧が前記所定値未満のときは前記第1態様とは異なる第2態様で前記指示値を補正する、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成により、誘起電圧二乗値の大小に応じて、少なくとも2種類の態様で指示値を補正できる。誘起電圧二乗値はロータ角速度に対応しているので、誘起電圧二乗値の大小に応じて指示値の補正態様を変更することにより、ロータ角速度に応じて適切な態様を選択して指示値を補正できる。これにより、一層適切なモータ制御が可能となる。
たとえば、誘起電圧二乗値が充分に大きいときには、推定誘起電圧から精度の高い推定角速度を演算することができる。そこで、推定角速度を用いることによって、指示値を適切に補正することができる。一方、誘起電圧二乗値が小さいときには、推定誘起電圧を用いて求められる推定角速度の精度は低い。そこで、このような場合には、推定角速度を用いない別の態様で指示値を補正することが妥当である。たとえば、加算角に対して誘起電圧二乗和に応じたゲインを乗じることによって指示値を補正してもよい。
請求項9記載の発明は、前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が所定値(Dth,Fth)以下の場合に、前記指示値を低減補正する、請求項1記載のモータ制御装置である。この構成によれば、誘起電圧二乗値が所定値以下であり、したがって、ロータ角速度が小さいときには、指示値を低減補正することができる。
指示値の低減は、たとえば、モータ駆動値(指示値の一例)を周期的に零とすることによって実行されてもよい。これにより、モータ駆動がオン/オフされる。たとえば、モータの駆動対象に対して、モータトルクと、モータトルク以外のトルク(外部入力トルク)とが加えられる場合に、外部入力トルクの大きさが所定の目標絶対値(T:たとえば一定値)となるようにモータを制御する場合を想定する。この場合、モータの駆動をオフすると、駆動対象には外部入力トルクのみが加えられることになる。このときの外部入力トルクをトルクセンサで検出すると、外部入力トルクの方向が分かる。そこで、たとえば、前記目標絶対値に対して前記検出された外部入力トルクの方向に応じた符号を付与することにより、外部入力トルクの目標値である指示トルク(T)を設定してもよい。このようにして設定された指示トルクに基づいて、モータをフィードバック制御することができる。
前記指示値の低減は、また、加算角に対して低減ゲイン(Gα:0以上1未満の値)を可変インターバル時間ごとに乗じて制御角(指示値の一例)を補正することによって行われてもよい。可変インターバル時間は、たとえば、誘起電圧二乗値に応じて定めることができる。より具体的には、誘起電圧二乗値が大きいほど可変インターバル時間を長く設定してもよい。これにより、誘起電圧二乗値が小さいほど低減ゲインの影響が大きくなるから、ロータ角速度が小さいときに、モータトルクを低減することができる。たとえば、モータの駆動対象の負荷トルクに対して、モータトルクと、モータトルク以外のトルク(外部入力トルク)とで対抗する場合には、モータトルクを低減することによって、外部入力トルクによる負担分が大きくなる。したがって、ロータ角速度が小さいときに外部入力トルクを大きくできる。たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与えるモータを制御する場合には、ステアリングホイール等の操作部材の操作初期における操舵補助力(アシストトルク)が抑制されることになる。これにより、ステアリングホイール等を切り始めたときに良好な手応え感が得られる。すなわち、ステアリング操作の速さに応じた適切な手応え感を実現できる。
加算角に乗じられる低減ゲインは、一定値であってもよいし、誘起電圧二乗値に応じて変化する可変ゲインであってもよい。このような可変ゲインは、誘起電圧二乗値が大きいほど小さくなるように定めてもよいし、誘起電圧二乗値が大きくなるほど大きくなるように定めてもよい。
前記指示値の低減は、さらに、誘起電圧二乗値が所定値(Fth)以下であることを必要条件として、加算角を低減補正(たとえば零に補正)することによって、制御角(指示値の一例)を実質的に補正することによって行われてもよい。これにより、ロータ角速度が小さいときに、ロータの回転を制限するトルクをモータから発生させることができる。たとえば、モータの駆動対象に対して、モータトルクと、モータトルク以外のトルク(外部入力トルク)とが加えられる場合を想定する。この場合において、外部入力トルクによって駆動対象の変位を抑制しようとするときに、加算角が低減されることにより、モータトルクによって駆動対象の変位抑制を補助できる。たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与えるモータを制御する場合には、ステアリングホイール等の操作部材を保持する保舵時において、モータトルクによって舵取り機構の変位が抑制されるので、運転者の操舵負担を低減できる。
前記モータ制御装置は、モータによって駆動される駆動対象(2)に加えられる、モータトルク以外のトルク(T)を検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に作用させるべき指示トルク(T:モータトルク以外のトルクの指示値)を設定する指示トルク設定手段(21)とをさらに備えていてもよい。加算角演算手段は、たとえば、トルク検出手段によって検出される検出トルクを指示トルクに一致させるべく、加算角を演算するように動作する。これにより、指示トルクに応じたトルク(モータトルク以外のトルク)が駆動対象に加えられる状態となるように、モータトルクが制御される。モータトルクは、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量である負荷角に対応する。負荷角は、制御角とロータ角との差で表される。モータトルクの制御は、負荷角を調整することによって達成され、この負荷角の調整が加算角を制御することによって達成される。
一方、指示トルクと検出トルクとが比較され、その比較結果に応じて、加算角が増減される。これにより、たとえば、指示トルクと検出トルクとの大小関係に合致しない加算角が演算された場合に、このような加算角を妥当な値に補正することができる。
前記モータ制御装置は、モータの誘起電圧を推定し、推定された誘起電圧に基づいて、前記演算周期当たりの前記ロータの角変位(ロータ角速度相当値)を演算する角変位演算手段(30)をさらに含んでいてもよい。この場合に、前記補正手段は、前記角変位演算手段によって演算された角変位に基づいて定められる所定範囲内の値となるように前記加算角を補正する加算角補正手段(41)を含んでいてもよい。
制御角は、演算周期間で加算角だけ変化する。つまり、演算周期当たりの制御角の変化は加算角に等しい。加算角が演算周期当たりのロータの角変位よりも大きいとき、負荷角が増加する。したがって、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、負荷角の増加に応じてモータトルクが増加する。また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、負荷角の増加に応じてモータトルクが減少する。このように、負荷角とモータトルクとの間には相関関係がある。
駆動対象に対して全体として或るトルクを作用させるべき場合(たとえば、モータトルクによって不足のトルクが補われる場合)、モータトルクが増加することによって、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが減少するので、検出トルクが減少することになる。一方、モータトルクが減少すれば、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクが増加するので、検出トルクが増加することになる。したがって、指示トルクと検出トルクとの大小関係と、演算周期当たりのロータ角変位と加算角との大小関係とが適切であれば、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクとの比較結果に応じて、ロータの角変位に基づいて定められる所定範囲の値となるように加算角を補正する。
より具体的には、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合には、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも小さいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合には、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも大きいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに正の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、加算角の下限および上限の両方を演算周期当たりの角変位に応じて定めるようにすれば、一層妥当な制御を実現できる。
一方、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以上の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位以下の値に補正することが好ましい。
負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合には、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合に、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が大きければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも小さい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも小さいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以上の値に補正する。また、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合に、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が小さければ、検出トルクを指示トルクへと近づけることができる。そこで、加算角補正手段は、検出トルクが指示トルクよりも大きい場合において、加算角が演算周期当たりのロータ角変位よりも大きいときには、加算角を演算周期当たりのロータ角変位以下の値に補正する。
このようにして、検出トルクと指示トルクとの大小関係に応じて、加算角を妥当な値に補正することができるので、検出トルクを指示トルクに近づけるように、妥当な制御を行うことができる。
