JP5532294B2 - モータ制御装置および車両用操舵装置 - Google Patents

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Description

この発明は、ブラシレスモータを駆動するためのモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置に関する。車両用操舵装置の一例は、電動パワーステアリング装置である。
ブラシレスモータを駆動制御するためのモータ制御装置は、一般に、ロータの回転角を検出するための回転角センサの出力に応じてモータ電流の供給を制御するように構成されている。回転角センサとしては、一般的には、ロータ回転角(電気角)に対応した正弦波信号および余弦波信号を出力するレゾルバが用いられる。しかし、レゾルバは、高価であり、配線数が多く、また、設置スペースも大きい。そのため、ブラシレスモータを備えた装置のコスト削減および小型化が阻害されるという課題がある。
そこで、回転角センサを用いることなくブラシレスモータを駆動するセンサレス駆動方式が提案されている。センサレス駆動方式は、ロータの回転に伴う誘起電圧を推定することによって、磁極の位相(ロータの電気角)を推定する方式である。ロータ停止時および極低速回転時には、磁極の位相を推定できないので、別の方式で磁極の位相が推定される。具体的には、ステータに対してセンシング信号を注入し、このセンシング信号に対するモータの応答が検出される。このモータ応答に基づいて、ロータ回転位置が推定される。
特開2007-267549号公報
上記のセンサレス駆動方式は、誘起電圧やセンシング信号を用いてロータの回転位置を推定し、その推定によって得られた回転位置に基づいてモータを制御するものである。しかし、この駆動方式は、いずれの用途にも適しているわけではなく、たとえば、車両の舵取り機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置その他の車両用操舵装置の駆動源として用いられるブラシレスモータの制御に適用するための手法は未だ確立されていない。そのため、別の方式によるセンサレス制御の実現が望まれている。
そこで、この発明の目的は、回転角センサを用いない新たな制御方式でモータを制御することができるモータ制御装置およびそれを備えた車両用操舵装置を提供することである。
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、ロータ(50)と、このロータに対向するステータ(55)とを備えたモータ(3)を制御するためのモータ制御装置(5)であって、前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段(1)と、前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段(21)と、制御上の回転角である制御角(θ)に従う回転座標系の軸電流値(Iγ )で前記モータを駆動する電流駆動手段(30,32〜36)と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルク(T )と前記トルク検出手段によって検出されるトルク(T )とのトルク偏差(ΔT)に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段(23)と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段(26)と、制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段(41)と、前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段(42)とを含む、モータ制御装置である。前記予兆検出手段は、前記加算角演算手段によって演算される加算角(α)の絶対値が加算角しきい値(D2)以上であるという第1条件、前記トルク検出手段によって検出される検出トルク(T )の絶対値がトルクしきい値(B2)以上であるという第2条件、前記トルク偏差(ΔT)の絶対値がトルク偏差しきい値(A2)以上であるという第3条件、加算角に対する前記検出トルクの変化量の比(ΔT /α)の絶対値が加算角・トルク変化量比しきい値(C)以下であるという第4条件、加算角の変化方向と前記検出トルクの変化方向とが予め定められた関係であるという第5条件のうち、少なくとも一つの条件が満たされた場合に、制御破綻の予兆を検出するものである。前記制御態様変更手段は、前記駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクが前記指示トルクを中心に変動するように、前記加算角演算手段によって演算される加算角、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルク、前記制御角演算手段によって演算される制御角、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を変動させるものである。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この構成によれば、制御角に従う回転座標系(γδ座標系。以下「仮想回転座標系」といい、この仮想回転座標系の座標軸を「仮想軸」という。)の軸電流値(以下「仮想軸電流値」という。)によってモータが駆動される一方で、制御角は、演算周期毎に加算角を加算することによって更新される。これにより、制御角を更新しながら、すなわち、仮想回転座標系の座標軸(仮想軸)を更新しながら、仮想軸電流値でモータを駆動することによって、必要なトルクを発生させることができる。こうして、回転角センサを用いることなく、モータから適切なトルクを発生させることができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が適値に導かれることによって、適切なトルクが発生する。
この発明では、予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されると、制御態様変更手段によって、モータ制御態様が変更される。この制御態様の変更によって、制御破綻の予兆を報知することができる。制御破綻とは、負荷角を適値に収束させることができない状態をいう
また、この発明では、駆動対象に加えられるべき指示トルク(モータトルク以外のトルクの指示値)が指示トルク設定手段によって設定される一方で、駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクがトルク検出手段によって検出される。そして、指示トルクと検出トルクとの偏差(トルク偏差)に応じて加算角が演算される。すなわち、前記検出トルクを前記指示トルクに近づけるように前記加算角を演算するフィードバック制御手段が構成されている。これにより、制御角を適切に制御することができ、モータから指示トルクに応じたモータトルクを発生させることができる。
そして、この構成では、次の第1〜第5の条件(1)〜(5)のうちの少なくとも一つが満たされたときに、制御破綻の予兆が検出される。
(1)加算角演算手段によって演算される加算角(α)の絶対値が加算角しきい値(D2)以上であること
(2)トルク検出手段によって検出される検出トルク(T)の絶対値がトルクしきい値(B2)以上であること
(3) 指示トルク設定手段によって設定される指示トルク(T)とトルク検出手段によって検出されるトルク(T)とのトルク偏差(ΔT)の絶対値がトルク偏差しきい値(A2)以上であること
(4)加算角に対する検出トルクの変化量の比(ΔT/α)の絶対値が加算角・トルク変化量比しきい値(C)以下であること
(5)加算角の変化方向と前記検出トルクの変化方向とが予め定められた関係であること
前記条件(5)における「予め定められた関係」について、具体的に説明する。駆動対象に対して全体として或るトルクを作用させる場合(たとえばモータトルクによって不足のトルクが補われる場合)、モータトルクが増加することによって、駆動対象に加えられるモータトルク以外のトルクは減少する。モータトルクを増加させる場合に加算角を増加させ、モータトルクを減少させる場合に加算角を減少させるような制御が行なわれる場合には、加算角が増加すると、モータトルクが増加し、前記モータトルク以外のトルクが減少する。この場合には、加算角の変化方向と前記検出トルクの変化方向とは一致しない。そこで、両者の変化方向が一致するようになった場合には、制御破綻の予兆であると考えることができる。このようなことから、モータトルクを増加させる場合に加算角を増加させるような制御が行なわれる場合には、前記条件(5)における「予め定められた関係」は、両者の方向が一致する関係となる。
一方、モータトルクを増加させる場合に加算角を減少させ、モータトルクを減少させる場合に加算角を増加させるような制御が行なわれる場合には、加算角が増加すると、モータトルクが減少し、前記モータトルク以外のトルクが増加する。この場合には、加算角の変化方向と前記検出トルクの変化方向とは一致する。そこで、両者の変化方向が一致しなくなった場合には、制御破綻の予兆であると考えることができる。このようなことから、モータトルクを増加させる場合に加算角を減少させるような制御が行なわれる場合には、前記条件(5)における「予め定められた関係」は、両者の方向が不一致な関係となる。
請求項2記載の発明は、ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、制御破綻の予兆レベルに応じてモータ制御態様を変更するために、前記加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が増加するに従って増加する減少補正量により加算角の絶対値を減少補正する制御態様変更手段とを含む、モータ制御装置である。
