JP5545465B2 - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置に関する。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、一般的には、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。しかし、レゾルバは、高価であり、配線数が多く、また、設置スペースも大きい。そのため、ブラシレスモータを備えた装置のコスト削減および小型化が阻害されるという課題がある。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、誘起電圧を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開2007-267549号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置その他の車両用操舵装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備え、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するためのモータ(3)を、ロータの回転角を検出するための回転角センサを用いずに制御するためのモータ制御装置(5)であって、前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段(1)と、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示操舵トルク設定手段(21)と、制御上の回転角である制御角(θ)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(30,32〜36)と、前記指示操舵トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて加算角を演算する加算角演算手段(22,23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、前記モータの負荷を測定または推定するためのモータ負荷演算手段(27)と、前記モータ負荷演算手段によって測定または推定されたモータの負荷が所定値以上である場合に、前記制御角、前記加算角または前記軸電流値を制限する制限手段(25,28,31)とを含む、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が適値に導かれることによって、適切なトルクが発生する。
この発明では、モータの負荷がモータ負荷演算手段によって測定または推定される。モータ負荷演算手段によって測定または推定されたモータ負荷が所定値以上である場合に、制御角、加算角または軸電流値が制限される。モータの出力可能最大トルクよりもモータ負荷が大きくなると、必要とされるトルクに対応する負荷角の適値が存在しなくなり、トルク制御が不可能な状態(以下、「トルク制御不能状態」という。)となる。これにより、モータから適切なトルクを発生させることができなくなる。そこで、この発明では、モータ負荷が所定値以上である場合には、制御角、加算角または軸電流値を制限することにより、モータの出力可能最大トルクよりもモータ負荷が大きくなるのを回避したり、あるいはトルク制御不能状態となるのを回避したりする。
より具体的には、モータの負荷が所定値以上である場合には、たとえば、制御角が変化しないように、制御角が制限されるかまたは加算角が零にされる。あるいは、モータの負荷が所定値以上である場合には、軸電流値が零にされる。制御角を制限したり加算角を零にしたりすることにより、制御角が変化しなくなると、モータがロック状態となる。たとえば、モータの基準位置からの回転量に応じてモータ負荷が大きくなる場合、モータがロックされると、モータ負荷がそれ以上大きくならない。したがって、モータの出力可能最大トルクよりもモータ負荷が大きくなるのを回避できる。一方、軸電流値が零にされると、モータのトルク制御動作が停止するので、トルク制御不能状態となるのを回避できる。
また、この発明によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
前記モータ負荷演算手段(27)は、前記モータの負荷を測定するモータ負荷測定手段を含むものであってもよいし、前記モータの負荷を推定するモータ負荷推定手段を含むものであってもよい。
請求項2記載の発明は、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するためのモータ(3)と、前記モータを制御する請求項1記載のモータ制御装置とを含み、前記モータ負荷演算手段が、前記車両の操向のために操作される操部材の操舵角または前記車両の車輪の転舵角に基づいて、前記モータの負荷を推定するものである、車両用操舵装置である。この構成では、操舵部材の操舵角または車両の車輪の転舵角に基づいて、モータ負荷が推定される。そして、推定されたモータ負荷が所定値以上である場合に、制御角、加算角または軸電流値が制限される。したがって、この構成においても、モータの出力可能最大トルクよりもモータ負荷が大きくなるのを回避できるか、またはトルク制御不能状態となるのを回避できるようになる。
前記モータ負荷測定手段としては、たとえば、ラック軸に作用する力を検出する軸力センサ、タイヤに作用する応力を検出するタイヤ力センサ等を用いることができる
操作部材と舵取り機構とが機械的に結合された車両用操舵装置(たとえば、電動パワーステアリング装置)では、モータの駆動力は舵取り機構にアシストトルク(操舵補助力)として与えられる。このアシストトルクを、モータ負荷(負荷トルク)から減じた値が、運転者が操作部材に与えるべき操舵トルクとなる。モータが出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなると、負荷角の適値が存在しなくなるため、トルク制御不能状態となり、適切なアシストトルクを発生できなくなる。