また、負荷角とモータトルクとに負の相関がある場合に、検出トルクが指示トルクよりも小さいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に大きいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。また、検出トルクが指示トルクよりも大きいときに、演算周期当たりのロータ角変位よりも加算角が過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。そこで、前記加算角補正手段は、前記検出トルクが前記指示トルクよりも小さいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ大きい値以下の値に補正し、前記検出トルクが前記指示トルクよりも大きいときには、前記加算角を前記角変位演算手段によって演算された角変位よりも所定の変化制限値だけ小さい値以上の値に補正することが好ましい。これにより、加算角が適値に収束しやすくなるので、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。とくに、加算角の下限および上限の両方を演算周期当たりの角変位に応じて定めることにより、一層妥当な制御を実現できる。
前記加算角演算手段は、前記検出トルクを前記指示トルクに近づけるように前記加算角を演算するフィードバック制御手段(22,23)を含むものであってもよい。
請求項10記載の発明は、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するモータ(3)と、前記モータを制御するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータ制御装置(5)とを含む、車両用操舵装置である。この構成によれば、誘起電圧二乗値に応じてモータ制御のための指示値を適切に補正することができるので、車両用操舵装置の操舵性能を向上できる。
この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルク(モータトルク以外の外部入力トルクの一例)を検出するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 操舵トルクリミッタの働きを説明するための図である。 γ軸指示電流値の設定例を示す図である。 加算角リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 加算角ガードの働きを説明するためのフローチャートである。 加算角ガードの働きを説明するためのフローチャートである。 補正制御部等の働きを説明するためのフローチャートである。 補正制御部等の働きの他の例を説明するためのフローチャートである。 誘起電圧推定部の構成を説明するためのブロック図である。 図11Aは加算角ゲインの特性例を示す図であり、図11Bは加算角ゲインの他の特性例を示す図である。 故障時トルク設定部の機能を説明するためのフローチャートである。 制御破綻時の加算角補正を説明するためのフローチャートである。 保舵判定処理の具体例を説明するためのフローチャートである。 この発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図である。 図16Aはダンピングトルク指示値の設定例を説明するための特性図であり、図16Bは加算角ゲインの特性例を示す図である。 ダンピング制御部の働きを説明するためのフローチャートである。 漸増・漸減ゲイン、補正後のダンピングトルク指示値、および補正後の加算角ゲインの時間変化の例を示す図である。 この発明の第3の実施形態に係るモータ制御装置が適用された車両用操舵装置の構成を説明するためのブロック図である。 加算角ゲイン生成部および積分項設定部等の動作を説明するためのフローチャートである。 加算角の時間変化の一例を示す図である。 誘起電圧二乗和に応じたインターバル時間の設定例を示す特性図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。
モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θに従う実回転座標系である。このロータ角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θが導入される。制御角θは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θがロータ角θに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θを用いて行うことができる。
制御角θとロータ角θとの差を負荷角θ(=θ−θ)と定義する。
制御角θに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iとの間に、次式(1)の関係が成立する。
=Iγ・sinθ …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流I,I,I(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、制御破綻監視部25と、制御角演算部26と、保舵判定部27と、誘起電圧推定部28と、回転角推定部29と、ロータ角変位演算部30と、指示電流値生成部31と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、誘起電圧二乗和演算部37と、補正制御部38と、ゲイン生成部39と、トルク偏差監視部40と、加算角ガード41と、故障検知部42と、ゲイン乗算部43と、加算角補正部44とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクTを設定する。たとえば、図4に示すように、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクTが設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクTの設定が行われる。また、指示操舵トルクTは、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4の故障時に指示操舵トルクTを設定する故障時トルク設定部21Aを有している。故障時トルク設定部21Aは、所定の指示トルク絶対値T(>0。たとえばT=2Nm)に対して、正符号「+」または負符号「−」を付与することにより、指示操舵トルクT(=+Tまたは−T)を設定する。いずれの符号を付与するかは、ロータ角変位演算部30によって演算されるロータ角変位Δθ、またはトルクセンサ1によって検出される操舵トルクTに基づいて決定される。こうして定められた指示操舵トルクTは、舵角センサ4の故障時に用いられる。
舵角センサ4の故障の有無は、故障検知部42によって検出される。故障検知部42は、たとえば、舵角センサ4の信号線に表れる信号を監視し、舵角センサ4の断線故障、短絡故障その他の故障を検出するように構成されている。故障検知部42は、舵角センサ4の故障を検知すると、指示操舵トルク設定部21に故障発生を通知する。故障発生が通知されると、指示操舵トルク設定部21は、故障時トルク設定部21Aが設定する指示操舵トルクTを出力する。
操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の出力を所定の上限飽和値+Tmax(+Tmax>0。たとえば+Tmax=7Nm)と下限飽和値−Tmax(−Tmax<0。たとえば−Tmax=−7Nm)との間に制限する。具体的には、操舵トルクリミッタ20は、図5に示すように、上限飽和値+Tmaxと下限飽和値−Tmaxの間では、トルクセンサ1の検出操舵トルクTをそのまま出力する。また、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが上限飽和値+Tmax以上であれば、上限飽和値+Tmaxを出力する。そして、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが下限飽和値−Tmax以下であれば、下限飽和値−Tmaxを出力する。飽和値+Tmaxおよび−Tmaxは、トルクセンサ1の出力信号が安定な領域(信頼性のある領域)の境界を画定するものである。つまり、トルクセンサ1の出力信号は、上限飽和値Tmaxを超える区間、および下限飽和値−Tmaxを下回る区間では不安定であり、実際の操舵トルクに対応しなくなる。換言すれば、飽和値+Tmax,−Tmaxは、トルクセンサ1の出力特性に応じて定められる。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTとトルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた操舵トルクT(以下、区別するために「検出操舵トルクT」という。)との偏差(トルク偏差)ΔT(=T−T)を求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θに対する加算角αを演算する。したがって、前記トルクフィードバック制御手段は、加算角αを演算する加算角演算手段を構成している。
より具体的には、PI制御部23は、比例要素23aと、積分要素23bと、加算器23cとを備えている。ただし、Kは比例ゲイン、Kは積分ゲイン、1/sは積分演算子である。比例要素23aによって比例積分演算の比例項(比例演算値)が求められ、積分要素23bによって比例積分演算の積分項(積分演算値)が求められる。これらの演算結果(比例項および積分項)が加算器23cで加算されることによって、加算角αが求められる。
加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える加算角制限手段である。より具体的には、加算角リミッタ24は、所定の上限値UL(正の値)と下限値LL(負の値)との間の値に加算角αを制限する。上限値ULおよび下限値LLは、制限値ωmax(ωmax>0)に基づいて定められる。この制限値ωmaxは、この実施形態では、補正制御部38によって、第1制限値ωmax1と第2制限値ωmax2(ωmax1>ωmax2>0)との2種類に設定されるようになっている。いずれの制限値ωmax1,ωmax2も、たとえば、最大操舵角速度に基づいて定められる上限値以下に設定される。最大操舵角速度とは、ステアリングホイール10の操舵角速度として想定され得る最大値であり、たとえば、800deg/sec程度である。
最大操舵角速度のときのロータ50の電気角の変化速度(電気角での角速度。最大ロータ角速度)は、次式(2)のとおり、最大操舵角速度と、減速機構7の減速比と、ロータ5
0の極対数との積で与えられる。極対数とは、ロータ50が有する磁極対(N極とS極との対)の個数である。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
ロータ角変化量最大値=最大ロータ角速度×演算周期
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxの上限値とすればよい。この上限値以下に定められる制限値ωmax(ωmax=ωmax1またはωmax=ωmax2)を用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
UL=+ωmax …(4)
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αには、ゲイン乗算部43において加算角ゲインGαが乗じられ、さらに、加算角補正部44によって必要時に補正が施される。この加算角補正部44から出力される加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θの前回値θ(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