加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が増加していくと、適切なモータトルクを発生させることができる制御角(適値)を飛び越えて制御角が変動する状態に陥り、制御が破綻するおそれがある。そこで、この発明では、加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が増加するに従って増加する減少補正量によって、加算角の絶対値が減少補正される。このため、加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が、制御破綻が生じるおそれのある値に近い値まで増加した場合には、加算角の絶対値の減少補正量が大きくなる。これにより、通常時とは異なるモータトルクが発生する。このように、モータトルクが通常時とは異なる値になることにより、制御破綻の予兆を報知することが可能となる。しかも、加算角絶対値が大きいほど減少補正量が大きくなるので、制御破綻に近づくほど、すなわち、予兆レベルが高まるほど、モータ制御態様の変更が大きくなる。
請求項記載の発明は、ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、制御破綻の予兆の指標となる所定の制御パラメータとしきい値とを比較することにより、制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段と、前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、前記加算角を所定の目標値(α)まで漸増または漸減させることにより、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段(60)とを含む、モータ制御装置である。
この構成によれば、加算角が所定の目標値まで変化することにより、モータの動作が変化するので、制御破綻の予兆を報知できる。また、加算角が漸次的に変化するので、制御態様をスムーズに変化させることができる。また、制御破綻またはその予兆が生じた後も、モータを動作させることができる。
請求項記載の発明は、前記制御態様変更手段(70)は、制御破綻の予兆が検出されたときに、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を所定の目標値まで漸増または漸減させるものである、請求項記載のモータ制御装置である。
この構成によれば、軸電流値または指示電圧が所定の目標値まで変化することにより、モータの動作が変化するので、制御破綻またはその予兆を報知できる。また、軸電流値または指示電圧が漸次的に変化するので、制御態様をスムーズに変化させることができる。また、制御破綻またはその予兆が生じた後も、モータを動作させることができる。
請求項5記載の発明は、ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、制御破綻の予兆の指標となる所定の制御パラメータとしきい値とを比較することにより、制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段と、前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を所定の目標値まで漸増または漸減させることにより、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段とを含む、モータ制御装置である。
請求項記載の発明は、前記制御パラメータ(T)が第1しきい値(Eth1)を超えると制御破綻の予兆を検出し、前記制御パラメータが前記第1しきい値よりも小さい第2しきい値(Eth2)未満となると制御破綻の予兆がなくなったと判定する、請求項のいずれか一項に記載のモータ制御装置である。
この構成によれば、制御破綻またはその予兆の検出と、それらからの復帰の検出とにヒステリシスを与えることができる。これにより、制御破綻またはその予兆に関する検出結果が頻繁に変わることを抑制できるから、制御の安定化を図ることができる。
前記制御パラメータとしては、前記加算角、前記検出トルク、前記トルク偏差、前記加算角に対する検出トルクの変化量の比などを例示することができる。
請求項記載の発明は、車両の舵取り機構(2)に駆動力を付与するモータと、前記モータを制御する請求項1〜のいずれか一項に記載のモータ制御装置とを含む、車両用操舵装置である。この構成によれば、制御破綻が発生する前に、制御破綻の予兆を報知することが可能な車両用操舵装置が得られる。
この場合に、前記トルク検出手段は、前記車両の操向のために操作される操作部材(10)に加えられる操舵トルクを検出するものであってもよい。また、前記指示トルク設定手段は、操舵トルクの目標値としての指示操舵トルクを設定するものであってもよい。そして、前記加算角演算手段は、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出される操舵トルクとの偏差に応じて前記加算角を演算するものであってもよい。
この構成によれば、指示操舵トルクが設定され、この指示操舵トルクと操舵トルク(検出値)との偏差に応じて前記加算角が演算される。これにより、操舵トルクが当該指示操舵トルクとなるように加算角が定められ、それに応じた制御角が定められることになる。したがって、指示操舵トルクを適切に定めておくことによって、モータから適切な駆動力を発生させて、これを舵取り機構に付与することができる。すなわち、ロータの磁極方向に従う回転座標系(dq座標系)の座標軸と前記仮想軸とのずれ量(負荷角)が指示操舵トルクに応じた値に導かれる。その結果、適切なトルクがモータから発生され、運転者の操舵意図に応じた駆動力を舵取り機構に付与できる。
操作部材と舵取り機構とが機械的に結合された車両用操舵装置(たとえば、電動パワーステアリング装置)では、モータの駆動力は舵取り機構にアシストトルク(操舵補助力)として与えられる。このアシストトルクを、モータ負荷(負荷トルク)から減じた値が、運転者が操作部材に与えるべき操舵トルクとなる。たとえば、操舵角が大きくなり、モータが出力可能な最大アシストトルクよりも負荷トルクが大きくなった場合には、負荷角の適値が存在しなくなるため、制御が破綻する。制御が破綻すると、操舵トルクが急激に変化して、操作部材に対して不意に衝撃が発生するおそれがある。この衝撃は、車両の運行上の問題となるものではないが、運転者が驚く可能性がある。この発明の構成を採用すれば、制御が破綻する前に、モータ制御態様が変更されることによって若干の違和感(振動や操舵トルクの変化)を生じさせることができ、これによって、制御破綻の予兆を運転者に報知することができる。したがって、その後に制御破綻により操作部材に衝撃が発生したとしても、運転者はこのような衝撃を予測できるため、驚かなくなる。
前記モータ制御装置は、前記操作部材の操舵角を検出する操舵角検出手段(4)をさらに含み、前記指示トルク設定手段は、前記操舵角検出手段によって検出される操舵角に応じて指示操舵トルクを設定するものであることが好ましい。この構成によれば、操作部材の操舵角に応じて指示操舵トルクが設定されるので、操舵角に応じた適切なトルクをモータから発生させることができ、運転者が操作部材に加える操舵トルクを操舵角に応じた値へと導くことができる。これにより、良好な操舵感を得ることができる。
前記指示トルク設定手段は、前記車両の車速を検出する車速検出手段(6)によって検出される当該車速に応じて指示操舵トルクを設定するものであってもよい。この構成によれば、車速に応じて指示操舵トルクが設定されるので、いわゆる車速感応制御を行うことができる。その結果、良好な操舵感を実現できる。たとえば、車速が大きいほど、すなわち、高速走行時ほど指示操舵トルクを小さく設定することより、すぐれた操舵感が得られる。
この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。 モータの構成を説明するための図解図である。 前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。 操舵角に対する指示操舵トルクの特性例を示す図である。 操舵トルクリミッタの働きを説明するための図である。 γ軸指示電流値の設定例を示す図である。 加算角リミッタの働きを説明するためのフローチャートである。 予兆検出部、制御態様変更部、破綻検出部および復帰制御部によって実行される全体的な処理(監視制御処理)の手順を示すフローチャートである。 破綻検出部によって実行される破綻検出処理の手順を示すフローチャートである。 予兆検出部によって実行される予兆検出処理の手順を示すフローチャートである。 この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 加算角補正部の入出力特性を示すグラフである。 加算角補正部の働きを説明するための図である。 この発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 破綻検出部および加算角補正部の働きを説明するためのフローチャートである。 この発明の第4の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。 破綻検出部および指示電流値補正部の働きを説明するためのフローチャートである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係るモータ制御装置を適用した電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置の一例)の電気的構成を説明するためのブロック図である。この電動パワーステアリング装置は、車両を操向するための操作部材としてのステアリングホイール10に加えられる操舵トルクTsを検出するトルクセンサ1と、車両の舵取り機構2に減速機構7を介して操舵補助力を与えるモータ3(ブラシレスモータ)と、ステアリングホイール10の回転角である操舵角を検出する舵角センサ4と、モータ3を駆動制御するモータ制御装置5と、当該電動パワーステアリング装置が搭載された車両の速度を検出する車速センサ6と、制御破綻の予兆の発生を運転者に警告するための警告装置40とを備えている。