この発明では、モータ負荷が所定値以上である場合には、制御角、加算角または軸電流値が制限される。より具体的には、モータ負荷が所定値以上である場合には、たとえば、制御角が変化しないように、制御角が制限されるかまたは加算角が零にされる。あるいは、モータの負荷が所定値以上である場合には、軸電流値が零にされる。制御角または加算角の制限によって制御角が変化しなくなると、モータがロック状態となるので、運転者は操作部材をそれ以上操作できなくなる。より具体的には、操舵角をより大きくする操作が規制される。モータ負荷は操舵角が大きくなるほど大きくなるので、モータ負荷がそれ以上大きくならなくなる。この結果、モータが出力可能な最大アシストトルクよりもモータ負荷が大きくなるのを回避できる。一方、軸電流値が零にされると、操舵補助動作が停止され、いわゆるマニュアルステア状態となるので、トルク制御不能状態となるのを回避できる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 操舵トルクリミッタの働きを説明するための図である。 γ軸指示電流値の設定例を示す図である。 加算角リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 加算角変更部による加算角変更処理の手順を示すフローチャートである。 制御角制限部による制御角制限処理の手順を示すフローチャートである。 この発明の他の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 指示電流値変更部による指示電流値変更処理の手順を示すフローチャートである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6とを備えている。舵角センサ4は、ステアリングホイール10の中立位置(基準位置)からのステアリングホイール10の正逆両方向の回転量(回転角)を検出するものであり、中立位置から右方向への回転量を正の値として出力し、中立位置から左方向への回転量を負の値として出力する。
モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θに従う実回転座標系である。このロータ角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θが導入される。制御角θは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θがロータ角θに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θを用いて行うことができる。
制御角θとロータ角θとの差を負荷角θ(=θ−θ)と定義する。
制御角θに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iとの間に、次式(1)の関係が成立する。
=Iγ・sinθ …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流I,I,I(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、加算角変更部25と、制御角演算部26と、モータ負荷演算部27と、指示電流値生成部30と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクTを設定する。たとえば、図4に示すように、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクTが設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクTの設定が行われる。また、指示操舵トルクTは、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の出力を所定の上限飽和値+Tmax(+Tmax>0。たとえば+Tmax=7Nm)と下限飽和値−Tmax(−Tmax<0。たとえば−Tmax=−7Nm)との間に制限する。具体的には、操舵トルクリミッタ20は、図5に示すように、上限飽和値+Tmaxと下限飽和値−Tmaxの間では、トルクセンサ1の検出操舵トルクTをそのまま出力する。また、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが上限飽和値+Tmax以上であれば、上限飽和値+Tmaxを出力する。そして、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが下限飽和値−Tmax以下であれば、下限飽和値−Tmaxを出力する。飽和値+Tmaxおよび−Tmaxは、トルクセンサ1の出力信号が安定な領域(信頼性のある領域)の境界を画定するものである。つまり、トルクセンサ1の出力信号は、上限飽和値Tmaxを超える区間、および下限飽和値−Tmaxを下回る区間では不安定であり、実際の操舵トルクに対応しなくなる。換言すれば、飽和値+Tmax,−Tmaxは、トルクセンサ1の出力特性に応じて定められる。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTとトルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた操舵トルクT(以下、区別するために「検出操舵トルクT」という。)との偏差(トルク偏差)ΔT(=T−T)を求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θに対する加算角αを演算する。したがって、前記トルクフィードバック制御手段は、加算角αを演算する加算角演算手段を構成している。
加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える。より具体的には、加算角リミッタ24は、所定の上限値UL(正の値)と下限値LL(負の値)との間の値に加算角αを制限する。上限値ULおよび下限値LLは、所定の制限値ωmax(ωmax>0。たとえばωmaxの既定値=45度)に基づいて定められる。この所定の制限値ωmaxの既定値は、たとえば、最大操舵角速度に基づいて定められる。最大操舵角速度とは、ステアリングホイール10の操舵角速度として想定され得る最大値であり、たとえば、800deg/sec程度である。
最大操舵角速度のときのロータ50の電気角の変化速度(電気角での角速度。最大ロータ角速度)は、次式(2)のとおり、最大操舵角速度と、減速機構7の減速比と、ロータ50の極対数との積で与えられる。極対数とは、ロータ50が有する磁極対(N極とS極との対)の個数である。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
ロータ角変化量最大値=最大ロータ角速度×演算周期