制御角演算部26は、制御角θの前回値θ(n-1)に加算角補正部44から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θを演算する。そして、前演算周期における制御角θを前回値θ(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θである今回値θ(n)を求める。
制御破綻監視部25は、制御角θが収束しなくなる状態が生じたときに、制御破綻が発生したと判定する。たとえば、制御破綻監視部25は、トルクセンサ1が出力する操舵トルクTの絶対値が所定の閾値(たとえば7Nm)以上である状態が所定時間以上継続すると、制御破綻が発生したと判定するものであってもよい。この状況は、たとえば、モータ3に供給される電流が不足していて、いずれの制御角θにおいても、指示操舵トルクTを達成できない場合に生じる。また、制御破綻監視部25は、加算角リミッタ24から生成される加算角αを監視し、加算角αの絶対値が前記制限値ωmaxよりも小さな加算角しきい値(たとえば、制限値ωmaxの8割程度の値)に達したかどうかを監視するものであってもよい。この場合、たとえば、制御破綻監視部25は、加算角絶対値|α|が当該加算角しきい値以上の状態が所定時間継続すると、制御破綻が生じたと判定する。この状況は、たとえば、モータ3に供給される電流が不足していて、いずれの制御角θにおいても、指示操舵トルクTを達成できない場合に生じる。制御破綻監視部25は、こうして、制御破綻が発生したと判定すると、そのことを加算角補正部44に通知する。
誘起電圧推定部28は、モータ3の回転によって生じる誘起電圧を推定するものである。そして、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θを演算するものである。誘起電圧推定部28および回転角推定部29の具体例については、後述する。
ロータ角変位演算部30は、演算周期間の推定回転角θの変化量を求めることによって、演算周期当たりのロータ50の角変位Δθ(ロータ角速度に相当する値)を求める。
指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ およびδ軸指示電流値Iδ (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ 」という。)を生成する。指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ を零とする。より具体的には、指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ の設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
電流偏差演算部32は、指示電流値生成部31によって生成されるγ軸指示電流値Iγ に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ −Iγと、δ軸指示電流値Iδ (=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ −Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、αβ/γδ変換部36Bから偏差演算部32に与えられるようになっている。
UVW/αβ変換部36Aは、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流I、V相検出電流IおよびW相検出電流I)を二相固定座標系であるαβ座標系の二相検出電流IαおよびIβ(以下総称するときには「二相検出電流Iαβ」という。)に変換する。αβ座標系は、図2に示すように、ロータ50の回転中心を原点として、ロータ50の回転平面内にα軸およびこれに直交するβ軸(図2の例ではU軸と同軸)を定めた固定座標系である。αβ/γδ変換部36Bは、二相検出電流Iαβをγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部32に与えられるようになっている。αβ/γδ変換部36Bにおける座標変換には、制御角演算部26で演算される制御角θが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部32によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成する。この二相指示電圧Vγδ が、γδ/αβ変換部34Aに与えられる。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ に変換する。この座標変換には、制御角演算部26で演算された制御角θが用いられる。二相指示電圧Vαβ は、α軸指示電圧Vα およびβ軸指示電圧Vβ からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW を生成する。三相指示電圧VUVW は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V からなる。この三相指示電圧VUVW は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部31によって設定される二相指示電流値Iγδ に近づくように制御される。
誘起電圧二乗和演算部37は、誘起電圧推定部28によって求められる推定誘起電圧の二乗和を求める。誘起電圧推定部28は、たとえば、α軸推定誘起電圧E^αおよびβ軸推定誘起電圧E^βを求める。この場合に、誘起電圧二乗和演算部37は、誘起電圧二乗和Σ=E^α +E^β (≧0)を演算する。
保舵判定部27は、誘起電圧二乗和演算部37によって演算される誘起電圧二乗和Σに基づいて、保舵状態か否かを判定する。保舵状態とは、運転者がステアリングホイール10をほとんど回転しない状態で保持している操舵状態である。保舵判定部27は、保舵状態か否かの判定結果を加算角補正部44に与える。
加算角補正部44は、制御破綻監視部25から制御破綻の発生が通知されたときに、加算角αを補正する働きを担う。具体的には、加算角補正部44は、所定の基本値B(0<B<ωmax)に対して正符号「+」もしくは負符号「−」を付与した値、または零を加算角αとして設定する。加算角補正部44は、保舵判定部27によって保舵状態であると判定されているときは、加算角αを零とする。保舵状態でないときは、加算角補正部44は、基本値Bに対して操舵トルクTに応じた符号を付して加算角目標値αを設定し、この加算角目標値αに向けて加算角αを漸次的に変化させる。制御破綻が発生していないときは、ゲイン乗算部43が生成する加算角αは、加算角補正部44による補正を受けることなく、そのまま制御角演算部26に与えられる。
補正制御部38は、誘起電圧二乗和Σに基づき、加算角ガード41による処理を行うか否かを判断し、さらに、加算角リミッタ24における制限値ωmaxを切り換える。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視することにより、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係を判定する。その判定結果は、加算角ガード41に与えられるようになっている。
加算角ガード41は、PI制御部23が生成する加算角αに対して加算角ガード処理を施すためのものである。加算角ガード処理とは、PI制御部23によって生成された加算角αが、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係と矛盾する場合に、この矛盾を解消するように加算角αを補正する処理である。より具体的には、加算角ガード41は、必要時において、ロータ角変位演算部30によって求められるロータ角変位Δθに基づいて加算角αを補正する。ロータ角変位Δθは、ロータ角速度に相当するので、加算角ガード41による処理は、ロータ角速度に応じて加算角αを補正する処理にほかならない。
ゲイン生成部39は、誘起電圧二乗和Σに応じた加算角ゲインGαを生成する。この加算角ゲインGαが、ゲイン乗算部43において、加算角リミッタ24から出力される加算角αに乗じられる。この乗算後の加算角α、または加算角補正部44が生成する加算角αが、制御角演算部26に与えられる。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角ガード41、加算角リミッタ24、ゲイン乗算部43および加算角補正部44の機能は省略してある。
指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(Kは比例係数、Kは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に対して加算されることによって、制御角θの今回値θ(n)=θ(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θとロータ50の実際のロータ角θとの偏差が負荷角θ=θ−θとなる。
したがって、制御角θに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流I=Iγsinθとなる。このq軸電流Iがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数Kをq軸電流I(=Iγsinθ)に乗じた値が、アシストトルクT(=K・Iγsinθ)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTを舵取り機構2からの負荷トルクTから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θを更新していくことにより、負荷角θが変化し、この負荷角θに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクTに応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このようにして、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現できる。これにより、構成を簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
この実施形態では、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される。具体的には、q軸電流I=Iγsinθであるから、−90°≦θ≦90°となるように、加算角αが制御される。むろん、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αを制御することもできる。この場合、90°≦θ≦270°となるように、加算角αが制御される。PI制御部23のゲインを正にすれば正の相関領域での制御となり、PI制御部23のゲインを負にすれば負の相関領域での制御となる。