モータ制御装置5は、トルクセンサ1が検出する操舵トルク、舵角センサ4が検出する操舵角および車速センサ6が検出する車速に応じてモータ3を駆動することによって、操舵状況および車速に応じた適切な操舵補助を実現する。
モータ3は、この実施形態では、三相ブラシレスモータであり、図2に図解的に示すように、界磁としてのロータ50と、このロータ50に対向するステータ55に配置されたU相、V相およびW相のステータ巻線51,52,53とを備えている。モータ3は、ロータの外部にステータを対向配置したインナーロータ型のものであってもよいし、筒状のロータの内部にステータを対向配置したアウターロータ型のものであってもよい。
各相のステータ巻線51,52,53の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ50の磁極方向にd軸(磁極軸)をとり、ロータ50の回転平面内においてd軸と直角な方向にq軸(トルク軸)をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ50とともに回転する回転座標系である。dq座標系では、q軸電流のみがロータ50のトルク発生に寄与するので、d軸電流を零とし、q軸電流を所望のトルクに応じて制御すればよい。ロータ50の回転角(ロータ角)θは、U軸に対するd軸の回転角である。dq座標系は、ロータ角θに従う実回転座標系である。このロータ角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換を行うことができる。
一方、この実施形態では、制御上の回転角を表す制御角θが導入される。制御角θは、U軸に対する仮想的な回転角である。この制御角θに対応する仮想的な軸をγ軸とし、このγ軸に対して90°進んだ軸をδ軸として、仮想二相回転座標系(γδ座標系。仮想回転座標系)を定義する。制御角θがロータ角θに等しいとき、仮想回転座標系であるγδ座標系と実回転座標系であるdq座標系とが一致する。すなわち、仮想軸としてのγ軸は実軸としてのd軸と一致し、仮想軸としてのδ軸は実軸としてのq軸と一致する。γδ座標系は、制御角θに従う仮想回転座標系である。UVW座標系とγδ座標系との座標変換は、制御角θを用いて行うことができる。
制御角θとロータ角θとの差を負荷角θ(=θ−θ)と定義する。
制御角θに従ってγ軸電流Iγをモータ3に供給すると、このγ軸電流Iγのq軸成分(q軸への正射影)がロータ50のトルク発生に寄与するq軸電流Iとなる。すなわち、γ軸電流Iγとq軸電流Iとの間に、次式(1)の関係が成立する。
=Iγ・sinθ …(1)
再び図1を参照する。モータ制御装置5は、マイクロコンピュータ11と、このマイクロコンピュータ11によって制御され、モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)12と、モータ3の各相のステータ巻線に流れる電流を検出する電流検出部13とを備えている。
電流検出部13は、モータ3の各相のステータ巻線51,52,53に流れる相電流I,I,I(以下、総称するときには「三相検出電流IUVW」という。)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ11は、CPUおよびメモリ(ROMおよびRAMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、操舵トルクリミッタ20と、指示操舵トルク設定部21と、トルク偏差演算部22と、PI(比例積分)制御部23と、加算角リミッタ24と、制御角演算部26と、指示電流値生成部30と、電流偏差演算部32と、PI制御部33と、γδ/UVW変換部34と、PWM(Pulse Width Modulation)制御部35と、UVW/γδ変換部36と、予兆検出部41と、制御態様変更部42と、破綻検出部43と、復帰制御部44とが含まれている。
指示操舵トルク設定部21は、舵角センサ4によって検出される操舵角と、車速センサ6によって検出される車速とに基づいて、指示操舵トルクTを設定する。たとえば、図4に示すように、操舵角が正の値(右方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは正の値(右方向へのトルク)に設定され、操舵角が負の値(左方向へ操舵した状態)のとき指示操舵トルクTは負の値(左方向へのトルク)に設定される。そして、操舵角の絶対値が大きくなるに従って、その絶対値が大きくなるように(図4の例では非線型に大きくなるように)指示操舵トルクTが設定される。ただし、所定の上限値(正の値。たとえば、+6Nm)および下限値(負の値。たとえば−6Nm)の範囲内で指示操舵トルクTの設定が行われる。また、指示操舵トルクTは、車速が大きいほど、その絶対値が小さくなるように設定される。すなわち、車速感応制御が行われる。
操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1によって検出される操舵トルクTを所定の上限飽和値+Tmax(+Tmax>0。たとえば+Tmax=7Nm)と下限飽和値−Tmax(−Tmax<0。たとえば−Tmax=−7Nm)との間に制限する。具体的には、操舵トルクリミッタ20は、図5に示すように、上限飽和値+Tmaxと下限飽和値−Tmaxの間では、トルクセンサ1の検出操舵トルクTをそのまま出力する。また、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが上限飽和値+Tmax以上であれば、上限飽和値+Tmaxを出力する。そして、操舵トルクリミッタ20は、トルクセンサ1の検出操舵トルクTが下限飽和値−Tmax以下であれば、下限飽和値−Tmaxを出力する。飽和値+Tmaxおよび−Tmaxは、トルクセンサ1の出力信号が安定な領域(信頼性のある領域)の境界を画定するものである。つまり、トルクセンサ1の出力信号は、上限飽和値Tmaxを超える区間、および下限飽和値−Tmaxを下回る区間では不安定であり、実際の操舵トルクに対応しなくなる。換言すれば、飽和値+Tmax,−Tmaxは、トルクセンサ1の出力特性に応じて定められる。操舵トルクリミッタ20によって制限処理を受けた操舵トルクを、トルクセンサ1によって検出された操舵トルク(「検出操舵トルクT」)と区別するために、「検出操舵トルクT」ということにする。
トルク偏差演算部22は、指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクTとトルクセンサ1によって検出され、操舵トルクリミッタ20による制限処理を受けた操舵トルクT(検出操舵トルクT)との偏差(トルク偏差)ΔT(=T−T)を求める。PI制御部23は、このトルク偏差ΔTに対するPI演算を行う。すなわち、トルク偏差演算部22およびPI制御部23によって、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くためのトルクフィードバック制御手段が構成されている。PI制御部23は、トルク偏差ΔTに対するPI演算を行うことで、制御角θに対する加算角αを演算する。したがって、前記トルクフィードバック制御手段は、加算角αを演算する加算角演算手段を構成している。
より具体的には、PI制御部23は、比例要素23aと、積分要素23bと、加算器23cとを備えている。ただし、Kは比例ゲイン、Kは積分ゲイン、1/sは積分演算子である。比例要素23aによって比例積分演算の比例項(比例演算値)が求められ、積分要素23bによって比例積分演算の積分項(積分演算値)が求められる。これらの演算結果(比例項および積分項)が加算器23cで加算されることによって、加算角αが求められる。
加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αに対して制限を加える加算角制限手段である。より具体的には、加算角リミッタ24は、所定の上限値UL(正の値)と下限値LL(負の値)との間の値に加算角αを制限する。上限値ULおよび下限値LLは、所定の制限値ωmax(ωmax>0。たとえばωmaxの既定値=45度)に基づいて定められる。この所定の制限値ωmaxの既定値は、たとえば、最大操舵角速度に基づいて定められる。最大操舵角速度とは、ステアリングホイール10の操舵角速度として想定され得る最大値であり、たとえば、800deg/sec程度である。
最大操舵角速度のときのロータ50の電気角の変化速度(電気角での角速度。最大ロータ角速度)は、次式(2)のとおり、最大操舵角速度と、減速機構7の減速比と、ロータ50の極対数との積で与えられる。極対数とは、ロータ50が有する磁極対(N極とS極との対)の個数である。
最大ロータ角速度=最大操舵角速度×減速比×極対数 …(2)
制御角θの演算間(演算周期)におけるロータ50の電気角変化量の最大値(ロータ角変化量最大値)は、次式(3)のとおり、最大ロータ角速度に演算周期を乗じた値となる。
ロータ角変化量最大値=最大ロータ角速度×演算周期
=最大操舵角速度×減速比×極対数×演算周期 …(3)
このロータ角変化量最大値が一演算周期間で許容される制御角θの最大変化量である。そこで、前記ロータ角変化量最大値を制限値ωmaxの既定値とすればよい。この制限値ωmaxを用いて、加算角αの上限値ULおよび下限値LLは、それぞれ次式(4)(5)で表すことができる。
UL=+ωmax …(4)
LL=−ωmax …(5)
加算角リミッタ24による制限処理後の加算角αが、制御角演算部26の加算器26Aにおいて、制御角θの前回値θ(n-1)(nは今演算周期の番号)に加算される(Z−1は信号の前回値を表す)。ただし、制御角θの初期値は予め定められた値(たとえば零)である。
制御角演算部26は、制御角θの前回値θ(n-1)に加算角リミッタ24から与えられる加算角αを加算する加算器26Aを含む。すなわち、制御角演算部26は、所定の演算周期毎に制御角θを演算する。そして、前演算周期における制御角θを前回値θ(n-1)とし、これを用いて今演算周期における制御角θである今回値θ(n)を求める。