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxの既定値とすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
UL=+ωmax …(4)
LL=−ωmax …(5)
モータ負荷演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角に基づいてモータの負荷(負荷トルク)を演算する。負荷トルクは、操舵角の絶対値が大きくなるに従って大きくなる。そこで、モータ負荷演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角の絶対値に基づいて負荷トルクを推定する。この実施形態では、モータ負荷演算部27は、舵角センサ4によって検出される操舵角の絶対値を、負荷トルクに応じた値として、加算角変更部25に与える。加算角変更部25には、トルクセンサ1によって検出される操舵トルクTも与えられる。
加算角変更部25は、モータ負荷演算部27から与えられる操舵角絶対値とトルクセンサ1から与えられる検出操舵トルクTとに基づいて、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αを変更する。具体的には、加算角変更部25は、通常時には、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αに対して変更を行なわず、そのまま制御角演算部26に与える。操舵角絶対値が所定のしきい値以上になったときには、すなわち、負荷トルクが所定値以上になったときには、加算角変更部25は、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αを零に変更する。この変更後の加算角α(=0)が、制御角演算部26に与えられる。加算角変更部25は、加算角αを零に変更すると、その状態を保持したまま、検出操舵トルクTを監視する。そして、検出操舵トルクTの絶対値が減少したときに、加算角変更部25は、加算角αが零である状態を解除し、通常時の状態に戻す。加算角変更部25によって実行される処理(加算角変更処理)の詳細については、後述する。 加算角変更部25による変更処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θの前回値θ(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
制御角演算部26は、制御角θの前回値θ(n-1)に加算角変更部25から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θを演算する。そして、前演算周期における制御角θを前回値θ(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θである今回値θ(n)を求める。
指示電流値生成部30は、制御上の回転角である前記制御角θに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ およびδ軸指示電流値Iδ (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ 」という。)を生成する。指示電流値生成部30は、γ軸指示電流値Iγ を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ を零とする。より具体的には、指示電流値生成部30は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ の設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
電流偏差演算部32は、指示電流値生成部30によって生成されたγ軸指示電流値Iγ に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ −Iγと、δ軸指示電流値Iδ (=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ −Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、UVW/γδ変換部36から偏差演算部32に与えられるようになっている。
UVW/γδ変換部36は、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流I、V相検出電流IおよびW相検出電流I)をγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部32に与えられるようになっている。UVW/γδ変換部36における座標変換には、制御角演算部26で演算される制御角θが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部32によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成する。この二相指示電圧Vγδ が、γδ/UVW変換部34に与えられる。
γδ/UVW変換部34は、二相指示電圧Vγδ に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW を生成する。三相指示電圧VUVW は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V からなる。この三相指示電圧VUVW は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部30によって設定された二相指示電流値Iγδ に近づくように制御される。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角リミッタ24および加算角変更部25の機能は省略してある。
指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(Kは比例係数、Kは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に対して加算されることによって、制御角θの今回値θ(n)=θ(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θとロータ50の実際のロータ角θとの偏差が負荷角θ=θ−θとなる。