図7は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められ加算角ガード41によって補正された加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められ加算角ガード41によって補正された加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS1:NO)、加算角リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS3)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS3:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS4)。したがって、制御角θに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められ加算角ガード41によって補正された加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS3:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図8Aは、加算角ガード処理を説明するためのフローチャートである。ただし、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが正の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される場合の処理例が示されている。
トルク偏差監視部40は、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔTの符号を監視しており、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの大小関係に関する情報を加算角ガード41に与える。
検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいとき(ステップS11:YES)、加算角ガード41は、PI制御部23によって求められた加算角αが、ロータ角変位演算部30によって求められた演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも所定の変化制限値A(A>0。たとえばA=7deg)だけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいとき(ステップS11:NO。ステップS16:YES)、加算角ガード41は、PI制御部23によって求められた加算角αがロータ角変位Δθよりも大きいかどうかを判断する(ステップS17)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入し(ステップS13)、加算角αをロータ角変位Δθに補正する。加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば(ステップS17:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも前記変化制限値Aだけ小さな値(Δθ−A)と比較する(ステップS18)。加算角αが当該値(Δθ−A)よりも小さいときには(ステップS18:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ−A)を代入する(ステップS19)。加算角αが当該値(Δθ−A)以上であれば(ステップS18:NO)、加算角αの補正は行われない。
また、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに等しいとき(ステップS11およびステップS16の判断がいずれも否定)、加算角αの補正は行われない。
加算角αは、演算周期間の制御角θの変化量であり、γδ座標軸の演算周期当たりの角変位(ロータ角速度に相当する。)に等しい。よって、加算角αが演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも大きければ負荷角θが大きくなり、加算角αがロータ角変位Δθよりも小さければ負荷角θが小さくなる。そして、負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とに正の相関がある場合には、負荷角θが大きくなればモータトルクが大きくなり、負荷角θが小さくなればモータトルクが小さくなる。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が不足している状態である。したがって、モータトルクを増加させるために、負荷角θを増加させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8AのステップS11〜S13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以上に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθ未満であれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。たとえば、PI制御部23の応答性によっては、このような状況が生じ得る。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以上の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも大きい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ大きな値)に補正してもよい。
同様に考察すると、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が過剰となっている状態である。したがって、モータトルクを減少させるために、負荷角θを減少させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8AのステップS16,S17およびS13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以下に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθを超えていれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。たとえば、PI制御部23の応答性によっては、このような状況が生じ得る。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以下の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも小さい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ小さな値)に補正してもよい。
さらにこの実施形態では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合(ステップS11:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθに変化制限値Aを加算した値よりも大きいときは(ステップS12:NO。ステップS14:YES)、加算角αをΔθ+Aに補正することとしている(ステップS15)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に大きいと、加算角αを適値に収束させるのに時間がかかるからである。また、検出トルクTが指示トルクTよりも小さい場合において、(ステップS16:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθから変化制限値Aを減算した値よりも小さいときは(ステップS17:NO。ステップS18:YES)、加算角αをΔθ−Aに補正することとしている(ステップS19)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。このような補正を行うことにより、加算角αが適値に収束しやすくなるから、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
このように、図8Aのガード処理では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいときには、Δθ+A≧α≧Δθの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいときには、Δθ≧α≧Δθ−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに応じた妥当な値をとることができる。
負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とが負の相関を有する領域で負荷角θが調整されるように、加算角αが制御される場合の加算角ガード処理の例を図8Bに示す。図8Bにおいて、図8Aに示された各ステップと同様の処理が行われるステップには、図8A中と同一参照符号を付して示す。
図8Bに示す処理では、検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとの大小関係に応じた処理が、図8Aの処理とは逆になっている。すなわち、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいとき(ステップS11A:YES)、加算角ガード41は、加算角αが、ロータ角変位Δθよりも小さいかどうかを判断する(ステップS12)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入する(ステップS13)。すなわち、加算角αがロータ角変位Δθに補正される。加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば(ステップS12:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位よりも変化制限値Aだけ大きな値(Δθ+A)と比較する(ステップS14)。加算角αが当該値(Δθ+A)よりも大きいときには(ステップS14:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ+A)を代入する(ステップS15)。加算角αが当該値(Δθ+A)以下であれば(ステップS14:NO)、加算角αの補正は行われない。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいとき(ステップS11A:NO。ステップS16A:YES)、加算角ガード41は、加算角αがロータ角変位Δθよりも大きいかどうかを判断する(ステップS17)。この判断が肯定されると、加算角ガード41は、加算角αにロータ角変位Δθを代入し(ステップS13)、加算角αをロータ角変位Δθに補正する。加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば(ステップS17:NO)、加算角ガード41は、さらに、加算角αを、ロータ角変位Δθよりも前記変化制限値Aだけ小さな値(Δθ−A)と比較する(ステップS18)。加算角αが当該値(Δθ−A)よりも小さいときには(ステップS18:YES)、加算角ガード41は、加算角αに当該値(Δθ−A)を代入する(ステップS19)。加算角αが当該値(Δθ−A)以上であれば(ステップS18:NO)、加算角αの補正は行われない。