破綻検出部43は、破綻検出処理を実行することにより、制御破綻が発生したことを検出するものである。制御破綻とは、負荷角θを適値に収束させることができない状態をいう。具体的には、破綻検出部43は、PI制御部23によって求められた加算角αの絶対値|α|が所定のしきい値D1以上となり、かつその状態が所定数の演算周期にわたって継続したとき、検出操舵トルクTが飽和したとき、または指示操舵トルクTとトルクセンサ1によって検出された検出操舵トルクTとの差の絶対値|T−T|が所定のしきい値A1以上となったときに、制御破綻が発生したことを検出する。検出操舵トルクTの飽和とは、検出操舵トルクTの絶対値|T|が所定のしきい値B1以上となることをいう。このような制御破綻は、たとえば、モータの出力可能最大トルクよりもモータ負荷が大きくなった場合、操舵速度が大きくなりすぎた場合などに発生する。
復帰制御部44は、破綻検出部43によって制御破綻の発生が検出されたときに、復帰制御処理を実行することによって、制御破綻状態を脱出させるものである。制御検出部43によって実行される破綻検出処理および復帰制御部44によって実行される復帰制御処理の詳細については、後述する。
予兆検出部41は、予兆検出処理を実行することにより、制御破綻の予兆を検出するものである。制御態様変更部42は、予兆検出部41によって予兆が検出されたときに、制御態様変更処理を行うことにより、制御破綻の予兆の発生を運転者に警告するものである。予兆検出部41によって実行される予兆検出処理および制御態様変更部42による制御態様変更処理の詳細については後述する。
指示電流値生成部30は、制御上の回転角である前記制御角θに対応する仮想回転座標系であるγδ座標系の座標軸(仮想軸)に流すべき電流値を指示電流値として生成するものである。具体的には、γ軸指示電流値Iγ およびδ軸指示電流値Iδ (以下、これらを総称するときには「二相指示電流値Iγδ 」という。)を生成する。指示電流値生成部30は、γ軸指示電流値Iγ を有意値とする一方で、δ軸指示電流値Iδ を零とする。より具体的には、指示電流値生成部30は、トルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTに基づいてγ軸指示電流値Iγ を設定する。
検出操舵トルクTに対するγ軸指示電流値Iγ の設定例は、図6に示されている。検出操舵トルクTが零付近の領域には不感帯NRが設定されている。γ軸指示電流値Iγ は、不感帯NRの外側の領域で急峻に立ち上がり、所定のトルク以上でほぼ一定値となるように設定される。これにより、運転者がステアリングホイール10を操作していないときには、モータ3への通電が停止され、不必要な電力消費が抑制される。
電流偏差演算部32は、指示電流値生成部30によって生成されたγ軸指示電流値Iγ に対するγ軸検出電流Iγの偏差Iγ −Iγと、δ軸指示電流値Iδ (=0)に対するδ軸検出電流Iδの偏差Iδ −Iδとを演算する。γ軸検出電流Iγおよびδ軸検出電流Iδは、UVW/γδ変換部36から偏差演算部32に与えられるようになっている。
UVW/γδ変換部36は、電流検出部13によって検出されるUVW座標系の三相検出電流IUVW(U相検出電流I、V相検出電流IおよびW相検出電流I)をγδ座標系の二相検出電流IγおよびIδ(以下総称するときには「二相検出電流Iγδ」という。)に変換する。これらが電流偏差演算部32に与えられるようになっている。UVW/γδ変換部36における座標変換には、制御角演算部26で演算される制御角θが用いられる。
PI制御部33は、電流偏差演算部32によって演算された電流偏差に対するPI演算を行うことにより、モータ3に印加すべき二相指示電圧Vγδ (γ軸指示電圧Vγ およびδ軸指示電圧Vδ )を生成する。この二相指示電圧Vγδ が、γδ/UVW変換部34に与えられる。
γδ/UVW変換部34は、二相指示電圧Vγδ に対して座標変換演算を行うことによって、三相指示電圧VUVW を生成する。三相指示電圧VUVW は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V からなる。この三相指示電圧VUVW は、PWM制御部35に与えられる。
PWM制御部35は、U相指示電圧V 、V相指示電圧V およびW相指示電圧V にそれぞれ対応するデューティのU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路12に供給する。
駆動回路12は、U相、V相およびW相に対応した三相インバータ回路からなる。このインバータ回路を構成するパワー素子がPWM制御部35から与えられるPWM制御信号によって制御されることにより、三相指示電圧VUVW に相当する電圧がモータ3の各相のステータ巻線51,52、53に印加されることになる。
電流偏差演算部32およびPI制御部33は、電流フィードバック制御手段を構成している。この電流フィードバック制御手段の働きによって、モータ3に流れるモータ電流が、指示電流値生成部30によって設定され必要に応じて指示電流値補正部31で補正された二相指示電流値Iγδ に近づくように制御される。
図3は、前記電動パワーステアリング装置の制御ブロック図である。ただし、説明を簡単にするために、加算角リミッタ24の機能は省略してある。
指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差(トルク偏差)ΔTに対するPI制御(Kは比例係数、Kは積分係数、1/sは積分演算子である。)によって、加算角αが生成される。この加算角αが制御角θの前回値θ(n-1)に対して加算されることによって、制御角θの今回値θ(n)=θ(n-1)+αが求められる。このとき、制御角θとロータ50の実際のロータ角θとの偏差が負荷角θ=θ−θとなる。
したがって、制御角θに従うγδ座標系(仮想回転座標系)のγ軸(仮想軸)にγ軸指示電流値Iγ に従ってγ軸電流Iγが供給されると、q軸電流I=Iγsinθとなる。このq軸電流Iがロータ50の発生トルクに寄与する。すなわち、モータ3のトルク定数Kをq軸電流I(=Iγsinθ)に乗じた値が、アシストトルクT(=K・Iγsinθ)として、減速機構7を介して、舵取り機構2に伝達される。このアシストトルクTを舵取り機構2からの負荷トルクTから減じた値が、運転者がステアリングホイール10に与えるべき操舵トルクTである。この操舵トルクTがフィードバックされることによって、この操舵トルクTを指示操舵トルクTに導くように系が動作する。つまり、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるべく、加算角αが求められ、それに応じて制御角θが制御される。
このように制御上の仮想軸であるγ軸に電流を流す一方で、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差ΔTに応じて求められる加算角αで制御角θを更新していくことにより、負荷角θが変化し、この負荷角θに応じたトルクがモータ3から発生するようになっている。これにより、操舵角および車速に基づいて設定される指示操舵トルクTに応じたトルクをモータ3から発生させることができるので、操舵角および車速に対応した適切な操舵補助力を舵取り機構2に与えることができる。すなわち、操舵角の絶対値が大きいほど操舵トルクが大きく、かつ、車速が大きいほど操舵トルクが小さくなるように、操舵補助制御が実行される。
このようにして、回転角センサを用いることなくモータ3を適切に制御して、適切な操舵補助を行うことができる電動パワーステアリング装置を実現できる。これにより、構成を簡単にすることができ、コストの削減を図ることができる。
この実施形態では、PI制御部23は、検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに一致させるために、アシストトルクを増加させる場合に加算角αを増加させ、アシストトルクを減少させる場合に加算角αを減少させるように動作するものとする。 図7は、加算角リミッタ24の働きを説明するためのフローチャートである。加算角リミッタ24は、PI制御部23によって求められた加算角αを上限値ULと比較し(ステップS1)、加算角αが上限値ULを超えている場合(ステップS1:YES)には、上限値ULを加算角αに代入する(ステップS2)。したがって、制御角θに対して上限値UL(=+ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが上限値UL以下であれば(ステップS1:NO)、加算角リミッタ24は、さらに、その加算角αを下限値LLと比較する(ステップS3)。そして、その加算角αが下限値未満であれば(ステップS3:YES)、下限値LLを加算角αに代入する(ステップS4)。したがって、制御角θに対して下限値LL(=−ωmax)が加算されることになる。
PI制御部23によって求められた加算角αが下限値LL以上上限値UL以下(ステップS3:NO)であれば、その加算角αがそのまま制御角θへの加算のために用いられる。
このようにして、加算角αを上限値ULと下限値LLとの間に制限することができるので、制御の安定化を図ることができる。より具体的には、電流不足時や制御開始時に制御不安定状態(アシスト力が不安定な状態)が発生しても、この状態から安定な制御状態への遷移を促すことができる。
図8は、予兆検出部41、制御態様変更部42、破綻検出部43および復帰制御部44によって実行される全体的な処理(監視制御処理)の手順を示すフローチャートである。この処理は所定の演算周期毎に実行される。
まず、破綻検出部43による破綻検出処理が行なわれる(ステップS11)。破綻検出処理において制御破綻の発生が検出されなかった場合には(ステップS12:NO)、予兆検出部41による予兆検出処理が行なわれる(ステップS13)。予兆検出処理において制御破綻の予兆が検出されなかった場合には(ステップS14:NO)、制御態様変更部42によって警告装置40が作動しているか否かが判別される(ステップS15)。なお、警告装置40は、後述するように、予兆検出部41によって制御破綻の予兆が検出された場合に、制御態様変更部42によって作動状態にされる。警告装置40としては、たとえば、表示ランプ、ブザーなどを用いることができる。