したがって、制御角θに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流I=Iγsinθとなる。このq軸電流Iがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数Kをq軸電流I(=Iγsinθ)に乗じた値が、アシストトルクT(=K・Iγsinθ)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTを舵取り機構2からの負荷トルクTから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θを更新していくことにより、負荷角θが変化し、この負荷角θに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクTに応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このようにして、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現できる。これにより、構成を簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
図7は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS1:NO)、加算角リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS3)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS3:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS4)。したがって、制御角θに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS3:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図8は、加算角変更部25によって実行される加算角変更処理の手順を示すフローチャートである。加算角変更部25は、モータ負荷演算部27から与えられた操舵角の絶対値が所定のしきい値A以上(ただし、A>0)であるか否かを判別する(ステップS11)。このしきい値Aは、モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも所定量だけ小さい負荷トルクに対応する操舵角の絶対値(たとえば、400deg)に設定される。なお、前述したように、操舵角絶対値が大きくなるほど、負荷トルクは大きくなる。操舵角絶対値がしきい値A未満である場合には(ステップS11:N0)、加算角変更部25は、加算角αの変更を行なわず、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αを、そのまま出力する(ステップS12)。したがって、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26に与えられる。通常時には、このように、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、そのまま、制御角演算部26に与えられる。
前記ステップS11において、操舵角絶対値がしきい値A以上である場合には(ステップS11:YES)、加算角変更部25は、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αを零に変更する(ステップS13)。したがって、制御角演算部26に与えられる加算角αは、零となる。この後、加算角変更部25は、検出操舵トルクTの絶対値が減少したか否かを判別する(ステップS14)。具体的には、加算角変更部25は、トルクセンサ1によって今回検出された操舵トルクの絶対値|T(n)|から、前回検出された操舵トルクの絶対値|T(n−1)|を減算した偏差(|T(n)|−|T(n―1)|)が、零より小さい所定値C以下であるか否かを判別する。
検出操舵トルクTの絶対値が減少していない場合には(ステップS14:NO)、すなわち、前記偏差(|T(n)|−|T(n−1)|)が所定値Cより大きい場合には、前記ステップS13に戻る。つまり、前記ステップS13で加算角αが零に変更され後、検出操舵トルクTの絶対値が減少しない場合には、ステップS13およびステップS14の処理が繰り返される。このため、加算角αが零である状態が維持される。
検出操舵トルクTが減少すると(ステップS14:YES)、すなわち、前記偏差(|T(n)|−|T(n−1)|)が所定値C以下になると、加算角変更部25は、加算角αが零である状態を解除し、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αを、そのまま出力する(ステップS12)。これにより、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26に与えられるようになる。つまり、通常時の状態に戻る。
モータ3の負荷トルクは、操舵角絶対値が大きくなるに従って大きくなる。モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなると、負荷角の適値が存在しなくなるため、トルク制御不能となり、適切なアシストトルクを発生できなくなる。この実施形態では、検出操舵角の絶対値がしきい値A(たとえば400deg)以上になると(ステップS11:YES)、加算角αが零に変更され、その状態が保持される(ステップS13,S14)。加算角αが零にされると、制御角θが変化しなくなり、モータ3がロック状態となるので、運転者はステアリングホイール10をそれ以上切れなくなる。この結果、モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなるのを回避できる。
この後、たとえば、運転者がステアリングホイール10をそれ以上切るのをあきらめ、ステアリングホイール10に加える操舵力を緩めると、検出操舵トルクTの絶対値が減少する。検出操舵トルクTの絶対値が減少すると、前記ステップS14でYESとなり、通常時の状態に戻される。つまり、加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26に与えられるようになる。これにより、モータ3のロック状態が解除される。このようにして、ステアリングホイール10の操作可能範囲は、モータ3の負荷トルクが過大とならない操舵角範囲に制限されることになる。
