JP5561515B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置に関する。ブラシレスモータは、たとえば、車両用操舵装置の駆動源として使用可能である。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。しかし、回転角センサが故障すると、モータ制御を継続できなくなる。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、誘起電圧を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開2007-267549号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置その他の車両用操舵装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサが故障したときには、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備え、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するためのモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、制御上の回転角である制御角(θ)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(30〜36B)と、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するためのトルク検出手段(1)と、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示トルク設定手段(21)と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとのトルク偏差に応じた加算角を演算する加算角演算手段(23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、を含む負荷角制御手段と、前記ロータの回転角を検出するための回転角センサ(8)と、前記回転角センサが故障したことを検出する故障検出手段(40)と、前記回転角センサの故障が検出されたときに、前記回転角センサの検出値に基づくモータ制御(第2モード)から、前記負荷角制御手段に基づくモータ制御(第1モード)に、制御モードを切換える切換手段(40,41,42)と、前記切換手段によって制御モードが切り換えられたときの制御角の初期値(θC0)を、当該切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角(θL0)と、前記回転角センサの故障検出直前の前記回転角センサの検出値(θMbefore)と、前記回転角センサの故障が発生してからその故障が前記故障検出手段によって検出されるまでの間のロータの回転量(Δθ)との和により求める切換初期値演算手段(29)とを含み、前記負荷角が、前記制御角と前記ロータの実際の回転角との差である、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、回転角センサの故障が検出されたときに、回転角センサの検出値に基づくモータ制御(第2モード)から、負荷角制御手段に基づくモータ制御(第1モード)に、制御モードが切り換えられる。つまり、回転角センサの故障が検出されていないときには、第2モードによるモータ制御が行なわれ、回転角センサの故障が検出されると第1モードによるモータ制御が行なわれる。
第1モードでモータが制御されるときには、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が適値に導かれることによって、適切なトルクが発生する。
一方、第2モードでモータが制御されるときには、回転角センサによって検出されるロータの回転角に基づいて、モータへの通電制御を行なうことによって、モータが駆動される。
この発明では、制御モードが第2モードから第1モードに切り換えられたときの制御角の初期値(θC0)が、「当該切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角(θL0)」と、「回転角センサの故障検出直前の回転角センサの検出値(θMbefore)」と、「回転角センサの故障が発生してからその故障が前記故障検出手段によって検出されるまでの間のロータの回転量(Δθ)」との和により求められる。
負荷角(θ)は、制御角(θ)とロータの回転角(θ)との差として定義される。モータは、負荷角(θ)に対応するトルクを発生する。「回転角センサの故障検出直前の回転角センサの検出値(θMbefore)」に、「回転角センサの故障が発生してからその故障が前記故障検出手段によって検出されるまでの間のロータの回転量(Δθ)」が加算されると、「切換時点におけるロータの回転角(θM0)」が得られる。また、「切換時点におけるロータの回転角(θM0)」に、「当該切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角(θL0)」が加算されると、負荷角(θ)を前記「当該切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角(θL0)」に設定するための制御角(θC0)が求められる。したがって、制御モードが第2モードから第1モードに切換られたときには、当該切換時点において必要なモータトルクを直ちに発生させることができるようになる。
「回転角センサの故障が発生してから故障検出手段によってその故障が検出されるまでの間のロータの回転量(Δθ)」は、たとえば、「故障検出直前のロータの回転角速度(ωbefore)」に「故障検出時間(Δt)」を乗算することによって求めてもよい。より具体的には、第2モード時において、回転角センサによって検出されたロータ回転角からロータの回転角速度を演算するようにするとよい。この場合、故障検出直前に演算されたロータの回転角速度を「故障検出直前のロータの回転角速度(ωbefore)」として用いることができる。「故障検出時間(Δt)」は、故障が発生してから、故障検出手段によって故障が検出されるまでに要する時間であり、既知の値である。