また、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに等しいとき(ステップS11AおよびステップS16Aの判断がいずれも否定)、加算角αの補正は行われない。
負荷角θとモータトルク(アシストトルク)とに負の相関がある場合には、負荷角θが大きくなればモータトルクが小さくなり、負荷角θが小さくなればモータトルクが大きくなる。
一方、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が過剰な状態である。したがって、モータトルクを減少させるために、負荷角θを増加させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以上であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8BのステップS11A〜S13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以上に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθ未満であれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以上の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも大きい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ大きな値)に補正してもよい。
同様に考察すると、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合とは、モータトルク(アシストトルク)が不足している状態である。したがって、モータトルクを増加させるために、負荷角θを減少させればよい。つまり、加算角αがロータ角変位Δθ以下であれば、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができる。そこで、この実施形態では、図8BのステップS16A,S17およびS13の処理によって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きい場合に、加算角αをロータ角変位Δθ以下に制限する加算角ガード処理が行われる。換言すれば、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいにも拘わらず、加算角αがロータ角変位Δθを超えていれば、制御の目的に合致せず、矛盾が生じている。そこで、このような場合には、加算角αをロータ角変位Δθ以下の値(この実施形態ではロータ角変位Δθに等しい値)に補正することとしている。むろん、加算角αをロータ角変位Δθよりも小さい値(たとえば所定値(変化制限値Aよりも小さな値)だけ小さな値)に補正してもよい。
さらに図8Bの処理では、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さい場合(ステップS11A:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθに変化制限値Aを加算した値よりも大きいときは(ステップS12:NO。ステップS14:YES)、加算角αをΔθ+Aに補正することとしている(ステップS15)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に大きいと、加算角αを適値に収束させるのに時間がかかるからである。また、検出トルクTが指示トルクTよりも大きい場合において、(ステップS16A:YES)において、加算角αがロータ角変位Δθから変化制限値Aを減算した値よりも小さいときは(ステップS17:NO。ステップS18:YES)、加算角αをΔθ−Aに補正することとしている(ステップS19)。これは、演算周期当たりのロータ角変位Δθよりも加算角αが過度に小さいと、加算角を適値に収束させるのに時間がかかる。このような補正を行うことにより、加算角αが適値に収束しやすくなるから、制御の安定化を図ることができ、制御異常が生じたときでも正常状態への復帰を効果的に促すことができる。
このような処理が行われることによって、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも小さいときには、Δθ+A≧α≧Δθの範囲に加算角αが制限され、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTよりも大きいときには、Δθ≧α≧Δθ−Aの範囲に加算角αが制限される。こうして、加算角αは、ロータ角変位Δθに応じた妥当な値をとることができる。
図9Aは、補正制御部38等の働きを説明するためのフローチャートである。補正制御部38は、誘起電圧二乗和演算部37によって演算される誘起電圧二乗和Σ(=E^α +E^β )を取得し(ステップS21)、この誘起電圧二乗和Σを補正実施閾値Cth1(たとえば、Cth1=30)と比較する(ステップS22)。
誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上のときは(ステップS22:YES)、補正実施フラグを「オン」とし(ステップS23)、制限値ωmaxを第1制限値ωmax1(たとえば、ωmax1=35度)に設定する(ステップS24)。この制限値ωmax(=ωmax1)を用いて、加算角リミッタ24による制限処理(図7参照)が実行される(ステップS25)。さらに、補正実施フラグが「オン」であるので(ステップS26:YES)、加算角ガード41による加算角ガード処理(図8Aおよび図8B参照)が実行される(ステップS27)。
一方、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1未満のときは(ステップS22:NO)、補正制御部38は、さらに、誘起電圧二乗和Σを補正非実施閾値Cth2(<Cth1。たとえば、Cth2=15)と比較する(ステップS28)。誘起電圧二乗和Σが補正非実施閾値Cth2以下のときは、補正実施フラグを「オフ」とし(ステップS29)、制限値ωmaxを第2制限値ωmax2(<ωmax1。たとえば、ωmax2=17度)に設定する(ステップS30)。この制限値ωmax(=ωmax2)を用いて、加算角リミッタ24による制限処理(図7参照)が実行される(ステップS25)。この場合、補正実施フラグが「オフ」であるので(ステップS26:NO)、加算角ガード41による加算角ガード処理が省略される。
誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1よりも小さく、かつ、補正非実施閾値Cth2よりも大きいときには(ステップS28:NO)、補正実施フラグはそのときの値(オンまたはオフ)に保持され、制限値ωmaxもそのときの値に保持される。したがって、その制限値ωmaxに応じた加算角リミッタ処理(ステップS25)が実行され、補正実施フラグの値に応じて、加算角ガード処理(ステップS27)の実施/非実施が判断される(ステップS26)。
このように、この実施形態では、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上になると補正実施フラグがオンされ、制限値ωmaxが比較的大きな第1制限値ωmax1に設定される。一方、誘起電圧二乗和Σが補正非実施閾値Cth2以下になると補正実施フラグがオフされ、制限値ωmaxが比較的小さな第2制限値ωmax2に設定される。誘起電圧二乗和Σが比較的大きく、したがって、ロータ角速度が比較的高速であるときは、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が高い。そこで、制限値ωmaxを大きくすることにより大きな加算角αを許容する一方で、加算角ガード41によるガード処理によってロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)に基づいて加算角αが補正される。また、誘起電圧二乗和Σが比較的小さく、したがって、ロータ角速度が低速であるときは、ロータ角変位Δθの信頼性が低い。そこで、制限値ωmaxを小さくすることにより加算角αを制限する一方で、加算角ガード41による加算角ガード処理が無効化される。
加算角αに対する制限値ωmaxが大きく設定されると、制御周期間における制御角θの変化量が大きくなるから、制御角θがトルク偏差ΔTに対応する適値に収束しにくくなり、制御破綻が生じやすくなる。そこで、この場合には、加算角ガード41による加算角ガード処理が介入することによって、ロータ角変位Δθに対応した妥当な範囲に加算角αが抑制される。これにより、制御破綻を抑制できる。加算角αに対する制限値ωmaxが小さく設定される低速回転時には、制御角θの変化量が小さくなるので、トルク偏差ΔTに対応する適値へと制御角θを導くことが容易であるため、制御破綻が生じにくい。このように、この実施形態によれば、制御破綻を抑制または防止することができるので、優れた操舵フィーリングを実現することができる。
また、補正実施フラグのオン/オフおよび制限値ωmaxの切り換え判定のための閾値Cth1,Cth2を二種類用いて、切り換えに対してヒステリシスを付与しているから、制御態様が頻繁に切り換わることがない。これにより、制御の安定化を図ることができるので、一層良好な操舵フィーリングを実現することができる。
図9Bは、補正制御部38等の働きの他の例を説明するためのフローチャートである。図9Bにおいて、図9Aに示された各ステップと同様の処理が行われるステップには、図9A中と同一参照符号を付して示す。
図9Bに示す処理では、ステップS22Aの処理が図9AのステップS22の処理と異なっている。ステップS21では、補正制御部38は、誘起電圧二乗和演算部37によって演算される誘起電圧二乗和Σ(=E^α +E^β )を取得する。ステップS22Aでは、補正制御部38は、ステップS21で取得された誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1(たとえば、Cth1=30)以上の状態が所定時間Ta以上継続しているか否かを判別する。
前述したように、回転角推定部29は、誘起電圧推定部28によって推定された誘起電圧に基づいて、ロータ50の回転角の推定値(推定回転角)θを演算する。ロータ角変位演算部30は、演算周期間の推定回転角θの変化量を求めることによって、演算周期当たりのロータ50の角変位Δθ(ロータ角速度に相当する値)を求める。前記所定時間Taは、ロータ50の角変位Δθ(ロータ角速度相当値)を演算するために用いられる2つの推定回転角θの演算間隔(この実施形態では、推定回転角θの演算周期)以上の時間に設定される。この実施形態では、前記所定時間Taは、推定回転角θの演算周期に相当する時間に設定される。
ステップS22Aにおいて、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上の状態が所定時間Ta以上継続していると判別された場合には(ステップS22A:YES)、ステップS23に移行する。一方、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上の状態が所定時間Ta以上継続していないと判別された場合には(ステップS22A:NO)、ステップS28に移行する。