前記実施形態では、操舵角がしきい値A以上になったときには、制御角演算部26に与えられる加算角αを零にすることにより、制御角が変化しないようにしているが、操舵角がしきい値A以上になったときに、制御角が変化しないように、制御角を直接制限するようにしてもよい。具体的には、図1に破線で示すように、加算角変更部25に代えて、制御角制限部28を設ける。制御角制限部28は、制御角演算部26の後段に設けられる。制御角制限部28には、操舵角センサ4によって検出される操舵角の絶対値がモータ負荷演算部28を介して与えられる。さらに、制御角制限部28には、トルクセンサ1によって検出される操舵トルクTが与えられる。
制御角制限部28は、モータ負荷演算部27から与えられる操舵角絶対値とトルクセンサ1から与えられる検出操舵トルクTとに基づいて、制御角演算部26によって演算された制御角θを制限する。具体的には、制御角制限部28は、通常時には、制御角演算部26によって演算された制御角θに対して変更を行なわず、そのまま座標変換部(γδ/UVW変換部34およびUVW/γδ変換部36)に与える。操舵角絶対値が所定のしきい値以上になったときには、すなわち、負荷トルクが所定値以上になったときには、制御角制限部28は、制御角θを変化させなくさせる。たとえば、制御角制限部28は、座標変換部34,36に与える制御角θを、前回の演算周期に座標変換部34,36に与えた制御角θの値に固定する。この後、制御角制限部28は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTを監視する。そして、検出操舵トルクTの絶対値が減少したときに、制御角制限部28は、制御角θを一定値に固定した状態を解除し、通常時の状態に戻す。
図9は、制御角制限部28によって実行される処理(制御角制限処理)の手順を示すフローチャートである。制御角制限部28は、モータ負荷演算部27から与えられた操舵角絶対値が所定のしきい値A以上であるか否かを判別する(ステップS21)。このしきい値は、モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも所定量だけ小さい負荷トルクに対応する操舵角絶対値(たとえば、400deg)に設定される。操舵角絶対値がしきい値A未満である場合には(ステップS21:N0)、制御角制限部28は、制御角θの制限を行なわず、今演算周期において制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)を、そのまま出力する(ステップS22)。つまり、今演算周期において制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)が、座標変換部34,36に与えられる。通常時には、このように、制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)が、そのまま、座標変換部34,36に与えられる。
前記ステップS21において、操舵角絶対値がしきい値A以上である場合には(ステップS21:YES)、制御角制限部28は、今回の演算周期で出力すべき制御角の今回値θ(n)を前回の出力値である前回値θ(n−1)に置き換える(ステップS23)。これにより、制御角制限部28から出力される制御角θは変化しなくなる。つまり、座標変換部34,36に与えられる制御角θは、操舵角絶対値がしきい値A以上となる直前の値に固定される。
この後、制御角制限部28は、検出操舵トルクTの絶対値が減少したか否かを判別する(ステップS24)。この具体的な判別方法としては、図8のステップS14で説明した方法を用いることができる。検出操舵トルクTの絶対値が減少していない場合には(ステップS24:NO)、前記ステップS23に戻る。つまり、前記ステップS23で制御角θが固定された後、検出操舵トルクTの絶対値が減少しない場合には、ステップS23およびステップS24の処理が繰り返される。
検出操舵トルクTが減少すると(ステップS24:YES)、制御角制限部28は、制御角θが一定値に固定された状態を解除し、制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)を、そのまま出力する(ステップS22)。これにより、制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)が、座標変換部34,36に与えられるようになる。つまり、通常時の状態に戻る。
検出操舵角の絶対値がしきい値A(たとえば400deg)以上になると(ステップS21:YES)、制御角θが一定値に固定されるため、制御角θが変化しなくなる(ステップS23,S24)。制御角θが変化しなくなると、モータ3がロック状態となるので、運転者はステアリングホイール10をそれ以上切れなくなる。この結果、モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなることを回避できる。
この後、たとえば、運転者がステアリングホイール10を前記操舵角以上に切るのをあきらめ、ステアリングホイール10に加える操舵力を緩めると、検出操舵トルクTの絶対値が減少する。検出操舵トルクTの絶対値が減少すると、前記ステップS24でYESとなり、通常時の状態に戻される。つまり、制御角演算部26によって演算された制御角θ(n)が、座標変換部34,36に与えられるようになる。
図10は、この発明の他の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図10において、前述の図1の各部に対応する部分には図1と同じ符号を付して示す。
この実施形態では、図1に示されている加算角変更部25および制御角制限部28は設けられていない。この実施形態では、指示電流値生成部30によって生成される指示電流値を変更する指示電流値変更部31が、マイクロコンピュータ11の機能処理部として備えられている。
指示電流値変更部31には、操舵角センサ4によって検出された操舵角の絶対値が、モータ負荷演算部27を介して、モータの負荷(負荷トルク)に応じた値として与えられる。指示電流値変更部31は、モータ負荷演算部27から与えられた操舵角絶対値に基づいて、指示電流値生成部30が生成する指示電流値を変更する。指示電流値変更部31は、この実施形態では、γ軸指示電流値Iγ を変更する。