また、第1モードにおいては、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクが指示トルク設定手段によって設定される一方で、操作部材に加えられる操舵トルクがトルク検出手段によって検出される。そして、指示操舵トルクと検出操舵トルクとの偏差(トルク偏差)に応じて加算角が演算される。すなわち、第1モードにおいては、前記検出操舵トルクを前記指示操舵トルクに近づけるように前記加算角を演算するフィードバック制御手段が構成されている。これにより、制御角を適切に制御することができ、モータから指示操舵トルクに応じたモータトルクを発生させることができる。
請求項記載の発明は、前記切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角が、前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクと前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクとから演算されるモータトルクに応じた負荷角である、請求項に記載のモータ制御装置である。この構成によれば、「切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角θL0」を、次のようにして求めることができる。つまり、まず、当該切換時点において、トルク検出手段によって検出される操舵トルクと、指示トルク設定手段によって設定される操舵指示トルクとに基づいて、切換時点において必要なモータトルクを求める。そして、得られたモータトルクに応じた負荷角を求める。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、第1モート゛においては、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、第1モート゛においては、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 操舵トルクリミッタの働きを説明するための図である。 第1モードにおけるγ軸指示電流値の設定例を示す図である。 第2モードにおけるq軸指示電流値の設定例を示す図である。 加算角リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 第1モードおよび第2モードの切換えに伴う動作を説明するためのフローチャートである。 切換初期値設定部の働きを説明するための図である。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3内のロータの回転角を検出するレゾルバ8(回転角センサ)と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。レゾルバ8は、ロータ回転角(ロータ回転位置)に対応する正弦波信号および余弦波信号を生成するものである。
モータ制御装置5は、レゾルバ8の出力信号、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θに従う実回転座標系である。このロータ角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θが導入される。制御角θは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θがロータ角θに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θを用いて行うことができる。
制御角θとロータ角θとの差を負荷角θ(=θ−θ)と定義する。
制御角θに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iとの間に、次式(1)の関係が成立する。
=Iγ・sinθ …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流I,I,I(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、制御角演算部26と、回転角演算部27と、角速度演算部28と、切換初期値設定部29と、第1指示電流値生成部31と、第2指示電流生成部32と、電流偏差演算部30と、PI制御部33と、γδ/αβ変換部34Aと、αβ/UVW変換部34Bと、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/αβ変換部36Aと、αβ/γδ変換部36Bと、センサ故障判定部40と、指示電流値切換部41と、角度切換部42とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクTを設定する。たとえば、図4に示すように、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクTが設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクTの設定が行われる。また、指示操舵トルクTは、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の出力を所定の上限飽和値+Tmax(+Tmax>0。たとえば+Tmax=7Nm)と下限飽和値−Tmax(−Tmax<0。たとえば−Tmax=−7Nm)との間に制限する。具体的には、操舵トルクリミッタ20は、図5に示すように、上限飽和値+Tmaxと下限飽和値−Tmaxの間では、トルクセンサ1の検出操舵トルクTをそのまま出力する。また、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが上限飽和値+Tmax以上であれば、上限飽和値+Tmaxを出力する。そして、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが下限飽和値−Tmax以下であれば、下限飽和値−Tmaxを出力する。飽和値+Tmaxおよび−Tmaxは、トルクセンサ1の出力信号が安定な領域(信頼性のある領域)の境界を画定するものである。つまり、トルクセンサ1の出力信号は、上限飽和値Tmaxを超える区間、および下限飽和値−Tmaxを下回る区間では不安定であり、実際の操舵トルクに対応しなくなる。換言すれば、飽和値+Tmax,−Tmaxは、トルクセンサ1の出力特性に応じて定められる。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTとトルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた操舵トルクT(以下、区別するために「検出操舵トルクT」という。)との偏差(トルク偏差)ΔT(=T−T)を求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θに対する加算角αを演算する。したがって、前記トルクフィードバック制御手段は、加算角αを演算する加算角演算手段を構成している。