警告装置40が作動している場合には(ステップS15:YES)、制御態様変更部42によって警告装置40の作動が停止される(ステップS17)。そして、今演算周期での監視制御処理が終了する。前記ステップS15において、警告装置40が作動していない場合には、ステップS17の処理が行なわれることなく、今演算周期での監視制御処理が終了する。
前記ステップ13の予兆検出処理において、制御破綻の予兆が検出された場合には(ステップS14:YES)、制御態様変更部42による制御態様変更処理が行なわれる(ステップS16)。制御態様変更部42は、たとえば、警報装置40を作動状態にさせるとともに、加算角リミッタ24によって得られる加算角αを変動させる。そして、今演算周期での監視制御処理が終了する。
前記ステップS11の破綻検出処理において、破綻が検出された場合には(ステップS12:YES)、復帰制御部44による復帰制御処理が行なわれる(ステップS18)。そして、今演算周期での監視制御処理が終了する。
図9は、破綻検出部43によって実行される破綻検出処理の手順を示すフローチャートである。破綻検出部43は、まず、PI制御部23によって得られる加算角αの絶対値|α|が所定のしきい値D1以上であるか否かを判別する(ステップS21)。加算角αの絶対値|α|が前記しきい値D1以上である場合には(ステップS21:YES)、破綻検出部43は、その状態が所定数の演算周期にわたって継続しているか否かを判別する(ステップS22)。加算角αの絶対値|α|がしきい値D1以上である状態が、前記所定数の演算周期にわたって継続している場合には、破綻検出部43は、制御が破綻していると判断し、復帰制御部44に制御破綻の発生を通知する(ステップS25)。
前記しきい値D1は、前記所定の制限値ωmaxと等しい値であってもよい。この場合において、前記所定数の演算周期は、前記最大操舵角速度での最長操舵継続時間の想定値以上の値とすればよい。これにより、最大操舵角速度での最大操舵継続時間として想定される時間よりも長時間にわたって制御角θが加算角リミッタ24による制限を受け続けるときに、制御破綻が発生したものと判断できる。
前記ステップS21において、加算角αの絶対値|α|がしきい値D1未満であると判別された場合には(ステップS21:NO)、ステップS23に移行する。また、前記ステップS22において、加算角αの絶対値|α|がしきい値D1以上である状態が、前記所定数の演算周期にわたって継続していないと判別された場合にも(ステップS22:NO)、ステップS23に移行する。
ステップS23においては、破綻検出部43は、トルクセンサ1によって検出された検出操舵トルクTが飽和状態であるか否かを判別する。具体的には、破綻検出部43は、トルクセンサ1によって検出された検出操舵トルクTの絶対値|T|が所定のしきい値B1以上であるかを判別し、検出操舵トルクTの絶対値|T|がしきい値B1以上である場合に、検出操舵トルクTが飽和状態であると判別する。前記しきい値B1は、たとえば、前述した飽和値Tmax(図5参照)に設定される。検出操舵トルクTの絶対値|T|が前記しきい値B1以上である場合には(ステップS23:YES)、破綻検出部43は、制御が破綻していると判断し、復帰制御部44に制御破綻の発生を通知する(ステップS25)。
検出操舵トルクTの絶対値|T|が前記しきい値B1未満である場合には(ステップS23:NO)、破綻検出部43は、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差の絶対値|T−T|が所定のしきい値A1以上であるか否かを判別する(ステップS24)。指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差の絶対値|T−T|がしきい値A1以上である場合には(ステップS24:YES)、破綻検出部43は、制御が破綻していると判断し、復帰制御部44に制御破綻の発生を通知する(ステップS25)。前記絶対値|T−T|が前記しきい値A1以上となった場合には、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差(絶対値)が連続して広がっている状況にあると想定されるので、破綻検出部43は制御が破綻していると判断する。
前記ステップS24において、前記絶対値|T−T|が前記しきい値A1未満である場合には、破綻検出部43は、制御が破綻していないと判断する。
復帰制御部44は、破綻検出部43から制御破綻の発生が通知されたときに、復帰制御処理を行なう。具体的には、復帰制御部44は、復帰制御処理として、たとえば、次のような初期化処理を行う。この初期化処理は、たとえば、(a)PI制御部23における積分値(トルクフィードバックの積分項)のリセット(積分項を零にする)、(b)PI制御部23が演算する加算角αのリセット(加算角αを零にする)、(c)制御角演算部26における前回値(前演算周期における制御角θ)のリセット(前回値を零にする)、および(d)PI制御部33における積分値(電流フィードバック制御の積分項)のリセット(積分項を零にする)のうちの一つ以上を含む。加算角αのリセットは、PI制御部23における比例項および積分項をリセットすることで達成できる。
このような初期化処理が行なわれることによって、制御破綻状態を速やかに脱して、制御を再開することができる。これにより、制御角θの適値への収束を促すことができる。
復帰処理部44は、復帰制御処理として、前記初期化処理に代えて、または当該初期化処理に加えて、次のような処理(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)の一つ以上を行なうようにしてもよい。
(イ)制御角補正処理:制御角演算部26で求められた制御角θに所定値Δθ(たとえば、Δθ=5度から10度)を加算(または減算)する処理。この処理により、制御角θがその適値の近傍の値をとる可能性を高めることができ、その結果、制御破綻状態を脱して、制御角θを適値へと収束させることができる。
(ロ)ゲイン変更処理:PI制御部23のゲイン(比例ゲインおよび積分ゲイン)を減少補正する処理。PI制御部23のゲインが減少補正されることによって、加算角αの絶対値が小さくなる。これにより、制御角θを小刻みに変化させることができるので、その適値への収束を促すことができる。
(ハ)制限値変更処理:加算角リミッタ24の制限値ωmaxを、その既定値(たとえば45度)から、それよりも小さな値に変更する処理。制限値が既定値より小さな値に変更されると、制御角θが小刻みに変動するので、適値に近似した値をとることができるから、適値への収束を促すことができる。
(二)指示電流値補正処理:指示電流値生成部30によって生成されるγ軸指示電流値Iγ を減少補正する処理。γ軸指示電流値Iγ が減少補正されると、モータ3の発生トルクは小刻みに変化することになる。そのため、q軸電流の変化が小さくなり、実質的な制御ゲインが小さくなる。これにより、制御角θが適値へと収束しやすくなるので、制御破綻状態から脱することができる。
図10は、予兆検出部41によって実行される予兆検出処理の手順を示すフローチャートである。予兆検出部41は、まず、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差(トルク偏差)の絶対値|T−T|が所定のしきい値A2以上であるか否かを判別する(ステップS31)。このしきい値A2は、制御破綻の予兆を検出できるように、破綻検出のために用いられるしきい値A1(図9のステップS24参照)より少し小さな値に設定されている。指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差の絶対値|T−T|が前記しきい値A2以上である場合には(ステップS31:YES)、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTに追従できなくなっていると考えられる。そこで、予兆検出部41は、制御破綻の予兆の発生を制御態様変更部42に通知する(ステップS36)。
前記ステップS31において、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの差の絶対値|T−T|がしきい値A2未満である場合には(ステップS31:NO)、予兆検出部41は、トルクセンサ1によって検出された検出操舵トルクTの絶対値|T|が所定のしきい値B2以上であるかを判別する(ステップS32)。このしきい値B2は、制御破綻の予兆を検出できるように、破綻検出のために用いられるしきい値B1(図9のステップS23参照)より少し小さな値に設定されている。検出操舵トルクTの絶対値|T|がしきい値B2以上である場合には、予兆検出部41は、制御破綻の予兆の発生を制御態様変更部42に通知する(ステップS36)。
前記ステップS32において、検出操舵トルクTの絶対値|T|が前記しきい値B2未満である場合には(ステップS32:NO)、予兆検出部41は、PI制御部23によって演算よって演算される加算角αに対する検出操舵トルク変化量ΔTの比の絶対値|ΔT/α|が所定のしきい値C以下であるか否かを判別する(ステップS33)。検出操舵トルク変化量ΔTは、今演算周期での検出操舵トルクT(n)から、前演算周期での検出操舵トルクT(n−1)を減算することによって求めることができる。加算角αに対する検出操舵トルク変化量ΔTの比ΔT/αは、操舵トルク変化量ΔTを、前演算周期または今演算周期においてPI制御部23によって演算された加算角αで除算することによって求めることができる。加算角αに対する検出操舵トルク変化量ΔTの比の絶対値|ΔT/α|がしきい値C以下である場合には(ステップS33:YES)、予兆検出部41は、制御破綻の予兆の発生を制御態様変更部42に通知する(ステップS36)。