つまり、図9Bの処理においては、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上の状態が所定時間Ta以上継続しているときに、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が高いと判定される。そこで、制限値ωmaxを大きくすることにより大きな加算角αを許容する一方で、加算角ガード41によるガード処理によってロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)に基づいて加算角αが補正される。
一方、誘起電圧二乗和Σが補正実施閾値Cth1以上の状態が所定時間Ta以上継続していないときに、ロータ角変位Δθの信頼性が低いと判定される。そこで、制限値ωmaxを小さくすることにより加算角αを制限する一方で、加算角ガード41による加算角ガード処理が無効化される。
図10は、誘起電圧推定部28の構成を説明するためのブロック図である。誘起電圧推定部28は、二相検出電流Iαβと二相指示電圧Vαβ とに基づいて、モータ3の誘起電圧を推定する。より具体的には、誘起電圧推定部28は、モータ3の数学モデルであるモータモデルに基づき、モータ3の誘起電圧を外乱として推定する外乱オブザーバとしての形態を有している。モータモデルは、たとえば、(R+pL)−1と表すことができる。ただし、Rは電機子巻線抵抗、Lはαβ軸インダクタンス、pは微分演算子である。モータ3には、二相指示電圧Vαβ と誘起電圧Eαβ(α軸誘起電圧Eαおよびβ軸誘起電圧Eβ)とが印加されると考えることができる。
誘起電圧推定部28は、二相検出電流Iαβを入力としてモータ電圧を推定する逆モータモデル(モータモデルの逆モデル)65と、この逆モータモデル65によって推定されるモータ電圧と二相指示電圧Vαβ との偏差を求める電圧偏差演算部66とで構成することができる。電圧偏差演算部66は、二相指示電圧Vαβ に対する外乱を求めることになるが、図10から明らかなとおり、この外乱は誘起電圧Eαβに相当する推定値E^αβ(α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^β(以下、まとめて「推定誘起電圧E^αβ」という。)になる。逆モータモデル65は、たとえば、R+pLで表される。
誘起電圧Eαβは、次式(6)で表すことができる。ただし、Kは誘起電圧定数、θはロータ角、ωはロータ角速度である。
Figure 2011120445
したがって、推定誘起電圧E^αβが求まれば、次式(7)に従って、推定回転角θが求まる。この演算が、回転角推定部29によって行われる。
Figure 2011120445
また、誘起電圧二乗和演算部37は、推定誘起電圧に基づき、次式(8)の演算を行うことにより、誘起電圧二乗和Σを求める。
Σ=E^α +E^β ……(8)
図11Aは、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインの特性例を示す図である。ゲイン生成部39は、0以上1以下の加算角ゲインGαを生成する。図11Aの例では、誘起電圧二乗和Σの増加に応じて単調に増加する特性に従って加算角ゲインGαが設定される。より具体的には、誘起電圧二乗和Σが0から所定値までの低値域では、加算角ゲインGαは1未満の比較的小さな一定値とされる。さらに、誘起電圧二乗和Σが前記所定値以上の範囲では、加算角ゲインGαは、前記一定値から1まで単調(図11Aの例ではリニア)に増加する特性に従って設定される。
このようにして設定された加算角ゲインGαは、ゲイン乗算部43において、加算角α(加算角リミッタ処理および加算角ガード処理後の加算角)に乗算される。これにより、誘起電圧二乗和Σが小さく、したがって、ロータ角速度が小さいときほど、加算角αの絶対値が抑制される。その結果、ステアリングホイール10を切り始めたときに、モータ3の発生トルク(アシストトルク)を抑制できるから、良好な手応え感を運転者に与えることができる。
図11Bは、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαの他の特性例を示す図である。図11Bの例では、誘起電圧二乗和Σの増加に応じて単調に減少する特性に従って加算角ゲインGαが設定される。より具体的には、誘起電圧二乗和Σが0から所定値までの低値域では、加算角ゲインGαは1とされる。さらに、誘起電圧二乗和Σが前記所定値以上の範囲では、加算角ゲインGαは、1から単調(図11Bの例ではリニア)に減少する特性に従って設定される。
このようにして設定された加算角ゲインGαは、ゲイン乗算部43において、加算角α(加算角リミッタ処理および加算角ガード処理後の加算角)に乗算される。これにより、誘起電圧二乗和Σが大きく、したがって、ロータ角速度が大きいときほど、加算角αの絶対値が抑制される。これにより、ロータ角速度が速いときほどモータトルク(アシストトルク)を抑制できるから、モータ3の慣性回転等を抑制するためのダンピング制御を行うことができる。これにより、ふらつき感を抑制できるので、優れた操舵フィーリングを実現できる。
図12は、故障時トルク設定部21Aの機能を説明するためのフローチャートである。故障時トルク設定部21Aは、誘起電圧二乗和演算部37から誘起電圧二乗和Σを取得し(ステップS31)、この誘起電圧二乗和Σを所定の閾値Dth(たとえば、Dth=30)と比較する(ステップS32)。誘起電圧二乗和Σが閾値Dthよりも大きく(ステップS32:NO)、したがって、ロータ角変位演算部30によって演算されるロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の精度が充分に高いときには、故障時トルク設定部21Aは、ロータ角変位Δθの符号に基づいて、操舵方向を判定する(ステップS33)。
一方、誘起電圧二乗和Σが閾値Dth以下であり(ステップS32:YES)、したがって、ロータ角変位の精度が低いときには、ロータ角変位Δθに基づいて操舵方向を適切に判定することができない。そこで、故障時トルク設定部21Aは、一定周期(たとえば、0.1秒)毎に、一定時間(たとえば0.05秒)だけ指示電流値Iγδ をオフする(零にする)制御(オン/オフ制御)を実行する(ステップS34)。その一方で、故障時トルク設定部21Aは、指示電流値Iγδ をオフしたとき(零としたとき)の操舵トルクTを取得し、その取得した操舵トルクTの符号に基づいて、操舵方向を判定する(ステップS35)。
こうして、ロータ角変位Δθまたは操舵トルクTに基づいて操舵方向が判断されると(ステップS33,S35)、故障時トルク設定部21Aは、所定の目標絶対値T(たとえば2Nm)に正符号「+」または負符号「−」を付して指示操舵トルクTを生成する(ステップS36)。すなわち、ロータ角変位Δθに基づいて指示操舵トルクTを生成するときには、ロータ角変位Δθと同符号を目標絶対値Tに付して指示操舵トルクT(=+Tまたは−T)が生成される。同様に、操舵トルクTに基づいて指示操舵トルクTを生成するときには、検出された操舵トルクTと同符号を目標絶対値Tに付して指示操舵トルクT(=+Tまたは−T)が生成される。故障検知部42が舵角センサ4の故障を検知したときには、このようにして生成される指示操舵トルクTがトルク偏差演算部22に与えられる。
なお、ステップS34におけるオン/オフ制御に代えて、指示電流値Iγδ に1未満のゲイン(たとえば、0.5)を乗じてモータトルクを周期的に低減させる処理を行ってもよい。また、指示電流値Iγδ を漸次的に減少させてもよい。いずれの場合でも、モータトルク(アシストトルク)が一時的に低減されるので、トルクセンサ1によって検出される操舵トルクTは、運転者がステアリングホイール10に加えている操舵トルクの方向を明確に表すことになる。したがって、モータトルクを一時的に低減したときの操舵トルクTを用いることによって、操舵方向に応じて、適切な指示操舵トルクTを生成することができる。むろん、指示電流値Iγδ を低減する以外にも、たとえば、指示電圧値Vαβ を一時的に低減することによって、モータトルク(アシストトルク)を低減させてもよい。
図13は、制御破綻監視部25、保舵判定部27および加算角補正部44の働きを説明するためのフローチャートである。制御破綻監視部25は、たとえば、操舵トルク絶対値|T|が第1トルク閾値Eth1(たとえば、Eth1=7Nm)を超えており、かつ、誘起電圧二乗和Σが所定の閾値Fth(たとえば、Fth=15)以下の状態が一定時間(たとえば0.03秒)以上継続すると、制御破綻が生じていると判断する(ステップS41)。操舵トルク絶対値|T|が第1トルク閾値Eth1を超えた状態が継続する場合とは、モータトルク(アシストトルク)の不足状態が継続している場合である。たとえば、電流値が不足していて、制御角θを適切なアシストトルクを発生する値へと収束させることができない場合が相当する。ただし、このような場合でも、誘起電圧二乗和Σが充分に大きく、したがって、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が充分であれば、加算角ガード41による加算角ガード処理によって、加算角αを適切な範囲に保つことができる。そこで、制御破綻監視部25は、操舵トルク絶対値|T|に関する条件と、誘起電圧二乗和Σに関する条件との両方を判断することにより、制御破綻が生じているかどうかを判断する。
ステップS41の条件が充足されると、制御破綻監視部25は、破綻検出フラグをオン状態に設定する(ステップS42)。一方、制御破綻監視部25は、ステップS41の条件が充足されない場合において、破綻検出フラグがオン状態のときには、操舵トルク絶対値|T|が第2トルク閾値Eth2(<Eth1。たとえば、Eth2=6Nm)未満であることを条件に(ステップS43:YES)、破綻検出フラグをオフ状態とする(ステップS44)。
加算角補正部44は、破綻検出フラグがオフのときは(ステップS45:NO)、以下の処理を行わず、ゲイン乗算部43からの加算角αをそのまま制御角演算部26に与える。破綻検出フラグがオンのときは(ステップS45:YES)、加算角補正部44は、保舵判定部27の判定結果を取得し、保舵状態か否かを判断する(ステップS46)。保舵状態のときには(ステップS46:NO)、加算角補正部44は、加算角αを0に補正する(ステップS47)。これにより、制御角θが変化しなくなるから、モータ3は、ロータ回転を抑制するトルクを発生する。これにより、制御破綻状態であっても、運転者による保舵を補助でき、運転者の操舵負担を軽減できる。また、制御角θが変化しないようにモータ3からトルクが発生されるので、不快な振動の発生を抑制できる。もしも、保舵時に有意な(零以外の)加算角αが設定されると、モータ3は、保舵をアシストするトルクを発生する状態と、保舵のためのトルクとは逆方向へのトルクを発生する状態とを繰り返し、これにより、振動が生じるおそれがある。保舵時に加算角αを零にすることにより、このような振動を抑制または防止できる。