加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える加算角制限手段である。より具体的には、加算角リミッタ24は、所定の上限値UL(正の値)と下限値LL(負の値)との間の値に加算角αを制限する。上限値ULおよび下限値LLは、所定の制限値ωmax(ωmax>0。たとえばωmaxの既定値=45度)に基づいて定められる。この所定の制限値ωmaxの既定値は、たとえば、最大操舵角速度に基づいて定められる。最大操舵角速度とは、ステアリングホイール10の操舵角速度として想定され得る最大値であり、たとえば、800deg/sec程度である。
最大操舵角速度のときのロータ50の電気角の変化速度(電気角での角速度。最大ロータ角速度)は、次式(2)のとおり、最大操舵角速度と、減速機構7の減速比と、ロータ50の極対数との積で与えられる。極対数とは、ロータ50が有する磁極対(N極とS極との対)の個数である。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
ロータ角変化量最大値=最大ロータ角速度×演算周期
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxの既定値とすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
UL=+ωmax …(4)
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θの前回値θ(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。
制御角演算部26は、制御角θの前回値θ(n-1)に加算角リミッタ24から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θを演算する。そして、前演算周期における制御角θを前回値θ(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θである今回値θ(n)を求める。
回転角演算部27は、レゾルバ8の出力信号に基づいてロータ50の回転角θを演算する。角速度演算部28は、ロータ回転角θを時間微分することによって、ロータ50の回転角速度ωを求める。
角度切換部42は、制御角演算部26によって求められた制御角θと、回転角演算部27によって求められたロータ回転角θとのうちのいずれか一方を選択し、座標変換用の変換角θとして出力するものである。
第1指示電流値生成部31は、制御上の回転角である前記制御角θに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ およびδ軸指示電流値Iδ (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ 」という。)を生成する。第1指示電流値生成部31は、γ軸指示電流値Iγ を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ を零とする。より具体的には、第1指示電流値生成部31は、トルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ の設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
第2指示電流値生成部32は、dq座標系の座標軸に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、d軸指示電流値I およびq軸指示電流値I (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Idq 」という。)を生成する。さらに具体的には、第2指示電流値生成部32は、q軸指示電流値I を有意値とする一方で、d軸指示電流値I を零とする。より具体的には、第2指示電流値生成部32は、トルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた検出操舵トルクTに基づいてq軸指示電流値I を設定する。
検出操舵トルクTに対するq軸指示電流値I の設定例は、図7に示されている。検出操舵トルクTは、たとえば右方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、左方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、q軸指示電流値I は、モータ3から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、モータ3から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。q軸指示電流値I は、検出操舵トルクTの正の値に対しては正をとり、検出操舵トルクTの負の値に対しては負の値をとる。検出操舵トルクTが−T1〜T1(たとえば、T1=0.4N・m)の範囲(トルク不感帯)の微小な値のときには、q軸指示電流値I は零とされる。また、q軸指示電流値I は、車速センサ6によって検出される車速が大きいほど、その絶対値が小さく設定されるようになっている。これにより、低速走行時には大きな操舵補助力を発生させることができ、高速走行時には操舵補助力を小さくすることができる。
指示電流切換部41は、第1指示電流値生成部31によって生成される二相指示電流値Iγδ と、第2指示電流値生成部32によって生成される二相指示電流値Idq とのうちのいずれか一方を選択し、電流偏差演算部30に供給するものである。