PI制御部23は、加算角αの変化に応じて、アシストトルクを変化させることにより、操舵トルクを制御するものである。このようなトルクフィードバック制御が正常に行なわれるためには、加算角αに対する検出操舵トルク変化量ΔTの比の絶対値|ΔT/α|が所定値より大きな値であることが必要である。この値|ΔT/α|が過小である場合とは、加算角αを変化させているにもかかわらず検出操舵トルクTを指示操舵トルクTに近づけることができない場合であることを意味する。このようなことから、前記絶対値|ΔT/α|が所定値以下になった場合には、トルク制御が正常に行なわれなくなった可能性が高いと推定できる。そこで、前記絶対値|ΔT/α|が所定のしきい値C以下である場合には、制御破綻の予兆が発生したと判断するようにしている。
前記ステップS33において、加算角αに対する検出操舵トルク変化量ΔTの比の絶対値|ΔT/α|がしきい値Cより大きい場合には(ステップS33:NO)、予兆検出部41は、PI制御部23によって得られる加算角αの絶対値|α|が所定のしきい値D2以上であるか否かを判別する(ステップS34)。このしきい値D2は、制御破綻の予兆を検出できるように、破綻検出のために用いられるしきい値D1(図9のステップS21参照)より少し小さな値に設定されている。加算角αの絶対値|α|がしきい値D2以上である場合には(ステップS34:YES)、予兆検出部41は、制御破綻の予兆の発生を制御態様変更部42に通知する(ステップS36)。
前記ステップS34において、加算角αの絶対値|α|がしきい値D2未満である場合には(ステップS34:NO)、予兆検出部41は、PI制御部23によって得られる加算角αの変化量Δαの符号とトルクセンサ1によって検出される検出操舵トルクTの変化量ΔTの符号が同符号であるか否かを判別する(ステップS35)。具体的には、今演算周期の加算角α(n)から前演算周期の加算角α(n−1)を減算した値を加算角変化量Δαとし、今演算周期の検出操舵トルクT(n)から前演算周期の検出操舵トルクT(n−1)を減算した値を操舵トルク変化量ΔTとすると、予兆検出部41は、それらの変化量の乗算値Δα・ΔTが零より大きいか否かを判別する。Δα・ΔT≧0である場合に、加算角αの変化量Δαの符号と検出操舵トルクTの変化量ΔTの符号とが同符号となる。加算角αの変化量Δαの符号と検出操舵トルクTの変化量ΔTの符号とが同符号である場合には(ステップS35:YES)、予兆検出部41は、制御破綻の予兆の発生を制御態様変更部42に通知する(ステップS36)。
前述したように、この実施形態では、PI制御部23は、アシストトルクを増加させる場合には、加算角αを増加させ、アシストトルクを減少させる場合には、加算角αを減少させるように動作する。したがって、加算角αが増加すると、アシストトルクが増加し、操舵トルクが減少する。一方、加算角αが減少すると、アシストトルクが減少し、操舵トルクが増加する。このようなトルクフィードバック制御が正常に行なわれている場合には、加算角αの変化方向と検出操舵トルクTの変化方向とは一致しない。そこで、両者の変化方向が一致するようになった場合には、制御破綻の予兆であると考えることができる。このようなことから、変化量Δαの符号と変化量ΔTの符号とが同符号となった場合(変化方向が一致する場合)に、制御破綻の予兆が発生したと判断している。
なお、PI制御部23が、アシストトルクを増加させる場合には、加算角αを減少させ、アシストトルクを減少させる場合には、加算角αを増加させるように動作する場合には、加算角αが増加すると、アシストトルクが減少し、操舵トルクが増加する。つまり、加算角αの変化方向と検出操舵トルクTの変化方向とは一致する。したがって、PI制御部23が、アシストトルクを増加させる場合に加算角αを減少させるように動作する場合には、変化量Δαの符号と変化量ΔTの符号とが異符号となった場合(変化方向が一致しない場合)に、制御破綻の予兆が発生したと判断するようにすればよい。
前記ステップS35において、加算角αの変化量Δαの符号と検出操舵トルクTの変化量ΔTの符号とが異符号である場合(Δα・ΔT<0)には(ステップS35:N0)、予兆検出部41は、制御破綻の予兆が発生していないと判断し、その旨を制御態様変更部42に通知する(ステップS37)。
制御態様変更部42は、予兆検出部41から制御破綻の予兆の発生が通知されると(図10のステップS36参照)、制御態様変更処理(図8のステップS16参照)を実行する。制御態様変更処理は、運転者に制御破綻の予兆を警告するために行なわれる。具体的には、制御態様変更部42は、予兆検出部41から予兆の発生が通知されると、警告装置40を作動させる。
さらに、制御態様変更部42は、加算角リミッタ24から得られる加算角αを変動させて、操舵トルクを変動(振動)させる。加算角αの変動は、加算角リミッタ24から得られる加算角αを補正することによって達成できる。具体的には、加算角αを補正するための乗算係数(補正係数)として、k1,k2の2種類を用意しておき、それらの係数k1,k2を周期的に切換える。k1は、たとえば、1.0に設定され、k2は、たとえば0.9に設定される。そして、係数k1を用いて加算角αを補正する第1期間と、係数k2を用いて加算角αを補正する第2期間とを、交互に繰り返すようにする。第1期間は、たとえば50msに設定され、第2期間はたとえば2msに設定される。
まず、係数k1(=1.0)を用いた加算角補正(この場合には、実際には、加算角αは変更されない)が50msの間、行なわれた後、係数k2(=0.9)を用いた加算角補正が2msの間、行なわれる。そして、予兆検出部41から予兆が発生していない旨が通知されるまで、このような補正処理が繰り返される。トルクフィードバック制御の演算周期がたとえば2msである場合には、予兆検出部41によって予兆が検出されている間においては、25回の演算周期にわたって係数k1を用いた加算角補正が行われ、その次の1回の演算周期において係数k2を用いた加算角補正が行われ、以後、このような補正動作が繰り返される。このように、加算角αが変動されると、指示操舵トルクTを中心として操舵トルクが変動し、ステアリングホイール10が振動するので、運転者は制御破綻の予兆が発生していることを認識できるようになる。
制御が破綻すると、操舵トルクが急激に変化して、ステアリングホイール10に対して衝撃が不意に発生するおそれがある。そうすると、運転者が驚く可能性がある。この実施形態では、制御が破綻する前に制御破綻の予兆を運転者に警告することができるので、制御破綻を予告することができる。したがって、その後に制御破綻により衝撃が発生したとしても、運転者はこのような衝撃を予測できるため、驚かなくなる。
なお、制御態様変更部42は、上記のように「加算角リミッタ24によって得られる加算角α」を変動させる代わりに、「指示操舵トルク設定部21によって設定される指示操舵トルクT」、「制御角演算部26によって演算される制御角θ」、「指示電流値生成部30によって生成されるγ軸指示電流値Iγ 」、「PI制御部33によって演算される二相指示電圧Vγδ 」または「γδ/UVW変換部34によって生成される三相指示電圧VUVW 」を変動させることによって、操舵トルクを変動(振動)させるようにしてもよい。
制御態様変更部42は、制御破綻の予兆が発生していない旨が予兆検出部41から通知されると(図10のステップS37参照)、警告装置40が作動中であるか否かを判別し(図8のステップS15参照)、警告装置40が作動中である場合には、警告装置40の作動を停止させる(図8のステップS17参照)。
図11は、この発明の第2の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図11において、前述の図1の各部に対応する部分には図1と同じ符号を付して示す。
この実施形態では、図1に示されている予兆検出部41および制御態様変更部42は設けられてない。この実施形態では、加算角リミッタ24によって得られる加算角αを補正する加算角補正部25が、マイクロコンピュータ11の機能処理部として備えられている。加算角補正部25は、制御破綻の予兆を検出して、運転者に警告を与えるために設けられている。
図12は、加算角補正部25の入出力特性を示すグラフである。加算角補正部25の入出力特性は、入力値αin(加算角リミッタ24によって得られる加算角α)の絶対値が所定のしきい値α(>0)より小さい範囲内では、出力値αoutが入力値αinと等しくなる特性となる。入力値αinの絶対値が前記しきい値α以上の範囲では、加算角補正部25の入出力特性は、出力値αoutの絶対値が入力値αinの絶対値に比べて小さくなりかつ入力値αinの絶対値が大きくなるほど両者の差が大きくなるような特性となる。
図13に入力値αinの正の領域を拡大して示す。図13において、D1は破綻検出に用いられるしきい値(図9ステップS21参照)である。つまり、前述したように、PI制御部23によって演算された加算角αがしきい値D1以上である状態が所定数の演算周期にわたって継続したときに、制御破綻が発生したと判定される。また、ωmaxは、加算角リミッタ24の制限値(既定値)である。つまり、PI制御部23によって演算された加算角αの絶対値は、加算リミッタ24によって、制限値ωmax以下の値に制限される。なお、しきい値D1は、図13の例では、制限値ωmaxより大きく設定されている。
この実施形態では、加算角リミッタ24によって得られる加算角α(入力値αin)の絶対値が、前記しきい値α以上である場合を、制御破綻の予兆が発生していると推定するようにしている。また、この予兆推定範囲においては、入力値αinの絶対値が大きいほど、予兆レベルが高い、すなわち制御破綻により近いと推定するようにしている。
図13に示すように、たとえば、加算角補正部25の入力値αinがしきい値αより大きな値αになった場合には、加算角補正部25の出力値αoutは、当該入力値αより小さな値α′となる。このため、必要な大きさのアシストトルクが得られなくなり、操舵トルクが大きくなる。これにより、ステアリングホイール10の操舵が重くなり、運転者が違和感を感じるようになるので、制御破綻の予兆を運転者に警告することが可能となる。出力値αoutと入力値αinとの差の絶対値|αin−αout|を補正量Δα(減少補正量)と定義すると、この場合の補正量Δαは、|α−α′|となる。