保舵状態でないときには(ステップS46:YES)、加算角補正部44は、操舵トルクTの正負を判定する(ステップS48)。操舵トルクTが零または正の値であるとき(ステップS48:YES)、加算角補正部44は、所定の基本値B(>0。たとえばB=5度)に正符号を付して(すなわち、基本値Bをそのまま用いて)、加算角目標値α(=+B)を設定する(ステップS49)。操舵トルクTが負の値であるとき(ステップS47:NO)、加算角補正部44は、前記基本値Bに負符号を付して、加算角目標値α(=−B)を設定する(ステップS50)。そして、加算角補正部44は、現在の加算角αが加算角目標値αに漸次的に近づくように、加算角αを漸増または漸減させる(ステップS51)。こうして、制御破綻のときにも、操舵トルクTの方向に応じて加算角αを設定できるので、妥当な操舵補助を継続することができる。
なお、加算角目標値αを設定するときに用いる基本値Bは、一定値である必要はなく、たとえば、誘起電圧二乗和Σの値に応じて可変設定される変数であってもよい。たとえば、誘起電圧二乗和Σに対する基本値Bのマップを作成しておき、このマップに従って基本値を可変設定してもよい。この処理は、図13のステップS45〜S51の処理の代わりに用いることができる。基本値Bは、たとえば、誘起電圧二乗和Σが大きいほど大きくなる特性に従って可変設定されてもよい。
図14は、保舵判定部27による保舵判定処理の具体例を説明するためのフローチャートである。保舵判定部27は、保舵状態であると判定すると保舵判定フラグをオン状態とし、保舵状態でないと判定すると保舵判定フラグをオフ状態とする。加算角補正部44は、保舵判定フラグのオン/オフに基づいて、保舵状態かどうかを判断することになる。
保舵判定部27は、保舵判定フラグがオフ状態で、かつ、誘起電圧二乗和Σが閾値Gth(>0。たとえばGth=10)よりも小さいかどうかを判断する(ステップS61)。この判断が肯定されると、保舵判定部27は、カウンタC1が閾値Hthよりも大きいかどうかを判断する(ステップS62)。カウンタC1は、ステップS61の条件が成立する継続時間を計測するためのカウンタである。閾値Hthは、たとえば、時間に換算して0.1秒程度に相当する値とされてもよい。カウンタC1の値が閾値Hth以下のときは(ステップS62:NO)、保舵判定部27は、カウンタC1をインクリメントする(ステップS63)。カウンタC1の値が閾値Hthを超えると(ステップS62:YES)、保舵判定部27は、保舵判定フラグをオン状態とする(ステップS64)。このようにして、誘起電圧二乗和Σが小さく、したがって、ロータ角速度が小さい状態が継続したときに、保舵状態であると判定され、保舵判定フラグがオン状態とされる。
次に、保舵判定部27は、カウンタC2をクリアする(ステップS65)。カウンタC2は、次に説明する保舵判定フラグオフ条件(ステップS66)の継続時間を計測するためのカウンタである。
ステップS61において、保舵判定フラグがオン状態であるか、または誘起電圧二乗和Σが閾値Gth以上であると判断されると、ステップS62〜S65の処理が省かれる。
保舵判定部27は、さらに、保舵判定フラグオフ条件の成否を判断する(ステップS66)。具体的には、操舵トルク絶対値|T|が閾値Jth(たとえば、Jth=7Nm)よりも大きく、かつ、保舵判定フラグがオン状態であるかどうかが判断される。この判断が肯定されると(ステップS66:YES)、保舵判定部27は、カウンタC2が閾値Kthよりも大きいかどうかを判断する(ステップS67)。閾値Kthは、たとえば、時間に換算して0.03秒程度に相当する値とされてもよい。カウンタC2の値が閾値Kth以下のときは(ステップS67:NO)、保舵判定部27は、カウンタC2をインクリメントする(ステップS68)。カウンタC2の値が閾値Kthを超えると(ステップS67:YES)、保舵判定部27は、保舵判定フラグをオフ状態とする(ステップS69)。このようにして、保舵判定フラグがオンされているときに、操舵トルク絶対値|T|が大きい状態が継続したときには、運転者の操舵意思があり、したがって、保舵状態でないと判定され、保舵判定フラグがオフされる。この後、カウンタC1がクリアされる(ステップS70)。
[第2の実施形態]
図15は、この発明の第2の実施形態に係るモータ制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の構成を示すブロック図である。この図15において、前述の図1に示された各部の対応部分には同一参照符号を付して示し、以下では、第1の実施形態との相違点を主として説明する。この第2の実施形態では、マイクロコンピュータ11は、機能処理部として、ダンピング制御部60と、ダンピングトルク生成部61と、トルク指示値加算部62と、ゲイン乗算部63と、ゲイン補正部64とを有している。
ダンピングトルク生成部61は、ダンピング制御のためのダンピングトルク指示値を生成する。このダンピングトルク指示値は、ゲイン乗算部63においてゲインを乗じられた後に、トルク指示値加算部62に与えられる。トルク指示値加算部62は、指示操舵トルク設定部21が設定する指示操舵トルクに、前記ゲイン乗算後のダンピングトルク指示値を加算する。この加算結果が、ダンピング制御のための補正がされた指示操舵トルクTとして、トルク偏差演算部22に供給される。
ダンピング制御部60は、ゲイン乗算部63に対して漸増・漸減ゲインξ(0≦ξ≦1)を設定し、ゲイン補正部64に対して、当該漸増・漸減ゲインξを与える。ゲイン乗算部63は、ダンピングトルク指示値に対して漸増・漸減ゲインξを乗じる。ゲイン補正部64は、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαに対して、漸増・漸減ゲインξに応じた補正を加える。具体的には、たとえば、補正後の加算角ゲインGα′は、Gα′=ξ+Gα(1−ξ)で表される。この補正後の加算角ゲインGα′が、ゲイン乗算部43において加算角αに乗じられる。ダンピング制御部60は、誘起電圧二乗和Σに基づいて、ダンピング制御の態様を二種類に切り換える。第1の態様は、ダンピングトルク生成部61が生成するダンピングトルク指示値に基づくダンピング制御を行う態様である。第2の態様は、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαを用いてダンピング制御を行う態様である。ダンピング制御部60は、漸増・漸減ゲインξを漸次的に変更することにより、前記第1および第2の態様の間で、ダンピング制御の態様を漸次的に切り換える。
図16Aは、ダンピングトルク生成部61が生成するダンピングトルク指示値の設定例を説明するための特性図である。ダンピングトルク生成部61は、たとえば、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)に対するダンピングトルク指示値を設定したマップの形態を有していてもよい。図16Aの例では、ロータ角変位Δθが零のときにダンピングトルク指示値は零とされ、ロータ角変位Δθの正の領域ではダンピングトルク指示値は正の値とされ、ロータ角変位Δθの負の領域ではダンピングトルク指示値は負の値とされている。また、ロータ角変位Δθの絶対値が大きくなるに従って、ダンピングトルク指示値の絶対値が単調に大きくなっている。これにより、ステアリングホイール10の操作速度が速いときほどダンピングトルク指示値の絶対値が大きくなる。このようなダンピングトルク指示値が、指示操舵トルク設定部21が設定する指示操舵トルクに加算されるので、ロータ角変位Δθの絶対値が大きいほど、指示操舵トルクTの絶対値が大きくなる。これにより、モータトルク(アシストトルク)が低減され、ダンピング制御が実現される。
図16Bは、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαの特性例を示す図である。図16Bの例では、誘起電圧二乗和Σの増加に応じて単調に減少する特性に従って加算角ゲインGαが設定されている。より具体的には、誘起電圧二乗和Σが0から所定値までの低値域では、加算角ゲインは1とされる。さらに、誘起電圧二乗和Σが前記所定値以上の範囲では、加算角ゲインは、1から単調(図16Bの例ではリニア)に減少する特性に従って設定される。
このようにして設定された加算角ゲインGαが加算角α(加算角リミッタ処理および加算角ガード処理後の加算角)に乗算される。これにより、誘起電圧二乗和Σが大きく、したがって、ロータ角速度が大きいときほど、加算角αの絶対値が抑制される。これにより、ロータ角速度が速いときほどモータトルクを抑制できるから、モータ3の慣性回転等を抑制するためのダンピング制御を行うことができる。これにより、ふらつき感を抑制できるから、優れた操舵フィーリングを実現できる。
図17は、ダンピング制御部60の働きを説明するためのフローチャートである。ダンピング制御部60は、誘起電圧二乗和演算部37が演算した誘起電圧二乗和Σを取得し(ステップS81)、閾値Lth(>0。たとえばLth=30)と比較する(ステップS82)。
誘起電圧二乗和Σが閾値Lth以上であり(ステップS82:YES)、したがって、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が充分であるときは、ダンピング制御部60は、ダンピングトルク生成部61を用いたダンピング制御(前記第1の態様)を有効化し、ゲイン生成部39によるダンピング制御(前記第2の態様)を無効化する。具体的には、ダンピングトルク生成部61はロータ角変位Δθに応じたダンピングトルク指示値を生成し(ステップS83)、ダンピング制御部60は漸増・漸減ゲインξの目標値を1とする(ステップS84)。漸増・漸減ゲインξは、ゲイン乗算部63においてダンピングトルク指示値に乗じられる。ゲイン補正部64による補正後の加算角ゲインGα′は、前述のとおり、Gα′=ξ+Gα(1−ξ)である。ξ=1のとき、ダンピングトルク生成部61が生成するダンピングトルク指示値が完全に有効となり、また、Gα′=ξ=1となるので、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαが完全に無効となる。
一方、誘起電圧二乗和Σが閾値Lth未満であり(ステップS82:NO)、したがって、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が不充分であるときは、ダンピング制御部60は、ダンピングトルク生成部61を用いたダンピング制御(前記第1の態様)を無効化し、ゲイン生成部39によるダンピング制御(前記第2の態様)を有効化する。具体的には、ゲイン生成部39は誘起電圧二乗和Σに応じた加算角ゲインGαを生成し(ステップS85)、ダンピング制御部60は、漸増・漸減ゲインξの目標値を0とする(ステップS86)。ξ=0のとき、ダンピングトルク生成部61が生成するダンピングトルク指示値は完全に無効となる。また、ゲイン補正部64による補正後の加算角ゲインGα′=ξ+Gα(1−ξ)=Gαとなるから、ゲイン生成部39が生成する加算角ゲインGαが完全に有効となる。
こうして漸増・漸減ゲインξの目標値が設定されると(ステップS84,S86)、ダンピング制御部60は、漸増・漸減ゲインξに対してローパスフィルタ(LPF)処理を実行する(ステップS87)。ローパスフィルタ処理とは、漸増・漸減ゲインξを、その目標値に向けて、或る時定数で漸次的に変化(漸増または漸減)させる処理である。これにより、最終的な漸増・漸減ゲインξが、0と1との間で定められる。この漸増・漸減ゲインξがゲイン乗算部63およびゲイン補正部64に与えられ、この漸増・漸減ゲインξを用いて、ダンピングトルク指示値および加算角ゲインGαに対して補正が加えられる(ステップS88)。