センサ故障判定部40は、レゾルバ8の故障の有無を判定し、その判定結果に応じてモータ3の制御モードの切換を行なうものである。つまり、センサ故障判定部40は、故障検出手段および切換手段として機能する。たとえば、センサ故障判定部40は、レゾルバ8の信号線に導出される信号を監視することによって、レゾルバ8の故障、レゾルバ8の信号線の断線故障、レゾルバ8の信号線の接地故障を検出することができる。センサ故障判定部40は、レゾルバ8の故障の有無の判定結果に応じて、第1モードと第2モードとの間で制御モードを切換え、モード切換指令を生成する。このモード切換指令に応じて、指示電流値切換部41および角度切換部42における切換えが実行される。
具体的には、センサ故障判定部40は、レゾルバ8の故障が生じていないと判定している場合(通常時)には、制御モードを第2モードに設定する。一方、レゾルバ8の故障が生じていると判定している場合(故障時)には、センサ故障判定部40は、制御モードを第2モードから第1モードに切り換える。第2モードにおいては、指示電流値切換部41は第2指示電流値生成部32が生成する二相指示電流値Idq を選択して出力し、角度切換部42は回転角演算部27が生成するロータ回転角θを選択して出力する。第1モードにおいては、指示電流値切換部41は第1指示電流値生成部31が生成する二相指示電流値γδ を選択して出力し、角度切換部42は制御角演算部26が生成する制御角θを選択して出力する。
センサ故障判定部40からの切換指令は、切換初期値設定部29にも与えられるようになっている。切換初期値設定部29は、センサ故障判定部40からの切換指令が、第2モードから第1モードへの切換を指令するものであるとき、当該指令に応答して、制御角θの切換初期値θC0を算出して、制御角演算部26に設定する。この切換初期値θC0の算出方法の詳細については、後述する。
電流偏差演算部30は、指示電流値切換部41で選択された指示電流値Iγδ またはIdq に対する二相検出電流Iγδ(γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδ)の偏差を演算する。具体的には、指示電流値切換部41が二相指示電流値Iγδ を出力するときには、電流偏差演算部30は、γ軸指示電流値Iγ に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ −Iγと、δ軸指示電流値Iδ (=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ −Iδとを演算する。また、指示電流値切換部41が二相指示電流値Idq を出力するときには、電流偏差演算部30は、d軸指示電流値I (=0)に対するγ軸検出電流Iγの偏差I −Iγと、q軸指示電流値I に対するδ軸検出電流Iδの偏差I −Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、αβ/γδ変換部36Bから偏差演算部30に与えられるようになっている。 UVW/αβ変換部36Aは、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流I、V相検出電流IおよびW相検出電流I)を二相固定座標系であるαβ座標系の二相検出電流IαおよびIβ(以下総称するときには「二相検出電流Iαβ」という。)に変換する。αβ座標系は、図2に示すように、ロータ50の回転中心を原点として、ロータ50の回転平面内にα軸およびこれに直交するβ軸(図2の例ではU軸と同軸)を定めた固定座標系である。αβ/γδ変換部36Bは、二相検出電流Iαβをγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部30に与えられるようになっている。αβ/γδ変換部36Bにおける座標変換には、角度切換部42で選択された変換角θが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部30によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成する。この二相指示電圧Vγδ が、γδ/αβ変換部34Aに与えられる。
γδ/αβ変換部34Aは、二相指示電圧Vγδ をαβ座標系の二相指示電圧Vαβ に変換する。この座標変換には、角度切換部42で選択された変換角θが用いられる。二相指示電圧Vαβ は、α軸指示電圧Vα およびβ軸指示電圧Vβ からなる。αβ/UVW変換部34Bは、二相指示電圧Vαβ に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW を生成する。三相指示電圧VUVW は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V からなる。この三相指示電圧VUVW は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部30およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値切換部41によって選択された二相指示電流値Iγδ または二相指示電流値Idq に近づくように制御される。
図3は、前記第1モードのときの前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角リミッタ24の機能は省略してある。
指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(Kは比例係数、Kは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に対して加算されることによって、制御角θの今回値θ(n)=θ(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θとロータ50の実際のロータ角θとの偏差が負荷角θ=θ−θとなる。