また、入力値αinが前記入力値αより大きな値αとなった場合にも、出力値αoutは、当該入力値αより小さな値α′となる。この場合の補正量Δαは、|α−α′|となり、前記補正量Δαより大きくなる。このように、加算角αの絶対値が大きくなるほど、すなわち、予兆レベルが高くなるほど、補正量Δαは大きくなる。
前述したように、この実施形態では、加算角リミッタ24によって得られる加算角α(入力値αin)の絶対値が、前記しきい値α以上である場合を、制御破綻の予兆が発生していると推定するようにしている。たとえば、指示操舵トルクTに対して検出操舵トルクTが大きく、PI制御部23によって演算された加算角αの値が、図13に示すαであったとする。この場合、PI制御部23によって演算された加算角αは、加算角補正部25によって、必要なアシストトルクに対応する加算角である適値αよりも小さな値α′に補正される。この補正により、必要なアシストトルクが得られなくなるため、次の演算周期においては、指示操舵トルクTと検出操舵トルクTとの偏差の絶対値|ΔT|が大きくなる。このため、PI制御部23によって演算される加算角αは、適値αから離れた大きな値(たとえば、図13に示す値α)となる。このように、PI制御部23によって演算される加算角αが適値αから離れた大きな値αとなると、加算角補正部25の補正によって得られる加算角αoutは、適値αより大きな値α′となってしまう。
そうすると、今度は、必要なアシストトルクより大きなアシストトルクが発生するので、検出操舵トルクTが指示操舵トルクTより小さくなる。このため、PI制御部23によって演算される加算角αが前回値より減少し、たとえば図13に示す値αに近い値となる。このように、PI制御部23によって演算される加算角αがαに近い値となると、加算角補正部25の補正によって得られる加算角αoutは、適値αより小さな値(α′に近い値)となり、必要なアシストトルクが得られなくなる。この結果、加算角αは増加し、たとえば、図13に示す値αに近い値となる。以下、同様な動作が繰り替えされるので、加算角αが適値αを中心として変動する。このため、操舵トルクが変動し、ステアリングホイール10が振動する。したがって、運転者は、制御破綻の予兆が発生していることを認識できるようになる。
図14は、この発明の第3の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図14において、前述の図1の各部に対応する部分には図1と同じ符号を付して示す。
この実施形態では、マイクロコンピュータ11は、機能処理部として、加算角補正部60を含む。加算角補正部60は、破綻検出部43から制御破綻の発生が通知されるようになっている。制御破綻が通知されると、加算角補正部60は、加算角αを補正する。具体的には、加算角補正部60は、所定の基本値α(0<α<ωmax)に対して正符号「+」または負符号「−」を付与した値を加算角αとして設定する。さらに詳細には、加算角補正部60は、基本値αに対して検出操舵トルクTに応じた符号を付して加算角目標値αを設定し、この加算角目標値αに向けて加算角αを漸次的に変化させる。制御破綻が発生していないときは、加算角リミッタ24が生成する加算角αは、加算角補正部60による補正を受けることなく、制御角演算部26に与えられる。
図15は、破綻検出部43および加算角補正部60の働きを説明するためのフローチャートである。破綻検出部43は、たとえば、検出操舵トルク絶対値|T|が第1トルクしきい値Eth1(たとえば、Eth1=7Nm)を超えている状態が一定時間(たとえば0.01秒)以上継続すると、制御破綻の発生を検出する(ステップS41)。検出操舵トルク絶対値|T|が第1トルクしきい値Eth1を超えた状態が継続する場合とは、モータトルク(アシストトルク)の不足状態が継続している場合である。たとえば、電流値が不足していて、制御角θを適切なアシストトルクを発生する値へと収束させることができない場合が相当する。
ステップS41の条件が充足されると、破綻検出部43は、破綻検出フラグをオン状態に設定する(ステップS42)。一方、破綻検出部43は、ステップS41の条件が充足されない場合において、破綻検出フラグがオン状態のときには、検出操舵トルク絶対値|T|が第2トルクしきい値Eth2(<Eth1。たとえば、Eth2=5Nm)未満であることを条件に(ステップS43)、制御破綻状態が解消したものと判定して、破綻検出フラグをオフ状態とする(ステップS44)。
加算角補正部60は、破綻検出フラグがオフのときは(ステップS45:NO)、以下の処理を行わず、加算角リミッタ24からの加算角αをそのまま制御角演算部26に与える。破綻検出フラグがオンのときは(ステップS45:YES)、加算角補正部60は、検出操舵トルクTの正負を判定する(ステップS46)。検出操舵トルクTが零または正の値であるとき(ステップS46:YES)、加算角補正部60は、所定の基本値α(>0。たとえばα=5度)に正符号を付して(すなわち、基本値αをそのまま用いて)、加算角目標値α(=+α)を設定する(ステップS47)。検出操舵トルクTが負の値であるとき(ステップS46:NO)、加算角補正部60は、前記基本値αに負符号を付して、加算角目標値α(=−α)を設定する(ステップS48)。そして、加算角補正部60は、現在の加算角αが加算角目標値αに漸次的に近づくように、加算角αを漸増または漸減させる(ステップS49)。
このようにこの実施形態によれば、制御破綻のときにも、検出操舵トルクTの方向に応じて加算角αを設定できるので、妥当な操舵補助を継続することができるから、運転者はマニュアルステアよりも軽い操舵力で操舵することができる。また、基本値αを充分に小さな値に定めておくことにより、制御角θが小刻みに変化することになる。そのため、制御角θが適値に収束しやすくなるので、制御破綻からの復帰を促すことができる。また、加算角αは漸次的に変化させられるから、制御態様が急変することがない。これにより、操舵感の急変を抑制できる。
なお、制御破綻ではなく制御破綻の予兆を検出して、加算角αの補正を行う構成としてもよい。すなわち、予兆検出部41および制御態様変更部42により、図15に示した処理と類似の処理を行うようにしてもよい。この場合には、第1トルクしきい値Eth1および第2トルクしきい値Eth2をそれぞれ前述の例よりも小さく設定するとよい。これにより、制御破綻の予兆が検出されると、加算角αが補正される結果、操舵感が変化する。これにより、運転者に対して、制御破綻の予兆を報知できる。
図16は、この発明の第4の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を説明するためのブロック図である。この図16において、前述の図14の各部に対応する部分には図1と同じ符号を付して示す。
この実施形態では、マイクロコンピュータ11は、機能処理部として、指示電流値補正部70を含む。指示電流値補正部70は、破綻検出部43から制御破綻の発生が通知されるようになっている。制御破綻が通知されると、指示電流値補正部70は、指示電流値Iγδ を補正する。具体的には、指示電流値補正部70は、制御破綻が検出されていないときには、指示電流値Iγδ を通常時電流値とする。通常時電流値とは、指示電流値生成部30が生成する基本値(図6参照)である。また、指示電流値補正部70は、制御破綻が通知されると、指示電流値Iγδ を、通常時電流値よりも小さな破綻時電流値とする。破綻時電流値は、たとえば、通常時電流値の30%程度の値であってもよい。さらに詳細には、指示電流値補正部70は、制御破綻時には、制御破綻時電流値をγ軸指示電流目標値I に設定し、このγ軸指示電流目標値I に向けてγ軸指示電流値Iγ を漸次的に変化させる。制御破綻が発生していないときは、指示電流値補正部70は、通常時電流値をγ軸指示電流目標値I に設定し、このγ軸指示電流目標値I に向けてγ軸指示電流値Iγ を漸次的に変化させる。
図17は、破綻検出部43および指示電流値補正部70の働きを説明するためのフローチャートである。この図17において、前述の図15に示されたステップと同様の処理が行われるステップには同一参照符号を付して示す。
破綻検出部43は、第3の実施形態の場合と同様にして制御破綻の発生の有無を判定し、制御破綻が発生していれば破綻検出フラグをオンし、制御破綻が発生していないか、または解消されれば破綻検出フラグをオフする(ステップS41〜44)。
指示電流値補正部70は、破綻検出フラグがオフのときは(ステップS55:NO)、通常時電流値をγ軸指示電流目標値I に設定する(ステップS56)。また、指示電流値補正部70は、破綻検出フラグがオンのときは(ステップS55:YES)、制御破綻時電流値をγ軸指示電流目標値I に設定する(ステップS57)。そして、指示電流値補正部70は、γ軸指示電流値Iγ がγ軸指示電流目標値I へと漸次的に近づくように、γ軸指示電流値Iγ を現在値から漸増または漸減させる(ステップS58)。こうして補正されたγ軸指示電流値Iγ が、電流偏差演算部32に与えられる。
このようにこの実施形態によれば、制御破綻のときには、γ軸指示電流値Iγ を漸次的低減補正して、操舵補助が継続される。これにより、マニュアルステアよりも軽い操舵力での操舵を継続できる。また、γ軸指示電流値Iγ が低減されることによって、制御の安定化を図ることができ、制御破綻からの復帰を促すことができる。しかも、制御破綻から復帰するまでは、γ軸指示電流値Iγ が小さく抑えられるので、制御破綻から復帰してγ軸指示電流値Iγ が通常値に戻されたときに、電流不足による制御破綻が生じるまでに余裕ができる。これにより、制御破綻と制御破綻からの復帰とを繰り返すモードを抑制できる。また、γ軸指示電流値Iγ は漸次的に変化させられるから、制御態様が急変することがない。これにより、操舵感の急変を抑制できる。