図18は、漸増・漸減ゲイン、補正後のダンピングトルク指示値、および補正後の加算角ゲインGα′の時間変化の例を示す図である。時刻t1において、誘起電圧二乗和Σが閾値Lth以下の状態から閾値Lthよりも大きな状態に切り換わると、漸増・漸減ゲインξは、0から漸増して1まで増加する。そして、時刻t2において、誘起電圧二乗和Σが閾値Lthよりも大きな状態から閾値Lth以下の状態に切り換わると、漸増・漸減ゲインξは、1から漸減して0まで減少する。これに応じて、漸増・漸減ゲインξが乗じられたダンピングトルク指示値は、時刻t1からの期間に、0からダンピングトルク生成部61が生成した値まで漸増し、時刻t2からの期間に、ダンピングトルク生成部61が生成した値から0まで漸減する。さらに、補正後の加算角ゲインGα′は、時刻t1からの期間に、1から補正前の加算角ゲインGαまで漸減する。また、補正後の加算角ゲインGα′は、時刻t2からの期間に、補正前の加算角ゲインGαから1まで漸増する。
このように、この実施形態によれば、誘起電圧二乗和Σが大きく、したがって、ロータ角変位Δθ(ロータ角速度相当値)の信頼性が高いときには、ロータ角変位Δθに基づいて定められるダンピングトルク指示値を用いてダンピング制御が行われる。その一方で、誘起電圧二乗和Σが小さく、したがって、ロータ角変位Δθの信頼性が低いときには、誘起電圧二乗和Σに基づいて定められる加算角ゲインGαを用いてダンピング制御が実行される。これにより、ロータ角速度に応じて適切なダンピング制御を行うことができる。
しかも、漸増・漸減ゲインξを漸次的に変化させることによって、ダンピングトルク指示値を用いたダンピング制御と、加算角ゲインGαを用いたダンピング制御との切り換わりを漸次的に生じさせることができる。これにより、モータトルク(アシストトルク)の急変を抑制することができるから、ダンピング制御の態様の変化に伴う違和感を緩和できる。
なお、図15では図示を省略したが、この第2の実施形態においても、第1の実施形態の場合と同様に、故障検知部42および故障時トルク設定部21Aが備えられていてもよい。
[第3の実施形態]
図19は、この発明の第3の実施形態に係るモータ制御装置が適用された車両用操舵装置の構成を説明するためのブロック図である。この図19において、前述の図1に示された各部に対応する部分には、同一参照符号を付して示し、以下では、第1の実施形態との相違点を主として説明する。
この実施形態では、マイクロコンピュータ11の機能処理部として、加算角αに乗じる加算角ゲインGαを生成する加算角ゲイン生成部70と、PI制御部23における積分項の値を変更する積分項設定部71とが備えられている。ただし、これらは、いずれか一方が設けられればよい。
加算角ゲイン生成部70は、誘起電圧二乗和Σに応じて可変設定されるインターバル時間で所定の実行時間(たとえば0.005秒)に渡って一定の加算角ゲインGα(0<Gα<1。たとえば、Gα=0.9)をゲイン乗算部43に与える。また、積分項設定部71は、前記実行時間中に、PI制御部23における積分項の前回値を変更する。より具体的には、積分項前回値に対して前記加算角ゲインGαを乗じた値を新たな積分項前回値として設定する。インターバル時間は、たとえば、0.001秒〜1秒の範囲で設定されることが好ましい。ただし、乗算部43における加算角ゲインGαの乗算と、積分項設定部71における積分項前回値の変更とは、いずれか一方が行われればよい。
図20は、加算角ゲイン生成部70および積分項設定部71等の動作を説明するためのフローチャートである。加算角ゲイン生成部70は、誘起電圧二乗和演算部37によって演算される誘起電圧二乗和Σに応じたインターバル時間を設定する(ステップS91)。そして、加算角ゲイン生成部70は、時間経過を計測するカウンタの値が前記実行時間以下かどうかを判断する(ステップS92)。カウンタの値が実行時間以下であれば(ステップS92:YES)、加算角ゲイン生成部70は、1よりも小さい一定の加算角ゲインGαを生成する。この加算角ゲインGαがゲイン乗算部43において加算角αに乗じられる(ステップS93)。加算角ゲインGαを加算角αに乗じる代わりに、積分項設定部71において、積分項前回値として、前制御周期の演算において求められた積分項に加算角ゲインGαを乗じた値を代入してもよい(ステップS94)。この後、前記カウンタがインクリメントされて(ステップS95)、今周期の処理を終える。
一方、カウンタの計測値が前記実行時間を超えているときには(ステップS92:NO)、加算角ゲイン生成部70は、さらに、カウンタの計測値が前記インターバル時間および前記実行時間の和以下かどうかを判断する(ステップS96)。この判断が肯定されると(ステップS96:YES)、カウンタをインクリメントして(ステップS95)、今周期の処理を終える。カウンタの計測値が前記インターバル時間および前記実行時間の和を超えると(ステップS96:NO)、カウンタを0にリセットし(ステップS97)、今周期の処理を終える。
図21は、具体的な動作例を説明するための図であり、制御角演算部26に供給される加算角αの時間変化の一例が示されている。「実行時間」に該当する期間中には、加算角αに対して1未満の加算ゲインGαが乗じられるか、または、PI制御部23における積分項に1未満の加算角ゲインGαが乗じられる。「実行時間」に該当しない期間は、「インターバル時間」に該当する期間である。この期間には、加算角ゲインGαによる加算角αまたは積分項の補正が行われないので、加算角αは、比較的大きな値に保持される。こうして、インターバル時間毎の間欠的な補正処理によって、加算角αが低減補正されることにより、モータトルク(アシストトルク)が低減補正されることになる。
図22は、誘起電圧二乗和Σに応じたインターバル時間の設定例を示す特性図である。この例では、誘起電圧二乗和Σの増加に伴って、インターバル時間が単調に増加する特性とされている。これにより、ステアリングホイール10の回転角速度が速いほどインターバル時間が長くなり、モータトルク(アシストトルク)が低減補正されることになる。これにより、いわゆるダンピング制御を実現して、ふらつき感を低減することができる。なお、誘起電圧二乗和Σが零のとき、インターバル時間を正の値としてもよいし、零としてもよい。
図22には、誘起電圧二乗和Σに応じてインターバル時間を連続的に変化させる例を示したが、たとえば、誘起電圧二乗和Σが所定の閾値以下のときに第1のインターバル時間を設定して加算角αを実質的に低減補正するようにしてもよい。この場合に、誘起電圧二乗和Σが前記閾値よりも大きいときは、前記第1のインターバル時間よりも長い第2のインターバル時間を設定するか、またはインターバル時間を設定しないようにしてもよい。これにより、誘起電圧二乗和Σが閾値よりも大きいときは、絶対値の大きな加算角αが制御角θの演算のために用いられることになる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、α軸誘起電圧推定値E^αおよびβ軸誘起電圧推定値E^βの二乗和Σを用いているが、たとえば、d軸誘起電圧推定値およびq軸誘起電圧推定値の二乗和を用いたり、γ軸誘起電圧推定値およびδ軸誘起電圧推定値の二乗和を用いたりしてもよい。また、誘起電圧二乗和をそのまま用いる代わりに、誘起電圧二乗和の平方根を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、誘起電圧の推定のために、検出電流および指示電圧を用いているが、検出電流の代わりに指示電流を用いてもよいし、指示電圧の代わりに検出電圧を用いてもよい。
また、前述の実施形態では、ロータ角変位Δθだけでなくトルク偏差ΔTにも基づいて加算角αを補正しているが、トルク偏差ΔTに基づく加算角αの補正は省いてもよい。具体的には、加算角ガード41は、ロータ角変位Δθを用いて、Δθ−A≦α≦Δθ+Aの範囲に加算角αを制限するものであってもよい。
また、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部31において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ を発生させるようにすればよい。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…トルクセンサ、3…モータ、5…モータ制御装置、11…マイクロコンピュータ、26…制御角演算部、43…ゲイン乗算部、44…加算角補正部、50…ロータ、51,52,53…ステータ巻線、55…ステータ、62…トルク指示値加算部、63…ゲイン乗算部、64…ゲイン補正部

Claims (10)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを指示値に基づいて制御するためのモータ制御装置であって、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    前記モータの誘起電圧を推定し、推定された誘起電圧の二乗値を演算する誘起電圧二乗値演算手段と、
    前記誘起電圧二乗値演算手段によって演算された誘起電圧二乗値に基づいて前記指示値を補正する補正手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が第1所定値以上になると前記指示値の補正を開始する、請求項1記載のモータ制御装置。
  3. 前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が第1所定値以上の状態が所定時間以上継続したときに前記指示値の補正を開始する、請求項1記載のモータ制御装置。
  4. 前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以下になると前記指示値の補正を停止する、請求項2または3記載のモータ制御装置。
  5. 前記加算角演算手段によって演算された加算角を所定の制限値で制限する加算角制限手段をさらに含み、
    前記補正手段は、前記加算角制限手段における前記制限値を変更する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記補正手段は、前記加算角演算手段によって演算された加算角に前記誘起電圧二乗値に応じたゲインを乗算することにより、実質的に前記指示値を補正する、請求項1記載のモータ制御装置。
  7. 前記加算角演算手段によって演算された加算角を所定の制限値で制限する加算角制限手段をさらに含み、
    前記補正手段は、
    前記加算角制限手段における前記制限値を変更する手段と、
    前記加算角制限手段によって制限された後の加算角に前記誘起電圧二乗値に応じたゲインを乗算することにより、実質的に前記指示値を補正する手段とを含む、請求項1記載のモータ制御装置。
  8. 前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が所定値以上のときは第1態様で前記指示値を補正し、前記誘起電圧が前記所定値未満のときは前記第1態様とは異なる第2態様で前記指示値を補正する、請求項1記載のモータ制御装置。
  9. 前記補正手段は、前記誘起電圧二乗値が所定値以下の場合に、前記指示値を低減補正する、請求項1記載のモータ制御装置。
  10. 車両の舵取り機構に駆動力を付与するモータと、
    前記モータを制御するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置。
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