したがって、制御角θに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流I=Iγsinθとなる。このq軸電流Iがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数Kをq軸電流I(=Iγsinθ)に乗じた値が、アシストトルクT(=K・Iγsinθ)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTを舵取り機構2からの負荷トルクTから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θを更新していくことにより、負荷角θが変化し、この負荷角θに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクTに応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このように、前記第1モードにおいて、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる。
一方、前記第2モードにおいては、検出操舵トルクTに応じた二相指示電流値Idq が設定され、モータ3の電流が当該二相指示電流値Idq に収束するようにフィードバック制御が行なわれる。そして、レゾルバ8の出力信号に基づいてロータ50の回転角θが求められ、この回転角θを用いて、γδ/αβ変換部34Aおよびαβ/γδ変換部36Bにおける座標変換が行なわれることになる。つまり、第2モードでは、回転角センサであるレゾルバ8を用いてモータ3が制御されることにより、適切な操舵補助が行なわれる。
前記第1モードにおいて有効化される構成部分によって第1制御手段(負荷角制御手段)が構成され、前記第2モードにおいて有効化される構成部分によって第2制御手段が構成されている。第1制御手段は、指示操舵トルク設定部21、操舵トルクリミッタ20、トルク偏差演算部22、PI制御部23、加算角リミッタ24、制御角演算部26、第1指示電流値生成部31、電流偏差演算部30、PI制御部33、γδ/αβ変換部34A、αβ/UVW変換部34B、PWM制御部35、UVW/αβ変換部36Aおよびαβ/γδ変換部36Bによって構成されている。また、第2制御手段は、回転角演算部27、操舵トルクリミッタ20、第2指示電流値生成部32、電流偏差演算部30、PI制御部33、γδ/αβ変換部34A、αβ/UVW変換部34B、PWM制御部35、UVW/αβ変換部36Aおよびαβ/γδ変換部36Bによって構成されている。すなわち、第1および第2制御手段は、操舵トルクリミッタ20、電流偏差演算部30、PI制御部33、γδ/αβ変換部34A、αβ/UVW変換部34B、PWM制御部35、UVW/αβ変換部36Aおよびαβ/γδ変換部36Bを共有している。
図8は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS1:NO)、加算角リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS3)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS3:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS4)。したがって、制御角θに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS3:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図9は、前記第1モードおよび第2モードの切換えに伴う動作を説明するためのフローチャートである。
センサ故障判定部40は、レゾルバ8の故障の有無を判定する(ステップS11)。センサ故障判定部40は、レゾルバ8の故障が生じていないと判定している場合(センサ故障を検出していない場合)には(ステップS11:NO)、前記第2モードを選択する(ステップS12)。すなわち、検出操舵トルクTに対応した二相指示電流値Idq が達成されるように、回転角演算部27により演算された回転角θに基づいて、モータが制御される。
一方、レゾルバ8の故障が発生したと判定した場合(センサ故障を検出した場合)には(ステップS11:YES)、センサ故障判定部40は、前記第1モードを選択する(ステップS13)。すなわち、指示操舵トルクTが達成されるように制御角θを演算周期毎に更新して負荷角θを調整するモータ制御(負荷角調整法)が実行される。
制御モードが第2モードから第1モードに切り換えられたとき(ステップS13)、切換初期値設定部29は、制御角の切換初期値θC0を算出して、制御角演算部26に設定する。
次に、制御角の切換初期値θC0の算出方法について説明する。
図1に示すように、切換初期値設定部29には、第2モード時において、回転角演算部27によって演算されるロータ回転角と、角速度演算部28によって演算されるロータ角速度ωが与えられる。また、切換初期値設定部29には、第1モード時において、トルク偏差演算部22によって演算されるトルク偏差ΔT(=T−T)が与えられる。
制御角の切換初期値θC0は、次式(6)で表される。
θC0=「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0
+「故障検出直前のロータ回転角θMbefore
+「故障が発生してから故障が検出されるまでの間のロータの回転量Δθ」…(6)
「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」とは、制御モード切換時点の検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとから求められる、制御モード切換時点において必要なアシストトルクTA0に対応した負荷角をいう。制御モード切換時点において必要なアシストトルクTA0は、たとえば、次式(7)で表される。
A0=−T+T=−ΔT …(7)
切換初期値設定部29は、制御モード切換時においてトルク偏差演算部22から与えられるトルク偏差ΔT(=T−T)に基づいて、制御モード切換時点において必要なアシストトルクTA0を算出する。