なお、制御破綻ではなく制御破綻の予兆を検出して、γ軸指示電流値Iγ の補正を行う構成としてもよい。すなわち、予兆検出部41および制御態様変更部42により、図17に示した処理と類似の処理を行うようにしてもよい。この場合には、第1トルクしきい値Eth1および第2トルクしきい値Eth2をそれぞれ前述の例よりも小さく設定するとよい。これにより、制御破綻の予兆が検出されると、γ軸指示電流値Iγ が低減補正される結果、操舵感が変化する。これにより、運転者に対して、制御破綻の予兆を報知できる。
また、この実施形態によるγ軸指示電流値Iγ の補正を、第3の実施形態(図15参照)による加算角αの補正と併用してもよい。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、PI制御部23によって加算角αを求めているが、PI制御部23に代えて、PID(比例・積分・微分)演算部を用いて加算角αを求める構成とすることもできる。
また、前述の第3および第4の実施形態において、制御破綻検出と、制御破綻からの復帰判定とに異なるしきい値を適用してヒステリシスを与えた例を示したが、第1および第2実施形態における制御破綻検出やその予兆の検出とそれらからの復帰とに関しても、同様なヒステリシスを与えてもよい。これにより、制御破綻またはその予兆の検出とそれらからの復帰とが頻繁に生じることがなくなるので、制御の安定化を図ることができ、その結果、操舵感を向上することができる。
また、前述の実施形態では、回転角センサを備えずに、専らセンサレス制御によってモータ3を駆動する構成について説明したが、レゾルバ等の回転角センサを備え、この回転角センサの故障時に前述のようなセンサレス制御(負荷角調整法による制御)を行う構成としてもよい。これにより、回転角センサの故障時にもモータ3の駆動を継続できるから、操舵補助を継続できる。
この場合、回転角センサの故障により前述のようなセンサレス制御に切り換わった時点において、センサレス制御に切り換わったことを運転者に報知するために、警報を発生するようにしてもよい。警報を発生する手段としては、たとえば、警報ランプ等を用いた光による警報、ブザー等を用いた音による警報を用いることができる。ただし、制御破綻の予兆の発生を報知するための警報とは、大きさや、パターンを変えるようにする。
また、センサレス制御に切り換わったことを運転者に報知するために、前述した制御態様変更処理と同様な手法により、操舵トルクを変動(振動)させるようにしてもよい。ただし、制御破綻の予兆の発生を報知するための振動とは、大きさや、パターンを変えるようにする。
さらに、センサレス制御に切り換わった後においては、アシストを間欠的に実施するようにしてもよい。この際、アシストが実施される一回当たりの継続時間(実施時間)を、アシストの実施が停止される一回当たりの継続時間(非実施時間)より長く設定することが好ましい。具体的には、モータ3の駆動をオン、オフするためのモータリレーを設けておき、このリレーをオン、オフの間での交互に切り替える。この際、リレーがオンされる一回当たりの継続時間(オン時間)が、リレーがオフされる一回当たりの継続時間(オフ時間)より長くなるように制御する。たとえば、オン時間が3secに設定され、オフ時間が0.1secに設定される。
また、モータリレーを制御する代わりに、電流偏差演算部32に与えられるγ軸指示電流値Iγ を、零と零以外の値(既定値)との2値の間で交互に切換えるようにしてもよい。この際、γ軸指示電流値Iγ が零以外の値とされる一回あたりの継続時間(実施時間)が、γ軸指示電流値Iγ が零とされる一回あたりの継続時間(非実施時間)より長くなるように制御する。たとえば、実施時間が3secに設定され、非実施時間が0.1secに設定される。
さらに、前述の実施形態では、電動パワーステアリング装置にこの発明が適用された例について説明したが、この発明は、電動ポンプ式油圧パワーステアリング装置のためのモータの制御や、パワーステアリング装置以外にも、ステア・バイ・ワイヤ(SBW)システム、可変ギヤレシオ(VGR)ステアリングシステムその他の車両用操舵装置に備えられたブラシレスモータの制御のために用いることができる。むろん、車両用操舵装置に限らず、他の用途のモータの制御のためにも本発明のモータ制御装置を適用できる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…トルクセンサ、3…モータ、5…モータ制御装置、11…マイクロコンピュータ、23…PI制御部、26…制御角演算部、50…ロータ、51,52,53…ステータ巻線、55…ステータ

Claims (7)

  1. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
    前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段と、
    前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段とを含み、
    前記予兆検出手段は、前記加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が加算角しきい値以上であるという第1条件、前記トルク検出手段によって検出される検出トルクの絶対値がトルクしきい値以上であるという第2条件、前記トルク偏差の絶対値がトルク偏差しきい値以上であるという第3条件、加算角に対する前記検出トルクの変化量の比の絶対値が加算角・トルク変化量比しきい値以下であるという第4条件、加算角の変化方向と前記検出トルクの変化方向とが予め定められた関係であるという第5条件のうち、少なくとも一つの条件が満たされた場合に、制御破綻の予兆を検出するものであり、
    前記制御態様変更手段は、前記駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクが前記指示トルクを中心に変動するように、前記加算角演算手段によって演算される加算角、前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルク、前記制御角演算手段によって演算される制御角、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を変動させるものである、モータ制御装置。
  2. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
    前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    制御破綻の予兆レベルに応じてモータ制御態様を変更するために、前記加算角演算手段によって演算される加算角の絶対値が増加するに従って増加する減少補正量により加算角の絶対値を減少補正する制御態様変更手段とを含む、モータ制御装置。
  3. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
    前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    制御破綻の予兆の指標となる所定の制御パラメータとしきい値とを比較することにより、制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段と、
    前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、前記加算角を所定の目標値まで漸増または漸減させることにより、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段とを含む、モータ制御装置。
  4. 前記制御態様変更手段は、制御破綻の予兆が検出されたときに、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を所定の目標値まで漸増または漸減させるものである、請求項記載のモータ制御装置。
  5. ロータと、このロータに対向するステータとを備えたモータを制御するためのモータ制御装置であって、
    前記モータによって駆動される駆動対象に加えられる、モータトルク以外のトルクを検出するためのトルク検出手段と、
    前記駆動対象に加えられるべき指示トルクを設定する指示トルク設定手段と、
    制御上の回転角である制御角に従う回転座標系の軸電流値で前記モータを駆動する電流駆動手段と、
    前記指示トルク設定手段によって設定される指示トルクと前記トルク検出手段によって検出されるトルクとのトルク偏差に応じて、前記制御角に加算すべき加算角を演算する加算角演算手段と、
    所定の演算周期毎に、前記加算角演算手段によって演算された加算角を制御角の前回値に加算することによって、制御角の今回値を求める制御角演算手段と、
    制御破綻の予兆の指標となる所定の制御パラメータとしきい値とを比較することにより、制御破綻の予兆を検出するための予兆検出手段と、
    前記予兆検出手段によって制御破綻の予兆が検出されたときに、前記電流駆動手段が前記モータを駆動するための前記軸電流値、または前記電流駆動手段が前記軸電流値に応じて前記モータに印加するための指示電圧を所定の目標値まで漸増または漸減させることにより、モータ制御態様を変更する制御態様変更手段とを含む、モータ制御装置。
  6. 前記制御パラメータが第1しきい値を超えると制御破綻の予兆を検出し、前記制御パラメータが前記第1しきい値よりも小さい第2しきい値未満となると制御破綻の予兆がなくなったと判定する、請求項のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  7. 車両の舵取り機構に駆動力を付与するモータと、
    前記モータを制御する請求項1〜のいずれか一項に記載のモータ制御装置とを含む、
    車両用操舵装置。
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