具体的には、指示電流値変更部31は、操舵角絶対値が所定のしきい値未満である場合には、すなわち、負荷トルクが所定値未満であるときには、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ に対して変更を行なわず、そのまま電流偏差演算部32に与える。一方、操舵角絶対値が所定のしきい値以上である場合には、すなわち、負荷トルクが所定値以上になったときには、指示電流値変更部31は、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ を零に変更する。この変更後のγ軸指示電流値Iγ が、電流偏差演算部32に与えられる。
図11は、指示電流値変更部31によって実行される指示電流値変更処理の手順を示すフローチャートである。指示電流値変更部31は、モータ負荷演算部27から与えられた操舵角絶対値が所定のしきい値A以上であるか否かを判別する(ステップS31)。このしきい値は、モータ3が出力可能な最大アシストトルクよりも小さい負荷トルクに対応する操舵角絶対値(たとえば、400deg)に設定される。操舵角絶対値がしきい値A未満である場合には(ステップS31:N0)、指示電流値変更部31は、指示電流値Iγ の変更を行なわず、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ を、そのまま出力する(ステップS32)。したがって、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ が、電流偏差演算部32に与えられる。
前記ステップS31において、操舵角絶対値がしきい値A以上である場合には(ステップS31:YES)、指示電流値変更部31は、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ を、零に変更する(ステップS33)。したがって、電流偏差演算部32に与えられるγ軸指示電流値Iγ は零となる。これにより、操舵補助力(アシストトルク)が停止される。この後において、操舵角絶対値がしきい値A未満になると、指示電流値変更部31は、指示電流値生成部30が生成するγ軸指示電流値Iγ を、そのまま出力する(ステップS31,S32)。
モータ3の負荷トルクは操舵角が大きくなるに従って大きくなる。モータ3によって出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなると、負荷角の適値が存在しなくなるため、トルク制御不能状態となり、適切なアシストトルクを発生できなくなる。この実施の形態では、検出操舵角の絶対値がしきい値A(たとえば400deg)以上になると(ステップS31:YES)、γ軸指示電流値Iγ が零に変更される(ステップS33)。γ軸指示電流値Iγ が零にされると、操舵補助動作が停止され、いわゆるマニュアルステア状態となるので、トルク制御不能状態となるのを回避できる。
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、モータ負荷演算部27は、操舵角センサ4によって検出される操舵角からモータ負荷(負荷トルク)を推定しているが、舵取り機構2によって転舵される舵取り車輪の転舵角からモータ負荷を推定するようにしてもよい。舵取り車輪の転舵角は、舵角センサ4によって検出される操舵角にギヤ比を乗算することにより求めることができるほか、たとえば、ラック軸の変位を検出することによって直接的に検出することもできる。また、モータ負荷演算部として、前述のようにモータ負荷を推定するもの(モータ負荷推定手段)の他、モータの負荷を測定するもの(モータ負荷測定手段)を用いてもよい。モータ負荷測定手段としては、たとえば、ラック軸に作用する力を検出する軸力センサ、タイヤに作用する応力を検出するタイヤ力センサ等を用いることができる。
さらに、前述の実施形態では、PI制御部23によって加算角αを求めているが、PI制御部23に代えて、PID(比例・積分・微分)演算部を用いて加算角αを求める構成とすることもできる。
また、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
この場合、回転角センサを用いるときには、指示電流値生成部30において、操舵トルクおよび車速に応じて、所定のアシスト特性に従ってδ軸指示電流値Iδ を発生させるようにすればよい。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…トルクセンサ、3…モータ、5…モータ制御装置、10…ステアリングホイール、11…マイクロコンピュータ、23…PI制御部、26…制御角演算部、50…ロータ、51,52,53…ステータ巻線、55…ステータ

Claims (2)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備え、車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータを、ロータの回転角を検出するための回転角センサを用いずに制御するためのモータ制御装置であって、
    前記車両の操向のために操作される操作部材に加えられる操舵トルクを検出するトルク検出手段と、
    操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定する指示操舵トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示操舵トルク設定手段によって設定される指示操舵トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    前記モータの負荷を測定または推定するためのモータ負荷演算手段と、
    前記モータ負荷演算手段によって測定または推定されたモータの負荷が所定値以上である場合に、前記制御角、前記加算角または前記軸電流値を制限する制限手段とを含む、モータ制御装置。
  2. 車両の舵取り機構に駆動力を付与するためのモータと、
    前記モータを制御する請求項1記載のモータ制御装置とを含み、
    前記モータ負荷演算手段が、前記車両の操向のために操作される操部材の操舵角または前記車両の車輪の転舵角に基づいて、前記モータの負荷を推定するものである、車両用操舵装置。
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