図10は、負荷角θとアシストトルクTとの関係を示している。図2を用いて説明したように、第2モードにおいて、q軸電流Iは、負荷角θを用いてI=Iγsinθ(θ−θ)で与えられる。アシストトルクは、モータ3のトルク定数をq軸電流Iに乗算した値となる。したがって、負荷角θに対するアシストトルクTの変化は、図10に示すような曲線(サインカーブ)で表される。アシストトルクTは、−90°≦θ≦90°の区間Aでは単調増加となり、−270°<θ<−90°および90°<θ<270°の区間Bでは単調減少となる。切換初期値設定部29は、図10の区間Aの範囲内において、制御モード切換時点において必要なアシストトルクTA0に対応する負荷角を求め、これを「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」とする。
「故障検出直前のロータ回転角θMbefore」とは、センサ故障判定部40によってセンサ故障が検出される直前に回転角演算部27によって演算されて、切換初期値設定部29に入力されたロータ回転角である。
「故障が発生してから故障が検出されるまでの間のロータの回転量Δθ」は、次式(8)によって表される。
Δθ=「故障検出直前のロータの回転角速度ωbefore」×「故障検出時間Δt」 …(8)
「故障検出直前のロータの回転角速度ωbefore」とは、センサ故障判定部40によってセンサ故障が検出される直前に角速度演算部28によって演算されて、切換初期値設定部29に入力されたロータ回転角である。「故障検出時間Δt」とは、センサ故障が発生してから、センサ故障判定部40によってセンサ故障が検出されるまでに要する時間であり、予め調べて設定しておくことができる既知の時間である。「故障検出時間Δt」としては、たとえば、30msecが設定される。
前記式(6)では、「故障検出直前のロータ回転角θMbefore」に「故障が発生してから故障が検出されるまでの間のロータの回転量Δθ」が加算されることにより、「制御モード切換時点におけるロータ50の回転角θM0」が求められる。また、得られた「制御モード切換時点におけるロータ50の回転角θM0」に、「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」が加算されることにより、負荷角θを前記「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」に設定するための制御角θC0が求められる。
つまり、制御モードが第2モードから第1モードに切換られたときには、負荷角θを「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」に設定するための制御角θC0が求められ、これが切換初期値として設定される。したがって、制御モードが第2モードから第1モードに切換られたときには、検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとの差に応じたアシストトルク(制御モード切換時点において必要なアシストトルク)を直ちに発生させることができるので、モード切換時の操舵フィーリングを向上させることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、制御角の切換初期値θC0を算出するために使用される、「制御モード切換時点において必要なアシストトルクに応じた負荷角θL0」(前記式(6)参照)における「制御モード切換時点において必要なアシストトルク」は、制御モード切換時点の検出操舵トルクTと指示操舵トルクTとから求められている。しかし、この「制御モード切換時点において必要なアシストトルク」として、制御モード切換直前(故障検出直前)のアシストトルクを用いるようにしてもよい。故障検出直前のアシストトルクは、たとえば、センサ故障判定部40によってセンサ故障が検出される直前のq軸指示電流値I にトルク定数を乗算することにより求めることができる。
また、前述の実施形態では、PI制御部23によって加算角αを求めているが、PI制御部23に代えて、PID(比例・積分・微分)演算部を用いて加算角αを求める構成とすることもできる。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…トルクセンサ、3…モータ、5…モータ制御装置、11…マイクロコンピュータ、23…PI制御部、26…制御角演算部、40…センサ故障判定部、41…指示電流切換部、42…角度切換部、50…ロータ、51,52,53…ステータ巻線、55…ステータ

Claims (2)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するためのトルク検出手段と、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示トルク設定手段と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとのトルク偏差に応じた加算角を演算する加算角演算手段と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、を含む負荷角制御手段と、
    前記ロータの回転角を検出するための回転角センサと、
    前記回転角センサが故障したことを検出する故障検出手段と、
    前記回転角センサの故障が検出されたときに、前記回転角センサの検出値に基づくモータ制御から、前記負荷角制御手段に基づくモータ制御に、制御モードを切換える切換手段と、
    前記切換手段によって制御モードが切り換えられたときの制御角の初期値を、当該切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角と、前記回転角センサの故障検出直前の前記回転角センサの検出値と、前記回転角センサの故障が発生してからその故障が前記故障検出手段によって検出されるまでの間のロータの回転量との和により求める切換初期値演算手段と、を含み、
    前記負荷角が、前記制御角と前記ロータの実際の回転角との差である、モータ制御装置。
  2. 前記切換時点において必要なモータトルクに応じた負荷角が、前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクと前記指示トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクとに基づいて演算されるモータトルクに応じた負荷角である、請求項1に記載のモータ制御装置。
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